JP3558737B2 - 排ガス脱硝方法と排ガス処理方法 - Google Patents

排ガス脱硝方法と排ガス処理方法 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は排ガス脱硝方法に係わり、特に排ガス温度の不安定なごみ焼却炉において安定した脱硝性能を得るのに好適な無触媒脱硝方法ならびに流動ボイラにおいて温度の上昇していない起動時にも良好な脱硝性能を得るのに好適な無触媒脱硝と触媒脱硝を組合わせた排ガス脱硝システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ごみ焼却炉の排ガス脱硝装置として無触媒脱硝装置が採用されることが多い。脱硝触媒を用いる脱硝装置では脱硝触媒が劣化しやすい、適切な反応温度域へ脱硝触媒を設置することが困難であるなどの欠点があり、ごみ焼却炉ではまだ採用されることが少ない。無触媒脱硝装置は使用に伴う触媒劣化が無く、しかもごみ焼却炉では適切な反応温度域で反応時間を確保するのが容易であるので採用実績が多い。
【0003】
従来のごみ焼却炉における無触媒脱硝装置の一例を図5を用いて説明する。なお、図5における構成要素、部品番号、部品名の大部分は後記する本発明の実施例を示す図1と共通する。
【0004】
図5において、ごみ焼却炉1で発生した排ガスは還元剤噴霧ノズル13より噴霧された尿素水溶液で無触媒脱硝で処理された後、冷却塔2内のエアヒータ16で熱回収され、水噴霧ノズル17より噴霧される水で冷却され、バグフィルタ3による排ガス処理を経て煙突5より大気に放出される。
【0005】
脱硝用の尿素水溶液は尿素水溶液タンク28より尿素の流量制御器7と尿素水溶液流量調節器22で流量調節され、所定量が還元剤噴霧ノズル13に供給される。このとき、尿素水溶液は還元剤噴霧ノズル13の加熱による損傷を防ぎ、かつ詰まりを防止するために常時、水タンク29より供給される一定流量の水で希釈された後に還元剤噴霧ノズル13より噴霧されて無触媒脱硝に使用される。尿素の供給量は窒素酸化物発生量に比例して増減させるのが原則であり、窒素酸化物濃度計8と中央制御盤9で排ガス濃度を監視しながら予測した窒素酸化物発生量の約1倍から2倍の反応当量になるように推定して定める。
【0006】
ごみ焼却炉1は不安定で種々の燃焼特性を有する不特定物質を燃料とするので、劣悪な燃料であっても十分に焼却するために大きな燃焼室12あるいは高温で燃焼の続行する後燃焼室15を有する。このごみ焼却炉1の空間の大きさは無触媒脱硝装置で必要な反応温度900℃前後、反応時間0.3秒前後を確保するのに好都合である。
【0007】
一般のごみ焼却炉1における無触媒脱硝装置では火炉内火炎の上部空間に窒素酸化物の還元剤としてアンモニア含有ガス、アンモニア水溶液あるいは尿素水溶液を吹き込んで排ガス中の窒素酸化物を還元し、平均脱硝率30%程度の性能を得ることが多い。
【0008】
安定した脱硝反応の適温域が確保できれば脱硝率50%以上も可能であるが、不特定物質を燃料とするごみ焼却炉1の特性として火炉内の状態が不安定で高脱硝率を得るのは容易ではない。
【0009】
火炉内の火炎が拡大して高温域が拡大し、かつ、火炎内のラジカルがアンモニア、尿素と接触すると脱硝反応より窒素酸化物生成反応が優勢になって脱硝性能が低下し、むしろ窒素酸化物が増加することもある。火炎が縮小して低温域が拡大すると反応が進行しなくて脱硝性能が低下するだけでなく煙突5よりアンモニアが流出して新たな弊害を生じる。
【0010】
ごみの種類によっては焼却時に窒素酸化物の発生量が多いのにもかかわらず炉内空間に高温域が確保できずに無触媒脱硝できないことがある。図5に示した従来のごみ焼却炉1の運転では流動層温度検出器201で検出される流動層11の温度が機器を損傷する上限温度(一例として950℃)を超えないことが優先されるので炉内における空間温度検出器14の温度を800℃以上の高温に制御できないことがある。例えば揮発分が少なく炭素と水分の多いごみを焼却する場合には流動層温度のみ上昇して空間温度は上昇しない。
【0011】
ごみ焼却炉1では燃料、燃焼の不安定さに起因する火炉内の低温域拡大だけでなく、燃焼規模が小さく、しかも起動−停止操作が多いことにより、炉内は冷却され易く、火炉放熱による低温域拡大の期間が長い。つまり、夜間の停止期間に火炉が冷却されるので朝、起動してごみ焼却を再開しても無触媒脱硝に最適な温度900℃まで昇温するのに時間を必要とする。これらの理由により従来のごみ焼却炉における無触媒脱硝装置では良好に脱硝できる期間が不定でしかも短いという欠点があった。
【0012】
無触媒脱硝装置はごみ焼却炉1の他に発電流動層ボイラにも適用されている。流動層ボイラ内の空間容積および運転時の温度が無触媒脱硝に適しているので通常の触媒脱硝装置に加えて無触媒脱硝装置を用いて二段で脱硝している。まず、ボイラ内において無触媒脱硝装置で脱硝し、次いで排ガス温度が低下した位置に設けた触媒脱硝装置でさらに残りの窒素酸化物を脱硝している。
【0013】
従来の流動層ボイラにおける無触媒脱硝装置の一例を図6を用いて説明する。なお、図6における構成要素、部品番号、部品名の大部分は後記する本発明の他の実施例を示す図2と共通する。
