JP3562047B2 - エンジンの吸気装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リーンバーン運転が行われるエンジンの吸気装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジンの吸気装置として、例えば実開昭62−18335号公報に示されるようなものが知られている。この装置では、通常の吸気を行うための第1および第2の吸気ポートに加え、混合気形成用の第3吸気ポート(混合気供給ポート)が燃焼室に開口し、このポートに燃料噴射弁が設けられるとともに、加圧エア供給用の過給機を備えた連通路が接続されている。このポートの燃焼室への開口部には、一定タイミングで開閉作動するタイミング弁(第3吸気弁)が設けられ、その開弁時期は第1,第2吸気ポートの吸気弁の開弁時期よりも遅く設定されている。また、上記第2吸気ポートには開閉弁(スワールコントロール弁)が設けられ、上記第1吸気ポートは常時開通されているのに対し、第2吸気ポートは上記開閉弁の作動により運転状態に応じて適宜開閉されるようになっている。
【0003】
このような装置では、上記第3吸気ポート内で燃料と加圧エアとがミキシングされた上で、その混合気が、上記第1吸気ポート等から吸入される空気とは別に、吸気行程後半に燃焼室に送り込まれる。とくに低負荷領域では、開閉弁によって第2吸気ポートが閉じられた状態で第1吸気ポートからの吸気により燃焼室内にスワールが生成されつつ、第3吸気ポートから混合気が燃焼室中央部の点火プラグに向けて送り込まれる。このようにして、点火プラグまわりに混合気を偏在させる(すなわち成層化する)ことにより、良好なリーンバーンを実現して燃費の節減が図られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記装置では、既設の第1吸気ポート及び第2吸気ポートに加えて、新たに第3吸気ポートなるものを特設しなければならず、さらにこれを開閉するための弁やエア加圧手段も必要であり、構造が複雑でコスト高となる不都合がある。また、開閉弁が閉じた状態では第2吸気ポートがほとんど機能しておらず、無駄の多い構造となっている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記事情に鑑み、開閉弁が閉じた状態での第2吸気ポートを混合気供給ポートとして有効活用することより、簡単な構造で成層化を果たさんとするものであり、略中央部に点火プラグが設けられたシリンダ内に第1吸気ポートと第2吸気ポートとが連通し、第2吸気ポートにおいて吸気弁よりも上流側の位置に開閉弁が設けられるとともに、目標空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン運転領域と目標空燃比が理論空燃比以下のリッチ運転領域とが設定されたエンジンの吸気装置において、上記第2吸気ポートの吸気弁と開閉弁との間の部分にインジェクタの燃料噴射部を配置するとともに、上記リーン運転領域で上記開閉弁をほぼ全閉とし、上記リッチ運転領域で上記開閉弁を開く開閉制御手段を備え、少なくとも開閉弁がほぼ全閉とされるリーン運転領域での第2吸気ポートにおける吸気弁閉弁時期を、第1吸気ポートにおける閉弁時期よりも遅い時期でかつ圧縮行程中の時期に設定し、さらに、上記第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを可変にするバルブタイミング可変機構と、開閉弁をほぼ全閉とする領域では第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングよりも遅いバルブタイミングであって吸気行程から圧縮行程にわたるバルブタイミングにし、それ以外の領域では開閉弁をほぼ全閉とする領域よりも第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポート におけるバルブタイミングに近づけるバルブタイミング制御手段とを備えたものである。
【0006】
