JP3556613B2 - 掛布団 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
【0002】
この発明は、中綿が嵩高く形成されて軽量性、保温性に優れると共に、へたりを生じ難くて耐久性に優れ、体の動きに対する追従性や体へのフィット感にも優れた掛布団に関する。
【従来の技術】
【0003】
獣毛繊維を用いた掛布団としては、羊毛繊維を中綿素材に用いた羊毛布団が良く知られている。この羊毛布団は、保温性が良く、弾力性にも富む等の優れた特徴を有することから、高級布団として位置付けられているものであるが、このような羊毛布団の品質を保証するために、ザ ウールマーク カンパニー(THE WOOLMARK COMPANY PTY.LIMITED)は、「ウールマーク品質基準」(BED2、日本国内で販売される製品に適用される基準)を定め、毛繊維の種類は羊毛、モヘヤ、カシミヤ、ラクダ、アルパカ、ラマ、ビキュナ、アンゴラ、ヤク、グァナコ等の高級獣毛の新毛でノイルは除外すること、平均繊維直径が27μm以上であること、平均繊維長が60mm以上であること等を品質基準として規定し、このような基準を満たす製品にウールマークおよび「NEW WOOL 100%」の表示を付することを認可会社に認めている。このように羊毛布団の中綿素材となる羊毛繊維としては、平均繊維直径が27μm以上の太いもの、また平均繊維長が60mm以上の長いものが用いられていた。
【0004】
また、従来の羊毛掛布団においては、羊毛やカシミヤ山羊毛等をシート状に製綿し、これら製綿されたものを多数層重ね合わせて圧縮して形成した綿体(図5参照)を中綿として用いるものとし、これを表側地と裏側地の間の空間に重ね合わせて配置し、表裏側地をその周縁部で縫着せしめると共に所定間隔をあけてキルティングすることによって綿切れを防止するようにした構成が多く採用されていた。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の羊毛掛布団では次のような問題があった。即ち、羊毛やカシミヤ山羊毛等をシート状に製綿したものを多数層重ね合わせた上に圧縮しているから、軽量性を確保するのが困難であると共に、立体嵩高性が十分に得られず、従って空気含有率の低いものとなって十分な保温性が得られないという問題があった。換言すれば、素材として羊毛やカシミヤ山羊毛等を選択することによる保温性の向上は期待できるものの、これら素材本来の優れた保温特性を十分に発揮せしめ得るものではなかった。また、シート状に製綿したものを重ね合わせているので、経年使用によってへたりを生じやすく十分な耐久性が得られ難いという問題もあった。更には、立体嵩高性がないことで生地っぽい感触が強いし、厚み方向の圧縮性があまり無く、従って寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感が不十分であり良い寝心地が得られ難いし、寝返り等によって掛布団がずれ落ち易いという問題もあった。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであり、中綿の立体嵩高性が十分に得られて含気率が大きく優れた保温性及び軽量性を確保できると共に、へたりを生じ難くて耐久性に優れ、しかも厚み方向の圧縮性が良くて寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感に優れて良い寝心地が得られ、また寝返り等をしても体からずれ落ち難い掛布団を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、平均繊維太さが25μm以下で、平均繊維長が35mm以下の獣毛繊維からなる、見かけの最大寸法長さが10mm以下の玉綿が多数集合してなる綿体を中綿に用いるものとし、該中綿を、表裏面の側地が立体キルト加工されて内部に複数のセルが形成された袋状側地内の各セルに充填せしめた構成とすることにより、上記所望の掛布団となし得ることを見出すに至り、この発明を完成したものである。
【0008】
即ち、この発明に係る掛布団は、平均繊維太さが25μm以下で、平均繊維長が35mm以下の獣毛繊維からなる、見かけの最大寸法長さが10mm以下の玉綿が多数集合して形成された中綿と、表裏面の側地が立体キルト加工されて内部に複数のセルが形成された袋状側地とからなり、前記中綿が前記袋状側地内の各セルに充填されていることを特徴とするものである。
【0009】
