JP3563477B2 - シンチレーションカメラ及びspect装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、被検体内に投与した放射性同位元素(radioisotope;RI)の空間的分布を画像化するシンチレーションカメラ及びSPECT装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
核医学診断法は、放射性同位元素又はその標識化合物が特定の組織や臓器に選択的に取り込まれる性質を利用し、放射性同位元素から放射(emission)されるγ線を体外から測定し、放射性同位元素の空間的分布(シンチグラム)を画像化して診断するという診断法であり、組織や臓器の生理的機能や代謝機能に関する診断を可能にする。シンチレーションカメラはこの診断法を実現する装置である。
【0003】
放射性同位元素から放射されるγ線のエネルギー分布は、当該放射性同位元素に固有の光電ピークを中心として広がっている。シンチレーションカメラは、上記光電ピークを中心とした所定幅のウインドウ(エネルギー帯域)に入るエネルギーを有する当該放射性同位元素からのγ線だけを計数するために、ウインドウ回路を備えている。
【0004】
このような核医学診断法において、複数種類の放射性同位元素を被検体に同時投与し、各放射性同位元素のシンチグラムを比較検討することの有効性が最近示唆されている。しかし、これには次のようなクロストークの問題がある。
【0005】
T1−201 とI−123の2種の放射性同位元素を同時投与するケースを考える。I−123は 160keVの光電ピークを固有する。I−123のウインドウは 160keVを中心に設定される。T1−201 は71keVと 167keVの2つの光電ピークを固有する。T1−201 に対しては、71keVを中心に設定されたウインドウと、 167keVを中心に設定されたウインドウとの2つのウインドウが設定される。I−123のウインドウと、T1−201 の 167keVを中心に設定されたウインドウとは重なり合う。したがって、I−123からのγ線と、T1−201 からのγ線とを区別できない。これをクロストークという。
【0006】
この問題に対する従来の解決策は次の通りである。まず、I−123のウインドウと、T1−201 の 167keVに対するウインドウとを合わせた広いウインドウを設定し、この広いウインドウ内のγ線を計数する。この広いウインドウ内のγ線のカウント数を、予めファントムを使って個別に測定した広いウインドウ内のI−123のカウント数とT1 −201のカウント数との比率にしたがって、I−123とT1−201 とに分配することにより、I−123とT1−201 それぞれのカウント数を推定するというものである。
しかし、この従来の解決策は、上記比率がファントムと実際の被検体とでは相違するため精度が悪かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、複数種の放射性同位元素を同時投与したときに発生するクロストークの問題を解決できるシンチレーションカメラ及びSPECT装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、被検体に同時投与された、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素とからのγ線を検出するカメラ本体と、前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線のエネルギーを計算するエネルギー計算手段と、前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線の入射位置を計算する位置計算手段と、前記エネルギー計算手段と前記位置計算手段の出力に接続され、前記第1の光電ピークを含む第1のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第1の入射数を入射位置毎にカウントし、前記第2の光電ピークと前記第3の光電ピークとを含む第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第2の入射数を入射位置毎にカウントするカウント手段と、前記第1の放射性同位元素に関する前記第1の光電ピークに対する前記第2の光電ピークの壊変率と前記第1の入射数に基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第3の入射数を求める手段と、前記第1の入射数と前記第3の入射数とに基づいて前記第1の放射性同位元素に関する第1の画像を作成する第1の画像作成手段と、前記第2の入射数と前記第3の入射数とに基づいて前記第2の放射性同位元素に関する第2の画像を作成する第2の画像作成手段とを具備することを特徴とするシンチレーションカメラである。
【0009】
