JP3564419B2 - ヘッド支持機構における薄膜接着方法および薄膜接着冶具 - Google Patents
ヘッド支持機構における薄膜接着方法および薄膜接着冶具 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータなどの記憶装置として用いられるディスク装置に設けられるヘッド支持機構に関し、特に、磁気ディスク装置のヘッド支持機構におけるスライダに対して回動力を付与する薄膜の薄膜接着方法および薄膜接着冶具に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気ディスク装置に設けられた磁気ディスクの記録密度は、日を追う毎に高密度化が進でいる。磁気ディスクに対するデータの記録および再生に使用される磁気ヘッドは、通常スライダに搭載されており、磁気ヘッドが搭載されたスライダは、磁気ディスク装置内に設けられたヘッド支持機構によって支持されている。
【0003】
ヘッド支持機構は、スライダが取り付けられたヘッドアクチュエータアームを有しており、このヘッドアクチュエータアームが、ボイスコイルモータ(VCM)によって回動されるようになっている。そして、ボイスコイルモータを制御することにより、スライダに搭載された磁気ヘッドが、磁気ディスク上の任意の位置に位置決めされる。
【0004】
磁気ディスクに対してデータをさらに高密度で記録するためには、磁気ディスクに対して磁気ヘッドをさらに高密度に位置決めする必要がある。しかしながら、VCMにてヘッドアクチュエータアームを回動させて磁気ヘッドを位置決めする構成では、磁気ヘッドを、より高精度に位置決めできないという問題がある。そこで、磁気ヘッドを高精度に位置決めするヘッド支持機構が既に提案されている。
【0005】
以下、従来の磁気ディスク装置について説明する。図21は従来の磁気ディスク装置におけるヘッド支持機構の一例を示す平面図である。回転駆動される図示しない磁気ディスクに対するデータの記録/再生を行う磁気ヘッド102は、サスペンションアーム104の一端に支持される。サスペンションアーム104の他方の端部は、キャリッジ106の突起108に対して、この突起108を中心に微小角範囲内で回動可能に支持されている。キャリッジ106は磁気ディスク装置のハウジングに対して固定される軸部材110に対して回動可能に支持されている。
【0006】
キャリッジ106には、永久磁石(図示せず)が固定されており、ハウジング側に固定された磁気回路112の一部である駆動コイル114に流す励磁電流を制御することによって、この永久磁石に対して、キヤリッジ106が軸部材110に対して回動するようになっている。これにより磁気ヘッド102を磁気ディスクの実質的な半径方向に沿って移動される。
【0007】
キャリッジ106とサスペンションアーム104との間には、一対の圧電素子116,116が設けられている。各圧電素子116,116は、キャリッジ106の長手方向に対して、それぞれの長手方向が相反する方向に若干傾斜した状態で取り付けられている。そして、各圧電素子116,116を、それぞれ矢印A14,A14で示す方向に伸縮させることによって、サスペンションアーム104の先端部に取り付けられた磁気ヘッド102は、磁気ディスク表面に沿って、微小な範囲で変位され、磁気ディスク上の任意の位置にて高精度で位置決めすることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図21に示すような従来のヘッド支持機構では、各圧電素子116,116,116が、サスペンションアーム104およびキャリッジ106にそれぞれ設けられた部材の間にそれぞれ挟まれた状態で配置され、これら各圧電素子116,116,116の側部が、サスペンションアーム104とキャリッジ106の各部材に当接されている。そして、各圧電素子116,116のバルク変形によって、サスペンションアーム104を回動させて磁気ヘッド102を微小に変位させるようになっている。
【0009】
このように、各圧電素子116,116への印加電圧に対して、サスペンションアーム104を回動させ、磁気ヘッド102を微小に変位させている。
【0010】
しかしながら、各圧電素子116,116にそれぞれ印加される電圧に対して磁気ヘッド102が機構上必ずしも高精度に追従するものではないので、磁気ヘッド102を高精度で位置決めすることができないおそれがあり、また、磁気ヘッド102の必要とする変位を得るためには、圧電素子に印加する電圧を数十ボルト必要とするため新たに圧電素子駆動用の昇圧電源回路などを必要とする。
【0011】
