JP3567102B2 - 給電方法およびフェーズドアレーアンテナ - Google Patents

給電方法およびフェーズドアレーアンテナ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナに関し、特に、アンテナ開口面の位相分布を制御する給電方法、およびこれを用いた給電回路を有するフェーズドアレーアンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナは、給電点(給電を行うマトリクス回路のポート)の位置に対応してビーム方向が変化することから給電点切換走査型のフェーズドアレーアンテナと呼ばれている。
【0003】
一般的に走査の細かさ(個々のビーム間隔)はビーム幅程度となり、信号を入力するポートを適当に選択することにより幾つかのマルチビームを発生させることが可能という特徴を有している。[文献:電子通信学会「アンテナ工学ハンドブック」、5章、オーム社 参照]
図8はNポートの1次元マトリクス回路を用いた直接放射型のフェーズドアレーアンテナを説明する図である。同図において数字符号6は入力信号、7はマトリクス回路、8は素子アンテナ、1〜5はビームの方向を示している。入力信号6は、所望するビーム方向に応じて入力位置(この場合はポート1〜ポートNのいずれか1つ)を選択して入力する。
【0004】
同図のマトリクス回路7としてはバトラーマトリクス等が用いられる。また、1、2、3はそれぞれポート1、ポート2、ポート3から信号が給電された場合のビーム方向であり、4、5はそれぞれポートi、ポートNから信号が給電された場合のビーム方向を示している。
【0005】
マトリクス回路7に入力された信号はマトリクス回路の中で分配され、ポート毎に異なる位相差をもって出力される。信号を入力するポート位置によって、出力側で生じる位相の傾きが異なるため、給電を行うマトリクス回路のポート位置に応じてビーム方向が変化する。
【0006】
一般に給電点から入力された電力はマトリクス回路によって等分配されるため、開口面励振分布は一様分布となり、このままの振幅強度で素子アンテナ(放射素子)を励振したのではサイドローブ特性が悪い。また、給電点切換走査型アンテナのビーム数、およびビーム方向は給電点の数(マトリクス回路のポート数)で制約を受ける。これらを同時に解決するものとして、マトリクス回路の3つ以上のポートに信号を同相(同じ位相)で給電するアンテナが提案されている。[文献:吉良他、「良好なパターン特性を有するマルチビームマトリクス型アンテナの一構成法」、1998電子情報通信学会ソサイエティ大会、B−1−70,p.70 参照]
図9はこれを説明するものである。同図において、数字符号6は入力信号、9は可変電力分配回路(ビーム方向に応じて信号電力の分配比を操作する。信号位相は全て同相である。)、7はマトリクス回路、8は素子アンテナを示している。入力信号6は、可変電力分配回路9で分配されて3つ以上のポートに同相で給電される。
【0007】
それぞれのポートに給電される信号電力は、積分値が1(面積が1)になるように規格化された実数係数のガウス関数A exp[−BX]を給電信号の電力密度分布として、定積分を実行することにより求める。図10はこれを説明するものである。係数Aはガウス関数の積分値を1とするための規格化係数であり、係数Bはガウス関数の広がりを規定するパラメータである。
【0008】
このアンテナの原理は以下の考えに基づいている。
【0009】
マトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナが給電を行うポートの位置に応じてビーム方向が変化するのは、入力信号がマトリクス回路で分配されると同時に給電を行うポートの位置によってそれぞれの出力ポートにおける信号の位相が回転し、位相面に傾きを生じるためである。これは原理上、フーリェ変換を行っていると考えることができる。
【0010】
xを変数としたガウス関数a exp(−bx)のフーリェ変換は、同じくガウス関数の形c exp(−dx)になる。a,b,c,dは係数である。つまり、入力信号をガウス関数の振幅分布でマトリクス回路に給電した場合、出力信号における振幅分布もガウス関数となる。なお、信号の電力は振幅の平方根に比例するので振幅分布がガウス関数で表わされる場合、電力分布もまたガウス関数である。開口面の振幅分布にガウス関数型のテーパが付くことによりサイドローブ特性が改善される。