請求項3に係る発明は、被検体に同時投与された、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素とからのγ線を被検体の周囲複数の方向から検出するカメラ本体と、前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線のエネルギーを計算するエネルギー計算手段と、前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線の入射位置を計算する位置計算手段と、前記エネルギー計算手段と前記位置計算手段の出力に接続され、前記第1の光電ピークを含む第1のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第1の入射数を入射位置及び方向毎にカウントし、前記第2の光電ピークと前記第3の光電ピークとを含む第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第2の入射数を入射位置及び方向毎にカウントするカウント手段と、前記第1の放射性同位元素に関する前記第1の光電ピークに対する前記第2の光電ピークの壊変率と前記第1の入射数に基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第3の入射数を入射位置及び方向毎に求める手段と、前記第1の入射数と前記第3の入射数とに基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第1のウインドウ又は前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第4の入射数を入射位置及び方向毎に求める手段と、前記第2の入射数と前記第3の入射数とに基づいて、前記第2の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第5の入射数を入射位置及び方向毎に求める手段と、前記第4の入射数に基づいて、前記第1の放射性同位元素に関する第1の断層像を再構成し、前記第5の入射数に基づいて前記第2の放射性同位元素に関する第2の断層像を再構成する再構成手段とを具備することを特徴とするSPECT装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、被検体に同時投与された、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素とからのγ線を被検体の周囲複数の方向から検出するカメラ本体と、前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線のエネルギーを計算するエネルギー計算手段と、前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線の入射位置を計算する位置計算手段と、前記エネルギー計算手段と前記位置計算手段の出力に接続され、前記第1の光電ピークを含む第1のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第1の入射数を入射位置及び方向毎にカウントし、前記第2の光電ピークと前記第3の光電ピークとを含む第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第2の入射数を入射位置及び方向毎にカウントするカウント手段と、前記第1の入射数に基づいて第1の断層像を再構成し、前記第2の入射数に基づいて第2の断層像を再構成する再構成手段と、前記第1の放射性同位元素に関する前記第1の光電ピークに対する前記第2の光電ピークの壊変率と前記第1の断層像に基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第3の断層像を作成する手段と、前記第1の断層像と前記第3の断層像とに基づいて前記第1の放射性同位元素に関する断層像を作成する手段と、前記第2の断層像と前記第3の断層像とに基づいて、前記第2の放射性同位元素に関する断層像を作成する手段とを具備することを特徴とするSPECT装置である。
【0011】
【作用】
請求項1に係る発明では、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素が被検体に同時投与された場合であっても、第2の光電ピークと第3の光電ピークの付近で発生するクロストークの問題を解決して、第1の放射性同位元素に関する第1の画像と、第2の放射性同位元素に関する第2の画像をそれぞれ分離して作成することができる。第1の入射数は、第1の放射性同位元素から放射されるγ線のうち、第1の光電ピーク付近のエネルギーの入射数である。第2の入射数は、第1の放射性同位元素から放射されるγ線のうち、第2の光電ピーク付近のエネルギーのγ線の入射数(第3の入射数)と、第2の放射性同位元素から放射され、第3の光電ピーク付近のエネルギーのγ線の入射数との合計数として与えられ、ここにクロストークが生じている。このクロストークの問題を解決するには、第2の入射数から、両放射性同位元素の入射数を分離しなければならない。請求項1に係る発明では、第1の放射性同位元素に関する第1の光電ピークに対する第2の光電ピークの壊変率に基づいて、第1の入射数から同じ第1の放射性同位元素に関する第2の光電ピーク付近の第3の入射数を求める。第1の放射性同位元素から放射される全γ線の入射数は、第1の入射数と第3の入射数とに基づいて与えられる。また、この第3の入射数と、第2の入射数とに基づいて、第2の放射性同位元素から放射される全γ線の入射数を求めることができる。各放射性同位元素から放射される全γ線の入射数を別々に使って、各放射性同位元素の画像を求めることができる。これによりクロストークの問題が解決される。
