JP3571161B2 - 試料検査装置及び試料検査方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は干渉計を利用してディスクやウェーハ及び光学部品等の試料の表面形状を測定解析する装置及び検査方法、より詳細には試料の表面形状を高精度に測定評価する位相シフト干渉法による試料検査装置及び検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に半導体ウェーハ等の薄板状の試料は、全体的反りや傾斜と部分的な凹凸とを合わせ持っており、試料の表面や裏面はこれらが合成された形状をなしている。
【0003】
微細パターンの焼き付けを行う半導体製造工程においては、ウェーハを基準平面に吸着固定したときのウェーハ表面の凹凸量が露光装置の焦点深度内にあることが必要であり、吸着基準平面に吸着されたウェーハ表面の凹凸量の測定が重要となっている。
【0004】
この測定の精度の高度化に応える技術として、位相シフト干渉法( Phase Scanning Interferometory ) が知られている。この方法では、参照光の光学的光路長を変えて(通常1縞感度)、測定光に対する位相差を変化させる。その位相差の変化に伴って干渉縞の強度は次の式のように変化し、ある干渉縞は次の縞へと動く様に見える。(ここで、Iは位相強度、θは初期位相、αはバイアス、βはコントラスト、hは高さ、Δhは縞感度、とする。)
【数1】
よって各点での干渉縞強度と与えた位相差を変数と見なせば、その点の高さ情報に起因する位相を求めることができる。この方法によれば、1/100波長程度の精度が可能となる。そして位相シフト干渉法の位相シフトの数は、一般的には4ステップと5ステップが知られている。[ David W Robinson and Graeme T Reid,「 Interferogram Analysis:Digital Fringe Pattern Measurement 」,Institute of Physics PUblishing,1993 ; Daniel Malacara,「 Optical Shop Testing−Second Edition 」,A Wiley−Interscience Publication,John Wiley & Sons.Inc.,1992 ]
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の位相シフト干渉法は多重干渉を含まない干渉縞強度式に基づいて導出されていたので、多重干渉を含んだ干渉縞画像を処理した場合、従来から良く知られている4ステップ,5ステップでは十分ではなく、うまく処理できない欠点があった。そして多重干渉はサンプルの反射率によって容易に現れ得るため、処理をより困難なものにしていた。多重干渉成分を巧く消去できないと、その後のアンラッピング(位相のつなぎ合わせ)の過程でエラーが起こりやすく、4ステップ,5ステップでは僅かの多重干渉成分でアンラッピング・エラーになってしまうため、多重干渉が起こり得る干渉計測装置へは採用できない。
【0006】
本発明は、上記従来技術の欠点に鑑み、多重干渉成分の多くを占める2次干渉成分と3次干渉成分の除去を可能にする位相シフト干渉法による試料検査装置及び試料検査方法を提供することを技術課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような構成を有することを特徴とする。
【0008】
(1) 試料の形状を測定解析する試料検査装置において、高精度に平面研磨された基準平面を有し前記試料を吸着する試料保持手段と、吸着された前記試料に干渉縞を形成する干渉縞形成手段と、参照光の位相を変化させるために参照平面と試料の測定面の光学的距離を少なくても7段階変化させる位相変化手段と、形成された干渉縞の各画像を取り込む画像取得手段と、取り込んだ画像から解析領域を決定する解析領域決定手段と、取り込んだ画像から2次及び3次干渉成分をキャンセルし試料測定面の形状を解析する画像解析手段と、該画像解析手段による解析結果を表示する表示手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
(2) (1)の干渉縞形成手段は、斜入射型干渉光学系または垂直入射型干渉光学系を持つことを特徴とする。