この構成において、リーン運転領域では、開閉弁がほぼ全閉とされることにより第2吸気ポートが混合気供給ポートとしての役割を担うことになり、この第2吸気ポートにおいて吸気弁と上記開閉弁との間に挟まれた空間内で燃料とエアとが混合され、この混合気がシリンダ略中央部の点火プラグに供給されるとともに、この混合気を取り巻くように第1吸気ポートからの吸気がシリンダ内に取り込まれることにより、燃焼室内が成層化され、良好なリーンバーンが確保される。一方、リッチ運転領域では、開閉弁が開かれて両吸気ポートからの吸気が実行され、十分な吸入空気量と燃料噴射量とによる均質燃焼によって高い出力が確保される。
【0007】
特に、上記第1吸気ポートを上記シリンダ内壁面に沿う方向に指向させ、上記第2吸気ポートを上記シリンダ内壁面に沿う方向よりも内側に指向させれば、第1吸気ポートからの吸気によってスワールが形成され、このスワールが第2吸気ポートからの混合気を取り巻く状態となり、点火プラグ近傍に混合気を偏在させる、いわゆる成層化をより確実にできる。
【0008】
さらに本発明では、少なくとも開閉弁がほぼ全閉とされるリーン運転領域での第2吸気ポートにおける吸気弁閉弁時期を、第1吸気ポートにおける閉弁時期よりも遅い時期でかつ圧縮行程中の時期に設定しているので、上記圧縮行程において第2吸気ポート内に燃焼室内の加圧エアが押し込まれてから第2吸気ポートが閉弁されることにより、この第2吸気ポート内に加圧エアがほぼ閉じ込められた状態とになり、この加圧エアに燃料が噴射されて混合気が形成されてから第2吸気ポートが開弁することにより、特別なエア加圧手段を用いずして、この第2吸気ポートから点火プラグ近傍へ確実に上記混合気が供給されることになる。
【0009】
しかも、上記開閉弁をほぼ全閉とする領域では第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングよりも遅いバルブタイミングであって吸気行程から圧縮行程にわたるバルブタイミングにし、それ以外の領域では上記開閉弁をほぼ全閉とする領域よりも第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングに近づけるバルブタイミング制御手段を備えているので、開閉弁をほぼ全閉とする領域では、遅くまで第2吸気ポートを開くことによって、この第2吸気ポート内に十分エアを取り込むことが可能である一方、それ以外の領域、すなわち開閉弁を開く領域では、当該期間を短くして第2吸気ポート内へのエアの取込みを少なくすることにより、成層化を弱めてNOx発生量を減らすことができる。また、第2吸気ポートの閉弁時期を早めることにより、この第2吸気ポートへのエアの吹き返しも抑制できる。
【0010】
さらに、上記開閉弁をほぼ全閉とする領域では、エンジン回転数が高いほど上記第1吸気ポートにおけるバルブタイミングに対する第2吸気ポートにおけるバルブタイミングの遅れ度合を増加させることにより、エンジン回転数にかかわらず常に第2吸気ポートへエアを取り込むのに十分な期間を確保することが可能になる。
【0011】
上記リーン運転領域では、その全域において開閉弁をほぼ全閉としてもよいが、このリーン運転領域内で目標空燃比を運転状態に応じて変化させる場合、このリーン運転領域の中でも特に目標空燃比がリーンである(すなわち特に成層化が要求される)第1の領域のみ上記開閉弁をほぼ全閉にし、それ以外の領域、すなわち比較的目標空燃比がリッチ側である第2の領域では第1の領域よりも開閉弁の開度を大きくするように上記開閉制御手段を構成するのがよい。このように開閉弁を少し開くことにより、成層化が弱められ、その分NOx発生量が減ってエミッションが向上することになる。
【0012】
このように成層化を弱めるとNOx発生量が減る理由は次の通りである。NOxは、燃焼温度が高いほど発生しやすい。ここで、ある程度以上のリーン運転領域では、リッチ運転領域に比べて燃焼室内の平均温度は低いが、上記成層燃焼を行うと局部的に高温化し、この部分でNOxが発生してしまう。従って、成層化を弱めるとNOx発生量が減ることになる。
【0013】
ただし、空燃比が非常に高いリーン運転では成層化が不可欠であるため、この領域では成層燃焼を行い、空燃比が低くなるにつれて、燃焼性を確保できる範囲で成層化を弱めることにより、NOx発生量の抑制が可能となるのである。
