JP3567026B2 - ポリプロピレン2軸延伸ブローボトルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、ポリプロピレンの2軸延伸ブローボトルの製造方法に関し、さらに詳しくは、コールドパリソン方式により延伸ブロー成形された透明性、光沢、落体強度、肉厚の均一性などに優れたポリプロピレン2軸延伸ブローボトルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
延伸ブロー成形は、熱可塑性樹脂からプリフォーム(パリソン)をつくり、ガラス転移点以上、融点以下の温度で、所定の金型内で圧縮空気を吹き込み、膨張延伸してボトルなどの容器を製造する方式である。延伸ブロー成形により得られた延伸ブローボトルは、一般に、未延伸物と比較して、延伸配向により強度、剛性、バリヤー性、平滑性、透明性などが向上する。プリフォームの成形には、射出成形法や押出パイプ法などがある。射出成形法は、直接金型に溶融樹脂を射出し、有底パリソンをつくる方式であり、ホットパリソン法では、固化した有底パリソンを連続的に加熱、延伸し、他方、コールドパリソン法では、有底パリソンを成形した後、別の独立したブロー成型工程で、再加熱、延伸する。押出パイプ法では、押出成形で得たパイプを冷却後、一定長さに切断し、融点近くの延伸温度に再加熱して加熱パリソンを作成し、次いで、金型内でブロー成形する。
【0003】
延伸ブロー成形によって、ポリプロピレン(PP)2軸延伸ブローボトルを製造することは、公知の技術である。PP2軸延伸ブロー方式としては、(1)ハーキュレス社のインライン方式に代表されるパイプ押出方式、(2)日精ASB社の方式に代表されるホットパリソン方式などが知られている。しかしながら、PPは、球晶が生成しやすく、2軸延伸ブロー成形によっても、高品質で透明性に優れたPP2軸延伸ブローボトルを得ることは困難であった。
すなわち、(1)のパイプ押出方式は、押出パイプを延伸温度調整後切断し、あるいは切断後温調加熱してブローする方式であるが、パリソンの最適処理温度を厳密にコントロールするのが複雑かつ困難であり、しかも透明性の点で満足のできるPP2軸延伸ブローボトルを得ることができなかった。(2)のホットパリソン方式は、インジェクションブロー方式とも呼ばれ、射出によりプリフォームを成形し、ターレットを回転させて、次の工程で温調後、ブロー成形する方式であるが、延伸の際に必要とされるプリフォームの最適処理温度を厳密に保持することが困難であり、製品を高度の品質に到達させるのが難しい。
【0004】
従来、PP2軸延伸ブローボトルの改良法について、幾つかの提案がなされている。例えば、特公平4−3727号公報には、エチレン含有量1〜6重量%かつメルトフローインデックス(MFI)4〜50g/10分のプロピレン−エチレンランダム共重合体を用いて、射出成形により有底パリソンを成形し、次いで予備ブロー、延伸温度調整後、延伸ブローすることにより、透明性に優れ、偏肉のないブロー成形容器を製造する方法が提案されている。この方法は、具体的には、日精ASB社のブロー成形機を用いたホットパリソン方式である。そして、この方法によれば、透明性に優れたブロー容器が得られるとされているが、本発明者の検討結果によれば、延伸倍率(縦1.8倍、横1.2倍)が低いこともあって、透明性及び強度の点でいまだ十分ではなく、偏肉も大きいという問題がある。
【0005】
特開昭59−41344号公報には、プロピレン含有率50〜85モル%、好ましくは60〜80モル%で、示差走査熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量が10〜80J/gのプロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体を用いた2軸延伸中空成形体が提案されている。この2軸延伸中空成形体は、ホットパリソン方式により製造されている。しかし、このPP2軸延伸中空成形体は、加熱温度100℃での体積収縮率が40%以上の低温収縮性を示すものであって、剛性や耐熱性などが要求される分野には不適当なものであり、透明性も十分ではない。
【0006】
