JP3555233B2 - 投影露光装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば半導体集積回路や液晶デバイス等をフォトリソグラフィー工程で製造する際に使用される投影露光装置に関し、特に投影光学系による投影像のディストーション等の結像特性を補正する機構を備えた投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりこの種の投影露光装置では、レチクル(又はフォトマスク等)の微細なパターンを高い解像度でフォトレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に投影するため、更には既にウエハ上に形成されているパターン上に高い重ね合わせ精度でレチクルのパターンを投影するために、投影光学系による投影像の結像特性を常に高精度に維持することが求められている。この場合投影光学系の周囲の大気圧、気温等の環境変化、レチクル若しくは投影光学系の照明光吸収による形状変化、レチクルの照明方法の切り換え、又は所謂位相シフトマスク等を使用する場合のようなレチクル上のパターンの変化等により、その結像特性が次第に変化してしまうことがある。なおここで、そのレチクルの照明方法の切り換えとは、通常の照明方法から、例えば輪帯照明法又は変形光源法等に切り換えることを言う。
【0003】
そこで、従来は、これらの環境変化の量等を測定し、この測定結果から結像特性の変化量を予測し、この予測された変化量を相殺するように結像特性を補正するようにしていた。また、従来の結像特性の補正対象は主に投影像のデフォーカスと投影倍率との2種類であった。これらを補正するため、例えばデフォーカスに関しては、投影光学系とウエハとの間隔を一定に保つ機構(オートフォーカス機構)においてフォーカス位置の目標値を補正していた。また、投影倍率の補正に関しては、投影光学系の内部のレンズ間を密封してその内部圧力を変える手法、又は投影光学系の一部のレンズを光軸方向に移動させる手法等が提案されている。
【0004】
これに関して、近年では半導体集積回路のパターン等が益々微細化するのに伴ってデフォーカス、投影倍率だけでなく等方的像歪(所謂糸巻型、樽型のディストーション)の変化も無視できなくなりつつある。そして、その等方的像歪の補正手段としては、レチクルを投影光学系の光軸方向へ移動させる機構、投影光学系の一部のレンズを光軸方向に移動させる機構、露光用光源(レーザ光源等)の発光波長を変化させる機構、又は投影光学系の内部のレンズ間を密閉してその内部圧力を変える機構等が提案されている。
【0005】
上記の如き従来の等方的像歪の補正手段には以下のような不都合がある。先ず、等方的像歪は投影倍率とは異なり、高次の収差であるため、前記の補正手段のうち、投影光学系の一部のレンズを光軸方向に移動させる機構、露光用光源の発光波長を変化させる機構、又は投影光学系の内部の所定のレンズ間の圧力を変化させる機構を用いて補正を行うと、他の収差が変化し独立に等方的像歪のみを修正できないという不都合がある。この場合新たに発生した収差を別の機構で補正するものとすると、全体の補正機構が複雑化する。また、他の収差変化を許容範囲内として等方的像歪を補正しようとしても補正できる量が僅かになってしまい、所望の補正量が得られない。これに対して、レチクルを光軸方向に移動する手法によれば、他の収差に影響を与えることなく、等方的像歪のみを補正することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、等方的像歪を補正するためには、レチクルを光軸方向に移動する手法が簡便な手法と言える。
しかし、最近になって結像特性を維持したまま、より広フィールドの領域を露光する要求が高まり、これに応えるべくレチクルとウエハとを投影光学系に対して相対的にスキャンして露光する走査露光型の投影露光装置(スリットスキャン方式、又はステップ・アンド・スキャン方式等の投影露光装置)が提案されている。この方式では、レチクルをスリット状に照明することで投影光学系の有効露光フィールドの最大直径を使用でき、且つスキャンすることによりスキャン方向には光学系の制限を受けることなく露光フィールドを拡大できるという利点がある。また、投影光学系の一部しか使用しないので、照度均一性、ディストーション等の精度を出し易いという利点がある。しかしながら、この走査露光型の投影露光装置ではレチクルとウエハとを高精度に同期させてスキャンしなければならないため、レチクル用のステージは高い剛性が要求される。このようにレチクル側のステージの剛性を高めるためには、レチクルを光軸方向に移動させる機構は無いことが望ましい。また、ステッパーのような一括露光型の装置でも、レチクル側のステージの剛性は高いことが望ましい。
【0007】
また、直接レチクルを駆動するため、その駆動誤差は直接結像特性あるいは重ね合わせ精度に影響する。つまり、レチクルが光軸に垂直な平面から傾くと、像面が傾斜し、またディストーションが変化する。また、レチクルが横シフトすると、アライメントセンサと像の位置関係がずれて、重ね合わせ誤差が発生するという不都合がある。あるいは、これらの誤差を防ぐためレチクルの駆動系は非常に高度な制御技術、あるいは位置測定技術が必要となるため、製造コストがアップするという不都合がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑み、他の収差に悪影響を与えることなく、且つレチクルを移動させることなく等方的像歪を補正できる投影露光装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による投影露光装置は、例えば図1に示すように、露光用の照明光(IL)のもとで、マスク(R)に形成された転写用のパターンの像を投影光学系(PL)を介して感光性の基板(W)上に投影する投影露光装置において、そのマスク(R)とその基板(W)との間に配置された厚さの変更自在な光透過性基板(12,13)と、この光透過性基板の厚さを切り換えることによりその照明光の光路長を変える光路長切換手段(14)と、を設け、その光路長切換手段(14)を介してその光透過性基板(12,13)の厚さを変更して投影像の像歪みを調整し、その光透過性基板としての光学くさびの一方の面は、非等方的な不規則ディストーションを補正するために不規則な波状に研磨されているものである。
【0010】
この場合、その光透過性基板の一例は、それぞれ厚さが連続的に変化する1枚又は複数枚の光学くさび(12,13)であり、この場合、その光路長切換手段はその光学くさび(12,13)を全体として又は相対的に移動する移動手段(14)であることが好ましい。
また、その投影露光装置が、そのマスク(R)を所定の走査方向(X方向)に走査するのと同期してその基板をその所定の走査方向に対応する方向(−X方向)に走査することによりそのマスク(R)のパターンを逐次その基板(W)上に露光する走査型露光装置である場合、その光路長切換手段(14)はその光学くさび(12,13)をその所定の走査方向に沿って移動することが好ましい。
【0011】
また、その光透過性基板の他の例は、例えば図10に示すように、厚さの異なる複数の光透過性基板(101〜103)であり、この場合、その光路長切換手段はその複数の光透過性基板(101〜103)を交換する交換手段(14A)である。
また、本発明による別の投影露光装置は、例えば図8に示すように、露光用の照明光(IL)のもとで、マスク(R)に形成された転写用のパターンの像を投影光学系(PL)を介して感光性の基板(W)上に投影する投影露光装置において、マスク(R)と基板(W)との間に配置された光学くさび(82)を備え、該光学くさびの上面を、非等方的な不規則ディストーションを補正するために不規則な波状に研磨するようにしたものである。
また、上記の本発明において、そのマスクの傍らに設けられたマーク板(MKP)と、その投影光学系を介して形成されるその像の歪みを測定するために、そのマーク板に設けられたマーク(MKA)の像をその投影光学系を介して検出する光電センサとをさらに備えてもよい。
【0012】
【作用】
斯かる本発明の投影露光装置によれば、厚さの変更可能な光透過性基板(12,13)の厚さを変えることで、マスク(R)と投影光学系(PL)との間の光路長を変化させ、マスク(R)や投影光学系(PL)を移動することなく等方的像歪を補正することができる。また、レンズ等の光学部材を介さず、マスク(R)と感光性の基板(W)との間に配置した光透過性基板(12,13)だけにより像歪を補正するので、レンズ等の光学部材を介することにより発生する諸収差が発生しない。従って、光透過性基板(12,13)を使用することにより等方的像歪(所謂糸巻型、樽型のディストーション)を他の収差から独立に変化させることができる。
【0013】
また、光透過性基板が光学くさび(12,13)よりなり、光路長切換手段が移動手段(14)である場合には、移動手段(14)により光学くさび(12,13)をその厚さが連続的に変化する方向に移動することにより光路長を連続的に変化させることができる。従って、連続的に像歪を補正できる。また、その厚さの変化を緩やかにしておけば、その光学部材の位置決めは厳密に行わなくても光路長を厳密に制御できる。
【0014】
特に、光透過性基板(12,13)の内最もレチクル(R)に近い光透過性基板(12)の上面と、基板(W)に近い光透過性基板(13)の下面とが共に平行平面に近い場合、光透過性基板(12,13)の位置決めは3次元的に緩やかでよく、マスク(R)や投影光学系(PL)そのものを駆動するときの位置決め精度に対し比較にならないぐらい緩やかでよい。
【0015】
また、投影露光装置が走査型の投影露光装置であり、光学くさび(12,13)を走査方向に沿って移動する場合には、走査方向に短いスリット状の照明領域を用いるため、光学くさび(12,13)の駆動量が少なくて済む。また、等方的像歪みを補正するために、マスク(R)あるいは投影光学系(PL)自体を物理的に駆動しなくてもよいため、特に装置全体として高い剛性が要求される走査型の投影露光装置に対して効果的である。
【0016】
また、光透過性基板が複数の光透過性基板(101〜103)からなり、光路長切換手段(14)が交換手段(14A)である場合には、補正は不連続となるが装置構成は簡単になる。この場合も、入れ換える光透過性基板(101〜103)が平行平面であれば、前述のように光透過性基板(101〜103)の位置決め精度は粗くてもよい。従って、更に装置の構成を単純にできる。
また、図8に示すように、マスク(R)と基板(W)との間に配置された光学くさび(82)の上面を不規則な波状に研磨することによって、非等方的な不規則ディストーションを補正することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明による投影露光装置の一実施例について図1〜図7を参照して説明する。本発明は、一括露光型(ステップ・アンド・リピート方式等)及び走査露光型(ステップ・アンド・スキャン方式等)の何れにも適用できる。以下では本発明の効果がより発揮される走査露光型に適用した場合につき説明する。但し、一括露光型への適用もほぼ同様である。なお、図1において、投影光学系PLの光軸IXに平行にZ軸を取り、その光軸IXに垂直な平面内で図1の紙面に平行にX軸を、図1の紙面に垂直にY軸を取る。
【0018】
図1は、本例の投影露光装置の概略構成を示し、この図1において、光源1としては、例えばKrFエキシマレーザやArFエキシマレーザ等のエキシマレーザ光源、銅蒸気レーザやYAGレーザの高波波発生装置、あるいは超高圧水銀ランプ等が使用される。光源1が超高圧水銀ランプの場合、光源1からは紫外の輝線(g線、i線等)よりなる照明光ILが射出される。照明光ILはコリメータレンズ、フライアイレンズ等よりなる照度均一化光学系2に入射し、照度分布がほぼ均一な光束に変換された後、照明条件切り換え用のターレット3に導かれる。
【0019】
図2は、図1のターレット3の正面図であり、この図2においてターレット3には90°間隔で絞り41〜44が配置されており、ターレット3を回転させて絞り41〜44を切り換えることにより、投影光学系PLのフーリエ変換面(瞳面)の光強度分布を変更することができる。この方法は、投影光学系の解像力を向上させる技術の一つであり、露光すべきパターンにより、これらの絞り41〜44の中から最適なものが選択される。
【0020】
