JP3572151B2 - 面発光半導体レーザ及びそれを用いたレーザシステム - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、面発光半導体レーザ及びそれを用いたレーザシステムに関し、特にレーザプロセス装置及びレーザ加工装置のレーザ光源部に適用して有用なものであり、レーザ素子の製造が簡易で、システムの構成も容易となり、更に冷却効率も向上するように図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーザプロセス装置では処理能力向上のため大出力化が要求され、また光を空間の任意の位置に伝送する為、波面の単一平面化と発散角の低減が必要であり、さらに使用する光学部品は通常円形又は正方形であるためレーザ光断面強度分布の均一化と縦横長さの同一化も必要である。
【0003】
このような目的に適合するものとしてCO2 レーザやYAGレーザがある。しかしこれらのレーザは、電気入力から光への変換効率が低い、発振波長が赤外線で長い、計算機による制御性が悪い、装置が大型であるなどの欠点がある。
【0004】
一方、このような欠点を克服するレーザとして半導体レーザがあるが、すでに述べたCO2 レーザやYAGレーザのような長所を持つに至っていない。
【0005】
そこで、本発明者等は上述の如き従来技術に係る半導体レーザの欠点である、
▲1▼光を放出する活性層が厚さの薄い平板状であるので、大出力化に限界がある。
▲2▼大出力化のためには、レーザ光線による半導体材料の光損傷により単位面積当たりの通過最大レーザ強度が制限される為、レーザ光通過断面積を大きくする必要があり、面発光半導体レーザが有利であるが、一枚の活性層だけでは光増幅できる光路長が短いので出力が小さい、という問題を解決すべく、新規な「面発光半導体レーザ」を先に提案した(特願平6−303384号:平成6年12月7日出願)。
【0006】
この先に提案した面発光半導体レーザは、レーザの大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減を同時に満足する半導体レーザの構成を見いだし、YAGレーザやCO2 レーザと同等のレーザ性能を持たせるように図ったものである。
【0007】
上記提案に係る面発光半導体レーザの構成は、図4(a),(b)に示すように、レーザ光線32の光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素Iの各活性層27を順次通過するよう、各活性層27を光学的に直列結合した、ものである。
【0008】
各活性層27を光学的に直列結合したとは、具体的には、図5に示すように、活性層27の発光面側と反対側にミラー層であるミラー型クラッド層28を配置した複数の面発光半導体レーザ素子要素21,22,23からなる面発光半導体レーザ素子Iと、複数の面発光半導体レーザ素子要素38,39,40,41からなる面発光半導体レーザ素子IIとを各発光面を相対向させて配置し、各面発光半導体レーザ素子要素面へ斜めに入射したレーザ光線32が各活性層を透過するとともにその奥のミラー層ミラー型クラッド層28で反射して再度活性層27を透過し、その面発光半導体レーザ素子要素から入射角と同じ角度で反対の方向へ出て、次の面発光半導体レーザ素子要素へ同様に斜めに入射することにより全ての面発光半導体レーザ素子要素をレーザ光線32が通過するように構成したものである。
【0009】
上記構成によればレーザ光線32は発光面に斜めに入射し、活性層27の奥にあるミラー型クラッド層28で折り返して更に活性層27を透過して面発光半導体レーザ素子要素から出て、次々と全ての面発光半導体レーザ素子要素を通過することにより活性層27を直列的に順次通過することとして(図6参照)、大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減化のレーザ性能を同時に満足することができ、YAGレーザやCO2 レーザに劣らない高出力、高品位のレーザ性能を有するようにしている。
なお、図6は上述の例において複数回反射して折れ曲がるレーザ光線32を仮想的に直線状に伸ばして概念的に示した原理図である。
【0010】
図7は上記素子に冷却機能を追加したシステムを示す構成図である。
図7に示すように、従来のシステムでは、相対向させた面発光半導体レーザ素子II,IIの各下部電極30をアース電位にして伝熱板56,57に接触させ、この伝熱板56,57の内部に冷媒58を流して冷却部59を構成して除熱して、半導体が加熱されることを防ぐための手段として機能している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案の構成に係る素子は、以下のような点で高出力・高品位のレーザ性能を十分に発揮できない。
【0012】
▲1▼ 図4に示すように、従来の面発光半導体レーザ素子Iは、発光面開口径を大きくして且つ面内に電流を供給するために、透明電極膜25を使用しているので、該透明電極25の大出力レーザ光線に対する耐光性は、充分に高いとはいえず、大出力化に支障がある。
【0013】
▲2▼ 従来の面発光半導体レーザ素子Iは、(i)レーザ光線32を反射するため、(ii)活性層27へ電子又は正孔を提供するために、ミラー型クラッド層28を共用していたので、上記ミラー型クラッド層28に適合する材料の選定の条件は共用のために、任意の半導体材料では使用できず、特定の材料に限定される結果、製造コストが高くなるという問題がある。
【0014】
▲3▼ 図4(b)に示すように、上記ミラー型クラッド層28内での光反射は多層結晶膜のブラッグ反射の原理を用いるため、多数の層からの反射波の干渉で反射光が形成され、反射面がミラー型クラッド層28内の特定の位置に規定できない、という問題がある。
このため、レーザ設計に必要なパラメータである共振器長は実測する必要があり、設計が困難であった。
【0015】
▲4▼ また、上記従来の面発光半導体レーザ素子を用いてシステムを構成する場合、図5に示すような構成では、対向する二つの面発光半導体レーザ素子II,IIの空間位置と方向をレーザ光軸に合わせて調整する必要があるが、この調整は素子内の発光面の数が多くなると困難である、という問題がある。
【0016】
▲5▼ さらに、図5に示すような構成では、対向する二つの面発光半導体レーザ素子II,IIの空間位置と方向をレーザ光軸に合わせて調整する必要がある。
この調整は素子内の発光面の数が多くなると困難である、という問題がある。
【0017】