【0010】
(3) (1)の位相変化手段は、参照光の位相を変化させるために、参照平面と試料の測定面との間の光学的距離を任意に変化させる移動手段を有することを特徴とする。
【0011】
(4) (1)の位相変化手段は、8段階の位相を変化させることを特徴とする。
【0012】
(5) (4)の位相変化手段の位相差をπ/4ずつずらすことを特徴として、8回画像を取り込む画像取得手段を有することを特徴とする。
【0013】
(6) (5)の画像取得手段により取り込まれた画像から、閾値処理により解析領域を決定する解析領域決定手段を有することを特徴とする。
【0014】
(7) (1)の試料検査装置において、前記画像解析手段は、前記画像取得手段によって取り込まれた画像から、逆正接関数によって各点の高さ情報に起因する位相データを抽出し、その位相データをつなぎ合わせるアンラッピング(unwrapping)及び、位相データから高さデータへの変換を行う解析手段を有することを特徴とする。
【0015】
(8) 試料に形成された干渉縞に基づいて試料の形状を測定解析する試料検査方法において、干渉縞を形成する参照光の位相を変化させるために参照平面と前記試料の測定面の光学的距離を少なくても7段階変化させて形成された干渉縞の各画像を取り込む段階と、取り込まれた画像を閾値処理して解析領域を決定する段階と、取り込まれた画像から2次及び3次干渉成分をキャンセルし試料測定面の形状を解析する段階と、を有することを特徴とする。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は実施例の装置の光学系の概略配置を示す図であり、実施例では斜入射型干渉光学系を採用している。1は試料で本実施例ではウェーハである。2は基準平面2´を有する試料吸着台、3は被測定試料表面及び基準平面2´の干渉縞を発生させる参照平面3´を有するプリズムであり、4はピエゾ素子で参照平面3´と被測定平面との光学的距離を変え参照光の位相を変化させる。
【0018】
図2は参照光の位相を変化させるためのプリズム移動機構の概略構成を示す図である。参照平面3´を有するプリズム3は2つの直動軸受15のついた移動台16の上に固定され、2つの直動軸受15間に固定して設けられたピエゾ素子4によって移動台16が移動する(移動台16は、図示なきバネによりピエゾ素子4側に付勢されている)。この移動により参照平面3´と被測定試料表面間の光学的距離が変化することによって参照光の位相を変化させる。
【0019】
5は参照光の光源で、本実施例では波長632.8nmのHe−Neレ−ザ装置を用いている。光源5から出射された光束は、イクスパンダ6によって必要な大きさの光束に拡げられ、前側焦点位置にイクスパンダ6がくるように配置されたコリメ−タレンズ7により平行光束となり、プリズム3に入射する。入射角調整プリズム8によって測定感度を試料の平面度によって任意に変化させることができる。測定感度は1Fringe= 1μmから1Fringe= 5μmまで連続的に変化させることができる。
【0020】
9は反射光を任意の方向に曲げるフレネル板で、フレネル板9によって曲げられた光はスクリ−ン10上で干渉縞を形成する。スクリ−ン10上の干渉縞はレンズ11を介しテレビカメラ12の撮像面上に結像される。テレビカメラは本実施例ではCCDカメラを用いている。なお、本実施例では干渉縞をスクリ−ン10に一旦投影し、スクリ−ン像をテレビカメラにより撮影するという方法を用いているが、フレネル板9とスクリ−ン10を取り除き、空中像を直接テレビカメラにより撮影する方法でも良い。
【0021】
13は演算解析処理を行うコンピュ−タで、テレビカメラ12を介し画像デ−タを取り込み、処理して被測定面の解析を行う。14はテレビカメラ12で撮影した像や解析結果を表示するモニタである。
【0022】
図3は実施例の装置の駆動及び制御系の概略構成を示すブロック図である。17はピエゾ素子4を動かすためのドライバであり、装置全体を制御するコンピュ−タ13からD/Aコンバ−タ18を通じて制御される。20は入射角調整プリズム8を動かすモ−タ19のドライバであり、コンピュ−タ13からD/Aコンバ−タ21を通じて制御される。
【0023】