【0011】
また、フーリェ変換の性質から、入力信号の分布形状をそのままに、給電位置(給電ポートの位置)をずらした場合、出力信号位相面の傾きが一定値だけ変化するのみであり、開口面の振幅分布自体は変化しない。すなわち、ビームパターン(開口面の振幅分布)をそのままにビーム方向のみを連続的に変化させることが可能である。この性質はフーリェ変換における時間軸の推移と呼ばれるものである。
【0012】
図11は従来技術のアンテナパターン計算結果である。アンテナは素子間隔0.68波長の16素子直線アレー(マトリクス回路のポート数N=16)である。
【0013】
前記電力密度分布A exp[−BX]において、変数Xを1ポート分のビーム幅を単位とした場合(変数XでNポートマトリクス回路の幅を表わすとNとなる)、係数Bは4.0であり、このときの規格化係数Aは1.13である。なお、この場合のアンテナ開口の振幅分布のエッジテーパ(両端の素子の中央の素子に対する励振振幅比)は−10.7dBである。
【0014】
同図において数字符号13,14,15はそれぞれビーム方向−13.2°、−14.6°、−16.0°のビームパターンである。なお、図11において、数字符号13は前記電力密度分布のピーク位置がポート11の位置にある場合のものであり、数字符号15は電力密度分布のピーク位置がポート11とポート12の中間に位置している場合のものを示している。またこの時に、給電に用いているポート数は4つである。
【0015】
即ち、図11において、数字符号13と数字符号15は、図10に示すような電力密度分布は同一であるが、4つの給電ポートに供給する電力比が異なる場合を示している。この図11の示すことは、4つのポートに供給する電力比を変化させた場合においても、ビームパターンがほぼ同じで、ビーム方向の異なる放射パターンが得られるということである。
【0016】
直線アレーアンテナまたは平面アレーアンテナにおいては開口面の理想的な位相分布は歪の無い直線又は平面であるが、実際のアンテナでは熱変形や製造のバラツキによってアンテナ開口に歪みが生じる。図12はこれを説明する図あり、これはアンテナ開口面の励振分布に位相誤差として現れる。即ち、素子アンテナ8よりなる歪んだアンテナ面41と理想的なアンテナ面40が0.2波長分の幅であれば72°の位相差が生じる。図13はアンテナ開口両端で+72°の2次位相歪が存在する場合において、先に示した条件(図11と同じ給電条件)で従来技術アンテナパターンを計算した結果16,17,18である。72°の位相歪みはアンテナ開口が1/5波長だけ歪んでいることに相当しており、15GHzのアンテナでは1波長2cmであることから4mmの歪みに相当する。このようなわずかな値であってもアンテナパターンは大きく変化してしまうことが分かる。メインローブは第一サイドローブと区別がつかなくなり、利得も纔ながら劣化している。
【0017】
このことを避ける為には構造的にアンテナの剛性を高めるアプローチと、電気的アプローチとして素子アンテナとマトリクス回路の間に位相器を入れて位相歪みを補正する等の手段が考えられる。しかし、構造的にアンテナの剛性を高める方法では限界があると同時にアンテナ重量の増加を伴う。また、位相器等を用いて素子アンテナの位相を直接調整する方法では、アンテナ構成が複雑になるだけでなく素子アンテナの数に応じて大量に必要となる位相器の調整に大きな手間が必要となる。
【0018】
また、反射鏡とアレーとを組合せた場合には、反射鏡に対してアレーから球面波に近い電波を放射する為に、素子アンテナを曲面上に配置したり、位相器を設置する等して意図的に位相面に2次の分布を与えることも行われる。[文献:小林他、「マイクロ波FFT回路をビーム形成回路網に用いた衛星搭載用マルチビームアンテナの放射特性の検討」、1997宇宙科学技術連合講演会97−13−6、参照]この場合もアンテナ構成が複雑になるという問題がある。
【0019】