▲6▼ また、上記素子II,IIは、発熱部である活性層27と冷却部59との間に基板29が設けられており、該基板材料としての半導体は熱伝導率が小さい為、冷却効率が悪いという問題がある。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑み、大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減化等のレーザ性能を同時に満足することができ、レーザ素子の製造が簡易でシステムの構成も容易となり、更に冷却効率も向上するように図った面発光半導体レーザ素子及びそれを用いたシステムを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の面発光半導体レーザ素子の構成は、レーザ光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素の各活性層を順次通過するよう、各活性層を光学的に直列結合してなる面発光半導体レーザであって、上記面発光半導体レーザ素子要素が、上部電極側の発光面側に設けられると共に透明且つ導電性の基板と、この基板の発光面側と異なる表面に設けられ活性層を挟んだクラッド層と、このクラッド層の上記基板の発光面側と異なる表面に設けられる導電性の反射鏡及び下部電極とからなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の面発光半導体レーザ素子の他の構成は、レーザ光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素の各活性層を順次通過するよう、各活性層を光学的に直列結合してなる面発光半導体レーザであって、上記面発光半導体レーザ素子要素が、上部電極側の発光面側に設けられると共に透明且つ導電性の基板と、この基板の発光面側と異なる表面に設けられ活性層を挟んだクラッド層と、反射鏡を有する下部電極とからなることを特徴とする。
【0021】
上記面発光半導体レーザにおいて、上記透明且つ導電性の基板に対するレーザ光線の入射位置である入射屈曲部と該レーザ光線の発光面の反射部との距離が一定であることを特徴とする。
【0022】
上記面発光半導体レーザにおいて、上記透明且つ導電性の基板がガリウム・ヒ素、インジウム・リン及びセレン化亜鉛の何れかからなることを特徴とする。
【0023】
一方、上記目的を達成する本発明の面発光半導体レーザ素子を用いたシステムの構成は、上記面発光半導体レーザ素子要素の複数個を各発光面が相対向する基板表面に配置し、レーザ光線がある一つのレーザ素子要素の発光部へ斜めに入射し、内部の活性層を透過し、その奥の反射鏡又は下部電極の鏡面で反射して再度活性層を透過し、その発光部から入射角と同じ角で反対の方向へ出射し、次の発光部へ同様に斜め入射することとし、全ての発光部をレーザ光線が通過し、且つ各発光部間の交線は基板内にある配置となることを特徴とする。
【0024】
本発明の面発光半導体レーザ素子を用いた他のシステムの構成は、透明且つ導電性の基板の両面に、活性層を挟んだクラッド層,導電性の反射鏡及び下部電極からなる面発光半導体レーザ素子要素を複数個順次並べて配置し、レーザ光線がある一つのレーザ素子要素の発光部へ斜めに入射した際に、内部の活性層を透過し、その奥の反射鏡又は下部電極の鏡面で反射して再度活性層を透過し、その発光部から入射角と同じ角で反対の方向へ出て当該基板内を進み、次の発光部へ同様に斜め入射する方式で、全ての発光部をレーザ光線が通過する配置となることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の面発光半導体レーザ素子の概略図であり、(a)はその立体図、(b)はその素子要素の面発光部の断面図である。
図1(b)に示すように、本発明に係る面発光半導体レーザ素子要素(以下「レーザ素子要素」という。)100は、透明且つ導電性基板101の一方の表面側(図中、上面側)に無反射コート膜102を設けると共に、他方の表面側(図中、下面側)には上部クラッド層103aと下部クラッド層103bとで活性層104を挟んだクラッド層105を設け、上記下部クラッド層103bの下面側には導電性の反射鏡106及び下部電極107を順次設けてなるものである。尚、符号108は上部電極、109は絶縁層を各々図示する。
【0027】
上記構成において、図1(b)に示すような、上記導電性の反射鏡106が独立して介在する代わりに、下部電極107のクラッド層103b側に反射面を一体に形成してなる下部電極を用いるようにしてもよい。
【0028】
上記構成において、発光面側に設ける透明且つ導電性の基板101としては、例えばガリウム・ヒ素(Ga・As)、インジウム・リン(In・P)及びセレン化亜鉛(ZnSe)等の基板を用いるのが、好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、半導体基板は通常導電性であり、透明度はそのドーピング量等に依存して定かではないが、例えば上記ガリウム・ヒ素(Ga・As)基板では、波長880nmから4μm、インジウム・リン(In・P)基板では、波長1μmから14μm、セレン化亜鉛(ZnSe)基板では、約波長500nmから10μmの範囲においては光の吸収係数が小さく、透明であるからである。
【0029】
よって、本発明によれば上記構成の面発光半導体レーザ素子とすることで、以下のような作用・効果を奏する。
【0030】
▲1▼ 半導体基板101は通常導電性であり、該基板材料101に特有の低光吸収波長領域で透明である。従って、この波長領域で光発振させる場合は、透明電極の役割を基板に兼ね備えることができ、耐光性が低い従来の透明電極を用いるのを不要とした。
【0031】
▲2▼ 光の進行方向に従って、活性層101を挟んだクラッド層105の奥に導電層の反射鏡106又は下部電極のクラッド107面に反射鏡を設けることにより、レーザ光線111の入射位置である入射屈曲部(無反射コート膜102)とそのレーザ光線の反射位置である発光面の反射部(導電性の反射鏡106)とが常に確定した距離Lとなり、共振器長を明確にすることができる。
よって、従来のように、レーザ設計に必要なパラメータである共振器長の実測する必要が個々には不要となり、設計が容易となった。
【0032】
▲3▼ また、各々の専用の材料を任意に選定でき、従来のように材料が特定されず材料選定の範囲が広がる。
この結果、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0033】