図2の例では、円形の絞り41が通常の開口絞り(σ絞り)で、輪帯状の絞り42は輪帯照明を行うための絞りである。また、小さい円形の絞り43は光束の角度を絞るためのものであり、通常の照明系において、コヒーレンスファクタ(σ値)が小さい(例えばσ値が0.1〜0.4程度の)場合に相当する。4個の偏心した円形(又は十字型遮光部を有する)開口よりなる絞り44は、複数傾斜照明(変形光源)用の絞りで、一般にライン・アンド・スペースパターンを高解像度で露光するために使用されるものである。ターレット3はレチクルRのパターンに応じて、逐次最適なものに変更しながら使用される。
【0021】
さて、ターレット3の所定の絞りを通過した照明光ILは、その両側に光電センサ24,25を備えたビームスプリッタ4に達する。ビームスプリッタ4は、ほぼ全ての光束を通過させるが、一部の光束を反射するものであり、ターレット3側から来てビームスプリッタ4で反射された光束は光電センサ24へ入射し、ウエハW側から来てビームスプリッタ4で反射された光は光電センサ25に入射する。光電センサ24,25の検出信号は、後述するように投影光学系PLの収差変化を計算するのに用いられる。照明光ILは更にリレーレンズ、視野絞り、コンデンサレンズ等からなる照明光学系5を経て、ダイクロイックミラー6により反射され、半導体の回路パターン等が描かれたレチクルRを照明する。レチクルRはレチクルステージRST上に真空吸着され、このレチクルステージRSTは照明光学系5のダイクロイックミラー6により折り曲げられた光軸(投影光学系PLの光軸と一致している)IXに垂直な平面(XY平面)内で2次元的に微動してレチクルRを位置決めする。
【0022】
また、レチクルステージRSTはリニアモータ等で構成されたレチクル駆動部(不図示)により、X方向(走査方向)に所定の走査速度で移動可能となっている。レチクルステージRSTは、レチクルRの全面が少なくとも照明光学系の光軸ILを横切ることができるだけの移動ストロークを有している。レチクルステージRSTの端部には干渉計9からのレーザビームを反射する移動鏡8が固定されており、レチクルステージRSTの走査方向の位置は干渉計9によって、例えば0.01μm程度の分解能で常時検出されている。干渉計9からのレチクルステージRSTの位置情報はステージ制御系30Aに送られ、ステージ制御系30AはレチクルステージRSTの位置情報に基づき、レチクル駆動部(不図示)を介して、レチクルステージRSTを駆動する。不図示のレチクルアライメント系により所定の基準位置にレチクルRが精度良く位置決めされるように、レチクルステージRSTの初期位置が決定されるため、移動鏡8の位置を干渉計9で測定するだけで、レチクルRの位置が十分高精度に測定される。
【0023】
さて、レチクルRを通過した照明光ILは、一対の同形の光学くさび12,13からなる像歪補正体31に入射する。光学くさび12,13は共にレチクルRと同じような大きさで形成され、レチクルRを透過する照明光ILはすべて像歪補正体31の透過領域内を通過できるように構成されている。この像歪補正体31の光学くさび12,13を走査方向(X方向)にそれぞれ駆動することによりディストーションを補正する。この像歪補正体31については後で詳しく説明する。
【0024】
像歪補正体31を透過した照明光ILは、次に両側テレセントリックな投影光学系PLに入射し、投影光学系PLはレチクルRの回路パターンを縮小倍率β(例えば1/5あるいは1/4)で縮小した投影像を、その表面にフォトレジスト(感光材)が塗布されたウエハW上に形成する。
また、投影光学系PLの瞳面(レチクルRに対するフーリエ変換面)付近には光軸IX付近の光束を遮光する光学的フィルタ、即ち中心遮光型の瞳フィルタPFが着脱自在に設置されている。瞳フィルタPFは、特にコンタクトホールパターンを露光する際に解像度及び焦点深度を改善するものである。主制御系30が着脱装置30Bを介して瞳フィルタPFの着脱を制御する。更に本実施例の投影光学系PLには、結像特性の補正のための機構(15〜22)が取り付けられているが、これらの機構については後述する。
【0025】
図3は、図1のレチクルR及びウエハWの走査の状態を示す斜視図である。なお、図3では投影光学系PLは非テレセントリックであるかのように便宜上表現されているが、実際には投影光学系PLは両側(又は少なくともウエハ側)にテレセントリックである。本実施例の投影露光装置においては、図3に示すようにレチクルRの走査方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に長手方向を有する長方形(スリット状)の照明領域IARでレチクルRが照明され、レチクルRは露光時に−X方向(又は+X方向)に速度VR でスキャンされる。照明領域IAR(中心は光軸IX とほぼ一致)内のパターンは、投影光学系PLを介してウエハW上に投影され、スリット状の投影領域IAが形成される。
【0026】
ウエハWはレチクルRとは倒立結像関係にあるため、ウエハWは速度VR の方向とは反対の+X方向(又は−X方向)に、レチクルRに同期して、速度VW でスキャンされ、ウエハW上のショット領域SAの全面にレチクルRのパターンが逐次露光される。走査速度の比(VW /VR )は投影光学系PLの縮小倍率βに正確に一致したものになっており、レチクルRのパターン領域PAのパターンがウエハW上のショット領域SA上に正確に縮小転写される。照明領域IARの長手方向の幅は、レチクルR上のパターン領域PAよりも広く、遮光領域STの最大幅よりも狭くなるように設定され、レチクルRをスキャンすることによりパターン領域PA全面が照明されるようになっている。
【0027】
再び図1の説明に戻って、ウエハWはウエハホルダ7上に真空吸着され、ウエハホルダ7はウエハステージWST上に保持されている。ウエハホルダ7は不図示の駆動部により、投影光学系PLの最良結像面に対し、任意方向に傾斜可能で、且つ光軸IX方向(Z方向)に微動できる。また、ウエハホルダ7は光軸IXの回りの回転動作も可能である。一方、ウエハステージWSTは前述のスキャン方向(X方向)の移動のみならず、複数のショット領域内の任意のショット領域に随時移動できるよう、スキャン方向に垂直な方向(Y方向)にも移動可能に構成されており、ウエハW上の各ショット領域へスキャン露光する動作と、次のショット領域の露光開始位置まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作を行う。モータ等のウエハステージ駆動部(不図示)はウエハステージWSTをX及びY方向に駆動する。ウエハステージWSTの端部には干渉計11からのレーザビームを反射する移動鏡10が固定され、ウエハステージWSTのXY平面内での位置は干渉計11によって、例えば0.01μm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)はステージ制御系30Aに送られ、ステージ制御系30Aはこの位置情報(又は速度情報)に基づいてウエハステージ駆動部を制御する。
【0028】
また、図1の装置にはウエハWの露光面に向けてピンホール像、あるいはスリット像を形成するための結像光束を光軸IXに対して斜め方向に供給する照射光学系26と、その結像光束のウエハWの露光表面での反射光束をスリットを介して受光する受光光学系27とからなる斜入射方式のウエハ位置検出系(焦点位置検出系)が、投影光学系PLを支える支持部(不図示)に固定されている。このウエハ位置検出系のより詳細な構成については、例えば特開昭60−168112号公報に開示されている。ウエハ位置検出系はウエハの露光面の投影光学系PLの最良結像面に対するZ方向の位置偏差を検出し、ウエハWと投影光学系PLとが所定の間隔を保つようにウエハホルダ7をZ方向に駆動するために用いられる。ウエハ位置検出系からのウエハ位置情報は、主制御系30を介してステージ制御系30Aに送られる。ステージ制御系30Aはこのウエハ位置情報に基づいてウエハホルダ7をZ方向に駆動する。
【0029】
なお、本実施例では投影光学系PLの最良結像面(結像面)が零点基準となるように、予め受光光学系27の内部に設けられた不図示の平行平板ガラス(プレーンパラレル)の角度が調整され、ウエハ位置検出系のキャリブレーションが行われるものとする。また、例えば特開昭58−113706号公報に開示されているような、被検面に平行光束を照射し、反射光の集光点の横ずれ量を検出する水平位置検出系を用いたり、あるいは投影光学系PLのイメージフィールド内の任意の複数の位置での焦点位置を検出できるようにウエハ位置検出系を構成する(例えば複数のスリット像をイメージフィールド内に投影する)ことによって、ウエハW上の所定領域の結像面に対する傾きを検出してもよい。この場合、ウエハホルダ7の傾斜角の調整によりレベリングが行われる。
【0030】
また、ウエハステージWST上には光電センサ28が設置され、投影光学系PLの付近には大気圧、気温、湿度等の測定を行う環境センサ29が設けられて、各々の検出信号が投影光学系PLの結像特性の変化を計算するのに用いられる。詳しくは後述する。
次に、本実施例における等方的像歪の補正機構を含めた結像特性補正機構について説明を行う。前記のように補正すべき結像特性の種類は、露光する線幅が小さくなるにつれより多くなる傾向にある。このため本実施例でも、(イ)等方的像歪(以下「ディストーション」ともいう)に加えて、(ロ)投影倍率、(ハ)デフォーカス、及び(ニ)像面湾曲の4種類を補正する場合の例を示す。
【0031】
先ず、(イ)のディストーションは、レチクルRと投影光学系PLとの間に配置された像歪補正体31を駆動して、レチクルRと投影光学系PLとの間の光路長を変更することにより行う。本実施例では、投影光学系はマスク側がテレセントリックか、又はテレセントリックでなくとも、光路長の変更に伴い倍率成分の変化しない光学系であるとする。
【0032】
像歪補正体31は、レチクルRに近い光学くさび12と、光学くさび12の下部に重ねられるように配置された光学くさび13とから構成されている。光学くさび12,13は共に両端の厚さが異なるほぼ同じ大きさのくさび状の平板ガラスからなり、光学くさび12の上面と光学くさび13の下面は共に光軸IXに対し垂直な平面で構成されている。また、光学くさび12の下面と光学くさび13の上面は互いに平行で、図1のように光軸IXに垂直な平面に対して傾斜している。このような構成を取ることにより、像歪補正体31のレチクルR及び投影光学系PLに対する間隔がそれほど厳密に要求されないという利点がある。つまり、像歪補正体31は平行平面板と等価であるため、大きく傾斜すること等がなければ殆ど投影像に対して影響がない。
【0033】
光学くさび12,13は各々不図示の駆動ガイドに固定されており、図1の矢印で示す走査方向(X方向)に駆動が可能となっている。従って、光学くさび12の上面と光学くさび13の下面は共に光軸IXに対し垂直なままX方向に駆動され、X方向以外へはガイドにより移動できないようになっている。光学くさび12,13のそれぞれの位置は、例えばリニアエンコーダ、ポテンショメータ等の位置センサにより計測され、主制御系30で設定された目標値に従い、光学部材制御系14のモータ等よりなる駆動機構により位置決めされる。
【0034】
なお、光学くさび12,13の大きさ、光学くさび12,13同士の間隔、並びに光学くさび12,13のレチクルRと投影光学系PLとの間の配置については特に制限はないが、光学くさび12,13の大きさについては撓むことのない厚さで且つ重量的に容易に駆動できる程度の大きさで形成すればよい。但し、光学くさび12,13の配置については、ディストーション以外の収差への影響を小さくするためには、レチクルRの近くに配置することが好ましい。
【0035】
次に、像歪補正体31により等方的像歪を制御する原理につき図4〜図6を参照して詳しく説明する。
図4は、本例における等方的像歪の補正原理を模式的に説明する図を示し、図4(a)は光学くさび12,13がX方向に関し同位置にある状態、図4(b)は光学くさび12,13をそれぞれ−X方向及びX方向にずらした状態を示している。また、図5は本例における等方的像歪の一例を示し、図6は実際の像歪の補正結果の一例を示している。
【0036】
投影光学系PLを両側テレセントリックであるとすると、本来はレチクルRから投影光学系PLへ向かう主光線は全て光軸IXに平行であるはずであるが、実際は除去できない収差(瞳収差等)により、レチクルRと投影光学系PLとの間の主光線は一部の像高では僅かに傾斜している。投影光学系の中には厳密な意味での両側テレセントリック(開口絞りが像空間焦点にある)ではないが、倍率変化成分がうまく相殺されるように設計された投影光学系もある。しかしながら、ディストーションの変化という面に関しては同等であり、このような投影光学系に対しても全く同一の効果が得られる。