以上の議論では1次元の直線アレーについて述べてきたが、関数がx,yの2変数(マトリクス回路が2次元)となってもフーリェ変換は各変数について独立に行われるので、1変数の問題に帰着し、同様の議論が成立する。つまり、関数a exp[−bx]、e exp[−fy]のフーリェ変換がそれぞれc exp[−dx]、g exp[−hy]である場合、2次元のマトリクス回路において入力信号の横方向分布をa exp[−bx]、縦方向分布をe exp[−fy]とすれば、出力の横方向分布、縦方向分布はそれぞれc exp[−dx]、g exp[−hy]であり、アンテナが形成するビームパターンについても横方向、縦方向について1次元の場合に帰着される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来のアンテナではアンテナに歪みが存在する場合に、アンテナパターンが大きく変化してしまう。これをアンテナの剛性を高める等の方法によって解決する場合にはアンテナ重量の増加を招く。また、位相器等を用いてアンテナの歪みより生じる位相歪を補正する方法ではアンテナ構成が複雑になるだけでなく位相器の調整に大きな手間が必要になるという問題があった。また、反射鏡とアレーとを組合せた場合などで、意図的にアレーの位相面に2次の分布を与える場合においても同様にアンテナ構成が複雑になるという課題があった。
【0021】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、小規模な制御回路で、アンテナ開口面の励振分布(マトリクス回路の出力)の位相分布に、任意の大きさの2次成分を付与することが可能であり、アンテナに歪みが存在する場合でも、位相補償を行い良好なアンテナパターンを得ることが可能となる給電方法およびフェーズドアレーアンテナを提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナの給電方法において、前記マトリクス回路の出力における中心位相を給電ポートの位置に依らず一定とし、前記マトリクス回路の給電ポート(i,j)に給電した時のビーム方向を(θ,φ)、所望ビーム方向を(θ,φ)とするとき、sin[θ]−sin[θ]およびsin[φ]−sin[φ]を変数xとする複素係数c(ただし、cは開口面励振分布の振幅のエッジテーパを規定するパラメータaおよび位相分布の2次の成分を規定するパラメータbよりなる複素係数である。)のガウス関数K| exp [−(x/c) /2]/c| の定積分(Kは規格化定数)により求めた給電を行うポートの電力分布と、関数 exp [−(x/c) /2]/c| exp [−(x/c) /2]/c|の定積分の偏角より求めた給電を行うポートの位相分布に従って、前記マトリクス回路の3つ以上の給電ポートに信号を分配するか、もしくは、前記マトリクス回路の3つ以上の給電ポートから信号を合成することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、前記給電方法において、給電ポート(i,j)の、iもしくはjのいずれか一方についてのみ3つ以上の給電ポートを用いて給電することを特徴とする。
【0024】
たとえば、マトリクス回路が横方向Nポート、縦方向Mポートから成る2次元的なマトリクス回路の場合、給電ポート(i,j)(i=1,2,3,…,N)(j=1,2,3,…,M)のi(またはj)についてのみ3つ以上の給電ポートを用いて本発明を適用した場合は横方向(または縦方向)のみのアンテナ特性の改善を図るものである。また、N=1またはM=1の場合は1次元の直線アレーアンテナとなる。
【0025】
また本発明は、給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナであって、請求項1又は2記載の給電方法によって、信号を分配、もしくは合成する給電回路を具備することを特徴とするものである。
【0026】
先に説明したように、従来のアンテナでは開口面の位相分布を調整する際、位相器等を用いて個々の素子アンテナの位相を直接調整していた。
【0027】
本発明マトリクス回路のポート(i,j)からのみ給電した場合のビーム方向を(θ,φ)、所望ビーム方向を(θ,φ)とするとき、送信信号(または受信信号)を、sin[θ]−sin[θ]およびsin[φ]−sin[φ]を変数とする複素数係数のガウス関数により求められる電力密度分布と位相分布に従って、マストクス回路の3つ以上の複数ポートに信号を分配(または複数ポートから信号を合成)する給電回路を有することを最も主要な特徴とする。
【0028】
マトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナが給電を行うポートの位置に応じてビーム方向が変化するのは、入力信号がマトリクス回路で分配されると同時に給電を行うポートの位置によってそれぞれの出力ポートにおける信号の位相が回転し、位相面に傾きを生じるためである。これは原理上、フーリェ変換を行っていると考えることができる。
【0029】
開口面振幅分布をxを変数としたガウス関数 exp[−(ax)/2]とし、これに2次の位相分布 exp[−Ibx]を与えた場合(Iは虚数単位、I=−1)、
この開口面励振分布は exp[−(a+Ib)x/2]となり、
+Ib=cとすることにより複素係数のガウス関数 exp[−(cx)/2]
として表わすことができる。
【0030】
この関数のフーリェ変換は、同じく複素係数のガウス関数形 exp[−(x/c)/2]/cになる。
【0031】
この関数より給電を行う各々のポートへの電力および位相を算出し、給電することにより、開口面に2次の位相分布を与えることが可能になる。
【0032】
具体的には、前記関数 exp[−(x/c)/2]/cの絶対値を自乗することにより求められる電力密度分布K| exp[−(x/c)/2]/c|の定積分(Kは規格化定数)により、給電を行うポートの電力分布を求め、同様に電力密度で重み付けした関数exp [−(x/c)/2]/c|exp [−(x/c)/2]/c|の定積分の偏角より、給電を行うポートの位相分布を求める。
【0033】
以上のことから、本発明アンテナの給電回路によりマトリクス回路に給電された信号はアンテナ開口の位相分布において2次成分を有することになる。また、位相分布の2次成分の大きさは複素係数c=Sqrt[a+Ib]の定数bの値によって様々な値を採ることが可能である。なお、複素係数c=Sqrt[a+Ib]の定数aはアンテナ開口の振幅分布(エッジテーパの強さ)を規定するパラメータである。
【0034】
なお、信号給電に用いる複数ポートは給電電力が大きなものから優先的に用いることとする。これら選択されたポートに対応するビーム方向は互いに隣接したものとなり、マトリクス回路の個々のポート単独で給電した場合のビーム方向がポート位置に対応して順番に並んでいる場合、信号給電に用いる複数ポートは、隣接した複数ポートとなる。
【0035】
フーリェ変換の性質上、開口面励振分布で得ようとする振幅分布のエッジテーパが深くなる程、給電信号の電力密度分布は広くする(定数aを大きくする)必要がある。また、位相分布の2次成分を大きく(定数bを大きくする)する場合も給電信号の電力密度分布は広がる傾向がある。これはガウス関数の複素係数c=Sqrt[a+Ib]の値が大きくなることからも理解できる。
【0036】
しかし、開口面励振分布に比較的深いエッジテーパを設けた場合においても、要求される電力密度分布の広がりは小さなものである。(例えば開口面励振分布のエッジテーパを−20dBとした場合においても、3ポート分の幅があれば最大で約99.8%までカバーすることが可能である。)
また、位相分布に2次成分をもたせる場合においても、アンテナ開口の歪みを補正することによる給電信号の広がりは大きくない。(例えば開口面励振分布のエッジテーパを−20dB、位相歪の2次成分をアンテナ開口両端で+72°とした場合、位相歪を補正することによる給電信号の電力密度分布の広がりは約7%である。)
なお、これまでの議論は基本的にマトリクス回路規模に依存しない。よって本発明技術を用いた場合はマトリクス回路規模が大きな場合(アレーアンテナの規模が大きな場合)でも、1ビームにつき、マトリクス回路における1次元方向あたりの信号給電に3ないし4ポートを用いることにより、開口面に2次の位相分布を与えることが可能になり、アンテナの歪み等によって生じるパターン劣化を補正することが可能になる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態例を詳細に説明する。
【0038】
以下にNポートのマトリクス回路であるNポートのバトラーマトリクスを用いた直接放射型の(1次元)直線アレーアンテナを例にとり、本発明を説明する。図1〜図3は本発明の、実施形態例1〜3を説明する図である。これらの図において、数字符号19は入力信号、20はマトリクス回路、21は素子アンテナ、22はビーム方向に応じて信号電力(p)と信号位相(φ)を操作するNポート可変電力分配/位相制御回路、23はM×Nポート電力分配/位相調整回路、24は電力合成器を表わしている。
【0039】