そこで、低い印加電圧によって効率的に磁気ヘッドを微小変位させることが可能な薄膜圧電体を用いたヘッド支持機構が考えられており、このヘッド支持機構によって、磁気ディスクに対するトラッキング補正などのために磁気ヘッドを高精度で微小変位させることができるようになった。
【0012】
しかしながら、このようにして磁気ヘッドの変位精度を高めたヘッド支持機構においては、薄膜圧電体をヘッド支持機構に精度高く取り付けることが困難であるという課題があった。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、低い印加電圧によって効率的に磁気ヘッドなどのヘッド素子を微小変位させることが可能な薄膜圧電体を有するヘッド支持機構において、精度高く薄膜を取り付けることが可能な薄膜接着方法および薄膜接着冶具を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、ヘッド素子を搭載したスライダがロードビームの先端部に装着されると共に、前記スライダが前記ロードビームに対して回転自在に支持されるように構成されたヘッド支持機構において、前記スライダに回動力を付与する薄膜を、ヘッド素子配線用のフレクシャの要部に接着する薄膜接着方法であって、
互いに嵌合することで一体化する第1、第2の位置決めベースを用意したうえで、第1の位置決めベースに前記薄膜を配置し、前記第2の位置決めベースに前記フレクシャを固定的に取り付ける工程と、
前記第1の位置決めベース上の前記薄膜に対して位置補正処理を施す工程と、
補正後の前記薄膜を空気圧により前記第1の位置決めベースに吸着させる工程と、
前記第1の位置決めベースと前記第2の位置決めベースとを嵌合させることで、前記フレクシャの要部に前記薄膜を対向させる工程と、
前記フレクシャの要部に前記薄膜を接着する工程と、
とを含み、前記フレクシャの要部に前記薄膜を接着する際に、前記薄膜を空気圧により前記第1の位置決めベースから離間させて前記フレクシャの要部に接着する、ことに特徴を有している。
【0015】
本発明に係る薄膜接着方法によれば、低い印加電圧によって効率的にヘッド素子を微小変位させることが可能な薄膜からなる圧電体素子をフレクシャ上に高精度で貼り付けることが可能となる。これにより圧電素子駆動用の昇圧電源回路などを必要とするようなことがなく、ヘッド素子は磁気ディスク上に沿って、微小な範囲で変位可能となり、したがって、ヘッド素子を磁気ディスク上の任意の位置にて高精度で位置決めすることができるヘッド支持機構が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、ヘッド素子を搭載したスライダがロードビームの先端部に装着されると共に、前記スライダが前記ロードビームに対して回転自在に支持されるように構成されたヘッド支持機構において、前記スライダに回動力を付与する薄膜を、ヘッド素子配線用のフレクシャの要部に接着する薄膜接着方法であって、
互いに嵌合することで一体化する第1、第2の位置決めベースを用意したうえで、第1の位置決めベースに前記薄膜を配置し、前記第2の位置決めベースに前記フレクシャを固定的に取り付ける工程と、
前記第1の位置決めベース上の前記薄膜に対して位置補正処理を施す工程と、
補正後の前記薄膜を空気圧により前記第1の位置決めベースに吸着させる工程と、
前記第1の位置決めベースと前記第2の位置決めベースとを嵌合させることで、前記フレクシャの要部に前記薄膜を対向させる工程と、
前記フレクシャの要部に前記薄膜を接着する工程と、
とを含み、前記フレクシャの要部に前記薄膜を接着する際に、前記薄膜を空気圧により前記第1の位置決めベースから離間させて前記フレクシャの要部に接着する、
ことに特徴を有している。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、薄膜を高精度に、かつ破損させずにフレクシャに接着することができるようになる。そして、これにより圧電素子駆動用の昇圧電源回路などを必要とするようなことがなく、ヘッド素子は磁気ディスク上に沿って、微小な範囲で変位可能となり、したがって、ヘッド素子を磁気ディスク上の任意の位置にて高精度で位置決めすることができるヘッド支持機構が得られる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記薄膜を接着剤により前記フレクシャの要部に接着するとともに、その接着に際して、第1、第2の位置決めベースのうち、少なくとも第2の位置決めベースを加熱することに特徴があり、これにより、接着剤が硬化して、薄膜が確実に所定位置に接着されることになる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の発明は、前記第1の位置決めベース上の前記薄膜に対して位置補正処理を施す際に、前記第1の位置決めベースの薄膜載置部を薄膜外形形状と同等形状の凸状に形成したうえで、前記薄膜を搭載した前記薄膜載置部の側面に位置決めブロックを当接させることで、前記薄膜を前記薄膜載置部の所定位置に対して位置補正することに特徴があり、これにより薄膜を薄膜載置部の正確な位置に破損なく配置することが可能となる。
