JP3572391B2 - 距離計測装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信装置から送出される信号を受信装置が受信し、送信装置と受信装置間の距離測定を行う距離計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
距離計測装置としては従来、レーダやステレオカメラなどを用いて距離測定が行われている。また通信の分野で行われている受信信号の遅延測定のように、通信の同期操作によって送信手段から送信される信号を受信し、所定の基準時間に対する受信信号の遅延を測って送受信手段間の距離を測定することも行われている。
【0003】
レーダまたはステレオカメラを用いた測定では、距離測定の対象物からの反射信号または対象物自体の画像情報に基づいて測定を行うから、対象物によっては測定可能な距離が短くなったり、精度が劣化するという問題を有する。
例えば車両用の障害物検出装置として用いた場合、捕捉された歩行者など、信号に対する散乱面積や対象物自体が小さいものの測定では、距離が数十m以上離れると、レーダでは反射信号が微弱になり、またステレオカメラでは画像が極めて小さいため、距離測定が困難になり、精度が劣化するという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、受信信号の遅延で距離を測定する方法では、対象物の大きさに関わらず距離測定ができるため、安定して距離測定が可能である。この測定では、例えば双方向通信を行って送信手段に送信を要求し、送信される信号の遅延を測って、距離測定することができる。しかしこの送受信の同期は極めて高い精度を要するため、装置が複雑になるという問題点があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、距離測定の対象物から送出される信号を受信して、距離測定を行うとともに、送信と受信の同期操作を必要としない距離計測装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このため請求項1記載の発明は、送信装置と受信装置を備え、前記送信装置は、同期をとった周波数の異なる少なくとも3つの送信信号を送信し、前記受信装置は、受信した前記送信信号のうち、所定の第1の信号を基準として他の第2、第3の信号とのビート信号を生成するビート信号生成手段と、生成された2つのビート信号の位相を検出し、その位相差に基づいて前記送信装置と前記受信装置間の距離を演算する距離演算手段とを有するものとした。
第1の信号と前記第2の信号の周波数差は、第2の信号と第3の信号の周波数差と同じであることが望ましい。
【0006】
請求項3記載の発明は前記送信装置が、搬送波信号を生成する搬送波信号生成手段と、該搬送波信号と同期をとった変調波信号を生成する変調波信号生成手段と、該変調波信号で前記搬送波信号を変調させて送信信号を生成する信号混合手段とを有するものとした。
【0007】
請求項4記載の発明は、前記変調波信号生成手段が前記搬送波信号を分周して変調波信号を生成するものとした。
請求項5記載の発明は、前記変調波信号が所定の幅のパルス信号であるものとした。
【0008】
【効果】
請求項1記載の発明では、送信装置は、同期をとった周波数の異なる少なくとも3つの送信信号を送信する。受信装置では、送信信号を受信したのち、所定の第1の信号を基準として所定の第2、第3の信号とを混合してビート信号として得る。
【0009】
各送信信号は周波数が異なるため受信されるまでの距離に応じてそれぞれの周波数に対応する位相遅れをもつため、2つのビート信号の間では、一方のビート信号に対して他方のビート信号の遅れまたは進みが、送信信号が伝播した距離と対応関係を持っている。したがって距離演算手段が2つのビート信号の位相を測定し、位相差に基づいて距離を算出することができる。
このように距離測定は位相の測定とビート信号の位相差からの演算で求めるので、送信と受信の同期操作が不要で、装置の構成が簡単になるとともに、レーダやステレオカメラなどによる測定と比べて、対象物自身の要素が測定結果に影響を与えず安定した距離測定が可能になる。
【0010】
また、第1の信号と第2の信号の周波数差を、第2の信号と第3の信号の周波数差と同じように設定すると、それらの信号を生成するに際して、例えば第2の信号を搬送波として生成し、この第2、第3の信号を第1の信号と第2の信号の周波数差の周波数を有する信号で変調して生成することができる。
【0011】
請求項3記載の発明では、送信装置は搬送波信号を生成し、それと同期の変調波信号で搬送波を変調して送信信号を生成するから、信号が簡単に生成することができ、また同期もとりやすくなる。