【0014】
図6において、加圧流動層ボイラ101は排ガス処理装置として無触媒脱硝装置と触媒脱硝反応器103を有している。運転時、流動層ボイラ101で発生した排ガス温度は850℃であり、ボイラ101内のアンモニアガス噴射ノズル112よりアンモニアが添加されると無触媒脱硝される。次いでガスタービン102を経由して温度が350℃から500℃に低下した位置でアンモニアがさらに添加されて酸化チタン系脱硝触媒を充填した触媒脱硝反応器103で脱硝される。触媒脱硝反応器103の前後に位置する廃熱回収ボイラ104で冷却された後に煙突105より大気に放出される。
【0015】
アンモニアガス量は火炉の窒素酸化物濃度分析計211で検出するボイラ101における窒素酸化物発生量の変化に比例させて増減し調節する。排ガスに添加されたアンモニアガスは温度800℃以上が確保できるボイラ101内、火炉出口煙道131および図示してないが集塵サイクロン内の空間で窒素酸化物と反応して脱硝する。
【0016】
流動層ボイラ101では燃焼が安定しているので運転期間中の無触媒脱硝性能も安定している。しかし、それでもボイラ起動操作中で排ガス温度が上昇してない期間には脱硝できないという不都合を有している。一例では通常運転時に300ppmの濃度で発生した窒素酸化物を脱硝して30ppmの濃度以下にして煙突105より放出している。起動時には燃料の変更によって発生する窒素酸化物濃度を100ppm程度に低減可能であり、また発生スチーム量を抑制する方法で起動期間の短縮が可能ではあるが根本的な対策にはなり得ない。
【0017】
起動時にも燃料中の窒素分に起因する窒素酸化物が発生する。さらに煙道の温度が低くても火炎内の温度は低いわけではないので燃焼空気中の窒素に起因する窒素酸化物も発生する。しかるに従来の流動層ボイラ101では起動操作期間は脱硝できないという欠点があった。この不都合は流動層ボイラ101だけでなく他の油焚きボイラの無触媒脱硝装置および触媒脱硝装置にも共通している。従来はこの欠点はやむ得ないものとされていたが、ボイラ立地条件が厳しくなるにつれて起動期間においても脱硝できないかというニーズが大きくなってきている。
【0018】
上記従来技術は無触媒脱硝装置の反応温度域の拡大について配慮が少なく、不安定な装置温度変化が生じるごみ焼却炉において適正な反応温度域にない場合あるいは流動層ボイラにおいて起動時で低温の場合には脱硝できないという問題があった。
【0019】
また、従来から低温用の無触媒脱硝装置として特開昭53−72773号、特開昭53−144457号、特開昭53−146968号、特開昭54−8164号、特開昭54−46171号、特開昭54−56976号、特開昭54−72763号、特開昭54−72764号および特開昭55−97231号に示される過酸化水素を用いる装置が開発されている。これらの発明では窒素酸化物を有する排ガスにアンモニアなどの還元剤を添加して反応させて窒素酸化物を窒素に還元するのは通常の無触媒脱硝装置と同じであるが、さらに過酸化水素を添加して反応温度域を低下させており、過酸化水素添加で有効な脱硝温度を400℃近傍の低温領域まで拡張することが可能になることが示唆されている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術の低温用の無触媒脱硝装置では、過酸化水素を還元剤とともに排ガスに添加するに際して、過酸化水素の添加すべき温度、添加量などと脱硫性能との関係が検討されていなく、低温での高脱硝性能を十分発揮できるものではなかった。
【0021】
また、従来技術の低温用の無触媒脱硝装置を、前記ごみ焼却炉1または流動層ボイラ101だけでなく他の油焚きボイラに用いても、これらの燃焼装置の起動時の排ガス温度が低い時の脱硝は十分できなかった。
【0022】
そこで、本発明の目的は無触媒脱硝装置における反応空間の温度変化に合わせて反応の適正反応温度域を変化させて高温時だけでなく低温時にも高脱硝性能を得ることにある。
【0023】
また、本発明の目的は過酸化水素の添加条件を制御して低温での高脱硝性能を最大限発揮できる無触媒脱硝方法を提供することである。
【0024】
また、本発明の目的は過酸化水素の添加条件を制御して低温での高脱硝性能を最大限発揮できる無触媒脱硝領域と該無触媒脱硝領域の後流に設けた触媒脱硝領域を組み合わせた排ガス脱硝方法を提供することである。
【0025】
また、本発明の目的は上記無触媒脱硝方法を含み、場合によってはこれに触媒脱硝方法を組み合わせた排ガス脱硝方法を適用した焼却炉、流動層ボイラの排ガス処理方法を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、窒素酸化物を有する排ガスにアンモニアあるいは分解してアンモニアを発生する物質から選択される還元剤ならびに過酸化水素を添加して無触媒で脱硝反応させ窒素酸化物を窒素に還元する方法を構成要素として含む排ガス脱硝方法において、無触媒脱硝反応空間の温度を検出し、温度500℃以上950℃以下の範囲から選定される任意の所定温度範囲(T〜T;ただしT≧500℃、T≦950℃)より高温(>T)の場合には過酸化水素供給を遮断し、低温(<T)の場合には過酸化水素と還元剤の供給を遮断し、所定の温度範囲(T〜T)内の場合に温度が低下するほど過酸化水素量を増加させる方法で過酸化水素による還元剤酸化あるいは二酸化窒素生成に起因する脱硝性能の低下を抑制して脱硝温度域を拡大する排ガス脱硝方法により達成される。