図1は、マトリクス回路20と、信号を任意の電力比に分割して個々の位相を制御してからマトリクス回路に供給する、Nポート可変電力分配/位相調整回路22とを組み合わせたものである。図3はk個のマルチビームを想定したものであり、k個のNポート可変電力分配/位相制御回路22を電力合成器(PC)24を介してマトリクス回路20に接続した構成となっている。図2は連続的なビーム走査を必要としない場合において、可変電力分配器の代わりに、予め幾つかの電力分配比/位相調整値が設定されたM×Nポート電力分配/位相調整回路23を用いるものである。入力信号19はビーム方向に応じて入力位置を選択する。
【0040】
なお、広範囲のビーム走査を必要としない場合などは、必ずしもマトリクス回路20のNポート全てに信号給電する必要は無いので、使用しないポートは終端しておけば良い。また、上記のマトリクス給電回路(Nポート可変電力分配/位相制御回路22、M×Nポート電力分配/位相調整回路23)はDSP等のデジタル回路を用いれば比較的容易に実現可能である。
【0041】
次に、素子アンテナ21の配置を距離dλの等間隔配置とし、マトリクス回路20の各ポートへ給電する電力密度分布を求める。マトリクス回路20の出力における隣接ポートの位相差は、入力ポートの位置によって(−(N−1)/N) 180°〜(+(N−1)/N)180°まで、(2/N) 180°刻みでN通りの値を取り得る。これらに対応する入力ポートを出力位相差が小さい順にポート1,ポート2,…,ポートNとする。一般に素子アンテナ21の指向特性はアレーアンテナ全体の指向特性と比較して非常にブロードなものとなるので、ビーム方向を求めるにあたって素子アンテナ21の指向特性の影響は殆ど考えなくて良い。以上のことから、給電を行うポート位置iに対応するビーム方向θはマトリクス回路の出力位相差より
θ=sin−1[−(2i−N−1)/2Nd]と表される。
【0042】
よって、sin[θ]=−(2i−N−1)/2Ndである。ここで、所望とするビーム方向をθとするとき、マトリクス回路20の各ポートへの励振分布は以下の関数を用いて求められる。なお、変数xを求めるに際し、Nポート分の幅をFFT(高速フーリエ変換)の幅sqrt[2πN]に対応させる為にsin[θ]−sin[θ]に係数d sqrt [2πN]を掛けている。
【0043】
Figure 0003567102
ここで複素係数cはc=a+Ibという関係式で書き表わすことができaは開口面励振分布の振幅のエッジテーパを規定するパラメータであり、bは位相分布の2次の成分を規定するパラメータである。
【0044】
これより、給電部における個々のポートの電力は上記関数 exp[−(x/c)/2]/cの絶対値を自乗した関数K| exp[−(x/c)/2]/c|の定積分(Kは規格化定数)により求められ、位相については同様に、電力密度で重み付けした関数 exp[−(x/c)/2]/c| exp[−(x/c)/2]/c|の定積分の偏角として求められる。図4は複素係数のガウス関数 exp[−(x/c)/2]/cとマトリクス回路の各ポートへ給電する電力についての関係を示したものである。図4において、複素係数cはc=a+2Ibという関係式で書き表わすことができ、aはアンテナ開口面の振幅分布を規定するパラメータであり、bはアンテナ開口面の位相分布の2次成分を規定するパラメータである。ポートiの給電位相φは、同様に電力密度で重み付けした関数
【0045】
【数1】
Figure 0003567102
【0046】
の定積分の偏角より求められる。
【0047】
図5及び図6は、振幅のエッジテーパを規定するパラメータaを固定し、位相分布の2次成分を規定するパラメータbを変化させた場合における、アンテナ開口面の振幅分布、位相分布をそれぞれ示したものである。なお、マトリクス回路20のポート数Nは16とした。図5の数字符号25,26,27,28,29はパラメータbの値をそれぞれを0,0.25,0.5,0.75,0.1とした場合の振幅分布を示しており、図6の数字符号25′,26′,27′,28′,29′はパラメータbの値をそれぞれを0,0.25,0.5,0.75,0.1とした場合の位相分布を示している。個々のbの値に対応する位相分布の2次成分の大きさはアンテナ開口の両端でそれぞれ0°,36°,72°,108°,144°である。パラメータaの値はsqrt[π/N]であり、これに対応する開口面のエッジテーパの値は−21.4dBである。