【0012】
請求項4記載の発明では、変調波信号は搬送波信号を分周して生成するから、搬送波信号と同期がとれて、同期をとるための操作が不要になる。
請求項5記載の発明では、変調波信号が所定の幅のパルス信号であるため、搬送波として周波数制御が困難な光信号も利用することができる。第1、第2および第3の信号は、パルス信号に含まれる基本波信号と基本波信号に対して所定の位相および振幅を有する高調波から得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、実施例により発明の実施の形態を説明する。
図1は実施例の構成を示すブロック図である。
送信装置1aと受信装置1bで距離計測装置が構成される。本実施例では、車両用の装置として、図2のように送信装置1aを歩行者18に持たせ、受信装置1bを車両17に取り付け、歩行者18と車両17間の距離測定は、歩行者からの送信信号を車両で受信して行う。
【0014】
送信装置1aは、図1のように発振器2、分周器3、ミキサ4および増幅器5から構成される。発振器2で搬送波信号として周波数f0の正弦波信号を生成する。生成された信号はミキサ4および分周器3に出力される。分周器3では、周波数f0の正弦波信号を分周して周波数がΔfの信号を生成する。この信号は搬送波信号と同期し、その周波数が測定する距離に合わせて設定される。分周器3で生成された信号が変調信号としてミキサ4で搬送波信号と混合され、AM変調の送信信号が生成される。送信信号は、AM変調によって周波数f0とf0±Δfの3つの信号を含み、増幅器5によって増幅されアンテナから送信される。
【0015】
受信装置1bは、増幅器6、カプラ7、バンドパスフィルタ(BPF)8、バンドパスフィルタ(BPF)9、バンドパスフィルタ(BPF)10、増幅器11、増幅器12、増幅器13、ミキサ14、ミキサ15および距離演算器16から構成される。
受信装置1bでは、増幅器6がアンテナからの信号を増幅する。電波信号が所定距離Rを伝播するとき、信号の波長をλとすると受信点における位相は送信点に比べ2πR/λの遅れが生ずるため、受信信号に含まれる送信装置1aからの送信信号は次式で示すようになる。
e1=E1sin(ω1t+β1R+θ) (1)
e2=E2sin(ω2t+β2R+θ) (2)
e3=E3sin(ω3t+β3R+θ) (3)
ここでEl、E2、E3は振幅、ω1、ω2、ω3はf0−Δf、f0、f0+Δfの角周波数、β1=2π/λ1,β2=2π/λ2、β3=2π/λ3であり、λ1、λ2、λ3はそれぞれf0−Δf、f0、f0+Δfに対応する波長である。Rは送信装置1aと受信装置1bの間の距離である。θは位相定数である。
【0016】
受信信号はカップラ7によってバンドパスフィルタ8、9、10に出力され信号分離が行われる。バンドパスフィルタ8、バンドパスフィルタ9、バンドパスフィルタ10はそのバンド幅がそれぞれ周波数f0−Δf、f0、f0+Δfに対応しており、上記式(1)、(2)、(3)で示されるe1、e2、e3の受信信号がそれぞれ第1の信号、第2の信号、第3の信号としてバンドパスフィルタから検出される。バンドパスフィルタ8からの信号e1はミキサ14、ミキサ15に出力され、バンドパスフィルタ9、10からの信号e2、e3はそれぞれミキサ14、15に出力される。
【0017】
ミキサ14、15で受信信号が混合され、ビート信号として次式で示すe12とe13の信号が得られ、距離演算器16に出力される。
Figure 0003572391
ここで、θ12、θ13は回路による位相変化分である。
【0018】
距離演算器16では、ビート信号e12とe13の位相を検出し、e12に対するe13の位相遅れによって送信装置1aと受信装置1bの間の距離Rを演算する。
ここで、信号e1、e2、e3の周波数はf0−Δf、f0、f0+Δfであるため、e1とe2の周波数差およびe3とe2の周波数はΔfで、かつel<e2<e3の関係であり、ビート信号e12、e13の周波数は(ω3−ω1)=2(ω2−ω1)の関係が成り立ち、e13はe12の2倍の周波数となる。
e12、e13の位相は、それぞれ(β2−β1)R、(β3−β1)Rで表わされるから、e12とe13の位相差Δθは
Δθ=(β3−β2)R (6)
となる。
【0019】
図3は式(4)、(5)、(6)の関係を示すベクトル図である。図において、ビート信号e12は原点を中心に(ω2−ω1)の角速度で回転するベクトル量であるが、(ω3−ω1)=2(ω2−ω1)であるので、e12の位相が0度の時に、e13のベクトルはそれに対してΔθ=(β3−β2)Rの位相遅れをもって観測される。
【0020】