最近、PP2軸延伸ブローボトルの製造方法として、ベクム社のリヒート・コールドパリソン方式(Bekum Reheat Cold Parison Process)が提案されている。この方式は、射出成形により形成した有底パリソンを貯蔵所から取り出して、ブロー成型工程の前に再加熱する方式において、再加熱処理法を改良することにより、短時間でコールドパリソンを均一に最適処理温度にまで加熱する点に特徴を有する。具体的に、この方式では、▲1▼射出成形で作った部分的に結晶状の合成樹脂からなる有底コールドパリソンを保持芯金上に置き、コンベアチェーンで搬送しながら回転させ、▲2▼先ず、温度等化区間に沿って移動させ、次に、▲3▼加熱/冷却部に沿って移動させて、加熱と冷却を交互に行い、パリソンの外面が過熱するのを防ぎつつ、その温度をブロー成形に適した温度にまで上昇させ、更に、▲4▼実質的に閉じられた空間内の熱気にさらし、パリソンの横断面全体にわたって温度を完全に均等化させる(特開平6−63940号公報)。
【0007】
このコールドパリソン方式によれば、PPからなるコールドパリソンを、過熱を伴わずに、ブロー成形に適した温度にまで短時間で上昇させることができる。しかしながら、本発明者の検討結果によれば、PP2軸延伸ブローボトルの材料として一般に使用されているコポリマー含有量が1〜6重量%のPPランダム・コポリマーを用いた場合、この方式によっても、十分な透明性や強度などが得られないことが判明した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリプロピレンのコールドパリソンから、2軸延伸ブロー成形により、高度の透明性と光沢を有し、強度や肉厚の均一性などにも優れた2軸延伸ブローボトルの製造方法を提供することにある。
前記したとおり、ベクム社のリヒート・コールドパリソン方式によれば、PPコールドパリソンを、外面の過熱を伴わずに、ブロー成形に適した温度にまで短時間で均一に上昇させることができ、延伸倍率も高くとることができる。しかしながら、この方式によっても、通常使用されているコポリマー含有量1〜6重量%のPPランダム・コポリマーを用いた場合には、透明性が高度に優れたPP2軸延伸ブローボトルを得ることができない。また、光沢や強度、肉厚の均一性なども十分に満足するものが得られ難い。
【0009】
そこで、本発明者は、鋭意研究した結果、PPのコールドパリソンを2軸延伸ブロー成形するPP2軸延伸ブローボトルの製造方法において、PPとして、メルトフローインデックスが5〜30g/10分で、コモノマーの含有量が6重量%超過、15重量%以下のPPランダム・コポリマーを使用し、かつ、縦横に合計で8倍以上に2軸延伸することにより、従来では得られなかった高度の透明性と光沢を有し、強度が高く、偏肉のないPP2軸延伸ブローボトルの得られることを見いだした。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
本発明によれば、ポリプロピレンのコールドパリソンを2軸延伸ブロー成形するポリプロピレン2軸延伸ブローボトルの製造方法において、ポリプロピレンとして、メルトフローインデックスが5〜30g/10分で、エチレンまたは1−ブテン含有量が6重量%超過、15重量%以下のプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーまたはプロピレンと1−ブテンとのランダム・コポリマーを用いて有底コールドパリソンを形成し、次いで、該有底コールドパリソンを、加熱と冷却を交互に行って延伸温度にまで均一に再加熱した後、縦横に合計で8倍以上に2軸延伸することにより、 ボトル胴部の光沢度(60°)が縦方向及び横方向共に90%以上である2軸延伸ブローボトルを得ることを特徴とするポリプロピレン2軸延伸ブローボトルの製造方法が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するPPは、ポリプロピレンとα−オレフィンとのランダム・コポリマーであって、コモノマーのα−オレフィンの含有量が6重量%超過、15重量%以下のPPランダム・コポリマーである。α−オレフィンとしては、透明性の観点から、エチレン及び1−ブテンが用いられる。
本発明で使用するPPランダム・コポリマーにおけるコモノマーの含有量は、6重量%超過、15重量%以下であることが必要であり、好ましくは7〜15重量%、より好ましくは7〜13重量%である。コモノマー含有量が6重量%以下であると、リヒート・コールドパリソン方式を採用して2軸延伸ブローボトルを作成しても、十分に高度の透明性や光沢が得られず、落体強度や肉厚の均一性も十分ではない。前記特公平4−3727号公報には、プロピレン−エチレンランダム共重合体からホットパリソン方式でPP2軸延伸ブロー成形容器を製造する場合、エチレン含有量が6重量%を越えるものでは、得られるブロー容器の剛性が不足することが示されている。これに対して、PPのコールドパリソンから2軸延伸ブローボトルを製造する場合、コモノマーの含有量が6重量%未満では、延伸性に劣り、高度に透明性でかつ剛性に優れた2軸延伸ブローボトルを得ることが困難である。ポリプロピレンのホモポリマーを使用した場合にも、延伸性に劣る。コモノマーの含有量が6重量%を越えるPPランダム・コポリマーを用いて、コールドパリソン方式により高延伸倍率で2軸延伸ブロー成形を行うと、十分な剛性と落体強度を有し、かつ、透明性に優れたPP2軸延伸ブローボトルが得られる。一方、コモノマーの含有量が15重量%を越えると、加工性、剛性、耐熱性などが低下する。
