JP3568304B2 - レーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料の熱拡散率、比熱及びビオー数等の熱定数を高精度で決定することのできるレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザフラッシュ法は均質材料の熱拡散率及び比熱の解析方法として、近年急速に普及してきた方法であり、レーザフラッシュを使用しない定常法等の方法に較べて測定試料が少量でよく、比較的広い温度範囲にわたり高精度の測定値が得られるところに特徴を有している。
【0003】
以下、このようなレーザフラッシュを用いた熱定数の解析法の原理について説明する。
1次元の物質内部に熱流がある場合、一次元座標上の位置xにおける温度Tの時間tの変化は、一次元熱伝導方程式δT/δt=α・(δ2 T/δx2 )により記述される。
なお、この式中に含まれる熱拡散率αはα=k/(Cp ・ρ)=k/cで定義され、k、Cp 、ρ、cはそれぞれ試料の熱伝導率、定圧比熱、密度、単位体積当たりの熱容量(以下比熱cという)である。
そして、前記一次元熱伝導方程式はその初期条件、及び境界条件を設定することにより理論解を正確に求めることができる。
このため、レーザフラッシュ法による熱拡散率の一般的な解析方法は、測定試料裏面温度の実測温度応答E(t)と、前記一次元熱伝導方程式の解である理論温度応答とを一致させるように一次元熱伝導方程式中の各熱定数の値を設定して、この値を熱定数とするものである。
一次元熱伝導方程式の解である理論温度応答Tは、多層材料中の一層における未知数である熱拡散率α、比熱c、及び熱損失に関わるパラメータであるビオー数h、試料に照射するレーザフラッシュの波形Q(t)を設定することにより、時間tを用いたT=F(h、c、α、t)の形式の理論温度応答式によって厳密に表される。従って、時間tを除く3つの変数α、c、hをそれぞれ確定すると、それに応じて理論温度応答Tが定まるようになっている。
なお、単層材料の場合にはT=F(α、h、t)となって簡略化される。
しかし、前記理論温度応答F(α、c、h、t)を実測温度応答E(t)のパターンに合致させる条件で、前記の未知数α、c、hを確定する際には、理論温度応答の式中に三角関数、指数関数を含む陰関数等が含まれ、実際の数値計算は極めて困難となる。
このため、一般的には特定の変数について近似値を設定して、計算に使用するデータの範囲を特定の領域内に限定する等により計算を簡略化する方法が取られている。
現在、このようなレーザフラッシュを用いて試料裏面温度の実測温度応答から熱定数を特定する方法として、以下に示すような(1)半価値到達時間t1/2 法、(2)面積法、及び(3)比較法等が知られている。以下にこれらの方法の特徴を示す。
【0004】
(1)半価値到達時間t1/2 法
半価値到達時間t1/2 とは、材料の裏面における実測温度応答のデータ曲線上でレーザフラッシュの照射時刻から最高上昇温度Tm の半分の値に温度が上昇するまでに要する時間である。
この半価値到達時間t1/2 法を用いて、熱損失がないと仮定した時に成立するα′=1.36975L2 /(π2 ・t1/2 )式により熱拡散率α′を計算する。ここで、Lは測定試料の厚みである。
ついで、該減衰曲線の緩和係数k(減衰曲線の時定数τの逆数)と前記半価値到達時間t1/2 との積により、熱損失補正係数Kを求め、該熱損失補正係数Kに前記半価値到達時間t1/2 法による熱拡散率α′をかけて補正された熱拡散率α(=K・α′)を求める方法である。
【0005】
(2)面積法
実測温度応答のデータ上の特定領域での平均温度と、理論式から求められる平均温度との偏差Rを最小とするように、熱拡散率αを設定する方法である。
即ち、最高上昇温度Tm 、減衰曲線部での時定数τ、及びビオー数hを用いて熱拡散率αを関係付けると共に、また、前記理論温度応答と実測温度応答との偏差Rを最小とする条件式により、熱拡散率αを計算する方法である。
【0006】
(3)比較法
一定量のレーザフラッシュを測定対象とする試料と熱定数が既知の基準試料とにそれぞれ照射して、測定試料裏面側の温度上昇値ΔTを測定して、これを比較することにより該測定試料の高温下における比熱を算出する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したレーザフラッシュ法における熱拡散率及び比熱の解析方法では、単層材料を対象としているため、多層材料の一層中における未知の熱拡散率又は比熱を求めることは困難となる。
これを以下詳細に説明する。図2に示すようにレーザフラッシュの強度分布を時間tの関数としてQ(t)のように表記し、該レーザフラッシュを多層材料の表面側から照射することにより、裏面側におけるその実測温度応答E(t)が得られる。
図3はn枚からなる多層材料の断面図であり、第i層における熱拡散率α、比熱c及び多層材料の表面と裏面におけるビオー数hが未知数であり、その層の厚み及び残りの層についての全ての熱特性値及び厚みが既知であるとする。
レーザフラッシュ法は均質材料の熱拡散率及び比熱の解析方法として、近年急速に普及してきた方法であり、レーザフラッシュを使用しない他の方法に較べて測定試料が少量でよく、広い温度範囲まで高精度の測定値が得られるところに特徴がある。
【0008】
そして、このようなレーザフラッシュが照射された裏面側の理論温度応答Tは、T=F(α、c、h、t)として厳密に表記され、多層材料中の熱特性値であるα、c、hの具体的な数値を与えることにより理論温度応答Tと実測温度応答Eとの偏差等を計算することができる。
また、前記理論温度応答Tと実測温度応答Eとの偏差が小さいほど理論温度応答Tと実測温度応答Eとの適合度が高く、このとき設定されるα、c、hの値の精度は高くなる。
即ち、図2に示すF(α、c、h、t)よりもF(α′、c′、h′、t′)の方が実測温度応答E(t)との偏差が大きく、従って実際の熱定数に対して(α、c、h)の方が(α′、c′、h′)よりも精度の高い熱定数の組み合わせとなる。
しかし、実際には多層材料における理論温度応答T=F(α、c、h、t)の式が複雑となるために、このような偏差の最小値を数学的解析手段で厳密に求めることは極めて困難となる。
【0009】
また、前記(3)の温度上昇値ΔTを測定することにより測定試料の比熱を算出する比較法では、以下の(イ)〜(ハ)に示すような問題点がある。
(イ)レーザフラッシュのパルスエネルギーを常時一定とすることが困難であるために、これに依存する測定データの精度が小さくなる。
(ロ)試料のレーザフラッシュ吸収率が測定温度に応じて変化し、また、吸収エネルギーを上げるための塗布材が高温で変質するため、室温と、高温とで吸収エネルギーを一定とすることが困難であり測定温度範囲に限界がある。
(ハ)予め基準となる試料が必要であり、測定精度が基準試料の熱定数の値により左右される。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、高精度でかつ効率的に多層材料中の一層における未知の熱拡散率、比熱等の熱定数を決定することができ、しかも測定の環境条件等に影響されることの少ないレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法は、熱拡散率及び比熱が未知の一層を含む多層材料に、その表面側からレーザフラッシュを照射して、そのときに得られる裏面側の実測温度応答と、該熱拡散率、該比熱、及び該ビオー数を変数として含み前記多層材料の熱伝導方程式の解を示す理論式から求まる理論温度応答との偏差を比較し、該熱拡散率、該比熱、及び該ビオー数を求めるレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法において、