【0014】
従って、上記リーン運転領域内では、目標空燃比が低いほど開閉弁の開度を徐々に増大させるように上記開閉制御手段を構成してもよい。
【0015】
また、上記第2の領域の中でも、目標空燃比が低い特定領域ではほとんど成層化の必要がないため、リッチ運転領域における開閉弁開度と同等の開度まで開閉弁開度を増大させるようにしてもよい。これにより、上記特定領域でのNOx発生量はさらに低減する。
【0016】
燃料噴射時期については、上記リーン運転領域のうちの上記第1の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁時期よりも前の時期に燃料噴射を行わせ、上記第2の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁開始時に燃料噴射を行わせる燃料噴射制御手段を備えるのがよい。この構成によれば、上記第1の領域、すなわち開閉弁がほぼ全閉の領域では、第2吸気ポートの吸気弁の開弁前にこの吸気弁と開閉弁との間の略閉空間内で燃料とエアとを確実に予混合でき、この混合気を吸気弁開弁時に安定した状態で点火プラグ回りに供給できる一方、上記第2の領域、すなわち開閉弁が少し開かれて第2吸気ポートからもある程度吸気がなされる領域では、この第2吸気ポートでの開弁開始時に噴射した燃料を第2吸気ポートからの吸気に乗せて燃焼室内に運ばせることにより、ある程度の成層化を確保できる。
【0017】
また、上記リッチ運転領域(第2の領域において上記特定領域が設けられている場合にはリッチ運転領域と特定領域)では、上記第2吸気ポートにおける閉弁直後に燃料噴射を行わせることによって、次の第2吸気ポート開弁時までに燃料を十分拡散させて均質燃焼を促進できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すシリンダ1は、エンジンに複数設けられており、このシリンダ1の上部には、図2にも示すような燃焼室2が形成されている。燃焼室2の一方の側には、第1吸気ポート(以下、Pポートと称する。)3及び第2吸気ポート(以下、Sポートと称する。)4が設けられ、他方の側には第1排気ポート5及び第2排気ポート6が設けられている。上記Pポート3及びSポート4には図略の吸気管が接続され、この吸気管の途中にスロットル弁等が設けられており、上記両排気ポート5,6には図略の排気管が接続されている。また、燃焼室2の略中央部には点火プラグ8が配設されている。
【0020】
ここで、Pポート3の軸線はシリンダ1の内壁面に沿う方向に指向され、これによりスワール生成の促進が図られている。これに対し、Sポート4の軸線はシリンダ1の内壁面に沿う方向よりも内側よりの方向に指向されている。
【0021】
燃焼室2へのPポート3及びSポート4の開口部には吸気弁12がそれぞれ設けられ、同様に、燃焼室2への第1,第2排気ポート5,6の開口部には排気弁14がそれぞれ設けられている。Sポート4においてその吸気弁12よりも上流側の位置には、このSポート4を開閉する開閉弁10が設けられ、この開閉弁10と上記吸気弁12との間の位置に、インジェクタ16の燃料噴射口が挿入されている。
【0022】
上記吸気弁12及び排気弁14は、カムシャフト等からなる動弁機構によって開閉駆動されるが、このうち第2吸気ポート4における吸気弁12の動弁機構18にはVVT(バルブタイミング可変機構)20が設けられている。このVVT20は、動弁機構18のカムシャフトとクランクシャフトとの回転位相をずらすことにより、吸気弁12のバルブタイミングを変化させるものであり、従来から用いられているものをそのまま適用することが可能である。
【0023】
このエンジンには、図3に示すようなクランク角センサ22、エンジン回転数センサ24、吸気圧センサ26、スロットルセンサ28といった各種センサが設けられており、これらの検出信号がECU(コントロールユニット)30に入力されるようになっている。このコントロールユニット30は、領域判別手段32、燃料噴射制御手段34、開閉制御手段36、及びVVT制御手段(バルブタイミング制御手段)38を備えている。
【0024】
