JP3569772B2 - 静電容量型トランスデューサ用信号処理回路 - Google Patents

静電容量型トランスデューサ用信号処理回路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は静電容量の変化を利用したトランスデューサの信号処理回路、特に複数のセンシング・コンデンサの電極間距離の変化に基づいて応力、加速度、磁気、圧力等の物理量の検出を行う静電容量型トランスデューサの信号処理回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
力、加速度等の物理量を静電容量に変換して検出する、静電容量型トランスデューサが用いられている。ここで、静電容量型トランスデューサには、1対のセンシング・コンデンサを有し、第1、第2のセンシング・コンデンサの静電容量の差分をとることで物理量の検出を行うものがある。従来、このトランスデューサの信号処理には、一対のセンシング・コンデンサの静電容量の差分の絶対値に対応した信号を出力する回路が用いられていた。
【0003】
しかし、従来の回路を用いた場合は、トランスデューサにオフセット容量を得るための付加コンデンサが必要であり、製作工程が複雑である。即ち、従来の方式では第1、第2のセンシング・コンデンサの容量のどちらが大きいかは検出できない。従い、センシング・コンデンサに印加される物理量の正負を測定するには、その容量が第1、第2のセンシング・コンデンサ間に生じる静電容量の差分の最大値よりも大きな、オフセット用付加コンデンサを、第1または第2のセンシング・コンデンサに並列に付加していた。
【0004】
オフセット用付加コンデンサの存在はトランスデューサの特性劣化をも招いていた。即ち、1対のセンシング・コンデンサについては、その容量、特性がそろっていればその差分を測定することで、センシング・コンデンサ同士の外乱依存性を相殺することが可能である。しかし、オフセット用付加コンデンサの外乱依存性はそのまま残り、トランスデューサ出力のドリフトとして現れる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように従来、一対のセンシング・コンデンサの静電容量の相対的差異により物理量を測定する静電容量型トランスデューサにおいてはオフセット用付加コンデンサが必要であり、製作工程の複雑化を招いていた。更に、オフセット用付加コンデンサの存在は、物理量の入力時無入力時を問わず、周囲温度変化等の外乱による出力のドリフトを生じ、測定誤差の要因となっていた。
【0006】
本発明はオフセット用付加コンデンサを不要とし、製作工程の簡略化、製作コストの低減を図り、安価な応力、加速度等の物理量検出装置を提供すること、更には周囲温度変化等の外乱による出力のドリフトを低減し、精度の良い応力、加速度等の物理量検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明は1軸方向の物理量の作用によって相互間距離が増加または減少するように配置された電極対によって第1のセンシング・コンデンサを構成し、逆に、相互間距離が減少または増加するように配置された電極対によって第2のセンシング・コンデンサを構成し、第1のセンシング・コンデンサと第2のセンシング・コンデンサの容量の差分の変化に基づいて作用した物理量を検出できる静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路において、
前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端と前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端とを所定の電圧に固定するとともに、
所定周波数の信号を発生させる基準信号発生源と、
前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第1の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第1の抵抗素子と、
前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第2の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第2の抵抗素子と、
第1の入力端が前記第1の抵抗素子の第2の端点に接続され、第2の入力端が前記第2の抵抗素子の第2の端点に接続され、前記第1の入力端に与えられた前記第1の位相遅延信号と前記第2の入力端に与えられた前記第2の位相遅延信号、の立ち下がりまたは立ち上がりのエッジ比較によって、前記第1の位相遅延信号と前記第2の位相遅延信号の位相差の絶対値とその正負に対応する信号を出力する信号出力回路を備える。