▲4▼ 次に、上記レーザ素子要素100を用いてシステム112を形成するには、図2に示すように、基板101を共通の光通路として相対向して配設し、その相対向する面にレーザ素子要素100A〜100Cからなるレーザ素子Iと、レーザ素子要素100D,100Eからなるレーザ素子IIを形成すべく、上述した必要な層を付着・形成するようにすれば、基板101の加工精度で決定される光軸設定ができ、この設定軸に外部からレーザ光線111を入射すれば、レーザ増振器のシステムとして稼働することとなる。
さらに、外部に全反射ミラー113及び半透明 ミラー114を配設して、外部共振器を構成すれば、レーザ発振器のシステム112として稼働することとなる。
【0034】
▲5▼ さらに、図3(a)に示すように、基板101の両側の端面に全反射膜121と半透明膜122とをそれぞれ付着させて、その外表面に相対向するようにレーザ素子100A〜100Cからなるレーザ素子III と100D〜100Fからなるレーザ素子IV として上述した必要な層を付着・形成するようにすれば、
外部からレーザ光線111を入射すれば、当該活性層101内部を該レーザ光111が進む一体構造のレーザ発振器のシステム123として稼働することとなる。
【0035】
▲6▼ また、図3(a)のB部の拡大を示す図3(b)に示すように、下部電極107側に、内部に冷媒等を流して冷却する冷却部124を設けることにより、発熱部である活性層104と冷却部124との間には基板101が存在していないので、従来の図5に示すようなシステムより冷却能力が高くなる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0037】
図1は本実施例に係る面発光半導体レーザ素子の概略図であり、(a)はその立体図、(b)はその素子の一部断面図である。
同図に示すように、レーザ素子要素100は、基板101の片側に上部電極108と光の出入口の無反射コート膜102とを設けている。
また、各発光部を独立に運転するために、隣合う二つの発光部の間を電気的に絶縁する目的で絶縁層112が設けられている。
【0038】
本実施例のレーザ素子要素100は、図1(b)に示すように、基板101のレーザ光線111の入射側とは反対側(図中、下側)に半導体レーザを動作させる為の要素である、上部クラッド層103aと上部クラッド層103bとの間に活性層104を挟んでなるクラッド層105を設け、該クラッド層105の奥側である該下部クラッド層103bの下面側に、反射鏡106及び下部電極107を付着するようにしている。
尚、上記反射鏡106の代わりに、下部電極107に反射面を一体に形成したものを用いてもよい。
【0039】
電極は上部電極108と下部電極107との間に接続し、上部電極108から出た電流は基板101を通過して上部クラッド層103aに入り、上部クラッド層103aから正孔を活性層104へ供給する。
また、この電流が活性層104と次の下部クラッド層103bに流れ込むと、該下部クラッド層103bからは活性層104へ電子が供給される。
最後に電流は反射鏡105を通り下部電極107に流れ込む。
このようにして上記活性層104へ電子と正孔とが供給されると、該活性層104はレーザ光線を放出する能力や増幅する能力が与えられる。
【0040】
このとき、外部からレーザ光線111が入射してくると、基板101の表面に被覆してある無反射コート膜102で反射することなく内部に進入し、基板101、クラッド層105の上部クラッド層103aを通過して活性層104に至る。該活性層104では光強度が増幅され上部クラッド層103bを通過して、反射鏡106に進む。
ここでレーザ光線111は折り返されて再び活性層104へ戻り、さらに光強度が増幅されて入射角と同一角度で無反射コート膜102から出て行く。
すなわち、活性層101を挟んだクラッド層105の奥に導電層の反射鏡106を反射鏡とすることにより、レーザ光線111の入射位置である入射屈曲部(無反射コート膜102)と、該レーザ光線111の反射位置である発光面の反射部(導電性の反射鏡106)とが常に確定した距離Lとなり、共振器長が明確になる。
【0041】
図2は、上述したような面発光半導体レーザ素子要素からなるレーザ素子I,IIを二つ対向して発振器を構成するシステムの一実施例の概略図である。
本実施例では、三個のレーザ素子要素100A〜100Cを有する面発光半導体レーザ素子Iと、二個のレーザ素子要素100D,100Eを有する面発光半導体レーザ素子IIとを組合せたシステムの実施例である。
【0042】
すなわち、面発光半導体レーザ素子I,IIは、レーザ素子要素100A〜100Cとレーザ素子要素100C,100Eとの各発光面を相対向させて配置し、各レーザ素子要素の面にレーザ光線111が斜めに入射するとともにこの入射角と同角度で出射するように構成してあり、各レーザ素子要素の発光面中心を入射するレーザ光線111の光軸と直交する面にミラー面が位置するように、外部に全反射ミラー113及び半透明ミラー114を配設してシステム112を構成してある。
【0043】
本実施例によれば、全反射ミラー113及び半透明ミラー114と光を放出する多数の活性層104で単一波面のレーザ発振が起こり、レーザ出力光111が半透明ミラー114から放出される。
すなわち、本実施例は発振器として機能する。波面の単一平面性や発散角の低減は外部共振器を構成する全反射ミラー113及び半透明ミラー114で得られる。
【0044】
本実施例のシステムにおいても、光軸のある側と反対側から冷却すると発熱部である活性層と冷却部との間に基板が存在しないので、冷却効率は大きいものとなる。
【0045】
図3は、面発光半導体レーザ素子を基板に形成したものであり、基板の一端部に設けた全反射膜121が図2の全反射ミラー113の役目をすると共に、他端部に設けた半透明鏡122が図2の半透明ミラー114の役目をするようにしている。
【0046】
図2のシステムでは、レーザ光線は空間を折り返して通過しているが、図3のシステムでは基板101の内部をレーザ光線111が通過するようにしているのが、図2のシステムと相違する。
【0047】
また、本実施例においては、内部に冷媒等を流して冷却する冷却部124を下部電極107の背後に設置してシステムを冷却するようにしているので、図5に示す従来のシステムのように、電熱板56と冷媒58から構成される冷却部と活性層27とのあいだに基板60が介装しているために、冷却効率が悪くなるということが防止される。
すなわち、上記基板60は半導体であるので、金属等に較べ熱伝導率が低く、従来のような配置では冷却効率が悪いからである。
しかしながら、本実施例にかかるシステムでは、活性層101と冷却部124との間に基板の存在は無く、且つ電極107は金属であるので熱導電性が良く、この結果本実施例の構成によれば、冷却効率が向上することとなる。