領域判別手段32は、エンジン回転数センサ24、吸気圧センサ26、スロットルセンサ28によって検出される運転状態が、図4に示すように主としてエンジン負荷により区画された各領域(A)(B)(C)(D)のうちのどの領域に属するかを判別するものである。
【0025】
燃料噴射制御手段34は、運転状態に対応して目標空燃比が設定されたマップから現在の運転状態に対応する目標空燃比を割り出し、この目標空燃比に基づいて必要燃料噴射量を算出するとともに、判別された運転領域に応じてクランク角センサ28の検出角に基づき燃料噴射時期を制御するものである。具体的に、上記目標空燃比は、図7に示されるようにエンジン負荷が小さいほど高く設定されるようになっており、各領域での目標空燃比の範囲は次の通りである(燃料噴射時期については後に記す)。
【0026】
領域(A):25〜40
領域(B):21〜25
領域(C):19〜21
領域(D):理論空燃比(≒14.7)
すなわち、領域(A)(B)(C)が本発明にいうリーン運転領域とされ、領域(D)が本発明にいうリッチ運転領域とされており、理論空燃比から19までの空燃比が目標空燃比から外されている。
【0027】
開閉制御手段36は、開閉弁10のアクチュエータに適宜制御信号を出力することにより、エンジンの運転状態に基づいて開閉弁10の開度を制御するものであり、具体的には、領域(A)では開閉弁10をほぼ全閉にし、領域(B)では開閉弁10を半開にし、領域(C)及び(D)では開閉弁10を全開にするように構成されている。
【0028】
VVT制御手段38は、前記VVT20に制御信号を出力してバルブタイミングを制御するものである。具体的には、図5(a)(b)に示されるPポート3でのバルブタイミング(図例ではピストン上死点近傍からピストン下死点近傍)に対し、上記領域(A)では同図(a)のようにSポート4でのバルブタイミングを十分遅らせる(図例では吸気行程後半から圧縮行程前半までの期間にする)一方、領域(B)(C)(D)では同図(b)のようにSポート4でのバルブタイミングをPポート3でのバルブタイミングとほぼ合致させるように、VVT制御手段38が構成されている。
【0029】
そして、図6に示すように、領域(A)では燃料噴射時期をSポート4の開弁直前の時期(すなわち吸気行程中の時期)にし、領域(B)では燃料噴射時期をSポート4の開弁開始時(すなわち吸気行程開始時)にし、領域(C)(D)では燃料噴射時期をSポート4の閉弁直後(すなわち圧縮行程中の時期)にするように、前記燃料噴射制御手段34が構成されている。
【0030】
次に、この装置の作用を説明する。
【0031】
まず、低負荷領域である(A)領域では、目標空燃比が非常に高いリーンバーン燃焼が実行されるが、この領域では、開閉弁10がほぼ全閉とされた上で、図5(a)に示すようにSポート4でのバルブタイミングがPポート3でのバルブタイミングよりも十分遅延されて圧縮行程中期で閉弁がなされ、このSポート4での開弁の直前に燃料が噴射される。従って、上記圧縮行程では、Sポート4内に燃焼室2内の加圧エアが押し込まれてからSポート4が閉弁されることにより、このSポート4内に上記加圧エアがほぼ閉じ込められた状態となり、この加圧エアに燃料が噴射されて両者が予混合されてから(すなわち混合気が形成されてから)Sポート4が開弁されることにより、特別なエア加圧手段を用いることなく、混合気が確実に燃焼室2内の点火プラグ8の近傍に供給されることになる。一方、Pポート3からの吸気はスワールを形成し、上記混合気を取り巻くため、点火プラグ8回りに混合気が偏在するいわゆる成層化状態が達成され、非常に高い空燃比でのリーンバーンが実現可能となる。特に、図2に示すように、インジェクタ16から噴射される燃料の一部が第2吸気ポート4の天壁に当るようにその噴射方向を設定することにより、点火プラグ8近傍で燃料濃度を局所的により高めることが可能になる。
【0032】
すなわち、この装置におけるSポート4は、従来の混合気供給ポートと略同等の機能を果たしており、このSポート4の活用によって混合気供給ポートの省略が可能になる。
【0033】
