JP3557886B2 - 電磁力を応用した溶融金属の連続鋳造方法 - Google Patents

電磁力を応用した溶融金属の連続鋳造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、溶融金属、特に溶鋼の連続鋳造において、鋳片の表面品質を向上させると共に、鋳造速度を大幅に向上させるために電磁力を応用する連続鋳造技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属の連続鋳造においては、溶融金属を注入しつつある鋳型を振動させながら凝固した鋳片を引き抜く方法が一般的であり、鋳型の内壁と鋳片の凝固シェルとの間に摩擦力が発生する。この摩擦力の方向は、鋳型の振動速度と鋳片の引抜き速度(鋳造速度)との関係により定まる。
【0003】
図7に、通常の連続鋳造における鋳型の振動速度と引抜き速度との関係を図示する。ここで、速度は鉛直上向きを正(プラス)とする。このように、鋳型の下降速度が鋳片の引抜き速度より小さい時間域(即ち、鋳型の方が鋳片よりも鉛直下向きに動く速さが速い時間域)をネガティブストリップ期(以下、NS期という)といい、これ以外の時間域をポシティブストリップ期(以下、PS期という)と定義する。PS期には、凝固シェルに鋳型から下向きの引張応力が作用し、その引張応力が凝固シェルの強度を超えると凝固シェルは破断する。そして、鋳片内部の未凝固溶鋼が流出するブレークアウト事故に至る。このようなブレークアウトを発生させないためには、鋳型と凝固シェル間との摩擦力の低減、及び凝固シェルの強化による健全性の向上が必要である。そのため、従来、鋳型−凝固シェル間の潤滑性向上のため、モールドフラックスの鋳型−凝固シェル間への均一流入且つ流入量増加が図られている。こうすることによりオシレーションマークの深さも浅くなり、鋳片表面品質が向上することが過去の経験から判明している。
「そこで、PS期に、鋳型内溶鋼メニスカス(鋳型内壁に接する又は近接する溶鋼上面)近傍部分に対して、鋳型外部のメニスカス側面方向位置から高周波電磁場を印加して、凝固シェル上端部を鋳型内壁から離れる方向に湾曲させ、鋳型−凝固シェル間隙へのモールドフラックス流入量を増加させる方法が有効である。ここで、凝固シェル上端部を湾曲させる力は、図8に示すローレンツ力の作用によるものである。即ち、図8において、電磁コイル3に高周波電流を流すことにより、鋳型(図示せず)内溶融金属7のメニスカス近傍部分に高周波電磁場を印加すると、そこに誘導電流10が発生し、この誘導電流と印加された磁場との相互作用により、電磁コイルと反発する方向にローレンツ力11が発生する現象を利用するものである。」
一方、図7に図示した鋳型振動サイクルにおいて、NS期には凝固シェルに圧縮応力が作用する。鋳型振動サイクル中のNS期が占める時間比率、NSR(t/(t+t))を一定値以上に確保しないとブレークアウトが発生する(「鉄と鋼」vol.60(1974)No.7,p763)。実操業経験によれば、NSRが30%以下であると、鋳片にかかる圧縮力不足に起因するブレークアウトが発生する。従って、NS期には凝固シェルに圧縮力を与えることが高速鋳造を行なう際には有効である。
【0004】
以上より、高速鋳造を実施し、且つ鋳片の表面品質の向上を実現するために、1個以上の電磁コイルを設置し、当該コイルより電磁場を鋳型内溶鋼メニスカスに印加することにより、鋳型−凝固シェル間の摩擦力を低減させると共に、凝固シェルを強化してその健全性を確保するために、電磁力を利用した溶融金属の連続鋳造方法が提案されている。
【0005】
単体の電磁コイルによって電磁場を連続鋳造の鋳型内鋳片に印加する方法が、従来から研究されている。例えば、特開平8−33959号公報に示されているように、連続鋳造用鋳型の外部に電磁コイルを配置し、鋳型内溶融金属のメニスカス部に電磁場を印加する方法(以下、先行技術1という)が一般的である。
【0006】
また、種々の電磁効果を利用するため、複数の電磁コイルを配置する場合もある。例えば、特願平7−15590号公報では、鋳型−凝固シェル間の摩擦力低減及び凝固シェルの強化を行なうために、メニスカスの上方及び側面の2段に電磁コイルを配置して連続鋳造する方法(以下、先行技術2という)が述べられている。この方法は2つの電磁コイルを用いて、それぞれが誘導電流によるジュール熱を付与し、メニスカス部を加熱することにより、凝固遅れを発生させ、オシレーションマークの爪深さを浅くすることと、ローレンツ力にり凝固シェルを内側へ湾曲させ、鋳型と凝固シェル間のモールドフラックス流入間隙を拡げ、フラックス消費量を向上させることとの2つの異なる改善効果を同時に得ようとするものである。