【0027】
具体的には無触媒脱硝反応空間の温度を検出し、温度500℃以上950℃以下、好ましくはさらに二酸化窒素生成の少ない600℃以上950℃以下の範囲から選定される任意の所定温度範囲(T’〜T;ただしT’≧600℃、T≦950℃)より高温(>T)の場合には還元剤だけで脱硝できるので過酸化水素供給を遮断し、低温(<T’)の場合には二酸化窒素が生成して脱硝性能が低下するだけでなく排ガスが有色煙として煙突より排出されるので過酸化水素と還元剤の供給を遮断して脱硝を停止し、所定の温度範囲(T’〜T)内の場合には温度が低下するほど過酸化水素量を増加させて最大脱硝性能の得られる反応温度を低温側に移行させる方法で、かつ過酸化水素による還元剤酸化あるいは二酸化窒素生成に起因する脱硝性能の低下を抑制して脱硝温度域を拡大する排ガス脱硝方法である。
【0028】
具体的には燃焼装置内部または煙道空間に温度検出器を設け、さらにこの温度検出器からの信号によって排ガスに添加する過酸化水素量を増減する制御装置を設けることにより達成される。温度検出器は排ガス温度の予測できない不特定物質のごみ焼却炉排ガス処理では必須である。
【0029】
さらに本発明の対象とする温度500℃以上950℃以下の温度範囲では過酸化水素で活性化された還元剤が窒素酸化物と反応するので窒素酸化物量に応じて活性化するのが好ましく、具体的には窒素酸化物量に設定倍率を乗じて制御するのが好ましい。
【0030】
過酸化水素を用いる無触媒脱硝装置においても脱硝性能を向上させる1つの方法は窒素酸化物の還元剤として排ガスに添加するアンモニアあるいは分解してアンモニアを発生する物質の添加量を増すことである。ただし流出アンモニアの増加を抑えるために通常、窒素酸化物の2倍量を超えて添加することはない。
【0031】
本発明になる無触媒脱硝領域と触媒脱硝領域とを有する発電用などの流動層ボイラの排ガス処理装置において、触媒脱硝領域温度の検出器からの信号によって無触媒脱硝領域に供給する還元剤の流量を変動させる制御装置を設ければ大気中にアンモニアを流出させることなく還元剤添加量を増して脱硝性能を向上させることが可能である。なお、発電用流動層ボイラでは排ガス温度は蒸気圧力、煙道空間前後の機器温度等によって定まってくるので必ずしも測定する必要はない。
【0032】
不特定物質であるごみの焼却炉における排ガス処理では一般に装置が小規模であるので装置の構成が簡単であることが好ましい。この目的は還元剤として尿素水溶液を用い、尿素水溶液と過酸化水素水溶液を任意の流量づつ混合した後に排ガスに添加し、過酸化水素水溶液流量を温度検出器からの信号によって増減することで達成できる。
なお、従来技術では過酸化水素による還元剤の酸化を懸念して尿素水溶液と過酸化水素水溶液を別個に添加していた。
【0033】
さらに排ガス中への尿素水溶液と過酸化水素水溶液の噴霧を良好に維持するには、噴霧液量を一定に維持することが好ましく、構造の簡単な圧力噴霧形式のノズルでは二流体噴霧形式のノズルよりさらに厳しく一定に維持することが必要である。無触媒脱硝では各種酸化と還元のラジカル反応が競合して同時に進行し、微妙なバランスによって脱硝性能が大きく変化するので各種物質を均一に混在させることが重要である。したがって、尿素水溶液を排ガスに混合する噴霧の状態によっても脱硝性能が大きく影響される。この目的は尿素水溶液と過酸化水素水溶液および水を任意の量で混合した後、逐次排ガスに添加し、過酸化水素水溶液の流量を温度検出器から信号によって増減すると同時に過酸化水素水溶液流量の変化とは逆の方向に水流量を増減させて排ガスに添加する液量を一定に維持することで達成できる。
【0034】
【作用】
無触媒脱硝の原理はアンモニア酸化過程の中間生成物でアンモニア分子(NH)から水素原子が1つ除去されたアミノラジカル(・NH)、2つ除去されたイミノラジカル(・NH)が生成し、これが窒素酸化物(NO)と気相で反応して窒素(N)に転化することによる。脱硝反応の律速段階はアンモニアの分解にあり脱硝開始温度はアンモニアの分解開始温度と同じである。
【0035】
過酸化水素を用いる低温無触媒脱硝装置の原理はアンモニアの分解温度でなくても過酸化水素(H)を添加すると気相中でHがラジカルに分解して生成したヒドロキシラジカル(・OH)がアンモニアと反応して水素原子を引き抜き・NHと・NHを生成することによる。一旦、・NHと・NHが生成すれば低温であってもNOと反応し、NOをNに転化する。
【0036】
本発明者らは過酸化水素を用いる低温無触媒脱硝装置の応用研究の過程で各種の・OHを分子構造内に有する化合物および酸化の中間過程で・OH、・Oを生成する化合物を試験し、化合物が分解して・OH、・Oを生成する温度が脱硝開始温度になることを確認している。
【0037】