【0037】
これらの投影光学系では通常、図4(a)及び図4(b)に示すように、レチクルRのパターン面の有効照明領域(投影光学系の有効露光フィールドと共役な領域)の中央部及び周辺を通過する主光線NL0,NL1,NL2はほぼ光軸IX(図3参照)に平行になるように調整されるため、有効照明領域の左右の中間での主光線IL1,IL2は通常光軸IXに対して傾いている。このため、光学くさび12,13を通過した主光線IL1,IL2の投影光学系PLの最上部レンズ15に入射する位置が外側にそれぞれΔa1 ,Δa2 だけシフトする。この場合、光軸IXに平行な主光線NL0,NL1,NL2もX方向に少しシフトする。具体的に、光学くさび12,13のそれぞれ下面及び上面の水平面に対する傾斜角Δθと、光学くさび12の下面から光学くさび13の上面までの間隔(これをg(x)とする)の変化量とに応じて主光線NL0,NL1,NL2が初期状態よりX方向に同じ量だけ横シフトするが、傾斜角Δθ及び間隔g(x)の変化量が小さいときにはそのシフト量はわずかである。但し、このシフト量によって、例えばオフ・アクシス方式のアライメント系を用いた場合の検出中心と露光フィールドの中心とのオフセット量である所謂ベースラインが変化して、アライメント精度が悪化する。そこで、光学くさび12,13のX方向への駆動量から間隔g(x)を求め、この間隔g(x)の変化量及び傾斜角Δθより主光線NL0,NL1,NL2の初期状態からのシフト量を求め、このシフト量でそのベースラインを補正することが望ましい。次に、近似的に投影光学系PLの最上部レンズ15に入射する主光線の位置が中間像高のみX方向にシフトするものとし、以下、主光線IL1,IL2のみについて説明する。
【0038】
なお、図3より明らかなように実際の照明領域IARは走査方向(X方向)に短いため、照明領域IAR内のX方向でのディストーションの発生量及び補正量は僅かでよい。それに対して、照明領域IARは非走査方向(Y方向)に長いため、本例のように等方的な歪みの補正機構は非走査方向(Y方向)へのディストーションの補正に特に有効である。また、以下の説明はX方向について行うが、効果は等方的であるため、Y方向のディストーションも同様である。
【0039】
図4(a)において、光学くさび12,13の屈折率をnとして、光学くさび12,13の間隔をg0 とすると、光学くさび12の上面から光学くさび13の下面までの光路長は次のようになる。
光路長の初期値=(L0 −g0 )n+g0
次に、光学くさび12,13をそれぞれ左右に移動させて、図4(a)の点P及び点QがそれぞれX方向に−x及びxだけ移動した状態を図4(b)とする。この図4(b)において、光学くさび12,13の間隔をg(x)とすると、傾斜角Δθが小さいとしてほぼ次の関係が成立する。
【0040】
g(x)=g0 +2x・Δθ
従って、光学くさび12の上面から光学くさび13の下面までの光路長は次のようになる。
【0041】
ここで、光学くさび12,13の屈折率nは1より大きい(例えば1.5程度)ため、上記の式より図4(b)の状態では、主光線IL1,IL2は図4(a)の状態に比較して通過する光路長が短くなる。このため、投影光学系PLの最上部レンズ15に入射する主光線IL1,IL2のシフト量Δa3 ,Δa4 はそれぞれ図4(a)のシフト量Δa1 ,Δa2 に比較して小さくなる。上述の光路長の式はXY平面内で同一であるため、光軸IXに関して非走査方向(Y方向)に離れている光束のシフト量も同じように変化する。
【0042】
ここで、図4(a)及び図4(b)の状態でのディストーション曲線をそれぞれ図5の曲線a及び曲線bとする。図5において、縦軸はY方向への像高h、即ちレチクル側での照明光の通過位置(光軸からのY方向への距離)に対応する変数であり、横軸はその像高hでのY方向へのディストーションΔYを示す。なお、ディストーションは等方的であるため、X方向への像高がhの位置でのX方向へのディストーションΔXも図5と同様である。このような場合には、ディストーション曲線が図5の曲線aと曲線bとの中間程度となるように、即ち光学くさび12,13の位置を図4(a)と図4(b)とのほぼ中間の状態に設定することにより、投影像のY方向及びX方向のディストーションをほぼ0にすることができる。但し、通常ディストーションのみ変動することはなく、倍率成分も変化するため、図5の曲線aと曲線bとの中間の状態に調整すると、ディストーション曲線は図6の曲線cのように変化する。即ち、或る程度の倍率誤差が残ってしまうことがある。しかし、本実施例では倍率成分とディストーション成分とはそれぞれ独立の補正機構で補正するため、良好に補正が行える。
【0043】
次に、他の補正項目((ロ)投影倍率、(ハ)デフォーカス、及び(ニ)像面湾曲)の補正機構について簡単に説明する。(ロ)の投影倍率及び(ニ)の像面湾曲の補正については、投影光学系PLを構成するレンズのうち最上部レンズ15、及び次のレンズ16を光軸方向へ駆動させる方式を本実施例では採用する。図1において、最上部レンズ15はホルダ18に固定され、またレンズ16はホルダ19に固定されている。ホルダ18とホルダ19とは伸縮自在な駆動素子20を介して接続されている。駆動素子20としては例えばピエゾ素子が用いられ、駆動素子20は円周上に約2〜4個配置される。また、ホルダ19は、投影光学系PLの鏡筒本体と駆動素子21を介して接続されている。駆動コントローラ22は主制御系30からの指令に応じて、駆動素子20及び21を駆動する。通常、駆動素子20,21の伸縮量は位置センサ(不図示)によりフィードバック制御される。最上部レンズ15及び次のレンズ16の光軸方向への移動により、各々投影倍率と像面湾曲とが変化する。所望の投影倍率、像面湾曲の特性を得たいときは、これらの特性に関する2元連立方程式を解くことにより、最上部レンズ15、レンズ16各々の駆動量を決定する。また、(ハ)のデフォーカスの補正に関しては、前記のウエハ位置検出系の受光光学系27内の平行平板ガラスの角度を調整し、所望の位置にウエハWを位置合わせすればよい。
【0044】
以上の通り(イ)のディストーションの補正は光学くさび12,13の位置により、(ロ)の投影倍率及び(ニ)の像面湾曲の補正は最上部レンズ15、次のレンズ16の駆動により、そして(ハ)のデフォーカスの補正は受光光学系27のオフセット調整で行うことができる。(イ)、(ロ)、及び(ニ)を補正したことにより発生するデフォーカスも合わせて(ハ)の受光光学系27で補正すれば全てを補正できる。(ロ)〜(ニ)の補正法に関しては本実施例の他に種々考案されており、何れの方法を用いてもよいし、必要がなければ用いなくてもよい。他の方法としては、投影光学系PLの所定のレンズ間隔内部の空気圧を変化させる方法、又は光源1の波長を変化させる方法等がある。
【0045】
次に、前記の補正手段に対する目標値の決め方、つまり補正対象の変化量の検知手段について説明を行う。各補正対象に対する検知手段は殆ど同じであるので、(イ)のディストーションを一例として説明を行う。ディストーションは、代表的には(ホ)大気圧変化、(ヘ)照明条件の変化、(ト)投影光学系の照明光吸収、及び(チ)レチクルの照明光吸収により変化する。この他にも複数の露光装置をミックスして使用する場合、ウエハの前層への露光に使用した露光装置のディストーションに合わせるようにこれから使用する露光装置のディストーションを変化させる場合もある。
【0046】
先ず、(ホ)の大気圧変化に対しては、環境センサ29により大気圧の変化が測定され、測定結果が主制御系30に送られる。通常、大気圧変化とディストーション変化とは比例関係にあるため、予め光学シミュレーション、実験等で求めた比例定数より、大気圧変化からディストーションの変化分が計算できる。この他気温、湿度等に関しても同様にディストーションの変化分が計算できる。
【0047】
次に、(ヘ)の照明条件の変化に関して、照明条件によりレチクルRからの光束の投影光学系PL内部での光路が異なってくるため、投影光学系PLに残存する収差の影響を受けることによりディストーションが発生する。これに対しては、ターレット3の位置を主制御系30に知らせることにより照明条件が分かるため、これも予め実験等で求めておいたディストーションの変化量から求まる。投影光学系PL内部の光路が変化する条件としては、他にレチクルRのパターンの微細度、あるいは位相シフターの有無による回折光の角度の差、あるいは投影光学系PLの瞳面の絞り(NA絞り)の大きさ、あるいは瞳面での瞳フィルターPFの有無がある。これらに関しても同様に予めディストーション変化との関係を求めておけばよい。また他の方法として、投影光学系PLの瞳面の光強度分布を直接測定するという方法も考えられる。これは予め瞳面光強度分布とディストーション変化との関係を求めておき、この求めておいた関係を実測値と比較することによりディストーションを求める方法である。瞳面での光強度分布の測定方法としては、瞳面にセンサを挿入する方法や、像面上のセンサで光量を測定しながら瞳面の絞りを開閉する方法等が考えられる。
【0048】
次に、(ト)の投影光学系の照明光吸収の補正を行う際には、ウエハステージWST上の光電センサ28でレチクルRの透過率を求め、光電センサ24で光源1の光強度を求めることにより、投影光学系PLに入射する光エネルギー量を求める。更に、ウエハWから反射し再び投影光学系PLに入射する光エネルギーも光電センサ25により測定できる。そして、入射する光エネルギーとディストーションとの変化特性も予め実験等で求め、微分方程式等の形で記憶しておけば、計算により照明光吸収によるディストーション量を求めることができる。
【0049】
次に、(チ)のレチクルの照明光吸収に関しては、(ト)と同様にウエハステージWST上の光電センサ28によりレチクルRの透過率、つまりレチクルRのパターン密度を求めることができ、光電センサ24よりレチクルRに入射する光強度が求まる。レチクルRの照明光吸収が起こるのは透過部でなくパターン部であるため、パターン密度とパターンの光吸収率とが分かれば、レチクルRが吸収する熱量が求まる。パターンの光吸収率はパターンの材質で決まるため、予め入力しておけばよい。また、(ト)と同様に吸収した光エネルギーに対するディストーションの変化特性は予め実験等で求めておき、微分方程式等の形で記憶しておけばよい。以上のように(ホ)、(ヘ)、(ト)、及び(チ)により発生するディストーション量が求まる。よって補正しなければならないディストーション量は(ホ)〜(チ)の和で求まる。
【0050】
上記の方法では、ディストーションを変化させる要因を測定して、ディストーション変化量を計算で求めたが、直接ディストーションを測定する方法も考えられる。それにつき図7を参照して説明する。
図7(a)は、像歪を測定する場合のレチクルR上のマークを示し、この図7(a)において、ディストーションを直接測定するためにレチクルRのパターン領域PAの外に位置測定用のマークMKを複数描いておき、照明領域IARでマークMKのみを照明し、そのマークの像の位置をウエハステージWST上に設けた光電センサで測定して求める。ウエハステージWST上の光電センサとしては、例えばCCD等の2次元あるいは1次元の撮像素子が使用でき、この場合はこの撮像素子でマークMKの像の位置を画像処理で測定する。また、その光電センサとして、スリットとこのスリットを介してマークMKの像を受光する受光素子とを用い、この受光素子の信号よりスリットの位置とマークの位置との相対位置を求める方法等も知られている。なお、図7(a)のマークMKで計測できるのはY方向へのディストーションであるが、X方向へのディストーションも同じである。これらの方法は、測定に時間がかかることもあり頻繁に実施できないため、前記の計算による方法と併用し計算誤差を補正していく方法とすればより効果がある。
【0051】
図7(b)には、レチクルRのマークMKを使用しない方法の例を示している。レチクルRのマークMKには描画時の位置誤差があり、それはレチクル毎に異なるため正確なディストーションの計測ができない。そのため、図7(b)の例ではレチクルRのそばにマーク板MKPを設け、そのマーク板MKP上の複数のマークMKAを形成しておく。複数のマークMKA同士の間隔は予め厳密に位置を測定しておけばよく、またマーク板MKPはレチクルRを露光時に等速でスキャンするための助走エリアに設ければ特に新たな場所は必要としない。
