JP3558712B2 - 気化器制御方法及び装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、LNG基地において、LNG(液化天然ガス)を気化させる気化器の運転管理に用いて好適な気化器制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、火力発電所の燃料として天然ガスが用いられている。この天然ガスは、−165゜に冷却することにより液化させ、これを専用のLNGタンカーによってLNG基地に海上輸送し、複数の気化器を用いて再び気化させたものである。LNG基地においてLNGタンクに貯留されたLNGは、ステンレス等の鋼材により形成された配管によって各々の気化器に分配され、これらの気化器は、LNGを海水を用いて気化させ天然ガスを出力する。各気化器から出力された天然ガスは、1本の配管(主管)に集められ、火力発電所に送出される。火力発電所は、この天然ガスを燃料としてボイラを焚いてタービンを回転させることによって、発電を行っている。
【0003】
上述するLNG基地は、火力発電所が需要者に継続して電力を供給するために、常時天然ガスを火力発電所に供給し続けなければならない。そのために、気化器は、継続的にLNGの気化動作を行わなければならないが、(イ)火力発電所における天然ガスの消費量が少なくなった時、(ロ)メンテナンスを行っている時、(ハ)故障して修理をしている時、等に上記複数の気化器のうち何台かの気化器が長時間に亘って運転を停止する場合がある。
【0004】
このようなLNG基地の気化設備において、気化器が再び気化動作を開始する場合、気化器にLNGを送り込む配管は、−165゜のLNGが大量に流れるために急激に冷却される。この場合、気化器と、LNGを気化器に送り込む配管とがフランジによって連結されているオープンラック式気化器においては、フランジ部が急激に冷却されるために、ここからLNGが外部に流出することがある。これを防止するために、オープンラック式気化器の入口の配管に小量のLNGを流す配管(クールダウンライン)を併設し、気化器の運転停止中に、このクールダウンラインを介してLNGを流入させてフランジ部を冷却するように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した気化器では、停止中に流入されて滞留したLNGが配管内において濃縮化する。図4はLNGの組成を示す図である。この図に示すように、LNGは複数の炭化水素から構成されているが、分子量が大きく比重の重い炭化水素は、配管内で濃縮化し易い。しかも、この分子量が大きい炭化水素程カロリーが高いために、気化器を再運転させた場合、この濃縮化されたLNGが初めに気化されるため、一時的にカロリーの高い天然ガスが火力発電所に送出される。したがって、通常供給される天然ガスよりもカロリーの高い天然ガスが供給されることによって、天然ガスを燃焼させている火力発電所のボイラは、その燃焼動作に外乱を受けることになり、このことが原因となって発電量が安定しなくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上述する問題点に鑑みてなされたもので、火力発電所のボイラの制御に与える外乱を抑えることが可能な気化器制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の気化器制御方法は、上記の問題点を解決するために、運転中に液化天然ガスを気化させて天然ガスを出力し、運転停止中には小量の液化天然ガスを流入させることによって冷却保持される複数の気化器を制御する気化器制御方法において、運転停止中の気化器の運転開始を指示する信号が発せられると、運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器を優先して運転させることを特徴とする。
【0008】
第2の気化器制御方法は、上記問題を解決するために、請求項1記載の気化器制御方法において、運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器が複数存在する場合、運転停止時間が最も長い気化器を運転させることを特徴とする。
【0009】
第1の気化器制御装置は、上記問題を解決するために、運転中に液化天然ガスを気化させて天然ガスを出力し、運転停止中には小量の液化天然ガスを流入させることによって冷却保持される複数の気化器を制御する気化器制御装置において、前記各気化器の運転停止時間を計時する計時手段と、前記気化器の運転開始を指示する信号を受けて、前記運転停止時間が一定値以上の気化器を検出し、当該気化器に運転開始信号を出力する制御手段とを具備している。
【0010】
【作用】
第1の気化器制御方法によれば、各々の気化器は、運転中には液化天然ガスを気化させて天然ガスを出力し、運転停止中には小量の液化天然ガスが流入される。そして、運転停止中の気化器の運転開始を指示する信号が発せられると、運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器が運転されるので、運転停止中に流入された液化天然ガスの濃縮化が防止される。
【0011】
第2の気化器制御方法によれば、請求項1記載の気化制御方法において、運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器が複数存在する場合、運転停止時間が最も長い気化器が運転されるので、さらに、運転停止中に流入された液化天然ガスの濃縮化が防止される。
【0012】