さらに本発明者らは・OH、・O濃度には各温度毎に適正値があり一定濃度以上ないとラジカルの連鎖反応が進行せず、濃過ぎると酸化反応が進み過ぎて脱硝性能が低下すること、・OH、・O濃度が濃くなるほど脱硝性能のピークが低温側に移行するという知見を見いだしている。
【0038】
本発明はこの知見に基づくものである。なお、・OH、・Oを生成する化合物としては取扱いに危険が少なく、排ガスに添加して副生成物を生じないという観点から過酸化水素を用いることが望ましい。同じく排ガスに添加してアルデヒドなどの副生成物を生じないという観点から窒素酸化物の還元物質としてはアンモニアあるいは尿素が適切である。尿素は温度500℃以上において気相で加水分解し、アンモニアと二酸化炭素に転じる。なお、水素も使用可能であるが、なによりも爆発の危険性が大きく、さらに適正な温度範囲が過酸化水素に比べて狭く、また貯蔵が容易でないので好ましくない。
【0039】
本発明に必須の特徴は排ガスに添加する過酸化水素量を装置内温度に応じて変化させる制御装置を設けることにあり、この制御装置によって装置内温度に応じた過酸化水素を添加することが可能になる。
【0040】
本発明者らの実施した試験結果の一例を図3に示す。窒素酸化物濃度200ppm、アンモニア200ppmおよび100ppm、酸素3%、水10%でさらに過酸化水素を0ppmから400ppm相当の範囲で添加した模擬排ガスを調製して温度500℃から1000℃の範囲で無触媒脱硝性能の変化を測定した。図3において曲線A、B、C、Dはアンモニア添加量を窒素酸化物量の5倍の1000ppm濃度にして試験した結果であり、過酸化水素添加量が曲線Aは400ppm相当、曲線Bは200ppm相当、曲線Cは40ppm相当である模擬排ガスにおける無触媒脱硝性能の温度変化を示し、曲線Dは過酸化水素を添加しない模擬排ガスにおける無触媒脱硝性能の温度変化を示す。
【0041】
曲線E、F、G、Hはアンモニア添加量を窒素酸化物量と当量の200ppm濃度にして試験した結果であり、過酸化水素添加量を曲線Eは300ppm相当、曲線Fは160ppm相当、曲線Gは40ppm相当および曲線Hは添加しない模擬排ガスにおける無触媒脱硝性能の温度変化を示す。過酸化水素添加量を増すにつれて脱硝性能のピークが出現する温度が900℃から600℃まで低下した。各曲線上で記号○と△で示した点は各々、最大脱硝率が得られる点を示す。
【0042】
本発明者らのこれらの実験で得られた知見によれば無触媒脱硝反応空間の温度が900℃近傍の場合には過酸化水素を添加するとアンモニアが酸化されて脱硝性能が低下するので添加しないのが好ましい。温度が800℃近傍の場合には過酸化水素を添加しなければ脱硝性能が著しく低下する。温度800℃においても過酸化水素を適当量添加すれば添加しない場合の温度が900℃における脱硝性能とほぼ同じ性能が得られる。温度が700℃近傍の場合には過酸化水素を添加しなければ全く脱硝しない。過酸化水素をさらに添加すれば、添加しない場合の温度900℃における脱硝性能に近い性能が得られる。温度が600℃近傍の場合には過酸化水素を添加しなければ全く脱硝しないのは無論であるが、過酸化水素をさらに添加しても二酸化窒素の生成が増加するので温度900℃における脱硝性能に近い性能を得るのは無理である。つまり、添加する過酸化水素量を装置内温度に応じて変化させる制御器を設けて、温度が上昇すれば過酸化水素量を減じ、温度が下降すれば過酸化水素量を増す制御を行うことで低温領域から高温領域まで良好な脱硝性能を維持することができる。
【0043】
図3のデータを基にアンモニア添加量200ppmおよび1000ppmで各温度における最大脱硝性能が得られる過酸化水素と窒素酸化物との比を求めた結果を図4に示す。図4において曲線Iはアンモニア添加量を窒素酸化物と当量の200ppm濃度にして試験した結果であり、曲線Jはアンモニア添加量を窒素酸化物量の5倍の1000ppm濃度にして試験した結果である。いずれも温度が低下するほど過酸化水素を増す必要がある。
【0044】
本発明の別の一つの特徴は尿素水溶液と過酸化水素水溶液を混合した後に排ガスに添加することにある。排ガス中に噴霧された液滴内の尿素は、まず水が全て蒸発し、次いで温度が135℃に昇温すると溶融し、次いで気化し始める。液滴が小さく尿素の粒子が微細な場合には大部分の尿素は温度150℃近傍で気化する。残った微量の尿素は温度150℃より気化と同時に分解、重合を開始するが、重合しても温度350℃までには実質上、全てが気化する。
【0045】
排ガス中に噴霧された液滴内の過酸化水素は水が全て蒸発した後に気化し始める。過酸化水素は温度150℃近傍で全て気化する。つまり、混合水溶液中の尿素と過酸化水素は同じ温度150℃近傍で共に気化する。噴霧した液滴よりほぼ同時に気化するので尿素と過酸化水素はほぼ均一に混合される。
【0046】
一方、尿素と過酸化水素を混合しないで別々に噴霧する場合には尿素と過酸化水素の高密度部分がずれるので、それだけで均一に混合するのが困難になる。混合水溶液を用いる場合でも尿素の替わりにアンモニアを用いる場合にはアンモニアは水が温度100℃になるまでに気化するのでアンモニアと過酸化水素の高密度部分がずれ、それだけで均一に混合するのが困難になる。つまり、尿素と過酸化水素の混合水溶液であって初めて均一な混合が容易になる。