【0048】
図5及び図6より、本発明手法を用いればアンテナ開口面の振幅分布はそのままに位相分布に2次の成分を付与することが可能であることがわかる。
【0049】
図7はアンテナ開口両端で+72°の2次位相歪が存在する場合において、信号を上記の電力/位相分布に従って給電した場合のアンテナパターン計算結果である。アンテナは素子間隔0.68波長の16素子直線アレー(N=16)であり、同図において数字符号30,31,32はそれぞれビーム方向を−13.2°,−14.6°,−16.0°としたビームパターンを示している。このときのパラメータaの値はsqrt[π/(2N)]であり、これに対応する開口面のエッジテーパの値は−10.7dBである。なお、給電に用いているポートの数は4個である。
【0050】
従来技術を用いてこれと同条件(素子間隔0.68波長の16素子直線アレー、開口両端で+72°の2次位相歪、開口面のエッジテーパの値は−10.7dB)でアンテナパターンを計算した場合は図13に示したようにアンテナパターンが大きく変形していたが、本発明のアンテナパターンでは開口面位相の2次歪成分がうまく相殺されており、図11に示したアンテナ開口面に位相歪が存在しない理想的な場合のアンテナパターンと概ね同じものが得られていることが理解される。実際、開口面における位相歪成分(2次成分)の分散値は89%〜96%が解消されている。なお、3個あるいは5個のポートを用いて給電を行った場合の値はそれぞれ4%〜91%、88%〜97%であり、この計算においては4個のビームポートを用いればビーム走査時でも良好な歪補償効果がえられることが分かる。
【0051】
ちなみに横方向Nポート、縦方向Mポートの(2次元の)マトリクス回路20を用いた平面アレーアンテナの場合、各ポートへ給電する電力密度分布は以下のようになる。
【0052】
なお、素子アンテナ21の配置は横、縦方向とも距離dλの等間隔配置とし、給電を行うポート位置(i,j)に対応するビーム方向を(θ,φ)とする。
【0053】
所望とするビーム方向を(θ,φ)とした場合、横方向の励振分布を表わす関数は
Figure 0003567102
と表わすことができ、縦方向の励振分布を表わす関数は
Figure 0003567102
である。よって、信号が従う励振分布はそれぞれの方向における励振分布から、fg exp[−{(x/c)+(y/h)/2}]/(ch)とあらわされる。ここでc,hは開口面励振分布を規定する複素係数であり、f,gは横方向および縦方向の励振分布の大きさを規定する係数である。
【0054】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナの給電方法において、前記マトリクス回路の出力における中心位相を給電ポートの位置に依らず一定とし、前記マトリクス回路の給電ポート(i,j)に給電した時のビーム方向を(θ ,φ )、所望ビーム方向を(θ ,φ )とするとき、sin[θ ]−sin[θ ]およびsin[φ ]−sin[φ ]を変数xとする複素係数c(ただし、cは開口面励振分布の振幅のエッジテーパを規定するパラメータaおよび位相分布の2次の成分を規定するパラメータbよりなる複素係数である。)のガウス関数K| exp [−(x/c) /2]/c| の定積分(Kは規格化定数)により求めた給電を行うポートの電力分布と、関数 exp [−(x/c) /2]/c| exp [−(x/c) /2]/c|の定積分の偏角より求めた給電を行うポートの位相分布に従って、前記マトリクス回路の3つ以上の給電ポートに信号を分配するか、もしくは、前記マトリクス回路の3つ以上の給電ポートから信号を合成することにより、アンテナ開口面の励振分布(マトリクス回路の出力)の位相分布に、任意の大きさの2次成分を付与することが可能であり、アンテナに歪みが存在する場合でも、位相補償を行い良好なアンテナパターンを得ることが可能となる。これは小規模な制御回路で実現可能であり、従来技術のように数多く存在する素子アンテナの位相を直接制御する必要も無いので装置の調整が簡単になると同時にアンテナ構成の複雑化やアンテナ重量の増大を小さく抑えることが可能であり低コスト化につながる。また、反射鏡とアレーとを組合せた場合などでも、曲面上にアレーを配置したり、素子アンテナの位相を位相器等で直接制御すること無く、小規模な制御回路でアレーの位相面に2次の分布を与えることが可能である。