前記熱拡散率、前記比熱、及び前記ビオー数のそれぞれを予め考えられる初期値に設定すると共に、前記熱拡散率、前記比熱、及び前記ビオー数の中のいずれか1つの前記初期値の近傍に複数の候補値を設定して、該候補値のそれぞれについて理論温度応答を計算し、該理論温度応答からそれぞれの前記候補値に対応する理論時定数をラプラス変換された前記理論式でラプラス変数pが微小として得られる近似式の分母部分を更にラプラス変数pの平方根に関する3次多項式で近似した際の1次項係数a 1 及び3次項係数a 3 の比a 3 /a 1 より求め、前記実測温度応答から求められる実測時定数と該理論時定数との差の絶対値を最小とする候補値により前記いずれか1つの熱定数の値を更新する。
ここで、予め設定される熱定数の値とは、前記未知の一層について文献値等の常識的な値を基にして求められるような近似値をいう。
【0012】
請求項2記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法は、請求項1記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法において、前記熱定数の値の近傍に設定される候補値が、該熱定数を含む理論温度応答と実測温度応答とで定められる2乗偏差を計算して、該2乗偏差とこれに対応する熱定数との関係式を用いて該2乗偏差を減少させるように設定される。
【0013】
請求項3記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法は、請求項1記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法において、前記熱定数の値の近傍に設定される候補値が、ビオー数であり、任意に設定したビオー数を含む理論温度応答と実測温度応答とにそれぞれ対応する理論時定数と実測時定数との絶対値の差を複数求めて、該複数の絶対値の差とこれに対応するビオー数との関係式を求め、該関係式における時定数の絶対値の差を0とするビオー数の値に設定される。
【0014】
【0015】
ここで、理論温度応答と実測温度応答との偏差としては、両者の差の2乗の総和である順2乗偏差、各々の逆数の差の総和をとった逆2乗偏差、それぞれの対数の差の総和をとった対数2乗偏差、及びそれらの組合わせからなる偏差等について適用することができる。
また、それぞれの実測温度応答のデータ、及び理論温度応答のデータにラプラス変換を施して演算処理を行うか、もしくはそのまま使用して演算を行うこともできる。
それぞれの候補値に対応する理論温度応答から求められる理論時定数τthとは、時間tを変数とする理論温度応答F(α、c、h、t)又は、そのラプラス変換形であるラプラス変数pを変数とする理論温度応答G(α、c、h、p)における最大値を越えた以降の減衰曲線部を、それぞれ指数関数exp(−kt)、又は該指数関数exp(−kt)のラプラス変換形である1/(p+k)に近似させたときに、定数k(=1/τth)の逆数によって定められる値である。
また、試料裏面側の実測温度応答から求められる実測時定数τexとは、実測温度応答E(t)の減衰曲線部を指数関数exp(−kt)で近似し、そのとき得られる定数k(=1/τex)の値により定められる。
従って、前記時定数τは、実測温度応答E(t)又は理論温度応答F(α、c、h、t)のデータを温度tを対数目盛とする片対数方眼紙上にプロットして、そのデータを直線で近似し、その直線の傾きからkを求めることができる。また前記直線の設定に最小2乗法等を適用して、図によらず数値計算により直線の傾きkを求めることも可能である。
【0016】
【作用】
請求項1〜3記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法においては、熱拡散率、比熱、及びビオー数からなる熱定数のそれぞれを予め考えられる初期値に設定すると共に、いずれか1つの熱定数の値の近傍に複数の候補値を設定する。
このような複数の候補値の設定に際しては、熱拡散率、比熱、及びビオー数の3変数間に規定される関数関係に従って、又はこれ等の関係に制約されることなく設定することが可能である。このため、状況に応じて複雑となる計算手順を省略したり、高精度を要する場合には候補値の設定範囲を規定したりして柔軟に対応することができる。
そして、前記候補値のそれぞれについて理論温度応答を計算し、該理論温度応答からそれぞれの候補値に対応する理論時定数を求めるので、それぞれの理論時定数の値に基づいて、候補値を含む理論温度応答の妥当性について、簡略化された評価を行うことができる。
次に、実測温度応答から求められる実測時定数と前記理論時定数との差の絶対値を最小とする候補値により前記いずれか1つの熱定数の値を更新する。このように実測時定数と理論時定数との差の絶対値を評価して熱定数の更新を行うので、ビオー数、比熱、及び熱拡散率からなる熱定数の真値を効率的に得ることができる。
【0017】
特に、請求項2記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法においては、熱定数の候補値を設定するに際して、まず熱定数を含む理論温度応答と実測温度応答とで定められる2乗偏差を計算する。
これにより、熱定数と2乗偏差との関係を俯瞰することができ、該2乗偏差とこれに対応する熱定数との関係式を設定して、この関係式を用いて熱定数の候補値が設定されるので、かけ離れた熱定数の候補値が設定されることがなく、計算の効率が向上すると共に、計算誤差を適正範囲内に限定させることができる。
また、前記実測温度応答にはラプラス変換されたデータを用いるので、以降における計算処理を単純化することができる。
さらに、理論温度応答には時間の関数で表記された理論式をラプラス変換して得られる理論式を用いるので、時間の関数である理論解を厳密に求める必要がなく、ラプラス変換されたデータに基づいて数値処理を効率的に行うことができる。
【0018】
請求項3記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法においては、まず、任意に設定したビオー数を含む理論温度応答と実測温度応答とにそれぞれ対応する理論時定数と実測時定数との絶対値の差を複数求めるので、理論時定数と実測時定数との差を指標として候補値の設定が可能となる。
そして、該複数の時定数の絶対値の差とこれに対応するビオー数との関係式を求め、該関係式における時定数の絶対値の差を0とするビオー数の値にビオー数が設定されるので、機械的かつ効率的にビオー数の候補値を設定することができる。
【0019】
【0020】
【発明の効果】
従って、請求項1〜3記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法においては、熱拡散率α、比熱c、ビオー数hを設定して得られる理論時定数と実測時定数との絶対値の差を比較して未知の熱定数を逐次更新し、漸近的に実際の実測温度応答と一致する熱定数の組み合わせを高精度で決定することができる。
さらに、実測温度応答の絶対値を必要とせず、相対的な実測温度応答の測定データに基づいて多層材料中の未知の熱定数を求めることができる。
又、未知のビオー数、比熱及び熱拡散率の真値を単純な繰り返し計算手段の構成により求めることができ、コンピュータによる演算処理を効率的に行える。