【0047】
しかも、混合水溶液を噴射すれば単独で各々噴霧する場合に比較して噴射口が少なくなりノズルが簡単になる。本発明者らの試験によれば過酸化水素混合による還元剤の変質は本発明の実施例で示すように排ガス添加の直前に混合すれば、さらに酸化鉄などの触媒物質の混入を防げる。還元剤がアンモニアであっても、その変質は無視できる程度であり、尿素であればさらに変質しない。
【0048】
本発明のさらに別の一つの特徴は無触媒脱硝装置と触媒脱硝装置とを有する発電用流動層ボイラの排ガス処理装置において触媒脱硝装置温度の検出器からの信号によって無触媒脱硝装置に供給する還元剤の流量を変動させる制御器を設けることにある。
流動層ボイラを起動させると火炉内にある無触媒脱硝装置の昇温が速やかに始まり、はるかに遅れて下流の触媒脱硝装置の昇温が始まる。無触媒脱硝装置の温度が500℃に到達すれば本発明の基幹である過酸化水素を還元剤と共に添加して無触媒脱硝を開始する。還元剤添加量は多いほど脱硝性能は向上することが公知である。しかし、還元剤量を多くするほど無触媒脱硝装置から未反応のまま流出するアンモニア量が増加するのでむやみに多くできない。本発明では、この流出アンモニアを下流のまだ昇温してない触媒脱硝装置で吸収捕捉するので大気にアンモニアを流出させないままで還元剤量を増し脱硝性能を向上させることができる。触媒脱硝装置におけるアンモニア吸収捕捉性能は温度と吸収履歴、特に温度によって定まるので本発明による触媒脱硝装置の温度によって還元剤量を変動させる制御器を設ければ触媒脱硝装置でアンモニアが吸収される期間だけ還元剤量を増して脱硝性能を向上することができる。
【0049】
本発明者らの実験によればチタン系脱硝触媒を用いる触媒脱硝装置におけるアンモニア吸収は温度200℃以下では実用上、制限が無く、200℃から300℃に温度上昇するにつれて急激に吸収容量が低下する。ゼオライト系脱硝触媒は全ての温度域でチタン系脱硝触媒より吸収容量が大きい。触媒に吸収されたアンモニアは触媒表面で徐々に酸化されて窒素に転化するか、あるいは脱硝反応で消費されるので特に再生処理する必要は無い。急激に加熱された場合でも触媒内部表面に強固に吸着されたアンモニアは主に触媒表面の酸素もしくはガス中の酸素で窒素に酸化され、脱離する。
【0050】
つまり、触媒脱硝装置の温度が、例えば設定した200℃に昇温するまでは無触媒脱硝装置に添加する還元剤量を従来の窒素酸化物量の2倍量以下から脱硝性能が飽和する5倍量程度に増して脱硝性能を向上させても大気へのアンモニア流出がない。本発明を実施すれば触媒温度が300℃以下の範囲から選択される任意の所定温度より低温の場合には無触媒脱硝装置に供給する還元剤量を触媒温度が300℃以上に上昇した場合に供給する還元剤量よりも多くすることになる。
【0051】
本発明に比較的類似した技術を開示する特開昭53−72773号公報の発明は、アンモニアに加えて過酸化水素を400℃から900℃の排ガス温度範囲で添加する無触媒脱硝方法であるが、この方法では単に過酸化水素の添加する排ガス温度範囲が400℃〜900℃であると規定されているだけで、脱硝率を高めるための過酸化水素の添加をする、より詳細な最適温度については開示されていない。また、前記公報記載の発明にはごみ焼却炉あるいは流動層ボイラで脱硝反応を実施することに関する開示はない。
【0052】
また、特開昭53−146968号公報には、還元剤を排ガスにまず添加して、ついで過酸化水素を添加する無触媒脱硝方法が開示されているが、過酸化水素の添加は、窒素酸化物濃度及び排ガス温度に応じて行うことが開示されている。このとき、排ガス温度と窒素酸化物濃度から窒素酸化物の反応量を予想して演算し、反応量に等しいモル数の過酸化水素を添加することが開示されている。しかし、この方法ではいずれの温度においても過酸化水素と窒素酸化物のモル比を一定にすることが特徴であり、また、排ガス中にまず還元剤を添加し、ついで、過酸化水素を逐次、分割して添加する方法である点で本発明とは異なる。
【0053】
また、前記2つの公知例では、過酸化水素添加で低温における脱硝が可能になることが示唆されていても本発明の排ガス温度が変化すると最適の過酸化水素添加量が変化する現象は示唆されていない。つまり、一定量の過酸化水素を添加する場合、最大脱硝性能が得られる温度が定まり、その温度より低くても高くても脱硝性能が下がるという現象、特に一定量の過酸化水素を添加した場合に高温側で脱硝性能が下がるという現象および過酸化水素量を増すほど脱硝性能のピークが低温側に移行するという現象は開示されていない。
【0054】
本発明者らはかって発電用ガスタービン排ガス処理向けに開発された過酸化水素を用いる低温無触媒脱硝装置をボイラ排ガス処理に応用する研究に従事し、過酸化水素添加によって単に反応可能な温度域を拡大できるだけでなく、温度を高温側に限定すれば、脱硝反応と同時に進行する窒素酸化物生成反応を抑制して高脱硝性能のままで反応を低温側に移行できるという知見および温度を変化させれば最適な過酸化水素量が変化するという知見を得ている。本発明者らはこの知見を最近、新たな課題の生じているごみ焼却炉の無触媒脱硝および加圧流動層ボイラの起動期間中の脱硝に適用できることを見いだして本発明に到達したものである。