【0007】
このような電磁場を利用した連続鋳造法において、0.5〜25kHzの高周波電磁場を用いる場合、周波数に依存して定まる表皮効果により、磁場が溶鋼のメニスカス部又は鋳型接触面近傍部分に集中し、磁場分布に合わせてメニスカス形状を保持し、所謂、鋳型−溶鋼間の軟接触化により鋳型−溶鋼間隙へのモールドフラックスの流入量増加による潤滑性向上や、凝固シェル上端部への圧縮力付与による凝固シェル強化を図り、ブレークアウトを抑制することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した先行技術1及び2に開示された技術により、メニスカス部分にその側面あるいは上方から高周波電磁場を印加した場合、磁場強度のいかんによっては、鋳型振動に伴って形成されるオシレーションマーク、あるいはメニスカスの乱れに伴なって形成される湯しわ等の鋳片の表面欠陥が発生する。更に、鋳型振動に同期したメニスカスの乱れを増長させる場合もあり、表面品質が改善されず、むしろ悪化する場合もある。
【0009】
また、鋳型の外周に電磁コイルを設置し、鋳型内のメニスカス部の側面部へ電磁力を印加する方法を採用する場合には、電磁場が鋳型内部に効率よく浸透できるようにするため、当該印加部の鋳型構造を、スリットを設ける等の変更をしなけばならない。更に、必要とされる磁場強度によっては、高周波電源容量が莫大なものとなり、その結果として、高額の電源設備が必要となり、鋳片表面品質の改善等によるコスト低減メリットを小さくする。
【0010】
これに対して、メニスカスの上方からの電磁コイルによる磁場印加方法であれば、設備的な制約が少なく、しかも電磁場が直接、鋳型内のメニスカス部に作用し、小さな磁場強度でも、大きな誘導電流が発生する。従って、メニスカスの上方から磁場を印加すれば、顕著な効果が得られる。
【0011】
この発明は、溶融金属の連続鋳造において、鋳型内の溶鋼メニスカス部分に高周波電磁場を印加して、鋳型−凝固シェル間の摩擦力を低減し、鋳片の表面欠陥を抑制しようとする際に生じる、上述した表面品質上の問題、設備制約によるコスト上の問題、また電磁場印加効率上の問題等を解決するためになされたものである。そして、電磁コイルによる磁場印加方法、磁場印加時期、及び印加すべき磁場強度の範囲を適切に限定することにより、高速鋳造ができ、しかも表面品質に優れた鋳片を安定して製造することができる、電磁力を応用した溶融金属の連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した観点から、溶融金属の連続鋳造方法において、鋳造速度を従来よりも更に上げ、しかも鋳片表面品質を向上させるために電磁力を応用する技術を開発すべく鋭意研究を重ねた。
【0013】
その結果、凝固させた鋳片を下方に引き抜く溶融金属の連続鋳造において、鋳型内部の溶融金属に対して高周波電磁力を作用させる際に、表皮効果により高周波電磁場の鋳型内部への浸透妨害が起こらないないような適切な位置に電磁コイルを設置し、このように設置された電磁コイルから、鋳型内部の溶融金属メニスカス部に高周波電磁場を印加しつつ、その溶融金属を凝固させ、しかもこのとき、溶融金属メニスカス部に作用させる磁場強度を適切な範囲内に設定することにより上記問題が解決され、この発明の目的が達成されることを見出した。このように、この発明の最大の特徴は、溶融金属メニスカス部に高周波電磁場を簡易な設備で且つ効果的に印加するための電磁コイルの設置位置、及びメニスカス部に印加すべき磁場強度の適正値を新しく見出したことに基づき完成されたものであることにある。
【0014】
以下、その詳細を述べる。
溶融金属の連続鋳造中に、鋳型内壁のメニスカス部にメニスカス上方から高周波電磁場を印加し、その磁場の印加方法(印加時期、印加周波数)及び磁場強度と、得られた鋳片の表面性状との関係を試験により求めた。
【0015】
試験は、溶鋼の連続鋳造実機を用い、鋳造条件を一定にして行なった。