更に、計算処理を単純化することができると共に、時間の関数である理論解を厳密に確定する必要がなく、ラプラス変換されたデータに基づいて数値処理を効率的に行うことができるので、繰り返し計算に伴う誤差の蓄積を最小限度内に留めることができる。
【0021】
特に、請求項2記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法においては、計算の効率が向上すると共に、計算誤差を適正範囲内に限定させることができる。
また、請求項3記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法においては、理論時定数と実測時定数との絶対値の差を評価指標とするビオー数の候補値の設定を可能とし、熱定数の候補値を機械的な手順で設定することができ、候補値の設定に伴う計算誤差を少なくできる。
【0022】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに図1は本発明の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を適用する熱定数測定装置の構成図、図2は同レーザフラッシュ法を用いる熱定数の解析方法の説明図、図3は多層材料を用いるレーザフラッシュ法の説明図、図4は本発明の第1の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図、図5は本発明の第2の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図、図6は同レーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図、図7は同レーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図、図8は本発明の第3の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図、図9は3層からなる多層材料中の未知層の厚みを変化させた場合における時定数法の計算誤差を示す図である。
【0023】
まず、図1に示す本発明の一実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を適用する熱拡散率、比熱、及びビオー数等の熱定数の測定装置について説明する。
熱定数測定装置10はレーザフラッシュを多層材料からなる測定試料11に照射して、その試料裏面の実測温度応答のデータを基にして、該多層材料中に含まれる一層における未知の熱定数を測定する装置である。
レーザフラッシュ発生装置12は必要により任意波形のレーザフラッシュの発生が可能であり、測定試料11の物性値の範囲及び熱定数の解析方法に応じて特殊な波形を選択することで計算を簡略化したり、特定領域での測定精度を向上させることもできるようになっている。試料裏面の実測温度応答は放射温度計、又は熱電対等を用いた測温装置13により測定される。
【0024】
前記測定試料11に照射するレーザフラッシュの波形信号は該測定試料11と前記レーザフラッシュ発生装置12との間に設けられたハーフミラー14を経由してレーザフラッシュ検出装置15に取り込まれるようになっている。
このような測定試料11において、レーザフラッシュの吸収率が小さい場合には、測定試料11の表面に吸収率の高い材料(カーボンスプレイ等の材料)を予め塗布して測定することも可能である。
【0025】
そして前記測温装置13及びレーザフラッシュ検出装置15からの信号データをコンピュータ16に取り込み、該信号データを基にして熱拡散率、比熱、及びビオー数等の熱定数を決定する演算処理を行う。次いで、このデータ及び演算結果をコンピュータ16に接続する出力装置17に表示できるように全体が構成されている。
【0026】
レーザフラッシュ法を用いて多層材料からなる測定試料11の熱拡散率又は比熱等の熱特性を解析するために、まず測定試料11にレーザフラッシュ(波形をQ・f(t)により表示)が照射されたときに得られる温度応答の理論解を求める手順を説明する。
ここでQはレーザフラッシュの全エネルギーであり、f(t)はレーザフラッシュの波形を表す関数であり、全時間領域における積分値を1として規格化したようなパルスに時間的な巾のある関数を用いるが、測定試料11の温度応答が遅い場合には前記f(t)に換えてデルタ関数δ(t)のように時間巾を無視できるパルス波を適用することもできる。
この解析はラプラス変換により変換して得られるラプラス空間上で行って、温度応答の理論解を以下のようにして求めることが可能である。
【0027】
最初に、測定試料11における多層材料がn層からなるものとして第i層における熱拡散率αi 、定圧比熱Cpi、密度ρi 、及び厚みΔLi を定める。従って、熱伝導率ki はki =αi ・Cpi・ρi で表される。
また、試料表面から第i層と第(i+1)層との境界までの厚みLi はLi =ΔL1 +ΔL2 +・・・+ΔLi となる。
多層材料の第i層における熱伝導方程式はδTi (x,t)/δt=αi ・δ2 Ti (x,t)/δx2 によって表記され、初期条件はTi (x,0)=0で、また境界条件はTi (Li ,t)=Ti+1 (Li ,t)、及びki ・δTi (Li ,t)/δx=ki+1 ・δTi+1 (Li ,t)/δxによってそれぞれ示される。
これらにラプラス変換を施すことにより、前記の熱伝導方程式はδ2 Ti (x,p)/δx2 =(p/αi )・Ti (x,p)として、また、境界条件はTi (Li ,p)=Ti+1 (Li ,p)、及びki ・δTi (Li ,p)/δx=ki+1 ・δTi+1 (Li ,p)/δxとしてそれぞれラプラス変数pの関数で与えられる。
そして、同様の操作を第1層から最終の第n 層に至るまで順次適用することにより、全多層材料についてのラプラス変換された熱伝導方程式の集合が得られる。
【0028】
以上のようにして、第i層における熱伝導方程式の一般解は、Ti (x,p)=Ai exp(ri ・x)+Bi exp(−ri ・x)で与えられる。
但し、exp( )は指数関数を表し、Ai 、Bi は積分定数である。なお、ri はp/αi の平方根(以下平方根をri =sqrt(p/αi )のように関数sqrt( )の形式で表記する)で定義される値である。
そして、第i層と第(i+1)層の境界条件より、第i層の熱伝導方程式の積分定数Ai 、Bi と第(i+1)層の温度式の積分定数Ai+1 、Bi+1 の関係を求めて数式1を得ることができる。
ここでGi,i+1 は数式2で表される行列となって、第1層における温度の係数と第n層における温度の係数は数式3で表されるような関係にある。
表面及び裏面における入熱、放熱の条件を用いて同様の解析を行い最終的に第n層における理論温度応答、即ち試料裏面温度Tn は数式4で与えられる(但し、ビオー数の表面側での値h0 と裏面側での値h1 は等しいものと仮定する。h=h0 =h1 )。
【0029】
【数1】
【0030】
以下、試料裏面における理論温度応答を与える基本式である前記の数式4を基礎式として、理論温度応答を算出する。
次に、理論温度応答と実測温度応答とから設定される2乗偏差Rについて、熱拡散率α、比熱c、及びビオー数hに関する偏微分式をゼロとおいて方程式を設定して、該方程式を満足する熱拡散率α、比熱c、及びビオー数hを求める。
熱特性不明層の熱拡散率α、比熱c又はビオー数hのいずれかを変数xと表し、Δx=−(δR/δx)/(δ2 R/δx2 )を求め、xnew =x+Δxにより、xを更新する。