【0052】
以上によりディストーションの変化量が求まるため、このディストーションの変化量を打ち消すように光学くさび12,13の位置を変えてやればよい。
なお、本例では(イ)ディストーションと(ロ)投影倍率とを独立に補正したが、投影光学系PLが完全にレチクルR側でテレセントリックでない場合、光学くさび12,13の移動により倍率成分とディストーション成分とが同時に変化する。また、投影光学系PLのレンズ15,16の駆動によっても倍率成分とディストーション成分とが同時に変化するが、これらの成分比が異なれば、連立方程式で最適な駆動量を求めることにより独立に補正することが可能である。従って、本例の方法は両側テレセントリックでない投影光学系にも適用することができる。
【0053】
以上、本例の投影露光装置によれば、光軸IX方向に厚さが連続的に変化する像歪補正体31の光学くさび12,13を光軸IX方向に垂直な方向に移動することにより主光線が通過する像歪補正体31の厚さが変化し、レチクルRと投影光学系PLとの間の光路長を変化させることができる。また、像歪補正体31がレチクルRと投影光学系PLとの間に配置されており、他の光学部材(レンズ)等を介していないため、これらを介することによる諸収差が発生しない。従って、像歪補正体31の使用に伴う光路長の変化により発生する収差は、他の光学部材の間隔を変更する場合の収差より小さい。これにより、等方的像歪(所謂、糸巻型、樽型のディストーション)を他の収差から独立に変化させることができる。また、本例では光学くさび12,13を走査方向(X方向)に移動していると共に、レチクルRの照明領域IARは走査方向に短いため、光学くさび12,13を小型化できる利点がある。また、通常光学くさび12,13の厚さの走査方向への変化により像の走査方向への横ずれが発生するが、本例のような走査型露光装置では走査方向に短いスリット状の照明領域を用いるため、光学くさび12,13の走査方向の厚さの変化による影響を小さくすることができる。
【0054】
更に、本例の方法によればレチクルR及び投影光学系PL自体を物理的に駆動しなくてよいため、本例のような走査型露光装置でも、装置の剛性が低下するといった不都合も発生しない。
また、像歪補正体31は厚さが連続的に変化する光学くさび12,13を使用しているため、その厚さが変化する走査方向に移動することにより照明光が通過する部分の厚さを連続的に変化させることができる。従って、連続的に像歪を補正できる。また、その厚さの変化(傾斜角Δθ)を緩やかにしておけば、光学くさび12,13の位置決めは厳密に行わなくても像歪補正体31の厚さを厳密に制御できる。特に、像歪補正体31として、厚さが連続的に変化する2枚の光学くさび12,13を使用し、光学くさび12のレチクルRに対向する上面と、光学くさび13の投影光学系PLに対向する下面とが共に平行平面であるために、光学くさび12,13の位置決めは3次元的にそれほどの精度を必要としない。従って、レチクルRや投影光学系PLそのものを駆動するときの位置決め精度に比較してはるかに緩やかでよく、低コストで且つ光学性能への影響を心配することなく像歪補正が実現できる。
【0055】
なお、光学くさび12,13の傾斜角Δθが大きく、走査方向への移動距離が大きい場合、その移動に伴って照明光ILの通過する厚さが大きく変化し、球面収差が発生する。従って、光学くさび12,13の傾斜角Δθ及び移動距離は、球面収差が発生しない範囲で設定する必要がある。この場合、投影光学系PLとウエハWとの間に球面収差補正用の光学くさびを設けて球面収差を補正するようにしてもよい。
【0056】
また、本例では光学くさび12,13を光軸IXに垂直な方向(X方向)に移動するようにしたが、この場合光学くさび12,13の間のギャップ(隙間)が変化する。傾斜角Δθが大きく、且つこのギャップが大きく変化すると、上述のように像の横ずれが許容値を超えて大きくなる。そのため、例えば光学くさび12,13の間のギャップを一定にして移動させる(即ち、光学くさび12,13をその斜面にほぼ沿って相対移動させる)移動機構を設けることが望ましい。又は、前述したように像の横ずれ量を計算で求めて、アライメントにあたってはその横ずれ量をオフセットとしてベースラインに加えるようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の投影露光装置に使用される像歪補正体の変形例について図8〜図10を参照して説明する。先ず、第1の変形例について図8を参照して説明する。本例は、図1の光学くさび12,13に相当する光学部材のうち駆動するものをどちらか一方に限ったものである。
図8(a)は、本例の像歪補正体の構成を示し、この図8(a)において、像歪補正体81は、レチクルRに近い光学くさび82及び投影光学系PLに近い光学くさび83から構成され、固定された光学くさび82に対して光学くさび83を相対的に移動する。本例の場合は、両方の光学くさび82,83は同一の大きさではなく、光軸IXから対称に離れた主光線に対して図1の実施例と同様の光路長の変化を与えるために、光学くさび83は大きく形成されている。また、図1の実施例と同様に光学くさび82の上面と光学くさび83の下面とは光軸IXに垂直な平面で形成されており、光学くさび83を主制御系30により光学部材制御系14を介して走査方向(X方向)に駆動することにより光学くさび82,83の間隔g1 を変化させ、結果として光路長を変化させてディストーションを補正する。その他の構成は図1の実施例と同様である。
【0058】
なお、光学くさび82の上面は光軸IXに垂直な平面であるが、図8(a)の点線に示すように上面を不規則な波状に研磨することにより、非等方的な不規則ディストーションの補正部材として使用することができる。
また、図8(b)に示すように、一方の光学くさびの投影光学系に対向する表面を曲率をもつレンズで構成してもよい。この図8(b)において、像歪補正体84はレチクルRに対向する光学くさび85及び投影光学系に対向する光学部材86から構成されている。光学部材86は、上表面は光学くさび85の下面と平行な傾斜した面を有しているが、投影光学系PLに対向する下面は曲率をもたせたレンズとして形成したものである。この場合、像歪補正体84を通過する主光線の光路長を同一にする必要があり、光学くさび85の上表面と光学部材86の下表面の左右の端部との間隔d1 ,d2 は同一になるように形成されている。本例では、光学くさび85を固定した光学部材86に対して相対的に移動して間隔g2 ひいては光路長を変えることにより、ディストーションを補正する。
【0059】
図8(a)及び図8(b)に示す像歪補正体は、図1の実施例に対し駆動する光学くさび83,85の長さ及び駆動量は大きくなるが、駆動部が1つで済み、位置決め精度も半分でよい利点と、駆動しない光学くさび又は光学部材を他の用途に使用できる利点がある。
次に、像歪補正体の第2の変形例について図9を参照して説明する。本例は、像歪補正体を1個の光学くさびだけで構成したものである。
【0060】
図9は、本例の像歪補正体の構成を示し、この図9において像歪補正体91は走査方向(X方向)に1つの長い光学くさびから構成されている。この像歪補正体91の投影光学系PLに対向する面は光軸IXに垂直に形成され、レチクルRに対向する反対側の面は傾斜角をもたせて形成されている。この傾斜角度は図3の照明領域IAR内での走査方向での厚さの差が無視でき、且つ傾斜面が結像特性等に悪影響を及ぼさない程度であることが必要である。この方法によれば像歪補正体91の駆動距離が長くなるが、駆動部が1つで済むという利点がある。
【0061】
次に、像歪補正体の第3の変形例について図10を参照して説明する。本例は、像歪補正体として光学くさびを用いず、厚さの異なる複数の平行平板を用いてディストーションを補正するものである。
図10は、本例の像歪補正体を説明するための図を示し、この図10において、像歪補正体104はそれぞれ厚さの異なる平行平板ガラスからなる3個の光学部材101〜103から構成されている。これらの光学部材101〜103を必要に応じ光学部材制御系14Aにより交換して光路長を変えることによりディストーションを補正する。本例の方法によれば、連続的な補正が行えず、光学部材の数は増えるが、光学部材を傾斜面に加工しなくてよいと共に、位置決め精度も粗くてよいため、トータルコストが抑えられる利点がある。
【0062】
なお、上述実施例は本発明を走査露光型の投影露光装置に適用したものであるが、本発明はステッパーのような一括露光型の投影露光装置で等方的像歪を補正する場合にも適用できる。このように、一括露光型に図1の1対の光学くさび12,13を適用する場合、レチクル上の矩形のパターン領域の短辺方向に沿ってその光学くさび12,13の相対移動方向を設定することが望ましい。これによって、光学くさび12,13が小型化できるからである。
【0063】
このように本発明は上述実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【0064】
【発明の効果】
本発明の投影露光装置によれば、マスクと基板との間に光軸方向の厚さ可変の光透過性基板を配置し、その厚さを変更する光路長切換手段を設けているため、基板とマスクとの間の光路長を、マスクを移動することなく変化させることができる。そのため、マスクを保持するステージの剛性を下げることなく、主に等方的像歪のみを補正できるという利点がある。更に、マスクを移動するときのような高精度な位置決めを必要とせず、単純な装置構成で等方的像歪を補正できる。
【0065】
また、光透過性基板が1枚又は複数枚の光学くさびよりなり、光路長切換手段が光学くさびの移動手段である場合には、単純な移動動作で連続的に像歪を補正できる利点がある。
また、投影露光装置が走査型の投影露光装置であり、且つ光学くさびの移動方向が走査方向である場合には、等方的像歪みを補正するためにマスク自体を物理的に駆動しなくてもよいため、特に装置全体として高い剛性が要求される走査型の投影露光装置に対して効果的である。また、走査方向に対しては照明領域又は露光領域の幅が狭いため、駆動量も含めて光学くさびの形状を小型化できる利点がある。
【0066】
また、光透過性基板が複数の光透過性基板からなり、光路長切換手段が交換手段である場合には、補正は不連続となるが装置構成は簡単になる利点がある。
また、マスクと基板との間に配置された光学くさびの上面を不規則な波状に研磨することによって、非等方的な不規則ディストーションの補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による投影露光装置の一実施例を示す一部を切り欠いた概略構成図である。
【図2】図1の照明条件切り換え用のターレット3の説明図である。
【図3】図1の投影露光装置におけるレチクルR及びウエハWの走査状態を示す斜視図である。
【図4】図1の実施例における等方的像歪の補正原理の模式的な説明図である。
【図5】図4の各状態に対応するディストーションの状態を示す図である。
【図6】図4の中間状態に設定した場合のディストーション(倍率誤差を含む)の状態を示す図である。
【図7】(a)は像歪を測定するためのレチクル上のマークを示す図、(b)は像歪を測定するためのレチクルとは別のパターン板上のマークを示す図である。
【図8】実施例の像歪補正体の第1の変形例を示す図である。
【図9】実施例の像歪補正体の第2の変形例を示す図である。
【図10】実施例の像歪補正体の第3の変形例を示す図である。
【符号の説明】
R レチクル
PL 投影光学系
W ウエハ
IL 照明光
IX 光軸
9 レーザ干渉計(レチクル用)
11 レーザ干渉計(ウエハ用)
31,81,84,91,104 像歪補正体
12,13,82,83,85,86 光学くさび
86,101〜103 光学部材
14 光学部材制御系
30 主制御系
30A ステージ制御系
24,25,28 光電センサ
29 環境センサ
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば半導体集積回路や液晶デバイス等をフォトリソグラフィー工程で製造する際に使用される投影露光装置に関し、特に投影光学系による投影像のディストーション等の結像特性を補正する機構を備えた投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりこの種の投影露光装置では、レチクル(又はフォトマスク等)の微細なパターンを高い解像度でフォトレジストが塗布されたウエハ(又はガラスプレート等)上に投影するため、更には既にウエハ上に形成されているパターン上に高い重ね合わせ精度でレチクルのパターンを投影するために、投影光学系による投影像の結像特性を常に高精度に維持することが求められている。この場合投影光学系の周囲の大気圧、気温等の環境変化、レチクル若しくは投影光学系の照明光吸収による形状変化、レチクルの照明方法の切り換え、又は所謂位相シフトマスク等を使用する場合のようなレチクル上のパターンの変化等により、その結像特性が次第に変化してしまうことがある。なおここで、そのレチクルの照明方法の切り換えとは、通常の照明方法から、例えば輪帯照明法又は変形光源法等に切り換えることを言う。
