JP3558691B2 - 揚水筒 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、大量の水を揚水することを目的とした揚水筒に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、湖、沼、池、ダム又は湾内などの大量水を上下循環させる装置として、例えば特公平3−46679号公報には、図3に示すような間欠空気揚水装置が開示されている。同図を説明すると、筒体11の下部外側に空気室12を装着し、筒体11の下端にチェーン13を介して重錘14を固着して水底15に定着し、筒体11の上端外側に浮室16を設け、前記重錘14と浮室16によって筒体11を直立させる。空気室12は、筒体11の外側に内筒17と外筒18を所定間隙を保って遊嵌し、前記内外筒17、18の中間部に仕切筒19を設けて空気室12が構成されている。外筒18の上端と内筒側壁との間に設けた頂板20からホース21を介して加圧空気を矢示22のように供給すると、空気は空気室12の上部内側へ溜まるので、空気室内の水位は矢示23のように逐次低下する。
【0003】
このようにして水位が内筒下側壁部に設けた貫通孔24に達すると、空気室内の空気は矢示25、26、27のように、外筒18と仕切筒19、仕切筒19と内筒17および内筒17と筒体11との間を通過して矢示28のように筒体11内に入り、気泡弾29となって筒体内を上昇し、逐次加速して筒体上端から放出される。この場合、気泡弾の外側は筒体内壁に摺接しているため、浮力による上昇はそのまま筒体内の揚水力に転化されるので、速やかに揚水は加速される。
【0004】
このように構成される従来の揚水筒の筒径は10〜80cm位のものが一般的に使用されており、さらに大径(例えば、筒径1m)になると、気泡弾がまとまらず、却って揚水効率が低下することが知られている。実際の循環水量としては、直径50cm、長さ10mの揚水筒1基で2〜6万トン/日の水を循環できるので、係る揚水筒によれば、50〜100万トン規模の貯水池の水を循環しうると言われている。揚水筒を複数本並立使用した場合には、単一の揚水筒による上記循環量より揚水能力を向上させることは可能であり、揚水筒の数も10基程度なら管理上問題はないが、数十基ともなると、その管理は極めて煩雑になるという問題がある。
【0005】
従って、揚水筒の数の増加を抑制しつつ、しかも循環水量を大幅に増加しうる揚水装置が要望されている。
【0006】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来公知の揚水筒に簡単な設備を付加することにより、大幅に循環水量を増大することが可能な揚水筒を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の要旨は、下端を水底へ係留し、上部に浮子を固定し、下端部に空気の吐出口を有する揚水筒において、該揚水筒上端部に揚水筒の筒径よりやや径大の外筒を、その上端が揚水筒上端より上位にあるように同心状に付設したことを特徴とする揚水筒を第一の発明とし、
上記第一の発明において、外筒下部がその下端部に向けて漸次径大となるフレア状であることを特徴とする揚水筒を第二の発明とする。
【0008】
【作用】
揚水筒径よりやや径大の外筒を揚水筒上端部に付設することにより、揚水筒中央部からの上昇流に同伴する流れを誘発させ、循環水量を大幅に増加することができる。外筒下部をその下端部に向けて漸次径大となるフレア状とすることにより、同伴流の吸込抵抗を低減し、スムーズに同伴流が誘起される。
かくして、対象とする水域の下層から上層までの全層がすべて撹拌されるまでの全撹拌時間を同伴流がない場合に比して短縮することが可能になる。
【0009】
【実施例】
以下に本発明の実施例を図1に基づいて説明する。図において、筒体1の上部に浮子2を固定し、筒体1の下端部に間欠空気揚水装置3を設置し、筒体1の下端にチェーン4を介して重錘5を固着して水底6に係留し、重錘5と浮子2によって筒体1を直立姿勢に保持する。7は筒体1の直径よりやや径大の外筒であって、その上端は筒体1の上端より上位にあり、筒体1に同心状に付設されている。外筒7の下部は、その下端部に向けて漸次径大となるフレア状である。8は加圧空気を供給するホースであり、9は索条10により重錘5と外筒7に接続されたブイである。
【0010】
次に、係る構成の揚水筒による揚水量を測定した。なお、この揚水筒の内径Dは400mm、高さHは7800mm、外筒7の下端部の内径Cは800mmである。
【0011】
図2の揚水筒は、外筒7を有しない点を除けば実質的に図1のものと同じ形状であり、まずこの揚水筒について、間欠空気揚水装置3により間欠的に揚水しながら電磁流速計(図示せず)を用いて筒体1の上端部の上昇流の流速を測定した。その結果、約100cm/sec の値を得た。