【0021】
このような薄膜接着方法に最適に用いることができる薄膜接着治具としては、請求項4に記載したように、第1の基準面を有するとともに当該第1の基準面に前記薄膜の外形と同一形状となった凸状の薄膜載置部を有する第1の位置決めベースと、
前記薄膜載置部の側面に当接することで、前記薄膜載置部上の前記薄膜を位置決め補正する位置決めブロックと、
前記薄膜載置部の上面に開口する空気孔と、
前記開口から空気を吸引あるいは噴射させる吸引・噴射手段と、
第2の基準面を有し、この第2の基準面上に前記フレクシャを位置決め固定する第2の位置決めベースと、
前記第1の基準面と前記第2の基準面とが互いに平行な状態を維持したまま、前記第1の位置決めベースと前記第2の位置決めベースとを、その対向方向に沿って相対移動可能に保持するガイド機構と、
を有し、前記薄膜載置部の上面と前記第2の基準面との間の離間間隔を、前記薄膜の厚さと前記フレクシャの厚さを加えた値より僅かに広く設定するものが好ましく、そうすれば、第1の位置決めベースと第2の位置決めベースとが最近接した状態においても、薄膜はフレクシャに当接することはなく当接による破損を未然に防止することができる。薄膜の接着は、その後、吸引・噴射手段により空気を噴射することでフレクシャに対して薄膜をゆっくりと当接させて行えばよく、そうすれば、薄膜の破損を生じさせることなくその接着を行うことができる。
【0023】
以下、本発明に係るヘッド支持機構における薄膜接着方法および薄膜接着冶具の具体的な実施の形態を図1から図21を用いて説明する。
【0024】
図1は本実施形態に係るヘッド支持機構の斜視図であり、図2はそのヘッド支持機構を分解して示す斜視図である。また、図3はそのヘッド支持機構におけるスライダの斜視図である。
【0025】
図1から図3において、ヘッド支持機構100は、ヘッド素子としての例えば磁気ヘッド1が取り付けられたスライダ2を先端部に支持するロードビーム4を有している。ロードビーム4は、ヘッドアクチュエータアーム(図示しない)に取り付けられる正方形状をした基端部4aを有し、基端部4aは、ビーム溶接等によってベースプレート5に固定されている。ベースプレート5は、上記ヘッドアクチュエータアームに取り付けられている。ロードビーム4には、基端部4aから先細状に延出するネック部4bに連続して、ビーム部4cが直線状に延出するように設けられている。ネック部4bの中央部には、開口部4dが設けられており、ネック部4bにおける開口部4dの両側部分が、それぞれ、板バネ部4eになっている。ビーム部4cの先端部における各側縁部には、スライダ保持基板3aの回動を若干の隙間をもって規制する規制部4fがそれぞれ設けられている。
【0026】
なお各規制部4fは、ビーム部4cの先端から基端部4a側に向かって直線状に延出している。ビーム部4c上には、ヘッド配線パターン6を有するフレクシャ7が設けられている。フレクシャ7は、ステンレス材をベースとしている。フレクシャ7の一端に設けられたスライダ取付部7x上には、磁気ヘッド1が搭載されたスライダ2が配置されている。
【0027】
スライダ2の磁気ヘッド1が設けられた端面の下部には、4つの端子2a〜2dが横方向に並んだ状態で設けられている(図3参照)。さらに、スライダ2の上面には、回転駆動される磁気ディスクによって生じる空気流が、スライダ2のピッチ方向(磁気ディスクの接線方向)に沿って通流させて、磁気ディスクとの間にエアー潤滑膜を形成するエアベアリング面2eが設けられている。エアベアリング面2eの中心位置は、ロードビーム4のディンプル4gに一致している。
【0028】
