JP3555441B2 - 燃料電池発電装置用改質器の運転方法 - Google Patents

燃料電池発電装置用改質器の運転方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気化学反応により電気エネルギーを得る燃料電池発電装置において、燃料ガスの生成に用いられる改質器の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、燃料電池発電装置の改質ガスの生成系統を示す系統図である。
図において、模式的に表示した燃料電池本体2は、電解質を保持したマトリックスを燃料極と酸化剤極とにより挟持してなる単位セルを多数積層し、発電に伴う発熱を除去して所定温度に維持するための冷却板を適宜介装して構成されている。この冷却板は、水蒸気分離器3に貯えられた冷却水を循環ポンプ4により供給することによって冷却されており、冷却水は、冷却板で加熱されて高温の気液二相流となり、水蒸気分離器3へと戻され、水蒸気と水とに分離され、水は再び冷却水として用いられている。一方、水蒸気の凡そ50%は、改質用蒸気として改質ガスの生成に用いられ、残余の凡そ50%の水蒸気は熱利用蒸気として用いられている。なお、水蒸気分離器3には補給水の供給系統が備えられており、水蒸気として利用することにより減少する水量を補っている。
【0003】
燃料電池本体2の燃料極へ供給する燃料ガスには、炭化水素等の原燃料に上記の改質用蒸気を混合し、改質器1において加熱し、改質触媒により改質した水素濃度の高い改質ガスが用いられている。また、酸化剤極には図示しない系統により酸素を含んだ酸化剤ガス、例えば反応空気が供給される。このようにして供給された燃料ガス中の水素と酸化剤ガス中の酸素により、燃料電池本体2の各単位セルで電気化学反応が生じて発電がおこなわれる。したがって、燃料極へ送る改質ガスは所定量の水素を安定して保持する必要がある。このため、改質器1においては、改質反応の温度を一定に保持するとともに、改質用蒸気の量を調整して水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)が所定値を維持するよう制御して改質が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、燃料電池発電装置は、常に一定の負荷で運転されるものとは限らず、条件に対応して定格値より低い負荷で運転される場合がある。負荷が低くなれば電気エネルギーを得る電気化学反応の度合いも低下し、これに伴って生じる発熱量も減少するが、さらに、負荷が低くなるほど発生熱の割合が低下するという特性を備えている。したがって、例えば、負荷が定格の50%に低下すれば、図4に示したごとく、発生熱の割合は90%に低下し、発熱量は定格時の約45%となる。これに対して、従来の改質器の運転方法では、改質用蒸気および原燃料の量を負荷に比例させて供給しており、負荷によらずS/Cを一定値に保持して運転している。したがって、燃料電池の負荷が低下した際には、定格時に取り出し得る蒸気量に負荷の割合を乗じた値よりさらに少ない蒸気量しか水蒸気分離器から取り出せず、熱利用蒸気として取り出し得る蒸気量は負荷が低くなるほど大幅に減少することとなり、熱利用率、すなわち、投入原料の発生熱量に対する熱利用蒸気として用いられる熱量の割合が大幅に低下する事態を引き起こすという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような従来技術の難点を考慮してなされたもので、その目的は、燃料電池の負荷が低下した際にも、適正な水素量を有する改質ガスが得られ、かつ、熱利用蒸気として用いられる蒸気の熱利用率を低下させることなく運転できる燃料電池発電装置用改質器の運転方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明においては、
燃料電池本体へ冷却水を供給し、発電反応に伴い加熱されて生じた気液二相流を導入して水蒸気と冷却水とに分離する水蒸気分離器で得られた水蒸気を、炭化水素等の原燃料と混合して加熱し、改質触媒により改質して燃料電池本体の燃料極へ供給する高水素濃度の燃料ガスを得る燃料電池発電装置用改質器の運転方法において、
燃料電池本体の負荷変動に対応して、原燃料と混合する水蒸気量を調整し、負荷の低下に連動して水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を低下させるとともに、改質器の反応温度を調整し、負荷の低下に連動して改質器の反応温度を上昇させて運転することとし、
例えば、負荷が定格運転時の負荷のX倍であるとき、水蒸気分離器に回収される発生熱量の、定格運転時に回収される発生熱量にXを乗じた値に対する割合がα、定格運転時の発生熱量に対する改質用蒸気として用いられる蒸気の熱量の割合がγのとき、水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を定格運転時の(α+γ−1)/γ倍に調整して運転することとする。
【0007】
既に図4に示したごとく、燃料電池本体の負荷が低下すると発生熱が低下し、水蒸気分離器で得られる水蒸気量も低下する。したがって、水蒸気分離器の水蒸気の一部を利用して運転する熱利用装置の効率の低下を防止するには、熱利用装置に供給する水蒸気量を負荷に比例させた値に保持し、改質用の水蒸気量を減少させ、水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を低下させて運転する必要がある。
【0008】
すなわち、図5に示したごとく、負荷Pが定格運転時の負荷PのX倍、すなわち、P=PXのときの、燃料電池本体に投入される原燃料の発生熱量をA、燃料電池本体の発生熱量をB、そのうち改質蒸気として用いられる熱量をE、熱利用に供される熱量をDとし、これらの定格運転時の値を、それぞれA、B、E、Dとして表示すると、AはAにXを乗じた値となる。また、BとBにXを乗じた値との比、すなわち発生熱の割合をα、熱利用率、すなわちDとAとの比をβ、EとBとの比をγとすると、次式(1)、(2)、(3)のごとく表示される。
【0009】
【数1】
α = B/(BX) (1)
β = D/A=D/(AX) (2)
γ = E/B (3)
したがって、熱利用率βを負荷変動、すなわちXによらず一定にして運転するには、D=DXとすればよく、改質用蒸気の熱量Eを以下のごとく調整すればよい。
【0010】
【数2】
=B−D=B−D
=(α+γ−1)XB (4)
∴ E/E=((α+γ−1)/γ)X (5)
すなわち、改質用蒸気の熱量Eを、定格運転時の熱量EにXを乗じた値の(α+γ−1)/γ倍とすればよい。
【0011】
したがって、(S/C)の値を定格運転時の(α+γ−1)/γ倍に調整して運転すれば、熱利用装置の効率の低下を生じることなく運転することができる。一方、改質器の反応温度を上昇させれば改質率が上昇するので、負荷の低下とともに反応温度を上昇させることにより、水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)の低下による改質率の低下が抑制され、所定の水素量が得られることとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の燃料電池発電装置用改質器の運転方法の実施例において用いられる水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)の設定条件を従来例と比較して示す特性図である。また、図2は、本実施例において用いられる改質器の反応温度の設定条件を従来例と比較して示す特性図である。
【0013】
本実施例の燃料電池発電装置では、定格運転時に、燃料電池本体の発生熱の約50%相当分の水蒸気が水蒸気分離器より熱利用装置へ送られて熱利用され、残りの約50%相当分の水蒸気が水蒸気分離器より改質用蒸気として取出され利用されている。燃料電池の負荷が低下すると燃料電池内部で発生する熱量が低下し、すでに例示した図4のごとく、負荷が50%に低下したときに、発生熱の割合が 0.9となる場合、発生熱量は45%になる。したがって、負荷の低下とともに水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を低下させることとし、上述のごとく、負荷が定格運転時の負荷のX倍であるとき、水蒸気分離器に回収される発生熱量の、定格運転時に回収される発生熱量にXを乗じた値に対する割合がα、定格運転時の発生熱量に対する改質用蒸気として用いられる蒸気の熱量の割合がγのとき、水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を定格運転時の(α+γ−1)/γ倍に調整して運転することとして、図1に見られるごとく、負荷が50%に低下したときのモル比(S/C)を定格運転時の80%となるよう設定すれば、燃料電池本体に投入される原燃料の発生熱量に対する熱利用蒸気として取出される水蒸気量の熱量の割合、すなわち熱利用率が一定に保持されることとなり、安定して運転できることとなる。
【0014】
また、このように負荷の低下とともに改質用蒸気として用いる水蒸気量を減少させ、水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を低下させると、従来のごとく改質器の反応温度を負荷によらず一定に保持して運転すれば、改質率が低下して、燃料電池に送られる改質ガスに含まれる水素量が不足する事態を生じることとなる。これに対して本実施例では、図2に示したように、例えば負荷が50%に低下した時、反応温度を 700℃から 730℃に上げる等、負荷の低下とともに改質器の反応温度を高くして改質反応を促進させることにより、水蒸気量が減少しても同一の改質率が得られるよう設定している。したがって、モル比(S/C)を低下させても、改質ガスには所定量の水素が含まれ、燃料電池は安定して運転できる。
【0015】
【発明の効果】
上述のように、本発明によれば、
燃料電池本体へ冷却水を供給し、発電反応に伴い加熱されて生じた気液二相流を導入して水蒸気と冷却水とに分離する水蒸気分離器で得られた水蒸気を、炭化水素等の原燃料と混合して加熱し、改質触媒により改質して燃料電池本体の燃料極へ供給する高水素濃度の燃料ガスを得る燃料電池発電装置用改質器の運転方法を、請求項1、あるいは2に記載のごとき方法により行うこととしたので、燃料電池の負荷が低下した際にも、適正な水素量を有する改質ガスが得られ、かつ、熱利用蒸気として用いられる蒸気の熱利用率を低下させることなく一定に保持し、安定して運転できる燃料電池発電装置用改質器の運転方法が得られることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池発電装置用改質器の運転方法の実施例において用いられる水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)の設定条件を、従来例と比較して示す特性図
【図2】本発明の燃料電池発電装置用改質器の運転方法の実施例において用いられる改質器の反応温度の設定条件を、従来例と比較して示す特性図
【図3】燃料電池発電装置の改質ガスの生成系統を示す系統図
【図4】燃料電池の発生熱量と負荷との関係を示す特性図
【図5】燃料電池における発生熱量の流れを示すフロー図
【符号の説明】
1 改質器
2 燃料電池本体
3 水蒸気分離器
4 循環ポンプ

