JP3565323B2 - 畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持剤 - Google Patents

畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、食肉および食肉加工品の鮮度保持剤、特に色調保持剤、並びに食肉の鮮度保持方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
畜肉や赤味魚肉は新鮮時には鮮やかな赤色であるが、経時的な品質の劣化に伴い、例えば褐色または灰色に色調が変化することが知られている。このように、色調の変化は劣化の重要な指標であり、食肉の色調または色調変化は品質を示すものとして消費者の選択の際の目安となる。特に、わが国では魚肉を生のまま調理する習慣があり、その色調等に敏感であるため、畜肉の評価においても色調が重要視される。食肉の色調の変化はヘム色素の酸化が主な原因であり、食肉中のヘム色素としては筋原繊維内のミオグロビンと残留血液の赤血球内のヘモグロビンがある。畜肉、魚肉およびそれらの加工品の色調を添加剤によって保持しようとする試みは従来よりなされているが、いずれも効果が不十分であるか、安全性の面で問題がある。
【0003】
食肉の劣化を抑制する方法としては、従来より種々の方法が試みられている。特に近年、家族構成の少人数化より購入する食品が少量ですみ、また調理の時間が短くかつ容易であることなどが要求されるようになったため、食肉のスライス少量パック化や魚の切り身のパック化が進んでいるが、このような食肉のスライス等では塊に比べ劣化、特に褪色が進み易い。従って、食肉および加工肉において劣化を抑制し、鮮度を保持するためのより有効な方法が望まれている。
【0004】
従来より食肉等の劣化防止としては、例えば、脂質酸化による変敗を抑制するため、酸化防止剤を使用して畜肉や魚肉中に含まれている油脂や脂肪の酸化を防止することが行われている。わが国では、生鮮畜肉や魚肉に対しては酸化防止剤としてビタミンC、天然ビタミンEおよびエリソルビン酸が使用できる。しかし、これらは鮮度の保持、特に色調の保持に十分ではない。さらに、加工の際に使用する油脂に対してはブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)のような酸化防止剤が使用されてきたが、BHTやBHAに発癌性があることが報告され(Ito ら、J.Matl.Cancer Inst.70, 343)、1983年2月1日告示第54号によりこれらの物質は使用しないよう行政指導が行われている。
【0005】
また、アスコルビン酸 (ビタミンC)とポリ燐酸は、畜肉、魚肉およびこれらの加工品、特に保蔵肉の色、水分、組織を改良するために大規模に使用されている。しかしビタミンCは肉中のFe++との相互作用により色調が変化して褐変をおこし、ポリ燐酸は過剰に摂取すると骨に異常が認められることから、安全な食品の供給という点からは望ましくない。
【0006】
また、新鮮な食肉や保存肉の大きな塊に添加剤を浸透させるのは困難であるため、飼料に添加して食肉を安定化させうる添加剤があれば有用であるが、飼料に添加して食肉の品質を維持する添加剤に関して未だ成功した例はない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、食肉の劣化を抑制して鮮度を保持するための添加剤として、十分な効果を有し、しかも安全なものはこれまで知られていなかった。また、食肉や加工肉に対して直接処理する以外に、飼料に添加して食肉の品質維持に効果があるものは全くなかった。そして、食肉の品質維持に有効であると共に、動物の生産性をも改善しうる飼料添加剤については全く知られていなかった。
従って、本発明の目的は、安全で色調保持効果の高い食肉およびその加工品の鮮度保持剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような実情に鑑み、効果的な食肉の鮮度保持方法について検討した結果、意外にもユビデカレノンが、食肉の鮮度保持剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。本発明ではユビデカレノンで食肉や加工肉を処理することにより、あるいは飼料に添加することにより、食肉の鮮度を保持することができる。特に色調の保持に効果的である。また、ユビデカレノンを飼料に添加した場合、これは動物の成長促進剤としても作用し、家畜・家禽および養魚の生産性改善に有効であることも見出した。