図4はヘッド支持機構100におけるフレクシャ7の先端部分の構造を示す分解状態の斜視図である。図4において、フレクシャ7は、フレクシャ7の本体を構成するフレクシャ基板3と、フレクシャ7の一端に設けられたスライダ保持基板3aとを有している。フレクシャ基板3とスライダ保持基板3aとは、ステンレス等からなっており、フレクシャ基板3の一端(フレクシャ7の一端)にスライダ保持基板3aは並列配置されている。フレクシャ基板3とスライダ保持基板3aとの間には、両者の表面にポリイミド樹脂等からなるフレキシブル基板Fが設けられており、このフレキシブル基板Fによりフレクシャ基板3とスライダ保持基板3aとは機械的に連結されている。さらには、フレキシブル基板Fには局部的に狭い幅で形成された弾性ヒンジ部となった繋ぎ部19a、19bが設けられている。繋ぎ部19a,19bは、フレクシャ基板3とスライダ保持基板3aとの間の境目に設けられており、両基板3、3aは、繋ぎ部19a、19bにより互いに可動自在に連結されている。フレキシブル基板Fの上面には配線6a,6b,6c,6dが設けられている。また、フレキシブル基板Fの上面には、薄膜保持部8a,8bが互いに並列した状態で設けられている。薄膜保持部8a,8bは、フレクシャ基板3の一端側に設けられている。薄膜保持部8a,8bは、後述する薄膜圧電体素子10を載置可能な面状に形成されている。なお、スライダ保持基板3aの外形形状は、フレクシャ基板3と同時にエッチング加工により形成される。
【0029】
スライダ保持基板3aには突起部3bが形成され、この突起部3bはロードビーム4の先端付近に形成されたディンプル4gに当接している。この突起部3bがディンプル4gによって押圧されることにより、ディンプル4gを中心として全方位にわたってスライダ保持基板3aは回動可能に保持されている。
【0030】
フレクシャ7の他方の端部には、外部接続端子保持部7yが設けられている。外部接続端子保持部7yは、ロードビーム4の基端部4aにおける一方の側縁部に配置されている。
【0031】
図5はヘッド支持機構100における薄膜圧電体素子10の平面図であり、図6は図5中のZ―Z線における断面図である。図5および図6において、薄膜圧電体素子10は、フレクシャ7の薄膜保持部8a,8b(図4参照)に接着して取り付けられる。なお、薄膜保持部8a,8bにおいては、薄膜圧電体素子10を接着する面に、接着性を向上させるためのクローム等のサブミクロンオーダーの薄膜がコーティングされている。
【0032】
薄膜圧電体素子10は、図6に示すように、左右それぞれ別々の薄膜圧電体素子10a,10bが一対となって構成されている。各薄膜圧電体素子10a,10bは、第1の薄膜圧電体11a、および第2の薄膜圧電体11bとが積層配置された2層構造を有している。図から見て上部に位置する第1の薄膜圧電体11aの上側および下側には、第1の電極金属膜12aと第2の電極金属膜12bが形成されている。同様に第2の薄膜圧電体11bは、第1の薄膜圧電体11aの下部に配置され、その両面には第3の電極金属膜12cと第4の電極金属膜12dとが設けられている。第2の電極金属膜12bと第3の電極金属膜12cとは接着剤13で接着されている。また、薄膜圧電体素子10の全体は、柔軟性のあるコーティング樹脂14でカバーされるとともに左右の薄膜圧電体素子10a、10bを一体化している。
【0033】
図7はヘッド支持機構100におけるフレクシャ7の平面図である。即ち、この図7は薄膜圧電体素子10を貼り付けたフレクシャ7をスライダ貼り付け側から見た平面図である。図8は図7に示すX−X線による断面図(薄膜圧電体素子10を貼りつけた状態)である。図9は図7に示すY―Y’線による断面図ある。図7から図9に示すように、薄膜圧電体素子10の周囲には配線6a,6b,6c,6dおよびスライダ2のグランド配線9dが薄膜圧電体素子10と同一平面状に配置されている。
【0034】
次に薄膜圧電体素子10の配線について説明する。図9において、薄膜圧電体素子10の第1、第4の電極金属膜12a,12dにはプラス電圧が加えられ、第2、第3の電極金属膜12b,12cはグランドに落とされている。第1、第4の電極金属膜12a,12dは、フレクシャ7の中程に配置された薄膜圧電体素子駆動配線9aに対してワイヤボンド線16でつながれている。第1、第4の電極金属膜12a、12dは、薄膜圧電体素子駆動配線9bに対してワイヤボンド線16でつながれている。電極金属膜12bと電極金属膜12cとは、グランド金属膜17を介して薄膜圧電体素子駆動配線9cにつながれている。スライダ2のグランド配線9dは、スライダ2をグランドに落とすためのアース端子であり、薄膜圧電体素子駆動配線9cに短絡されている。これら薄膜圧電体素子駆動配線9a,9b,9cは外部接続用端子保持部7yに一方の端部が設けられており、外部の駆動回路(図示省略)に接続されている。
【0035】
図10は薄膜圧電体素子10およびその第1〜第4の電極金属膜12a〜12dを単結晶基板18上で成膜する手順を示す図である。この図10を参照して、薄膜圧電体素子10の成膜方法について説明する。先ず、図10(a)に示すように単結晶基板18上に第1、第4の電極金属膜12a(12d)が成膜される。次に、図10(b)に示すように第1、第4の電極金属膜12a(12d)の上にPZT等の第1、第2の薄膜圧電体11a(11b)が単結晶成長される。さらに、図10(c)に示すように第1、第2の薄膜圧電体11a(11b)の上面に第2、第3の電極金属膜12b(12c)が成膜される。このとき第1、第2の薄膜圧電体11a(11b)の分極方向は成膜時点で結晶のc軸方向(矢印A方向)に向いている。
