JP3560790B2 - 2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法 - Google Patents
2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3560790B2 JP3560790B2 JP29807397A JP29807397A JP3560790B2 JP 3560790 B2 JP3560790 B2 JP 3560790B2 JP 29807397 A JP29807397 A JP 29807397A JP 29807397 A JP29807397 A JP 29807397A JP 3560790 B2 JP3560790 B2 JP 3560790B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- formula
- trifluoromethyl
- ether
- represented
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Electrolytic Production Of Non-Metals, Compounds, Apparatuses Therefor (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解還元法による2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法に関する。2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルは有機化合物中にジフルオロメチレン基を導入する反応試剤または有機化合物の製造中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、ジフルオロメチレン基を有する化合物は特有の生物学的活性を持つことからその合成法が注目されている。これまで、カルボニル基、チオカルボニル基またはチオセタール基にDAST(ジメチルアミノサルファトリフルオライド)や同様の作用をする酸化的フッ素化剤を反応させてジフルオロメチレン基に変換することがしばしば行われている。また、ハロジフルオロメチル基を脱ハロゲンしてジフルオロメチレン基とする方法もよく知られている。しかしながら、トリフルオロメチル基からの選択的脱モノフルオリネーションは殆ど知られていない。
【0003】
ところで、炭素−フッ素結合はその結合エネルギーが大きく普通は容易に開裂しないが、π電子系に結合しているトリフルオロメチル基では電解還元反応によりフッ化物イオンの生成をともなって炭素−フッ素結合を切断することができる。しかし、通常トリフルオロメチル基から電解還元的にフッ素を除去する際には、一つ目のフッ素の脱離反応の還元電位と二つ目のフッ素の脱離反応の還元電位がほぼ同じであるため、逐次的に還元が進み、脱モノフルオリネーションにより生成したジフルオロメチレン基を有する化合物中へ過度に還元された副生成物が混入するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、特定の構造のπ電子系に結合しているトリフルオロメチル基を有する化合物を電解還元反応に付することにより収率よくジフルオロメチレン基を有する化合物を製造する方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、トリフルオロメチルケトン類をハロゲン化トリアルキルシランの存在下で電解還元すると2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルが生成することを見いだし本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は一般式(1)
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、R1は一価の有機基を表す。)
で表されるトリフルオロメチルケトン類を一般式(2)
( R2)3SiX (2)
(式中、R2はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはフェニル基を表し、Xは塩素、臭素またはヨウ素を表す。)
で表されるハロゲン化トリアルキルシラン存在下で電解還元することによる一般式(3)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、TASはトリアルキルシリル基を表し、R1は式(1)のR1と同じ置換基を表す。)
で表される2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法である。
【0011】
本発明にかかる一般式(1)で表されるトリフルオロメチルケトン類は、特に限定されず、R1で表される一価の有機基が電解還元反応の条件下で不活性であればよい。その様な有機基としては、炭素数1〜20の分岐を有することもあるアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、炭素数1〜20の置換基を有することもあるシクロアルキル基、炭素数1〜20の置換基を有することもあるアリール基、一般式(4)
−(CH2)n−R3 (4)
(式中、R3は炭素数1〜10のシクロアルキル基、アリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、3級アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、複素芳香族基を表し、nは0または1以上の整数を表す。)
で表される有機基などを挙げることができる。
【0012】
一般式(1)で表されるトリフルオロメチルケトン類を具体的に例示すると、トリフルオロメチル(フェニル)ケトン、トリフルオロメチル(フェニルメチル)ケトン、トリフルオロメチル(フェネチル)ケトン、トリフルオロメチル(n−ヘキシル)ケトン、トリフルオロメチル(c−ヘキシル)ケトン、トリフルオロメチル(エトキシカルボニルメチル)ケトン、トリフルオロメチル(2−フリル)ケトン、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロメチル(メトキシエチル)ケトン、トリフルオロメチル(チオメトキシエチル)ケトン、トリフルオロメチル(ジメチルアミノエチル)ケトン、トリフルオロメチル(アセチルエチル)ケトンを挙げることができるが、これらに限られないのは言うまでもない。
【0013】
本発明にかかる一般式(3)で表される2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルは、それぞれ一般式(1)のR1と同じ置換基R1を持つ対応する2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルである。