獣毛繊維からなる玉綿が多数集合して中綿が構成されているので、従来の羊毛やカシミヤ山羊毛をシート状に製綿したものを複数層重ね合わせて圧縮した中綿と比較すると、ふわっと膨れて顕著に嵩高いものとなって、中綿における空気含有率が大きくなるので、保温性に優れたものになると共に十分な軽量性も確保できる。また、中綿が、多数の玉綿が集合して形成されたものであるから、圧縮変形されても直ちにふんわりと膨らんだ状態に戻ると共に、経年使用してもへたりを生じ難く耐久性にも優れている。更に、中綿はふわっと膨れて嵩高いので厚み方向の圧縮性が良く、従って寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感に優れて良い寝心地が得られるし、寝返り等をしても体からずれ落ち難い。そして、袋状側地は、表裏面の側地が立体キルト加工されて内部に複数のセルが形成されており、中綿がこれらの各セルに充填されているので、使用を重ねても袋状側地内において中綿の片寄りの発生が防止される。更に、玉綿を構成する獣毛繊維の平均繊維太さが25μm以下であるから、中綿における空気含有率がより大きくなり保温性を一層向上できると共に軽量化にも寄与できるし、玉綿状に形成されやすいものとなる。また、玉綿を構成する獣毛繊維の平均繊維長が35mm以下であるから、小さな玉綿の形成が可能となって玉離れが良く(玉綿同士が相互間の絡まりを解いて分散され易く)、従って各セル内で均一に分散されてセル内の隅々まで中綿が行き渡るものとなし得る、即ち各セル内で中綿が中央部に片寄るような現象が効果的に防止されて、保温性が一層向上されると共に生地っぽい感触の部位の生じない高級感のある高品質の掛布団が提供される。また中綿を構成する繊維として獣毛繊維を用いるので、保温性を一段と向上できる。
【0010】
前記獣毛繊維の中でも、平均繊維太さが18μm以下で平均繊維長が30mm以下のカシミヤ山羊毛、又は平均繊維太さが24μm以下で平均繊維長が35mm以下のラクダ毛を用いるものとすれば、各セル内で中綿をより均一に分散できてセル内の隅々まで中綿が確実に行き渡るものとなり、保温性を更に向上できると共に、通気性に優れてムレを効果的に抑制できる利点がある。
【0011】
セルの面積は300〜1100cm2であるのが好ましく、このような範囲に設定されることで、各セル内で中綿が中央部に片寄るようなことが一層効果的に防止されると共に、一層良好な風合いが確保されるものとなる。
【0012】
セル間を区画する隔壁の高さは20〜60mmの範囲に設定されるのが好ましく、これによりふわっと膨れて顕著に嵩高いものとなし得て十分な保温性が確保されると共に軽量性も十分に確保されるし、寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感が一層向上して一層心地よい寝心地が得られる。
【0013】
また、中綿は吹き込み法により各セル内に充填されるのが好ましい。これにより、中綿が各セルの内部空間の隅々まで一層均一に充填されるものとなり、より高品質の掛布団が提供される。
【0014】
また、玉綿は、獣毛繊維をオップ機で処理することによって形成されたものを用いるのが好ましい。これにより、一層大きさの小さい玉綿の形成が可能となって、玉離れが一層良くなるので、各セル内でより均一に分散されてセル内の隅々まで中綿が確実に行き渡るものとなる。
【発明の実施の形態】
【0015】
この発明の一実施形態に係る掛布団(1)を図1に示す。この掛布団(1)は、中綿(2)が袋状側地(3)内に吹き込み法により充填されてなるものであり、中綿(2)、袋状側地(3)がそれぞれ次のような特徴を具備してなるものである。
【0016】
中綿(2)は、図3に示すように、平均繊維太さが25μm以下で、平均繊維長が35mm以下の獣毛繊維からなる玉綿(10)が多数集合して形成されたものであり、近接する玉綿(10)同士が若干絡み合い状態となりつつ全体として中綿(2)が形成されている。
【0017】