この手順を繰り返すことにより、最終的に所定の誤差範囲内でδR/δx=0を満たすx、即ち熱拡散率α、比熱c、及びビオー数hを求めることができる。
【0031】
上述したように各層の理論温度応答には熱拡散率α及び単位体積当たりの熱容量(ρ・Cp )が現れる。ここで、直接的に求められるものは、この2つの熱物性値(α,c)とその積である熱伝導率κであり、密度ρが既知であれば定圧比熱Cp も求められることになる。
但し、解析上は熱物性不明層の密度ρを定数、定圧比熱Cp を変数として取り扱い、計算終了後この定圧比熱に密度を乗じて単位体積当たりの熱容量を求めることも可能である。
本数値解析法においては、(1)1次元の熱伝導方程式が成立し、(2)試料の表裏面におけるビオー数はそれぞれ等しい、(3)第i層以外の全ての熱物性値及び全ての層厚みは既知であるとする前提条件の下で計算を行うものとする。
【0032】
図3に示すような多層材料の場合には未知変数として熱物性不明層の(1)熱拡散率α、(2)比熱c、(3)ビオー数hの3変数が未知数である。
ここで、必要に応じてh、α、及びcの間に成立する関係式により1変数を減らして、かつ理論温度応答と実測温度応答との偏差を最小にする条件によりこの3変数(α、c、h)を定めることも可能である。
【0033】
まず、単層材料に本解析法を適用した場合について以下に示す。
時定数τの計算に際して、厚みがLである場合に、特性時間t0 をt0 =L2 /(π2 ・α0 )として定義すると、mを定数として、t>m・t0 を満足する時間領域tにおいては、単層材料の理論温度応答である数式5の第2項以降(n≧1)は初項に比較して無視できるほど小さくなる。
このため、T(L,t)/Tm =A0 exp(−a0 ・t)∫exp(a0 ・t′)f(t′)dt′式により裏面温度の理論解を近似することができる。
ここで、A0 =2β0 2 /(β0 2 +2h+h2 )、a0 =β0 2 ・α/L2 である。
【0034】
【数2】
【0035】
このため、温度応答におけるデータの対数を時間に対してプロットしその傾きから時定数τを求めることができる。
この時定数τとa0 の逆数が対応するので、τ=1/a0 =L2 /(β0 2 ・α)である。
【0036】
単層材料の場合には、固有値βn についてのtan (βn )=2h・βn /(βn 2 −h2 )式よりビオー数hをβ0 の関数として求め、hの値として正のものを選ぶことによりh0 =β0 ・(1/sin β0 −1/tan β0 )の関係式を得ることができる。
即ち、ビオー数hは熱拡散率αと時定数τの関数として上記のように表記することができ、全体としてはh=g(α,τ)としてビオー数hを設定することが可能となる。
【0037】
なお、多層材料の場合には、多層材料の中の任意の1層に含まれる未知の熱定数を、以下に示す直接法と時定数法によって測定することができる。
直接法とは、求める3つの変数(熱拡散率α、比熱c、ビオー数h)を直接的に設定して理論温度応答と実測温度応答との2乗偏差Rを最小とするような(α、c、h)の最適解に到達する方法である。
時定数法とは、レーザフラッシュ照射後試料の前記した特性時間t0 に対して充分時間が経過した後における時定数τ、即ち温度応答曲線の減衰部分を時間tを変数とする指数関数exp(−t/τ)で近似することにより時定数τを算出して、その時定数τと熱物性値不明層の熱物性値が特定の関係にあることを利用して変数を減らすことにより熱定数を確定する方法である。
【0038】
ここで、偏差としては、下式に定義されるような(イ)順2乗偏差、(ロ)順2乗偏差、(ハ)逆2乗偏差、(ニ)逆2乗偏差、(ホ)対数2乗偏差等の各偏差Rを状況に応じて適宜採用することができる。
(イ)R=Σ(Q・Tj −Ej )2 ・・・・(1)
(ロ)R′=(ΣEj 2 )・(ΣTj 2 )−(ΣEj ・Tj )2 ・・・・(2)(ハ)R=Σ{(1/(Q・Tj ))−(1/Ej )}2 ・・・・(3)(ニ)R′=(Σ1/Ej 2 )・(Σ1/Tj 2 )−{Σ1/(Ej ・Tj )}2 ・・・・(4)
(ホ)R=Σ{LN(Q・Tj )−LN(Ej )}2 ・・・・(5)なお、LN( )は自然対数を表す。
【0039】
ここでQは多層材料に照射するレーザフラッシュの試料に吸収された全エネルギーである。
そして、上記の(イ)〜(ホ)の各偏差Rについて計算を行う場合、以下のようなそれぞれの特徴を有している。
(イ)2乗偏差の一般的な定義である。
δR/δQ=0により求まるQを式(1)に代入してQを消去したものを偏差として使用する。
(ロ)一般的な偏差である式(1)を用いてδR/δQ=0により求まるQを式(1)に代入し、その分子部分を零とおくことにより得られる偏差であり、(イ)に比較して計算式が簡単になる利点がある。
(ハ)理論温度の分母に変数が集中しているため、逆数にすることにより計算式が簡単となる。
δR/δQ=0により求まるQを式(3)に代入してQを消去したものを偏差として使用する。
(ニ)式(3)を用いてδR/δQ=0より求まるQを式(3)に代入し、その分子部分を零とおくことにより得られる偏差であり、(ハ)に比較して計算式が簡単となる利点がある。
(ホ)対数形式の2乗偏差とすることにより極小値が容易に判定できる。
δR/δQ=0により求まるQを式(5)に代入してQを消去したものを偏差として使用する。
なお、式(1)〜式(5)においてラプラス変換を採用する場合には、ラプラス変数pを複数個設定し、その複数個設定したpに対して実測温度応答のデータをラプラス変換することにより、対応するEj を求め、これらを式(1)〜式(5)に対して適用するものとする。
【0040】
続いて本発明の第1の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法について詳しく説明する。
なお、以下の説明には前記の熱定数測定装置10、及び測定原理の一部を適用すると共に、図4に示すフロー図(I)に基づいて説明する。
【0041】
まず、図4のステップS−1において、多層材料中の一層における未知数であるビオー数h、比熱c、及び熱拡散率αを文献値を参考にする等して、それぞれの初期値(h、c、α)を設定する。
ここで、初期値として設定される各熱定数には一般的に知られている材料の熱定数値を用いることができ、必ずしも厳密な値でなくても良い。しかし、真値に近い熱定数を設定した方がより少ない処理回数でその真値に到達することになる。次のステップS−2において、読み込まれた実測温度応答E(t)のデータに基づいて実測時定数τexを計算する。
この実測時定数τexの算出は、実測温度応答E(t)を例えば温度目盛りを対数尺とする片対数方眼紙図上にプロットして、このプロットされた実測温度応答曲線の減衰部である直線部分を指数関数exp(−kt)で近似して、その直線の傾きk=1/τexを求めることにより行う。
【0042】
そして、その時点で設定されている比熱cの近傍に複数個の例えば4個の候補値c1 、c2 、c3 、c4 を設定する(ステップS−3)。
このような候補値は、着目する比熱cを中心としてその絶対値の一定比率内に、例えばc±5%となる領域に等間隔に配置することができる。
又、2回目以降の設定においては、各比熱に対して計算した2乗偏差の値に応じて以下の(1)、(2)に示すように設定する。
(1)2乗偏差を最小とする候補値が、前回までの候補値群における最大値又は最小値において、2乗偏差の最小値が得られた場合には、縦軸を2乗偏差、横軸を比熱とする二次元座標上において、2乗偏差最小値を与えた比熱の候補値cmin と、例えばそれに隣接する候補値cnextとを結ぶ直線を2乗偏差が0となるように外挿して、その点の比熱の座標値を新たな候補値とする。
