JP3562732B2 - 複筒式油圧緩衝器 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は複筒式油圧緩衝器に関し、特に、在来の複筒式油圧緩衝器の機能および主要構成部の互換性を確保した上で、傾斜配置または横配置においても安定した減衰特性を得ることができる複筒式油圧緩衝器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は一般的な複筒式の油圧緩衝器の半切断面図である。この緩衝器51のシリンダは開口端52を上側に配置した有底二重円筒53をなし、その内筒54の内側に内周室55aを、同内筒54の外側で外筒56との間に外周室55bを構成し、内周室55aに可動隔壁部材59を設けてロッドガイド60を貫通摺動するピストンロッド61に取付け、上記内周室55の封止端57側には固定隔壁部材58を設けてその封止端57側を外周室55bに連通し、そのロッドガイド60側を気体室62とする。
【0003】
この気体室62は体積補償部をなし、上記固定隔壁部材58を圧縮行程で減衰力を発生するベースバルブ、可動隔壁部材59を伸張行程で減衰力を発生するピストンバルブとすることにより緩衝器はその伸縮動作に対し減衰力を発生する。また、ロッドガイド60の外方にはピストンロッド用のオイルシール63を取付け、このオイルシール部の作動油は戻り油路64を介して外周室に戻される。
【0004】
この緩衝器は、外筒56の内側に間隔をおいて内筒54を配置しているので、外筒が変形していてもピストン59は内筒54内を支障なく摺動でき、したがって、外筒56の外周にばね受けやその支持部品を溶接したり、または、ばね受け支持用の突起等をバルジ加工したりすることが可能となり、これらの理由から、車両用として多く用いられている。
【0005】
上記緩衝器は、大きな振動を受けた場合や横配置で使用する場合は、気体室の気泡が作動油中に混入し、減衰力が不安定となり減衰特性が変動することがあるので、これを解決するために、気体室をフリーピストンによって画成する技術(例えば、USP3408060号公報)が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外周室にフリーピストンを設ける場合には、外筒の内周面をフリーピストンが摺動できるようにその寸法精度を確保する必要があり、したがって、外筒の外周にばね受けやその支持部品を溶接したり、または、ばね受け支持用の突起等をバルジ加工したりすることができず、複筒式油圧緩衝器の利点を生かすことができない。
【0007】
本発明の目的は、在来の複筒式油圧緩衝器の機能を確保した上で、気体室の気泡が作動油中に混入するのを防止することにより、傾斜配置や横配置においても安定した減衰特性を確保することができ、幅広い使用環境の対応を可能とする複筒式油圧緩衝器を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決すべく本発明は、請求項1では、一端を封止した外筒内に、一端を封止した内筒を、その封止端を外筒の封止端側にして固定し、上記内筒内に油室を形成するとともに、同内筒の封止端側にフリーピストンを摺動可能に設けて封止端との間に気体室からなる体積補償室を形成し、上記内筒の開口端側を貫通するピストンロッドによって進退される可動隔壁部材を、同内筒内の油室に摺動可能に設け、上記内筒内の油室のフリーピストン側に固定隔壁部材を設け、上記可動隔壁部材と同固定隔壁部材のそれぞれに減衰機構を設け、上記ピストンロッドを支えるロッドガイドの外方に、同ピストンロッド用のオイルシールを取り付け、同ロッドガイドのオイルシール部から上記内筒の外側で、外筒との間をなす外周室への戻り油路を形成し、上記体積補償室と上記固定隔壁部材の間に、上記内筒内部と上記外周室とを連通する連通路を形成し、かつ、この外周室内に作動油を満たしたことを特徴とする。
請求項2では、請求項1において、上記内筒はその開口端側と封止端側とを別体に形成し、封止端側の内筒の開口部から、同内筒内に上記フリーピストンを組付け、上記開口端側の内筒と上記封止端側の内筒を接続することにより、フリーピストンの圧縮比を小さく抑え、略大気圧に等しく設定したことを特徴とする。