【0008】
本願第2の発明は1軸方向の物理量の作用によって相互間距離が増加または減少するように配置された電極対によって第1のセンシング・コンデンサを構成し、逆に、相互間距離が減少または増加するように配置された電極対によって第2のセンシング・コンデンサを構成し、第1のセンシング・コンデンサと第2のセンシング・コンデンサの容量の比の変化に基づいて作用した物理量を検出できる静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路において、
前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端と前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端とを所定の電圧に固定するとともに、
所定周波数の信号を発生させる基準信号発生源と、
前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第1の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第1の抵抗素子と、
前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第2の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第2の抵抗素子と、
前記基準信号と前記第1の位相遅延信号についての第1の位相差と、前記基準信号と前記第2の位相遅延信号についての第2の位相差、の比に対応する信号を出力する信号出力回路、
を備える。
【0009】
【作用】
本願第1の発明ではトランスデューサを構成する1対のセンシング・コンデンサによって構成される1対のCR遅延回路を通った信号同士の位相差に対応する信号を出力するにあたって、これらの信号のエッジ比較を行うことにより、その位相差の正負も含めた信号出力を行う。
【0010】
本願第2の発明ではトランスデューサを構成する1対のセンシング・コンデンサによって構成される1対のCR遅延回路において、それぞれの遅延回路を通過する前後の信号の位相差を求める。そして、その2つの位相差の比に対応する信号を出力する。
【0011】
【発明の実施の形態】
(1)本発明の適用対象たるトランスデューサ
初めに、本発明の適用対象となる静電容量型トランスデューサを示す。図1は本発明が適用される静電容量型トランスデューサの1例であって、加速度計の構造を示す側断面図である。このトランスデューサの主たる構成要素は、固定基板10、可撓基板20、動作部材30、そしてトランスデューサ筐体40である。図2に可撓基板20の下面図を示す。図2の可撓基板をx軸に沿って切断した断面が図1に示されている。可撓基板20は、図示のように円盤状の基板であり、周囲は筐体40に固定されている。この下面には扇形の変位電極21〜24が図のように同じ大きさで等間隔に形成されている。動作部材30はその上面が図3に示されるように円柱状をしており、可撓基板20の上面に同軸接続されている。さらに、図3に固定基板10の上面図を示す。図3の固定基板10をx軸に沿って切断した断面が図1に示されている。固定基板10は図示の通り円盤状の基板であり、周囲は筐体40に固定されている。この上面には同じく円盤状の固定電極11が形成されている。筐体40は円柱状の内部空間を有しており、その内壁部分に固定基板10及び可撓基板20の周囲を両基板が互いに平行になるように固着支持している。
【0012】
今、図1に示すように動作部材30の重心に作用点Pを定義し、この作用点を原点とするxyz三次元座標を図のように定義する。ここで動作部材30に加速度が加わると作用点Pに外力が作用する。作用点Pに力が作用していない状態では図1に示すように固定電極11と変位電極21〜24とは所定間隔において平行な状態を保っている。ところが、作用点Pにx軸方向の力Fxが作用すると、この力Fxは可撓基板20に対してモーメントを生じさせ、図4に示すように可撓基板20に中央部x軸方向を対称軸として、左右にそれぞれ上方向、下方向の撓みが生じる。可撓性基板20の撓み量は作用点Pに作用する力Fxの大きさに対応して変化する。そして、Fxの大きさに対応して変位電極21と固定電極11との間隔は大きくなるが、変位電極23と固定電極11との間隔は小さくなる。このように力Fxが作用したときその大きさに従って、変位電極21と固定電極11から構成されるセンシング・コンデンサC1の静電容量は減少し、変位電極23と固定電極11から構成されるセンシング・コンデンサC3の静電容量は増加する。従って、両センシング・コンデンサC1,C3間の静電容量の差分が変化し、差分をとることでx軸方向の加速度を検出できる。