【0014】
本発明し使用するハロゲン化トリアルキルシランとしては、特に限定されないが、一般式(2)
(R2)3SiX (2)
において、R2がそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはフェニル基を表し、Xは塩素、臭素またはヨウ素を表すものが好ましい。好ましいハロゲン化トリアルキルシランとしては、塩化トリメチルシラン、塩化トリエチルシラン、塩化フェニルジメチルシラン、塩化ジフェニルメチルシラン、臭化トリエチルシランなどを挙げることができる。これらの内、塩化トリメチルシランは入手が容易で最も好ましい。 本発明の方法において使用する溶媒は、本発明の電解還元反応条件で不活性であればよく、ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、酸アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタンなどが使用され、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランが好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。
【0015】
本発明の電解還元は従来から知られている方法を適用して実施できる。本発明の方法に用いる電解槽は、陽極陰極分離型のセル、または単一型のセルを使用できる。分離型セルの場合隔膜としては、公知のイオン交換膜、例えば、ナフィオン(デュポン社、登録商標)膜、無機材質、例えば、ガラス、セラミックなどの多孔質膜を例示できる。好ましくは分離型のセルを用いる。
【0016】
本発明の方法に使用する支持電解質としてはテトラアルキルアンモニウム塩またはリチウム塩が好ましい。テトラアルキルアンモニウム塩のアルキル基としてはC1からC6の低級アルキル基が好ましい。塩の陰イオンとしてはハロゲン化物イオンや過塩素酸イオンやテトラフルオロホウ酸イオンやp−トルエンスルホナートイオンやp−トルエンスルホナートアセタートイオンが好ましい。具体的に本発明の方法に用いられる好ましい支持電解質としてはテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(Et4NBF4)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(Bu4NBF4)、臭化テトラエチルアンモニウム(Et4NBr)、臭化テトラブチルアンモニウム(Bu4NBr)、過塩素酸テトラエチルアンモニウム(Bu4ClO4)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(Bu4NClO4)、臭化リチウム(LiBr)等のハロゲン化リチウム、過塩素酸リチウム(LiClO4)等が挙げられる。これらのなかでも、特に臭化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸リチウムが好ましい。また、n−Bu4NBr−アセトニトリル、LiClO4−DMF、LiClO4−アセトニトリルの支持電解質−溶媒の系は特に好ましい組み合わせとして例示することができる。支持電解質の濃度としては0.01〜10mol/リットルが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法に用いられる陽極材料としては、特に限定されず、従来公知の材料が広く使用できる。分離型セルを使用した場合の陽極材料としては、鉛、炭素、白金が好ましい。
【0018】
本発明の製造法に用いられる陰極材料としては、特に限定されず、従来公知の材料を広く使用できる。好ましいものとしては、鉛、白金、ステンレススチール、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、アルミニウム、および炭素である。
【0019】
本発明の製造方法での電流密度としては1〜1000mA/cm2が好ましい。本発明の方法で流す電気の量は理論的には一つのフッ素の還元に2F/molであるが、過剰に通電しても差し支えない。通常、2〜40F/molで実施される。
【0020】
本発明の製造方法を実施する反応温度は−40〜100℃の範囲であり、好ましくは−20〜50℃である。
本発明の方法におけるハロゲン化トリアルキルシランの使用量は、トリフルオロメチルケトン類の1〜50モル倍であり、1.5〜10モル倍程度が好ましい。明確ではないが、本発明の方法においては、ハロゲン化トリアルキルシランは反応試剤としてだけでなく、一部は脱離したフッ素イオンの捕捉剤として作用しているものと考えられるので、1モル倍以上のハロゲン化トリアルキルシランが必要である。電解還元に使用する電気量により必要なハロゲン化トリアルキルシランの量は異なるが、最も好ましい電気量である2F/mol程度では2モル倍以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の方法においては、トリフルオロメチルケトン類の種類によっては生成物が不安定な場合があるので、還元反応の終了後または反応前に、陰極室液に塩基類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族第三アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどの脂肪族第二アミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどの第一アミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどの芳香族アミンなどを添加することが好ましい。しかし、塩基類を電解前に添加すると、例えば、トリフルオロメチル(フェネチル)ケトンやトリフルオロメチル(n−ヘキシル)ケトンなどの様に、トリフルオロメチルケトンの種類によっては、塩化トリメチルシランと反応して電解還元に対して不活性な1−トリフルオロメチルエノールシリルエーテル類となるため、その様な場合には反応終了後速やかに添加することが好ましい。
【0022】
本発明の方法によって製造される2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルは、例えば、
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を表し、(R4、R5、R6)がそれぞれ(n−ヘキシル基、n−プロピル基、水素原子)、(n−ヘキシル基、フェニル基、水素原子)、(n−ヘキシル基、水素原子、水素原子)、(n−ヘキシル基、R5とR6が結合してペンタメチレン基)、(n−オクチル基、フェニル基、メチル基)、(n−オクチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基)を表す。)