テレビカメラ12からの映像信号はA/Dコンバ−タ22を通じてコンピュ−タ13に送られ、演算・解析される。撮影した像や解析結果はモニタ14に表示され、また、印字装置23によって印字される。24はコンピュ−タ13へ各種の測定モ−ドなどを設定・入力するための入力装置である。
【0024】
以上のような構成を持つ装置において、その動作について説明する。
【0025】
試料吸着台2を試料受渡位置まで図示なき駆動手段にて移動し、試料吸着台2の基準平面2´上に試料1を載せ、真空強制吸着した後、所定の測定位置に移動する。光源5から出射されたレ−ザ光はイクスパンダ6により光束を拡げられ、コリメ−タレンズ7により平行光束となり、試料の平面度に合わせて測定感度を変えるため入射角調整プリズム8によって角度を変えてプリズム3に入射する。
【0026】
プリズム3に入射した光の一部はその参照平面3´を透過して試料1の表面で反射し、再度プリズム3を通り、フレネル板9で曲げられてスクリーン10へ向かう。プリズム3に入射したその他の光はその参照平面3´で反射してスクリーン10へ向かい、試料1表面で反射した光と干渉現象を引き起こし、スクリーン10に投影される。スクリーン10に投影された干渉縞はレンズ11を介しテレビカメラ12の撮像面に結像させ、映像信号として取り出し、A/Dコンバータ22によって信号変換しコンピュータ13に取り込む。
【0027】
本実施例では二次、三次の多重干渉をサンプリングするため、ピエゾ素子4をドライバ17によって動かし、移動台16に固定されたプリズム3を移動させ、参照平面3´−試料1表面間距離を縞感度/8ずつ変化させながら8枚の干渉画像をコンピュータ13に取り込む。8枚の干渉画像を取り込むのは、次の理由による。
【0028】
多重干渉を含む画像データからn次干渉の周期成分を抽出する方法として、フーリエ変換の方法を用いる。(フーリエ変換については一般的に知られているので、ここでは説明は省略する。)
ここでn次干渉の周期成分とは、アブラムソン(斜入射)型干渉計の場合、サンプルを参照平面であるプリズム底面から縞感度/nに等しい距離を上下しても変化しない干渉像成分である。そこで1次干渉の周期をM等分する間隔で位相変化させる場合の、第mステップ(m=0〜M−1)の強度成分を2次,3次の多重干渉を考慮して定式化すると、次の式のようになる。(ここで、Iは位相強度、θは初期位相、αはバイアス、βはコントラスト、hは高さ、Δhは縞感度、とする。)
【数2】
ただし、ここでは干渉像の横ずれは無視する。これから信号I(x,y;m)のk番目のスペクトルG (x,y;k)は、次の式のように表すことができる。
【数3】
従って、
【数4】
となり、特にk=1の1次干渉の周期スペクトルに注目すると、
【数5】
となって、高さデータを求める式ができる。
【0029】
次に、2次、3次の多重干渉をキャンセルするステップ数Mを考える。まず注意しておくことは、2次の干渉は1次の干渉より参照平面であるプリズム底面での反射と透過を1回ずつ余分に経験していることである。プリズム底面での反射率をrとすると、その係数はr(1−r)でr(1−r)≦1/4となり、各縞感度におけるフレネル反射率から求めた値は次の表のようになる。(ここで、aはプリズム中から空気中へ進む光の入射角、bは空気中へ進んだ光の屈折角、RpはP偏光、RsはS偏光、とする。また、プリズムの屈折率n=1.5168とする。)
【表1】
【0030】
このように、2次干渉強度は1次干渉強度の25%以下である。同様に考えると3次干渉強度は1次干渉強度の25%×25%=6.3%以下であるため、2次干渉と3次干渉がキャンセルできれば多重干渉の大部分を処理できることになる。そして2次干渉と3次干渉を求めるには、1次干渉のパラメ−タが3つであることから、2次干渉まででは5つ、3次干渉まででは7つのパラメータが必要なことになる。
【0031】
さらに、大気の擾乱や干渉縞を検出するテレビカメラの擾乱などのノイズがあるので、これを除くために、7ステップにさらに少なくても1ステップを加える。
【0032】
次に位相シフト法による解析の流れについて図4のフローチャートを基に説明する。
【0033】