作用点Pに作用した力が逆向きの−Fxであったとするとこれとは逆の撓みを生じ、両センシング・コンデンサC1,C3間の静電容量にはFxのときとは正負逆の変化が生じる。
一方、y方向の力Fyまたは−Fyが作用した場合には変位電極22と固定電極11との間隔及び変位電極電極対24と固定電極11との間隔にのみ同様の変化を生じる。また、z軸方向の力Fzが動作部材30に作用した場合、図5に示すように変位電極21と固定電極11との間隔及び変位電極電極対23と固定電極11との間隔はともに大きくなる。その結果、センシング・コンデンサC1,C3の静電容量は共に減少し、両センシング・コンデンサ間の静電容量の差分には変化がない。
この図1のトランスデューサは外力を直接作用点に加えれば応力を、また動作部材30を磁性体で構成すれば磁力を検出することも可能である。
【0013】
さらに、図6は本発明が適用される静電容量型トランスデューサの他の例であって、圧力計の構造を示す断面図である。このトランスデューサは主として平面ダイアフラム50、固定電極61,62、筐体70から構成され、筐体70中の1対の通路71,72を通じて液体、気体等の流体が圧力計内の平面ダイアフラム50で仕切られたそれぞれの内室73,74に流入する。また、平面ダイアフラム50はそれ自体が導電性であるか、または表面に導電性を付与されており電極として働くようになっている。内室73,74に印加される流体の圧力をそれぞれP1、P2と定義する。この圧力P1と圧力P2は平面ダイアフラム50の両面に対してそれぞれ作用する。従い、圧力P1と圧力P2の差分に応じて平面ダイアフラム50は撓むことになる。圧力P1が圧力P2より大きければ平面ダイアフラム50と固定電極61の距離は大きくなり、平面ダイアフラム50と固定電極61の距離は小さくなる。このため、平面ダイアフラム50と固定電極61で構成されるセンシング・コンデンサC1の容量と平面ダイアフラム50と固定電極62で構成されるセンシング・コンデンサC2の容量の差分が変化する。このようにして、図6のトランスデューサにおいてセンシング・コンデンサC1とC2の容量の差分をとることで、圧力P1と圧力P2の差分を検出できる。さらに、圧力P1または圧力P2の一方が既知であれば他方の圧力そのものを検出できる。
【0014】
(2)従来の信号処理の問題点
以上述べた図1に表わされる加速度計、図6に表わされる圧力計等の静電容量型トランスデューサにおいては物理量検出にあたって、従来1対のセンシング・コンデンサC1,C3の容量の差分(C1−C3)を図15に示す信号処理回路によって求めることが行われている。
図15に示す信号処理回路は測定対象たるセンシング・コンデンサC1,C3にそれぞれ抵抗素子101,102を付加して1対のCR遅延回路を構成している。入力端子T1に与えられた矩形波はセンシング・コンデンサC1と抵抗素子101で構成される遅延回路とバッファ回路120及びセンシング・コンデンサC3と抵抗素子102で構成される遅延回路とバッファ回路130の2つの経路に分岐してEX−OR論理素子104で合流する。このとき図の上下の経路でそれぞれの遅延回路の時定数によって定まる位相差(t3−t1)が生じている。これは図16において図15の端点X3,X4における信号波形として表わされる。EX−OR論理素子104の出力端Yには入力端X3、X4の信号の位相差に対応する幅のパルス波形が出る。従い、センシング・コンデンサC1とC3の容量の差分の変化に伴いパルス幅が変化することになる(図16参照)。パルスの周期は入力端T1に与えられる矩形波の周期により定まり、その1/2の周期となっている。従い、入力端T1に与えられる矩形波の1周期をzとすれば、センシング・コンデンサC1とC3の容量の差分の変化は端子Yにおけるパルスのデューティ比(2*(t3−t1)/z)の変化をもたらす。端子Yにおける信号を例えばより高い周波数のクロックでカウントすればデューティ比をデジタル値に変換できる。また、図15に示すように端子Yの出力を平滑回路105で平滑化すればその出力端T2においてデューティ比に対応したアナログ出力を得ることもできる。
【0015】
この従来の方式ではセンシング・コンデンサC1,C3の容量のどちらが大きいかにはよらず、その差分の絶対値のみでパルス幅が決定される。従い、センシング・コンデンサC1,C3に印加される応力をそのどちらが大きいかも含めて比較するには図15に点線で示すようにオフセット用付加コンデンサCをセンシング・コンデンサC1またはC3に並列に付加し、その容量をセンシング・コンデンサC1,C3間に生じる静電容量の差分の最大値よりも常に大きくなるようにしておかねばならない。