なお、ここで前回までの候補値群とこれに対応する2乗偏差についての関係を二次式又は指数関数等の一般的な関数で近似して、該関数の各係数を最小2乗法により確定して、この関数を用いて設定される範囲に候補値を設定するようなことも可能である。
(2)前回までの候補値群について、その候補値群における最大と最小の値を除く前回候補値において、2乗偏差の最小値が得られた場合には、2乗偏差の最小値を与えた比熱cmin と、それに隣接した比熱の候補値cmin+1 、cmin-1 との範囲に、例えば中間位置にそれぞれ新たな2つの候補値(cmin +cmin+1 )/2、(cmin +cmin-1 )/2を設定することができる。
【0043】
次に、前記候補値c1 、c2 、c3 、c4 のそれぞれについて、ステップS−4〜6の演算処理を繰り返して熱拡散率、及びビオー数の更新を行う。
以下では前記候補値(c1 、c2 、c3 、c4 )の代表例であるci を処理する場合について説明する。
ステップS−4においては、2乗偏差Rを基にして熱拡散率αの更新値であるα′を算出する。
【0044】
ここで、2乗偏差Rとは、理論温度応答F(h、c、α、t)と、実測温度応答E(t)とを所定の時間間隔における差の2乗について総和を取ったものであり、次式で表される。
R=Σ{F(h、c、α、t)−E(t)}2
即ち、基準とする時刻t0 から測定対象とする時刻t1 までの間を適当な時間間隔で等分して、その各時刻tにそれぞれ対応する理論温度応答と実測温度応答との値の偏差を求めると共に、それぞれの2乗の総和を求めて、これを2乗偏差Ri =R(h、ci 、α)とすることができる。
なお、このような偏差には前述したように必要に応じて逆2乗偏差、対数2乗偏差等とすることもでき、さらにはこれらをラプラス変換したものを用いても良い。
次に、前記2乗偏差Ri の関数を用いて熱拡散率αの更新値α′を以下のように定義する。
α′=α+Δα
Δα=−(δR/δα)/(δ2 R/δα2 )
但し、δR/δα、及び(δ2 R/δα2 )は、それぞれαの値における2乗偏差Rの1階微分値、及び2階微分の値であり、α′はニュートン法における第1回目の更新値に相当する。
【0045】
ステップS−5においては、前記のようにして設定した比熱ci 、及び熱拡散率α′を用いると共に、理論時定数τthを計算して、ビオー数hの更新値h′を得る操作を行う。
ここで、この更新手順の説明に入る前に、理論時定数τthの算出原理について詳細に説明しておく。
【0046】
多層材料の場合には、試料裏面温度の理論解に三角関数の陰関数等が含まれるため解析的に求めるのが難しく、理論時定数τthを時間空間の理論式として与えることが困難である。
このため、理論温度応答の時間tを変数とする関数をラプラス変換して、ラプラス空間上の理論解を用いて理論時定数τthを計算する必要がある。
ラプラス変換理論によれば、試料裏面温度T(Ln ,p)の時間空間t→∞に相当する領域における値は、p・T(Ln ,p)式のラプラス変数pが微小となる領域、即ちp→0となる領域においてほぼ等しくなる。
なお、Ln は試料厚みである。
従って、特性時間t0 より充分に大きい時間領域(t>t0 )における試料裏面温度のラプラス空間における近似解は、F=p・T(Ln ,p)に小さいpを代入することにより与えられる。
そして、F式がF≒u(p)/(p+k)の形式で近似的に得られるならば、時間領域(t>t0 )における試料裏面温度の時間空間解TはF式を逆ラプラス変換することにより、T=u(−k)・exp(−kt)の形式で与えられる。
ここで、u(p)、u(−k)は、それぞれF式、T式における1/(p+k)、exp(−kt)以外の項からなる剰余項である。
このため、T=u(−k)・exp(−kt)式から理論時定数τth=1/kを求めることが可能になる。
以下、このような考え方に基づいて理論時定数τthを求める具体的方法を単層材料を例に取って詳述する。
【0047】
単層材料のラプラス空間における試料裏面温度Tは次式(1)で与えられる。
T(L,p)=f(p)・rL3 /〔α・((r2 L2 +h2 )sinh(rL)+2hrL・cosh(rL))〕・・・・・(1)
上式にラプラス変数pを乗じて、p→0における試料裏面温度の近似形を求め、次いで、rL=sqrt(p/α)・L=xとおいて整理し、次式(2)を得る。なお、rはsqrt(p/α)であり、Lは試料厚み、sinh( )、cosh( )は双曲線関数である。
p・T(L,p)=f(p)・x3 /((x2 +h2 )sinh(x)+2hx・cosh(x))・・・・・(2)
ここで、前記双曲線関数sinh(x)、cosh(x)の部分は、xが1に較べて充分小さい領域即ち、x<1において、これをテイラー級数展開することが可能であり、級数展開した式の第3項までを取ることにより、以下の近似式(3)、(4)が成立する。
sinh(x)≒x+x3 /3!+x5 /5!・・・・・(3)
cosh(x)≒1+x2 /2!+x4 /4!・・・・・(4)
従って、式(3)、(4)を式(2)に代入して下式(5)を得る。
p・T(L,p)=f(p)・x2 /〔(2h+h2 )+(1+h+h2 /3!)x2 〕・・・・・(5)
さらに、上式(5)の分母部分Bを取り出して、次式(6)のように変形することができる。
B=(L2 ・(1+h+h2 /3!)/α)・(p+k)・・・・・(6)
但しk=α・(2h+h2 )/(L2 ・(1+h+h2 /3!)) 従って、理論時定数τth(=1/k)はkの逆数として、次式(7)により表すことができる。
τth=L2 ・(1+h+h2 /3!)/(α・(2h+h2 ))・・(7)
【0048】
以上に示した単層材料における理論時定数τthの求め方を多層材料についても適用することができる。以下では、2層材料の場合を例に取ってさらに詳細に説明する。
まず、n=2である2層からなる試料裏面の理論温度応答の式を変形して数式6が得られる。式中のQはレーザフラッシュの入力エネルギーの大きさであり、a、b、c、dはそれぞれ数式3に示す行列要素に等しい値であり、γは数式4に示すものと同様の値である。ここではn=2を代入したものに相当する。
ここで、試料両面におけるビオー数は等しいものと仮定し、これを無次元化するために数式6の分母にLn 2 を乗じた後、その分母部分gを抽出することにより、数式7が得られる。
【0049】
【数3】
【0050】
ここで、ラプラス変数pが充分に小さい値を取る領域(p→0)において、数式7を下記の式(8)のように近似することができる。
g≒a0 +a1 ・sqrt(p)+a2 ・(sqrt(p))2 +a3 ・(sqrt(p))3 ・・・・・(8)
なお、式(8)における各係数a0 〜a3 は数式8〜数式11でそれぞれ示される値である。ここで、第1層と第2層における密度ρ、定圧比熱C、熱拡散率α、及び層の厚みをそれぞれρ1 、ρ2 、C1 、C2 、α1 、α2 、ΔL1 、ΔL2 で示している。
【0051】
【数4】
【0052】
これにより2層材料の理論時定数τthは式(8)の係数a1 、a3 の比により、即ちτth=a3 /a1 として与えられることになる。
以上の結果は、特性時間t0 に比較して充分長い時間が経過した時間領域では、試料温度が多層材料を構成する材料の熱定数に従った特定の時定数を持ってexp(−kt)の形で減衰することを示している。