請求項3では、請求項1または請求項2に記載の複筒式油圧緩衝器において、上記開口端側の内筒と上記封止端側の内筒を、上記固定隔壁部材によって接続したことを特徴とする。
請求項4では、請求項1〜3のいずれかに記載の複筒式油圧緩衝器において、上記固定隔壁部材の外周に、外周凸部を設け、同外周凸部の両側に、上記開口端側の内筒と上記封止端側の内筒を圧入により接続したことを特徴とする。
【0009】
【作用】
内筒内部の固定隔壁部材の封止端側にフリーピストンを設けて気体室を形成し、内筒と外筒と間に形成される外周室には作動油を充満して気体を排除したので、緩衝器を横配置しても気体室の気泡が作動油に混入することがなく、かつ、フリーピストンは外筒に変形を受けても支障なく摺動される。内筒の開口端側と封止端側とを別体に形成してそれらの間に固定隔壁部材を取付けた場合は、内筒の封止端側の開口からフリーピストンを組み付けることにより気体室の圧力調節手段を設けることなく小圧縮比によって気体室を低圧に設定することができる。
【0010】
【実施例】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る油圧緩衝器の断面図、図2は要部詳細断面図である。
【0011】
油圧緩衝器のシリンダ1は同心の内筒2と外筒3でなる二重円筒をなし、その一端を蓋部材4によって封止し、開口を有するロッドガイド5を他端に設け、このロッドガイド5にはピストンロッド6を貫通し、また、シリンダ1とピストンロッド6の端部には取付け部材7(ピストンロッド側は図示せず。)を備える。
【0012】
シリンダ1の封止端側は、外筒3の端部内周に蓋部材4を嵌合してその外周をシーム溶接により固定し、この蓋部材4の内周に圧入されたキャップ8とそのOリング9によって内筒2の基部10を気密固定し、この内筒基部10内にOリング11を備えたフリーピストン12を摺動可能に設けて体積補償室をなす気体室13を形成する。上記フリーピストン12は内筒基部10に対して摺動することから、外筒3の凹凸の影響を受けることなく摺動され、また、フリーピストン12によって気体室と油室が画成されているので作動油に対する気泡混入を防止することができる。
【0013】
フリーピストン12の図2中の右方位置には固定隔壁部材をなすベース14を設け、ベース14はその外周突部14aの両側に内筒基部10と内筒2を圧入することによって両者を接続するとともに、ベース14の脚部14bを気体室13側に突出している。気体室13の内圧は内筒基部10のベース15側開口からフリーピストン12を組み付けることによってその圧縮比を小さく抑え、略大気圧に等しく設定することができ、また、一体の内筒を用いることにより、高圧縮比に設定することができる。
【0014】
上記内筒基部10には、気体室13とベース14の間のベース端油室15と内筒2の外側で外筒3との間をなす外周室17に連通する連通油路18をベース14の脚部14bの間の位置に形成する。ベース14にはその両側の油室を連通する複数のポート19を形成してチェックバルブ型ディスクバルブ20を設け、上記気体室13方向への油流について減衰力を発生する圧側減衰機構をなすベースバルブを構成する。
【0015】
詳細には、ベース14の中心にリベット部材20aをかしめ固定し、このリベット部材20aの外周にバルブスプリング20bによってポート19を閉じる方向に付勢された穴付きチェックバルブ20cをリベット部材20aに対して摺動可能に構成し、このチェックバルブ20cの穴20dに臨んでディスクバルブ20を設け、チェックバルブ20cからポート19に向かう方向の油流に対してチェックバルブ20cが閉じられ、穴20dを通る油流がディスクバルブ20を撓ませて減衰力を発生する。
【0016】
ピストンロッド6の先端の内筒2の内部にはピストン22を摺動可能に設けてピストン22の前後に油室S1,S2を画成する。ピストン本体22に伸び側減衰機構を構成し、内筒2の内部の開口端側からベース14までを摺動範囲とするピストンバルブ23を構成する。