従来の方式はセンシング・コンデンサC1,C3については、その容量の差分を求めることから、温度等の外乱への依存性を相殺しうる。このため、センシング・コンデンサC1,C3の温度等の外乱依存性によらず、物理量を検出しうることになる。しかし、オフセット用付加コンデンサCの温度特性等については相殺されず、物理量検出の特性向上に一定の限界があった。
本発明はオフセット用付加コンデンサを不要とし、温度等の外乱依存性をさらに軽減した信号処理回路を提供するものである。
【0016】
(3)本発明の第1の実施例
図7に本発明の第1の実施例を示す。図15同様センシング・コンデンサC1,C3に抵抗素子101,102が接続された1対のCR遅延回路が形成されている。また、入力端T1に与えられた信号が2つに別れ1対のCR遅延回路、バッファ回路120,130を経由してそれぞれの遅延回路の時定数の相違に基づく位相差を持って節点X3,X4に出力される点は図15と同様である。ここでこの2つの信号が入力される回路にエッジ比較回路110を用いたことが第1の実施例の特徴である。
このエッジ比較回路110は端点X3,X4のエッジを比較し、X3の信号とX4の信号のエッジのどちらが進相か遅相かに応じて節点X5または節点X6にパルスを出力する。図の上下のCR遅延回路の位相差ひいてはセンシング・コンデンサC1,C3の容量の差分の正負に応じて端点5又は端点6に信号が出力されるため、物理量無入力時にセンシング・コンデンサC1とC3の容量が同一であってもさしつかえないことになる。従い、実施例1を採用することで余分なオフセット用付加コンデンサを省略できる。
また、従来はオフセット用付加コンデンサCの温度等の外乱依存性によって、物理量無入力時でも図15の端点Yで信号変動を生じており、ひいては出力端T2のアナログ出力のいわゆる零点ドリフトが生じていた。これに対して実施例1ではオフセット用付加コンデンサが無い分これに起因する端点X5及び端点X6の出力変動を防止でき、外乱依存性が軽減される。
【0017】
ここでエッジ比較回路110の構成例を図8に示す。この回路はNAND論理素子111A〜C、112A〜C、113、AND論理素子114、115より構成される。図9,10に端点X3の信号が端点X4の信号に比べてそれぞれ進相、遅相である場合の各節点での信号波形を示す。即ち、エッジ比較手段では節点X3の信号の立ち下がりエッジ後に節点X4の信号の入力の立ち下がりエッジを検出したときは、この間、節点X5にハイレベルが出力される。逆に節点X3の信号の立ち下がりエッジ後に節点X4の信号の立ち下がりエッジを検出したときは、この間、節点X6にハイレベルが出力される。
これからアナログ出力を得るには節点X5,X6に出力された信号を差動増幅器106にて差動増幅後に平滑回路105で平滑処理すればよい。この結果、端点T2にセンシング・コンデンサC1,C3の容量の差分に対応したアナログ出力を得ることができる。また、節点X5,X6の信号のデューティ比をこの信号より高周波のクロックでそれぞれカウントすることにより、ディジタル信号として処理することでセンシング・コンデンサC1,C3の容量の差分を求めることもできる。
【0018】
以上求めた容量の差分を換算することで、物理量を求められる。ここで、実験的に加速度等の物理量と信号出力の対応をとることで、物理量検出装置の校正を行うこともできる。校正後は、物理量が作用していない時に得られる出力の値を基準値として、その基準値からの変動を求めることで物理量の検出ができる。
なお、ここで図11にバッファ回路120の構成例を示す。この回路ではセンシング・コンデンサC1と抵抗素子101で構成されるRC遅延回路の出力と基準電圧Vrefをコンパレータ121により比較を行う。この結果図12に示すように遅延回路の時定数に比例する位相の遅れをもったパルスが節点X3に出力される。即ち、遅延回路の出力を整形する働きを有する。このバッファ回路の構成はバッファ回路120のみならずバッファ回路130においても同様の構成となる。ここで、バッファ回路120,130それぞれの前段の遅延回路を通過した信号の位相差を正しく評価するにはバッファ回路120,130の基準電圧Vrefは同一の値を用いる必要がある。この実施例における基準電圧Vrefの設定は、T1に加えられる矩形波の最大電圧の1/2としている。
【0019】
(4)本発明の第2の実施例