一方、袋状側地(3)は、図2に示すように、表裏面の側地(20)(21)が立体キルト加工されることによって内部に複数のセル(室)(4)…が形成されたものであり、隣り合うセル(4)同士は連通状態となされており、袋状側地(3)の一端側に設けられた吹込口(図示しない)よりノズルを挿入してノズル先端を各セル(4)内に順に配置せしめては中綿(2)を吹き込んでいくことによって、各セル(4)に中綿(2)が充填されたものである。即ち、空気等の気体流を利用して、空気等の気体と共に中綿(2)を袋状側地(3)内の各セル(4)に送り込むと、中綿(2)だけを各セル(4)内に留めて空気は側地(20)(21)を透過して外部に放出され、このようにして中綿(2)が袋状側地(3)内の各セル(4)に充填される。本実施形態ではセル(4)の数は48個に設定されているが、特にこの数に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態では、立体キルト加工は、図2に示すように、セル(4)間を区画する位置にメッシュ状のテープ隔壁(11)がそれぞれ配置されて、その上端側を表面側地(20)に縫合される一方、その下端側を裏面側地(21)に縫合されることによって、上面を表面側地(20)、下面を裏面側地(21)、四周側面をテープ隔壁(11)(11)(11)(11)によって取り囲まれたセル(4)…が多数形成されたものであるが、立体キルト加工の手法は特にこのような形態のものに限定されるものではない。
【0019】
上記構成の掛布団(1)は、獣毛繊維からなる玉綿(10)が多数集合して中綿(2)が構成されているので、従来の羊毛やカシミヤ山羊毛をシート状に製綿したものを複数層重ね合わせて圧縮した中綿等と比較すると、ふわっと膨れて顕著に嵩高いものとなり、中綿(2)における空気含有率を向上させることができ、これにより保温性及び軽量性に優れたものとなし得る。また、中綿(2)が、多数の玉綿(10)が集合して形成されたものであるから、圧縮変形されても直ちにふんわりと膨らんだ状態に戻って形態安定性に優れると共に、長期間使用してもへたりを生じ難く耐久性にも優れている。また、中綿(2)は厚み方向の圧縮性が良いので、寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感に優れて良い寝心地が得られるし、寝返り等をしても体からずれ落ち難い。更に、中綿(2)は、袋状側地(3)内に形成された複数のセル(4)にそれぞれ充填されているので、使用を重ねても袋状側地(3)内において中綿(2)の配置位置に片寄りを生じることが防止される。更に、上記実施形態では、中綿(2)が吹き込み法により充填されているので、生産効率が良好であるし、各セル(4)の内部空間の隅々まで均一な充填が可能となって製品品質に優れたものを提供できる。
【0020】
この発明において、玉綿(10)を構成する獣毛繊維としては、特に限定されないが、例えば羊、モヘヤ、カシミヤ山羊、ラクダ、アルパカ、ラマ、ビキュナ、アンゴラ、ヤク、グァナコ等の獣毛の毛が挙げられる。保温性を一層向上できる点と、玉綿(10)の形成し易さの点で、獣毛繊維を用いる。
【0021】
前記玉綿(10)を構成する獣毛繊維の平均繊維太さは25μm以下に設定される必要がある。25μmを超えると、中綿(2)における空気含有率が低下して保温性が低下するのみならず軽量化も困難になるし、玉綿状に形成され難くなるからである。
【0022】
前記玉綿(10)を構成する獣毛繊維の平均繊維長は35mm以下に設定される必要がある。35mmを超えると、大きさの小さい玉綿(10)の形成が困難になってこれにより玉綿(10)同士の玉離れが悪くなり、即ち玉綿(10)同士が相互間の絡まりを解き難くなって分散され難いものとなり、従って各セル(4)内で玉綿(10)を均一に分散させるのが難しくなるし、玉綿(10)をセル(4)内の隅々まで行き渡らせるのも困難になって生地っぽい感触の部位が生じてしまうからである。また、35mmを超えると玉綿(10)同士の玉離れが悪いので、圧縮変形された場合にふんわりと膨らんだ状態に戻り難くなる。
【0023】
中でも、玉綿(10)を構成する獣毛繊維としては、平均繊維太さが18μm以下で平均繊維長が30mm以下のカシミヤ山羊毛、又は平均繊維太さが24μm以下で平均繊維長が35mm以下のラクダ毛を用いるのが特に好ましく、この構成を採用すれば、各セル内で中綿をより均一に分散できてセル内の隅々まで中綿が確実に行き渡るものとなり、保温性をより一層向上できると共に、通気性にも優れてムレを効果的に抑制することができる。
【0024】
上記カシミヤ山羊毛としては、その平均繊維太さが16μm以下で平均繊維長が25mm以下のものを用いるのが最も好ましく、また上記ラクダ毛としては、その平均繊維太さが20μm以下で平均繊維長が35mm以下のものを用いるのが最も好ましく、このような構成を採用する場合には、各セル内での中綿の均一分散性がさらに向上するので、保温性に優れた高級で高品質の掛布団を提供できる。
【0025】