で表される反応式でα,α−ジフルオロ−β−ヒドロキシケトンを合成することができる(Tetrahedron Lett. 1983,24,507)。
【0025】
以下に実施例をもって本発明を説明するが、これらの実施態様に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
〔実施例1〕
1×2cm2の鉛陰極と炭素陽極を有し、ガラス膜で分離されたH型電解槽を使用した。基質トリフルオロメチルフェニルケトン1mmol、塩化トリメチルシラン(TMSCl)3mmol、トリエチルアミン(Et3N)3mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陰極室に、一方支持電解質臭化テトラn−ブチルアンモニウム(n−Bu4NBr)4mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陽極室に入れてアルゴンガス雰囲気下、−20℃、30mAの定電流で、基質1モルに対して電気量が2Fとなるように電解還元反応をおこなった。電解終了後、陰極室液を19Fnmrで分析したところ、1−フェニル−2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量は81%であった。
【0027】
【表1】
【0028】
〔実施例2〜10〕
電解槽温度、電流密度、電気量、塩化トリメチルシランの量を表1に示す様に変えて実施例1と同様に電解還元反応並びに後処理をおこない、1−フェニル−2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量を求め、結果を表1に示した。
【0029】
〔実施例11〕
1×2cm2の鉛陰極と炭素陽極を有し、ガラス膜で分離されたH型電解槽を使用した。基質トリフルオロメチルフェニルケトン1mmol、塩化トリメチルシラン(TMSCl)3mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陰極室に、一方支持電解質臭化テトラn−ブチルアンモニウム(n−Bu4NBr)4mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陽極室に入れてアルゴンガス雰囲気下、0℃、30mAの定電流で、基質1モルに対して電気量が2Fとなるように電解還元反応をおこなった。電解終了後、陰極液にトリエチルアミン(Et3N)3mmolを加え19Fnmrで分析したところ、1−フェニル−2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量は80%であった。
【0030】
【表2】
【0031】
〔実施例12〜17〕
基質の種類を表2に示す化合物に代えて実施例11と同様に電解還元反応並びに後処理をおこない、対応する2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量を求め、結果を表2に示した。
【0032】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、原料入手の容易なトリフルオロメチルケトン類を原料として、有機合成反応において有用なジフルオロエノールシリルエーテルを一段階で収率よく製造できるという効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解還元法による2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法に関する。2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルは有機化合物中にジフルオロメチレン基を導入する反応試剤または有機化合物の製造中間体として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、ジフルオロメチレン基を有する化合物は特有の生物学的活性を持つことからその合成法が注目されている。これまで、カルボニル基、チオカルボニル基またはチオセタール基にDAST(ジメチルアミノサルファトリフルオライド)や同様の作用をする酸化的フッ素化剤を反応させてジフルオロメチレン基に変換することがしばしば行われている。また、ハロジフルオロメチル基を脱ハロゲンしてジフルオロメチレン基とする方法もよく知られている。しかしながら、トリフルオロメチル基からの選択的脱モノフルオリネーションは殆ど知られていない。
【0003】
ところで、炭素−フッ素結合はその結合エネルギーが大きく普通は容易に開裂しないが、π電子系に結合しているトリフルオロメチル基では電解還元反応によりフッ化物イオンの生成をともなって炭素−フッ素結合を切断することができる。しかし、通常トリフルオロメチル基から電解還元的にフッ素を除去する際には、一つ目のフッ素の脱離反応の還元電位と二つ目のフッ素の脱離反応の還元電位がほぼ同じであるため、逐次的に還元が進み、脱モノフルオリネーションにより生成したジフルオロメチレン基を有する化合物中へ過度に還元された副生成物が混入するという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、特定の構造のπ電子系に結合しているトリフルオロメチル基を有する化合物を電解還元反応に付することにより収率よくジフルオロメチレン基を有する化合物を製造する方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、トリフルオロメチルケトン類をハロゲン化トリアルキルシランの存在下で電解還元すると2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルが生成することを見いだし本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は一般式(1)
【0007】
【化3】
【0008】
(式中、R1は一価の有機基を表す。)
で表されるトリフルオロメチルケトン類を一般式(2)
( R2)3SiX (2)
(式中、R2はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはフェニル基を表し、Xは塩素、臭素またはヨウ素を表す。)
で表されるハロゲン化トリアルキルシラン存在下で電解還元することによる一般式(3)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、TASはトリアルキルシリル基を表し、R1は式(1)のR1と同じ置換基を表す。)
で表される2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法である。
【0011】