【0055】
また、マトリクス回路における1次元方向あたりの信号分配(または信号合成)を3ないし4とした場合は、マトリクス回路に接続した信号分配回路(信号合成回路)の規模を小さくすることが可能になり、低コスト化につながる。また、信号分配(信号合成)が少なくて良いことから、信号分配回路(信号合成回路)内の干渉や損失が小さくなり、アンテナ性能が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態例1を示す構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態例2を示す構成説明図である。
【図3】本発明の実施形態例3を示す構成説明図である。
【図4】本発明の実施形態例に係る給電信号分布を説明する特性図である。
【図5】本発明の実施形態例に係るアンテナ開口面の振幅分布を示す特性図である。
【図6】本発明の実施形態例に係るアンテナ開口面の位相分布を示す特性図である。
【図7】本発明の実施形態例に係るアンテナパターンを説明する特性図である。
【図8】従来のフェーズドアレーアンテナの給電方法の一例を示す構成説明図である。
【図9】従来のフェーズドアレーアンテナの給電方法の他の例を示す構成説明図である。
【図10】従来のフェーズドアレーアンテナの分配電力を説明する図である。
【図11】従来のフェーズドアレーアンテナのアンテナパターンを説明する特性図である。
【図12】従来のフェーズドアレーアンテナの歪により生じる位相誤差を説明する図である。
【図13】従来のフェーズドアレーアンテナのアンテナパターンを説明する特性図である。
【符号の説明】
1 マトリクス回路のポート1から給電した場合のビーム方向
2 マトリクス回路のポート2から給電した場合のビーム方向
3 マトリクス回路のポート3から給電した場合のビーム方向
4 マトリクス回路のポート4から給電した場合のビーム方向
5 マトリクス回路のポート5から給電した場合のビーム方向
6 入力信号
7 マトリクス回路
8 素子アンテナ
9 可変電力分配回路
10 ポートi−1への給電信号
11 ポートiへの給電信号
12 ポートi+1への給電信号
13〜15 アンテナパターンの計算結果
16〜18 アンテナパターンの計算結果
19 入力信号
20 マトリクス回路
21 素子アンテナ
22 Nポート可変電力分配/位相制御回路
23 N×Mポート電力分配/位相調整回路
24 電力合成器
25〜29 開口面振幅分布の計算結果
25′〜29′ 開口面位相分布の計算結果
30〜32 アンテナパターンの計算結果

Claims (3)

  1. 給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナの給電方法において、
    前記マトリクス回路の出力における中心位相を給電ポートの位置に依らず一定とし、
    前記マトリクス回路の給電ポート(i,j)に給電した時のビーム方向を(θ,φ)、所望ビーム方向を(θ,φ)とするとき、
    sin[θ]−sin[θ]およびsin[φ]−sin[φ]を変数xとする複素係数c(ただし、cは開口面励振分布の振幅のエッジテーパを規定するパラメータaおよび位相分布の2次の成分を規定するパラメータbよりなる複素係数である。)のガウス関数K| exp [−(x/c) /2]/c| の定積分(Kは規格化定数)により求めた給電を行うポートの電力分布と、関数 exp [−(x/c) /2]/c| exp [−(x/c) /2]/c|の定積分の偏角より求めた給電を行うポートの位相分布に従って、前記マトリクス回路の3つ以上の給電ポートに信号を分配するか、
    もしくは、前記マトリクス回路の3つ以上の給電ポートから信号を合成することを特徴とする給電方法。
  2. 請求項1記載の給電方法において、給電ポート(i,j)の、iもしくはjのいずれか一方についてのみ3つ以上の給電ポートを用いて給電することを特徴とする給電方法。
  3. 給電ポートの位置によってビーム方向が決定されるマトリクス回路を用いたフェーズドアレーアンテナであって、請求項1又は2記載の給電方法によって、信号を分配、もしくは合成する給電回路を具備することを特徴とするフェーズドアレーアンテナ。
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