JP3557150B2 - メッキ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はメッキ装置に関し、半田付け特性の良好な金属材料のメッキ膜を単層でまたは少なくとも2層で形成するメッキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
Cu単体、Cu合金またはFe―Ni合金のような導電部材の表面を、Sn単体またはSn合金のメッキ層で被覆したリード材は、Cu単体またはCu合金が備えている優れた導電性と機械的強度を有する。なおかつ、そのリード材は、Sn単体またはSn合金が備えている耐食性と良好な半田付け性をも併有する高性能導体である。そのため、それらは、各種の端子、コネクタ、リードのような電気・電子機器分野や電力ケーブルの分野などで多用されている。
【0003】
また、半導体チップを回路基板に搭載する場合には、半導体チップのアウターリード部にSn合金を用いた溶融メッキや電気メッキを行うことにより、当該アウターリード部の半田付け性を向上せしめることが行われている。このようなSn合金の代表例は半田(Sn―Pb合金)であり半田付け性、耐食性などが良好なために、コネクタやリードフレームなどの電気・電子工業用部品の工業用メッキとして広く利用されている。
【0004】
図7は、図6に示した半導体リードフレームの基本構成をB−B方向からみた断面図である。例えば、導電部材21はCu、Cuを主成分としたCu系合金またはFe―Niを主成分としたFe―Ni系合金で構成されている。そして、それらの導電部材21の表面には、異なる金属材料の2層のメッキ膜が施されている。例えば、Snの第1メッキ膜22とSn―Biの第2メッキ膜23がこの順序で形成されている。ここで、第1メッキ膜22の厚さをt1、第2メッキ膜3の厚さをt2としたとき、t1は約3〜15μm、t2は約1〜5μm、t2/t1は約0.1〜0.5に設定すると、コストの面でも、半田付け性、耐熱性の点でも、また半田の接合強度やアルミ線などとの溶接部の溶接強度の点でも良好な特性があり、リード材としての性能向上が得られるので好適であることが知られている。
【0005】
図8は、自動メッキ装置全体のレイアウトである。まず、アルカリ電解洗浄浴槽31において、導電部材21の表面における半田メッキ皮膜の密着性や半田付け性を阻害する油脂等の有機性の汚染物質を除去する。次に、水洗用浴槽32において洗浄された後、化学エッチング浴槽33において、化学エッチング処理(基本的には酸化―還元反応を利用した処理)を行い、粒界や介在物などの存在により不均一な表面になっている導電部材21の表面を均一化する。
【0006】
次に、水洗用浴槽34において洗浄された後、酸活性化浴槽35において、水洗用浴槽34で付着した酸化膜を除去する。次に、水洗用浴槽36において洗浄された後、半田メッキ装置37においてメッキが施される。半田メッキ液は強酸性のため、メッキ後の表面は酸性になっている。そのような表面では時間の経過とともに皮膜が変色し、半田付け性が劣化する。そのために、水洗用浴槽38、中和処理浴槽39において、メッキ表面に残留する酸を中和し、吸着している有機物を除去する。その後、水洗用浴槽40、湯洗用浴槽41で洗浄され、乾燥装置42において、メッキされた導電部材21を乾燥させる。
【0007】
図9は、全体のメッキ装置における化学エッチング浴槽33のC−C方向における断面図である。
【0008】
この化学エッチング浴槽33における働きは上記した通りである。ここでは、このメッキ装置における仕組みについて説明する。このメッキ装置では、横送り式プッシャー331と搬送レール332は、一体に上下方向に可動できるようになっている。そして、それらの可動範囲の上限位置および下限位置が決められており、その間を繰り返し動いている。吊り下げ用フック333は、作業目的に応じて適した間隔に搬送レール332に掛けられる。通常は、隣り合った浴槽のセンター間の距離である。そして、メッキされる導電部材21を吊っているメッキ補助ラック334は、この吊り下げ用フック333に掛けられ、このメッキ装置にセットされる。次に、横送り式プッシャー331について述べる。横送り式プッシャー331間の距離は、基本的には、隣り合った浴槽のセンター間の距離とほぼ等しい。そして、この横送り式プッシャー331は、1本もののアームに設置されており、作業方向へ吊り下げ用フック333を1スパン送ると、その分戻るようになっている。そして、この横送り式プッシャー331は、上限位置で1スパン送り、下限位置でその分戻るようになっている。また、搬送レール332は、上下方向には動くが進行方向には動かない。この作業の繰り返しにより、このメッキ装置は機能している。