【0017】
詳細には、ピストンバルブ23は、バルブストッパ、バルブスプリング付きチェックバルブ、ピストン本体、ディスクバルブ、バルブストッパの順にナットで固定し、ピストン本体22の前後を連通して形成したそれぞれのポートに前側油室S1からの油流を通すポートにチェックバルブ22aを、後側油室S2からの油流を通すポートにディスクバルブ22bを配置し、このディスクバルブ22bは後側から前側の油室に向かう油流について減衰力を発生する。
【0018】
シリンダ1の開口端にはロッドガイド5を固定し、その外方にピストンロッド6用のオイルシール24を取付け、このオイルシールが受けた作動油を外周室17に戻す溝状の戻り油路25をロッドガイド5の外周に備え、外筒3に固定されるリング状のキャップ26によってオイルシール24を固定する。
【0019】
詳細には、内筒2および外筒3の開口端内周にロッドガイド5の小径部と大径部を圧入し、外筒3の外側にキャップカラー26aを溶接固定し、このキャップカラー26aの内周に上記キャップ26をねじ止めする。
【0020】
上記の如く構成した油圧緩衝器の作用について説明する。この油圧緩衝器は、その気体室13を除いて内部に作動油を満たして構成し、緩衝器の圧縮行程においては、ピストンロッド6がシリンダ1内に進入すると、前側油室S1の作動油がピストン22のチェックバルブポートを通って後側油室S2に移動するとともにピストンロッド6の進入分がベースバルブ20を通って気体室13を圧縮する。この時、ベースバルブ20によって減衰力が発生する。
【0021】
詳細には、前側油室S1から気体室13に向かう作動油は、ベース14の穴付きチェックバルブ20cの穴20dを通り、ディスクバルブ20の撓み剛性によって減衰力を発生する。
【0022】
緩衝器の伸張行程においては、ピストン22の後方の油室が圧縮され、同室の作動油がピストン22の減衰ポートを通って前側油室S1に移動し、この時、ピストンバルブ23によって減衰力が発生するとともにピストンロッド6の退出に伴う前側油室S1の減圧によって気体室13が膨張し、ピストンロッド6の退出分の作動油がベースバルブ20を通って補われる。
【0023】
詳細には、ピストン22においては後側油室S2から前側油室S1への作動油の流れによってチェックバルブが閉じ、伸び側ポートのディスクバルブ22aの撓み剛性によって減衰力を発生し、一方、ベースバルブ20は気体室13からの流れによってディスクバルブ20がチェックバルブ20cの穴20dを閉じ、バルブスプリング20bの撓みによってチェックバルブ20cとともにポート19を開いて前側油室S1に作動油が補われる。
【0024】
また、ピストンロッド6に付着してロッドガイド5の僅かな隙間を通過した作動油はオイルシール24によって掻き落とされ、ロッドガイド5の外周の戻り油路25から外周室17に戻され、内筒基部10の連通油路18からベース端油室15に環流される。
【0025】
上記の如く構成される複筒式油圧緩衝器は、シリンダ、ピストン、ピストンロッド、各バルブ、およびロッドガイド部について在来の緩衝器と同一に構成することができ、かつ、外筒の外周についての凹凸による支障を受けることがなく、製造および使用の面で互換性を確保した上で、気体室のフリーピストンによって気泡の混入を避けることができ、傾斜配置および横配置が可能となる。
【0026】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、一端を封止した外筒内に、一端を封止した内筒を、その封止端を外筒の封止端側にして固定し、上記内筒内に油室を形成するとともに、同内筒の封止端側にフリーピストンを摺動可能に設けて封止端との間に気体室からなる体積補償室を形成し、上記内筒の開口端側を貫通するピストンロッドによって進退される可動隔壁部材を、同内筒内の油室に摺動可能に設け、上記内筒内の油室のフリーピストン側に固定隔壁部材を設け、上記可動隔壁部材と同固定隔壁部材のそれぞれに減衰機構を設け、上記ピストンロッドを支えるロッドガイドの外方に、同ピストンロッド用のオイルシールを取り付け、同ロッドガイドのオイルシール部から上記内筒の外側で、外筒との間をなす外周室への戻り油路を形成し、上記体積補償室と上記固定隔壁部材の間に、上記内筒内部と上記外周室とを連通する連通路を形成し、かつ、この外周室内に作動油を満たし気体を排除したので、緩衝器を横配置しても気体室の気泡が作動油に混入することがなく、かつ、フリーピストンは外筒が変形を受けても支障なく摺動されるので在来の複筒式油圧緩衝器の機能を確保した上で傾斜配置や横配置においても安定した減衰特性が確保され、幅広い使用環境の対応が可能となり、かつ、ロッドガイドの外方にピストンロッド用のオイルシールを取付け、このオイルシール部から外周室への戻り油路を形成し、上記気体室と固定隔壁部材の間に内筒内部と外周室とを連通する連通油路を形成することにより、オイルシール部の作動油が在来の緩衝器と同様に還流されて在来型緩衝器との間の主要構成の共通化が可能となり、製造面および使用面で在来の緩衝器との互換性を確保することができる。
【0027】
また、内筒の開口端側と封止端側とを別体に形成してそれらの間に固定隔壁部材を取付ける場合は、内筒の封止端側の開口からフリーピストンを組み付けることにより気体室の圧力調節手段を設けることなく気体室を低圧に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る油圧緩衝器の断面図
【図2】要部詳細断面図
【図3】一般的な複筒式の油圧緩衝器の半切断面図
【符号の説明】
1…シリンダ、2…内筒、3…外筒、4…蓋部材、5…ロッドガイド、6…ピストンロッド、8…キャップ、9…Oリング、10…内筒基部、11…Oリング、12…フリーピストン、13…気体室(体積補償室)、14…ベース(固定隔壁部材)、14a…外周突部、14b…脚部、15…ベース端油室、17…外周室、18…連通油路、19…ポート、20…チェックバルブ型ディスクバルブ(ベースバルブ)、20a…リベット、22…ピストン(可動隔壁部材)、23…ピストンバルブ、24…オイルシール、25…戻り油路、S1…前側油室、S2…後側油室。

Claims (4)

  1. 一端を封止した外筒内に、一端を封止した内筒を、その封止端を外筒の封止端側にして固定し、
    上記内筒内に油室を形成するとともに、同内筒の封止端側にフリーピストンを摺動可能に設けて封止端との間に気体室からなる体積補償室を形成し、
    上記内筒の開口端側を貫通するピストンロッドによって進退される可動隔壁部材を、同内筒内の油室に摺動可能に設け、
    上記内筒内の油室のフリーピストン側に固定隔壁部材を設け、上記可動隔壁部材と同固定隔壁部材のそれぞれに減衰機構を設け、
    上記ピストンロッドを支えるロッドガイドの外方に、同ピストンロッド用のオイルシールを取り付け、同ロッドガイドのオイルシール部から上記内筒の外側で、外筒との間をなす外周室への戻り油路を形成し、
    上記体積補償室と上記固定隔壁部材の間に、上記内筒内部と上記外周室とを連通する連通路を形成し、かつ、この外周室内に作動油を満たした、
    とを特徴とする複筒式油圧緩衝器。
  2. 請求項1に記載の複筒式油圧緩衝器において、上記内筒はその開口端側と封止端側とを別体に形成し、封止端側の内筒の開口部から、同内筒内に上記フリーピストンを組付け、上記開口端側の内筒と上記封止端側の内筒を接続することにより、フリーピストンの圧縮比を小さく抑え、略大気圧に等しく設定したことを特徴とする複筒式油圧緩衝器。
  3. 請求項1または請求項2に記載の複筒式油圧緩衝器において、上記開口端側の内筒と上記封止端側の内筒を、上記固定隔壁部材によって接続したことを特徴とする複筒式油圧緩衝器。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の複筒式油圧緩衝器において、上記固定隔壁部材の外周に、外周凸部を設け、同外周凸部の両側に、上記開口端側の内筒と上記封止端側の内筒を圧入により接続したことを特徴とする複筒式油圧緩衝器。
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