【0012】
請求項3に係る発明では、請求項1に係る発明と同様の原理で各放射性同位元素からの全γ線の入射数を入射位置及び方向毎に求め、各放射性同位元素の断層像を再構成することができる。
【0013】
請求項5に係る発明では、請求項3に係る発明と相違して、各ウインドウの入射数各々に基づいて2つの断層像を再構成し、2つの断層像に基づいて請求項1に係る発明と同様の原理で各放射性同位元素の断層像を求めることができる。
【0014】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明に係るシンチレーションカメラの好ましい実施例を説明する。ここでは、放射性同位元素として代表的なT1−201 とI−123とが同時投与されるものとする。図4に示すように、第1の放射性同位元素としてのT1−201 は71keVと 167keVの2つの光電ピークを固有する。図5に示すように、第2の放射性同位元素としてのI−123は 160keVの光電ピークを固有する。T1−201 の 167keVを中心に設定されるウインドウは、I−123の 160keVを中心に設定されるウインドウと重なり合う。
【0015】
図1は、本発明に係るシンチレーションカメラの好ましい実施例の構成図である。カメラ本体1は、例えばヨウ化ナトリウム(NaI) を蛍光物質とするシンチレータ2を有する。シンチレータ2の前方には、鉛板に多数の平行孔が開けられたコリメータ3が設けられる。シンチレータ2の後方には、ライトガイド4を介して複数の光電子増倍管(PMT)5がマトリクス状に配列される。被検体内の放射性同位元素から特定方向に放射されたγ線がシンチレータ2に入ると、その位置で蛍光が発生する。この光はライトガイド4を経て全てのPMT5に入射する。PMT5はこの入射光に比例した振幅のパルスを生じる。
【0016】
全てのPMT5からのパルスは、個別に、エネルギー計算部6と、位置計算部7に取り込まれる。エネルギー計算部6は、全てのPMT5の出力を加算することにより、入射γ線のエネルギーに比例したZ信号を求める。位置計算部7は、パルス振幅の空間的変化に基づいて、γ線の入射位置(X,Y)を求める。つまり、この位置計算は、或るPMT5の真下で光れば、そのPMT5からのパルスの振幅が全てのPMT5の中で最大となり、或る3つのPMT5の真ん中で光れば当該3つのPMT5からのパルスの振幅が等しくなることを概略的な原理とする。
【0017】
Z信号と位置信号(X,Y)は、散乱線補正部8に取り込まれる。散乱線補正部8は、T1−201 の71keVを中心に設定されたウインドウW12内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW12allから、散乱線数PW12scatlを位置(X,Y)毎に減算することにより、体内のT1−201 からカメラ本体1にダイレクトに入射した、ウインドウW12内のエネルギーを持つγ線だけの数PW12prim を位置(X,Y)毎に求める。
【0018】
PW12all=PW12prim +PW12scatl …(1)
また、散乱線補正部8は、T1−201 の 167keVとI−123の 160keVとに基づいて設定された広いウインドウW22内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW22allから、散乱線数PW22scatlを位置(X,Y)毎に減算することにより、体内のT1−201 又はI−123からカメラ本体1にダイレクトに入射した、広いウインドウW22内のエネルギーを持つγ線だけの数PW22prim を求める。
【0019】
PW22all=PW22prim +PW22scatl …(2)
分離画像作成部9は、散乱線補正部8で求められたPW12prim(X,Y)と、PW22prim(X,Y)とに基づいて、T1−201 だけの画像(シンチグラム)PT1−201(X,Y) と、I−123だけの画像PI−123(X,Y)を作成する。PT1−201(X,Y) と画像PI−123(X,Y)は、画像表示部10に表示され、また磁気ディスク装置等の記憶部11に記憶される。
【0020】
図2は散乱線補正部8のブロック図である。散乱線の補正方法としては、種々実用されているが、それらのいずれを採用してもよい。ここでは、TEW法と呼ばれる補正方法を採用するものとして説明する。ウインドウ部12〜17はそれぞれ、エネルギー計算部6からのZ信号がウインドウW11,W12,W13,W21,W22,W23に含まれるとき、パルスを出力する。図6に示すように、ウインドウW12は、T1−201 の71keVを中心に、例えば高低10%の範囲に設定される。ウインドウW22は、T1−201 の 167keVを中心とした例えば高低10%の範囲と、I−123の 160keVを中心とした例えば高低10%の範囲との中の最低値から最高値までの比較的広い範囲に設定される。ウインドウW11,W13,W21,W23は、TEW法に特有のウインドウであり、ウインドウW12,W22の両側に隣接して、それぞれ例えば5keVの幅に設定される。ウインドウW11,W12,W13,W21,W22,W23は重なり合わないので、1つのZ信号に対してウインドウ部12〜17のいずれかから1つのパルスが出力される。