図1に、試験に用いた装置の概略縦断面図を示す。同図において4は電磁コイル、5は鋳型、7は溶鋼、そして8は凝固シェルである。このように、電磁コイル4は、鋳型5内の溶鋼7メニスカスを直接、効果的に磁場印加できるように、鋳型5の上方に設置した。
【0016】
図1に示したように、タンディッシュ1内の溶鋼7を、浸漬ノズル2を通して鋳型5内に注入した。鋳造溶鋼の鋼種はC濃度が0.2wt.%の中炭素鋼であり、鋳型は内径100mmφ、外径150mmφ、長さ800mmの断面円形鋳型である。鋳型の振動条件は振幅を±5mm、振動数を120cpmに設定し、タンディッシュ内溶鋼過熱温度を20〜35℃に調節し、そして鋳造速度2.0m/minで鋳片を引き抜いた。また、ネガティブストリップ比率(NSR)は32%とした。
【0017】
溶鋼の鋳造中、鋳型の上方に設けられた電磁コイル4により、鋳型内部の溶鋼に高周波電磁場を印加した。印加条件は次の通りである。図9は、高周波電磁場印加の時期的方法を類別して説明するものであり、連続的印加(a)、鋳型振動のPS期のみの間欠印加(b)、及びNS期のみの間欠印加(c)をしたときの高周波電流パターンを示す。
【0018】
磁場印加の時期的方法は、連続的(図9(a)参照)、鋳型振動のPS期のみの間欠印加(図9の(b)参照)、及びNS期のみの間欠印加(図9の(c)参照)の3通りであり、これらの各時期について1kHz、3kHz、10kHz及び20kHzの4通りの周波数を印加した。なお、上記PS期はモールドフラックスの鋳型−凝固シェル間への流入時期に相当し、またNS期には凝固シェルに圧縮応力が作用している。
【0019】
表1に、上記試験条件及びこの試験で採用した溶鋼の電気伝導度σ、透磁率μ、及び各周波数に対する溶鋼中の表皮深さを示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003557886
【0021】
上記試験で鋳造された鋳片の表面粗さをレーザー距離計で測定し、鋳片表面に形成された所謂オシレーションマークの深さ(以下、OSM深さという)を算出した。一方、OSM深さは鋳片表面欠陥との間に相関がある。そこで、OSM深さをOSM深さ指数で表示し、鋳片表面欠陥の程度をOSM深さ指数で評価した。
【0022】
一方、鋳造中に印加した磁場特性のうち磁場強度の評価としては、鋳型内壁と溶鋼メニスカスとが接する位置における鉛直方向の磁束密度Bを測定し、この測定値により行なった。測定には市販の磁束測定器を用いた。但し、ここで鉛直方向の磁束密度Bは、鋳型に溶鋼が存在しない空芯時の磁束密度とした。空芯時とした理由は、溶融金属中の磁束密度を測定することは難しいからである。溶融金属中磁束密度の間接的測定方法として、メニスカスと鋳型との接点におけるメニスカス盛上がり高さを測定し、この測定値より換算する方法があるが、溶鋼では測定上の困難が多い。よって、空芯時の磁束密度で鋳造中の磁束密度を代用した。
【0023】
こうして得られた鋳型内壁のメニスカス相当位置における鉛直方向の磁束密度Bと、鋳片のOSM深さ指数との関係を整理した。
図2〜5に、溶鋼の連続鋳造中に各種周波数の高周波電磁場を印加した場合の、メニスカス相当位置における鉛直方向の磁束密度と鋳片のOSM深さ指数との関係を示す。図2は、周波数1kHzの高周波電磁場を印加した場合、図3は、周波数3kHzの高周波電磁場を印加した場合、図4は、周波数10kHzの高周波電磁場を印加した場合、そして図5は、周波数20kHzの高周波電磁場を印加した場合である。いずれの図においても、磁場の印加時期として、連続的に印加したとき(●印プロット)、鋳型振動周期のPS期のみに印加したとき(□印プロット)、及び鋳型振動周期のNS期のみに印加したとき(○印プロット)の3種の試験データをプロットした。
【0024】
ここで、OSM深さ指数が0.6以下の鋳片は、表面品質上問題がなく、当該鋳片を無手入れで次工程に供給し得る無手入れ化操業ができることが経験的に明らかになっている。そこで、OSM深さ指数が0.6以下を合格とする。
【0025】
図2〜図5より、下記事項がわかる。
▲1▼メニスカス相当位置における鉛直方向の磁束密度Bと、鋳片のOSM深さ指数との間には密接な関係があり、磁束密度Bを適切な範囲内に選べば、OSM深さ指数が0.6以下の合格となる。またOSM深さ指数が最小になるような磁束密度Bの最適値が存在する。そして、上記磁束密度Bの適切な範囲及び最適値は、印加した磁場周波数によって変化し、磁場周波数が大きくなるほどそれらの値は小さくなる傾向がある。更に、印加した磁場周波数が同じであれば、上記磁束密度BとOSM深さ指数との関係は、磁場の印加時期の違いに関わらず殆んど同じである。