【0055】
【実施例】
本発明の一実施例を図面を用いて具体的に説明する。
本発明を都市ごみ焼却炉の無触媒脱硝装置に適用した一実施例を図1に示す。図1において、ごみ焼却炉1内の流動層11にごみが投入配管51から供給され、配管52から供給され燃焼用空気により燃焼し、燃焼室12と後燃焼室15で発生した排ガスは還元剤噴霧ノズル13より噴霧された尿素水溶液で無触媒脱硝処理された後、冷却塔2内のエアヒータ16で熱回収されて、水噴霧ノズル17より噴霧される水で冷却され、バグフィルタ3による排ガス処理を経てブロワー4により煙突5から大気に放出される。
【0056】
脱硝用の尿素水溶液は尿素水溶液タンク28より尿素の流量制御器7と尿素水溶液流量調節器22で流量調節されて所定量が還元剤噴霧ノズル13に供給されて無触媒脱硝に使用される。尿素量は従来と同じく、窒素酸化物濃度計8と中央制御盤9で排ガス濃度を監視しながら予測した窒素酸化物発生量の約1倍から2倍の反応当量になるように推定して定める。
【0057】
本発明になるごみ焼却炉1の無触媒脱硝装置の特徴は、無触媒脱硝を行わせる空間の温度を測定する温度検出器14と前記空間温度によって流量制御され、尿素水溶液に添加される過酸化水素と水をそれぞれ過酸化水素水溶液タンク27と水タンク29から配管62と配管64を介して還元剤配管61に供給することである。
【0058】
無触媒脱硝反応空間の温度を検出し、温度500℃以上950℃以下の範囲から予め選定した任意の所定温度範囲T〜T(T≦500℃、T≧950℃)より高温(>T)の場合には過酸化水素供給を遮断し、前記所定温度範囲T〜Tより低温(<T)の場合には過酸化水素と還元剤の供給を遮断し、前記所定温度範囲T〜T内の場合には、温度が低下するほど過酸化水素量を増加させる方法で過酸化水素による還元剤酸化あるいは二酸化窒素生成に起因する脱硝性能の低下を抑制して脱硝温度域を拡大することができる。
【0059】
装置設計者もしくは運転者が選定する低温側の温度は500℃以上であれば脱硝性能が得られるが、低温では二酸化窒素生成による脱硝性能低下が大きいので、ここでは二酸化窒素が生成し難い700℃を前記Tとして選定する。
=700℃
また、高温側の温度は950℃以下の範囲で選定できるが高温側で過酸化水素を添加し過ぎると還元剤酸化による脱硝性能低下の危険が大きくなるので前記Tとして900℃を選定する。
=900℃
【0060】
つまり、図1における空間温度検出器14の検出値が900℃より高温の場合には過酸化水素と水の流量制御器6からの信号によって過酸化水素の供給を遮断し、700℃より低温の場合には中央制御盤9からの信号によって尿素と過酸化水素の供給を停止して脱硝を停止する。温度700℃から900℃の間では次の操作によって過酸化水素を添加する。
【0061】
過酸化水素水溶液は30%濃度液が過酸化水素水溶液タンク27に貯蔵されている。無触媒脱硝が主に行われる後燃焼室15の温度を温度検出器14で検出した温度信号が過酸化水素と水の流量制御器6に送られ、予め設定した温度と過酸化水素供給量の関数によって過酸化水素供給量の信号が発生し、過酸化水素水溶液流量調節器21を動かして所定量の過酸化水素水溶液を尿素水溶液に添加する。
【0062】
過酸化水素添加モル量は試験例から得た目安として図4の曲線Iによってまず定める。しかし、一般に脱硝性能は各種競争反応の微妙なバランスによって定まり各装置の温度分布、流速分布等の特性によって異なるので試運転時に試行錯誤によって最適な量を定めるのが好ましい。窒素酸化物モル量は中央制御盤9で装置運転状態から推定され窒素酸化物量の信号が過酸化水素と水の流量制御器6に送られ過酸化水素添加の演算に使用される。
【0063】
尿素水溶液は25%濃度液として尿素水溶液タンク28に貯蔵されている。処理する窒素酸化物に対応する量は尿素の流量制御器7と尿素水溶液流量調節器22により調節され、所定量が供給され、水が加わって約3%濃度水溶液として還元剤噴霧ノズル13に供給される。
【0064】
本発明の一つの特徴は噴霧を良好に維持するために還元剤噴霧ノズル13に供給される液量を一定に保持することにあり、過酸化水素と水の流量制御器6と水流量調節器23により過酸化水素水溶液の流量変化と逆の方向に水の流量を変化させる。通常、尿素水溶液の流量変化は少なく考慮する必要はない。
【0065】
本発明の他の実施例を図2に示す。本実施例は加圧流動層ボイラの排ガス処理に適用した一例である。
図2に示す加圧流動層ボイラ101は排ガス処理装置として無触媒脱硝ソーン(流動層ボイラ101内部)と触媒脱硝反応器103を有しており、さらに、本発明になる過酸化水素水溶液噴霧ノズル113と触媒脱硝反応器103の温度によって制御する無触媒脱硝のアンモニアガス噴射ノズル112を有する。
【0066】
特に本実施例では従来の装置では脱硝できない起動操作時に、流動層ボイラ101内の無触媒脱硝ソーンに十分なアンモニアと過酸化水素を供給して低温無触媒脱硝を行い、流出する未反応アンモニアは下流の未昇温でまだ稼働させてない触媒脱硝反応器103内の脱硝触媒に吸収させて処理している。