本発明にかかる一般式(1)で表されるトリフルオロメチルケトン類は、特に限定されず、R1で表される一価の有機基が電解還元反応の条件下で不活性であればよい。その様な有機基としては、炭素数1〜20の分岐を有することもあるアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、炭素数1〜20の置換基を有することもあるシクロアルキル基、炭素数1〜20の置換基を有することもあるアリール基、一般式(4)
−(CH2)n−R3 (4)
(式中、R3は炭素数1〜10のシクロアルキル基、アリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、3級アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、複素芳香族基を表し、nは0または1以上の整数を表す。)
で表される有機基などを挙げることができる。
【0012】
一般式(1)で表されるトリフルオロメチルケトン類を具体的に例示すると、トリフルオロメチル(フェニル)ケトン、トリフルオロメチル(フェニルメチル)ケトン、トリフルオロメチル(フェネチル)ケトン、トリフルオロメチル(n−ヘキシル)ケトン、トリフルオロメチル(c−ヘキシル)ケトン、トリフルオロメチル(エトキシカルボニルメチル)ケトン、トリフルオロメチル(2−フリル)ケトン、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロメチル(メトキシエチル)ケトン、トリフルオロメチル(チオメトキシエチル)ケトン、トリフルオロメチル(ジメチルアミノエチル)ケトン、トリフルオロメチル(アセチルエチル)ケトンを挙げることができるが、これらに限られないのは言うまでもない。
【0013】
本発明にかかる一般式(3)で表される2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルは、それぞれ一般式(1)のR1と同じ置換基R1を持つ対応する2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルである。
【0014】
本発明し使用するハロゲン化トリアルキルシランとしては、特に限定されないが、一般式(2)
(R2)3SiX (2)
において、R2がそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはフェニル基を表し、Xは塩素、臭素またはヨウ素を表すものが好ましい。好ましいハロゲン化トリアルキルシランとしては、塩化トリメチルシラン、塩化トリエチルシラン、塩化フェニルジメチルシラン、塩化ジフェニルメチルシラン、臭化トリエチルシランなどを挙げることができる。これらの内、塩化トリメチルシランは入手が容易で最も好ましい。 本発明の方法において使用する溶媒は、本発明の電解還元反応条件で不活性であればよく、ニトリル類、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、酸アミド類、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、エーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタンなどが使用され、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランが好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。
【0015】
本発明の電解還元は従来から知られている方法を適用して実施できる。本発明の方法に用いる電解槽は、陽極陰極分離型のセル、または単一型のセルを使用できる。分離型セルの場合隔膜としては、公知のイオン交換膜、例えば、ナフィオン(デュポン社、登録商標)膜、無機材質、例えば、ガラス、セラミックなどの多孔質膜を例示できる。好ましくは分離型のセルを用いる。
【0016】
本発明の方法に使用する支持電解質としてはテトラアルキルアンモニウム塩またはリチウム塩が好ましい。テトラアルキルアンモニウム塩のアルキル基としてはC1からC6の低級アルキル基が好ましい。塩の陰イオンとしてはハロゲン化物イオンや過塩素酸イオンやテトラフルオロホウ酸イオンやp−トルエンスルホナートイオンやp−トルエンスルホナートアセタートイオンが好ましい。具体的に本発明の方法に用いられる好ましい支持電解質としてはテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート(Et4NBF4)、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(Bu4NBF4)、臭化テトラエチルアンモニウム(Et4NBr)、臭化テトラブチルアンモニウム(Bu4NBr)、過塩素酸テトラエチルアンモニウム(Bu4ClO4)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(Bu4NClO4)、臭化リチウム(LiBr)等のハロゲン化リチウム、過塩素酸リチウム(LiClO4)等が挙げられる。これらのなかでも、特に臭化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸リチウムが好ましい。また、n−Bu4NBr−アセトニトリル、LiClO4−DMF、LiClO4−アセトニトリルの支持電解質−溶媒の系は特に好ましい組み合わせとして例示することができる。支持電解質の濃度としては0.01〜10mol/リットルが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法に用いられる陽極材料としては、特に限定されず、従来公知の材料が広く使用できる。分離型セルを使用した場合の陽極材料としては、鉛、炭素、白金が好ましい。
【0018】
本発明の製造法に用いられる陰極材料としては、特に限定されず、従来公知の材料を広く使用できる。好ましいものとしては、鉛、白金、ステンレススチール、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、アルミニウム、および炭素である。
【0019】
本発明の製造方法での電流密度としては1〜1000mA/cm2が好ましい。本発明の方法で流す電気の量は理論的には一つのフッ素の還元に2F/molであるが、過剰に通電しても差し支えない。通常、2〜40F/molで実施される。
【0020】
本発明の製造方法を実施する反応温度は−40〜100℃の範囲であり、好ましくは−20〜50℃である。