本発明の第2の実施例では静電容量型トランスデューサにおいて、センシング・コンデンサと抵抗で構成された1対の遅延回路それぞれを信号が通過することで生じたそれぞれの位相差の比からセンシング・コンデンサ容量の比を求めることで物理量を検出することを特徴とする。
ここでセンシング・コンデンサの容量の差分と容量の比が1対1に対応することを示す。センシング・コンデンサの容量は電極面積をS、電極間隔をd、誘電率をεとすれば
C=εS/d
で定まる。従い、対向する電極間の距離がdからd+Δdへと変化したときはセンシング・コンデンサの容量はΔd/d<<1なら
ΔC=−(εS/d^2)Δd
だけ変化する。
ここで、話を分かり易くするため、1対の電極面積S、電極間隔の等しいコンデンサC1,C2を考える。物理量の入力によりの電極間の距離dL、d2がその一方d1はdからd+Δd他方d2はdからd−Δdへと変化したとする。このときそれぞれのコンデンサの静電容量はそれぞれ(C+ΔC)、(C−ΔC)である。その差分Csubは
Csub=(C+ΔC)−(C−ΔC)=2ΔC
である。
一方、このときの容量の比Cdivは
Cdiv=(C+ΔC)/(C−ΔC)
ここで1次の微小量までとれば
Cdiv =1+2ΔC/C
となる。
従い、容量の差分Csubと容量の比Cdivは相互に換算可能であり、1対1に対応することが判る。
コンデンサと抵抗素子で構成される遅延回路の時定数tはコンデンサの容量をC、抵抗素子の抵抗値をR、とすれば
t=CR
で決定される。従い、時定数の比と抵抗値の比が判ればコンデンサの容量の比を求められる。特に、1対の抵抗素子の抵抗値が等しければ時定数の比はコンデンサの容量の比に一致する。かくして1対の遅延回路の時定数の比を求めることで、最終的に物理量の検出が可能となる。
【0020】
以下に、本発明が適用される静電容量型トランスデューサについての1対の遅延回路の通過によって生じる原信号とのそれぞれの位相差の比をとることで温度等の外乱依存性の軽減を図れることを示す。
まず、容量の比Cdivをとることでオフセット用付加コンデンサは不要となる。1対のセンシング・コンデンサC1,C3の容量のいずれかが大きいかをCdivと1の大小を比較することで表わすことができるため、センシング・コンデンサC1,C3の容量に特段の差異を設ける必要はないからである。このため、付加コンデンサに起因する零点(物理量無入力時)の出力変動は発生しない。さらに物理量が入力して1対のセンシング・コンデンサの容量に相違が出た場合でも温度等の外乱に起因する出力の変動は小さい。即ち、一般に2つのセンシング・コンデンサ、抵抗素子はその温度特性等の特性は実質上同一のものを使用すると考えられる。これは例えば、半導体微細加工による同一ウエハ上へのトランスデューサの形成等によって、容易に達成しうる。このため、外乱により各センシング・コンデンサの静電容量、抵抗素子の抵抗値が変化する場合静電容量C、抵抗値Rは同一の比率をもって増加、減少する。
以上から、外乱で静電容量、抵抗値が変化しても静電容量の比、抵抗値の比は変化がない。このため、センシング・コンデンサと抵抗素子で構成される1対の遅延回路の時定数t=C*Rの比(1対の遅延回路を通過前後の信号の位相差それぞれの比)をとることで外乱に依存しない精度の良い物理量検出が可能になる。
【0021】
上記位相差の比をアナログとして出力する回路の構成例を図13に示す。この例では入力端T1に加えられた入力信号が2つの遅延回路に分岐しそれぞれの時定数に応じた位相遅れをもって節点X3,X4に出力される点は図7と変わるところはない。節点X3,X4の信号と入力点T1の原信号との排他的論理和(EX−OR)の結果が節点X7,X8に出力される。従い節点X7,X8にはそれぞれの遅延回路の時定数で定まるパルス幅のパルスが出力される。各節点における信号を図14に示す。節点X7,X8の信号出力をそれぞれ平滑化回路205,206で平滑処理すればそれぞれの遅延回路の時定数に対応したアナログ信号が出力される。これをアナログ除算器207で除算処理すれば1対の遅延回路の時定数の比に対応する出力が端点T2に出力される。除算器207には例えばアナログ・デバイセズ社のAD532を使用することができる。
図13はアナログ出力の回路例であるが、回路の1部変更でデジタル出力にすることもできる。節点X7,X8の信号をより高速のクロックでカウントしてそれぞれのデューティ比を求めるのである。その結果をデジタル演算すれば図13のアナログ出力に対応するディジタル出力を容易に得ることができる。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明は全ての実施例においてオフセット用付加コンデンサを不要とし、製作工程の簡略化、製作コストの低減を図り、安価な応力、加速度等の物理量検出装置を提供することが可能となる効果を有する。