【0026】
▲2▼上記いずれの磁場周波数の場合においても、特に、磁束密度Bが大きくなり過ぎると、メニスカス近傍の鋳型壁近くでの大きな溶鋼流動に伴ってメタルと鋳型との間欠的な接触・非接触が発生し、鋳片表面に断続的に深いOSMが形成されることが判った。従って、印加する磁束密度Bが大きくなり過ぎないように、特に注意しなければならない。
【0027】
本発明者等は、上記試験結果の解析に当たり、下記点に着眼した。
上述した▲1▼の試験結果のように、鋳片のOSM深さ指数の大小は、印加した磁束密度Bと、印加磁場の周波数とによって支配されている。一方、本試験で印加した磁場は高周波であり、印加磁場の周波数に応じて溶鋼中の表皮深さδが定まること、そして本試験ではその周波数を4水準に変化させて鋳造試験を行なっているので、各周波数に応じた表皮深さδで鋳造されたことになる。このように表皮深さδが異なればメニスカス近傍に集中する磁場の作用効果が異なる。そこで、上述した試験データーを用い、表皮深さδをパラメーターとして、OSM深さ指数が合格(0.6以下)となる磁束密度Bの範囲を求めた。ここで、OSM深さ指数が合格であることは、鋳片無手入れ化操業が可能な良好な表面性状の鋳片が得られることを意味する。また、表皮深さδ(mm)は、下記(2)式:
δ=1000×{2/(ω×σ×μ)}1/2 −−−−−−−−−−−−−−−−(2)
ただし、ω:磁場の角周波数(Hz)で、
ω=2πf(但し、f:磁場の周波数(1/s))
σ:溶鋼の透磁率(H/m)
μ:溶鋼の電気伝導率(1/Ωm)
を用いて算出した。
【0028】
上記解析方法により、図2〜5の試験結果を整理した結果を、図6に示す。
図6において、●プロットは、鋳片のOSM深さ指数が0.6以下で合格、即ち、鋳片の表面性状良好(OK)を表わし、そして×プロットは、鋳片の表面性状不良(NG)を表わす。鋳片表面性状が良好である表皮深さδ−磁束密度B領域には斜線を施し、その良好・不良の境界線を記入し、各境界線の方程式を併記した。
【0029】
図6から下記事項が明らかである。即ち、鋳造中の磁場の印加が連続的の場合、PS期のみの間欠印加の場合、あるいはNS期のみの間欠印加の場合のいずれであっても、鋳片表面性状を良好にするために鋳型内壁のメニスカス部に印加すべき鉛直方向磁束密度B(Tesla )は、上記(2)式で算出される表皮深さδ(mm)との間に下記(1)式:
Figure 0003557886
を満たす範囲内に調節する必要がある。
【0030】
このように、適切な磁場印加方法により、鋳型内部の溶鋼メニスカス部に印加する磁場強度を適切な範囲内に制御することにより、この発明の課題である鋳型振動に伴って形成されるオシレーションマーク(OSM)、及び鋳型内溶鋼メニスカスの乱れに伴う湯しわ等の鋳片表面欠陥の発生を抑制することができる。
【0031】
この発明は、上述した知見に基づきなされたものであって、請求項1記載の発明は下記構成を有するものである。
鋳型は水冷機構を有する連続鋳造用の振動鋳型を用い、その鋳型内部の溶融金属のメニスカス上方に電磁コイルを設置し、こうして設置された電磁コイルにより、上記鋳型内部の溶融金属のメニスカス部分に対して当該メニスカス部分の上方から高周波電磁場を印加する。この印加は、溶融金属を鋳型に注入し連続鋳造中、連続的に行なっても、あるいはまた間欠的に行ってもよい。このように高周波電磁場を印加しつつ溶融金属を凝固させる。そして、凝固した鋳片を下方に引き抜く。上記溶融金属の連続鋳造方法において、鋳型内壁の溶融金属のメニスカスに相当する位置における空芯時の鉛直方向の磁束密度B(Tesla )が、下記(1)式の範囲内に入る条件下で、高周波電磁場を印加することに特徴を有するものである。
ここで、(1)式は、
Figure 0003557886
ただし、δ:表皮深さ(mm)
ω:磁場の角周波数(Hz)
σ:溶鋼の透磁率(H/m)
μ:溶鋼の電気伝導率(1/Ωm)
で算出された値である。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、この発明を、図1に示した試験装置を参照しながら説明する。