【0009】
すなわち、本発明はユビデカレノンを有効成分とする畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持剤を要旨とする。この鮮度保持剤は、特に色調保持剤として有用である。また、本発明は畜肉、魚肉およびこれらの加工品をユビデカレノンで処理することを特徴とする畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持方法にも関する。この鮮度保持剤には、さらにビタミンEおよび/またはビタミンCを含有させるとその効果がさらに高まる。
【0010】
ユビデカレノンは、次のような化学構造式(I)で表され、1957年、ウィスコンシン大学のクレーンによって牛の心臓のミトコンドリアの脂質から発見された物質である。
【0011】
ュビデカレノンを含むユビキノン類は動植物界に広く存在することが知られている(K.Folkersら:Chiba foundation symposium, 1960)。特に各種動物の心臓、肝臓および消化管に多く含まれている(F.R.Koniuszy ら: Arch. Biophis.,87, 298, 1960) 。脊椎動物ではうなぎを除く魚類、両生類は虫類および鳥類、哺乳動物ではマウスおよびラット以外はすべてユビデカレノンを有している(P.H.Gale ら: Arch. Biochem.Biophys.,104, 169, 1964)。ヒトでも肝臓、心臓、腎臓、脾臓および副腎に特に高い濃度で分布している(P.H.Gale ら: Arch. Biophys., 93, 211, 1961)。
【0012】
【化1】
Figure 0003565323
【0013】
ユビデカレノンの生体内における作用は未だ完全には知られていないが、一般にミトコンドリア内の電子伝達系に関与している補酵素と考えられ、細胞呼吸を賦活し、それと共役的にATPの産生を高め、生体各組織を活性化するために重要な役割を果しているものと考えられる。ユビデカレノンは虚血による心筋の障害を改善する作用がみられることから、現在うっ血性心不全の治療剤として用いられている。このように、ユビデカレノンは医薬品としての用途は知られているが、食肉の鮮度保持剤として有効であることは全く予期しないことであった。
【0014】
本発明で用いるユビデカレノンは、合成法もしくは醗酵法など、いかなる方法で製造されたものでも使用できる。精製されたユビデカレノンは、融点約48℃の、黄色もしくは橙色の粉末で、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素、アセトン、エーテルには溶けるが、エタノール、水、メタノールには溶けないという性質を有する物質である。本発明においては、精製品の他、飼料に添加して使用する場合は、赤色酵母 (Rhodotorula hasegawae)や、糸状菌 (Chaetomium funicola)などのユビデカレノンを含む菌体等も使用できる。
【0015】
ユビデカレノンは、細胞呼吸に関与する物質として種々の動植物中に広く存在するものであり、また食品中に多く含まれている (A.C.Pageら: Arch. Biochem.Biophys., 85, 474, 1959)物質であるので、その毒性等については既に調べられており、安全性は確認されている。
【0016】
本発明の鮮度保持剤は、ユビデカレノンを有効成分とし、必要に応じ適宜担体あるいは媒体、また添加剤を加え、粉末や顆粒等の固体状、あるいは水溶液や乳化液等の液状としたものである。添加剤としてはクエン酸やソルビット等の相乗剤、レシチン、プロピレングリコール等の乳化剤、CMCやゼラチン等の乳濁液安定剤等が使用できる。粉末等の固体状の鮮度保持剤を、使用時に水等の媒体で必要濃度に希釈して用いることもできるが、予め高濃度の液状としておき、これを使用時に適宜希釈してもよい。また、必要濃度に調節した液を製造しスプレー容器等に入れてそのままスプレーして使用することもできる。さらに、ユビデカレノンは家畜、家禽、養魚に予め摂取させておいても、畜肉、魚肉の鮮度、特に色調を保持する効果がみられるため、そのままであるいは飼料に添加して使用できるが、この場合は粉末、顆粒またはペレットの形態としたものが好ましい。