【0036】
図11は単結晶基板18上に成膜した第1、第2の薄膜圧電体11a(11b)を2層構成化する手順を示した図であり、図12のステップは第1、第2の薄膜圧電体11a(11b)の製造方法を示すフローチャートである。図11および図12のステップを参照して第1、第2の薄膜圧電体11a(11b)を2層構成にする工程を説明する。
【0037】
図11(a)に示すように第1の単結晶基板18a上に第1の電極金属膜12a、第1の薄膜圧電体11aおよび第2の電極金属膜12bを形成し(図12のステップS1201)、次に、図11(b)に示すように第2の単結晶基板18b上に第3の電極金属膜12c、第2の薄膜圧電体11bおよび第4の電極金属膜12dを形成する(図12のステップS1202)。
【0038】
その後、図11(c)に示すように、第2の電極金属膜12bと第4の電極金属膜12cを接着剤13で接着する(図12のステップS1203)。
【0039】
次に、図11(d)に示すように、単結晶基板18のうちの一方である第1の単結晶板18aをエッチングで除去する(図12のステップS1204)。その後、図11(e)に示すように、2層構造の第1、第2の薄膜圧電体11a、11bを薄膜圧電体素子10の形状になるようにドライエッチングで成形加工する(図12のステップS12005)。
【0040】
次に、図11(f)に示すように、薄膜圧電体素子10の腐食を回避するために、第2の単結晶基板18b上において、薄膜圧電体素子10が形成された表面をコーティング樹脂14で覆う(図12のステップS1206)。その後、図11(g)に示すように、最後に残っていた第2の単結晶基板18bをエッチング除去することにより薄膜圧電体素子10を得る(図12のステップS1207)。
【0041】
なお、第1の電極金属膜12aと第4の電極金属膜12dとの接着は超音波振動を用いた熱溶着で接着してもよい。
【0042】
図13は第2の単結晶基板18bを除去する工程を説明するための図である。この図13を参照して、第2の単結晶基板18b上に形成した薄膜圧電体10を薄膜として取り出す方法について説明する。前記図11(f)で示した第2の単結晶基板18b上の薄膜圧電体素子10は、図13(a)に示すように1枚の第2の単結晶基板18b上に複数形成されている。第2の単結晶基板18bは、網籠202に乗せて第2の単結晶基板18bを溶解して除去する溶液を満たした溶解槽201に浸される。これによって薄膜圧電体素子10は、膜の状態で取り出される。この溶解槽201の溶解液は強制的に循環されており第2の単結晶基板18bは、完全に溶解される(図12のステップS1207)。そして完全に溶解が完了した時点で溶解槽201上部に設けられた開閉扉203が開放される。これにより薄膜圧電体素子10は溶解液を洗浄する流路204に沿って移送される。
【0043】
この流路204には薄膜圧電体素子10を攪拌する超音波振動器205が備えられており、薄膜圧電体素子10は超音波振動を加えられながら流路204に沿って搬送される。流路204の下流にはベルトコンベア206が設けられ、薄膜圧電体素子10を流路204から取り出し乾燥される(図13(c))。乾燥した薄膜圧電体素子10は、図外のエアピンセットで吸引し搬送され図13(d)に示すようにトレイ207に並べられる(図12のステップS1208)。
【0044】
薄膜圧電体素子10を、薄膜保持部8a、8bに高精度に貼り付ける方法について図12、および図14から図17を参照して説明する。図14は薄膜圧電体素子10を第1の位置決めベース209上に位置決めする工程を説明するための図であり、図15は第1の位置決めベース209の斜視図である。図16は第2の位置決めベース211の斜視図であり、図17は第2の位置決めベース211を第1の位置決めベース209に重ね合わせる工程を説明するための図である。本発明はこのような工程を実施することに特徴を有している。
【0045】
まず、トレイ207上の薄膜圧電体素子10をエアピンセット208で取り出し、第1の位置決めベース209上に移送する(図12のステップS1209)。
【0046】
第1の位置決めベース209には、薄膜圧電体素子10の外形形状と同一形状となった凸状の薄膜載置部209aが設けられている。
【0047】