【0003】
そこで、従来は、これらの環境変化の量等を測定し、この測定結果から結像特性の変化量を予測し、この予測された変化量を相殺するように結像特性を補正するようにしていた。また、従来の結像特性の補正対象は主に投影像のデフォーカスと投影倍率との2種類であった。これらを補正するため、例えばデフォーカスに関しては、投影光学系とウエハとの間隔を一定に保つ機構(オートフォーカス機構)においてフォーカス位置の目標値を補正していた。また、投影倍率の補正に関しては、投影光学系の内部のレンズ間を密封してその内部圧力を変える手法、又は投影光学系の一部のレンズを光軸方向に移動させる手法等が提案されている。
【0004】
これに関して、近年では半導体集積回路のパターン等が益々微細化するのに伴ってデフォーカス、投影倍率だけでなく等方的像歪(所謂糸巻型、樽型のディストーション)の変化も無視できなくなりつつある。そして、その等方的像歪の補正手段としては、レチクルを投影光学系の光軸方向へ移動させる機構、投影光学系の一部のレンズを光軸方向に移動させる機構、露光用光源(レーザ光源等)の発光波長を変化させる機構、又は投影光学系の内部のレンズ間を密閉してその内部圧力を変える機構等が提案されている。
【0005】
上記の如き従来の等方的像歪の補正手段には以下のような不都合がある。先ず、等方的像歪は投影倍率とは異なり、高次の収差であるため、前記の補正手段のうち、投影光学系の一部のレンズを光軸方向に移動させる機構、露光用光源の発光波長を変化させる機構、又は投影光学系の内部の所定のレンズ間の圧力を変化させる機構を用いて補正を行うと、他の収差が変化し独立に等方的像歪のみを修正できないという不都合がある。この場合新たに発生した収差を別の機構で補正するものとすると、全体の補正機構が複雑化する。また、他の収差変化を許容範囲内として等方的像歪を補正しようとしても補正できる量が僅かになってしまい、所望の補正量が得られない。これに対して、レチクルを光軸方向に移動する手法によれば、他の収差に影響を与えることなく、等方的像歪のみを補正することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、等方的像歪を補正するためには、レチクルを光軸方向に移動する手法が簡便な手法と言える。
しかし、最近になって結像特性を維持したまま、より広フィールドの領域を露光する要求が高まり、これに応えるべくレチクルとウエハとを投影光学系に対して相対的にスキャンして露光する走査露光型の投影露光装置(スリットスキャン方式、又はステップ・アンド・スキャン方式等の投影露光装置)が提案されている。この方式では、レチクルをスリット状に照明することで投影光学系の有効露光フィールドの最大直径を使用でき、且つスキャンすることによりスキャン方向には光学系の制限を受けることなく露光フィールドを拡大できるという利点がある。また、投影光学系の一部しか使用しないので、照度均一性、ディストーション等の精度を出し易いという利点がある。しかしながら、この走査露光型の投影露光装置ではレチクルとウエハとを高精度に同期させてスキャンしなければならないため、レチクル用のステージは高い剛性が要求される。このようにレチクル側のステージの剛性を高めるためには、レチクルを光軸方向に移動させる機構は無いことが望ましい。また、ステッパーのような一括露光型の装置でも、レチクル側のステージの剛性は高いことが望ましい。
【0007】
また、直接レチクルを駆動するため、その駆動誤差は直接結像特性あるいは重ね合わせ精度に影響する。つまり、レチクルが光軸に垂直な平面から傾くと、像面が傾斜し、またディストーションが変化する。また、レチクルが横シフトすると、アライメントセンサと像の位置関係がずれて、重ね合わせ誤差が発生するという不都合がある。あるいは、これらの誤差を防ぐためレチクルの駆動系は非常に高度な制御技術、あるいは位置測定技術が必要となるため、製造コストがアップするという不都合がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑み、他の収差に悪影響を与えることなく、且つレチクルを移動させることなく等方的像歪を補正できる投影露光装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明による投影露光装置は、例えば図1に示すように、露光用の照明光(IL)のもとで、マスク(R)に形成された転写用のパターンの像を投影光学系(PL)を介して感光性の基板(W)上に投影する投影露光装置において、そのマスク(R)とその基板(W)との間に配置された厚さの変更自在な光透過性基板(12,13)と、この光透過性基板の厚さを切り換えることによりその照明光の光路長を変える光路長切換手段(14)と、を設け、その光路長切換手段(14)を介してその光透過性基板(12,13)の厚さを変更して投影像の像歪みを調整し、その光透過性基板としての光学くさびの一方の面は、非等方的な不規則ディストーションを補正するために不規則な波状に研磨されているものである。
【0010】
この場合、その光透過性基板の一例は、それぞれ厚さが連続的に変化する1枚又は複数枚の光学くさび(12,13)であり、この場合、その光路長切換手段はその光学くさび(12,13)を全体として又は相対的に移動する移動手段(14)であることが好ましい。
また、その投影露光装置が、そのマスク(R)を所定の走査方向(X方向)に走査するのと同期してその基板をその所定の走査方向に対応する方向(−X方向)に走査することによりそのマスク(R)のパターンを逐次その基板(W)上に露光する走査型露光装置である場合、その光路長切換手段(14)はその光学くさび(12,13)をその所定の走査方向に沿って移動することが好ましい。
【0011】
また、その光透過性基板の他の例は、例えば図10に示すように、厚さの異なる複数の光透過性基板(101〜103)であり、この場合、その光路長切換手段はその複数の光透過性基板(101〜103)を交換する交換手段(14A)である。
また、本発明による別の投影露光装置は、例えば図8に示すように、露光用の照明光(IL)のもとで、マスク(R)に形成された転写用のパターンの像を投影光学系(PL)を介して感光性の基板(W)上に投影する投影露光装置において、マスク(R)と基板(W)との間に配置された光学くさび(82)を備え、該光学くさびの上面を、非等方的な不規則ディストーションを補正するために不規則な波状に研磨するようにしたものである。
また、上記の本発明において、そのマスクの傍らに設けられたマーク板(MKP)と、その投影光学系を介して形成されるその像の歪みを測定するために、そのマーク板に設けられたマーク(MKA)の像をその投影光学系を介して検出する光電センサとをさらに備えてもよい。
【0012】
【作用】
斯かる本発明の投影露光装置によれば、厚さの変更可能な光透過性基板(12,13)の厚さを変えることで、マスク(R)と投影光学系(PL)との間の光路長を変化させ、マスク(R)や投影光学系(PL)を移動することなく等方的像歪を補正することができる。また、レンズ等の光学部材を介さず、マスク(R)と感光性の基板(W)との間に配置した光透過性基板(12,13)だけにより像歪を補正するので、レンズ等の光学部材を介することにより発生する諸収差が発生しない。従って、光透過性基板(12,13)を使用することにより等方的像歪(所謂糸巻型、樽型のディストーション)を他の収差から独立に変化させることができる。
【0013】
また、光透過性基板が光学くさび(12,13)よりなり、光路長切換手段が移動手段(14)である場合には、移動手段(14)により光学くさび(12,13)をその厚さが連続的に変化する方向に移動することにより光路長を連続的に変化させることができる。従って、連続的に像歪を補正できる。また、その厚さの変化を緩やかにしておけば、その光学部材の位置決めは厳密に行わなくても光路長を厳密に制御できる。
【0014】
特に、光透過性基板(12,13)の内最もレチクル(R)に近い光透過性基板(12)の上面と、基板(W)に近い光透過性基板(13)の下面とが共に平行平面に近い場合、光透過性基板(12,13)の位置決めは3次元的に緩やかでよく、マスク(R)や投影光学系(PL)そのものを駆動するときの位置決め精度に対し比較にならないぐらい緩やかでよい。
【0015】
また、投影露光装置が走査型の投影露光装置であり、光学くさび(12,13)を走査方向に沿って移動する場合には、走査方向に短いスリット状の照明領域を用いるため、光学くさび(12,13)の駆動量が少なくて済む。また、等方的像歪みを補正するために、マスク(R)あるいは投影光学系(PL)自体を物理的に駆動しなくてもよいため、特に装置全体として高い剛性が要求される走査型の投影露光装置に対して効果的である。
【0016】
また、光透過性基板が複数の光透過性基板(101〜103)からなり、光路長切換手段(14)が交換手段(14A)である場合には、補正は不連続となるが装置構成は簡単になる。この場合も、入れ換える光透過性基板(101〜103)が平行平面であれば、前述のように光透過性基板(101〜103)の位置決め精度は粗くてもよい。従って、更に装置の構成を単純にできる。
また、図8に示すように、マスク(R)と基板(W)との間に配置された光学くさび(82)の上面を不規則な波状に研磨することによって、非等方的な不規則ディストーションを補正することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明による投影露光装置の一実施例について図1〜図7を参照して説明する。本発明は、一括露光型(ステップ・アンド・リピート方式等)及び走査露光型(ステップ・アンド・スキャン方式等)の何れにも適用できる。以下では本発明の効果がより発揮される走査露光型に適用した場合につき説明する。但し、一括露光型への適用もほぼ同様である。なお、図1において、投影光学系PLの光軸IXに平行にZ軸を取り、その光軸IXに垂直な平面内で図1の紙面に平行にX軸を、図1の紙面に垂直にY軸を取る。
【0018】
図1は、本例の投影露光装置の概略構成を示し、この図1において、光源1としては、例えばKrFエキシマレーザやArFエキシマレーザ等のエキシマレーザ光源、銅蒸気レーザやYAGレーザの高波波発生装置、あるいは超高圧水銀ランプ等が使用される。光源1が超高圧水銀ランプの場合、光源1からは紫外の輝線(g線、i線等)よりなる照明光ILが射出される。照明光ILはコリメータレンズ、フライアイレンズ等よりなる照度均一化光学系2に入射し、照度分布がほぼ均一な光束に変換された後、照明条件切り換え用のターレット3に導かれる。
【0019】
図2は、図1のターレット3の正面図であり、この図2においてターレット3には90°間隔で絞り41〜44が配置されており、ターレット3を回転させて絞り41〜44を切り換えることにより、投影光学系PLのフーリエ変換面(瞳面)の光強度分布を変更することができる。この方法は、投影光学系の解像力を向上させる技術の一つであり、露光すべきパターンにより、これらの絞り41〜44の中から最適なものが選択される。
【0020】
図2の例では、円形の絞り41が通常の開口絞り(σ絞り)で、輪帯状の絞り42は輪帯照明を行うための絞りである。また、小さい円形の絞り43は光束の角度を絞るためのものであり、通常の照明系において、コヒーレンスファクタ(σ値)が小さい(例えばσ値が0.1〜0.4程度の)場合に相当する。4個の偏心した円形(又は十字型遮光部を有する)開口よりなる絞り44は、複数傾斜照明(変形光源)用の絞りで、一般にライン・アンド・スペースパターンを高解像度で露光するために使用されるものである。ターレット3はレチクルRのパターンに応じて、逐次最適なものに変更しながら使用される。
【0021】