【0017】
本発明において畜肉とは、牛肉、馬肉、豚肉、羊肉、鶏肉などを意味し、魚肉とはハマチ、マグロ等の赤身の魚肉やサバ、タイ等の魚肉を意味する。また、生肉だけでなく、ハム、ソーセージ、缶詰、干物等の加工品の製造においても使用できる。
【0018】
本発明鮮度保持剤を畜肉に添加する場合、畜肉の製造段階における適当な時期にユビデカレノンを適宜方法で添加すればよい。例えば、屠殺直後の枝肉を液状とした本発明鮮度保持剤に浸漬するかあるいは表面にスプレーすることにより本発明鮮度保持剤で処理して出荷すれば、解体あるいはスライスするまでの間の変色を防止し、鮮度の維持に有効である。また、解体後のブロック肉またはスライス後の肉片に浸漬やスプレー等の手段により本発明鮮度保持剤で処理すると、消費者に届くまでの間鮮度を保持できる。
【0019】
本発明鮮度保持剤を魚肉に使用する場合は、漁獲後、液状とした本発明鮮度保持剤に浸漬するかあるいはスプレーすることにより、本発明鮮度保持剤で処理して出荷すれば、小売段階まで鮮度の維持に有効である。また、魚を冷凍貯蔵する場合は、鮮度保持剤に浸漬あるいはスプレーした後に冷凍保存すればよい。
【0020】
浸漬あるいはスプレーにより本発明鮮度保持剤を添加する場合、ユビデカレノンを水溶液および乳化液等に調製した処理液が用いられる。この場合の処理液の濃度はユビデカレノン5〜200 ppm となるようにするのが好ましい。
【0021】
さらに、本発明鮮度保持剤で畜肉や魚肉を直接処理する方法に加え、ユビデカレノンもしくはユビデカレノンを含む菌体を、そのままあるいは飼料に添加して動物に摂取させてもよい。この場合飼料に5〜200 ppm 程度の添加量とすればよい。得られた畜肉や魚肉は、畜肉・魚肉をユビデカレノンの溶液に浸漬またはスプレーした場合と同じく、鮮度保持効果がある。
【0022】
また、ユビデカレノンは動物に摂取させた場合、食肉の鮮度保持効果だけでなく、動物の成長促進作用もある。後述の実験例に示すように、ユビデカレノンを添加した飼料を用いると、動物の体重が増加し、飼料要求率が低下する。従って、ユビデカレノンの使用により食肉の生産性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の鮮度保持剤で処理した畜肉・魚肉は鮮やかな色調がかなり保持されているので、これを加工品にする場合でも発色剤などの添加量が少なくてすむ。また、加工の際に本発明鮮度保持剤をさらに添加してもよい。
【0024】
次に本発明の効果をさらに詳細に説明するために、実際にユビデカレノンを畜肉および魚に適用した場合の結果を以下に示す。
【0025】
実験例I
1. 実験方法
左右一対の豚ロース部分肉 (2日前に屠畜した豚ロース部分肉) のロース芯とロースカブリ部分について厚さ約5mmのスライス肉片 (各12枚) を得た。
【0026】
次に、ユビデカレノン500 mgに水添レシチン 440 mg 、ソルビット10gおよび精製水40mlを加えて加温し、窒素ガス置換下で90分間超音波処理した後、精製水を加えて全体を500 mlとする処理液を作製した。この処理液に上記ロール芯およびカブリのスライス肉片各6枚を万遍なく浸し、4℃で4時間保持した。その後、肉片を上記処理液から取り出し、軽く表面の水気を拭き取り、サランラップで一重包装する。そのうちの3枚をさらにビニール袋で包装した。ユビデカレノン無処理の対照区 (各6枚) も同様に包装した。
【0027】
なお、実験の間、上記試料は4℃に調整された低温恒温器に貯蔵し、測定は細氷上で行った。測定項目は以下の通りである。
【0028】
(1) pHの測定:
ガラスの電極pH計 (TOA−HM10K 型) を用いて、肉表面に直接電極を接触させることにより測定した。
【0029】
(2) 肉色の判定:
ポークカラースタンダード (畜試式) で肉眼的に観察した。
【0030】
(3) ND−1001D型測色色差計による測色:
反射試料台およびパイプのサイズ; 10mm
標準白板値;X 91.26、 Y 93.20、 Z 109.13
Z回路;
LSD : 0 を用いるUCS−Hunter表示 (L, a, b)方式により測定