Claims (2)

  1. 燃料電池本体へ冷却水を供給し、発電反応に伴い加熱されて生じた気液二相流を導入して水蒸気と冷却水とに分離する水蒸気分離器で得られた水蒸気の一部を、炭化水素等の原燃料と混合して加熱し、改質触媒により改質して燃料電池本体の燃料極へ供給する高水素濃度の燃料ガスを得る燃料電池発電装置用改質器の運転方法において、
    燃料電池本体の負荷変動に対応して、
    原燃料と混合する水蒸気量を調整し、負荷の低下に連動して水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を低下させるとともに、
    改質器の反応温度を調整し、負荷の低下に連動して改質器の反応温度を上昇させて運転することを特徴とする燃料電池発電装置用改質器の運転方法。
  2. 請求項1に記載の燃料電池発電装置用改質器の運転方法において、負荷が定格運転時の負荷のX倍であるとき、水蒸気分離器に回収される発生熱量の、定格運転時に回収される発生熱量にXを乗じた値に対する割合がα、定格運転時の発生熱量に対する改質用蒸気として用いられる蒸気の熱量の割合がγのとき、水蒸気と原燃料中の炭素とのモル比(S/C)を定格運転時の(α+γ−1)/γ倍に調整して運転することを特徴とする燃料電池発電装置用改質器の運転方法。
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