【0012】
そして、図1の揚水筒について、間欠空気揚水装置3により間欠的に揚水しながら、外筒7の下端部の円周方向4ヵ所において電磁流速計を用いて同伴流の流速を測定した結果、4ヵ所の平均値として約15cm/sec の値を得た。筒体1の断面積はπ/4×(400mm)=0.126mであり、外筒7の下端部の円形断面から筒体1を除いたドーナツ状の円環部分の断面積は、π/4〔(800mm)−(400mm)〕=0.377mであるから、筒体1内を上昇する主循環流と外筒7内を上昇する同伴流の流量は、それぞれ、次のような値となる。
【0013】
主循環流の流量=0.126m×100cm/sec =7.56m/min
同伴流の流量=0.377m×15cm/sec =3.39m/min
すなわち、同伴流の流量は主循環流の流量の44.8%を占める。
【0014】
このように、外筒という簡単な設備を付加するだけで循環水量を大幅に増加することができる。なお、揚水装置は間欠式でなく、連続式を採用することも可能である。この場合は、揚水筒下端部に多孔板又は多孔管を有する散気装置を具備すればよい。
【0015】
上記のように同伴流を生じさせる外筒7の各寸法は以下のような範囲とするのが好ましい。
(1) 内径W
同伴流の流量は筒体内の主循環流の流量を超えることはないので、外筒通過中の摩擦や渦流れ等による損失水頭を抑制する観点から、内径がWである外筒7の円形断面から内径Dの筒体1を除いた円環部分の断面積は、内径Dの筒体1の断面積と同等程度が好ましい。すなわち、W=21/2 D程度とするのが好ましいが、外筒施工上の便宜を考えれば、W=1.3〜1.5D程度がより現実的な範囲である。
【0016】
(2) 筒体1上端よりの外筒7の高さL
筒体1上端よりの外筒7の高さLは、上昇噴流(気泡を含有する循環流)の範囲内に存在するのが好ましいが、Lを大きくしすぎると、上昇噴流の影響を直接に受けて損失水頭が増大する。一方、上昇噴流の拡がり角度は約12°であると言われている。そこで、(W−D)/2=bとすれば、b/L=tan12°、すなわち、L=4.7b程度とするのが好ましい。
【0017】
(3) 外筒の全高L
外筒の全高Lを大きくすれば、より下層の部分から同伴流を生ぜしめることができる。しかし、Lの大きさと同伴流量とは比例関係になく、徒にLを大きくすることは設備コスト的に不利になるだけである。すなわち、同伴流を生じさせるために、外筒の内径Wが筒体の内径Dより大きく、外筒の先端が筒体上端より一定値(本実施例ではL)だけ突出していれば十分であって、極端な場合として、L=Lでも同伴流を生じさせることができる。なお、Lが大きくなるほど同伴流を生じさせる影響域が広がるので、対象水域の全層がすべて撹拌されるまでの全撹拌時間をより短縮することが可能になる。
図1に示すように、外筒7の下部がその下端部に向けて漸次径大となるフレア状であれば、同伴流の吸込抵抗が低減され、スムーズに同伴流を上昇させうるという効果が期待できる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、既存の揚水筒の上端吐出口付近にやや径大の外筒を付設するという簡単な設備構成により、大幅な揚水量の増加を達成することができる。その結果、対象とする水域の全層がすべて撹拌されるまでの全撹拌時間を短縮することが可能になる。また、外筒下部をその下端部に向けて漸次径大となるフレア状とすることにより、同伴流の吸込抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の揚水筒の使用状態を説明する図、図1(b)は本発明の揚水筒の断面図である。
【図2】図2は図1の揚水筒から外筒を除いたものを示す図である。
【図3】従来の間欠空気揚水装置の断面図である。
【符号の説明】
1…筒体
2…浮子
3…間欠空気揚水装置
4…チェーン
5…重錘
6…水底
7…外筒
8…ホース
9…ブイ
10…索条
11…筒体
12…空気室
13…チェーン
14…重錘
15…水底
16…浮室
17…内筒
18…外筒
19…仕切筒
20…頂板
21…ホース
22、23、25、26、27、28…矢示
24…貫通孔
29…気泡弾

Claims (2)

  1. 下端を水底へ係留し、上部に浮子を固定し、下端部に空気の吐出口を有する揚水筒において、該揚水筒上端部に揚水筒の筒径よりやや径大の外筒を、その上端が揚水筒上端より上位にあるように同心状に付設したことを特徴とする揚水筒。
  2. 外筒下部がその下端部に向けて漸次径大となるフレア状であることを特徴とする請求項1記載の揚水筒。
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