薄膜載置部209aの上面は平面であり、かつ薄膜圧電体素子10を受ける面は、その外周は一回り小さい形状、好ましくは、薄膜圧電体素子10と相似形となっている(図15参照)。これにより、接着剤13が第1の位置決めベース209に洩れるのを防止することができる。
【0048】
薄膜載置部209aの上面に移送された薄膜圧電体素子10は、図14(b)に示すように精度よく位置決めされた状態にあるとは限らない。そこで、薄膜圧電体素子10の位置ずれを補正するために、図14(c)に示すように4方向から位置決めブロック210a,210b,210c,210dを、薄膜圧電体素子10の外周部を押し付ける。これらのブロック210a,210b,210c,210dは、薄膜圧電体素子10と同一形状の外形部を有する薄膜載置部209aの側面部209bで規制される。
【0049】
各ブロック210a,210b,210c,210dが薄膜載置部209aの側面部209bに当接することにより薄膜圧電体素子10は、第1の位置決めべース209上の所定の位置に位置決めされる(図12のステップS1210)。
【0050】
薄膜載置部209aの上面には、エアを吸引あるいは噴出する微細な空気孔209cが複数個設けられている。薄膜載置部209aの上面に位置決めされた薄膜圧電体素子10は、微細な空気孔209cを通してエアポンプ212で吸引され固定される(図12のステップS1211)。
【0051】
一方、フレクシャ7は、図16に示すように第2の位置決めベース211上に固定されている(図12のステップS1212)。この状態でフレクシャ7の薄膜保持部8a,8bには接着剤13が塗布される(図12のステップS1213)。
【0052】
その後、図17に示すように薄膜圧電体素子10を吸引した状態の第1の位置決めベース209は、フレクシャ7を固定した第2の位置決めベース211に嵌め合われる。嵌め合いは、第2の位置決めベース211に設けたガイド軸211aを、第1の位置決めベース209に設けたガイド穴209dに係合させることにより行い、これにより、第1、第2の位置決めベース209、211は互いに正確に位置決めされて重ねられる(図12のステップS1214)。
【0053】
このときフレクシャ7と薄膜圧電体素子10との間には数μの隙間mが生じるように第1の位置決めベース209と第2の位置決めベース211とは構成されている。これにより薄膜圧電体素子10を薄膜載置部209aに押し付けて破損させないように配慮している。
【0054】
そして、第1の位置決めベース209と第2の位置決めベース211とが重ね合わされて薄膜圧電体素子10とフレクシャ7が対向した状態となったところで、薄膜載置部209aの空気孔209cから逆にエアを噴出させる(図12のステップS1215)。これにより、薄膜圧電体素子10は、フレクシャ7の薄膜保持部8a、8bに確実に接着される。接着剤13の硬化のために加熱を行うが、その間も薄膜載置部209aの空気穴209cからエアを噴出し続ける(図12のステップS1216)。
【0055】
このような構成のディスク装置におけるヘッド支持機構100の動作について、図18〜図20を参照して説明する。図18はヘッド支持機構100の側面図であり、図19はヘッド支持機構100の動作を説明するための薄膜圧電体素子10の断面および電圧印加仕様を説明するための図である。図20はヘッド支持機構100の動作を説明するための概略構成図である。
【0056】
薄膜圧電体素子10の薄膜圧電体素子駆動配線9cはグランドレベルに設定されている。薄膜圧電体素子駆動配線9a,9bには図19(b),(c)に示すようにそれぞれ第1、第2の薄膜圧電体11a、11bをそれぞれ駆動する駆動電圧が印可される。この駆動電圧は、バイアス電圧V0を中心としてお互いに逆位相となっている。駆動電圧が印加されると、図19(a)に示すように第1、第2の薄膜圧電体11a,11bは矢印B方向に伸縮する。第1、第2の薄膜圧電体11a,11bには図11(c)に示す分極方向Aに電圧が印加されるため、第1、第2の薄膜圧電体11a,11bの分極が反転しその特性を損なうことはない。
【0057】
図20は薄膜圧電体素子10aが伸び、薄膜圧電体素子10bが収縮したときのスライダ2の回転動作について描いた図であり、薄膜圧電体素子10aが矢印E方向に伸び、薄膜圧電体素子10bが矢印D方向に収縮すると、スライダ2およびスライダ保持基板3aは突起部3bに当接するディンプル4gを中心に矢印C方向に回動する。従って、スライダ2上に設けられた磁気ヘッド1は、磁気ディスクに同心状態で設けられた各トラックの幅方向に移動することになる。これによりトラックから位置ずれを起こした磁気ヘッド1を所定のトラックに追従させることができ、磁気ヘッド1のオントラック性を高精度で実現することができる。