2層以上となる一般的な多層材料についても原理的には前述した方法により解析的に時定数を求めることは可能であるが、計算が非常に煩雑となる問題がある。そこで、特性時間t0 に比較して充分長い時間が経過した後の試料裏面温度理論式の分母g(数式7)における係数a0 、a2 が省略できるものとして、簡略化した次式(9)を理論時定数τthの算出に適用する。
g=a1 ・sqrt(p)+a3 ・(sqrt(p))3 ・・・・(9)
ここで、上式(9)に基づいて、係数a1 、a3 を算出して、多層材料における理論時定数τth=a3 /a1 を求めることが可能となる。
【0053】
より具体的には、単層材料に対する半価値到達時間t1/2 法を多層材料に適用して、与えられる多層材料の熱拡散率の初期値α0 、測定試料の全厚みLを用いて、t0 =L2 /(π2 ・α0 )式によって定義される特性時間t0 を求める。
そして、t0 の逆数に対して充分小さくなるような領域において、ラプラス変数p(p<1/t0 )を複数個(p1 、p2 、・・・・)任意に設定する。
次に、前記複数個任意に設定したpの値(p1 、p2 、・・・・)に対して、数式7に与えられる理論温度分母式gをそれぞれ計算し、このときのgとsqrt(p)の値を座標位置(g,sqrt(p))とする二次元座標上にプロットする。
そして、これらプロットした点の集合に対して、式(8)、式(9)を近似させる最小2乗法を適用して、式(8)、式(9)の係数a1 、a3 を定める。
これら係数a1 、a3 の値により理論時定数τth=a3 /a1 を求めることができる。
【0054】
以下、ステップS−5の説明に戻って、理論時定数τthを求める具体的な方法について説明する。
既に設定されているビオー数h=h0 の任意の近傍位置に候補値h1 を設定する。
ここで、例えばh1 =h0 +Δhとすることにより、新たに1個の候補値を設定するが、Δhの整数倍をさらにh0 に加算していくことにより2個以上の候補値hi (=h0 +Δh・i)を設定することもできる。
なお、Δhとしては適当な微小量、例えばh0 の絶対値の5%程度の値に設定することが好ましいが、これに限定されることなく任意の値を設定することも可能である。
そして、前記(ci 、α′、h0 )、(ci 、α′、h1 )からなる熱定数の組みに対して、それぞれ理論温度応答T(ci 、α′、h0 )、T(ci 、α′、h1 )の関数を設定する。
次に、前記説明したようにそれぞれの理論温度応答Tの関数に対応する理論分母式gに基づいて式(8)、式(9)の係数a1 、a3 を求め、熱定数(ci 、α′、h0 )、(ci 、α′、h1 )にそれぞれ対応する理論時定数τth0 、τth1 を算出することができる。
【0055】
前記算出された理論時定数τth0 、τth1 について、ステップS−2で既に算出してある実測時定数τexとの絶対値の差をそれぞれとって、これをΔτ0 、Δτ1 とする。
そして、縦軸をΔτとして、横軸をビオー数hとする二次元座標上に点(Δτ0 ,h0 )、及び点(Δτ1 ,h1 )をプロットして、この二点を結ぶ直線と横軸との交点(0,h′)を求め、この横軸の座標h′をもって前記ビオー数hの更新値として、ビオー数を更新するステップS−5を終了する。
【0056】
続く、ステップS−6においては、前記ステップS−4のΔαについて、Δα/αの絶対値が所定の計算打ち切り判定値εより大きいか否かを判断する。
前記絶対値が打ち切り判定値εより、大きい場合にはステップS−4に戻って前記ステップS−4〜S−5の手順を繰り返し、小さい場合には次のステップS−7に移行する。
【0057】
ステップS−7では、前述のステップにより設定され又は更新された熱定数(h1 、c1 、α1 )〜(h4 、c4 、α4 )を基にして、それぞれに対応する2乗偏差R(h1 、c1 、α1 )〜R(h4 、c4 、α4 )を計算する。
【0058】
次のステップS−8では2乗偏差R(h1 、c1 、α1 )〜R(h4 、c4 、α4 )の値の中から最小値Rmin を選出し、この最小値Rmin を与える熱定数の組み(h、c、α)を用いて、それまでの熱定数の設定値を更新する。
ステップS−9では、前記更新前後における熱定数又は2乗偏差Rの差の相対比率を比較して所定の測定精度が得られた場合には、そこで計算を打ち切って最終ステップS−10に移行し、所定の測定精度が得られない場合にはステップS−3に戻る。
なお、前記比較対象とする熱定数又は2乗偏差には、その内のいずれか一つ、例えば比熱cを選ぶことができるし、また、複数の種類を組み合わせて用いることも可能である。
【0059】
そして、最後のステップS−10では所望の熱定数(h、c、α)の値を出力して、全手順を終了する。
【0060】
続いて本発明の第2の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を図5、図6及び図7のフロー図(II)に基づいて説明する。
まず、ステップS−1において、多層材料中の一層における未知数であるビオー数h、比熱c、及び熱拡散率αを文献値等を参考にして、それぞれの初期値h0 、c0 、α0 に設定する。
さらに、後述する最小2乗偏差Rmin の初期値としてのR0 と、最小2乗偏差Rmin とをそれぞれ適当な値に設定する。なお、最小2乗偏差Rの判定値εは、求める熱定数の精度の範囲に応じて設定される値である。
そして、次のステップS−2において、試料裏面で測定された温度データ(実測温度応答)E(t)を読み込む。
ステップS−3においては、前記読み込まれた温度データE(t)に基づいて実測時定数τexを計算する。
この実測時定数τexの算出は、実測温度応答E(t)を図上にプロットする等の手段により実測温度応答曲線の減衰部の傾きから求めることができる。
【0061】
そして、その時点で設定されている比熱cの近傍に複数個の例えば4個の候補値c1 、c2 、c3 、c4 を設定する(S−4)。
次に、前記候補値c1 、c2 、c3 、c4 について、i=1〜4からなる理論温度応答F(h、ci 、α、t)を求め、実測温度応答E(t)との2乗偏差R=Σ{F(h、ci 、α、t)−E(t)}2 をそれぞれのiについて計算する(S−5)。
即ち、基準とする時刻t0 から測定対象とする時刻t1 までの間を適当な時間間隔で等分して、その各時刻tにそれぞれ対応する理論温度応答と実測温度応答との値の偏差を求めると共に、それぞれの2乗の総和を求めて、これを2乗偏差Ri =R(h、ci 、α)とする。
この2乗偏差はラプラス空間における理論式、温度データを用いてもよい。
ステップS−6においては、前記2乗偏差R1 〜R4 の中から最小となるような2乗偏差Ri を抽出して、このような2乗偏差Ri を与えるcmin を選出する。続くステップS−7において、前記cmin の値を用いて、それまでの比熱cの値を更新する操作を行う。
【0062】
そして、図6に示すように、その時点で設定されているビオー数hの近傍に複数個の例えば4個の候補値h1 、h2 、h3 、h4 を設定する(S−8)。
次に、前記候補値h1 、h2 、h3 、h4 について、i=1〜4からなる理論温度応答F(h、ci 、α、t)の減衰する曲線部から理論時定数τth1 〜τth4 を算出する(S−9)。
即ち、例えば理論温度応答F(h、ci 、α、t)を図上にプロットして、このプロットされた理論温度応答の減衰部のパターンを基にして、ステップS−3で実測時定数τexを求めたのと同様にして理論時定数τthを算出することができる。
また、必要に応じて、理論温度応答F(h、ci 、α、t)のラプラス変換形であるG(h、ci 、α、p)を用いて、これを時間tを変数とする指数関数exp(−kt)に対応するラプラス変換形である1/(p+k)の形式に変形することによって、相当する理論時定数τth(=1/k)を求めることもできる。