【0021】
カウンタ18は、ウインドウ部12からのパルス数を位置(X,Y)毎にカウントすることにより、ウインドウW11内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW11all(X,Y) を求める。また、カウンタ18は、ウインドウ部13からのパルス数を位置(X,Y)毎にカウントすることにより、ウインドウW12内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW12all(X,Y) を求める。また、カウンタ18は、ウインドウ部14からのパルス数を位置(X,Y)毎にカウントすることにより、ウインドウW13内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW13all(X,Y) を求める。また、カウンタ18は、ウインドウ部15からのパルス数を位置(X,Y)毎にカウントすることにより、ウインドウW21内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW21all(X,Y) を求める。また、カウンタ18は、ウインドウ部16からのパルス数を位置(X,Y)毎にカウントすることにより、ウインドウW22内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW22all(X,Y) を求める。また、カウンタ18は、ウインドウ部17からのパルス数を位置(X,Y)毎にカウントすることにより、ウインドウW23内のエネルギーを持つγ線のカウント数(入射数)PW23all(X,Y) を求める。
【0022】
散乱成分除去部19は、ウインドウW11内のカウント数PW11all(X,Y) と、ウインドウW13内のカウント数PW13all(X,Y) とに基づいて、ウインドウW12内の散乱線数PW12scatl(X,Y) を推定する。この散乱線数PW12scatl(X,Y) は、図6において、エネルギー軸と、ウインドウW12と、エネルギースペクトラムとウインドウW12との2交点を結ぶ線とに囲まれた台形の面積を近似的に求めることにより得られる。この台形は、高さがW12、下辺がPW11all(X,Y) /W11、上辺がPW13all(X,Y) /W13で定義されるので、その面積、つまりPW12scatl(X,Y) は、(3)式で与えられる。
【0023】
PW12scatl(X,Y)
={(PW11all(X,Y) /W11+PW13all(X,Y) /W13)×W12}/2…(3)
同様に、散乱成分除去部19は、ウインドウW21内のカウント数PW21all(X,Y) と、ウインドウW23内のカウント数PW23all(X,Y) とに基づいて、ウインドウW22内の散乱線数PW22scatl(X,Y) を、(4)式により推定する。
【0024】
PW22scatl(X,Y)
={(PW21all(X,Y) /W21+PW23all(X,Y) /W23)×W22}/2…(4)
さらに、散乱成分除去部19は、(1)式にしたがって、PW12all(X,Y) から、散乱線数PW12scatl(X,Y) を減算することにより、体内のT1−201 からカメラ本体1にダイレクトに入射し、且つウインドウW12内のエネルギーを持つγ線だけの数PW12prim (X,Y) を求める。また、散乱成分除去部19は、(2)式にしたがって、PW22all(X,Y) から、散乱線数PW22scatl(X,Y) を減算することにより、体内のT1−201 又はI−123からカメラ本体1にダイレクトに入射し、且つ広いウインドウW22内のエネルギーを持つγ線だけの数PW22prim(X,Y)を求める。
【0025】
図3は分離画像作成部9のブロック図である。図7は、散乱線補正後の或る位置に関するエネルギースペクトラムを示している。図7において、T1−201 の光電ピーク 167keV付近のエネルギースペクトラムを一点鎖線で示し、I−123の光電ピーク 160keV付近のエネルギースペクトラムを二点鎖線で示している。
【0026】
ここで、或る位置でカウントしたT1−201 だけの71keV付近のカウント数をP71prim(X,Y) 、或る位置でカウントしたT1−201 だけの 167keV付近のカウント数をP167prim(X,Y)と表すものとする。なお、P71prim(X,Y) は、ウインドウW12内のエネルギーを持つγ線の数PW12prim (X,Y) に等しいので、(5)式が得られる。
【0027】
P71prim(X,Y) =PW12prim (X,Y) …(5)
T1−201 だけの画像PT1−201(X,Y) は、2つの光電ピーク付近のカウント数の合計であるので、(6)式で定義される。
【0028】
PT1−201(X,Y) =P71prim(X,Y) +P167prim(X,Y) …(6)
(6)式は、(5)式から次の(7)式に変形される。
PT1−201(X,Y) =PW12prim(X,Y)+P167prim(X,Y) …(7)
また、I−123だけの 160keV付近のカウント数をP160prim(X,Y)と表すものとする。広いウインドウW22内のカウント数PW22prim(X,Y)は、体内のT1−201 とからのγ線の数と、I−123からのγ線の数との合計であるので、(8)式で定義される。
