JP3560677B2 - 電極消耗を低減した電気製錬炉の操業方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、酸化物を主体とする原料を溶解,還元して金属を回収する電気製錬炉において、生産能力を高く維持しながら電極の消耗を低減させた操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉,電気炉,転炉等を使用した製錬所では、原料前処理工程や製錬炉内への原料供給時,或いは製錬炉の運転中に金属分を含むダストが多量に発生する。また、表面処理ラインを備えた工場では、廃酸,廃液処理工程や用水再生設備においても多量のスラッジ等が発生する。発生したダスト,スラッジ等を処理する方法の一つに、電極埋没式の抵抗加熱型電気炉で原料に使用し合金を製造する方法が採用されている。
この種の電気炉においては、原料組成の安定が炉況の安定化に重要な要因となるが、現実的には原料事情や突発的なトラブル等によって操業中に炉況が変動することが避けられない。その結果、電極の異常消耗や電力消費の増大を引き起こすことが問題となる。そこで、たとえば特開昭62−211342号公報,特公昭63−5671号公報等では、電極からのレジスタンス,リアクタンス等の電気抵抗指標に基づき電極長さ又は電極先端位置を推定し、推定結果に基づいて操業条件を制御している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
操業を安定化して電極の異常消耗を防止する方法は、厳密な原料管理下においても原料品質の変動や炉況変動によって安定したスラグの抵抗加熱ができにくい状況にある。特に特殊鋼や小ロット多品種の鋼種を生産する工場,多種のスクラップを原料とする製鋼所,或いは多様の表面処理ラインをもつ工場等では、安定した炉況で操業することが困難である。そのため、電力負荷を上げたり、場合によっては還元剤を追加投入することにより、炉況を回復している。しかし、これらアクションによって却って電力効率の低下や、電極消耗の増大等を引き起こす場合がある。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、電極消耗量と炉内の電気的特性に着目し、電極の消耗量が増加する状況を操業条件の制御によって回避することにより、安定した炉況で電気炉を操業し、電極の消耗を低減すると共に生産性の低下を防止することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気製錬炉操業方法は、その目的を達成するため、製鋼ダスト及び廃酸スラッジを主とする酸化物原料を溶解,還元してNi,Cr含有合金を回収する電気製錬炉において、(1)〜(3)の各制御を同時並行的に実施することを特徴とする。
(1)電極−炉底間の電圧(VT )を管理しながら、電圧(VT )の変化量に基づいて電圧(VT )が40V未満に低下した場合は現状のタップ電圧を上昇させ、電圧(VT )が55V以上に上昇した場合は現状のタップ電圧を低下させる制御
(2)原料配合工程でのブリケット内装コークス量及び操業中の外装コークス切出し量から算出されたコークス原単位(CT)に基づいて、コークス原単位が350kg/トン以下になるように外装コークスの供給量を調整する制御
(3)所定時間ごとにスラグの化学分析又は電気伝導度の測定値から推定されるスラグの塩基度(BS )を2.4〜3.0に維持するようにCaO及びSiO2 含有量の配合を調整する制御
【0005】
電極−炉底間電圧(VT )が40〜55Vの範囲内で安定した後、電極−炉底間電圧(VT )が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させることが好ましい。