タンディッシュ1内の溶融金属7を、浸漬ノズル2を通して鋳型5内に注入する。鋳型5内部の溶鋼メニスカスの上方に電磁コイル4を設置し、高周波電磁場を鋳型内部に印加する。その際に、鋳型には鉛直方向にスリット6を設けてもよい。スリットは鋳型5の全体(全高)にわたって設けても問題はないが、鋳型の剛性及び冷却能の観点から鋳型の上部のみとし、下部は一体化している方が望ましい。鋳型は壁内部を二重構造等にして冷却水等で冷却し、溶融金属の凝固が鋳型内面より進行して薄い凝固シェル8を形成させる。
【0033】
凝固した鋳片を下方に引き抜き、鋳片を連続的に鋳造する。凝固収縮や凝固シェルの変形をもたらす目的で、鋳型にテーパーを設けると一層安定した鋳造が可能となる。
【0034】
このような電磁鋳造装置にて鋳型の外側に1基又は複数基の電磁コイルを配置し、高周波電磁場を印加する。得ようとする磁場分布によっては図1に示したように、鋳型の外周部に更に電磁コイル3を配置してもよい。また、連続鋳造鋳型の断面形状は、円、角あるいは長方形等、多種のものを用いることができ、鋳型の中心軸と電磁コイルの中心軸とを平行又は一致させるのが望ましいが、偏心させても問題はない。電磁コイルのターン数はコイルを流れるコイル電流値、及び鋳型内部での磁場強度により決定すべきであり、限定する必要はない。また、設置された複数の電磁コイル間には、電磁シールドを設けても問題ない。
【0035】
上記構成により溶融金属を連続鋳造する。鋳造中に、0.5〜25kHzの高周波電磁場を電磁コイルにより印加する。磁場印加は、連続的あるいは間欠的のいずれでもよいが、複数の電磁コイルを同時に使用する場合、双方の交互間欠の印加を行なう方が望ましい。また、それぞれの高周波電磁場発生装置には、印加時間設定を変更可能なシステムを持っていることが望ましい。そして、最も特徴的で必須要件は、印加条件として、鋳型内壁の溶融金属のメニスカス相当位置での、空芯時の鉛直方向の磁束密度B(Tesla )が、前記(1)式の範囲内に入るように調節することである。
【0036】
鋳造条件については特に制約はないが、鋳型振動周期のPS期にのみ印加する間欠的印加の場合は、印加側の制御システムに応じた振動条件を選択することが望ましく、振動鋳型のサイクルとしては、20〜200cpm程度が適当である。
【0037】
【実施例】
次に、この発明を、実施例によって更に詳細に説明する。
図1に示した本発明を実施するための電磁鋳造装置で、円筒状の水冷式振動鋳型を用いて、溶鋼の鋳造実験を行なった。実験は、鋳造条件を一定にして行なった。鋳造溶鋼の鋼種はC濃度が0.2wt.%の中炭素鋼であり、鋳型は内径100mmφ、外径150mmφ、長さ800mmである。鋳型の振動条件は振幅を±5mm、振動数を150cpmに設定し、タンディッシュ内溶鋼過熱温度を20〜35℃に調節し、そして鋳造速度2.2m/minで鋳片を引き抜いた。
【0038】
電磁コイルは、鋳型の直上に設置し、鋳型内部の溶鋼メニスカス部に対する印加磁場が鋳型壁で極力遮蔽されないように位置を決めた。電磁コイルは、高さ20mm、内径80mm、外径150mmで、1ターンのものを使用した。鋳型及び電磁コイル共、銅製のものを使用した。電磁場の発振周波数は、1kHz、3kHz、10kHz、及び20kHzの4種類を用いた。各発振周波数に対応する表皮深さδは、前記(2)式を用いて、18.7mm、10.8mm、5.9mm、及び4.5mmと算出される。電磁コイルに流す電流値を変化させて、鋳型内への磁場強度を各種値に変化させた。
【0039】
表2に、実験条件を示す。一方、予め、磁場印加条件毎に、空芯時の鋳型内壁部での磁束密度測定を行なった。
鋳造後の鋳片について、OSM深さの測定を表面粗さ計を用いて行ない、OSM深さ指数を算出し、鋳片表面性状の合否判定をした。合否の判定基準は、前記試験の場合と同様、OSM深さ指数が0.6以下を合格とした。
【0040】
表3〜6に、磁場印加条件(印加磁場周波数、磁場印加時期)、測定した磁束密度、及び適正な磁束密度範囲を与える条件式(1)からの算出値と、これに対するOSM深さ指数、及びOSM深さ指数の合否判定結果を示す。
【0041】