【0029】
PW22prim(X,Y)=P167prim(X,Y)+P160prim(X,Y) …(8)
I−123だけの画像PI−123(X,Y)は、唯一の光電ピーク付近のγ線のカウント数であるので、(9)式で定義される。
【0030】
PI−123(X,Y)=P160prim(X,Y) …(9)
(9)式は、(8)式から次の(10)式に変形される、
PI−123(X,Y)=PW22prim(X,Y)−P167prim(X,Y) …(10)
このように、T1−201 だけの画像PT1−201(X,Y) は(7)式で、また、I−123だけの画像PI−123(X,Y)は(10)式から得られる。つまり、ウインドウW12内のカウント数PW12prim(X,Y)と、ウインドウW22内のカウント数PW22prim(X,Y)とは散乱線補正部8の出力として既知であるので、T1−201 だけの 167keV付近のカウント数P167prim(X,Y)が求められれば、T1−201 だけの画像PT1−201(X,Y) と、I−123だけの画像PI−123(X,Y)とが分離できることが理解されるであろう。
【0031】
T1−201 だけの 167keV付近のカウント数P167prim(X,Y)は、壊変率乗算部20で求めることができる。周知のように、T1−201 の71keVと 167keVの壊変比は、96:11である。したがって、T1−201 の71keVに対する 167keVの壊変率kは、11/96で与えられる。この壊変率kは、T1−201 に固有の値である。したがって、P167prim(X,Y)は、次の(11)式で与えられる。
【0032】
壊変率乗算部20で求められたP167prim(X,Y)は、T1−201 画像作成部21と、I−123画像作成部22とに送られる。T1−201 画像作成部21は上記(7)式にしたがってT1−201 の画像PT1−201(X,Y) を、I−123画像作成部22は上記(10)式にしたがってI−123の画像PI−123(X,Y)をそれぞれ作成する。
【0033】
このように本実施例によれば、光電ピークが接近している複数の放射性同位元素が同時投与されたときでも、カウント数を放射性同位元素毎に分離して、放射性同位元素各々の画像を得ることができる。
【0034】
上述では、本発明をシンチレーションカメラに適用した実施例を説明したが、SPECT装置にも適用できることは勿論である。SPECTとは、Single Photon Emission Computed Tomographyの略である。例えばカメラ本体1が被検体の周囲を所定角度毎に間欠的に回転する。これら各角度において、被検体から放射されるγ線は、カメラ本体1により一定時間ずつ検出される。1個のγ線がカメラ本体1に入射する毎に、カメラ本体1の入射面(検出面)上での入射位置(X,Y)が計算され、入射位置(X,Y)毎に入射数がカウントされる。この入射数P(X,Y)のカウントは、カメラ本体1の回転角度(θ)毎に繰り返される。これにより、各入射数は、入射位置と角度(X,Y,θ)で識別される。各入射数は、X線CTスキャナ装置でいうところの投影データと等価的に扱われ、X線CTスキャナ装置と同様に再構成処理を施されることにより、横断面のγ線分布(断層像)を得ることができる。本発明をSPECT装置に適用すると、或る横断面に関するT1−201 だけの断層像と、I−123だけの断層像が得られる。上述した実施例では、入射数を位置(X,Y)で識別していたが、SPECT装置では入射位置と回転角度(投影方向)とで(X,Y,θ)により識別されることになる。θは、SPECT装置が上記カメラ本体1が被検体の回りを回転する回転方式であれば、この回転角度を検出する例えばロータリエンコーダ等の角度検出器で求められ、また、SPECT装置が複数のγ線カウンタを被検体の周囲にリング状に配列したSPECT専用器であれば、γ線カウンタのチャンネルとして得られる。散乱線補正部8は、(X,Y,θ)毎に散乱線を補正することにより、PW12prim(X,Y,θ) 、PW22prim(X,Y,θ) を求める。そして、分離画像作成部9は、PW12prim(X,Y,θ) 、PW22prim(X,Y,θ) を使って、(X,Y,θ)毎にT1−201 のカウント数PT1−201(X,Y, θ) と、I−123のカウント数PI−123(X,Y,θ) を求める。分離画像作成部9の出力には再構成処理部が設けられるであろう。再構成処理部は、或る横断面に関する360°又は180°分のPT1−201(X,Y, θ) に基づいて、当該横断面に関するT1−201 だけの断層像を再構成する。また、再構成処理部は、或る横断面に関する360°又は180°分のPI−123(X,Y,θ) に基づいて、当該横断面に関するI−123だけの断層像を再構成する。これら断層像は、画像表示部10に表示され、また磁気ディスク装置等の記憶部11に記憶される。
【0035】