【0009】
上記したこのメッキ装置では、メッキ前処理ラインを1本および半田メッキラインを1本有していた。例えば、導電部材21がCuから形成される場合、化学エッチング浴槽33および酸活性化浴槽35の中は、Cu用の処理液で満たされていた。そのため、Cu以外の材質からなる導電部材21にメッキ前処理を行う場合、1度メッキ装置を停止させそれぞれの浴槽内の処理液を入れ替えてから次の導電部材21にメッキ前処理を行なっていた。こういったことは半田メッキラインでも同様なことが言え、作業目的に応じて、1度メッキ装置を停止しメッキ浴槽内のメッキ液を入れ替えていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
まず、上記したようにこのメッキ装置では、メッキ前処理ラインを1本および半田メッキラインを1本有していた。そのため、同一材質の導電部材21に連続してメッキ前処理を行う場合には問題はなかった。しかし、複数の異なる材質の導電部材21がある場合、それぞれに合った処理液を選択し1本のメッキ前処理ラインで対応していた。この結果、複数の異なる材質の導電部材21に連続してメッキ前処理を行うことができなかった。つまり、ある1つの導電部材21の次に、他の材質の異なる導電部材21のメッキ前処理を行う場合、それぞれの浴槽内の処理液を入れ換えなければならず、余分な時間と手間を多大に費やすという問題があった。
【0011】
更に、半田メッキラインでも上記したようなことが起こっていた。それは、導電部材21に複数の組み合わせのメッキ膜を形成する場合に生じた。言い換えると、このメッキ装置では、準備されたメッキ液にメッキ可能な導電部材21を順次浸漬して、同じメッキ膜の組み合わせのメッキ膜を連続して形成することはできた。しかし、メッキされる導電部材21の使用用途に応じて、導電部材21に複数の組み合わせのメッキ膜を連続して形成することができなかった。つまり、半田メッキラインについてもメッキ前処理ラインと同様に、メッキ液の入れ替えに余分な時間と手間を費やすという問題があった。
【0012】
更に上記したことに加えて、半田メッキラインを管理することに関しても、多大な労力を費やしていた。例えば、1つのメッキ浴槽であるメッキ液を使用した後に、メッキ液構成の異なる他のメッキ液を使用する場合がある。このとき、確実に前者のメッキ液を除去しないと後者のメッキ液の液構成が換わってしまう。また、使用するメッキ液構成が異なれば、そのメッキ浴槽で使用されるアノードも異なり交換しなければならない。つまり、メッキ液管理またはメッキ浴槽管理などメンテナンス面に関しても多大な労力を費やすという問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、メッキ前処理ラインにはスライド機構を設け、また、半田メッキラインには飛び越し機構を設けた。そのことにより、1本の搬送レールで材質の異なる導電部材21に連続してメッキ前処理を行うことができ、かつ、1本の搬送レールで導電部材21に連続して複数の組み合わせのメッキ膜を形成することができることに特徴を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明であるメッキ装置を実施するための、2種類のメッキ前処理ラインを持つ機構のレイアウトを示したものであり、図8に示した全体のメッキ装置の33から36に該当する。例えば、一方のメッキ前処理ラインがCuの導電部材21用であり、他のメッキ前処理ラインがFe―Niの導電部材21用である。
【0015】