また、基板101に直接面発光半導体レーザ素子要素を形成するようにするので、レーザ光軸の調整は明らかに簡素化され、レーザ素子システムの構築が容易となる。
【0048】
【発明の効果】
以上実施例とともに具体的に説明したように本発明によれば、多数の半導体レーザの大型平面状活性層の平面を横切る方向にレーザ光軸を設定でき、各活性層を直列結合できるため、大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減化のレーザ性能を同時に満足することができ、YAGレーザやCO2 レーザに劣らない高出力、高品位のレーザ性能を有する。
【0049】
また、本発明によれば、以下の効果を奏する。
▲1▼ 半導体基板は通常導電性であり、特有の低光吸収波長領域で透明であるので、この特有の波長領域で光発振させる場合は、透明電極の役割を基板に兼ね備えることができ、耐光性が低い従来の透明電極を用いるのを不要とした。
【0050】
▲2▼ レーザ光線の進行方向に従って、活性層を挟んだクラッド層の奥に導電層の反射鏡又は下部電極のクラッド面に反射鏡を設けることにより、レーザ光線の入射位置である入射屈曲部(無反射コート膜)と反射位置である発光面の反射部(導電性の反射鏡)とが常に確定した距離となり、共振器長を明確にすることができる。
【0051】
▲3▼ また、各々のレーザ素子構成要素の専用の材料を任意に選定でき、従来のような製作が困難なミラー型クラッド層等に材料が特定されず、材料選定の範囲が更に広がる。
【0052】
▲4▼ 次に、上記レーザ素子要素を用いてシステムを形成するには、例えば図2に示すように、基板を共通の光通路として相対向して配設し、その相対向する面に複数のレーザ素子要素からなる第1のレーザ素子と、複数のレーザ素子要素からなる第2のレーザ素子とを形成するだけでよいので、基板の加工精度で決定される光軸設定ができ、さらに外部に全反射ミラー及び半透明ミラーを配設して、この設定軸に外部からレーザ光線を入射すれば、レーザ増幅器のシステムを容易に構成することができる。
【0053】
▲5▼ さらに、例えば図3に示すように、基板の両側の端面に全反射膜と半透明膜とをそれぞれ付着させて、その外表面に相対向するように複数のレーザ素子要素からなる第1のレーザ素子と、複数レーザ素子要素からなる第2のレーザ素子とを形成することにより、外部からレーザ光線を入射すれば、当該活性層内部を該レーザ光線が進む一体構造のレーザ発振器のシステムを容易に構成することができる。
【0054】
▲6▼ また、下部電極側に内部に冷媒等を流して冷却する冷却部を設けることにより、発熱部である活性層と冷却部との間には発熱部である基板が存在していないので、従来よりシステムの冷却能力を向上することができる。
【0055】
▲7▼ さらに、半導体レーザはYAG及びCO2 レーザに比べ、装置がコンパクト、出力変更が容易、波長可変、可視光発振が可能、計算機制御性が良好などの長所があり、本発明の効果との相乗効果でプロセス応用はもとより、さらに新しい用途も開けるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の面発光半導体レーザ素子を示す構造図。
【図2】本発明の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図3】本発明の他の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図4】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図5】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図6】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図7】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【符号の説明】
I,II ,III,IV 面発光半導体レーザ素子
100,100A〜100F 面発光半導体レーザ素子要素
101 導電性基板
102 無反射コート膜
103a 上部クラッド層
103b 下部クラッド層
104 活性層
105 クラッド層
106 導電極の反射鏡
107 下部電極
108 上部電極
109 絶縁層
111 レーザ光線
112 面発光半導体レーザ素子システム
113 全反射ミラー
114 半透明ミラー
121 全反射膜
122 半透明膜
123 面発光半導体レーザ素子システム
124 冷却部
【発明の属する技術分野】
本発明は、面発光半導体レーザ及びそれを用いたレーザシステムに関し、特にレーザプロセス装置及びレーザ加工装置のレーザ光源部に適用して有用なものであり、レーザ素子の製造が簡易で、システムの構成も容易となり、更に冷却効率も向上するように図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、レーザプロセス装置では処理能力向上のため大出力化が要求され、また光を空間の任意の位置に伝送する為、波面の単一平面化と発散角の低減が必要であり、さらに使用する光学部品は通常円形又は正方形であるためレーザ光断面強度分布の均一化と縦横長さの同一化も必要である。
【0003】
このような目的に適合するものとしてCO2 レーザやYAGレーザがある。しかしこれらのレーザは、電気入力から光への変換効率が低い、発振波長が赤外線で長い、計算機による制御性が悪い、装置が大型であるなどの欠点がある。
【0004】
一方、このような欠点を克服するレーザとして半導体レーザがあるが、すでに述べたCO2 レーザやYAGレーザのような長所を持つに至っていない。
【0005】
そこで、本発明者等は上述の如き従来技術に係る半導体レーザの欠点である、
▲1▼光を放出する活性層が厚さの薄い平板状であるので、大出力化に限界がある。
▲2▼大出力化のためには、レーザ光線による半導体材料の光損傷により単位面積当たりの通過最大レーザ強度が制限される為、レーザ光通過断面積を大きくする必要があり、面発光半導体レーザが有利であるが、一枚の活性層だけでは光増幅できる光路長が短いので出力が小さい、という問題を解決すべく、新規な「面発光半導体レーザ」を先に提案した(特願平6−303384号:平成6年12月7日出願)。
【0006】
この先に提案した面発光半導体レーザは、レーザの大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減を同時に満足する半導体レーザの構成を見いだし、YAGレーザやCO2 レーザと同等のレーザ性能を持たせるように図ったものである。