まず、参照平面と試料表面間距離を縞感度/8ずつ変化させながら、8枚の干渉画像をコンピュータに取り込んで周知の処理を施す(STEP−1)。次に、取り込んだ8枚の干渉画像から数4の計算式に基づいて4βsin,4βcos 画像を作成する(STEP−2)。4βsin,4βcos を2乗して加え16β2 のコントラスト画像を算出し、閾値処理により解析領域を決定する(STEP−3)。4βsin,4βcos 画像から先述の数5の計算式に基づいて、各画素の位相を求める(STEP−4)。ある点を基準にして、アンラッピング(位相の飛びを縦横につなぎ合わせる)を行う(STEP−5)。位相データを高さデータに変換する(STEP−6)。測定結果として表す(STEP−7)
なお、上記の解析の流れについて、STEP−3はSTEP−2,STEP−4,STEP−5及びSTEP−6のいずれかの段階の後におこなえばよい。
【0034】
求められたデータはモニタ14にて鳥瞰図や等高線図などで表示され、また、印字装置23によって印字される。
【0035】
以上の実施例では、テレビカメラ12に接続されたコンピュ−タ13により試料表面形状を解析するものとしたが、テレビカメラ12からの8枚の干渉画像を記録媒体に記憶させ、これを前述のような解析プログラムを持つコンピュ−タに取り込んで解析するようにしても良い。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば位相シフト干渉法による干渉測定・解析において、多重干渉成分のうちの多くを占める2次干渉成分と3次干渉成分に影響されることなくデータを処理できるので、測定対象がその表面反射率によって限定されないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の装置の光学系の概略配置を示す図である。
【図2】実施例の装置の参照光の位相を変化させるためのプリズム移動機構の概略構成を示す図である。
【図3】実施例の装置の駆動及び制動系の概略構成を示すブロック図である。
【図4】位相シフトによる解析全体のフロ−チャ−トを示す図である。
【符号の説明】
1 試料
3 プリズム
4 ピエゾ素子
5 レーザ光源
10 スクリーン
12 テレビカメラ
14 モニタ
15 直動軸受
22 A/Dコンバータ
23 プリンタ
Claims (8)
- 試料の形状を測定解析する試料検査装置において、高精度に平面研磨された基準平面を有し前記試料を吸着する試料保持手段と、吸着された試料に干渉縞を形成する干渉縞形成手段と、参照光の位相を変化させるために参照平面と試料の測定面の光学的距離を少なくとも7段階変化させる位相変化手段と、形成された干渉縞の各画像を取り込む画像取得手段と、取り込んだ画像から解析領域を決定する解析領域決定手段と、取り込んだ画像から2次及び3次干渉成分をキャンセルし試料測定面の形状を解析する画像解析手段と、該画像解析手段による解析結果を表示する表示手段と、を有することを特徴とする試料検査装置。
- 請求項1の干渉縞形成手段は、斜入射型干渉光学系または垂直入射型干渉光学系を持つことを特徴とする試料検査装置。
- 請求項1の位相変化手段は、参照光の位相を変化させるために、参照平面と試料の測定面との間の光学的距離を任意に変化させる移動手段を有することを特徴とする試料検査装置。
- 請求項1の位相変化手段は、8段階の位相を変化させることを特徴とする試料検査装置。
- 請求項4の位相変化手段の位相差をπ/4ずつずらすことを特徴として、8回画像を取り込む画像取得手段を有することを特徴とする試料検査装置。
- 請求項5の画像取得手段により取り込まれた画像から、閾値処理により解析領域を決定する解析領域決定手段を有することを特徴とする試料検査装置。
- 請求項1の試料検査装置において、前記画像解析手段は、前記画像取得手段によって取り込まれた画像から、逆正接関数によって各点の高さ情報に起因する位相データを抽出し、その位相データをつなぎ合わせるアンラッピング(unwrapping)及び、位相データから高さデータへの変換を行う解析手段を有することを特徴とする試料検査装置。
- 試料に形成された干渉縞に基づいて試料の形状を測定解析する試料検査方法において、干渉縞を形成する参照光の位相を変化させるために参照平面と前記試料の測定面の光学的距離を少なくとも7段階変化させて形成された干渉縞の各画像を取り込む段階と、取り込まれた画像を閾値処理して解析領域を決定する段階と、取り込まれた画像から2次及び3次干渉成分をキャンセルし試料測定面の形状を解析する段階と、を有することを特徴とする試料検査方法。
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