【0058】
繋ぎ部19a,19bの幅寸法は、図4に示すように、配線6a,6b,6c,6dが、それぞれ配置される必要最小限の幅寸法にそれぞれなっているために、スライダ保持基板3aの回動時における負荷が低減されて、スライダ保持基板3aが確実に回動される。
【0059】
なお、スライダ2には、図2に示すロードビーム4の板バネ部4eによりロード荷重(20〜30mN)が加えられており、スライダ保持基板3aが回動される場合には、このロード荷重が、ディンプル4gとスライダ保持基板3aとに作用する。従って、スライダ保持基板3aには、スライダ保持基板3aとディンプル4gとの摩擦係数にて決定される摩擦力が作用する。この摩擦力によりスライダ保持基板3aの突起部3bとディンプル4gとの間に位置ずれが生じない。
【0060】
図20(b)は、図20(a)の構成の模式図を示したものである。薄膜保持部8aと薄膜圧電体素子10aとからなる第1のビーム161と薄膜保持部8bおよび薄膜圧電体素子10bとからなる第2のビーム162とは、ディンプル4gで回動自在に拘束されたスライダ保持基板3aに回動自在に連結されている。磁気ヘッド1はディンプル4gから距離dを置いてスライダ保持基板3a上に設けられている。弾性ヒンジ部19a,19bは、スライダ2のロール方向およびピッチ方向に柔軟な構成となっているため、スライダ2がディスク上に浮上特性に対して良好な特性を与える。第1のビーム161と第2のビーム162とがそれぞれD方向、E方向に伸縮するとスライダ保持基板3aが回動し、磁気ヘッド1はトラックに対して垂直方向に移動する。
【0061】
以上のように本実施の形態によれば、単結晶の薄膜圧電体11a、11bが2層構成を有しているので、小さい印加電圧により大きな変位を得ることができる薄膜圧電体アクチュエータを実現することができる。また、薄膜圧電体11a、11bを2層化することでその剛性が高められるので、アクチュエータとして共振周波数を高くすることができる。これにより駆動周波数を高めることができ、追従性の高い良好な特性を得ることができる。
【0062】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、薄膜を高精度に、かつ破損させずにフレクシャに貼り付けることができる。また、これにより圧電素子駆動用の昇圧電源回路などを必要とするようなことがなく、ヘッド素子は磁気ディスク上に沿って、微小な範囲で変位可能となり、したがって、ヘッド素子を磁気ディスク上の任意の位置にて高精度で位置決めすることができるヘッド支持機構が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構の斜視図
【図2】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構を分解して示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構に使用されるスライダの斜視図
【図4】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構に使用されるフレクシャの構成図
【図5】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における薄膜圧電体の平面図
【図6】図5のZ−Z線における断面図
【図7】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構に使用されるフレクシャの平面図
【図8】図7の X−X線における断面図
【図9】図7のY−Y線における断面図
【図10】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における薄膜圧電体およびその電極を単結晶基板上で成膜する手順を示した図
【図11】本発明の実施の形態において単結晶基板上に成膜した薄膜圧電体を2層構成化する手順を示した図
【図12】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における薄膜圧電体の製造方法を示すフローチャート
【図13】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における第2単結晶基板を除去する工程図
【図14】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における薄膜圧電体を第1の位置決めベース上に位置決めする工程図
【図15】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における第1の位置決めベースの斜視図
【図16】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における第2の位置決めベースの斜視図
【図17】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構における第2の位置決めベースを第一の位置決めベース上に重ねる工程図
【図18】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構の側面図
【図19】本発明の実施の形態におけるヘッド支持機構の動作を説明するための薄膜圧電体の断面および電圧印加仕様を説明する図
【図20】本発明の実施の形態に係るヘッド支持機構の動作を説明するための概略構成の平面図
【図21】従来のディスク装置に備えられるヘッド支持機構の一例を示す平面図
【符号の説明】
1 磁気ヘッド(ヘッド素子)
2 スライダ
3a スライダ保持基板
4 ロードビーム
7 フレクシャ
8 薄膜保持部
10 薄膜圧電体素子(薄膜)
209 第1の位置決めベース
209a 薄膜載置部+
209b 薄膜載置部の側面部
209c 空気孔
209d ガイド穴
211 第2の位置決めベース
211a ガイド軸
Claims (4)
- ヘッド素子を搭載したスライダがロードビームの先端部に装着されると共に、前記スライダが前記ロードビームに対して回転自在に支持されるように構成されたヘッド支持機構において、前記スライダに回動力を付与する薄膜を、ヘッド素子配線用のフレクシャの要部に接着する薄膜接着方法であって、
互いに嵌合することで一体化する第1、第2の位置決めベースを用意したうえで、第1の位置決めベースに前記薄膜を配置し、前記第2の位置決めベースに前記フレクシャを固定的に取り付ける工程と、
前記第1の位置決めベース上の前記薄膜に対して位置補正処理を施す工程と、
補正後の前記薄膜を空気圧により前記第1の位置決めベースに吸着させる工程と、
前記第1の位置決めベースと前記第2の位置決めベースとを嵌合させることで、前記フレクシャの要部に前記薄膜を対向させる工程と、
前記フレクシャの要部に前記薄膜を接着する工程と、
とを含み、前記フレクシャの要部に前記薄膜を接着する際に、前記薄膜を空気圧により前記第1の位置決めベースから離間させて前記フレクシャの要部に接着する、
ことを特徴とするヘッド支持機構のおける薄膜接着方法。 - 前記薄膜を接着剤により前記フレクシャの要部に接着するとともに、その接着に際して、第1、第2の位置決めベースのうち、少なくとも第2の位置決めベースを加熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッド支持機構における薄膜接着方法。 - 前記第1の位置決めベース上の前記薄膜に対して位置補正処理を施す際に、前記第1の位置決めベースの薄膜載置部を薄膜外形形状と同等形状の凸状に形成したうえで、前記薄膜を搭載した前記薄膜載置部の側面に位置決めブロックを当接させることで、前記薄膜を前記薄膜載置部の所定位置に対して位置補正する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のヘッド支持機構における薄膜接着方法。 - ヘッド素子を搭載したスライダがロードビームの先端部に装着されると共に、前記スライダが前記ロードビームに対して回転自在に支持されるように構成されたヘッド支持機構において、前記スライダに回動力を付与する薄膜を、所定位置に位置決めしたうえでヘッド素子配線用のフレクシャの要部に接着する際に用いる薄膜接着冶具であって、
第 1 の基準面を有するとともに当該第1の基準面に前記薄膜の外形と同一形状となった凸状の薄膜載置部を有する第 1 の位置決めベースと、
前記薄膜載置部の側面に当接することで、前記薄膜載置部上の前記薄膜を位置決め補正する位置決めブロックと、
前記薄膜載置部の上面に開口する空気孔と、
前記開口から空気を吸引あるいは噴射させる吸引・噴射手段と、
第2の基準面を有し、この第 2 の基準面上に前記フレクシャを位置決め固定する第 2 の位置決めベースと、
前記第 1 の基準面と前記第 2 の基準面とが互いに平行な状態を維持したまま、前記第 1 の位置決めベースと前記第 2 の位置決めベースとを、その対向方向に沿って相対移動可能に保持するガイド機構と、
を有し、前記薄膜載置部の上面と前記第2の基準面との間の離間間隔を、前記薄膜の厚さと前記フレクシャの厚さを加えた値より僅かに広く設定する、
ことを特徴とする薄膜接着冶具。
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