また、電極−炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内で安定させた後、電力負荷が目標設定値未満の場合、前チャージのスラグ中(%Cr2 O3 )分析値から還元状態を判定し、還元良と判定されたときにはコークス切出し量を低減し、還元不良と判定されたときには更に前チャージの硫黄分配比(%S)/[%S]の実績値から脱硫状態を判定し、脱硫良と判定されたときには塩基度を低下させ、脱硫不良と判定されたときには現在の炉況を維持し、コークス切出し量の低減又は塩基度を低下させた後、タップ電圧を上昇させるとき、電極消耗を抑制しながら生産性を向上させた電気炉操業が可能になる。
【0006】
本発明は、電気製錬炉として高炉型電気炉,低炉型電気炉等,特にゼーダベルグ式自焼成電極を備えた電気炉において適した操業方法である。また、電気製錬炉の原料となる製鋼ダスト及び廃酸スラッジを主とする酸化物原料には、焼結炉,高炉,電気炉,転炉等の製錬/精錬炉で発生する酸化鉄を主成分とするダストが使用される。更に、工場内での用水再生設備や廃酸,廃液処理設備で発生するスラッジ類,その他の研磨粉や研削くず等の酸化鉄等を含む酸化物も、本発明に従った精錬法の酸化物原料として使用される。なかでも、ステンレス鋼,特殊鋼等のNi,Cr等を含む鋼を生産する工場で発生する酸化物を主原料とするとき、本発明の効果が顕著になる。
【0007】
【作用】
本発明者等は、炉況の回復に及ぼす各種操業条件の影響を調査した。その結果、電力負荷を上げたり、場合によっては還元剤を追加投入することによりある程度の生産性を回復できても、炉内抵抗が最適な範囲から外れた状態になるとき、電力効率の低下や電極消耗速度の上昇によって総合的にはマイナス面が大きくなることを知見した。たとえば、炉内抵抗の低下は、主にスラグの電気伝導性が上昇し、導電性物質であるコークスの残留量が増加することを意味するが、この状態のときに電力負荷をかけると多量の電流が流れ易くなる。その結果、電流制御型の電気炉では、電極が浮上する。そのため、炉底間電圧が上昇し、電極の消耗量が増加する。このときの炉況は、電極が原料層深くまで没入していないため、炉上部への熱損失が大きくなり、結果として電流効率、ひいては生産性を低下させる。
そこで、本発明者等は、電極−炉底間の電圧(以下、炉底間電圧という)に直接的に反映する電力負荷,間接的に反映するスラグ組成,コークス供給量等についてシステマティックに制御するとき、最適な操業状態が得られることを見い出した。電力負荷は、通常タップ電圧で制御することができる。
【0008】
以下、電力負荷,コークス原単位,スラグ組成等が操業条件に及ぼす影響を、図1〜3のフローシートを参照しながら説明する。
電極消耗量を低減させる第1の条件は、炉底間電圧である。炉底間電圧は、直接的に電力負荷に影響される。すなわち、電力負荷は、タップ電圧を切り替えることにより調整でき、そのときのスラグ組成やコークス添加量によって炉底間電圧が決まってくる。
炉底間電圧は、図4に示すように電極消耗量や生産性指数に影響している。すなわち、炉底間電圧を55V以下に抑えるとき、電極消耗量が著しく減少する。他方、生産性指数は、タップ時間当りの溶解度の最大溶解速度に対する比率で示すとき、図4にみられるように40Vに達しない炉底間電圧では著しく低下する。すなわち、タップ電圧を下げて電流負荷が低下した状態になると、その炉の溶解能力から考えて生産性が低い状態になるので好ましくない。なお、図4に示す「電極消耗量」は自焼成電極での結果である。そこで、本発明においては、図1のフローに示すように、炉底間電圧が40V未満にある場合にはタップ電圧を上昇させて電力負荷を増大し、逆に炉底間電圧が55Vを超える場合にはタップ電圧を下降させて電極消耗を低減する。
【0009】
本発明では、自焼成電極が好適に使用される。たとえば、ゼーダベルグ式の自焼成電極は、図5に示すように水冷シリンダー1を備えた電極ケース2に電極原料3を装入しながら製錬する。電極ケース2内に装入された電極原料3は、加熱によりペースト状4になり、ホルダー5内で焼成される。電極原料は、この焼成過程を経て、焼成過程中のペースト6から十分に緻密な組織になる。この緻密な組織となる箇所は、焼成点7と呼ばれている。