【0067】
図2において、流動層ボイラ101の流動層111で発生した排ガス温度は850℃であり、ボイラ101内のアンモニアガス噴射ノズル112よりアンモニアが添加されると無触媒脱硝される。次いでガスタービン102を経由して温度が350℃から500℃に低下した位置でアンモニアがさらに添加され、酸化チタン系脱硝触媒を充填した触媒脱硝反応器103で脱硝される。
【0068】
流動層ボイラ101をホットスタートで起動すると、ボイラ101内の空間は温度600℃近傍であり、ノズル113から過酸化水素を添加すれば直ちに無触媒脱硝が可能である。起動後、火炉温度検出端114の温度が500℃以上であれば、過酸化水素流量制御器123と過酸化水素流量制御弁121により流量を制御して過酸化水素を過酸化水素水溶液噴霧ノズル113から排ガスに添加する。排ガスにはアンモニアガス噴射ノズル112よりアンモニアが添加されるので無触媒脱硝が生じる。
過酸化水素の添加量は前記実施例と同様に決定する。アンモニア量はまず窒素酸化物量の5倍当量を添加する。
【0069】
過酸化水素で最大脱硝性能の得られる無触媒脱硝温度を低温側に移行させ、しかも流出アンモニアに制限されることなく十分なアンモニアを添加するので脱硝率80%以上も可能である。
【0070】
流動層ボイラ101を出た排ガスはガスタービン102を経て触媒脱硝反応器103に至る。脱硝触媒はボイラ起動初期はまだ昇温しておらず温度200℃近傍であるので排ガス中の流出アンモニアを吸収除去する。排ガスはさらに廃熱回収ボイラ104を経て煙突105より大気に放出される。
【0071】
触媒脱硝反応器103による流出アンモニア処理能力は温度によってほぼ定まるので脱硝反応器温度検出端115の温度によって無触媒脱硝で添加するアンモニア量を制限する。本実施例では流出アンモニア濃度をアンモニア濃度分布計116で検出し、火炉アンモニア流量制御器125で流出アンモニア量が所定値になるようにアンモニア添加量を定め、火炉用アンモニア流量制御弁124で制御する。窒素酸化物100ppmに対し大過剰のアンモニア500ppm相当を添加して大部分のアンモニアが脱硝に未使用であっても排ガスが触媒脱硝反応器103に至るまでに煙道壁面の触媒作用等によって大部分のアンモニアが酸化、分解されて窒素に転化するので触媒脱硝反応器103に至る流出アンモニアは1割の50ppm以下である。
【0072】
濃度50ppm程度の流出アンモニアは脱硝反応器温度検出端115の温度200℃程度までは脱硝触媒で吸収除去される。そこで温度200℃以下の場合には脱硝装置設定切換器151で火炉アンモニア流量制御器125における流出アンモニア量の制御目標値50ppmに設定する。火炉アンモニア流量制御器125では制御目標値50ppmで、かつ別に設定した最大アンモニア添加量を超えない範囲でアンモニアガス噴射ノズル112に供給するアンモニア量を制御する。
【0073】
アンモニアの吸収除去時に仮に排ガス中に三酸化硫黄が多量に存在するとアンモニアと反応して酸性硫安を生成して脱硝触媒を被毒させる。しかし、良質の石炭を燃料とする加圧流動層ボイラ101では三酸化硫黄の原料となる二酸化硫黄が数十ppmと少なく、しかも灰に三酸化硫黄への酸化の触媒活性が無いので三酸化硫黄がほとんど生成せず、酸性硫安による被毒は無視できる。さらに起動時に燃料を替えれば三酸化硫黄を皆無にすることも可能である。仮に酸性硫安で触媒が被毒されても温度400℃以上に加熱されれば、徐々に酸性硫安が気化して再生される。500℃以上に加熱すれば速やかに再生される。
【0074】
ボイラ起動後、触媒脱硝反応器103の温度が昇温し、200℃を超えると流出アンモニア処理能力がさらに低下する。そこで温度200℃以上では火炉アンモニア流量制御器125における制御目標値を10ppmに低下させる。温度が250℃を超えると触媒脱硝反応器103における脱硝触媒の活性が立ち上がり始めるが、まだ活性が十分でなく脱硝反応によるアンモニア処理能力は不十分である。温度が300℃を超えると脱硝反応によるアンモニア処理が可能になるのでアンモニアガス配管136から反応器用アンモニアガス配管138を経由してアンモニアを添加して排ガス脱硝を開始することもある。
【0075】
反応器用アンモニア流量制御弁127によるアンモニア制御は従来と同様、窒素酸化物濃度分析計117と反応器用アンモニア流量制御器126で行う。しかし、まだ活性が十分ではないのでアンモニア量を少なくし、触媒脱硝反応器103入口窒素酸化物の当量の半分以下とする。温度が350℃を超えると触媒脱硝反応器103だけで十分な脱硝能力があるので無触媒脱硝を停止することも可能である。例えば脱硝装置設定切換器151より信号を発して過酸化水素水溶液配管135と火炉用アンモニアガス配管137を遮断し、アンモニアが有効に利用され難い無触媒脱硝を停止すると同時に反応器用アンモニア流量制御器126によるアンモニア量の制御目標値を触媒脱硝反応器103入口窒素酸化物の当量とする。
【0076】