さて、ターレット3の所定の絞りを通過した照明光ILは、その両側に光電センサ24,25を備えたビームスプリッタ4に達する。ビームスプリッタ4は、ほぼ全ての光束を通過させるが、一部の光束を反射するものであり、ターレット3側から来てビームスプリッタ4で反射された光束は光電センサ24へ入射し、ウエハW側から来てビームスプリッタ4で反射された光は光電センサ25に入射する。光電センサ24,25の検出信号は、後述するように投影光学系PLの収差変化を計算するのに用いられる。照明光ILは更にリレーレンズ、視野絞り、コンデンサレンズ等からなる照明光学系5を経て、ダイクロイックミラー6により反射され、半導体の回路パターン等が描かれたレチクルRを照明する。レチクルRはレチクルステージRST上に真空吸着され、このレチクルステージRSTは照明光学系5のダイクロイックミラー6により折り曲げられた光軸(投影光学系PLの光軸と一致している)IXに垂直な平面(XY平面)内で2次元的に微動してレチクルRを位置決めする。
【0022】
また、レチクルステージRSTはリニアモータ等で構成されたレチクル駆動部(不図示)により、X方向(走査方向)に所定の走査速度で移動可能となっている。レチクルステージRSTは、レチクルRの全面が少なくとも照明光学系の光軸ILを横切ることができるだけの移動ストロークを有している。レチクルステージRSTの端部には干渉計9からのレーザビームを反射する移動鏡8が固定されており、レチクルステージRSTの走査方向の位置は干渉計9によって、例えば0.01μm程度の分解能で常時検出されている。干渉計9からのレチクルステージRSTの位置情報はステージ制御系30Aに送られ、ステージ制御系30AはレチクルステージRSTの位置情報に基づき、レチクル駆動部(不図示)を介して、レチクルステージRSTを駆動する。不図示のレチクルアライメント系により所定の基準位置にレチクルRが精度良く位置決めされるように、レチクルステージRSTの初期位置が決定されるため、移動鏡8の位置を干渉計9で測定するだけで、レチクルRの位置が十分高精度に測定される。
【0023】
さて、レチクルRを通過した照明光ILは、一対の同形の光学くさび12,13からなる像歪補正体31に入射する。光学くさび12,13は共にレチクルRと同じような大きさで形成され、レチクルRを透過する照明光ILはすべて像歪補正体31の透過領域内を通過できるように構成されている。この像歪補正体31の光学くさび12,13を走査方向(X方向)にそれぞれ駆動することによりディストーションを補正する。この像歪補正体31については後で詳しく説明する。
【0024】
像歪補正体31を透過した照明光ILは、次に両側テレセントリックな投影光学系PLに入射し、投影光学系PLはレチクルRの回路パターンを縮小倍率β(例えば1/5あるいは1/4)で縮小した投影像を、その表面にフォトレジスト(感光材)が塗布されたウエハW上に形成する。
また、投影光学系PLの瞳面(レチクルRに対するフーリエ変換面)付近には光軸IX付近の光束を遮光する光学的フィルタ、即ち中心遮光型の瞳フィルタPFが着脱自在に設置されている。瞳フィルタPFは、特にコンタクトホールパターンを露光する際に解像度及び焦点深度を改善するものである。主制御系30が着脱装置30Bを介して瞳フィルタPFの着脱を制御する。更に本実施例の投影光学系PLには、結像特性の補正のための機構(15〜22)が取り付けられているが、これらの機構については後述する。
【0025】
図3は、図1のレチクルR及びウエハWの走査の状態を示す斜視図である。なお、図3では投影光学系PLは非テレセントリックであるかのように便宜上表現されているが、実際には投影光学系PLは両側(又は少なくともウエハ側)にテレセントリックである。本実施例の投影露光装置においては、図3に示すようにレチクルRの走査方向(X方向)に対して垂直な方向(Y方向)に長手方向を有する長方形(スリット状)の照明領域IARでレチクルRが照明され、レチクルRは露光時に−X方向(又は+X方向)に速度VR でスキャンされる。照明領域IAR(中心は光軸IX とほぼ一致)内のパターンは、投影光学系PLを介してウエハW上に投影され、スリット状の投影領域IAが形成される。
【0026】
ウエハWはレチクルRとは倒立結像関係にあるため、ウエハWは速度VR の方向とは反対の+X方向(又は−X方向)に、レチクルRに同期して、速度VW でスキャンされ、ウエハW上のショット領域SAの全面にレチクルRのパターンが逐次露光される。走査速度の比(VW /VR )は投影光学系PLの縮小倍率βに正確に一致したものになっており、レチクルRのパターン領域PAのパターンがウエハW上のショット領域SA上に正確に縮小転写される。照明領域IARの長手方向の幅は、レチクルR上のパターン領域PAよりも広く、遮光領域STの最大幅よりも狭くなるように設定され、レチクルRをスキャンすることによりパターン領域PA全面が照明されるようになっている。
【0027】
再び図1の説明に戻って、ウエハWはウエハホルダ7上に真空吸着され、ウエハホルダ7はウエハステージWST上に保持されている。ウエハホルダ7は不図示の駆動部により、投影光学系PLの最良結像面に対し、任意方向に傾斜可能で、且つ光軸IX方向(Z方向)に微動できる。また、ウエハホルダ7は光軸IXの回りの回転動作も可能である。一方、ウエハステージWSTは前述のスキャン方向(X方向)の移動のみならず、複数のショット領域内の任意のショット領域に随時移動できるよう、スキャン方向に垂直な方向(Y方向)にも移動可能に構成されており、ウエハW上の各ショット領域へスキャン露光する動作と、次のショット領域の露光開始位置まで移動する動作とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作を行う。モータ等のウエハステージ駆動部(不図示)はウエハステージWSTをX及びY方向に駆動する。ウエハステージWSTの端部には干渉計11からのレーザビームを反射する移動鏡10が固定され、ウエハステージWSTのXY平面内での位置は干渉計11によって、例えば0.01μm程度の分解能で常時検出されている。ウエハステージWSTの位置情報(又は速度情報)はステージ制御系30Aに送られ、ステージ制御系30Aはこの位置情報(又は速度情報)に基づいてウエハステージ駆動部を制御する。
【0028】
また、図1の装置にはウエハWの露光面に向けてピンホール像、あるいはスリット像を形成するための結像光束を光軸IXに対して斜め方向に供給する照射光学系26と、その結像光束のウエハWの露光表面での反射光束をスリットを介して受光する受光光学系27とからなる斜入射方式のウエハ位置検出系(焦点位置検出系)が、投影光学系PLを支える支持部(不図示)に固定されている。このウエハ位置検出系のより詳細な構成については、例えば特開昭60−168112号公報に開示されている。ウエハ位置検出系はウエハの露光面の投影光学系PLの最良結像面に対するZ方向の位置偏差を検出し、ウエハWと投影光学系PLとが所定の間隔を保つようにウエハホルダ7をZ方向に駆動するために用いられる。ウエハ位置検出系からのウエハ位置情報は、主制御系30を介してステージ制御系30Aに送られる。ステージ制御系30Aはこのウエハ位置情報に基づいてウエハホルダ7をZ方向に駆動する。
【0029】
なお、本実施例では投影光学系PLの最良結像面(結像面)が零点基準となるように、予め受光光学系27の内部に設けられた不図示の平行平板ガラス(プレーンパラレル)の角度が調整され、ウエハ位置検出系のキャリブレーションが行われるものとする。また、例えば特開昭58−113706号公報に開示されているような、被検面に平行光束を照射し、反射光の集光点の横ずれ量を検出する水平位置検出系を用いたり、あるいは投影光学系PLのイメージフィールド内の任意の複数の位置での焦点位置を検出できるようにウエハ位置検出系を構成する(例えば複数のスリット像をイメージフィールド内に投影する)ことによって、ウエハW上の所定領域の結像面に対する傾きを検出してもよい。この場合、ウエハホルダ7の傾斜角の調整によりレベリングが行われる。
【0030】
また、ウエハステージWST上には光電センサ28が設置され、投影光学系PLの付近には大気圧、気温、湿度等の測定を行う環境センサ29が設けられて、各々の検出信号が投影光学系PLの結像特性の変化を計算するのに用いられる。詳しくは後述する。
次に、本実施例における等方的像歪の補正機構を含めた結像特性補正機構について説明を行う。前記のように補正すべき結像特性の種類は、露光する線幅が小さくなるにつれより多くなる傾向にある。このため本実施例でも、(イ)等方的像歪(以下「ディストーション」ともいう)に加えて、(ロ)投影倍率、(ハ)デフォーカス、及び(ニ)像面湾曲の4種類を補正する場合の例を示す。
【0031】
先ず、(イ)のディストーションは、レチクルRと投影光学系PLとの間に配置された像歪補正体31を駆動して、レチクルRと投影光学系PLとの間の光路長を変更することにより行う。本実施例では、投影光学系はマスク側がテレセントリックか、又はテレセントリックでなくとも、光路長の変更に伴い倍率成分の変化しない光学系であるとする。
【0032】
像歪補正体31は、レチクルRに近い光学くさび12と、光学くさび12の下部に重ねられるように配置された光学くさび13とから構成されている。光学くさび12,13は共に両端の厚さが異なるほぼ同じ大きさのくさび状の平板ガラスからなり、光学くさび12の上面と光学くさび13の下面は共に光軸IXに対し垂直な平面で構成されている。また、光学くさび12の下面と光学くさび13の上面は互いに平行で、図1のように光軸IXに垂直な平面に対して傾斜している。このような構成を取ることにより、像歪補正体31のレチクルR及び投影光学系PLに対する間隔がそれほど厳密に要求されないという利点がある。つまり、像歪補正体31は平行平面板と等価であるため、大きく傾斜すること等がなければ殆ど投影像に対して影響がない。
【0033】
光学くさび12,13は各々不図示の駆動ガイドに固定されており、図1の矢印で示す走査方向(X方向)に駆動が可能となっている。従って、光学くさび12の上面と光学くさび13の下面は共に光軸IXに対し垂直なままX方向に駆動され、X方向以外へはガイドにより移動できないようになっている。光学くさび12,13のそれぞれの位置は、例えばリニアエンコーダ、ポテンショメータ等の位置センサにより計測され、主制御系30で設定された目標値に従い、光学部材制御系14のモータ等よりなる駆動機構により位置決めされる。
【0034】
なお、光学くさび12,13の大きさ、光学くさび12,13同士の間隔、並びに光学くさび12,13のレチクルRと投影光学系PLとの間の配置については特に制限はないが、光学くさび12,13の大きさについては撓むことのない厚さで且つ重量的に容易に駆動できる程度の大きさで形成すればよい。但し、光学くさび12,13の配置については、ディストーション以外の収差への影響を小さくするためには、レチクルRの近くに配置することが好ましい。
【0035】
次に、像歪補正体31により等方的像歪を制御する原理につき図4〜図6を参照して詳しく説明する。
図4は、本例における等方的像歪の補正原理を模式的に説明する図を示し、図4(a)は光学くさび12,13がX方向に関し同位置にある状態、図4(b)は光学くさび12,13をそれぞれ−X方向及びX方向にずらした状態を示している。また、図5は本例における等方的像歪の一例を示し、図6は実際の像歪の補正結果の一例を示している。
【0036】
投影光学系PLを両側テレセントリックであるとすると、本来はレチクルRから投影光学系PLへ向かう主光線は全て光軸IXに平行であるはずであるが、実際は除去できない収差(瞳収差等)により、レチクルRと投影光学系PLとの間の主光線は一部の像高では僅かに傾斜している。投影光学系の中には厳密な意味での両側テレセントリック(開口絞りが像空間焦点にある)ではないが、倍率変化成分がうまく相殺されるように設計された投影光学系もある。しかしながら、ディストーションの変化という面に関しては同等であり、このような投影光学系に対しても全く同一の効果が得られる。
【0037】