原料の焼成がホルダー5内で完了しないとき、すなわち焼成点7がホルダー5内にないとき、ホルダー5から出た焼成部8は、十分に緻密化しておらず、空気中の酸素と反応して粗大で脆い組織になる。このような組織をもつ焼成部8からなる電極は、耐消耗性が非常に劣り、赤熱部9となってスラグ10やメタル11に接したとき急速に消耗される。
【0010】
この自焼成電極を使用した電気製錬炉で、炉底間電圧が高くなると電極ケース2を含む全体が上昇するように制御される。そのため、電極没入深さが浅くなったとき、結果的にホルダー5内の温度が低下し、十分に緻密化されない組織をもつ原料がメタル11に送り出されることになる。このような状態は、炉底間電圧が55Vを超えるとき出現し、電極消耗量を急激に上昇させる。
炉内抵抗は、後述するようにスラグ組成の影響も受けるが、コークス添加量によって左右される。スラグ層に懸濁したコークスベッドには、最適なコークスベッド生成状況が存在すると考えられる。本発明では、その指標としてコークス原単位を最適化することにより、電極の没入深さを最適なレベルに安定させ、炉底間電圧を低く安定化することが可能である。
【0011】
コークス原単位は、350kg/トン−メタル以下となるように設定する。コークス原単位が350kg/トン−メタルを超えると、図6に示すように炉内抵抗の低下により電極の浮上が著しくなり、炉底間距離が大きくなる。その結果、炉底間電圧が上昇し、電極消耗量が増加する。また、二次的な現象として、スラグ中SiO2 の還元が活発になり、スラグの組成変化、すなわち塩基度の上昇によって電極消耗量が増加する。そこで、図2のフローに示すように、内装コークス及び外装コークスの供給量を管理することにより、常に350kg/トン−メタル以下のコークス原単位が維持する。このとき、コークス原単位の下限値は、そのときに使用される原料に含まれている酸化物の量、すなわち還元に必要な炭素量によって決定される。
コークス原単位が350kg/トン−メタルを超える場合には、外装コークスの切出し量を低減する。コークス原単位が350kg/トン−メタル以下の場合には、一定時間経過後に少なくとも外装コークスの供給ピッチ間隔で制御する。
【0012】
スラグの電気伝導度を一定レベルに低く安定させるとき、抵抗加熱効率が向上し、より少ない電力での溶解が可能になり、結果として電極消耗が低減する。更に、操業中の電極が浮上し難くなり、炉底間距離が増大しないので、炉底間電圧を低い状態に保つことが可能になる。
電気伝導度を低くするためには、スラグの塩基度[(CaO+MgO)/SiO2 ]は低い方が好ましく、[(CaO+MgO)/SiO2 ]=2.4〜3.0が最適範囲である。スラグの塩基度は、図7に示すように、電力負荷と炉底間距離との関係に影響を及ぼす。ある電力負荷範囲で塩基度が上昇すると、炉底間距離が増大する傾向を示す。
目標の炉底間電圧40〜55Vを確保するためには、コークス条件にもよるが、炉底から原料上面までの距離、すなわち炉の深さをHとするとき、図6から操業中の平均値として炉底間距離を0.4〜0.6Hにすることが必要である。また、この範囲の炉底間距離とするためには、生産性を考慮したとき、電力負荷75〜90%の条件下で塩基度を2.5〜3.0の範囲に設定すればよいことが図7から判る。
【0013】
塩基度が2.5未満では、電極は低い位置を推移できる反面、スラグの抵抗値そのものが高いため、炉底間電圧をさほど低くすることができず、操業中に吹上げ等が増加し、溶解歩留りが低下する傾向が強くなる。他方、3.0を超える塩基度では、電気伝導度が高すぎることにより炉底間距離が増大し、電極消耗量が増加する。このとき、消耗量を減少しようとすると、電力負荷を著しく低下しなければならない状態になる。