なお、本発明をSPECT装置に適用する場合、上記説明のように再構成処理前にクロストークを補正する他に、再構成処理後にクロストークを補正することが考えられる。この場合、散乱線補正部8の出力に再構成処理部が設けられるであろう。再構成処理部は、或る横断面に関する360°又は180°分のPW12prim(X,Y,θ) に基づいて、T1−201 の光電ピーク71keV付近のカウント数に関する第1の断層像を再構成する。また、再構成処理部は、或る横断面に関する360°又は180°分のPW22prim(X,Y,θ) に基づいて、T1−201 又はI−123から広いウインドウW22を通過したカウント数に関する第2の断層像を再構成する。分離画像作成部9は、(11)式のように、第1の断層像の各画素に壊変率を乗算することにより、T1−201 の光電ピーク 167keV付近のカウント数に関する第3の断層像を求める。分離画像作成部9の画像作成部21は、(7)式のように、第1の断層像と第3の断層像とをフレーム間で加算することにより、当該横断面に関するT1−201 だけの断層像を作成する。また、分離画像作成部9の画像作成部22は、(10)式のように、第2の断層像から第3の断層像をフレーム間でサブトラクションすることにより、当該横断面に関するI−123だけの断層像を作成する。
本発明は、上述した実施例に限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0036】
【発明の効果】
請求項1に係る発明では、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素が被検体に同時投与された場合であっても、第2の光電ピークと第3の光電ピークの付近で発生するクロストークの問題を解決して、第1の放射性同位元素に関する第1の画像と、第2の放射性同位元素に関する第2の画像をそれぞれ分離して作成することができる。第1の入射数は、第1の放射性同位元素から放射されるγ線のうち、第1の光電ピーク付近のエネルギーの入射数である。第2の入射数は、第1の放射性同位元素から放射されるγ線のうち、第2の光電ピーク付近のエネルギーのγ線の入射数(第3の入射数)と、第2の放射性同位元素から放射され、第3の光電ピーク付近のエネルギーのγ線の入射数との合計数として与えられ、ここにクロストークが生じている。このクロストークの問題を解決するには、第2の入射数から、両放射性同位元素の入射数を分離しなければならない。請求項1に係る発明では、第1の放射性同位元素に関する第1の光電ピークに対する第2の光電ピークの壊変率に基づいて、第1の入射数から同じ第1の放射性同位元素に関する第2の光電ピーク付近の第3の入射数を求める。第1の放射性同位元素から放射される全γ線の入射数は、第1の入射数と第3の入射数とに基づいて与えられる。また、この第3の入射数と、第2の入射数とに基づいて、第2の放射性同位元素から放射される全γ線の入射数を求めることができる。各放射性同位元素から放射される全γ線の入射数を別々に使って、各放射性同位元素の画像を求めることができる。これによりクロストークの問題が解決される。
【0037】
請求項3に係る発明では、請求項1に係る発明と同様の原理で各放射性同位元素からの全γ線の入射数を入射位置及び方向毎に求め、各放射性同位元素の断層像を再構成することができる。
【0038】
請求項5に係る発明では、請求項3に係る発明と相違して、各ウインドウの入射数各々に基づいて2つの断層像を再構成し、2つの断層像に基づいて請求項1に係る発明と同様の原理で各放射性同位元素の断層像を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシンチレーションカメラの一実施例の構成図。
【図2】図1の散乱線補正部のブロック図。
【図3】図1の分離画像作成部のブロック図。
【図4】T1−201 だけを投与したときの或る位置に関するエネルギースペクトルを示す図。
【図5】I−123だけを投与したときの或る位置に関するエネルギースペクトルを示す図。
【図6】T1−201 とI−123を同時投与したときの或る位置に関するエネルギースペクトルを示す図。
【図7】図6に対応する散乱線補正後のエネルギースペクトルを示す図。
【符号の説明】
1…カメラ本体、 2…シンチレータ、
3…コリメータ、 4…ライトガイド、
5…光電子増倍管、 6…エネルギー計算部、
7…位置計算部、 8…散乱線補正部、
9…分離画像作成部、 10…画像表示部、
11…記憶部。
Claims (6)
- 被検体に同時投与された、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素とからのγ線を検出するカメラ本体と、
前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線のエネルギーを計算するエネルギー計算手段と、
前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線の入射位置を計算する位置計算手段と、
前記エネルギー計算手段と前記位置計算手段の出力に接続され、前記第1の光電ピークを含む第1のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第1の入射数を入射位置毎にカウントし、前記第2の光電ピークと前記第3の光電ピークとを含む第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第2の入射数を入射位置毎にカウントするカウント手段と、