【0012】
本発明で使用するPPランダム・コポリマーのメルトフローインデックス(g/10分)(JIS−K6758に準じて測定:MFI)は、透明性、加工性などの観点から、5〜30の範囲であり、好ましくは7〜20である。MFIが5未満であると十分な透明性を得ることが難しくなり、逆に、30を越えると偏肉が多くなり、安定して高品質の2軸延伸ブローボトルを得ることが困難となるため、いずれも好ましくない。
【0013】
PPランダム・コポリマーには、必要に応じて、抗酸化剤、透明化剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの各種添加剤を加えることができる。抗酸化剤としては、フェノール系、リン系、その他の公知のものが使用可能である。抗酸化剤の添加量は、通常、300〜3000ppmである。透明化剤としては、ソルビトール系、特に、NC−4(三井東圧製、ビスp−エチルベンジリデン系)やミラード3988(ミリケン化学製、ソルビトールアセタール系)などのいわゆる第3世代の透明化剤が好ましい。その添加量は、通常、100〜5000ppmである。透明化剤の添加量が100ppm未満では効果が少なく、5000ppm超過ではその効果が飽和する。透明化剤として、ビニルシクロアルカン重合物などの高分子核剤を用いることができる。高分子核剤は、100ppm程度の少量でも良好な透明性を付与することができる。本発明のPP2軸延伸ブローボトルを食品用途に使用する場合には、味、臭いなどオルガノレプチック(官能性)の点で問題のない添加剤を使用することが望ましい。その選択は、用途毎の官能(オルガノレプチック)試験により行うことができる。
【0014】
本発明では、前記特定のPPランダム・コポリマーを用いて、射出成形により有底パリソンを作成する。図1に、パリソンの一例の外観図を示す。肉厚のパリソンを作成し、延伸ロッドの作動余地を確保するために、通常、外側のキャビティー側に肉を盛る。有底パリソンは、低温で貯蔵され、コールドパリソンとされる。コールドパリソンの再加熱は、例えば、ベクム社のBRU成型機(商品名)を用いて、前記リヒート・コールドパリソン方式により、加熱と冷却を交互に行い、延伸温度(120〜160℃)にまで均一に加熱することが望ましい。コールドパリソンを延伸温度に調整した後、直ちに、延伸ロッドの助けを借りて、金型内でブロー成形を行う。
【0015】
本発明では、縦横に合計で8倍(縦軸倍率×横軸倍率=合計倍率)以上に2軸延伸ブロー成形を行う。前記特定のPPランダム・コポリマーを用い、かつ、合計で8倍以上の高倍率で2軸延伸ブロー成形を行うことにより、従来では得られなかった高度の透明性と光沢を有するPP2軸延伸ブローボトルを得ることができる。合計延伸倍率が7倍(例えば、縦軸2.8倍×横軸2.5倍=7倍)以下と低い場合には、コモノマー含有量が6重量%超過、15重量%以下のPPランダム・コポリマーを用いても、透明性に優れ、壁厚の偏肉のない2軸延伸ブローボトルを得ることはできない。合計延伸倍率は、好ましくは10〜15倍程度である。
【0016】
従来、コモノマー含有量が6重量%を越えるPPランダム・コポリマーは、2軸延伸ブローボトルにした場合、剛性が不足すると考えられていた。しかし、コールドパリソンを2軸延伸ブロー成形する方式を採用し、合計延伸倍率を8倍以上に高めることによって、コモノマーの含有量が6重量%超過、15重量%以下のPPランダム・コポリマーを用いた場合であっても、高度の透明性が得られると共に、強度に優れたPP2軸延伸ブローボトルを得ることができる。本発明のPP2軸延伸ブローボトルは、偏肉が少なく、従来品に比べて底部の透明性も向上している。
【0017】
本発明のPP2軸延伸ブローボトルは、該ボトル胴部の光学特性をJISの「プラスチックの光学的特性試験方法」(JIS K7105)により測定したところ、光沢度(60°)が縦方向(L)及び横方向(T)共に90%以上で、ヘイズが5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