測色; ロース芯部分およびカブリの部分ともに任意の3点を測定し、その平均値で示した。
【0031】
2. 結果
処理直前より6日目までの変化を表1および表2に示す。
【0032】
【表1】
Figure 0003565323
【0033】
【表2】
Figure 0003565323
【0034】
表中、カラースコアは畜肉の色調を意味する。tan θは色の濃淡を示す指標であり、表2の数値をグラフで表すと図1および図2のようになる。また、色の彩度を示す指標である√(L+a+b)についてグラフで示したものが図3および図4である。
【0035】
図1および図2は、それぞれロースカブリおよびロース芯の濃淡 (tan θ) の変化を表す。実線は試験区 (処理区) の tanθの平均値を意味し、点線は対照区(非処理区) の tanθの平均値を意味する。横軸は経過日数を意味し、縦軸はtan θの値を示す。
【0036】
図3および図4は、それぞれロースカブリおよびロース芯の彩度√(L+a+b)の変化を表す。実線は試験区 (処理区) の彩度の平均値を示し、点線は対照区 (非処理区) の彩度の平均値を示す。横軸は経過日数を意味し、縦軸は彩度を示す。
【0037】
上記の実験結果から、ユビデカレノンを畜肉に添加した場合、非処理区に比べ畜肉の色調が維持されることが明らかである。従って、ユビデカレノンは畜肉の鮮度保持剤、特に色調保持剤として有用である。
【0038】
本発明鮮度保持剤の色調保持のメカニズムは必ずしも明らかではないが、電子伝達系のチトクロームなどの蛋白質やミオグロビンに何らかの形で関与しているものと考えられる。
【0039】
実験例 II
1. 実験方法
ユビデカレノンおよびトコフェロールを含んだグレーズを、マグロ、タイに噴霧し、−10℃で保管し、体色の変化およびK値の変化を観察した。
【0040】
すなわち、市販のマグロの5cm角切身、タイに、実験例Iで用いたユビデカレノン含有液およびユビデカレノンとビタミンE含有液(ユビデカレノン200 mg、ビタミンE 400IU、レシチン600 mg、ソルビット10gに精製水を加えて500 mlとする)をそれぞれ噴霧した。噴霧後、マグロ肉角切およびタイ1匹ずつをサランラップで包装し、−10℃で貯蔵した。
【0041】
2. 結果
1) マダイの体色の変化
体色の測定は、実験例Iで使用した測色色差計を用いて行った。結果は以下の表3に示す通りである。
【0042】
【表3】
Figure 0003565323
【0043】
2) マグロのK値の変化
K値とは核酸関連物質を測定して以下の式により算出される値で、鮮度(生きのよさ)の判定に用いられる。鮮度のよい魚では特にATP含量が多く、ATP、ADP、AMP、IMPの合計量が多い場合を鮮度良好としている。すなわちK値としては低い場合が鮮度が良好である。
【0044】
【表4】
Figure 0003565323
【0045】
以上の実験結果からユビデカレノンを魚肉に噴霧した場合、水のみの区に比べて変色が抑えられ、鮮度が維持されることが明らかである。従って、ユビデカレノンは魚肉の鮮度保持剤として有用である。
【0046】
実験例 III
1. 実験方法
ラージホワイト去勢豚24頭を供試して、体重80kg頃から出荷まで約1ヵ月にわたって下記飼料を給餌し、成長促進効果および飼料要求率の観察を行った。
対照区 :基礎飼料
試験区I:基礎飼料にユビデカレノン10mg/kg 添加
試験区II:基礎飼料にユビデカレノン10mg/kg およびビタミンE50IU/kg 添 加
基礎飼料の組成および成分を表5に示す。
【0047】
【表5】
Figure 0003565323
【0048】
飼料を給与後、常法に従って屠殺解体し、経日的に肉質の検査を実施した。すなわち、対照区、試験区I、IIのロース部分肉から厚さ約5mmのスライス肉片を採取してサランラップで包装し、4℃に保管した。これらの肉片について、屠殺後7日間にわたって色差計により測定した。
【0049】
2. 結果
成長促進効果および飼料要求率は表6に示す通りである。また、食肉について、カラースコア、色の濃淡および色の彩度をそれぞれ表7、図5、図6に示す。
【0050】
【表6】
Figure 0003565323
【0051】
【表7】
Figure 0003565323
【0052】
上記表7に示す実験結果から、ユビデカレノンを飼料に添加して動物に与えた場合も、実験例Iの浸漬した場合と同様に畜肉の色調が維持され、鮮度保持効果があることが明らかとなった。また、ビタミンEをユビデカレノンと同時に添加すると、ユビデカレノンを単独で投与するよりもより一層の効果があることが判明した。さらに、表6に示す試験成績から、ユビデカレノンを飼料に添加して動物に与えた場合、成長促進効果があり飼料要求率を改善することも確認された。
【0053】
従って、ユビデカレノンは畜肉の鮮度保持剤、特に色調保持剤として有用であると同時に、動物の成長促進、すなわち食肉の生産性改善に有効である。
【0054】
実験例 IV
1. 実験方法
ブロイラーに、ユビデカレノンを含む赤色酵母とビタミンEを添加した飼料を与え、野外応用試験を実施した。ユビデカレノンによる生産性および品質改善の効果を調べた。
【0055】
生産性の指標としては増体重、出荷率、飼料要求率を観察し、品質の指標としては屠殺解体後4℃に冷蔵保存した鶏肉について、K値の変化を調べた。試供鶏はブロイラーの雄鶏 3,000羽を使用し、供試飼料は市販ブロイラー用飼料 (前期: CP23%、ME: 3,100kcal/kg、後期: CP18%、ME: 3,170kcal/kg) である。
【0056】
対照区 : 基礎飼料
試験区I : 基礎飼料に赤色酵母 (ユビデカレノンとして5mg/kg)添加
試験区II : 基礎飼料に赤色酵母 (ユビデカレノンとして5mg/kg)およびビタミンE 25IU/kg添加。
【0057】
2. 結果
(1) 育成成績
【0058】
【表8】
Figure 0003565323
【0059】
(2) K値の変化
【0060】
【表9】
Figure 0003565323
【0061】
表8および表9に示す実験結果から、ユビデカレノンを含む赤色酵母をブロイラーの飼料に添加した場合、対照区に比べて生産性の改善および鶏肉の品質が維持されることが明らかである。従って、ユビデカレノンはブロイラーの生産性改善剤および鮮度保持剤として有用である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0062】
【実施例】
(実施例1)
畜肉鮮度保持剤の濃縮液を次のようにして調製する。ユビデカレノン50gに水添レシチン50gと水200 mlを加えて加温し、窒素ガス置換下で90分間超音波処理して水溶液を得る。これにソルビット 100gと水を加えて全量を1リットルとしたものを滅菌処理し、濃縮液として所定の容器に封入しておく。
【0063】
豚一頭 (体重約110 kg) を屠畜した後、頭部等を切り落とし内蔵を取り出し、皮を剥ぐ。次に、処理した豚肉が入る程度の大きな容器に水1トンを入れ、予め上記のように調製しておいた本発明の畜肉鮮度保持剤1リットルを加え、攪拌器等でよく攪拌する。この容器内に、上記のように処理した豚肉を4℃で4時間浸した後、滑車でつり上げ豚肉の表面の水気を布等でよく拭きとり出荷または冷凍保存した後出荷する。出荷した肉は2週間後にも目視では肉色の変化はなかった。
【0064】
(実施例2)
畜肉の鮮度保持剤を次のようにして調製する。ユビデカレノン5gに水添レシチン5gと水100 mlを加えて加温し、窒素ガス置換下で90分間超音波処理して水溶液を得る。これにソルビット10gと水を加えて全量を1リットルとしたものをスプレー容器に入れておく。
【0065】
ホルスタイン種の牛一頭 (体重約250 kg) を屠畜した後、頭部等を切り落とし内蔵を取り出した後、滑車でつるす。つるした牛肉に上記スプレー容器に入れた鮮度保持剤を全体にまんべんなくかける。2〜3時間後、表面の水分を布等で軽く拭き取って、出荷または冷蔵、冷凍保存した後出荷する。出荷した牛肉は冷蔵保存1ヵ月後でも肉色に大きな変化は認められなかった。
【0066】
(実施例3)
鮮度保持剤を実施例1と同様に調製して濃縮液を得る。
ブロイラー (体重2.5 kg/羽) を屠殺した後、後頭部を切り落とし脱毛する。チラー層には前もって水および氷を満たしておき、上記の鮮度保持剤を20ppm になるように添加する。チラー層を通過したブロイラーは通常の方法で中抜き解体し出荷する。出荷した鶏肉は冷蔵保存1週間後でも品質に大きな変化は認められなかった。
【0067】