上記結果より、高周波電磁場の印加方法が連続的、あるいはPS期のみ、あるいはNS期のみの間欠的のいずれの場合でも、本発明の範囲内の条件による、実施例1〜31においては、すべて、OSM深さ指数は合格である。即ち、磁場印加条件が(1)式を満たした適正な場合には、鋳片の表面性状が良好である。これに対して、本発明の範囲外の条件による、比較例1〜33においては、すべて、OSM深さ指数は不合格である。即ち、磁場印加条件が(1)式を満たさない不適正な場合には、鋳片の表面性状が不良であることがわかる。
【0042】
なお、上記実施例は、円筒状鋳型を用いた場合であるが、スラブやブルームのような角形状の鋳型を用いた場合についても、上記実験と同様の方法を適用すれば、良好な表面性状の鋳片を製造することができる。
【0043】
【表2】
Figure 0003557886
【0044】
【表3】
Figure 0003557886
【0045】
【表4】
Figure 0003557886
【0046】
【表5】
Figure 0003557886
【0047】
【表6】
Figure 0003557886
【0048】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、表面品質の優れた鋳片を高速鋳造で安定して製造することができる。このような、電磁力を応用した溶融金属の連続鋳造方法を提供することができ、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するために使用する連続鋳造装置の要部を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明の実施例で、1kHzの高周波電磁場を連続的又は間欠的に印加した場合のOSM深さ指数が合格となるための磁束密度適正範囲を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例で、3kHzの高周波電磁場を連続的又は間欠的に印加した場合のOSM深さ指数が合格となるための磁束密度適正範囲を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例で、10kHzの高周波電磁場を連続的又は間欠的に印加した場合のOSM深さ指数が合格となるための磁束密度適正範囲を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例で、20kHzの高周波電磁場を連続的又は間欠的に印加した場合のOSM深さ指数が合格となるための磁束密度適正範囲を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例で、各種周波数の高周波電磁場を連続的又は間欠的に印加した場合に、鋳片表面性状が良好となる表皮深さと磁束密度との関係領域を示すグラフである。
【図7】通常の連続鋳造における鋳型の振動速度と引抜き速度との関係を示す図である。
【図8】溶融金属と印加した高周波電流との間に生ずる電磁力を説明する図である。
【図9】鋳型振動と電磁コイルへの電流印加タイミングとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 電磁コイル
4 電磁コイル
5 鋳型
6 モールドフラックス
7 溶融金属(溶鋼)
8 凝固シェル
9 高周波電流
10 誘導電流
11 ローレンツ力

Claims (1)

  1. 水冷機構を有する連続鋳造用振動鋳型を用い、前記鋳型内部の溶融金属のメニスカス上方に電磁コイルを設置し、こうして設置された前記電磁コイルにより、前記溶融金属のメニスカス部分に対して当該メニスカス部分の上方から高周波電磁場を印加しつつ前記溶融金属を凝固させ、こうして凝固した鋳片を下方に引き抜く溶融金属の連続鋳造方法において、
    前記鋳型内壁の前記メニスカス相当位置における空芯時の鉛直方向の磁束密度B(Tesla )が、下記(1)式の範囲内に入る条件下で、前記高周波電磁場を印加することを特徴とする、電磁力を応用した溶融金属の連続鋳造方法。
    Figure 0003557886
    ここで、(1)式のδは、
    δ=1000×{2/(ω×σ×μ)}1/2
    ただし、δ:溶融金属の表皮深さ(mm)
    ω:磁場の角周波数(Hz)
    σ:溶鋼の透磁率(H/m)
    μ:溶鋼の電気伝導率(1/Ωm)
    である。
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