また、実施例1では、オフセット用付加コンデンサに起因する周囲温度変化等の外乱による出力のドリフト、特に物理量無入力時の零点ドリフトを低減し、精度の良い応力、加速度等の物理量検出が可能になる。
実施例2ではこれに加えて、物理量入力時における出力信号のドリフトが軽減され、実施例1より更に精度の良い応力、加速度等の物理量検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用対象であるトランスデューサの1例としての加速度計の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示すトランスデューサの固定基板10の下面図である。図2の固定基板10をx軸に沿って切断した断面が図1に示されている。
【図3】図1に示すトランスデューサの可撓基板20の上面図である。図3の可撓基板をx軸に沿って切断した断面が図1に示されている。
【図4】図1に示すトランスデューサの作用点Pにx軸方向の力Fxが作用したときの、トランスデューサの撓み状態を示す側断面図である。
【図5】図1に示すトランスデューサの作用点PにZ軸方向の力Fzが作用したときの、トランスデューサの撓み状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の適用対象であるトランスデューサの他の例としての圧力計の構造を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る信号処理回路を示す回路図である。
【図8】図7に示す信号処理回路のエッジ比較回路110を構成する回路の例を示す回路図である。
【図9】図8の信号処理回路において節点X3の位相が節点X4の位相より進んでいる場合の各節点における信号波形を示す図である。
【図10】図8の信号処理回路において節点X3の位相が節点X4の位相より遅れている場合の各節点における信号波形を示す図である。
【図11】図7に示す信号処理回路のバッファ回路120,130の細部構成を示す回路図である。
【図12】図11に示すバッファ回路の各節点での信号波形を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施例に係る信号処理回路を示す回路図である。
【図14】図13に示す信号処理回路の各節点における信号波形を示す図である。
【図15】図1、図6に示されるトランスデューサに用いる従来の信号処理回路である。
【図16】図15に示す信号処理回路の各節点における信号波形を示す図である。
【符号の説明】
10:固定基板
11:固定電極
20:可撓基板
21〜24:変位電極
30:動作部材
40:加速度計筐体
50:平板ダイアフラム
61,62:固定電極
70:圧力計筐体
71,72:流体の通路
73,74:圧力計内室
101,102:抵抗素子
103:差動増幅器
104:EX−OR論理素子
105:平滑回路
106:差動増幅器
110:エッジ比較回路
111A〜C、112A〜C、113:NAND論理素子
114、115:AND論理素子
120:バッファ回路
121:コンパレータ
122:定電圧電源
130バッファ回路
201、202:抵抗素子
203、204:EX−OR論理素子
205、206:平滑回路
207:除算器
220、230:バッファ回路
C1〜C4:トランスデューサを構成するセンシング・コンデンサ
P:作用点
T1:入力端子
T2:出力端子
X1〜X8:節点
Y:節点

Claims (3)

  1. 1軸方向の物理量の作用によって相互間距離が増加または減少するように配置された電極対によって第1のセンシング・コンデンサを構成し、逆に、相互間距離が減少または増加するように配置された電極対によって第2のセンシング・コンデンサを構成し、第1のセンシング・コンデンサと第2のセンシング・コンデンサの容量の差分の変化に基づいて作用した物理量を検出できる静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路であって、
    前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端と前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端とを所定の電圧に固定するとともに、
    所定周波数の信号を発生させる基準信号発生源と、