(実施例4)
魚の鮮度保持剤の調製を次のようにして行う。
ユビデカレノン5gおよびビタミンE25gに水添レシチン30gと水200 mlを加えて加温し、窒素ガス置換下で90分間超音波処理して水溶液を得る。これにソルビット60gと水を加えて全量を1リットルとしたものを滅菌処理し、濃縮液として所定の容器に封入しておく。
【0068】
タイ、マグロ、ハマチは漁獲後、上記の濃縮液を10〜25ppm になるように氷水に添加して調製した氷蔵液に浸漬した後、出荷する。また、漁獲後上記の濃縮液を噴霧した後に氷蔵または冷凍保存しても良い。処理後、冷蔵保存1週間では体色および肉色に大きな変化を認めなかった。
【0069】
(参考例1)
市販の豚肥育用配合飼料、ブロイラー後期用飼料および肉牛用飼料のそれぞれに、ユビデカレノンを多く含有する赤色酵母 (ユビデカレノンとして5mg/kg)とビタンミE (25mg/kg)もしくはビタミンC50mg/kg を添加し、出荷前1ヵ月〜3ヵ月間給与する。各飼料の組成および成分は表10〜12に示す通りである。
【0070】
【表10】
Figure 0003565323
【0071】
【表11】
Figure 0003565323
【0072】
【表12】
Figure 0003565323
【0073】
上記飼料を給与後、屠殺処理して得た畜肉は、屠殺後に本発明鮮度保持剤で処理した場合と同様に、いずれも肉色および鮮度が維持された。
【0074】
(参考例2)
市販のタイモスト用飼料(表13に組成、表14に成分を示す)に、ユビデカレノンを多く含有する赤色酵母 (ユビデカレノンとして20mg/kg)とビタミンE (100mg/kg) もしくはビタミンCを添加して出荷前1ヵ月間タイに給与する。
【0075】
【表13】
Figure 0003565323
【0076】
【表14】
Figure 0003565323
【0077】
上記飼料を給与後、漁獲出荷したタイの体表の色調は維持されることが判明した。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、畜肉・魚肉に対してすぐれた鮮度保持効果、特に色調保持効果を発揮することができ、しかも安全な畜肉、魚肉の鮮度保持剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロースカブリの色の濃淡(tanθ) の変化を表すグラフである。
【図2】ロース芯の色の濃淡(tanθ) の変化を表すグラフである。
【図3】ロースカブリの色の彩度 (√(L+a+b))の変化を表すグラフである。
【図4】ロース芯の色の彩度 (√(L+a+b))の変化を表すグラフである。
【図5】ロース芯の色の濃淡の変化を表すグラフである。
【図6】ロース芯の色の彩度の変化を表すグラフである。

Claims (8)

  1. ユビデカレノンを有効成分とする畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持剤。
  2. ユビデカレノンを有効成分とする、畜肉、魚肉およびこれらの加工品の色調保持剤。
  3. 畜肉または魚肉中のヘム色素の酸化を防止することにより色調を保持する、請求項2記載の色調保持剤。
  4. さらにビタミンEおよび/またはビタミンCを含有する請求項1記載の鮮度保持剤。
  5. 畜肉、魚肉またはこれらの加工品をユビデカレノンで処理することを特徴とする、畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持方法。
  6. ユビデカレノンによる処理を浸漬または噴霧により行う、請求項5記載の方法。
  7. 畜肉、魚肉またはこれらの加工品をユビデカレノンで処理して、該畜肉または魚肉に含まれるヘム色素の酸化を防止することにより色調を保持することを特徴とする、畜肉、魚肉およびこれらの加工品の色調保持方法。
  8. ユビデカレノンによる処理を浸漬または噴霧により行う、請求項7記載の方法。
JP2000040916A 1993-12-08 2000-02-18 畜肉、魚肉およびこれらの加工品の鮮度保持剤 Expired - Lifetime JP3565323B2 (ja)

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