【0007】
上記提案に係る面発光半導体レーザの構成は、図4(a),(b)に示すように、レーザ光線32の光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素Iの各活性層27を順次通過するよう、各活性層27を光学的に直列結合した、ものである。
【0008】
各活性層27を光学的に直列結合したとは、具体的には、図5に示すように、活性層27の発光面側と反対側にミラー層であるミラー型クラッド層28を配置した複数の面発光半導体レーザ素子要素21,22,23からなる面発光半導体レーザ素子Iと、複数の面発光半導体レーザ素子要素38,39,40,41からなる面発光半導体レーザ素子IIとを各発光面を相対向させて配置し、各面発光半導体レーザ素子要素面へ斜めに入射したレーザ光線32が各活性層を透過するとともにその奥のミラー層ミラー型クラッド層28で反射して再度活性層27を透過し、その面発光半導体レーザ素子要素から入射角と同じ角度で反対の方向へ出て、次の面発光半導体レーザ素子要素へ同様に斜めに入射することにより全ての面発光半導体レーザ素子要素をレーザ光線32が通過するように構成したものである。
【0009】
上記構成によればレーザ光線32は発光面に斜めに入射し、活性層27の奥にあるミラー型クラッド層28で折り返して更に活性層27を透過して面発光半導体レーザ素子要素から出て、次々と全ての面発光半導体レーザ素子要素を通過することにより活性層27を直列的に順次通過することとして(図6参照)、大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減化のレーザ性能を同時に満足することができ、YAGレーザやCO2 レーザに劣らない高出力、高品位のレーザ性能を有するようにしている。
なお、図6は上述の例において複数回反射して折れ曲がるレーザ光線32を仮想的に直線状に伸ばして概念的に示した原理図である。
【0010】
図7は上記素子に冷却機能を追加したシステムを示す構成図である。
図7に示すように、従来のシステムでは、相対向させた面発光半導体レーザ素子II,IIの各下部電極30をアース電位にして伝熱板56,57に接触させ、この伝熱板56,57の内部に冷媒58を流して冷却部59を構成して除熱して、半導体が加熱されることを防ぐための手段として機能している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案の構成に係る素子は、以下のような点で高出力・高品位のレーザ性能を十分に発揮できない。
【0012】
▲1▼ 図4に示すように、従来の面発光半導体レーザ素子Iは、発光面開口径を大きくして且つ面内に電流を供給するために、透明電極膜25を使用しているので、該透明電極25の大出力レーザ光線に対する耐光性は、充分に高いとはいえず、大出力化に支障がある。
【0013】
▲2▼ 従来の面発光半導体レーザ素子Iは、(i)レーザ光線32を反射するため、(ii)活性層27へ電子又は正孔を提供するために、ミラー型クラッド層28を共用していたので、上記ミラー型クラッド層28に適合する材料の選定の条件は共用のために、任意の半導体材料では使用できず、特定の材料に限定される結果、製造コストが高くなるという問題がある。
【0014】
▲3▼ 図4(b)に示すように、上記ミラー型クラッド層28内での光反射は多層結晶膜のブラッグ反射の原理を用いるため、多数の層からの反射波の干渉で反射光が形成され、反射面がミラー型クラッド層28内の特定の位置に規定できない、という問題がある。
このため、レーザ設計に必要なパラメータである共振器長は実測する必要があり、設計が困難であった。
【0015】
▲4▼ また、上記従来の面発光半導体レーザ素子を用いてシステムを構成する場合、図5に示すような構成では、対向する二つの面発光半導体レーザ素子II,IIの空間位置と方向をレーザ光軸に合わせて調整する必要があるが、この調整は素子内の発光面の数が多くなると困難である、という問題がある。
【0016】
▲5▼ さらに、図5に示すような構成では、対向する二つの面発光半導体レーザ素子II,IIの空間位置と方向をレーザ光軸に合わせて調整する必要がある。
この調整は素子内の発光面の数が多くなると困難である、という問題がある。
【0017】
▲6▼ また、上記素子II,IIは、発熱部である活性層27と冷却部59との間に基板29が設けられており、該基板材料としての半導体は熱伝導率が小さい為、冷却効率が悪いという問題がある。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑み、大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減化等のレーザ性能を同時に満足することができ、レーザ素子の製造が簡易でシステムの構成も容易となり、更に冷却効率も向上するように図った面発光半導体レーザ素子及びそれを用いたシステムを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の面発光半導体レーザ素子の構成は、レーザ光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素の各活性層を順次通過するよう、各活性層を光学的に直列結合してなる面発光半導体レーザであって、上記面発光半導体レーザ素子要素が、上部電極側の発光面側に設けられると共に透明且つ導電性の基板と、この基板の発光面側と異なる表面に設けられ活性層を挟んだクラッド層と、このクラッド層の上記基板の発光面側と異なる表面に設けられる導電性の反射鏡及び下部電極とからなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の面発光半導体レーザ素子の他の構成は、レーザ光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素の各活性層を順次通過するよう、各活性層を光学的に直列結合してなる面発光半導体レーザであって、上記面発光半導体レーザ素子要素が、上部電極側の発光面側に設けられると共に透明且つ導電性の基板と、この基板の発光面側と異なる表面に設けられ活性層を挟んだクラッド層と、反射鏡を有する下部電極とからなることを特徴とする。
【0021】
上記面発光半導体レーザにおいて、上記透明且つ導電性の基板に対するレーザ光線の入射位置である入射屈曲部と該レーザ光線の発光面の反射部との距離が一定であることを特徴とする。
【0022】
上記面発光半導体レーザにおいて、上記透明且つ導電性の基板がガリウム・ヒ素、インジウム・リン及びセレン化亜鉛の何れかからなることを特徴とする。