本発明の方法におけるハロゲン化トリアルキルシランの使用量は、トリフルオロメチルケトン類の1〜50モル倍であり、1.5〜10モル倍程度が好ましい。明確ではないが、本発明の方法においては、ハロゲン化トリアルキルシランは反応試剤としてだけでなく、一部は脱離したフッ素イオンの捕捉剤として作用しているものと考えられるので、1モル倍以上のハロゲン化トリアルキルシランが必要である。電解還元に使用する電気量により必要なハロゲン化トリアルキルシランの量は異なるが、最も好ましい電気量である2F/mol程度では2モル倍以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の方法においては、トリフルオロメチルケトン類の種類によっては生成物が不安定な場合があるので、還元反応の終了後または反応前に、陰極室液に塩基類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの脂肪族第三アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミンなどの脂肪族第二アミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどの第一アミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリンなどの芳香族アミンなどを添加することが好ましい。しかし、塩基類を電解前に添加すると、例えば、トリフルオロメチル(フェネチル)ケトンやトリフルオロメチル(n−ヘキシル)ケトンなどの様に、トリフルオロメチルケトンの種類によっては、塩化トリメチルシランと反応して電解還元に対して不活性な1−トリフルオロメチルエノールシリルエーテル類となるため、その様な場合には反応終了後速やかに添加することが好ましい。
【0022】
本発明の方法によって製造される2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルは、例えば、
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を表し、(R4、R5、R6)がそれぞれ(n−ヘキシル基、n−プロピル基、水素原子)、(n−ヘキシル基、フェニル基、水素原子)、(n−ヘキシル基、水素原子、水素原子)、(n−ヘキシル基、R5とR6が結合してペンタメチレン基)、(n−オクチル基、フェニル基、メチル基)、(n−オクチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基)を表す。)
で表される反応式でα,α−ジフルオロ−β−ヒドロキシケトンを合成することができる(Tetrahedron Lett. 1983,24,507)。
【0025】
以下に実施例をもって本発明を説明するが、これらの実施態様に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
〔実施例1〕
1×2cm2の鉛陰極と炭素陽極を有し、ガラス膜で分離されたH型電解槽を使用した。基質トリフルオロメチルフェニルケトン1mmol、塩化トリメチルシラン(TMSCl)3mmol、トリエチルアミン(Et3N)3mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陰極室に、一方支持電解質臭化テトラn−ブチルアンモニウム(n−Bu4NBr)4mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陽極室に入れてアルゴンガス雰囲気下、−20℃、30mAの定電流で、基質1モルに対して電気量が2Fとなるように電解還元反応をおこなった。電解終了後、陰極室液を19Fnmrで分析したところ、1−フェニル−2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量は81%であった。
【0027】
【表1】
【0028】
〔実施例2〜10〕
電解槽温度、電流密度、電気量、塩化トリメチルシランの量を表1に示す様に変えて実施例1と同様に電解還元反応並びに後処理をおこない、1−フェニル−2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量を求め、結果を表1に示した。
【0029】
〔実施例11〕
1×2cm2の鉛陰極と炭素陽極を有し、ガラス膜で分離されたH型電解槽を使用した。基質トリフルオロメチルフェニルケトン1mmol、塩化トリメチルシラン(TMSCl)3mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陰極室に、一方支持電解質臭化テトラn−ブチルアンモニウム(n−Bu4NBr)4mmol、溶媒アセトニトリル7mlを陽極室に入れてアルゴンガス雰囲気下、0℃、30mAの定電流で、基質1モルに対して電気量が2Fとなるように電解還元反応をおこなった。電解終了後、陰極液にトリエチルアミン(Et3N)3mmolを加え19Fnmrで分析したところ、1−フェニル−2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量は80%であった。
【0030】
【表2】
【0031】
〔実施例12〜17〕
基質の種類を表2に示す化合物に代えて実施例11と同様に電解還元反応並びに後処理をおこない、対応する2,2−ジフルオロエノールトリメチルシリルエーテルの収量を求め、結果を表2に示した。
【0032】
【発明の効果】
本発明の製造方法によると、原料入手の容易なトリフルオロメチルケトン類を原料として、有機合成反応において有用なジフルオロエノールシリルエーテルを一段階で収率よく製造できるという効果を奏する。
Claims (2)
- 一価の有機基がアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素芳香族基または一般式(4)
−(CH2)n−R3 (4)
(式中、R3はシクロアルキル基、アリール基、アルコキシル基、チオアルコキシル基、3級アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、複素芳香族基を表し、nは0または1以上の整数を表す。)
で表される有機基である請求項1記載の2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29807397A JP3560790B2 (ja) | 1997-10-30 | 1997-10-30 | 2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29807397A JP3560790B2 (ja) | 1997-10-30 | 1997-10-30 | 2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11130783A JPH11130783A (ja) | 1999-05-18 |
JP3560790B2 true JP3560790B2 (ja) | 2004-09-02 |
Family
ID=17854805