次のステップS−10においては、前記求めた理論時定数τth1 〜τth4 とステップS−3で算出してある実測時定数τexとの偏差D1 〜D4 をそれぞれ計算する。
そして、前記偏差D1 〜D4 の中から最小となる偏差Di を抽出し、このような偏差Di を与えるhmin を選出する(S−11)。
ステップS−12では、前記hmin の値を用いて、それまでのビオー数hの値を更新(h=hmin )する。
【0063】
図7に示すように、ステップS−13においては、以下のようにして熱拡散率αを計算する。
まず、ステップS−4〜S−7、S−8〜S−12の手順によりそれぞれ更新された比熱c、及びビオー数hとを有し、未知数としての熱拡散率αを含む理論温度応答F(α、c、h)を設定する。
そして、次に前記理論温度応答F(α、c、h)と実測温度応答E(t)との2乗偏差Rの値を最小とするような熱拡散率αmin を算出する。
即ち、2乗偏差Rの熱拡散率αについての偏微分δR/δαが0となるようなαの値をニュートン法等を用いて求める。
【0064】
ここで偏微分δR/δαは熱拡散率αを変数とする関数f(α)で表現され、2乗偏差Rが最小となる条件はδR/δα=f(α)=0である。
従って、前記熱拡散率αmin を求める計算はf(α)=0の根を求めることに帰着する。
そして、ここで適用するニュートン法とは、方程式f(x)=0を満たす根xを、有限回の計算を繰り返して近似的に求める計算方法である。
これを説明すると、根x=αの初期値α0 を適当に設定して、関数y=f(x)上の座標点(α0 ,f(α0 ))におけるf(x)の接線と、x軸(y=0)との交点の座標(α1 ,0)を求める。
このとき、α1 は次式で示される。
α1 =α0 −f(α0 )/f′(α0 )
なお、f′(α0 )は関数y=f(x)のx=α0 における微分係数を表している。
この交点のx座標であるα1 を初期値α0 の更新値として設定し、このような更新をα1 とα0 との差Δαが所定の誤差範囲内となるまで繰り返すことにより、方程式f(x)=0を満たす根αの値に到達するものである。
【0065】
次に、前記熱拡散率αmin により熱拡散率αを更新する(ステップS−14)。このとき、それぞれ更新された熱拡散率α、比熱c、及びビオー数hの組を用いて、この時点で最小となる2乗偏差R(α、c、h)が得られる(ステップS−15)。
【0066】
ステップS−16においては、前記2乗偏差Rと既に設定してある最小2乗偏差Rmin とを比較し、2乗偏差Rが最小2乗偏差Rmin より小さい場合は、次のステップS−17で2乗偏差Rをこの時の最小2乗偏差Rmin の値で更新する。
一方、2乗偏差Rが最小2乗偏差Rmin 以上の場合には、ステップS−4に戻る。即ち、先にステップS−4〜S−7の手順で更新されている新たな比熱cの近傍に複数個のcを再度設定して、以降のステップを繰り返す。
ステップS−17において最小2乗偏差Rmin の更新を行った後、ステップS−18で、予め設定してある判定基準値εとこの時点での最小2乗偏差Rmin とを比較する。
ここで、最小2乗偏差Rmin が判定基準値εよりも小さい場合には、その最小2乗偏差Rmin を与える熱拡散率α、比熱c、及びビオー数hを所望の値として出力して(ステップS−19)、本手順を終了する。
また、最小2乗偏差Rmin が判定基準値ε以上である場合には、ステップS−4に戻って、比熱cの近傍に新たな比熱の候補値を再設定して前記手順を繰り返す。
【0067】
続いて本発明の第3の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を図8のフロー図(III )に基づいて説明する。
まず、ステップS−1において、多層材料中の一層における未知数であるビオー数h、及び比熱cを文献値等を参考にして、それぞれの初期値(h、c)を設定する。
ここで、初期値として設定される各熱定数は、一般的に知られている材料の熱特性値を用いることができ、必ずしも厳密な値でなくても良い。
次のステップS−2において、読み込まれた温度データE(t)に基づいて実測時定数τexを計算する。
この実測時定数τexの算出は、実測温度応答E(t)を例えば温度目盛りを対数尺とする片対数方眼紙図上にプロットして、このプロットされた実測温度応答曲線の減衰部である直線部分を指数関数exp(−kt)で近似して、その直線の傾きk=1/τexから求めることができる。
【0068】
そして、その時点で設定されている比熱cの近傍に複数個の例えば4個の候補値c1 、c2 、c3 、c4 を設定する(ステップS−3)。
このような候補値は、着目する比熱cを中心としてその絶対値の一定比率となる範囲に、例えばc±5%となる範囲に互いに等間隔に配置するか、又は乱数発生手段を用いて互いに不規則になるように配置することもできる。
また、ステップS−3における2回目以降の設定においては、第1の実施の形態で示したように、各比熱に対して計算される2乗偏差の大小関係を比較して、以下(1)、(2)の手順に従って設定する。
(1)初回候補値の最大値又は最小値において、2乗偏差の最小値が得られた場合には、縦軸を2乗偏差、横軸を比熱とする二次元座標上において、2乗偏差最小値を与えた比熱の候補値と、それに隣り合う候補値とを結ぶ直線を2乗偏差の値が0となるように外挿してその点の比熱を新たな候補値とする。
(2)初回候補値群の両端の値を除く初回候補値において、2乗偏差の最小値が得られた場合には、2乗偏差の最小値を与えた比熱の候補値と、その両隣りに設定した比熱の候補値との中間にそれぞれ新たな候補値を設定することができる。
【0069】
次に、前記候補値c1 、c2 、c3 、c4 のそれぞれについて、ステップS−4、S−5の演算処理を行って熱拡散率、及びビオー数の更新を行う。
以下では前記候補値c1 、c2 、c3 、c4 の代表例であるci を処理する場合について説明する。
【0070】
ステップS−4においては、各比熱ci に対応して定まる2乗偏差Ri について、各2乗偏差Ri を最小とする熱拡散率αi を求める。
まず、基準とする時刻t0 から測定対象とする時刻t1 までの間を適当な時間間隔で等分して、その各時刻tにそれぞれ対応する理論温度応答と実測温度応答との値の偏差をそれぞれ計算する。次に、それぞれの2乗の総和を求めて、これを下式のように2乗偏差Ri =R(h、ci 、α)とすることができる。
Ri =Σ{F(h、ci 、α、t)−E(t)}2
そして、ビオー数h、及び比熱ci は固定値であり、熱拡散率αを未知数とみなして、未知数αを含む前記2乗偏差Ri の関数を用いて2乗偏差Ri の値が最小となるような熱拡散率αi をニュートン法により求める。
この2乗偏差としてはラプラス空間における理論式、及び温度データを用いてもよい。
【0071】
ステップS−5においては、前記のようにして設定した比熱ci 、及び熱拡散率αi を用いると共に、理論時定数τexを計算して、ビオー数hの更新値hi を得る。
そして、既に設定されているビオー数h=h0 の近傍にそれぞれ候補値h1 を設定する。ここで、例えばh1 =h0 +Δhとすることにより新たに1個の候補値を設定する。
Δhとしては適当な微小量、例えばh0 の絶対値の5%程度の値に設定することができる。
前記(ci 、αi 、h0 )、(ci 、αi 、h1 )からなる熱定数の組みに対して、それぞれ理論温度応答T(ci 、αi 、h0 )、T(ci 、αi 、h1 )の関数を設定する。