中負荷領域である領域(B)もリーン運転領域であるが、領域(A)よりも目標空燃比は少しリッチ側に設定される。この領域(B)では、図5(b)に示すように両吸気ポート3,4のバルブタイミングが略同等とされ、かつ、Sポート4が半開されるため、Pポート3を通じての吸気と同時にSポート4を通じてもある程度の吸気が行われる。従って、領域(A)に比べて燃焼室内の成層度合は弱められる。ただし、この領域(B)ではSポート4での開弁開始時に燃料が噴射され、この燃料はSポート4からの吸気に乗って燃焼室2内に運ばれるため、ある程度の成層化は確保される。
【0034】
高負荷領域である領域(C)も一応リーン運転領域であるが、目標空燃比が19〜21と理論空燃比に近くて成層化の必要性が低いため、この領域では、リッチ運転領域である最高負荷領域(D)と同様、開閉弁10が全開とされる。従って、吸気は両ポート3,4を通じてフルに行われ、十分な吸入空気量及び燃料噴射量でもって高い出力が確保される。しかも、燃料噴射はSポート4の閉弁直後に行われ、次の開弁時までに燃焼室外で拡散するため、これによって均質燃焼が促進され、燃焼室内で局部的にオーバーリッチになることが避けられる。
【0035】
図7は、各種燃焼が行われた時の空燃比とNOx発生量との関係をグラフにしたものであり、同図の実線は均質燃焼(領域(C)(D)で行われる燃焼)でのNOx発生量、一点鎖線は成層燃焼(領域(A)で行われる燃焼)でのNOx発生量、破線は部分成層燃焼(領域(B)で行われる燃焼)でのNOx発生量をそれぞれ示したものである。
【0036】
同図に示されるように、領域(B)すなわち目標空燃比が21〜25の領域では、成層燃焼を行う場合に比べて部分成層燃焼を行う場合の方が格段にNOx発生量が低くなっている。従って、この領域で上記のような部分成層燃焼を行うことにより、従来のように混合気供給ポートで成層燃焼を行う場合よりもNOx発生量を大幅に低減させることができ、エミッションを向上させることができる。また、領域(C)すなわち目標空燃比が19〜21の領域では、上記部分成層燃焼を行うよりも均質燃焼を行う方がNOx発生量がさらに低くなっており、この領域で上記のように均質燃焼を行うことにより、NOx発生量のさらなる低減が可能になる。
【0037】
なお、領域(D)では理論空燃比での燃焼が行われており、領域(A)〜(C)に比べてNOx発生量は多くなっているが、この理論空燃比での運転では、排気系に設けた触媒(例えば三元触媒)によってNOx排出量を十分低減できるため、特に支承はない。
【0038】
すなわち、この第1の実施の形態のような運転(図7に太線で示される運転)を行うことにより、良好なリーンバーン運転を可能にしながら、全領域においてNOx排出量を最も少ない量に抑え、エミッションを向上できることになる。
【0039】
また、このエンジンにEGR装置を付設すれば、NOxをさらに低減できることはいうまでもない。
【0040】
次に、本発明の実施の形態とは異なる形態を説明する。上記の本発明の第1の実施の形態では、VVT20によってSポート4でのバルブタイミングを可変にしているが、ここでは同バルブタイミングを図8に示すようなタイミングに固定している。
【0041】
まず、Sポート4での開弁時期は、Pポート3でのそれと同様にピストン上死点近傍まで早められている。これにより、Sポート4を通じての吸入空気量が増やされ、高負荷領域でも十分な出力を確保することが可能となっている。Sポート4での閉弁時期については、この閉弁時期が早すぎると、開閉弁10をほぼ全閉にする運転領域において特に高回転時にSポート4内にエアを取り込む期間が確保できなくなるおそれがあり、逆に開弁時期が遅すぎると、開閉弁10を開いても第2吸気ポートへのエアの吹き返しが生じやすくなって特に高負荷運転時に必要な出力が得られなくなるおそれがあるため、このSポート4における閉弁時期は、図示のようにPポート3における閉弁時期よりも遅い時期であって圧縮行程前半中の時期に設定されている。
【0042】