本発明のPP2軸延伸ブローボトルの形状は、丸形、角形、円筒形、オーバル(卵型)、その他の形状のものを包含する。図2に、本発明のPP2軸延伸ブローボトルの一例の外観図を示す。
【0018】
【実施例】
以下に、実施例、比較例及び対照例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、物性の測定方法は、次のとおりである。
(1)光学特性
JIS K7105に準じて、2軸延伸ブローボトル胴部の光沢度(60°)とヘイズ(曇価)を測定した。
(2)落体強度
2軸延伸ブローボトルに水を充填し、キャッピング後、2℃で20時間保存した後、ステンレス板の上に、2mの高さから底を下にして落下させた。破損しないものを良好とし、破損したものを不良とした。
(3)肉厚均一性
2軸延伸ブローボトルの偏肉の有無を目視で観察し、偏肉のない場合を良好とし、偏肉のある場合を偏肉あり、偏肉の大きい場合を偏肉大とした。
【0019】
[実施例1、比較例1]
下記の各PPを使用して、射出成型機により図1に示すような特徴のある形のコールドパリソン(目付け30g)を成形した。次いで、このコールドパリソンをベクム社(ドイツ国)のBRU成型機(商品名)により、加熱/冷却を交互に行って均一に再加熱し、延伸温度に調整後、延伸ロッドの助けを借りて、縦軸に3.0倍、横軸に4.0倍の合計12倍の延伸倍率で2軸延伸ブロー成形を行い、図2に示す形状の内容積1000mlの角型ブローボトルを作成した。
(1)実施例1:エチレン含有量が7重量%で、MFIが7(g/10分)のエチレン−プロピレンランダム・コポリマー。曲げ弾性率(JIS K6758)=約5000(kg/cm2)、
(2)比較例1:エチレン含有量が3重量%で、MFIが1(g/10分)のエチレン−プロピレンランダム・コポリマー。曲げ弾性率(JIS K6758)=約12500(kg/cm2)、
これらのPPには、いずれもフェノール系酸化防止剤(1500ppm)とソルビトール系透明化剤(NC−4、三井東圧製、2000ppm)を添加して使用した。
結果を表1に示す。
【0020】
[対照例1]
エチレン含有量が4重量%、MFIが2(g/10分)のエチレン−プロピレンランダム・コポリマーに、フェノール系酸化防止剤(500ppm)とソルビトール系透明化剤(NC−4、2000ppm)を添加したものを用いて、日精ASB社製の延伸ブロー成形機ASB−50を使用し、ホットパリソン方式により、縦軸に2.0倍、横軸に1.8倍の合計3.6倍の延伸倍率で2軸延伸ブロー成形を行い、内容積1000mlの角型ブローボトルを作成した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明のPP2軸延伸ブローボトルは、光学特性値から明らかなように、透明性と光沢に優れ、落体強度及び肉厚の均一性も良好である。これに対して、コモノマーの含有量が6重量%以下のPPランダム・コポリマーを用いた場合には、コールドパリソン方式を採用しても、高度の透明性を得ることができず、成形性も十分ではない。また、従来のホットパリソン方式では、高度に透明で強度に優れた2軸延伸ブローボトルを得ることが困難である。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、コールドパリソン(プリフォーム)からの2軸延伸ブロー成形により、従来得られなかった高度の透明性と光沢を有し、強度が良好で、偏肉のないPP2軸延伸ブローボトルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するPPコールドパリソンの一例の外観図である。
【図2】本発明のPP2軸延伸ブローボトルの一例の外観図である。
Claims (1)
- ポリプロピレンのコールドパリソンを2軸延伸ブロー成形するポリプロピレン2軸延伸ブローボトルの製造方法において、ポリプロピレンとして、メルトフローインデックスが5〜30g/10分で、エチレンまたは1−ブテン含有量が6重量%超過、15重量%以下のプロピレンとエチレンとのランダムコポリマーまたはプロピレンと1−ブテンとのランダム・コポリマーを用いて有底コールドパリソンを形成し、次いで、該有底コールドパリソンを、加熱と冷却を交互に行って延伸温度にまで均一に再加熱した後、縦横に合計で8倍以上に2軸延伸することにより、 ボトル胴部の光沢度(60°)が縦方向及び横方向共に90%以上である2軸延伸ブローボトルを得ることを特徴とするポリプロピレン2軸延伸ブローボトルの製造方法。
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