図1において、メッキ前処理ラインの前に自動識別装置1があり、メッキ前処理ラインの中に、化学エッチング浴槽3、103、水洗用浴槽4、5、7、8、104、105、107、108および酸活性化浴槽6、106がある。それぞれの働きについては、図8で説明したときと同様である。また、水洗用浴槽2、7、102、107には、オーバーフロー浴槽2、9、102、109が設置されており、それらにより、水洗用浴槽2、7、102、107内の不溶性不純物などを取り込み、ろ過を行い、また水洗用浴槽2、7、102、107内へと送り込む。そして、図2は自動識別装置1を簡単に表した図である。この自動識別装置1では、搬送レール12に吊り下げ用フック11を掛ける際に、導電部材21の材質によりスイッチ切替用レバー13をセットする位置を決める。そして、自動識別装置1は、このスイッチ切替用レバー13が押したスイッチにより導電部材の材質を識別する。
【0016】
本発明では、メッキ前処理ラインにおいて、導電部材21(図7参照)にメッキ前処理を行うメッキ前処理ラインをスライドさせることに特徴を有する。
【0017】
具体的に言うと、材質の異なる導電部材21が少なくとも2種類用意され、1本の搬送レールで、これらの導電部材21に連続してメッキ前処理が行うことができる。上記したように、導電部材21は化学エッチング浴槽3で処理される前に、アルカリ電解洗浄浴槽31(図8参照)で油脂等の有機性の汚染物質を除去される。このとき、アルカリ電解洗浄浴槽31は導電部材21の材質が何であれ同一の浴槽で処理を行う。そして、このアルカリ電解洗浄浴槽31上に自動識別装置1は設置されており、この段階で、このメッキ装置は、導電部材21がどんな材質であるかを自動識別装置1で識別する。その結果、アルカリ電解洗浄された導電部材21が次の水洗用浴槽32で水洗されている間に、まず化学エッチング浴槽3がスライドし、その導電部材21用の処理液で満たされた浴槽へと選択される。そして、それに対応した水洗用浴槽4、5、酸活性化浴槽6および水洗用浴槽7、8が順次スライドし対応していく。これらの浴槽は、電子制御されているため自動的に切り換わる。
【0018】
ここで、図1に示したこのメッキ前処理ラインは、異なる材質の2種類の導電部材21にメッキ前処理を行うための装置である。例えば、Cu材とFe―Ni材から成る2種類の導電部材21がある。そして、最初にCu材の導電部材21に続けてメッキ前処理を行い、次にFe―Ni材の導電部材21に続けてメッキ前処理を行う場合やCu材の導電部材21とFe―Ni材の導電部材21とにメッキ前処理を交互に行う場合などが考えられる。上記したように、導電部材21がどのような順序で搬送レールに設置されたとしても、アルカリ電解洗浄浴槽31の段階でそれら導電部材21の材質を自動識別装置1で識別し、それら導電部材21に適した処理液で満たされた浴槽を搬送レールの下に選択する。その結果、1本の搬送レールでCu材の導電部材21およびFe―Ni材の導電部材21に連続してメッキ前処理を行える。
【0019】
よって、本発明では、複数の異なる材質の導電部材21に適するそれぞれのメッキ前処理液を用意し、それに対応する複数のメッキ前処理ラインをあらかじめ準備する。そして、それらのメッキ前処理ラインを導電部材21の材質により使い分ける。その結果、1本の搬送レールで連続して複数の異なる材質の導電部材21を処理できるようになる。
【0020】
つまり、複数の異なる材質の導電部材21に連続してメッキ前処理行うことにより、メッキ装置を停止することがなくなり作業時間を大幅に短縮させることができる。かつ、導電部材21の材質に応じて浴槽内の処理液を入れ替えることを省略することができ余分な手間を大幅に省くことができる。
【0021】
次に、図3は、本発明であるメッキ装置を実施するための飛び越し式プッシャー371、ピッチの短い横送り式プッシャー372および不可動式搬送レール374を有し、例えばメッキ液構成の異なる2つのメッキ浴槽を有する半田メッキラインのレイアウトである。また、図8に示した全体のメッキ装置の半田メッキ装置37に該当する。
【0022】
図3において、このメッキ装置はプレディップ浴槽375、第1メッキ浴槽376、第2メッキ浴槽377、水洗用浴槽378がある。そして、それらの浴槽の上方に飛び越し式プッシャー371、横送り式プッシャー372、可動式搬送レール373、不可動式搬送レール374などが設置されている。また、図4は、図3のA−A方向における断面図である。このメッキ装置では、半導体チップ(図6参照)はメッキ補助ラック380に設置され、これを可動式搬送レール373にセットされた吊り下げ用フック379に設置される。上記したように、メッキ前処理ラインでメッキ前処理を行われた後、この半田メッキラインへと運ばれ、半田メッキが行われる。