    前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第1の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第1の抵抗素子と、
    前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第2の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第2の抵抗素子と、
    第1の入力端が前記第1の抵抗素子の第2の端点に接続され、第2の入力端が前記第2の抵抗素子の第2の端点に接続され、前記第1の入力端に与えられた前記第1の位相遅延信号と前記第2の入力端に与えられた前記第2の位相遅延信号、の立ち下がりまたは立ち上がりのエッジ比較によって、前記第1の位相遅延信号と前記第2の位相遅延信号の位相差の絶対値とその正負に対応する信号を出力する信号出力回路を備えた、
    ことを特徴とする静電容量の変化を利用した静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路
  2. 1軸方向の物理量の作用によって相互間距離が増加または減少するように配置された電極対によって第1のセンシング・コンデンサを構成し、逆に、相互間距離が減少または増加するように配置された電極対によって第2のセンシング・コンデンサを構成し、第1のセンシング・コンデンサと第2のセンシング・コンデンサの容量の比の変化に基づいて作用した物理量を検出できる静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路であって、
    前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端と前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極対の一端とを所定の電圧に固定するとともに、
    所定周波数の信号を発生させる基準信号発生源と、
    前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第1のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第1の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第1の抵抗素子と、
    前記基準信号発生源の出力端に第1の端点が接続され、前記第2のセンシング・コンデンサを構成する電極の他端に第2の端点が接続され、前記第2のセンシング・コンデンサの容量に応じて前記基準信号発生源の出力信号を位相変化させた第2の位相遅延信号を前記第2の端点から出力する、第2の抵抗素子と、
    前記基準信号と前記第1の位相遅延信号についての第1の位相差と、前記基準信号と前記第2の位相遅延信号についての第2の位相差、の比に対応する信号を出力する信号出力回路を備えた、
    ことを特徴とする静電容量の変化を利用した静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路
  3. 請求項2に記載の信号処理回路であって、請求項2に記載の信号出力回路が、第1の入力端が請求項2に記載の第1の抵抗素子の第2の端点に接続され、第2の入力端が請求項2に記載の基準信号発生源の出力端に接続され、前記第1の入力端に与えられた請求項2に記載の第1の位相遅延信号と前記第2の入力端に与えられた請求項2に記載の基準信号についての、請求項2に記載の第1の位相差に対応する第1の論理信号を出力する第1の論理回路と、
    第1の入力端が請求項2に記載の第2の抵抗素子の第2の端点に接続され、第2の入力端が請求項2に記載の基準信号発生源の出力端に接続され、前記第1の入力端に与えられた請求項2に記載の第2の位相遅延信号と前記第2の入力端に与えられた請求項2に記載の基準信号についての、請求項2に記載の第2の位相差に対応する第2の論理信号を出力する第2の論理回路と、
    入力端が、前記第1の論理回路の出力端に接続された第1の平滑回路と、
    入力端が、前記第2の論理回路の出力端に接続された第2の平滑回路と、
    第1の入力端が前記第1の平滑回路の出力端に接続され、第2の入力端が前記第2の平滑回路の出力端に接続され、前記第1の入力端に与えられた信号と前記第2の入力端に与えられた信号の比を出力する除算回路、より構成された、
    ことを特徴とする静電容量の変化を利用した静電容量型トランスデューサに用いる信号処理回路
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