ここで、開閉弁10の開度設定は図3とほぼ同等で良いが、前記図8に示したようにSポート4の開弁期間は圧縮行程前半までとされている関係から、高回転時にはSポート4内に燃焼室内のエアを取り込む時間を十分に確保できず、ここで開閉弁10をほぼ全閉にするとSポート4から燃焼室内にうまく混合気が供給されなくなるおそれがあるので、たとえ低負荷領域といえども、高回転領域では開閉弁10を開いて燃料を吸気とともに燃焼室内へ送り込むのが好ましい。このような理由から、開閉弁10をほぼ全閉とする領域は、図9に示すように低負荷低回転領域に限定されている。
【0043】
本発明の第2の実施の形態を図10に示す。ここでは、Sポート4の軸線Xが点火プラグ8を通るまで、Sポート4をPポート3に対して傾斜させている。これにより、点火プラグ8の周囲での混合気の成層化をより確実なものにできる。
【0044】
なお、本発明は、上記の他、次のような形態を取ることも可能である。
【0045】
・前記図2に示したVVT16等を用い、エンジン回転数に応じてSポート4でのバルブタイミングを変えるようにしてもよい。この場合、図3に示した領域(A)において、エンジン回転数が高いほどPポート3のバルブタイミングに対するSポート4のバルブタイミングの遅れ度合を増加させることにより、エンジン回転数にかかわらず、Sポート4内に燃焼室2内のエアを取り込む期間を常に確保することが可能になる。
【0046】
・燃料噴射時期は、運転領域に関係なく常に一定にしておくことも可能である。
【0047】
・上記第1の実施の形態では、各領域について単一の開閉弁角度を設定しているが、本発明では、リーン運転領域において理論空燃比の変化に応じて開閉弁角度を徐々に変化させるようにしてもよい。
【0048】
・上記形態ではエンジン負荷に応じてほぼ連続的に目標空燃比を変化させているが、例えば図3に示す各領域(A)(B)(C)(D)について単一の目標空燃比を設定するようにしてもよい。また本発明は、運転状態がリーン運転領域とリッチ運転領域との少なくとも2つの領域に分けられているエンジンについて適用ができるものである。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明は、第2吸気ポートに設けられた開閉弁と吸気弁との間の部分にインジェクタの燃料噴射部を配置し、リーン運転領域では上記開閉弁をほぼ全閉とし、上記リッチ運転領域で上記開閉弁を開くようにしたものであるので、上記リーン運転領域では、上記第2吸気ポートを混合気供給ポートとして有効活用することにより、簡単かつ低廉な構造で燃焼室内を成層化し、良好なリーンバーン運転を実現できる効果がある。
【0050】
特に、上記第1吸気ポートを上記シリンダ内壁面に沿う方向に指向させ、上記第2吸気ポートを上記シリンダ内壁面に沿う方向よりも内側に指向させれば、上記成層化をより確実なものにできる。
【0051】
さらに本発明では、少なくとも開閉弁がほぼ全閉とされるリーン運転領域での第2吸気ポートにおける吸気弁閉弁時期を、第1吸気ポートにおける閉弁時期よりも遅い時期でかつ圧縮行程中の時期に設定することにより、圧縮行程中の燃焼室内の加圧エアを第2吸気ポート内に閉じ込め、特別なエア加圧手段を用いることなく十分な圧力で混合気を燃焼室内に供給できる。
【0052】
しかも、上記開閉弁をほぼ全閉とする領域では第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングよりも遅いバルブタイミングであって吸気行程から圧縮行程にわたるバルブタイミングにし、それ以外の領域すなわち開閉弁を開く領域では上記開閉弁をほぼ全閉とする領域よりも第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングに近づけるバルブタイミング制御手段を備えるので、上記開閉弁をほぼ全閉とする領域では第2吸気ポート内に十分エアを取り込むことができる一方、それ以外の領域では第2吸気ポート内へのエアの取込みを少なくして成層化を弱め、NOx発生量を減らすことができるとともに、第2吸気ポートへのエアの吹き返しを抑制して高い出力を確保できる効果が得られる。
【0053】
さらに、上記開閉弁をほぼ全閉とする領域において、エンジン回転数が高いほど上記第1吸気ポートにおけるバルブタイミングに対する第2吸気ポートにおけるバルブタイミングの遅れ度合を増加させるものによれば、エンジン回転数にかかわらず常に第2吸気ポートへエアを取り込むのに十分な期間を確保できる効果が得られる。