前記セル(4)の面積は300〜1100cm2の範囲に設定されるのが好ましい。1100cm2を超えると各セル(4)内において中綿(2)が中央部に片寄る傾向が若干ながら出てくるので好ましくない。一方、300cm2未満では縫合箇所が多くなり過ぎて掛布団(1)の風合いが低下するので好ましくない。中でも、セル(4)の面積は500〜800cm2の範囲に設定されるのがより好ましい。
【0026】
また、前記セル(4)間を区画する隔壁(11)の高さ(H)は20〜60mmの範囲に設定されるのが好ましい。20mm未満では、中綿(2)をふわっと膨らせて嵩高く形成するのが困難になって十分な保温性を確保できなくなる上に、厚み方向の圧縮性が低下して寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感が低下すると共に寝返り等の際にずれ落ち易くなる傾向があるので好ましくないし、一方60mmを超えると掛布団(1)として厚くなり過ぎて実用的でなくなるし、中綿の充填量も必然的に増えて軽量性の確保も困難になるので、好ましくない。
【0027】
ところで、前記獣毛繊維を玉綿状に形成せしめる方法としては、例えば公知のオップ機を用いる方法を例示できる。このオップ機(30)は、一般には、カード工程で落下した繊維を再生利用するのに用いられる選別機であり、一例を挙げて示すと、図4(イ)に示すように、内部空間の上部位置に回転軸(31)が図面左右方向に延びて配置され、該回転軸(31)の右端部に所要厚さの動力伝達用ローラー(40)が固定されると共に、このローラー(40)の下方位置に設置された回転駆動モーター(41)により回転駆動される回転ローラー(42)の周側面並びに前記動力伝達用ローラー(40)の周側面にベルト(43)が架けわたされて、モーター(41)による回転動力が、回転ローラー(42)、ベルト(43)、動力伝達用ローラー(40)を介して前記回転軸(31)に伝達されるものとなされている。
【0028】
この回転軸(31)には、図4(イ)に示すように、その長さ方向に等間隔で解毛シャフト(32)(32)(32)(32)(32)(32)が取り付けられ、かつ図4(ロ)に示すように、側面から見た際に隣り合う解毛シャフトが順に等角度ずつ角度をずらして取り付けられて、側面視において丁度羽根車に見えるような態様で配置されている。
【0029】
また、オップ機(30)の上面壁の左側端部には原料供給口(33)が設けられる一方、オップ機(30)の背面壁の上部位置右側端部には取出口(34)が設けられ、原料供給口(33)から取出口(34)に向けて空気流が生じるようになされている。
【0030】
しかして、回転駆動モーター(41)を駆動させて、複数の解毛シャフト(32)を回転軸(31)を中心にして回転せしめると共に、原料供給口(33)より獣毛繊維を送り込むと、取出口(34)まで移送される過程において、回転している解毛シャフト(32)に接触すること等によって、これら繊維が玉綿(10)に形成されると共に、近接する玉綿(10)同士が若干絡み合い状態となりつつ多数集合してなる中綿(2)が得られる。
【0031】
上記のようなオップ機(30)で処理することによって形成された玉綿(10)は、より小さく形成され得るので、玉綿(10)同士の玉離れが一層良好になり、各セル(4)内でより均一に分散されてセル(4)内の隅々まで中綿(2)が確実に行き渡るものとなる。
【0032】
なお、この発明において用いる中綿(2)としては、上記オップ機(30)によって製造されるものに特に限定されるものではない。
【0033】
次に、獣毛繊維を玉綿状に形成せしめるまでに行う処理工程の一例を説明する。まず、カシミヤ山羊やラクダ等から毛を刈る剪毛工程、原毛を取捨選択する選毛工程、脂や汚れを洗い落とす洗毛工程を順に経たのち、開毛工程および繊維1本1本を平行に並べる開繊工程を行い、更にカーディングを行ってウエブを形成せしめ、これを例えばオップ機で処理することによって前記玉綿(10)に形成せしめる。これは一例であり、特にこの工程を経たものに限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0035】
<実施例1>
中国産ホワイトカシミヤ山羊毛(平均繊維太さ14μm、平均繊維長20mm、ノイル)を、図4に示すオップ機で処理することによって、玉綿が多数集合して形成された中綿を得た。この玉綿の形状は、平面視において略円形状、楕円状等様々であるが、玉綿の見かけの最大寸法長さ(長径方向の長さ等)は、大部分が10mm以下であった。
【0036】