【0023】
本発明では、半田メッキラインにおいて、1本の搬送レールでメッキ可能な導電部材21に、連続して複数の組み合わせのメッキ膜を使用用途に応じて形成することができることに特徴を有する。
【0024】
具体的に言うと、この半田メッキラインの仕組みも上記した図9と同様である。可動式搬送レール373と横送り式プッシャー372が上下方向に共に可動する。そして、この可動式搬送レール373と横送り式プッシャー372が上限位置まで上昇する。そこで導電部材21がセットされた吊り下げ用フック380が横送り式プッシャー372により1スパン横送りされる。そして、次にこの可動式搬送レール373と横送り式プッシャー372が下限位置まで下降する。そこで導電部材21はメッキ液に浸漬しメッキ膜を形成する。この繰り返しにより導電部材21にメッキ膜を形成する。この作業過程において、このメッキ装置には従来通りの横送り式プッシャー372の他にメッキ浴槽の上方で、かつ、横送り式プッシャー372と上限位置で平行して並ぶように飛び越し式プッシャー371が設けられている。この飛び越し式プッシャー371により、上限位置で使用しないメッキ浴槽は飛ばし次のメッキ浴槽へ、または、つぎの過程へと導電部材21がセットされた吊り下げ用フックは運ばれる。この結果、導電部材21には連続して複数の組み合わせのメッキ膜を形成することができる。
【0025】
例えば、上記したように、図3および図4に示したメッキ装置がある。なお、このメッキ装置では、メッキ膜厚については、従来通り第1メッキ膜22の厚さをt1、第2メッキ膜3の厚さをt2としたとき、t1は約3〜15μm、t2は約1〜5μm、t2/t1は約0.1〜0.5となるようにメッキされる。また、リード材の構造も図7と同じであるので符号を共通とした。
【0026】
ここで、このメッキ装置を用いて導電部材21にメッキ膜を形成する場合、次のようなケースがある。第1メッキ膜22のみを形成するケース、または、第1メッキ膜22および第2メッキ膜23を形成するケースである。
【0027】
まず、導電部材21に第1メッキ膜22のみを形成するケースについて述べる。ここでは、第1メッキ浴槽376で第1メッキ膜22が形成された後、導電部材21は第2メッキ浴槽377を飛び越して水洗用浴槽378に浸漬する。図5は、飛び越し式プッシャー371を用いて第2メッキ浴槽377を飛び越す過程を示したレイアウトである。第1メッキ浴槽376で第1メッキ膜22が形成された導電部材21は、可動式搬送レール373と共に上限位置まで上昇する。そして、上限位置に設置されている飛び越し式プッシャー371が吊り下げ用フック379を押すことにより、導電部材21は第2メッキ浴槽377を通過する。ここでは、飛び越し式プッシャー371は、横送り式プッシャー372が1スパン動く間に2スパン動くように設計されている。次に、第2メッキ浴槽377を飛び越した導電部材21は、可動式搬送レール373と共に下限位置まで下降し水洗用浴槽378に浸漬する。この結果、導電部材21には単層メッキ膜が形成される。
【0028】
よって、本発明では、メッキ液組成の異なる複数のメッキ液に満たされたメッキ浴槽をあらかじめ用意する。そして、それらのメッキ浴槽を使用用途に応じて選択して用いることができる。その結果、1本の搬送レールで連続して、複数の組み合わせのメッキ膜を形成することができる。
【0029】
つまり、上記したメッキ前処理ラインと同様に、連続して1本の搬送レールで複数の組み合わせのメッキ膜を導電部材21に形成することができる。このことにより、メッキ膜の組み合わせに応じてメッキ装置を一時停止させ浴槽内のメッキ液を入れ換える必要がなくなる。この結果、作業時間を大幅に短縮させることができ、かつ、メッキ液を入れ換える手間を省くことができる。また、同一の浴槽でのメッキ液の入れ換えのとき、それぞれのメッキ液どうしが混入することがなくなりメッキ液の管理およびメッキ浴槽、メッキ用設備などのメンテナンスにおける労力も大幅に減らすことができる。
【0030】
次に、導電部材21に第1メッキ膜22および第2メッキ膜23を形成するケースについて述べる。本発明は、第1メッキ膜厚t1、第2メッキ膜厚t2が、t1>t2の関係にあるときにみられる。ここでの特徴は、図3に示しているように、第1メッキ浴槽376上に不可動式搬送レール374が下限位置に固定されていることである。また、第1メッキ浴槽376上の横送り式プッシャー372の1スパンの距離をL1、その他の部分における横送り式プッシャー372の1スパンの距離をL2としたとき、L1、L2はL1<L2の関係を満足する。そして、横送り式プッシャー372により上限位置でL2だけ吊り下げ用フック380を移動させ、下限位置でL1だけ吊り下げ用フック380を移動させる。しかし、このとき下限位置で移動する吊り下げ用フック380はメッキ膜を厚く形成するメッキ浴槽上の吊り下げ用フック380だけである。
【0031】
ここで、上記したことが図3の第1メッキ浴槽376上にみられる。プレディップ浴槽375で処理された導電部材21は、上限位置で通常ピッチL2の横送り式プッシャー372により第1メッキ浴槽376上に移動する。そして、可動式搬送レール373と共に下降し第1メッキ浴槽376内のメッキ液に浸漬する。このとき、下限位置で可動式搬送レール373と不可動式搬送レール374は一体となる。ここで、この導電部材21は短いピッチL1の横送り式プッシャー372により不可動式搬送レール374へと移動する。そして、不可動式搬送レール374は常に下限位置に固定されているため、この上にある導電部材21は上限位置にて移動しない。このことにより、この導電部材21は短いピッチL1の横送り式プッシャー372により第1メッキ液中を移動しながらメッキ膜を形成する。そして、第1メッキ膜22を形成した導電部材21は可動式搬送レール373と共に上限位置に上昇し、通常ピッチL2の横送り式プッシャー372にて第2メッキ浴槽379へと移動する。この結果、導電部材21に第1メッキ膜22を厚く形成することができる。
【0032】
よって、本発明では、メッキ膜を厚く形成するメッキ浴槽上において、横送り式プッシャー372間のスパンを通常より短くすることにより、および、搬送レールを下限位置で固定することにより導電部材21がメッキ液中を移動できるようになる。
【0033】
つまり、上記したように、導電部材21にメッキ膜を厚く形成するとき、1回ずつ上昇、下降することがなくその分の時間を省くことができ、短時間でそのメッキ液に適した条件でメッキ膜を形成することができる。また、同一のメッキ液内で連続してメッキ膜を形成できるので空気中で酸化することなく品質的にも良好なメッキ膜を形成することができる。
【0034】
他にも、1本の搬送レールで連続して複数の組み合わせのメッキ膜を形成できる。例えば、第1メッキ浴槽を飛び越し、第2および第3メッキ浴槽でメッキ膜を形成する方法や第1および第2メッキ浴槽を飛び越し第3メッキ浴槽のみで単層のメッキ膜を形成する方法などがある。
【0035】
いずれの場合にしても、上記したように、本発明である飛び越し式プッシャー371を用いることにより、1本の搬送レールで連続して複数の組み合わせのメッキ膜を形成することが可能である。そして、横送り式プッシャー372のピッチを調整することによりメッキ膜厚のコントロールも可能である。
【0036】
上記したように、半田メッキの場合を例として説明してきたが、このメッキ装置は半田メッキに限らず利用することができる。例えば、Snメッキ、Cuメッキ、Niメッキなどがある。これらの場合にも、このメッキ装置を用いて1本の搬送レールで連続して導電部材21に複数の組み合わせのメッキ膜を形成することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明のメッキ装置には以下のような効果が得られる。
【0038】
第1に、このメッキ装置は複数のメッキ前処理ラインを有することにより、複数の異なる材質の導電部材に1本の搬送レールで連続してメッキ前処理を行うことができる。そのため、導電部材の材質が換わるごとにメッキ前処理液を交換することがなくなり、メッキ装置を一時停止することがない。このことにより、複数の異なる材質の導電部材に1本の搬送レールで連続してメッキ前処理を行う過程で、作業時間を大幅に短縮することができ、また、メッキ前処理液を交換するという手間を省くことができる。