前記第1の放射性同位元素に関する前記第1の光電ピークに対する前記第2の光電ピークの壊変率と前記第1の入射数に基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第3の入射数を求める手段と、
前記第1の入射数と前記第3の入射数とに基づいて前記第1の放射性同位元素に関する第1の画像を作成する第1の画像作成手段と、前記第2の入射数と前記第3の入射数とに基づいて前記第2の放射性同位元素に関する第2の画像を作成する第2の画像作成手段とを具備することを特徴とするシンチレーションカメラ。 - 前記第1の入射数と前記第2の入射数各々に対して散乱線補正を行う手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のシンチレーションカメラ。
- 被検体に同時投与された、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素とからのγ線を被検体の周囲複数の方向から検出するカメラ本体と、
前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線のエネルギーを計算するエネルギー計算手段と、
前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線の入射位置を計算する位置計算手段と、
前記エネルギー計算手段と前記位置計算手段の出力に接続され、前記第1の光電ピークを含む第1のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第1の入射数を入射位置及び方向毎にカウントし、前記第2の光電ピークと前記第3の光電ピークとを含む第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第2の入射数を入射位置及び方向毎にカウントするカウント手段と、
前記第1の放射性同位元素に関する前記第1の光電ピークに対する前記第2の光電ピークの壊変率と前記第1の入射数に基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第3の入射数を入射位置及び方向毎に求める手段と、
前記第1の入射数と前記第3の入射数とに基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第1のウインドウ又は前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第4の入射数を入射位置及び方向毎に求める手段と、
前記第2の入射数と前記第3の入射数とに基づいて、前記第2の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線の第5の入射数を入射位置及び方向毎に求める手段と、
前記第4の入射数に基づいて、前記第1の放射性同位元素に関する第1の断層像を再構成し、前記第5の入射数に基づいて前記第2の放射性同位元素に関する第2の断層像を再構成する再構成手段とを具備することを特徴とするSPECT装置。 - 前記第1の入射数と前記第2の入射数各々に対して散乱線補正を行う手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のSPECT装置。
- 被検体に同時投与された、第1の光電ピークと第2の光電ピークを有する第1の放射性同位元素と、前記第2の光電ピークに接近した第3の光電ピークを有する第2の放射性同位元素とからのγ線を被検体の周囲複数の方向から検出するカメラ本体と、
前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線のエネルギーを計算するエネルギー計算手段と、
前記カメラ本体からの出力に基づいて、γ線の入射位置を計算する位置計算手段と、
前記エネルギー計算手段と前記位置計算手段の出力に接続され、前記第1の光電ピークを含む第1のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第1の入射数を入射位置及び方向毎にカウントし、前記第2の光電ピークと前記第3の光電ピークとを含む第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第2の入射数を入射位置及び方向毎にカウントするカウント手段と、
前記第1の入射数に基づいて第1の断層像を再構成し、前記第2の入射数に基づいて第2の断層像を再構成する再構成手段と、
前記第1の放射性同位元素に関する前記第1の光電ピークに対する前記第2の光電ピークの壊変率と前記第1の断層像に基づいて、前記第1の放射性同位元素から放射されたγ線であって、且つ前記第2のウインドウ内のエネルギーを有するγ線に関する第3の断層像を作成する手段と、
前記第1の断層像と前記第3の断層像とに基づいて前記第1の放射性同位元素に関する断層像を作成する手段と、
前記第2の断層像と前記第3の断層像とに基づいて、前記第2の放射性同位元素に関する断層像を作成する手段とを具備することを特徴とするSPECT装置。 - 前記第1の入射数と前記第2の入射数各々に対して散乱線補正を行う手段をさらに備えることを特徴とする請求項5記載のSPECT装置。
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