しかし、原料事情によっては、理想的なスラブ成分を常に維持することができない場合が多い。そのため、スラグの塩基度をきめ細かく調整することが重要である。そこで、図3のフローに示すように、塩基度[(CaO+MgO)/SiO2 ]が2.4未満であると、CaO成分を増加させ、或いはSiO2 成分を減少させる。他方、塩基度[(CaO+MgO)/SiO2 ]が3.0を超える場合には、SiO2 成分を増加させ、或いはCaO成分を減少させる。これにより、塩基度[(CaO+MgO)/SiO2 ]が2.4〜3.0の範囲に維持されるように、スラグ組成が調整される。このとき、調整材としてCaO,SiO2 含有原料を、場合によってはこれら成分のフラックスを供給する。ここでも、同様に一定時間経過した後、この制御を行う。
【0014】
操業中のスラグ塩基度は、スラグサンプルの化学分析によって管理することができる。また、本発明者等が先に出願した比電導度の測定によってスラグ組成を推定する方法を採用するとき、迅速な対応が可能になる。すなわち、塩基度[(CaO+MgO)/SiO2 ]の上昇は電気伝導度の上昇に反映され、逆に塩基度[(CaO+MgO)/SiO2 ]の低下はスラグの電気伝導度の低下に反映される。その結果に基づき、調整用の原料供給を決定する。
ここで、生産性を最大限とするために、本発明では、図1のフローに示すように、炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内に安定させ、一定時間経過後に炉底間電圧(VT )が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させることは好ましい。すなわち、炉底間電圧を40〜55Vの範囲内に安定させた場合でも、原料配合組成が目標と違って変動しているので、40〜55Vの範囲内でも炉底間電圧が上限までくるように、常にタップ電圧を引き上げておくことは生産性を向上させる上で有効である。
【0015】
更に、炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内に安定させた際、電力負荷が目標設定値を下回る場合、前チャージの還元状況がスラグ中(%Cr2 O3 )分析値から還元不良と判定されなければコークスの切出し量を低減する。逆に還元不良と判定されるとき、更に前チャージの脱硫状況を硫黄分配比((%S)/[%S])の実績値で判定する。そして、脱硫不良と判定されないとき、塩基度を低下させる。脱硫不良と判定されるとき、現在の操業条件を維持する。
たとえば、そのときの工場の生産状況から必要とされる生産性、すなわち電力負荷で判断して130V以上のタップ電圧が必要であると仮定する。ここで、実際のタップ電圧が130V未満の場合には、前チャージ中のスラグ中(%Cr2 O3 )が2.0%未満であれば、還元良好と判断してコークス供給量を低減する。更に、前チャージの硫黄分配比((%S)/[%S])が30以上であれば、脱硫良好と判断してスラグの塩基度を低下させる。
【0016】
これにより、目標とする還元や脱硫の精錬反応を維持しながら、タップ電圧を常に上方修正する炉内抵抗を保つことができる。したがって、あるレベル以上の精錬能と最大限の生産性を維持した状態で、電極の消耗量を低減することが可能になる。
コークスは、内装及び外装の両法で供給される。外装法としては、通常の操業で原料を供給するように、装入原料のレベル低下に応じて追装する。コークスは、粉状,粒状,塊状等の様々な形態で装入することが可能であるが、使用する電気炉の特性や主原料及び副原料の粒度に応じて最適な形態で装入される。内装法としては、最適な量及び粒度のコークスをバインダーと共に酸化物原料に配合して混練後、ブリケットやペレット等に製団し、必要に応じて乾燥,焼結等の熱処理が施されたものを使用する。或いは、製団後に数日間の養生期間をおき、ある程度の強度を確保したものが装入原料とされる。
【0017】
【実施例】
実施例1(チャージNo.100)
各種ステンレス鋼を生産する製鋼工場で発生した電気炉ダスト,湿式回収した転炉ダスト,スケール等を、フィルタプレスで脱水し、内燃式キルンで乾燥処理した。また、ステンレス鋼帯の焼鈍酸洗により生じたスケール及び廃酸処理工程で沈澱凝集によって回収した水酸化物類を同様に脱水、乾燥処理した。