こうして流動層ボイラ101の起動運転期間、定常運転期間ともに適切に排ガス脱硝ができる。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば無触媒脱硝可能な温度域を拡大できるので装置起動時の昇温中にも、また、運転中の降温時にも排ガス脱硝できるので脱硝処理期間が長くなり平均脱硝率が向上する効果がある。さらに、ごみ焼却炉において焼却するごみ質に起因して炉空間の温度を昇温できず従来の装置では脱硝できない期間においても本発明の適用で脱硝可能になるという効果がある。
【0078】
流動層ボイラにおいて従来脱硝できなかった起動運転期間においても脱硝できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる過酸化水素を用いる無触媒脱硝方法を適用した都市ごみ焼却炉の一実施例を示すフロー図である。
【図2】本発明になる無触媒脱硝装置と触媒脱硝装置を組み合わせた起動システムを適用した加圧流動層ボイラの一実施例を示すフロー図である。
【図3】過酸化水素量変動時の脱硝性能ピークの温度変化を示す図である。
【図4】各温度における最大脱硝性能の得られる過酸化水素と窒素酸化物の比を示す図である。
【図5】従来の無触媒脱硝方法を適用した都市ごみ焼却炉の一実施例を示す図である。
【図6】従来の無触媒脱硝装置と触媒脱硝装置を組み合わせた脱硝システムを適用した加圧流動層ボイラの一実施例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 ごみ焼却炉 2 冷却塔
3 バグフィルタ 4 ブロワー
6 過酸化水素と水の流量制御器 7 尿素流量制御器
9 中央制御盤 11 流動層
12 燃焼室 13 還元剤噴霧ノズル
14 温度検出器 15 後燃焼室
16 エアヒータ 17 水噴霧ノズル
21 過酸化水素水溶液流量調節器 22 尿素水溶液流量調節器
23 水流量調節器
27 過酸化水素水溶液タンク 28 尿素水溶液タンク
29 水タンク
51 ごみ投入配管 61 還元剤配管
101 加圧流動層ボイラ 102 ガスタービン
103 触媒脱硝反応器 104 廃熱回収ボイラ
111 流動層 112 アンモニアガス噴射ノズル
113 過酸化水素水溶液噴霧ノズル 114 火炉温度検出端
115 脱硝反応器温度検出端 116 アンモニア濃度分布計
117 窒素酸化物濃度分析計 121 過酸化水素流量制御弁
123 過酸化水素流量制御器 125 火炉アンモニア流量制御器
126 反応器用アンモニア流量制御器
127 反応器用アンモニア流量制御弁 135 過酸化水素水溶液配管
136 アンモニアガス配管 137 火炉用アンモニアガス配管
138 反応器用アンモニアガス配管 151 脱硝装置設定切換器

Claims (6)

  1. 窒素酸化物を有する排ガスにアンモニアあるいは分解してアンモニアを発生する物質から選択される還元剤ならびに過酸化水素を添加して無触媒で脱硝反応させて窒素酸化物を窒素に還元する方法を構成要素として含む排ガス脱硝方法において、無触媒脱硝反応空間の温度を検出し、温度500℃以上950℃以下の範囲から選定される任意の所定温度範囲(T1〜T2;ただしT1≧500℃、T2≦950℃)より高温(>T2)の場合には過酸化水素の供給を遮断し、低温(<T1)の場合には過酸化水素と還元剤の供給を遮断し、所定の温度範囲(T1〜T2)内の場合に温度が低下するほど過酸化水素供給量を増加させる方法で過酸化水素による還元剤酸化あるいは二酸化窒素生成に起因する脱硝性能の低下を抑制して脱硝温度域を拡大することを特徴とする排ガス脱硝方法。
  2. 燃焼装置および該燃焼装置に続く煙道空間の少なくともいずれかに温度検出器を設け、排ガス中の窒素酸化物量の予想値もしくは実測値に依って還元剤供給量を定め、さらに窒素酸化物量に所定の設定倍率を乗じた値になるように過酸化水素供給量を定め、設定倍率は前記温度検出器からの信号によって予め決められた値に変化させる制御装置を設けることを特徴とする請求項1記載の排ガス脱硝方法。
  3. 還元剤として尿素水溶液、過酸化水素として過酸化水素水溶液を用い、予め任意の所定流量づつ混合した混合水溶液として排ガスに供給することを特徴とする請求項2記載の排ガス脱硝方法。
  4. 尿素水溶液と過酸化水素水溶液を任意の所定流量づつ混合した後に排ガスに供給し、尿素水溶液流量および/または過酸化水素水溶液流量の所定値を変化させた場合に、同時にこれらの水溶液の他に水の添加流量の所定値を前記尿素水溶液と過酸化水素水溶液の増減量とは逆の増減量で同じ量だけ変化させる方法で加減して、排ガスに添加する液量を一定に維持することを特徴とする請求項3記載の排ガス脱硝方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の排ガス脱硝方法を適用したことを特徴とする不特定物質の焼却炉からの排ガス処理方法。
  6. 請求項1ないし4のいずれかに記載の排ガス脱硝方法を適用したことを特徴とする流動層ボイラからの排ガス処理方法。
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