【0054】
上記リーン運転領域内で目標空燃比を運転状態に応じて変化させる場合、このリーン運転領域の中でも特に目標空燃比がリーンである(すなわち特に成層化が要求される)第1の領域のみ上記開閉弁をほぼ全閉にし、それ以外の領域、すなわち比較的目標空燃比がリッチ側である第2の領域では第1の領域よりも開閉弁の開度を大きくするように上記開閉制御手段を構成すれば、その分だけ成層化を弱めてNOx発生量を減らし、エミッションを向上させることができる。
【0055】
さらに、上記第2の領域の中でも、目標空燃比が低い特定領域ではリッチ運転領域と同等まで開閉弁開度を増大させることにより、この特定領域でのNOx発生量をさらに低減させることができる。
【0056】
また、上記リーン運転領域のうちの上記第1の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁時期よりも前の時期に燃料噴射を行わせ、上記第2の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁開始時に燃料噴射を行わせるような燃料噴射時期の制御を行えば、上記第1の領域では第2吸気ポート内での燃料とエアとの予混合を確実なものにでき、成層化をより安定した状態で実現できる一方、上記第2の領域では、この第2吸気ポートでの開弁開始時に噴射した燃料を第2吸気ポートからの吸気に乗せて燃焼室内に運ばせることにより、ある程度の成層化を確保できる効果が得られる。
【0057】
さらに、上記リッチ運転領域(第2の領域において上記特定領域が設けられている場合にはリッチ運転領域と特定領域)では、上記第2吸気ポートにおける閉弁直後に燃料噴射を行わせることによって、均質燃焼を促進でき、局部的なオーバーリッチ現象を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるエンジン要部の平面図である。
【図2】上記エンジン要部の断面正面図である。
【図3】上記エンジンに装備されるECUの機能構成を示すブロック図である。
【図4】上記エンジンにおいて設定されている運転領域を示すグラフである。
【図5】(a)(b)は上記エンジンにおいて切換えられるバルブタイミングを示した図である。
【図6】上記各運転領域においてて設定されているSポートのバルブタイミング及び燃料噴射タイミングを示した図である。
【図7】各種燃焼を行った時の空燃比とNOx発生量との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態とは別の形態において設定されたバルブタイミングを示す図である。
【図9】上記図8に示される形態において設定されている運転領域を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施の形態を示す模式平面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
2 燃焼室
3 Pポート(第1吸気ポート)
4 Sポート(第2吸気ポート)
8 点火プラグ
10 開閉弁
12 吸気弁
16 インジェクタ
20 VVT(バルブタイミング可変手段)
30 ECU
34 燃料噴射制御手段
36 開閉制御手段
38 VVT制御手段(バルブタイミング制御手段)
Claims (9)
- 略中央部に点火プラグが設けられたシリンダ内に第1吸気ポートと第2吸気ポートとが連通し、第2吸気ポートにおいて吸気弁よりも上流側の位置に開閉弁が設けられるとともに、目標空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン運転領域と目標空燃比が理論空燃比以下のリッチ運転領域とが設定されたエンジンの吸気装置において、
上記第2吸気ポートの吸気弁と開閉弁との間の部分にインジェクタの燃料噴射部を配置するとともに、上記リーン運転領域で上記開閉弁をほぼ全閉とし、上記リッチ運転領域で上記開閉弁を開く開閉制御手段を備え、
少なくとも開閉弁がほぼ全閉とされるリーン運転領域での第2吸気ポートにおける吸気弁閉弁時期を、第1吸気ポートにおける閉弁時期よりも遅い時期でかつ圧縮行程中の時期に設定し、