【0023】
一方、上記目的を達成する本発明の面発光半導体レーザ素子を用いたシステムの構成は、上記面発光半導体レーザ素子要素の複数個を各発光面が相対向する基板表面に配置し、レーザ光線がある一つのレーザ素子要素の発光部へ斜めに入射し、内部の活性層を透過し、その奥の反射鏡又は下部電極の鏡面で反射して再度活性層を透過し、その発光部から入射角と同じ角で反対の方向へ出射し、次の発光部へ同様に斜め入射することとし、全ての発光部をレーザ光線が通過し、且つ各発光部間の交線は基板内にある配置となることを特徴とする。
【0024】
本発明の面発光半導体レーザ素子を用いた他のシステムの構成は、透明且つ導電性の基板の両面に、活性層を挟んだクラッド層,導電性の反射鏡及び下部電極からなる面発光半導体レーザ素子要素を複数個順次並べて配置し、レーザ光線がある一つのレーザ素子要素の発光部へ斜めに入射した際に、内部の活性層を透過し、その奥の反射鏡又は下部電極の鏡面で反射して再度活性層を透過し、その発光部から入射角と同じ角で反対の方向へ出て当該基板内を進み、次の発光部へ同様に斜め入射する方式で、全ての発光部をレーザ光線が通過する配置となることを特徴とする。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の面発光半導体レーザ素子の概略図であり、(a)はその立体図、(b)はその素子要素の面発光部の断面図である。
図1(b)に示すように、本発明に係る面発光半導体レーザ素子要素(以下「レーザ素子要素」という。)100は、透明且つ導電性基板101の一方の表面側(図中、上面側)に無反射コート膜102を設けると共に、他方の表面側(図中、下面側)には上部クラッド層103aと下部クラッド層103bとで活性層104を挟んだクラッド層105を設け、上記下部クラッド層103bの下面側には導電性の反射鏡106及び下部電極107を順次設けてなるものである。尚、符号108は上部電極、109は絶縁層を各々図示する。
【0027】
上記構成において、図1(b)に示すような、上記導電性の反射鏡106が独立して介在する代わりに、下部電極107のクラッド層103b側に反射面を一体に形成してなる下部電極を用いるようにしてもよい。
【0028】
上記構成において、発光面側に設ける透明且つ導電性の基板101としては、例えばガリウム・ヒ素(Ga・As)、インジウム・リン(In・P)及びセレン化亜鉛(ZnSe)等の基板を用いるのが、好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、半導体基板は通常導電性であり、透明度はそのドーピング量等に依存して定かではないが、例えば上記ガリウム・ヒ素(Ga・As)基板では、波長880nmから4μm、インジウム・リン(In・P)基板では、波長1μmから14μm、セレン化亜鉛(ZnSe)基板では、約波長500nmから10μmの範囲においては光の吸収係数が小さく、透明であるからである。
【0029】
よって、本発明によれば上記構成の面発光半導体レーザ素子とすることで、以下のような作用・効果を奏する。
【0030】
▲1▼ 半導体基板101は通常導電性であり、該基板材料101に特有の低光吸収波長領域で透明である。従って、この波長領域で光発振させる場合は、透明電極の役割を基板に兼ね備えることができ、耐光性が低い従来の透明電極を用いるのを不要とした。
【0031】
▲2▼ 光の進行方向に従って、活性層101を挟んだクラッド層105の奥に導電層の反射鏡106又は下部電極のクラッド107面に反射鏡を設けることにより、レーザ光線111の入射位置である入射屈曲部(無反射コート膜102)とそのレーザ光線の反射位置である発光面の反射部(導電性の反射鏡106)とが常に確定した距離Lとなり、共振器長を明確にすることができる。
よって、従来のように、レーザ設計に必要なパラメータである共振器長の実測する必要が個々には不要となり、設計が容易となった。
【0032】
▲3▼ また、各々の専用の材料を任意に選定でき、従来のように材料が特定されず材料選定の範囲が広がる。
この結果、製造コストの低廉化を図ることができる。
【0033】
▲4▼ 次に、上記レーザ素子要素100を用いてシステム112を形成するには、図2に示すように、基板101を共通の光通路として相対向して配設し、その相対向する面にレーザ素子要素100A〜100Cからなるレーザ素子Iと、レーザ素子要素100D,100Eからなるレーザ素子IIを形成すべく、上述した必要な層を付着・形成するようにすれば、基板101の加工精度で決定される光軸設定ができ、この設定軸に外部からレーザ光線111を入射すれば、レーザ増振器のシステムとして稼働することとなる。
さらに、外部に全反射ミラー113及び半透明 ミラー114を配設して、外部共振器を構成すれば、レーザ発振器のシステム112として稼働することとなる。
【0034】
▲5▼ さらに、図3(a)に示すように、基板101の両側の端面に全反射膜121と半透明膜122とをそれぞれ付着させて、その外表面に相対向するようにレーザ素子100A〜100Cからなるレーザ素子III と100D〜100Fからなるレーザ素子IV として上述した必要な層を付着・形成するようにすれば、
外部からレーザ光線111を入射すれば、当該活性層101内部を該レーザ光111が進む一体構造のレーザ発振器のシステム123として稼働することとなる。
【0035】
▲6▼ また、図3(a)のB部の拡大を示す図3(b)に示すように、下部電極107側に、内部に冷媒等を流して冷却する冷却部124を設けることにより、発熱部である活性層104と冷却部124との間には基板101が存在していないので、従来の図5に示すようなシステムより冷却能力が高くなる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0037】
図1は本実施例に係る面発光半導体レーザ素子の概略図であり、(a)はその立体図、(b)はその素子の一部断面図である。
同図に示すように、レーザ素子要素100は、基板101の片側に上部電極108と光の出入口の無反射コート膜102とを設けている。
また、各発光部を独立に運転するために、隣合う二つの発光部の間を電気的に絶縁する目的で絶縁層112が設けられている。
【0038】
本実施例のレーザ素子要素100は、図1(b)に示すように、基板101のレーザ光線111の入射側とは反対側(図中、下側)に半導体レーザを動作させる為の要素である、上部クラッド層103aと上部クラッド層103bとの間に活性層104を挟んでなるクラッド層105を設け、該クラッド層105の奥側である該下部クラッド層103bの下面側に、反射鏡106及び下部電極107を付着するようにしている。