次に、表面側地と裏面側地が立体キルト加工されて内部に48個(6×8)のセル(区画隔壁の高さは30mm)が形成された袋状側地(図1参照)の一端側に設けられた吹込口よりノズルを挿入してノズル先端を各セル内に順に配置せしめては上記中綿を吹き込んでいくことによって、各セル毎に35gづつ中綿を充填して、掛布団(横150cm×縦210cm)を得た。中綿の充填総量は1.68kgであり、セルの面積は約656cm2であった。
【0037】
<実施例2>
中綿を構成する獣毛繊維として、中国産ホワイトカシミヤ山羊毛(平均繊維太さ16μm、平均繊維長22mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして掛布団を得た。
【0038】
<実施例3>
中綿を構成する獣毛繊維として、ダークブラウンカシミヤ山羊毛(平均繊維太さ18μm、平均繊維長23mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして掛布団を得た。
【0039】
<実施例4>
中綿を構成する獣毛繊維として、ブラウンキャメル(ラクダ)毛(平均繊維太さ18μm、平均繊維長30mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして掛布団を得た。
【0040】
<比較例1>
カシミヤ山羊毛(平均繊維太さ23μm、平均繊維長38mm)を、実施例1と同様に図4に示すオップ機で処理したところ、形成される玉綿が大きく、また玉綿同士が相互に絡み合って玉離れが悪かったが、一応これを中綿に用いて実施例1と同様の袋状側地の各セル内に同様に充填して掛布団を構成した。
【0041】
<比較例2>
ブラウンキャメル(ラクダ)毛(平均繊維太さ30μm、平均繊維長40mm)を、実施例1と同様に図4に示すオップ機で処理したところ、玉綿状に形成され難く、また玉綿状に形成されたものも比較例1のものよりも相対的に大きく、また玉綿同士が相互に強く絡み合って玉離れが非常に悪かったが、一応これを中綿に用いて実施例1と同様の袋状側地の各セル内に同様に充填して掛布団を構成した。なお、この充填の際、セル内での中綿の浮遊性は非常に悪く、充填を良好な状態で行うことが困難であった。
【0042】
上記のようにして得られた各掛布団に対して下記評価法により性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
<セル内での中綿の均一分散性評価>
セル内で中綿が全く片寄ることなく均一分散性に優れていて生地っぽい感触の部位が全く生じなかったものを「◎」とし、均一分散性が良好であったものを「○」とし、セル内で中綿が片寄って偏在していて生地っぽい感触の部位が生じていたものを「×」とした。
【0044】
<保温性評価法>
掛布団を実際に使用した際の暖かさ感で評価した。即ち、十分な暖かさ感が感じられたものを「◎」とし、ほぼ十分な暖かさ感が感じられたものを「○」とし、暖かさ感が不足していたものを「×」とした。
【0045】
<寝心地評価法>
各掛布団を実際に使用して、寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感に優れており、良い寝心地が得られたものを「○」とし、寝返り等の体の動きに対する追従性、体へのフィット感が不十分で寝心地があまり良くなかったものを「×」とした。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなように、この発明の実施例1〜4の掛布団は、セル内での中綿の均一分散性に優れていて生地っぽい感触の部位が生じず高級感を付与できると共に、保温性にも優れ、また寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感に優れていた。
【0048】
これに対し、比較例1、2では、セル内での中綿の分散性が非常に悪かったし、体の動きに対する追従性や体へのフィット感も不十分で寝心地があまり良くなかった。
【発明の効果】
【0049】