【0039】
第2に、このメッキ装置は半田メッキラインにて飛び越し機能を有することにより、1本の搬送レールで連続して単層のまたは複数の組み合わせのメッキ膜を形成することができる。そのため、メッキ前処理と同様に、導電部材に形成するメッキ膜が換わるごとにメッキ液を交換することがなくなり、メッキ装置を一時停止することがない。このことにより、1本の搬送レールで連続して導電部材に複数の組み合わせのメッキ膜を形成することができ、かつ、メッキ液を入れ換える手間を省くことができる。また、同一の浴槽でのメッキ液の入れ換えのとき、それぞれのメッキ液どうしが混入することがなくなりメッキ液の管理およびメッキ浴槽、メッキ用設備などのメンテナンスにおける労力も大幅に減らすことができる。
【0040】
第3に、このメッキ装置は、メッキ膜を厚く形成したいメッキ浴槽上の搬送レールと横送り式プッシャーに特徴を有する。言い換えると、この搬送レールを下限位置に固定しておくことであり、また、この横送り式プッシャー間のスパンを短くすることである。そのことにより、導電部材が一度メッキ液に浸漬したら、そのままメッキ液中を移動しメッキ膜を形成する。この結果、導電部材にそのメッキ液に適した条件で短時間でメッキを形成することができ、また、同一のメッキ液内で連続してメッキ膜を形成できるので酸化することもなく、品質的にも良好なメッキ膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のメッキ装置に用いるメッキ前処理ラインを説明する図である。
【図2】本発明のメッキ装置に用いる自動識別装置を説明する図である。
【図3】本発明のメッキ装置に用いる半田メッキラインを説明する図である。
【図4】本発明のメッキ装置に用いる図3の半田メッキラインをA−A方向からみた断面を説明する図である。
【図5】本発明のメッキ装置に用いる飛び越し機能を説明する図である。
【図6】本発明および従来のメッキを施す半導体を説明する図である。
【図7】本発明および従来の2層メッキを施した図6の半導体リードフレームのB−B方向からみた断面を説明する図である。
【図8】本発明および従来の自動メッキ装置全体のレイアウトを説明する図である。
【図9】本発明および従来の化学エッチング浴槽のC−C方向からみた断面を説明する図である。
Claims (7)
- メッキ前処理ラインとメッキラインとを有するメッキ装置において、
メッキを施す導電部材の材質に対応する複数の前記メッキ前処理ラインを備え、前記導電部材の材質により前記メッキ前処理ラインを切換えることを特徴とするメッキ装置。 - 前記メッキ前処理ラインを前記導電部材の材質によりスライドさせて切換えて、前記導電部材の前処理を行い、前記メッキラインでメッキを行うことを特徴とする請求項1に記載したメッキ装置。
- 前記メッキ前処理ラインの前に設置された自動識別装置で前記導電部材の材質を自動的に識別して、前記メッキ前処理ラインを切り換えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載したメッキ装置。
- 前記メッキラインは、飛び越し機能を有し、前記導電部材に複数のメッキパターンが施されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載したメッキ装置。
- 前記メッキラインにおいて、前記導電部材にメッキを施さないメッキ浴槽上のプッシャー上限位置に、飛び越し式プッシャーを設置することを特徴とする請求項4に記載したメッキ装置。
- 前記メッキラインにおいて、メッキ膜を厚く形成する浴槽上では下限位置に固定された搬送レールを有し、前記導電部材はこの前記搬送レールを用いてメッキ液中を移動しメッキが施されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載したメッキ装置。
- 前記メッキラインにおいて、前記メッキ浴槽上のプッシャー間の距離をL1、前記メッキ前処理ライン上でのプッシャー間の距離をL2としたとき、L1 、L2の関係は、L1 <L2を満足することを特徴とする請求項6に記載したメッキ装置。
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