第1の気化器制御装置によれば、各々の気化器は、運転中には液化天然ガスを気化させて天然ガスを出力し、運転停止中には小量の液化天然ガスが流入される。計時手段は、各気化器の運転停止時間を計時し、気化器の運転開始を指示する信号を受信すると、制御手段は、運転停止時間が一定値以上の気化器を検出して該気化器に運転開始信号を出力する。こうすることによって、運転停止中に流入された液化天然ガスの濃縮化が防止される。
【0013】
【実施例】
以下、図1から図4を参照して、本発明に係わる気化器制御方法及び装置の一実施例について説明する。
図2は、LNG基地における気化設備の一例を示す概略図である。図において、LNGタンク1は、LNG基地の規模に応じて複数台が設けられ、LNGタンカーによって海上輸送されてきたLNGは、このLNGタンク1に各々貯留され、保管される。また、LNGタンク1に貯留されたLNGは、各々のLNGタンク1に設けられたLNGポンプ2によって汲み出され、オープンラック式気化器3(以下、単に気化器3と略す)に送られる。
【0014】
気化器3は、LNG基地の規模に応じて複数台が設けられ、海水を用いてLNGを気化させて天然ガスを出力する。圧力計4は、火力発電所に天然ガスを供給する主管に設けられており、火力発電所の天然ガスの消費量に応じて変動する天然ガスの圧力を計測する。気化器が運転される場合にLNGが流されるメインラインには、流量制御弁5と遮断弁6が設けられている。流量制御弁5は、各々の気化器3が運転される場合において、気化器3に流入するLNGの流量を調節する。遮断弁6は、各々の気化器3が運転を停止する場合に閉鎖され、LNGが運転停止中の気化器3内に流入することを阻止する。フランジ部10は、気化器3に設けられたフランジと気化器3にLNGを送り込む配管に設けられたフランジとを連結させている部分であり、各々のフランジは、ボルト等を用いて隙間なく固定されている。気化器3とこの配管とは、異種金属で構成されているため、これらの連結は、フランジあるいは爆着継手によって行われている。
【0015】
符号7はクールダウンラインであり、気化器3が運転を停止している間、フランジ部10を冷却するため、小量のLNGがこのクールダウンライン7に流される。流量制御弁8は、クールダウンライン7を流れるLNGの流量を調節し、遮断弁9は、気化器3が運転される場合に閉鎖され、クールダウンライン7にLNGが流れることを防止する。
【0016】
このような気化器3においては、運転停止中にクールダウンライン7を介してフランジ部10を予冷するために流される小量のLNGが、流量制御弁5あるいは遮断弁6近傍の配管内で次第に濃縮化する。この濃縮化は、運転停止時間が長くなるに従って徐々に進行する。
【0017】
次に、図3を参照して、上述する気化器の制御系統について説明する。
図において、中央制御装置11は、上記圧力計4によって計測される主管圧力が変動した場合、この主管圧力を一定に保つように気化器制御装置12を制御する。気化器制御装置12は、この中央制御装置11の指示に応答して、運転中の気化器3の入口に設けられた各々の流量制御弁5の開口度を操作することによって、各々の気化器3が出力する天然ガスの流量を制御し、主管圧力を一定に保つように動作する。制御パネル13は、中央制御室に設けられており、各気化設備の運転状況が数値あるいはランプ等の表示手段を用いて表示されている。また、制御パネル13には、中央制御室に待機して各気化設備の運転状況を監視している運転員が気化器3を運転させても良いと判断したときに操作される気化器台数制御スイッチ14が、各々の気化器3に対応して複数設けられている。この気化器台数制御スイッチ14は、例えば、気化器3がメンテナンスのために運転を停止する場合に運転員の判断によって「OFF」とされ、メンテナンスが終了すると運転員の判断によって「ON」とされる。気化器制御装置12は、この気化器台数制御スイッチ14が「ON」とされており、いつでも再運転させることが可能な気化器3のみを対象としてLNGの気化動作を制御する。
【0018】
ここで、中央制御装置11と気化器制御装置12の一連の動作によっても、主管圧力を一定に保持することができない状況に至る場合がある。この場合、中央制御装置11は、運転停止中の気化器に運転開始を指示する増台トリガ信号を気化器制御装置12に出力する。気化器制御装置12は、増台トリガ信号を受信すると、以下に示す方法によって運転を再開させる気化器3を決定し、該当する気化器3に起動指令を出力する。気化器制御装置12は、各々の気化器3が運転を停止する場合、運転停止時間Tの計時を開始するように構成されており、また、内部のメモリに基準運転停止時間αを記憶するように構成されている。
【0019】
このような気化設備において、気化器3が通常運転される場合、フランジ部10には大量のLNGが流れるため、その温度は、−165゜Cに近い値となる。一方、気化器3が運転を停止し、対応する台数制御スイッチ14が「OFF」とされている場合には、遮断弁9が開放されてクールダウンライン7を介して小量のLNGがフランジ部10に流入される。この場合、フランジ部10の温度は、−75゜C以下にクールダウン制御される。
【0020】
以下に、中央制御装置11が増台トリガ信号を出力した場合、気化器制御装置12が再運転させる気化器を決定する方法について、図1に示すフローチャートに沿って説明する。気化器制御装置12は、以下に示す処理に基づいて決定された気化器3に起動指令を出力する。
【0021】
〔ステップS1〕
火力発電所において天然ガスの消費量が増大し、現在運転中の気化器3によってこの消費量が賄えない状況に至ると、中央制御装置11は、増台トリガ信号を出力する。気化器制御装置12は、この増台トリガ信号を受信すると、以下の処理を開始する。
【0022】
〔ステップS2〕