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29807397A Expired - Fee Related JP3560790B2 (ja) | 1997-10-30 | 1997-10-30 | 2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3560790B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4592412B2 (ja) * | 2004-12-24 | 2010-12-01 | セントラル硝子株式会社 | トリフルオロアラニルジペプチド類の製造方法 |
-
1997
- 1997-10-30 JP JP29807397A patent/JP3560790B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11130783A (ja) | 1999-05-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3560790B2 (ja) | 2,2−ジフルオロエノールシリルエーテルの製造方法 | |
JP3560840B2 (ja) | 2−トリアルキルシリル2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法 | |
Fuchigami et al. | Indirect anodic monofluorodesulfurization of β-phenylsulfenyl β-lactams using a triarylamine mediator | |
EP2123795B1 (en) | Method for producing iodizing agent and method for producing aromatic iodine compound | |
Fuchigami et al. | Electrolytic partial fluorination of organic compounds. Part 27. Regioselective anodic monofluorination of 2-substituted 1, 3-dithiolanon-4-ones using Et4NF· 4HF and Et3N· 3HF | |
Shen et al. | Triarylamine mediated desulfurization of S-arylthiobenzoates and a tosylhydrazone derivative | |
US20050234255A1 (en) | Electrochemical method for the production of organofunctional silanes | |
JPH03264683A (ja) | ジシランの製造方法 | |
CA2421353C (en) | Method for producing orthocarbonic acid trialkyl esters | |
CN114277388A (zh) | 一种通过电化学原位生成ch3cooi催化合成2,6-二氯苯甲腈的方法 | |
OHMARI et al. | Reaction of triphenylphosphine radical cation with 1, 3-dicarbonyl compounds: electrochemical one-step preparation of dioxomethylenetriphenylphosphoranes | |
Grelier et al. | Reductive electrochemical silylation of unsaturated nitrogen functionalities: a simple and efficient synthesis of precursors of bis (trimethylsilyl) methylamine | |
US4076601A (en) | Electrolytic process for the preparation of ethane-1,1,2,2-tetracarboxylate esters and related cyclic tetracarboxylate esters | |
Kise et al. | Electroreductive synthesis of acylsilanes from acylimidazoles | |
Tokuda et al. | Electrochemical reductive coupling of allyl and benzyl halides in the presence of Cu (acac) 2 | |
CN109518211B (zh) | 一种芳香偶酰类化合物的电化学合成方法 | |
JPS6240389A (ja) | カルバミン酸エステルの製法 | |
JP3846778B2 (ja) | 有機エーテル化合物の電解フッ素化方法 | |
US20080228009A1 (en) | Process for Preparing 1,1,4,4-Tetraalkoxybut-2-Ene Derivatives | |
Fry et al. | Lanthanide ion assisted electrochemically initiated aldol condensations | |
Stepanov | Organoelement compounds in the electrochemical synthesis of fluoroorganics | |
JPS62185891A (ja) | ピラゾ−ルの製法 | |
EP0022614B1 (en) | A process for electrochemical additions to alkenes | |
Kinoshita et al. | [1, 2]-Retro-Brook rearrangement induced by electrochemical reduction of silyl enolates | |
SU1146304A1 (ru) | Способ получени дифторидов триалкил(арил)арсина |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040518 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040525 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040526 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |