JP3558963B2 - 光ピックアップ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光ピックアップ装置に関し、特に光磁気ディスク装置に用いられる光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、音声、画像および文書などのデータを繰返し記録再生することができる光磁気ディスク再生装置が開発されている。光ピックアップ装置は、この光磁気ディスク再生装置の基本的な構成要素として、その小型化が重要視されている。
【0003】
本願発明者らは、特願平11−206842において、小型化を図った光ピックアップ装置を提案している。
【0004】
図8を参照して、特願平11−206842に開示されている光ピックアップ装置は、光源103と、光源103からの光をMO(Magneto−Optical)ディスク110へ集光するコリメートレンズ108および対物レンズ109と、MOディスク110からの反射光を検出する光検出器124と、光源103からコリメートレンズ108に至る光路上に配置され、等方性光学部材101および異方性光学部材102で構成され、光源103からの光を内部で反射してコリメートレンズ108に導くとともに、MOディスク110からの反射光を透過する光分岐機能を有する光学素子105とを含む。
【0005】
等方性光学部材101および異方性光学部材102の境界面105aが反射光の光軸114に対して45度傾斜するように、等方性光学部材101および異方性光学部材102が配置される。
【0006】
これにより光源103からの光B1の進行方向が光軸114と平行となり、さらに反射面101cで反射した光B2の進行方向が光軸114と垂直になる。
【0007】
この構成では、異方性光学部材102として、たとえば、電気化学的に安定で、屈折率差が大きく、量産効果により安価に入手できるLiNbOが、等方性光学部材101として、屈折率の高い硝材で安価に入手できるTaFD30(HOYA社製光学ガラス)がそれぞれ用いられる。
【0008】
境界面105aを透過した光は収差を有する。このため、光検出器124上でのスポット形状は図9に示すように、元の光に比べ拡大する。境界面105aを通過した光は、常光線R1および異常光線R2に分離されるが、常光線R1のスポット長は、T1方向が80μm、T1と直交する方向が100μmとなる。異常光線R2のスポット長は、T2方向とその直交方向とがともに60μmとなる。ここでT1およびT2はMOディスクの案内溝に対応する方向である。この収差により拡大したビームを4分割された受光部126で検出することで非点収差法に基づくフォーカスサーボが行なわれ、ビームを2分割された受光部125で検出することでプッシュプル法(1ビーム法)に基づくトラッキングサーボが行なわれる。
【0009】
一般に、1ビーム法では、対物レンズ109のシフト時に光検出器125上に光のアンバランス(以下「ラジアルオフセット」という)が生じる。このため1ビーム法を実施する際には、ラジアルオフセットの抑制技術も合わせて必要になる。しかし、ラジアルオフセットの抑制には高度な技術を要するため、多くのメーカにおいて1ビーム法の採用を敬遠する傾向があり、市場での普及効果が小さい。
【0010】
これに比べて、3ビーム法では、ラジアルオフセットの対策が不要である。このため、簡便な技術で安定なトラッキングサーボが可能となり、光ピックアップ装置の普及効果が大きい。
【0011】
図10を参照して、一般的な3ビーム方式の光ピックアップ装置における主ビームおよび副ビームの間隔を示す。MOディスク131上でのタンジェンシャル方向の主ビームおよび副ビームの間隔を17μmとすると、光検出器132上の主ビームおよび副ビームの間隔は、コリメートレンズ133、対物レンズ134の定数によって概ね50〜60μmとなっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図8に示した光ピックアップ装置では、収差により光検出器124上のビームサイズが図9に示すように60μm以上に拡大する。このため、プッシュプル法(1ビーム法)には有利であるが、逆に3ビーム方式に対しては主ビームおよび副ビームの配置が困難となり、3ビーム方式の光ピックアップとしてはそのままでは適用することができない。
【0013】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、小型の3ビーム方式の光ピックアップ装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のある局面に従う光ピックアップ装置は、光源と、前記光源から光磁気記録媒体に至る光路上に配置されたレンズと、前記光源から前記レンズに至る光路上に配置され、前記光磁気記録媒体からの反射光の偏光を分離する光学素子と、前記光学素子で分離された光を検出する光検出器とを含む。前記光学素子は、等方性光学媒質からなり、前記光源からの光を反射して前記光磁気記録媒体に至らしめ、前記光磁気記録媒体からの反射光を通過させる第1部材と、前記第1部材に隣接し、等方性光学媒質からなり、前記第1部材を通過した前記光磁気記録媒体からの反射光をさらに通過させるための第2部材と、前記第2部材に隣接し、異方性光学媒質からなり、前記第2部材を通過した光を、前記第2部材との境界面で分離し、前記光検出器に至らしめる第3部材とを含む。また、異方性光学媒質は、LiNbO 3 であり、前記等方性光学媒質は、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率に対する比屈折率が略0.77以上であり、等方性光学媒質の屈折率をn、異方性光学媒質の大きい方の屈折率をn1とし、第2部材および第3部材の境界面の反射光の光軸に対する傾斜角をα度とすると、αは概ね次式α=65±5×(n/n1/0.77)で表わされる角度範囲に設定される。
【0015】
第1部材および第2部材の境界面で光が分岐し、等方性光学媒質からなる第2部材および異方性光学媒質からなる第3部材の境界面で光磁気記録媒体の反射光の偏光が分離する。このため、光分岐と光分離とを独立して行なうことができ、偏光分離された後の光の収差を独立して調整することができる。よって、光検出器上のビーム形状を小さくすることができるなどの設計の自由度が向上し、3ビーム方式の光ピックアップ装置を小型化することができる。上記のように、異方性光学媒質としてLiNbO 3 を用いることにより、安価な光ピックアップ装置を提供できる。さらに、LiNbO 3 の大きい方の屈折率に対する等方性光学媒質の比屈折率を略0.77以上にすることにより、ビームの収差を少なくすることができる。それとともに、構成部品の寸法公差や組立公差の影響によるビーム位置の変化が生じる場合であっても、光検出器の受光部からのビームのはみ出しを防止することができる。さらに、実験的に、傾斜角αが上述の式で表わされる角度範囲に収まっている場合には、ビームの収差を少なくするとともに、構成部品の寸法公差や組立公差の影響によるビーム位置の変化が生じる場合であっても、受光部からのビームのはみ出しを防止できることを確認した。
本発明の別の光ピックアップ装置は、光源と、光源から光磁気記録媒体に至る光路上に配置されたレンズと、光源からレンズに至る光路上に配置され、光磁気記録媒体からの反射光の偏光を分離する光学素子と、光学素子で分離された光を検出する光検出器とを含む。上記光学素子は、等方性光学媒質からなり、光源からの光を反射して光磁気記録媒体に至らしめ、光磁気記録媒体からの反射光を通過させる第1部材と、その第1部材に隣接し、等方性光学媒質からなり、第1部材を通過した光磁気記録媒体からの反射光をさらに通過させるための第2部材と、第2部材に隣接し、異方性光学媒質からなり、第2部材を通過した光を、第2部材との境界面で分離し、光検出器に至らしめる第3部材とを含む。そして、異方性光学媒質は、YVO 4 であり、前記等方性光学媒質は、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率に対する比屈折率が略0.72以上である
上記のように、異方性光学媒質としてYVO 4 を用いることにより、常光、異常光の分離幅を大きくすることができ、光検出器上のビーム配置の自由度が向上する。また、YVO 4 の大きい方の屈折率に対する等方性光学媒質の比屈折率を略0.72以上にすることにより、ビームの収差を少なくすることができる。それとともに、構成部品の寸法公差や組立公差の影響によるビーム位置の変化が生じる場合であっても、光検出器の受光部からのビームのはみ出しを防止することができる。
上記のように、異方性光学媒質にYVO 4 を用いる場合、さらに好ましくは、前記等方性光学媒質の屈折率をn、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率をn1とし、前記第2部材および前記第3部材の境界面の前記反射光の光軸に達する傾斜角をα度とすると、前記αは概ね次式
α=67±7×(n/n1/0.72)
で表わされる角度範囲に設定される。
上記の構成に基づき、傾斜角αが上述の式で表わされる角度範囲に収まっている場合には、ビームの収差を少なくするとともに、構成部品の寸法公差や組立公差の影響によるビーム位置の変化が生じる場合であっても、受光部からのビームのはみ出しを防止できることを、実験的に確認した
【0016】
好ましくは、前記第1部材は、互いに対向する第1の平行面と、互いに対向し、かつ各々前記第1の平行面と所定の角度をなして交差する第2の平行面とを有する断面が平行四辺形の角柱であり、前記第1の平行面の一方は、前記第2部材と接しており、前記第2の平行面の一方は前記光源と対向するように、前記第2の平行面の他方は前記レンズと対向するように、それぞれ配置されている。
【0017】
このようにすれば、光源をパッケージの内部に収めることができ、光ピックアップ装置の小型化が可能となる。
【0018】
さらに好ましくは、前記第1部材および前記第2部材は、同一の屈折率を有する。
【0019】
第1部材と第2部材とを同一の屈折率とすることにより、第1部材および第2部材の境界面を透過した反射光に収差が発生することを防止できる。
【0030】
さらに好ましくは、光ピックアップ装置は、さらに、前記光源と前記第2部材および前記第3部材の境界面との間、および前記第2部材および前記第3部材の境界面と前記レンズとの間にそれぞれ設けられた、2つの1/2波長板を含む。
【0031】
2つの1/2波長板を配置したことにより、往路の光路上においては第1部材および第2部材の境界面に、反射しやすいS偏光を到達させるとともに、光磁気記録媒体に対しては、案内溝に直交する偏光を照射するという機能を備えた上で、光ピックアップ装置全体を薄型化できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1を参照して本発明の実施の形態1に係る光ピックアップ装置は、光源である半導体レーザ1および光検出器4が内部に設けられたパッケージ6と、パッケージ6上に載置され、回折格子12および13が形成された石英基板14と、石英基板14上に載置された1/2波長板15と、1/2波長板15上に載置された光学素子5と、光学素子5上に載置された1/2波長板16と、半導体レーザ1からの光をMOディスク10へ集光するために、1/2波長板16とMOディスク10との間の光路上に設けられたコリメートレンズ8および対物レンズ9とを含む。
【0033】
光学素子5は、第1部材20、第2部材19および第3部材21を含み、半導体レーザ1からの光を反射してコリメートレンズ8側に導くとともに、MOディスク10で反射した光を透過して光検出器4に導く第1の境界面17と、第1の境界面17を透過した光の偏光を分離する第2の境界面18とを有する。
【0034】
第1の境界面17は、それぞれ等方性光学媒質で同一屈折率の硝材からなる第1部材20および第2部材19の境界面であり、上記反射光の光軸22に対し、β(=45度)傾斜して配置される。このようにすれば、光軸22に対し、半導体レーザ1からの光を光路B1では平行に、光路B2では垂直に、さらに光路B3では同軸上にすることができる。このため、半導体レーザ1および第1の境界面17の配置や組立が簡便となる。
【0035】
第2の境界面18は、第2部材19と異方性光学媒質の第3部材21との境界面であり、光軸22に対しα傾斜して配置される。αについては後に詳細に説明する。
【0036】
第1部材20は、第1の境界面17と平行な面20aと、第1の境界面17と隣接する方向の面20bと、面20bに平行な面20cとを有する。半導体レーザ1からの光は面20bから光軸22と平行に入射し、面20aで反射された後、光軸22に垂直に進み、境界面17で反射され、光軸22上を進み、面20cから出射する。
【0037】
以上の光路における偏光について説明すると、以下のようになる。MOディスク10へは、案内溝方向10aに対し直交する偏光が到達するのが好ましい。このため、半導体レーザ1はP偏光1pを出射するように設置されており、1/2波長板15によって境界面17で反射されやすいS偏光1sとなり、1/2波長板16により再度P偏光1pとされた後、MOディスク10に到達する。
【0038】
また、この構成を用いることにより、図1の紙面に垂直な方向が光ピックアップ装置の厚さ方向とすることができる。このため、光ピックアップ装置全体を薄型にできる。1/2波長板には、樹脂製の単板0次モード型(たとえばJSR製アートン)の波長板を用いることで、光ピックアップ装置の大型化を抑制することができる。
【0039】
MOディスク10からの反射光Rは、MOディスク10に記録された情報に基づいて偏光方向が回転(カー回転)される。
【0040】
この反射光Rは面20cから光学素子5内に入射し、第1の境界面17に達する。ここで、反射光Rは半導体レーザ1からの光路B2から分岐され、第2部材19内に進入する。第1部材20と第2部材19とは、同一の屈折率の硝材である。このため、反射光Rは進行方向を変えずかつ収差を発生しないで第2の境界面18に達する。この境界面18を透過し、第3部材21へ進入した反射光Rは、境界面18を透過する際に、第3部材の光学異方性により偏光方向が互いに直交する常光線R1と異常光線R2とに分離される。
【0041】
半導体レーザ1からの光は、図2に示す形状を有する回折格子12により予め2つのトラッキング用副ビーム(以下「副ビーム」という)と、1つの情報記録再生用主ビーム(以下「主ビーム」という)との合計3つのビームに分割されており、これら3つのビームの各々について、常光線および異常光線が発生する。このため、合計6つの光が回折格子13を透過する。
【0042】
図3を参照して、回折格子13は、格子間隔および格子方向が異なる3つの領域13a、13bおよび13cに分割されている。図4を参照して、領域13aで回折された主ビームは、光検出器4の受光部4aに、領域13bで回折された主ビームは受光部4bに、領域13cで回折された主ビームは受光部4cおよび4dの境界線上にそれぞれ入射する。回折格子13を0次回折光として透過した主ビームは受光部4eおよび4fに入射する。回折格子13を0次回折光として透過した2つの副ビームは受光部4gおよび4hに入射する。
【0043】
したがって、受光部4cおよび4dの出力信号の差動によりフーコー法に基づくフォーカス誤差信号が得られ、受光部4gおよび4hの出力信号の差動により3ビーム法に基づくトラッキング誤差信号が得られる。また、受光部4aおよび4bの出力信号の差動によりプッシュプル信号が得られ、MOディスク10上の案内溝を蛇行させて形成したアドレス信号の検出に用いられる。光磁気信号は受光部4eおよび4fの出力信号の差動により得られる。
【0044】
次にαについて以下に例を挙げ詳細に説明する。
図4は、第3部材21に常光線の屈折率が2.258、異常光線の屈折率が2.178なるLiNbOを用い、第1部材20および第2部材19として屈折率1.869なる硝材TaFD30を用いて、αを65度とした場合の光検出器4上のビーム配置を表わしている。
【0045】
受光部4g、4eおよび4h(受光部4g、4fおよび4hの組合わせも同様)は、幅40μm、各々の間隔が20μmで配置されている。しかし、境界面18を光軸22に対し65度傾斜させたことによりビームの収差を抑制している。このため、3ビーム法での主ビームおよび副ビームの配置が可能となっている。
【0046】
ここで、第3部材の大きい方の屈折率に対する第2部材の比屈折率(以下、単に「比屈折率」という)は0.83である。このような組合せを、以下の説明では組合せ(A)という。
【0047】
図5は、傾斜角αと受光部からのビームのはみ出しに対する余裕量(以下、単に「余裕量」という)との関係を、第3部材21に対する第2部材19の比屈折率の組合せにより示したグラフである。上記余裕量は、光ピックアップ装置のすべての構成部品の寸法公差や組立公差の影響を考慮した場合の余裕量である。光検出器4の長手方向(図4のX方向)の余裕量を実線で表わし、短手方向(図4のY方向)の余裕量を点線で表わしている。ここでは、比屈折率の組合せとして、組合せ(A)の他に、2つの組合せを考える。
【0048】
第1に、第3部材21にLiNbOを用い、第1部材20および第2部材19には屈折率1.744なる硝材SF55(ショット社製光学ガラス)を用い、比屈折率を0.77とした組合せである(以下「組合せ(B)」という)。
【0049】
第2に、第3部材21にLiNbOを用い、第1部材20および第2部材19には屈折率2.0003なる硝材LaSF35(ショット社製光学ガラス)を用い、比屈折率を0.89とした組合せである(以下「組合せ(C)」という)。
【0050】
図5によれば、第3部材21にLiNbOを用いる場合には、余裕量を確保する(縦軸の値が0以上である)ためには、比屈折率が0.77以上必要であることが分かる。組合せ(A)の場合は、αを概ね60〜70度の範囲に設定すれば、余裕量を確保することができる。組合せ(C)の場合は、αを概ね55〜75度の範囲に設定すれば、余裕量を確保することができる。組合せ(B)の場合には、α=65度付近で余裕量を確保できる。
【0051】
以上により、硝材の屈折率をnとすると概ね次式(1)で表わされる角度範囲に傾斜角αを設定すれば余裕量を確保できる。
【0052】
α=65±5×(n/2.258/0.77) (単位:度) …(1)
なお、傾斜角α=65度の場合が最も余裕量が大きくなる。
【0053】
以上説明したように本実施の形態によると、第1部材20および第2部材19の境界面17で光が分岐し、等方性光学媒質からなる第2部材19および異方性光学媒質からなる第3部材21の境界面18で光磁気記録媒体の反射光の偏光が分離する。このため、光分岐と光分離とを独立して行なうことができ、偏光分離された後の光の収差を独立して調整することができる。よって、光検出器4上のビーム形状を小さくすることができるなどの設計の自由度が向上し、3ビーム方式の光ピックアップ装置を小型化することができる。
【0054】
また、第1部材20と第2部材19とを同一の屈折率としているため、第1部材20および第2部材19の境界面17を透過した反射光に収差が発生することを防止できる。
【0055】
さらに、異方性光学媒質としてLiNbOを用いているため、安価な光ピックアップ装置を提供できる。
【0056】
[実施の形態2]
実施の形態2による光ピックアップ装置は、図1を参照して説明した実施の形態1による光ピックアップ装置と同様の構成を有する。ただし、実施の形態2では、第3部材21として常光線の屈折率が1.973、異常光線の屈折率が2.189なるYVOを用いている。また、光検出器4内の受光部が後述するように一部異なる。
【0057】
図6は、第2部材19に屈折率が1.572である硝材LF5(ショット社製の光学ガラス)を用い、第3部材21にYVOを用い、第2の境界面18の光軸22に対する傾斜角αを65度に設定した場合の光検出器4上のビーム配置を表わしている。図6より、3ビーム方式での主ビームおよび副ビームの配置が可能となっていることがわかる。ここでは比屈折率は0.72となる。このような組合せを、以下の説明では組合せ(D)という。
【0058】
すでに説明した図4に記載の受光部4gおよび4hに相当する受光部は、受光部4g1および4g2、ならびに受光部4h1および4h2にそれぞれ分割されている。受光部4g1および4g2は互いに電気的に接続されている。受光部4h1および4h2も互いに電気的に接続されている。
【0059】
なお、受光部4g2、4fおよび4h2は、それぞれ受光部4g1、4eおよび4h1に比べて、図中下方向にわずかにずれて配置されている。これはYVOの常光線と異常光線の屈折率差が0.216と大きく、異常光線のウォークオフが顕著に表われるためである。
【0060】
図7は、傾斜角αと余裕量との関係を、第3部材21に対する第2部材19の比屈折率の組合せにより示したグラフである。余裕量は、光ピックアップ装置のすべての構成部品の寸法公差や組立公差の影響を考慮した場合の余裕量である。光検出器4の長手方向(図6のX方向)の余裕量を実線で表わし、短手方向(図6のY方向)の余裕量を点線で表わしている。ここでは、比屈折率の組合せとして、組合せ(D)の他に、第3部材21にYVOを用い、第2部材19には屈折率1.869なる硝材TaFD30を用い、比屈折率を0.85とした組合せ(E)を考える。
【0061】
図7によれば、第3部材21にYVOを用いる場合、余裕量を確保するためには、比屈折率が0.72以上であることが必要であることが分かる。組合せ(E)の場合は、αを概ね60〜74度の範囲に設定すれば、余裕量を確保することができる。組合せ(D)の場合は、αを概ね67度付近に設定すれば、余裕量を確保することができる。
【0062】
以上より、硝材の屈折率をnとすると概ね次式(2)で表わされる角度範囲に傾斜角αを設定すれば余裕量を確保できる。
【0063】
α=67±7×(n/2.189/0.72) (単位:度) …(2)
なお、傾斜角α=67度の場合が最も余裕量が大きくなる。
【0064】
ここで、実施の形態2の構成による傾斜角αの取り得る値の範囲の方が、実施の形態1で説明したLiNbOによる構成の場合よりも大きくなるのは、YVOでは、常光線R1および異常光線R2の屈折率差がLiNbOに比べて大きく、光検出器4上での常光線R1および異常光線R2の分離幅が大きく確保できることが影響している。
【0065】
実施の形態1および2における比屈折率の上限値について考察すれば以下のようになる。異方性光学部材がLiNbOである場合、比屈折率の上限値は、小さい方向の屈折率の1/0.77倍(YVOの場合は1/0.72倍)となるが、このような屈折率を有する硝材は一般に存在しない。このため、上限値については言及しないものとする。
【0066】
実施の形態1および2では、異方性光学部材にLiNbOおよびYVOをそれぞれ用いたが、これに限られるものではなく、一般的な硝材より高屈折率でnx、nyおよびnz間(nx,ny,nzは、相互に直交する単位ベクトル)の屈折率差の大きい異方性光学部材(たとえばKTiOPO、GdSiO)などであってもかまわない。
【0067】
また、情報記録媒体はMOディスク10に限られるものではなく、ピットを形成したROM(Read Only Memory)ディスクや、相変化ディスク等であってもかまわない。これらの場合の情報記録信号は受光部4eおよび4fの和信号により得られる。特に相変化ディスクの場合、1/2波長板15および16の少なくとも一方に位相差板を配置し、相変化ディスクに照射される偏光を円偏光または楕円偏光とすることで、信号品質を向上させることができる。位相差板として樹脂製波長板を用いた場合、厚みをわずかに変えることで信号品質の向上が可能となる。
【0068】
本実施の形態によると、異方性光学媒質としてYVOを用いている。このため、常光、異常光の分離幅を大きくすることができ、光検出器4上のビーム配置の自由度が向上する。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0070】
【発明の効果】
光分岐と光分離とを独立して行なうことができ、偏光分離された後の光の収差を独立して調整することができる。よって、光検出器上のビーム形状を小さくすることができるなどの設計の自由度が向上し、3ビーム方式の光ピックアップ装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図2】回折格子12を示す図である。
【図3】回折格子13を示す図である。
【図4】光検出器4の構成と光検出器4に入射するビームの位置を示す図である。
【図5】傾斜角αと受光部からのビームのはみ出しに対する余裕量との関係を示す図である。
【図6】光検出器4の構成と光検出器4に入射するビームの位置を示す図である。
【図7】傾斜角αと受光部からのビームのはみ出しに対する余裕量との関係を示す図である。
【図8】従来の光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図9】光検出器124の構成と光検出器124に入射するビームのビーム長を示す図である。
【図10】一般的な3ビーム方式の光ピックアップ装置の概略構成図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザ、4 光検出器、5 光学素子、6 パッケージ、8 コリメートレンズ、9 対物レンズ、10 MOディスク、12,13 回折格子、14 石英基板、15,16 1/2波長板、17 第1の境界面、18 第2の境界面、19 第2部材、20 第1部材、21 第3部材。

Claims (6)

  1. 光源と、
    前記光源から光磁気記録媒体に至る光路上に配置されたレンズと、
    前記光源から前記レンズに至る光路上に配置され、前記光磁気記録媒体からの反射光の偏光を分離する光学素子と、
    前記光学素子で分離された光を検出する光検出器とを含み、
    前記光学素子は、
    等方性光学媒質からなり、前記光源からの光を反射して前記光磁気記録媒体に至らしめ、前記光磁気記録媒体からの反射光を通過させる第1部材と、
    前記第1部材に隣接し、等方性光学媒質からなり、前記第1部材を通過した前記光磁気記録媒体からの反射光をさらに通過させるための第2部材と、
    前記第2部材に隣接し、異方性光学媒質からなり、前記第2部材を通過した光を、前記第2部材との境界面で分離し、前記光検出器に至らしめる第3部材とを含み、
    前記異方性光学媒質は、LiNbO 3 であり、前記等方性光学媒質は、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率に対する比屈折率が略0.77以上であり、
    前記等方性光学媒質の屈折率をn、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率をn1とし、前記第2部材および前記第3部材の境界面の前記反射光の光軸に対する傾斜角をα度とすると、前記αは概ね次式
    α=65±5×(n/n1/0.77)
    で表わされる角度範囲に設定される、光ピックアップ装置。
  2. 光源と、
    前記光源から光磁気記録媒体に至る光路上に配置されたレンズと、
    前記光源から前記レンズに至る光路上に配置され、前記光磁気記録媒体からの反射光の偏光を分離する光学素子と、
    前記光学素子で分離された光を検出する光検出器とを含み、
    前記光学素子は、
    等方性光学媒質からなり、前記光源からの光を反射して前記光磁気記録媒体に至らしめ、前記光磁気記録媒体からの反射光を通過させる第1部材と、
    前記第1部材に隣接し、等方性光学媒質からなり、前記第1部材を通過した前記光磁気記録媒体からの反射光をさらに通過させるための第2部材と、
    前記第2部材に隣接し、異方性光学媒質からなり、前記第2部材を通過した光を、前記第2部材との境界面で分離し、前記光検出器に至らしめる第3部材とを含み、
    前記異方性光学媒質は、YVO 4 であり、
    前記等方性光学媒質は、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率に対する比屈折率が略0.72以上である、光ピックアップ装置。
  3. 前記等方性光学媒質の屈折率をn、前記異方性光学媒質の大きい方の屈折率をn1とし、
    前記第2部材および前記第3部材の境界面の前記反射光の光軸に達する傾斜角をα度とすると、前記αは概ね次式
    α=67±7×(n/n1/0.72)
    で表わされる角度範囲に設定される、請求項に記載の光ピックアップ装置。
  4. 前記第1部材は、互いに対向する第1の平行面と、互いに対向し、かつ各々前記第1の平行面と所定の角度をなして交差する第2の平行面とを有する断面が平行四辺形の角柱であり、前記第1の平行面の一方は、前記第2部材と接しており、前記第2の平行面の一方は前記光源と対向するように、前記第2の平行面の他方は前記レンズと対向するように、それぞれ配置されている、請求項1〜3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  5. 前記第1部材および前記第2部材は、同一の屈折率を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
  6. さらに、前記光源と前記第2部材および前記第3部材の境界面との間、および前記第2部材および前記第3部材の境界面と前記レンズとの間にそれぞれ設けられた、2つの1/2波長板を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
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