運転を停止している気化器3の中で、台数制御スイッチ14が「ON」となっている気化器3が検索される。停止中の気化器3について、再び運転して良いと判断された気化器3は、各々の気化器3に対応した台数制御スイッチ14が運転員によって「ON」とされる。台数制御スイッチ14が「ON」となっている気化器3が存在しない場合、ステップS3に進み、台数制御スイッチ14が「ON」となっている気化器3が存在する場合、ステップS4に進む。
【0023】
〔ステップS3〕
台数制御スイッチ14が「ON」となっている気化器3が存在しない場合、増台気化器なしとしてが新たに気化器3を運転させることをしない。
【0024】
〔ステップS4〕
各々の気化器について運転停止時間Tが確認される。そして、この運転停止時間Tが予め設定されている基準運転停止時間αに達している気化器3が存在する場合にステップS5に移行し、基準運転停止時間αに達している気化器3が存在しない場合にステップS6に移行する。
【0025】
〔ステップS5〕
運転停止時間Tが予め設定されている基準運転停止時間αに達している気化器3のうち、気化器番号が最も若い気化器3に起動指令が出力される。
【0026】
〔ステップS6〕
運転停止時間Tが予め設定されている基準運転停止時間αに達していない気化器3のうち、気化器番号が最も若い気化器3に起動指令が出力される。
【0027】
上述する気化器制御装置によれば、基準運転停止時間α以上の運転停止時間Tの気化器が選択されて起動されるため、運転停止中の気化器に運転停止時間Tが基準運転停止時間α以上のものと基準運転停止時間αよりも短いものが存在した場合、この基準運転停止時間α以上の運転停止時間Tの気化器3が先に運転される。このことによって、運転員の誤判断等により長時間に亘って運転停止状態に放置される気化器がなくなるため、フランジ部10の予冷のために流されるLNGの濃縮化を抑え、火力発電所のボイラに外乱を与えることが抑えられる。
【0028】
なお、爆着継手タイプの気化器ではフランジ部が存在しないために、フランジ部の予冷制御を行う必要がない。しかし、このタイプの気化器には、運転停止中にLNGを流入させる配管がある程度以上温度上昇しないように、小量のLNGを流して配管を冷却する冷却ラインが設けられている。したがって、この配管を冷却するLNGの濃縮化が、フランジ継手タイプの気化器と同様に発生する。よって、上述した気化器制御方法は、爆着継手タイプの気化器においても、LNGの濃縮化を抑え、火力発電所のボイラに与える外乱を抑える効果がある。
【0029】
また、運転停止時間が予め設定されている基準運転停止時間に達している気化器が複数ある場合、あるいは、運転停止時間が予め設定されている基準運転停止時間に達している気化器がない場合、最も運転停止時間の長い気化器を運転させることも可能である。
【0030】
さらに、本発明の気化器制御方法及び装置において、上記実施例に示す気化設備の構成および気化器の制御系統に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0031】
【発明の効果】
本発明に係わる気化器制御方法及び装置によれば、気化器の運転台数を増台する場合、運転停止時間が所定時間を越えて長い気化器が選択されて運転される。つまり、所定の運転停止時間を経過した気化器が存在する場合、所定時間を経過していない気化器が先に運転されることがない。したがって、長時間に亘って運転停止に放置される気化器を極力減らし、運転停止中の気化器において生じるLNGの濃縮現象が進むことを抑えて天然ガスの供給先の火力発電所のボイラに与える外乱を抑えることが可能である。。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる気化器制御装置の制御フローの一例を示す図である。
【図2】本発明に係わるLNG基地における気化設備の一例を示す概略図である。
【図3】本発明に係わる気化器の制御系統の一例を示す図である。
【図4】LNGの組成及び熱量を示す図である。
【符号の説明】
1 LNGタンク
2 LNGポンプ
3 気化器
4 圧力計
5、9 流量制御弁
6、8 遮断弁
7 クールダウンライン
11 中央制御装置
12 気化器制御装置
13 制御パネル
14 気化貴台数制御スイッチ
Claims (3)
- 運転中に液化天然ガスを気化させて天然ガスを出力し、運転停止中には小量の液化天然ガスを流入させることによって冷却保持される複数の気化器を制御する気化器制御方法において、
運転停止中の気化器の運転開始を指示する信号が発せられると、運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器を優先させて運転させることにより運転停止中の気化器における液化天然ガスの濃縮を抑えることを特徴とする気化器制御方法。 - 運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器が複数存在する場合、該運転停止時間が最も長い気化器を運転させる、ことを特徴とする請求項1記載の気化器制御方法。
- 運転中に液化天然ガスを気化させて天然ガスを出力し、運転停止中には小量の液化天然ガスを流入させることによって冷却保持される複数の気化器を制御する気化器制御装置において、
前記各気化器の運転停止時間を計時する計時手段と、
前記気化器の運転開始を指示する信号を受けて、前記運転停止時間が基準停止時間を越えた気化器を検出して優先して運転開始信号を出力することにより運転停止中の気化器における液化天然ガスの濃縮を抑える制御手段と
を具備してなる気化器制御装置。
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JP00532295A JP3558712B2 (ja) | 1995-01-17 | 1995-01-17 | 気化器制御方法及び装置 |
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