これらの投影光学系では通常、図4(a)及び図4(b)に示すように、レチクルRのパターン面の有効照明領域(投影光学系の有効露光フィールドと共役な領域)の中央部及び周辺を通過する主光線NL0,NL1,NL2はほぼ光軸IX(図3参照)に平行になるように調整されるため、有効照明領域の左右の中間での主光線IL1,IL2は通常光軸IXに対して傾いている。このため、光学くさび12,13を通過した主光線IL1,IL2の投影光学系PLの最上部レンズ15に入射する位置が外側にそれぞれΔa1 ,Δa2 だけシフトする。この場合、光軸IXに平行な主光線NL0,NL1,NL2もX方向に少しシフトする。具体的に、光学くさび12,13のそれぞれ下面及び上面の水平面に対する傾斜角Δθと、光学くさび12の下面から光学くさび13の上面までの間隔(これをg(x)とする)の変化量とに応じて主光線NL0,NL1,NL2が初期状態よりX方向に同じ量だけ横シフトするが、傾斜角Δθ及び間隔g(x)の変化量が小さいときにはそのシフト量はわずかである。但し、このシフト量によって、例えばオフ・アクシス方式のアライメント系を用いた場合の検出中心と露光フィールドの中心とのオフセット量である所謂ベースラインが変化して、アライメント精度が悪化する。そこで、光学くさび12,13のX方向への駆動量から間隔g(x)を求め、この間隔g(x)の変化量及び傾斜角Δθより主光線NL0,NL1,NL2の初期状態からのシフト量を求め、このシフト量でそのベースラインを補正することが望ましい。次に、近似的に投影光学系PLの最上部レンズ15に入射する主光線の位置が中間像高のみX方向にシフトするものとし、以下、主光線IL1,IL2のみについて説明する。
【0038】
なお、図3より明らかなように実際の照明領域IARは走査方向(X方向)に短いため、照明領域IAR内のX方向でのディストーションの発生量及び補正量は僅かでよい。それに対して、照明領域IARは非走査方向(Y方向)に長いため、本例のように等方的な歪みの補正機構は非走査方向(Y方向)へのディストーションの補正に特に有効である。また、以下の説明はX方向について行うが、効果は等方的であるため、Y方向のディストーションも同様である。
【0039】
図4(a)において、光学くさび12,13の屈折率をnとして、光学くさび12,13の間隔をg0 とすると、光学くさび12の上面から光学くさび13の下面までの光路長は次のようになる。
光路長の初期値=(L0 −g0 )n+g0
次に、光学くさび12,13をそれぞれ左右に移動させて、図4(a)の点P及び点QがそれぞれX方向に−x及びxだけ移動した状態を図4(b)とする。この図4(b)において、光学くさび12,13の間隔をg(x)とすると、傾斜角Δθが小さいとしてほぼ次の関係が成立する。
【0040】
g(x)=g0 +2x・Δθ
従って、光学くさび12の上面から光学くさび13の下面までの光路長は次のようになる。
【0041】
ここで、光学くさび12,13の屈折率nは1より大きい(例えば1.5程度)ため、上記の式より図4(b)の状態では、主光線IL1,IL2は図4(a)の状態に比較して通過する光路長が短くなる。このため、投影光学系PLの最上部レンズ15に入射する主光線IL1,IL2のシフト量Δa3 ,Δa4 はそれぞれ図4(a)のシフト量Δa1 ,Δa2 に比較して小さくなる。上述の光路長の式はXY平面内で同一であるため、光軸IXに関して非走査方向(Y方向)に離れている光束のシフト量も同じように変化する。
【0042】
ここで、図4(a)及び図4(b)の状態でのディストーション曲線をそれぞれ図5の曲線a及び曲線bとする。図5において、縦軸はY方向への像高h、即ちレチクル側での照明光の通過位置(光軸からのY方向への距離)に対応する変数であり、横軸はその像高hでのY方向へのディストーションΔYを示す。なお、ディストーションは等方的であるため、X方向への像高がhの位置でのX方向へのディストーションΔXも図5と同様である。このような場合には、ディストーション曲線が図5の曲線aと曲線bとの中間程度となるように、即ち光学くさび12,13の位置を図4(a)と図4(b)とのほぼ中間の状態に設定することにより、投影像のY方向及びX方向のディストーションをほぼ0にすることができる。但し、通常ディストーションのみ変動することはなく、倍率成分も変化するため、図5の曲線aと曲線bとの中間の状態に調整すると、ディストーション曲線は図6の曲線cのように変化する。即ち、或る程度の倍率誤差が残ってしまうことがある。しかし、本実施例では倍率成分とディストーション成分とはそれぞれ独立の補正機構で補正するため、良好に補正が行える。
【0043】
次に、他の補正項目((ロ)投影倍率、(ハ)デフォーカス、及び(ニ)像面湾曲)の補正機構について簡単に説明する。(ロ)の投影倍率及び(ニ)の像面湾曲の補正については、投影光学系PLを構成するレンズのうち最上部レンズ15、及び次のレンズ16を光軸方向へ駆動させる方式を本実施例では採用する。図1において、最上部レンズ15はホルダ18に固定され、またレンズ16はホルダ19に固定されている。ホルダ18とホルダ19とは伸縮自在な駆動素子20を介して接続されている。駆動素子20としては例えばピエゾ素子が用いられ、駆動素子20は円周上に約2〜4個配置される。また、ホルダ19は、投影光学系PLの鏡筒本体と駆動素子21を介して接続されている。駆動コントローラ22は主制御系30からの指令に応じて、駆動素子20及び21を駆動する。通常、駆動素子20,21の伸縮量は位置センサ(不図示)によりフィードバック制御される。最上部レンズ15及び次のレンズ16の光軸方向への移動により、各々投影倍率と像面湾曲とが変化する。所望の投影倍率、像面湾曲の特性を得たいときは、これらの特性に関する2元連立方程式を解くことにより、最上部レンズ15、レンズ16各々の駆動量を決定する。また、(ハ)のデフォーカスの補正に関しては、前記のウエハ位置検出系の受光光学系27内の平行平板ガラスの角度を調整し、所望の位置にウエハWを位置合わせすればよい。
【0044】
以上の通り(イ)のディストーションの補正は光学くさび12,13の位置により、(ロ)の投影倍率及び(ニ)の像面湾曲の補正は最上部レンズ15、次のレンズ16の駆動により、そして(ハ)のデフォーカスの補正は受光光学系27のオフセット調整で行うことができる。(イ)、(ロ)、及び(ニ)を補正したことにより発生するデフォーカスも合わせて(ハ)の受光光学系27で補正すれば全てを補正できる。(ロ)〜(ニ)の補正法に関しては本実施例の他に種々考案されており、何れの方法を用いてもよいし、必要がなければ用いなくてもよい。他の方法としては、投影光学系PLの所定のレンズ間隔内部の空気圧を変化させる方法、又は光源1の波長を変化させる方法等がある。
【0045】
次に、前記の補正手段に対する目標値の決め方、つまり補正対象の変化量の検知手段について説明を行う。各補正対象に対する検知手段は殆ど同じであるので、(イ)のディストーションを一例として説明を行う。ディストーションは、代表的には(ホ)大気圧変化、(ヘ)照明条件の変化、(ト)投影光学系の照明光吸収、及び(チ)レチクルの照明光吸収により変化する。この他にも複数の露光装置をミックスして使用する場合、ウエハの前層への露光に使用した露光装置のディストーションに合わせるようにこれから使用する露光装置のディストーションを変化させる場合もある。
【0046】
先ず、(ホ)の大気圧変化に対しては、環境センサ29により大気圧の変化が測定され、測定結果が主制御系30に送られる。通常、大気圧変化とディストーション変化とは比例関係にあるため、予め光学シミュレーション、実験等で求めた比例定数より、大気圧変化からディストーションの変化分が計算できる。この他気温、湿度等に関しても同様にディストーションの変化分が計算できる。
【0047】
次に、(ヘ)の照明条件の変化に関して、照明条件によりレチクルRからの光束の投影光学系PL内部での光路が異なってくるため、投影光学系PLに残存する収差の影響を受けることによりディストーションが発生する。これに対しては、ターレット3の位置を主制御系30に知らせることにより照明条件が分かるため、これも予め実験等で求めておいたディストーションの変化量から求まる。投影光学系PL内部の光路が変化する条件としては、他にレチクルRのパターンの微細度、あるいは位相シフターの有無による回折光の角度の差、あるいは投影光学系PLの瞳面の絞り(NA絞り)の大きさ、あるいは瞳面での瞳フィルターPFの有無がある。これらに関しても同様に予めディストーション変化との関係を求めておけばよい。また他の方法として、投影光学系PLの瞳面の光強度分布を直接測定するという方法も考えられる。これは予め瞳面光強度分布とディストーション変化との関係を求めておき、この求めておいた関係を実測値と比較することによりディストーションを求める方法である。瞳面での光強度分布の測定方法としては、瞳面にセンサを挿入する方法や、像面上のセンサで光量を測定しながら瞳面の絞りを開閉する方法等が考えられる。
【0048】
次に、(ト)の投影光学系の照明光吸収の補正を行う際には、ウエハステージWST上の光電センサ28でレチクルRの透過率を求め、光電センサ24で光源1の光強度を求めることにより、投影光学系PLに入射する光エネルギー量を求める。更に、ウエハWから反射し再び投影光学系PLに入射する光エネルギーも光電センサ25により測定できる。そして、入射する光エネルギーとディストーションとの変化特性も予め実験等で求め、微分方程式等の形で記憶しておけば、計算により照明光吸収によるディストーション量を求めることができる。
【0049】
次に、(チ)のレチクルの照明光吸収に関しては、(ト)と同様にウエハステージWST上の光電センサ28によりレチクルRの透過率、つまりレチクルRのパターン密度を求めることができ、光電センサ24よりレチクルRに入射する光強度が求まる。レチクルRの照明光吸収が起こるのは透過部でなくパターン部であるため、パターン密度とパターンの光吸収率とが分かれば、レチクルRが吸収する熱量が求まる。パターンの光吸収率はパターンの材質で決まるため、予め入力しておけばよい。また、(ト)と同様に吸収した光エネルギーに対するディストーションの変化特性は予め実験等で求めておき、微分方程式等の形で記憶しておけばよい。以上のように(ホ)、(ヘ)、(ト)、及び(チ)により発生するディストーション量が求まる。よって補正しなければならないディストーション量は(ホ)〜(チ)の和で求まる。
【0050】
上記の方法では、ディストーションを変化させる要因を測定して、ディストーション変化量を計算で求めたが、直接ディストーションを測定する方法も考えられる。それにつき図7を参照して説明する。
図7(a)は、像歪を測定する場合のレチクルR上のマークを示し、この図7(a)において、ディストーションを直接測定するためにレチクルRのパターン領域PAの外に位置測定用のマークMKを複数描いておき、照明領域IARでマークMKのみを照明し、そのマークの像の位置をウエハステージWST上に設けた光電センサで測定して求める。ウエハステージWST上の光電センサとしては、例えばCCD等の2次元あるいは1次元の撮像素子が使用でき、この場合はこの撮像素子でマークMKの像の位置を画像処理で測定する。また、その光電センサとして、スリットとこのスリットを介してマークMKの像を受光する受光素子とを用い、この受光素子の信号よりスリットの位置とマークの位置との相対位置を求める方法等も知られている。なお、図7(a)のマークMKで計測できるのはY方向へのディストーションであるが、X方向へのディストーションも同じである。これらの方法は、測定に時間がかかることもあり頻繁に実施できないため、前記の計算による方法と併用し計算誤差を補正していく方法とすればより効果がある。
【0051】
図7(b)には、レチクルRのマークMKを使用しない方法の例を示している。レチクルRのマークMKには描画時の位置誤差があり、それはレチクル毎に異なるため正確なディストーションの計測ができない。そのため、図7(b)の例ではレチクルRのそばにマーク板MKPを設け、そのマーク板MKP上の複数のマークMKAを形成しておく。複数のマークMKA同士の間隔は予め厳密に位置を測定しておけばよく、またマーク板MKPはレチクルRを露光時に等速でスキャンするための助走エリアに設ければ特に新たな場所は必要としない。
【0052】
以上によりディストーションの変化量が求まるため、このディストーションの変化量を打ち消すように光学くさび12,13の位置を変えてやればよい。
なお、本例では(イ)ディストーションと(ロ)投影倍率とを独立に補正したが、投影光学系PLが完全にレチクルR側でテレセントリックでない場合、光学くさび12,13の移動により倍率成分とディストーション成分とが同時に変化する。また、投影光学系PLのレンズ15,16の駆動によっても倍率成分とディストーション成分とが同時に変化するが、これらの成分比が異なれば、連立方程式で最適な駆動量を求めることにより独立に補正することが可能である。従って、本例の方法は両側テレセントリックでない投影光学系にも適用することができる。
【0053】