さらに、上記第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを可変にするバルブタイミング可変機構と、開閉弁をほぼ全閉とする領域では第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングよりも遅いバルブタイミングであって吸気行程から圧縮行程にわたるバルブタイミングにし、それ以外の領域では開閉弁をほぼ全閉とする領域よりも第2吸気ポートにおけるバルブタイミングを第1吸気ポートにおけるバルブタイミングに近づけるバルブタイミング制御手段とを備えたことを特徴とするエンジンの吸気装置。 - 請求項1記載のエンジンの吸気装置において、上記第1吸気ポートを上記シリンダ内壁面に沿う方向に指向させ、上記第2吸気ポートを上記シリンダ内壁面に沿う方向よりも内側に指向させたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1または2記載のエンジンの吸気装置において、上記開閉弁をほぼ全閉とする領域でエンジン回転数が高いほど上記第1吸気ポートにおけるバルブタイミングに対する第2吸気ポートにおけるバルブタイミングの遅れ度合を増加させるように上記バルブタイミング制御手段を構成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のエンジンの吸気装置において、上記リーン運転領域内で目標空燃比を運転状態に応じて変化させるとともに、このリーン運転領域の中でも目標空燃比が高い第1の領域のみ上記開閉弁をほぼ全閉にして目標空燃比が低い第2の領域では第1の領域よりも開閉弁の開度を大きくするように上記開閉制御手段を構成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項4記載のエンジンの吸気装置において、上記リーン運転領域内で目標空燃比が低いほど開閉弁の開度を徐々に増大させるように上記開閉制御手段を構成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項4または5記載のエンジンの吸気装置において、上記第2の領域の中でも目標空燃比が低い特定領域ではリッチ運転領域における開閉弁開度と同等の開度まで開閉弁開度を増大させるように上記開閉制御手段を構成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項4〜6のいずれかに記載のエンジンの吸気装置において、上記リーン運転領域のうちの上記第1の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁時期よりも前の時期に燃料噴射を行わせ、上記第2の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁開始時に燃料噴射を行わせる燃料噴射制御手段を備えたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項7記載のエンジンの吸気装置において、上記リッチ運転領域では上記第2吸気ポートにおける閉弁直後に燃料噴射を行わせるように上記燃料噴射制御手段を構成したことを特徴とするエンジンの吸気装置。
- 請求項6記載のエンジンの吸気装置において、上記リーン運転領域のうちの上記第1の領域では上記第2吸気ポートにおける開弁時期よりも前の時期に燃料噴射を行わせ、上記第2の領域のうち上記特定領域を除く領域では上記第2吸気ポートにお ける開弁開始時に燃料噴射を行わせ、上記特定領域及びリッチ運転領域では上記第2吸気ポートにおける閉弁直後に燃料噴射を行わせる燃料噴射制御手段を備えたことを特徴とするエンジンの吸気装置。
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- 1995-08-09 JP JP20335595A patent/JP3562047B2/ja not_active Expired - Fee Related
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