この発明の掛布団は、獣毛繊維からなる玉綿が多数集合して中綿が構成されているので、ふわっと膨れて顕著に嵩高いものとなって中綿における空気含有率が増大するので、保温性及び軽量性に優れたものとなる。また、中綿が、多数の玉綿の集合体であるから、圧縮変形されても直ちにふんわりと膨らんだ状態に戻ると共に、へたりを生じ難くて耐久性に優れている。また、中綿は厚み方向の圧縮性が良いので、寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感に優れて良い寝心地が得られるし、寝返り等をしても体からずれ落ち難い。更に、中綿は袋状側地内に形成された複数のセルに充填されているので、使用を重ねても袋状側地内において中綿の配置位置に片寄りを生じることを防止できる。更に、平均繊維太さが25μm以下に規定されているから、中綿の空気含有率がより増大して保温性を一層向上できると共に一層の軽量化を図り得る。かつ、平均繊維長が35mm以下に規定されているから、小さな玉綿の形成が可能となり、これにより玉離れ性が向上するので、玉綿が各セル内で均一に分散されてセル内の隅々まで中綿が行き渡るものとなって、各セル内で中綿が片寄ることを防止できるので、保温性をさらに向上できると共に生地っぽい感触の部位の生じない高級で高品質の掛布団を提供できる。また、中綿を構成する繊維が獣毛繊維であるから、保温性を一段と向上できる。
【0050】
また、獣毛繊維として、平均繊維太さが18μm以下で平均繊維長が30mm以下のカシミヤ山羊毛、又は平均繊維太さが24μm以下で平均繊維長が35mm以下のラクダ毛が用いられる場合には、各セル内で中綿をより均一に分散できてセル内の隅々まで中綿が確実に行き渡るものとなって保温性をより一層向上できると共に、通気性にも優れてムレを効果的に抑制できる利点がある。
【0051】
セルの面積が300〜1100cm2である場合には、各セル内で中綿が片寄ることを一層効果的に防止できると共に、一層良好な風合いを確保できる。
【0052】
セル間を区画する隔壁の高さが20〜60mmの範囲に設定されている場合には、保温性を一層向上させつつ十分な軽量性も確保できると共に、寝返り等の体の動きに対する追従性や体へのフィット感が一層向上して一層心地よい寝心地を確保できる。
【0053】
中綿が吹き込み法により各セル内に充填されている場合には、生産性を向上できると共に、中綿が各セル内の隅々まで均一に充填されるものとなるので、より高品質の掛布団を提供できる。
【0054】
玉綿が、獣毛繊維をオップ機で処理することによって形成されたものである場合には、一層小さい玉綿が形成されるので玉離れ性が向上して各セル内でより均一に分散されてセルの内部空間の隅々まで中綿が確実に行き渡るものとなる。従って、生地っぽい感触の部位が全く生じないものとなるし、保温性もより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】この発明の一実施形態に係る掛布団を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線の断面図である。
【図3】中綿の概略平面図である。
【図4】(イ)はオップ機の断面図、(ロ)はオップ機の右側面の一部を切欠いて示す右側面図である。
【図5】従来のシート状に製綿されたものを複数層重ね合わせた中綿を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…掛布団
2…中綿
3…袋状側地
4…セル
10…玉綿
11…隔壁
20…表面側地
21…裏面側地
Claims (7)
- 平均繊維太さが25μm以下で、平均繊維長が35mm以下の獣毛繊維からなる、見かけの最大寸法長さが10mm以下の玉綿が多数集合して形成された中綿と、
表裏面の側地が立体キルト加工されて内部に複数のセルが形成された袋状側地とからなり、
前記中綿が前記袋状側地内の各セルに充填されていることを特徴とする掛布団。 - 前記獣毛繊維として、平均繊維太さが18μm以下で平均繊維長が30mm以下のカシミヤ山羊毛が用いられた請求項1に記載の掛布団。
- 前記獣毛繊維として、平均繊維太さが24μm以下で平均繊維長が35mm以下のラクダ毛が用いられた請求項1に記載の掛布団。
- 前記セルの面積が300〜1100cm 2 である請求項1〜3のいずれか1項に記載の掛布団。
- 前記セル間を区画する隔壁の高さが20〜60mmの範囲に設定されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の掛布団。
- 前記中綿が吹き込み法により前記各セル内に充填されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の掛布団。
- 前記玉綿が、前記獣毛繊維をオップ機で処理することによって形成されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の掛布団。
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