尚、上記反射鏡106の代わりに、下部電極107に反射面を一体に形成したものを用いてもよい。
【0039】
電極は上部電極108と下部電極107との間に接続し、上部電極108から出た電流は基板101を通過して上部クラッド層103aに入り、上部クラッド層103aから正孔を活性層104へ供給する。
また、この電流が活性層104と次の下部クラッド層103bに流れ込むと、該下部クラッド層103bからは活性層104へ電子が供給される。
最後に電流は反射鏡105を通り下部電極107に流れ込む。
このようにして上記活性層104へ電子と正孔とが供給されると、該活性層104はレーザ光線を放出する能力や増幅する能力が与えられる。
【0040】
このとき、外部からレーザ光線111が入射してくると、基板101の表面に被覆してある無反射コート膜102で反射することなく内部に進入し、基板101、クラッド層105の上部クラッド層103aを通過して活性層104に至る。該活性層104では光強度が増幅され上部クラッド層103bを通過して、反射鏡106に進む。
ここでレーザ光線111は折り返されて再び活性層104へ戻り、さらに光強度が増幅されて入射角と同一角度で無反射コート膜102から出て行く。
すなわち、活性層101を挟んだクラッド層105の奥に導電層の反射鏡106を反射鏡とすることにより、レーザ光線111の入射位置である入射屈曲部(無反射コート膜102)と、該レーザ光線111の反射位置である発光面の反射部(導電性の反射鏡106)とが常に確定した距離Lとなり、共振器長が明確になる。
【0041】
図2は、上述したような面発光半導体レーザ素子要素からなるレーザ素子I,IIを二つ対向して発振器を構成するシステムの一実施例の概略図である。
本実施例では、三個のレーザ素子要素100A〜100Cを有する面発光半導体レーザ素子Iと、二個のレーザ素子要素100D,100Eを有する面発光半導体レーザ素子IIとを組合せたシステムの実施例である。
【0042】
すなわち、面発光半導体レーザ素子I,IIは、レーザ素子要素100A〜100Cとレーザ素子要素100C,100Eとの各発光面を相対向させて配置し、各レーザ素子要素の面にレーザ光線111が斜めに入射するとともにこの入射角と同角度で出射するように構成してあり、各レーザ素子要素の発光面中心を入射するレーザ光線111の光軸と直交する面にミラー面が位置するように、外部に全反射ミラー113及び半透明ミラー114を配設してシステム112を構成してある。
【0043】
本実施例によれば、全反射ミラー113及び半透明ミラー114と光を放出する多数の活性層104で単一波面のレーザ発振が起こり、レーザ出力光111が半透明ミラー114から放出される。
すなわち、本実施例は発振器として機能する。波面の単一平面性や発散角の低減は外部共振器を構成する全反射ミラー113及び半透明ミラー114で得られる。
【0044】
本実施例のシステムにおいても、光軸のある側と反対側から冷却すると発熱部である活性層と冷却部との間に基板が存在しないので、冷却効率は大きいものとなる。
【0045】
図3は、面発光半導体レーザ素子を基板に形成したものであり、基板の一端部に設けた全反射膜121が図2の全反射ミラー113の役目をすると共に、他端部に設けた半透明鏡122が図2の半透明ミラー114の役目をするようにしている。
【0046】
図2のシステムでは、レーザ光線は空間を折り返して通過しているが、図3のシステムでは基板101の内部をレーザ光線111が通過するようにしているのが、図2のシステムと相違する。
【0047】
また、本実施例においては、内部に冷媒等を流して冷却する冷却部124を下部電極107の背後に設置してシステムを冷却するようにしているので、図5に示す従来のシステムのように、電熱板56と冷媒58から構成される冷却部と活性層27とのあいだに基板60が介装しているために、冷却効率が悪くなるということが防止される。
すなわち、上記基板60は半導体であるので、金属等に較べ熱伝導率が低く、従来のような配置では冷却効率が悪いからである。
しかしながら、本実施例にかかるシステムでは、活性層101と冷却部124との間に基板の存在は無く、且つ電極107は金属であるので熱導電性が良く、この結果本実施例の構成によれば、冷却効率が向上することとなる。
また、基板101に直接面発光半導体レーザ素子要素を形成するようにするので、レーザ光軸の調整は明らかに簡素化され、レーザ素子システムの構築が容易となる。
【0048】
【発明の効果】
以上実施例とともに具体的に説明したように本発明によれば、多数の半導体レーザの大型平面状活性層の平面を横切る方向にレーザ光軸を設定でき、各活性層を直列結合できるため、大出力化、レーザ光断面強度分布の均一大型化と縦横長さの同一化、レーザ波面の単一平面化、発散角の低減化のレーザ性能を同時に満足することができ、YAGレーザやCO2 レーザに劣らない高出力、高品位のレーザ性能を有する。
【0049】
また、本発明によれば、以下の効果を奏する。
▲1▼ 半導体基板は通常導電性であり、特有の低光吸収波長領域で透明であるので、この特有の波長領域で光発振させる場合は、透明電極の役割を基板に兼ね備えることができ、耐光性が低い従来の透明電極を用いるのを不要とした。
【0050】
▲2▼ レーザ光線の進行方向に従って、活性層を挟んだクラッド層の奥に導電層の反射鏡又は下部電極のクラッド面に反射鏡を設けることにより、レーザ光線の入射位置である入射屈曲部(無反射コート膜)と反射位置である発光面の反射部(導電性の反射鏡)とが常に確定した距離となり、共振器長を明確にすることができる。
【0051】
▲3▼ また、各々のレーザ素子構成要素の専用の材料を任意に選定でき、従来のような製作が困難なミラー型クラッド層等に材料が特定されず、材料選定の範囲が更に広がる。
【0052】
▲4▼ 次に、上記レーザ素子要素を用いてシステムを形成するには、例えば図2に示すように、基板を共通の光通路として相対向して配設し、その相対向する面に複数のレーザ素子要素からなる第1のレーザ素子と、複数のレーザ素子要素からなる第2のレーザ素子とを形成するだけでよいので、基板の加工精度で決定される光軸設定ができ、さらに外部に全反射ミラー及び半透明ミラーを配設して、この設定軸に外部からレーザ光線を入射すれば、レーザ増幅器のシステムを容易に構成することができる。
【0053】