これらの酸化物原料を、コークス及びバインダーと混合し、ブリケットに混練・製団した。ブリケットを数日間養生した後、ゼーダベルグ式のサブマージド電気炉に供給した。操業中のタップ電圧及び炉底間電圧の変化を図8に示すように、10分おきのその時点の炉底間電圧から判断し、必要であれば電圧を切り替え、炉底間電圧を目標の40〜55V範囲内になるように制御した。一方、20分おきにスラグをサンプリングし、分析した。分析結果に基づき塩基度((%CaO+MgO)/SiO2 )が2.4〜3.0の範囲になるように、CaO及びSiO2 含有原料を用いて調整した。また、コークス供給量を、外装供給量でコークス原単位が350kg/トン−メタルとなるように調整した。
このときの調整状況を、図8に示す。図8にみられるように、炉況は比較的安定しており、最終的に出銑までのこのチャージで消費した電極の量は、電力当り7.1kg/MWHであった。
【0018】
実施例2(チャージNo.101)
実施例1と同じ原料を使用し、同様の操業を行った。この場合、10分おきにその時点の炉底間電圧から判断し、必要であればタップ電圧を切り替え、炉底間電圧を目標の40〜55Vの範囲内になるように制御した。一方、20分おきにスラグをサンプリングし、分析した。分析結果に基づき塩基度((%CaO+MgO)/SiO2 )が2.4〜3.0の範囲になるように、CaO及びSiO2 含有原料を用いて調整した。また、コークス供給量を、外装供給量でコークス原単位が350kg/トン−メタルとなるように調整した。そして、炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内に安定させた上、一定時間が経過した後で、炉底間電圧VT が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させた。
このときの調整状況を、図9に示す。この場合、通電開始後140分及び220分目にタップ電圧を変更した。140分目にタップ電圧を10V上昇させても、炉底間電圧(VT )が55Vを超えることはなかった。しかし、220分目ではタップ電圧の10V上昇により炉底間電圧(VT )が55Vを超えることが予想されたので、タップ電圧を5Vだけ上昇させた。その結果、通電開始から終了までの炉底間電圧は、電極の上昇に伴って47Vから55Vに推移した。最終的に出銑までのこのチャージで消費した電極の量は、電力当り7.2kg/MWHであり、実施例1に比較して0.1kg/MWH多いだけであった。他方、出銑量は、実施例1に比較して0.2トン多かった。
【0019】
実施例3(チャージNo.102〜104)
実施例1と同じ原料を使用して同様の操業を行った。この場合、炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内で安定させ、一定時間が経過した後、炉底間電圧が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させた。ここでは、電流値制御でタップ電圧130Vで電力負荷の目標設定値を設定した。
炉底間電圧(VT )を安定させた際、電力負荷が目標設定値を下回る場合、前チャージ(101)の還元状況がスラグ中(%Cr2 O3 )の分析値2.0%から良好と判断されたので、コークス切出し量を低減した。更に、硫黄分配比((%S)/[%S])の実績値が45であり、前チャージの脱硫状況が不良と判定されなかったので、スラグの塩基度を低下させ、更に炉底間電圧が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させた。
【0020】
このときの操業状況は、図10に示すように、150分目及び250分目にコークスを低減すると共にSiO2 供給後にタップ電圧を変更した。炉底間電圧は、このチャージ間で40Vから55Vへ推移した。また、最終的に消費した電極の量は、電力当り7.0kg/MWHであった。
次のチャージ(103)では、炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内で変化させた際、同様に電力負荷がタップ電圧130Vの目標設定値を下回る場合、前チャージ(102)の還元状況がスラグ中(%Cr2 O3 )の分析値2.5%以上から不良と判断された。そこで、コークス切出し量を低減せず、更に前チャージ(102)の脱硫状況を硫黄分配比((%S)/[%S])から判定した。そして、硫黄分配比((%S)/[%S])の実績値が40であったことから、脱硫不良と判断されなかったので、スラグの塩基度を低下させ、更に炉底間電圧が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させた。
このときの操業状況を図11に示すように、150分目及び260分目にSiO2 供給後にタップ電圧を変更した。炉底間電圧は、このチャージ間で45Vから55Vへ推移した。また、最終的に消費した電極の量は、電力当り7.1kg/MWHであった。
【0021】
次のチャージ(104)では、炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内で安定させた。このとき、同様に電力負荷がタップ電圧135Vの目標設定値を下回る場合、前チャージ(103)ではスラグ中(%Cr2 O3 )の分析値が1.8%と還元が良好であったものの、硫黄分配比((%S)/[%S])が23と脱硫能が若干低下した。そこで、塩基度を下げる制御を行わなかった。
この場合の操業状況を図12に示すように、190分目及び250分目で、コークス供給量を低減した後でタップ電圧を変更した。炉底間電圧は、このチャージ間で40Vから55Vの間で推移した。また、最終的に消費した電極の量は、電力当り7.2kg/MWHであった。
このように実施例3では、電力負荷が下回った場合、前チャージの結果を基にコークス供給量及び塩基度を調整している。この制御により、その後に電力負荷(タップ電圧)の上方切換えによっても炉底間電圧の上昇が抑制されていることが判る。そのため、高電力負荷状態で操業しても、電極消耗量を抑え、高い生産性が維持されることが確認された。
【0022】
比較例1(チャージNo.120)
各種ステンレス鋼を生産する製鋼工場で発生した電気炉ダスト,湿式回収した転炉ダスト,スケール等をフィルタプレスで脱水し、内燃式キルンで乾燥処理した。また、ステンレス鋼帯の焼鈍酸洗による発生したスケール及び廃酸処理工程で沈澱凝集により回収した水酸化物類を同様に脱水し、乾燥処理した。
これら酸化物原料をスラグ組成がCaO/SiO2 =2.8になるように配合し、コークス及びバインダーと共に混練し、ブリケットに製団した。得られたブリケットを数日間養生し、ゼーダベルグ式の電気炉に供給した。
操業条件は、実施例に比較して電力負荷を高めに設定し、コークス原単位が平均して300kg/トン−メタルとなるように外装法でコークスを供給した。炉底間電圧は、通電開始から終了までの期間で電極の上昇に伴って40Vから59Vの範囲を幅広く推移した。なお、比較例1では、電力負荷を調整しなかった。最終的にこのチャージ(120)で消費した電極の量は、9.2kg/MWHであった。
【0023】
比較例2(チャージNo.121)
比較例1と同じ酸化物原料をスラグ組成がCaO/SiO2 =3.1になるように配合し、コークス及びバインダーと共に混練し、ブリケットに製団した。得られたブリケットを数日間養生し、ゼーダベルグ式の電気炉に供給した。
操業中のコークス原単位が平均して360kg/トン−メタルとなるように、外装法で所定量のコークスを供給した。そして、実施例と同様に電力負荷を制御したが、通電開始から終了までの間で炉底間電圧が51Vから62Vに推移し、炉底間電圧を目標範囲に収めることはできなかった。最終的にこのチャージ(121)で消費した電極の量は、13.0kg/MWHと実施例に比較して多量であった。
以上の各例における操業結果を表1にまとめて示す。表1にみられるように、本発明に従った操業法では、電極消耗量を少なくして、しかも高い生産性でメタルを製造できることが判る。
【0024】
【表1】
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、電極−炉底間の電圧を適正範囲に維持しながらタップ電圧,コークス供給量,スラグ塩基度等の操業条件を制御することにより、電極消耗量を低減し、且つ安定した炉況下で電気炉操業を行うことができる。そのため、スクラップ,製鋼ダスト,スラッジ,研磨粉,研削屑等の酸化物原料を原料から有価金属が高効率で回収される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従ってタップ電圧を調整するフロー
【図2】同じくコークス原単位を調整するフロー
【図3】同じくスラグの塩基度を調整するフロー
【図4】炉底間電圧が電極消耗量及び生産性指数に及ぼす影響を表したグラフ
【図5】ゼーダベルグ式の自焼成電極の概略図
【図6】コークス原単位が炉底間電極及び炉底間距離の変動に及ぼす影響を表したグラフ
【図7】電力負荷が炉底間距離に及ぼす影響を表したグラフ
【図8】実施例1における通電開始後の時間経過に伴ったタップ電圧,コークス原単位及び炉底間電圧の変動を表したグラフ
【図9】実施例2における通電開始後の時間経過に伴ったタップ電圧,スラグ塩基度,コークス原単位及び炉底間電圧の変動を表したグラフ
【図10】実施例3における通電開始後の時間経過に伴ったタップ電圧,スラグ塩基度,コークス原単位及び炉底間電圧の変動を表したグラフ
【図11】タップ電圧を上昇させた実施例3における通電開始後の時間経過に伴ったタップ電圧,スラグ塩基度,コークス原単位及び炉底間電圧の変動を表したグラフ
【図12】コークス供給低減後にタップ電圧を変更した実施例3における通電開始後の時間経過に伴ったタップ電圧,スラグ塩基度,コークス原単位及び炉底間電圧の変動を表したグラフ
【符号の説明】
1:水冷ケース 2:電極ケース 3:電極原料 4:ペースト状の電極原料 5:ホルダー 6:焼成過程中のペースト 7:焼成点 8:焼成部 9:赤熱部 10:スラグ層 11:メタル
Claims (3)
- 製鋼ダスト及び廃酸スラッジを主とする酸化物原料を溶解,還元してNi,Cr含有合金を回収する電気製錬炉において、(1)〜(3)の各制御を同時並行的に実施することを特徴とする電極消耗を低減した電気製錬炉の操業方法。
(1)電極−炉底間の電圧(VT )を管理しながら、電圧(VT )の変化量に基づいて電圧(VT )が40V未満に低下した場合は現状のタップ電圧を上昇させ、電圧(VT )が55V以上に上昇した場合は現状のタップ電圧を低下させる制御
(2)原料配合工程でのブリケット内装コークス量及び操業中の外装コークス切出し量から算出されたコークス原単位(CT)に基づいて、コークス原単位が350kg/トン以下になるように外装コークスの供給量を調整する制御
(3)所定時間ごとにスラグの化学分析又は電気伝導度の測定値から推定されるスラグの塩基度(BS )を2.4〜3.0に維持するようにCaO及びSiO2 含有量の配合を調整する制御 - 電極−炉底間電圧(VT )が40〜55Vの範囲内で安定した後、電極−炉底間電圧(VT )が55Vを超えない範囲でタップ電圧を上昇させる請求項1記載の電気製錬炉の操業方法。
- 電極−炉底間電圧(VT )を40〜55Vの範囲内で安定させた後、電力負荷が目標設定値未満の場合、前チャージのスラグ中(%Cr2 O3 )分析値から還元状態を判定し、還元良と判定されたときにはコークス切出し量を低減し、還元不良と判定されたときには更に前チャージの硫黄分配比(%S)/[%S]の実績値から脱硫状態を判定し、脱硫良と判定されたときには塩基度を低下させ、脱硫不良と判定されたときには現在の炉況を維持し、コークス切出し量の低減又は塩基度を低下させた後、タップ電圧を上昇する請求項1記載の電気製錬炉の操業方法。
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