次に、前記説明したようにそれぞれの理論温度応答Tの関数に対応する理論分母式gに基づいて前記式(8)の係数a1 、a3 を求め、熱定数(ci 、αi 、h0 )、(ci 、αi 、h1 )にそれぞれ対応する理論時定数τth0 、τth1 を算出することができる。
【0072】
前記算出された理論時定数τth0 、τth1 について、ステップS−2で既に算出してある実測時定数τexとの差をそれぞれとって、これをΔτ0 、Δτ1 とする。
そして、縦軸をΔτとして、横軸をビオー数hとする二次元座標上に点(Δτ0 ,h0 )、及び点(Δτ1 ,h1 )をプロットして、この二点を結ぶ直線と横軸との交点(0,h′)を求め、このh′をもって前記ビオー数の更新値として、新たにビオー数hi とする。
以上の手順により、比熱ci 、熱拡散率αi 、ビオー数hi の組み(i=1〜4)が設定される。
【0073】
ステップS−6では、前述のステップにより設定され又は更新された熱定数の組(h1 、c1 、α1 )〜(h4 、c4 、α4 )を基にして、それぞれに対応する2乗偏差R(h1 、c1 、α1 )〜R(h4 、c4 、α4 )を計算する。
【0074】
次のステップS−7では2乗偏差R(h1 、c1 、α1 )〜R(h4 、c4 、α4 )の値の中から最小となるRmin を選出し、この最小2乗偏差Rmin を与える熱定数の組み(h、c、α)を用いて、それまでの熱定数の設定値を更新する。ステップS−8では、前記更新前後における熱定数又は2乗偏差Rの差の相対比率を比較して所定の比率以下となったときに、そこで計算を打ち切って最終ステップS−9に移行し、所定の測定精度が得られない場合にはステップS−3に戻る。
なお、前記比較の対象とする熱定数又は2乗偏差には、その内のいずれか一つ、例えば比熱cのみを選ぶことができるし、また、複数の熱定数又は2乗偏差を組み合わせて繰り返し演算の打ち切り判定に用いることも可能である。
【0075】
そして、最後のステップS−9では所望の熱定数(h、c、α)の値を出力して、以上で第3の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法の全手順を終了する。
【0076】
図9は前記第1〜第3の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を適用して求めた計算の結果を示している。
ここで、3層からなる多層材料の全体厚みL3 を一定として、未知層である中間層の厚みΔL2 を変化させた場合における計算誤差(error)の大きさの変化を示している。
なお、記号(○、□、△)はそれぞれ熱拡散率α、比熱c(=ρC)、及びビオー数hに対応するデータを示し、また、黒塗りの記号(●、■、▲)はレーザフラッシュに波形に巾のある一般的な関数f(t)を、白抜きの記号(○、□、△)はレーザフラッシュに巾のないパルス波であるデルタ関数δ(t)をそれぞれ適用して入力したときの計算の結果に対応する。
同図から多層材料の熱物性値不明層の熱拡散率、比熱を精度よく解析できることが分かり、またこの熱拡散率と比熱とを乗じて得られる熱伝導率を同時に求められることが分かる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、本実施の形態においては、理論温度応答のデータをラプラス変換して処理する場合について説明したが、通常の時間空間において処理してもよい。
また、本発明に適用する理論温度応答と実測温度応答との2乗偏差には、必要に応じて特徴の異なる順2乗偏差、逆2乗偏差、及び対数2乗偏差等を採用することができる。
更に、理論温度応答と実測温度応答との偏差の式中に含まれる未知数である熱拡散率α、比熱c、及びビオー数hの3つの変数は数学的にはいずれも同等の関係にある変数であるため、前記実施の形態で説明したような関係式中で各変数を任意に交換した関係式を使用する場合も同様に本発明の権利範囲内であるとみなす。
また、変数として熱拡散率、比熱、ビオー数を用いたがこれらの組み合わせにより構成される新たな他の変数の組み合わせによる場合も同様に本発明の権利範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法を適用する熱定数測定装置の構成図である。
【図2】同レーザフラッシュ法を用いる熱定数の解析方法の説明図である。
【図3】多層材料を用いるレーザフラッシュ法の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図である。
【図6】同レーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図である。
【図7】同レーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法のフロー図である。
【図9】3層からなる多層材料中の未知層の厚みを変化させた場合における時定数法のの計算誤差を示す図である。
【符号の説明】
10 熱定数測定装置 11 測定試料
12 レーザフラッシュ発生装置 13 測温装置
14 ハーフミラー 15 レーザフラッシュ検出装置
16 コンピュータ 17 出力装置
Claims (3)
- 熱拡散率及び比熱が未知の一層を含む多層材料に、その表面側からレーザフラッシュを照射して、そのときに得られる裏面側の実測温度応答と、該熱拡散率、該比熱、及び該ビオー数を変数として含み前記多層材料の熱伝導方程式の解を示す理論式から求まる理論温度応答との偏差を比較し、該熱拡散率、該比熱、及び該ビオー数を求めるレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法において、
前記熱拡散率、前記比熱、及び前記ビオー数のそれぞれを予め考えられる初期値に設定すると共に、前記熱拡散率、前記比熱、及び前記ビオー数の中のいずれか1つの前記初期値の近傍に複数の候補値を設定して、該候補値のそれぞれについて理論温度応答を計算し、該理論温度応答からそれぞれの前記候補値に対応する理論時定数をラプラス変換された前記理論式でラプラス変数pが微小として得られる近似式の分母部分を更にラプラス変数pの平方根に関する3次多項式で近似した際の1次項係数a 1 及び3次項係数a 3 の比a 3 /a 1 より求め、前記実測温度応答から求められる実測時定数と該理論時定数との差の絶対値を最小とする候補値により前記いずれか1つの熱定数の値を更新することを特徴とするレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法。 - 前記熱定数の値の近傍に設定される候補値が、該熱定数を含む理論温度応答と実測温度応答とで定められる2乗偏差を計算して、該2乗偏差とこれに対応する熱定数との関係式を用いて該2乗偏差を減少させるように設定されることを特徴とする請求項1記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法。
- 前記熱定数の値の近傍に設定される候補値が、ビオー数であり、任意に設定したビオー数を含む理論温度応答と実測温度応答とにそれぞれ対応する理論時定数と実測時定数との絶対値の差を複数求めて、該複数の絶対値の差とこれに対応するビオー数との関係式を求め、該関係式における時定数の絶対値の差を0とするビオー数の値に設定されることを特徴とする請求項1記載のレーザフラッシュ法を用いた熱定数の解析方法。
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