▲5▼ さらに、例えば図3に示すように、基板の両側の端面に全反射膜と半透明膜とをそれぞれ付着させて、その外表面に相対向するように複数のレーザ素子要素からなる第1のレーザ素子と、複数レーザ素子要素からなる第2のレーザ素子とを形成することにより、外部からレーザ光線を入射すれば、当該活性層内部を該レーザ光線が進む一体構造のレーザ発振器のシステムを容易に構成することができる。
【0054】
▲6▼ また、下部電極側に内部に冷媒等を流して冷却する冷却部を設けることにより、発熱部である活性層と冷却部との間には発熱部である基板が存在していないので、従来よりシステムの冷却能力を向上することができる。
【0055】
▲7▼ さらに、半導体レーザはYAG及びCO2 レーザに比べ、装置がコンパクト、出力変更が容易、波長可変、可視光発振が可能、計算機制御性が良好などの長所があり、本発明の効果との相乗効果でプロセス応用はもとより、さらに新しい用途も開けるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の面発光半導体レーザ素子を示す構造図。
【図2】本発明の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図3】本発明の他の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図4】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図5】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図6】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【図7】従来の面発光半導体レーザ素子システムの構造図。
【符号の説明】
I,II ,III,IV 面発光半導体レーザ素子
100,100A〜100F 面発光半導体レーザ素子要素
101 導電性基板
102 無反射コート膜
103a 上部クラッド層
103b 下部クラッド層
104 活性層
105 クラッド層
106 導電極の反射鏡
107 下部電極
108 上部電極
109 絶縁層
111 レーザ光線
112 面発光半導体レーザ素子システム
113 全反射ミラー
114 半透明ミラー
121 全反射膜
122 半透明膜
123 面発光半導体レーザ素子システム
124 冷却部
Claims (6)
- レーザ光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素の各活性層を順次通過するよう、各活性層を光学的に直列結合してなる面発光半導体レーザであって、
上記面発光半導体レーザ素子要素が、上部電極側の発光面側に設けられると共に透明且つ導電性の基板と、この基板の発光面側と異なる表面に設けられ活性層を挟んだクラッド層と、このクラッド層の上記基板の発光面側と異なる表面に設けられる導電性の反射鏡及び下部電極とからなることを特徴とする面発光半導体レーザ。 - レーザ光軸が、複数の面発光半導体レーザ素子要素の各活性層を順次通過するよう、各活性層を光学的に直列結合してなる面発光半導体レーザであって、
上記面発光半導体レーザ素子要素が、上部電極側の発光面側に設けられると共に透明且つ導電性の基板と、この基板の発光面側と異なる表面に設けられ活性層を挟んだクラッド層と、反射鏡を有する下部電極とからなることを特徴とする面発光半導体レーザ。 - 請求項1又は2記載の面発光半導体レーザにおいて、
上記透明且つ導電性の基板に対するレーザ光線の入射位置である入射屈曲部と該レーザ光線の発光面の反射部との距離が一定であることを特徴とする面発光半導体レーザ。 - 請求項1乃至3記載の面発光半導体レーザにおいて、
上記透明且つ導電性の基板がガリウム・ヒ素、インジウム・リン及びセレン化亜鉛の何れかからなることを特徴とする面発光半導体レーザ。 - 請求項1乃至4記載の上記面発光半導体レーザ素子要素の複数個を各発光面が相対向する基板表面に配置し、レーザ光線がある一つのレーザ素子要素の発光部へ斜めに入射し、内部の活性層を透過し、その奥の反射鏡又は下部電極の鏡面で反射して再度活性層を透過し、その発光部から入射角と同じ角で反対の方向へ出射し、次の発光部へ同様に斜め入射することとし、全ての発光部をレーザ光線が通過し、且つ各発光部間の交線は基板内にある配置となることを特徴とする面発光半導体レーザシステム。
- 透明且つ導電性の基板の両面に、活性層を挟んだクラッド層,導電性の反射鏡及び下部電極からなる面発光半導体レーザ素子要素を複数個順次並べて配置し、レーザ光線がある一つのレーザ素子要素の発光部へ斜めに入射した際に、内部の活性層を透過し、その奥の反射鏡又は下部電極の鏡面で反射して再度活性層を透過し、その発光部から入射角と同じ角で反対の方向へ出て当該基板内を進み、次の発光部へ同様に斜め入射する方式で、全ての発光部をレーザ光線が通過する配置となることを特徴とする面発光半導体レーザシステム。
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JP (1) | JP3572151B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2245711A4 (en) * | 2008-02-14 | 2018-01-03 | Michael Jansen | Electrically-pumped semiconductor zigzag extended cavity surface emitting lasers and superluminescent leds |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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1996
- 1996-09-27 JP JP25569696A patent/JP3572151B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2245711A4 (en) * | 2008-02-14 | 2018-01-03 | Michael Jansen | Electrically-pumped semiconductor zigzag extended cavity surface emitting lasers and superluminescent leds |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10107365A (ja) | 1998-04-24 |
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