距離演算器16は、まずビート信号e12、e13の位相をそれぞれ検出し、検出した位相に、回路による位相変化分θ12、θ13の補正を行って位相差Δθを検出する。そのΔθで上記式(6)から求められた演算式(7)によって距離Rを演算する。
R=(C・Δθ)/(2π・Δf) (7)
但し、Cは電磁波の伝播速度である。
この式(7)によって、変調波の周波数Δfを適当に設定すれば、位相差Δθとして大きく観測されることができる。例えばΔfを1MHzに設定すれば、距離Rが50mの場合は、Δθはπ/3になるため、観測に十分大きな値を得ることができ、高い測定精度が得られる。
【0021】
本実施例は以上のように構成され、送信装置より同期した周波数が異なる3つの信号を送出し、受信装置では各周波数の信号を受信して、周波数の低い信号を基準としてほかの2つの信号とのビート信号を得、各ビート信号の位相を測って位相差による距離を求めるから、同期操作が必要な装置に比べ構成が簡単になる。またレーダやステレオカメラなどのように、対象物が小さいと測定ができなくなることが生じない。車両装置として必要な信頼性が得られる。
なお、本実施例では3つの送信信号の周波数の関係として、e1とe2およびe2とe3の周波数差が同じものを示したが、これに限らず他の組み合わせでも上記と同じように実施することが可能である。
【0022】
上記実施例では、周波数の異なる3つの送信信号として、搬送波信号に変調波信号をかけて生成するようにしたが、この他例えば矩形波など高調波を含む信号で搬送波を変調させて生成することもできる。この場合は、とくに周波数制御が困難な光信号にも利用できる。
【0023】
次に、変形例として搬送波にレーザ光を利用するものについて説明する。
図4は搬送波に光信号を用いた送信装置1a′の構成を示す。
発振器21は所定周波数の信号を生成する。この信号が波形整形器22で整形され方形波のパルス信号となる。発光部24はレーザダイオードの発光素子を備え、駆動回路23はパルス信号にしたがって駆動電流を発光素子に流し、発光を制御する。
【0024】
発光素子は通常近赤外領域の周波数fcの光を発光するが、これにパルス信号でオン・オフ変調をかけると、周波数fcを含むべースバンド領域の方形波のスペクトル信号(fc+Δf+3Δf+5Δf+…)が得られる。
車載の受信装置1bでは、この信号を受信してバンドパスフィルタ8、9、10によって例えばΔf、3Δf、5Δfの周波数の信号を分離して検出すると、上記実施例と同じようにビート信号から位相を検出し、位相差に基づいて距離を演算することができる。
このように変調波に方形波のパルス信号を用いることで搬送波として電波だけでなく、周波数制御が困難な光信号の利用も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】車両用装置としての利用を示す概念図である。
【図3】2つのビート信号と位相の関係を示すベクトル図である。
【図4】送信装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1a、1a′ 送信装置
1b 受信装置
2 発振器(搬送波信号生成手段)
3 分周器(変調波信号生成手段)
4 ミキサ(信号混合手段)
5、6 増幅器
7 カプラ
8、9、10 バンドパスフィルタ
11、12、13 増幅器
14、15 ミキサ(ビート信号生成手段)
16 距離演算器(距離演算手段)
21 発振器
22 波形整形器
23 駆動回路
24 発光部

Claims (5)

  1. 送信装置と受信装置を備え、
    前記送信装置は、同期をとった周波数の異なる少なくとも3つの送信信号を送信し、
    前記受信装置は、受信した前記送信信号のうち、所定の第1の信号を基準として他の第2、第3の信号とのビート信号を生成するビート信号生成手段と、生成された2つのビート信号の位相を検出し、その位相差に基づいて前記送信装置と前記受信装置間の距離を演算する距離演算手段とを有することを特徴とする距離計測装置。
  2. 前記第1の信号と前記第2の信号の周波数差は、前記第2の信号と第3の信号の周波数差と同じであることを特徴とする請求項1記載の距離計測装置。
  3. 前記送信装置は、搬送波信号を生成する搬送波信号生成手段と、該搬送波信号と同期をとった変調波信号を生成する変調波信号生成手段と、該変調波信号で前記搬送波信号を変調させて送信信号を生成する信号混合手段とを有することを特徴とする請求項1または2記載の距離計測装置。
  4. 前記変調波信号生成手段は、前記搬送波信号を分周して変調波信号を生成することを特徴とする請求項3記載の距離計測装置。
  5. 前記変調波信号は、所定の幅のパルス信号であることを特徴とする請求項3記載の距離計測装置。
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