以上、本例の投影露光装置によれば、光軸IX方向に厚さが連続的に変化する像歪補正体31の光学くさび12,13を光軸IX方向に垂直な方向に移動することにより主光線が通過する像歪補正体31の厚さが変化し、レチクルRと投影光学系PLとの間の光路長を変化させることができる。また、像歪補正体31がレチクルRと投影光学系PLとの間に配置されており、他の光学部材(レンズ)等を介していないため、これらを介することによる諸収差が発生しない。従って、像歪補正体31の使用に伴う光路長の変化により発生する収差は、他の光学部材の間隔を変更する場合の収差より小さい。これにより、等方的像歪(所謂、糸巻型、樽型のディストーション)を他の収差から独立に変化させることができる。また、本例では光学くさび12,13を走査方向(X方向)に移動していると共に、レチクルRの照明領域IARは走査方向に短いため、光学くさび12,13を小型化できる利点がある。また、通常光学くさび12,13の厚さの走査方向への変化により像の走査方向への横ずれが発生するが、本例のような走査型露光装置では走査方向に短いスリット状の照明領域を用いるため、光学くさび12,13の走査方向の厚さの変化による影響を小さくすることができる。
【0054】
更に、本例の方法によればレチクルR及び投影光学系PL自体を物理的に駆動しなくてよいため、本例のような走査型露光装置でも、装置の剛性が低下するといった不都合も発生しない。
また、像歪補正体31は厚さが連続的に変化する光学くさび12,13を使用しているため、その厚さが変化する走査方向に移動することにより照明光が通過する部分の厚さを連続的に変化させることができる。従って、連続的に像歪を補正できる。また、その厚さの変化(傾斜角Δθ)を緩やかにしておけば、光学くさび12,13の位置決めは厳密に行わなくても像歪補正体31の厚さを厳密に制御できる。特に、像歪補正体31として、厚さが連続的に変化する2枚の光学くさび12,13を使用し、光学くさび12のレチクルRに対向する上面と、光学くさび13の投影光学系PLに対向する下面とが共に平行平面であるために、光学くさび12,13の位置決めは3次元的にそれほどの精度を必要としない。従って、レチクルRや投影光学系PLそのものを駆動するときの位置決め精度に比較してはるかに緩やかでよく、低コストで且つ光学性能への影響を心配することなく像歪補正が実現できる。
【0055】
なお、光学くさび12,13の傾斜角Δθが大きく、走査方向への移動距離が大きい場合、その移動に伴って照明光ILの通過する厚さが大きく変化し、球面収差が発生する。従って、光学くさび12,13の傾斜角Δθ及び移動距離は、球面収差が発生しない範囲で設定する必要がある。この場合、投影光学系PLとウエハWとの間に球面収差補正用の光学くさびを設けて球面収差を補正するようにしてもよい。
【0056】
また、本例では光学くさび12,13を光軸IXに垂直な方向(X方向)に移動するようにしたが、この場合光学くさび12,13の間のギャップ(隙間)が変化する。傾斜角Δθが大きく、且つこのギャップが大きく変化すると、上述のように像の横ずれが許容値を超えて大きくなる。そのため、例えば光学くさび12,13の間のギャップを一定にして移動させる(即ち、光学くさび12,13をその斜面にほぼ沿って相対移動させる)移動機構を設けることが望ましい。又は、前述したように像の横ずれ量を計算で求めて、アライメントにあたってはその横ずれ量をオフセットとしてベースラインに加えるようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明の投影露光装置に使用される像歪補正体の変形例について図8〜図10を参照して説明する。先ず、第1の変形例について図8を参照して説明する。本例は、図1の光学くさび12,13に相当する光学部材のうち駆動するものをどちらか一方に限ったものである。
図8(a)は、本例の像歪補正体の構成を示し、この図8(a)において、像歪補正体81は、レチクルRに近い光学くさび82及び投影光学系PLに近い光学くさび83から構成され、固定された光学くさび82に対して光学くさび83を相対的に移動する。本例の場合は、両方の光学くさび82,83は同一の大きさではなく、光軸IXから対称に離れた主光線に対して図1の実施例と同様の光路長の変化を与えるために、光学くさび83は大きく形成されている。また、図1の実施例と同様に光学くさび82の上面と光学くさび83の下面とは光軸IXに垂直な平面で形成されており、光学くさび83を主制御系30により光学部材制御系14を介して走査方向(X方向)に駆動することにより光学くさび82,83の間隔g1 を変化させ、結果として光路長を変化させてディストーションを補正する。その他の構成は図1の実施例と同様である。
【0058】
なお、光学くさび82の上面は光軸IXに垂直な平面であるが、図8(a)の点線に示すように上面を不規則な波状に研磨することにより、非等方的な不規則ディストーションの補正部材として使用することができる。
また、図8(b)に示すように、一方の光学くさびの投影光学系に対向する表面を曲率をもつレンズで構成してもよい。この図8(b)において、像歪補正体84はレチクルRに対向する光学くさび85及び投影光学系に対向する光学部材86から構成されている。光学部材86は、上表面は光学くさび85の下面と平行な傾斜した面を有しているが、投影光学系PLに対向する下面は曲率をもたせたレンズとして形成したものである。この場合、像歪補正体84を通過する主光線の光路長を同一にする必要があり、光学くさび85の上表面と光学部材86の下表面の左右の端部との間隔d1 ,d2 は同一になるように形成されている。本例では、光学くさび85を固定した光学部材86に対して相対的に移動して間隔g2 ひいては光路長を変えることにより、ディストーションを補正する。
【0059】
図8(a)及び図8(b)に示す像歪補正体は、図1の実施例に対し駆動する光学くさび83,85の長さ及び駆動量は大きくなるが、駆動部が1つで済み、位置決め精度も半分でよい利点と、駆動しない光学くさび又は光学部材を他の用途に使用できる利点がある。
次に、像歪補正体の第2の変形例について図9を参照して説明する。本例は、像歪補正体を1個の光学くさびだけで構成したものである。
【0060】
図9は、本例の像歪補正体の構成を示し、この図9において像歪補正体91は走査方向(X方向)に1つの長い光学くさびから構成されている。この像歪補正体91の投影光学系PLに対向する面は光軸IXに垂直に形成され、レチクルRに対向する反対側の面は傾斜角をもたせて形成されている。この傾斜角度は図3の照明領域IAR内での走査方向での厚さの差が無視でき、且つ傾斜面が結像特性等に悪影響を及ぼさない程度であることが必要である。この方法によれば像歪補正体91の駆動距離が長くなるが、駆動部が1つで済むという利点がある。
【0061】
次に、像歪補正体の第3の変形例について図10を参照して説明する。本例は、像歪補正体として光学くさびを用いず、厚さの異なる複数の平行平板を用いてディストーションを補正するものである。
図10は、本例の像歪補正体を説明するための図を示し、この図10において、像歪補正体104はそれぞれ厚さの異なる平行平板ガラスからなる3個の光学部材101〜103から構成されている。これらの光学部材101〜103を必要に応じ光学部材制御系14Aにより交換して光路長を変えることによりディストーションを補正する。本例の方法によれば、連続的な補正が行えず、光学部材の数は増えるが、光学部材を傾斜面に加工しなくてよいと共に、位置決め精度も粗くてよいため、トータルコストが抑えられる利点がある。
【0062】
なお、上述実施例は本発明を走査露光型の投影露光装置に適用したものであるが、本発明はステッパーのような一括露光型の投影露光装置で等方的像歪を補正する場合にも適用できる。このように、一括露光型に図1の1対の光学くさび12,13を適用する場合、レチクル上の矩形のパターン領域の短辺方向に沿ってその光学くさび12,13の相対移動方向を設定することが望ましい。これによって、光学くさび12,13が小型化できるからである。
【0063】
このように本発明は上述実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【0064】
【発明の効果】
本発明の投影露光装置によれば、マスクと基板との間に光軸方向の厚さ可変の光透過性基板を配置し、その厚さを変更する光路長切換手段を設けているため、基板とマスクとの間の光路長を、マスクを移動することなく変化させることができる。そのため、マスクを保持するステージの剛性を下げることなく、主に等方的像歪のみを補正できるという利点がある。更に、マスクを移動するときのような高精度な位置決めを必要とせず、単純な装置構成で等方的像歪を補正できる。
【0065】
また、光透過性基板が1枚又は複数枚の光学くさびよりなり、光路長切換手段が光学くさびの移動手段である場合には、単純な移動動作で連続的に像歪を補正できる利点がある。
また、投影露光装置が走査型の投影露光装置であり、且つ光学くさびの移動方向が走査方向である場合には、等方的像歪みを補正するためにマスク自体を物理的に駆動しなくてもよいため、特に装置全体として高い剛性が要求される走査型の投影露光装置に対して効果的である。また、走査方向に対しては照明領域又は露光領域の幅が狭いため、駆動量も含めて光学くさびの形状を小型化できる利点がある。
【0066】
また、光透過性基板が複数の光透過性基板からなり、光路長切換手段が交換手段である場合には、補正は不連続となるが装置構成は簡単になる利点がある。
また、マスクと基板との間に配置された光学くさびの上面を不規則な波状に研磨することによって、非等方的な不規則ディストーションの補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による投影露光装置の一実施例を示す一部を切り欠いた概略構成図である。
【図2】図1の照明条件切り換え用のターレット3の説明図である。
【図3】図1の投影露光装置におけるレチクルR及びウエハWの走査状態を示す斜視図である。
【図4】図1の実施例における等方的像歪の補正原理の模式的な説明図である。
【図5】図4の各状態に対応するディストーションの状態を示す図である。
【図6】図4の中間状態に設定した場合のディストーション(倍率誤差を含む)の状態を示す図である。
【図7】(a)は像歪を測定するためのレチクル上のマークを示す図、(b)は像歪を測定するためのレチクルとは別のパターン板上のマークを示す図である。
【図8】実施例の像歪補正体の第1の変形例を示す図である。
【図9】実施例の像歪補正体の第2の変形例を示す図である。
【図10】実施例の像歪補正体の第3の変形例を示す図である。
【符号の説明】
R レチクル
PL 投影光学系
W ウエハ
IL 照明光
IX 光軸
9 レーザ干渉計(レチクル用)
11 レーザ干渉計(ウエハ用)
31,81,84,91,104 像歪補正体
12,13,82,83,85,86 光学くさび
86,101〜103 光学部材
14 光学部材制御系
30 主制御系
30A ステージ制御系
24,25,28 光電センサ
29 環境センサ
Claims (3)
- 露光用の照明光のもとで、マスクに形成された転写用のパターンの像を投影光学系を介して感光性の基板上に投影する投影露光装置において、
前記マスクと前記基板との間に配置された厚さの変更自在な光透過性基板と、
該光透過性基板の厚さを切り換えることにより前記照明光の光路長を変える光路長切換手段と、を設け、
前記光路長切換手段を介して前記光透過性基板の厚さを変更して投影像の像歪みを調整し、
前記光透過性基板としての光学くさびの一方の面は、非等方的な不規則ディストーションを補正するために不規則な波状に研磨されていることを特徴とする投影露光装置。 - 露光用の照明光のもとで、マスクに形成された転写用のパターンの像を投影光学系を介して感光性の基板上に投影する投影露光装置において、
前記マスクと前記基板との間に配置された光学くさびを備え、該光学くさびの一方の面は、非等方的な不規則ディストーションを補正するために不規則な波状に研磨されていることを特徴とする投影露光装置。 - 前記マスクの傍らに設けられたマーク板と、
前記投影光学系を介して形成される前記像の歪みを測定するために、前記マーク板に設けられたマークの像を前記投影光学系を介して検出する光電センサとをさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の投影露光装置。
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