JP3554813B2 - 光導波路とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、光導波路とその製造方法に関するものである。さらに詳しくはこの出願の発明は、合分波器、波長/周波数選択フィルタ、光スイッチ、レーザ素子、および、非線形光学素子などの光学部品に有用な、高調波発生による波長変換用の光導波路とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、光導波路の材料としては、Ti拡散法により作製されたTi:LiNbOが主として用いられており、このTi:LiNbOはTiのドーピングによる屈折率の増大を利用したものである。
しかしながら、TiはLiNbOにとって不純物であり、そのため光損傷の大きな原因となっており、このTi:LiNbOからなる光導波路は、決して高性能なものとは言いがたかった。
【0003】
また、最近においては、LiNbOの代わりに波長変換用バルク単結晶として広く用いられているBaBを用いることも検討されてはいるものの、いまだに、適切なドーパントが報告されていないのが実情である。
そこでこの出願の発明は、以上の通りの従来技術の欠点を鑑みてなされたものであり、不純物をドーピングしたものではなく、光損傷がない高性能な新しい光導波路を提供することを課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、支持体単結晶がBaB 2 4 単結晶であり、光導波路が、その組成としてBa(B1-xMx)24(ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15である)で示される非線形光学酸化物単結晶からなる高調波発生による波長変換用の光導波路を提供する。
【0005】
さらに、この出願の発明においては、前記の光導波路の製造方法であって、BaBに、Al、Ga、BaAlおよびBaGaのいずれかからなるファイバーまたは線材を接触させ、800〜920℃の温度範囲で反応拡散を行うことを特徴とする光導波路の製造方法をも提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は以上のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
まず最初に説明すべきことは、この発明の光導波路を構成する非線形光学結晶そのものは、この発明の発明者によりはじめて提供されたものであって、BaBのBの一部を元素M(MはAlまたはGa)で置換することにより、置換部分の屈折率が劇的に増大した非線形光学用酸化物単結晶を形成することに大きな特徴があり、その結果、レーザー素子や非線形光学素子などの光学分野において非常に有用な光損傷のない高性能な光導波路となる。
【0007】
前記の元素MはBと同じIII族元素であるため、置換が容易であるとともに、元素MとBは化学的性質が近く、置換による光損傷は、ほとんど無視できる。この発明の特徴について、より具体的に述べると、ア)BaBのBの一部を、AlまたはGaで置換することにより結晶の屈折率が増大し、BaBとの間の全反射が生じ、光が伝播される、光導波路においては、バルク単結晶と比較して位相整合をとることが容易で、光強度が大きくなる。また、イ)金属のAlまたはGaを用いたのでは、これらの融点が低く、BaBとの反応拡散を起こすことがない、さらに、ウ)B,AlおよびGaは、同じIII族元素があるために置換が容易で、反応拡散によりこの発明のBa(B1−X(ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15)単結晶が製造できる。このとき、Xが0.01以下では屈折率の増大が小さく、光導波路として充分なものではない。またXが0.15以上では、第2相の生成により光が散乱してしまう。またさらに、エ)800〜920℃の温度範囲での反応拡散により、非線形光学活性な低温相のBa(B1−X(ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15)単結晶の光導波路を製造することができる。このとき、反応拡散温度が800℃未満では充分な反応拡散が起こらない。また、20℃を超えると高調波を発生しない高温相が生成してしまう。
【0008】
この発明の高調波発生による波長変換用の光導波路は、例えば図1に示したものをひとつの態様としてしめすことができる。
すなわち、支持体単結晶(1)の一部に、この発明の単結晶光導波路(2)が形成されたものとすることができる。この場合、支持体単結晶(1)としては、BaBなどを例としてあげることができる。
【0009】
光導波路(2)は、前記のとおり、組成が、Ba(B1−x (ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15)で示される非線形光学単結晶であって、この光導波路(2)の入射面(3)に波長ωの光を照射すると、出射面(4)からは、2ωの第2高調波が出射する。
もちろん、この発明の光導波路は、その具体的態様は、図1に限られることはない。
【0010】
この発明の光導波路については、BaB単結晶にファイバーあるいは線材を接触させ、800〜920℃の温度範囲での反応拡散を行い、非線形光学用酸化物単結晶として製造することができる。
ファイバーや線材としては、Al、Ga、BaAlおよびBaGaのいずれかを用いることができる。
【0011】
さらに、このBaB単結晶にBaAlやBaGa等を接触させる代わりに、Ba(B1−x (ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15)を接触させて反応拡散させた場合も、同様の結果が得られる。
このBa(B1−x の場合、元素Mの量により、光導波路の組成を制御することが可能である。
【0012】
また、この発明では、位相整合が容易な光導波路ができることにより、デバイス要素の製造コストが低下し、さらに、反応拡散により製造できるので、光導波路形成コストも低いといった大きな利点が存在する。
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。
【0013】
【実施例】
実施例1
高周波加熱引上げ装置を用いて、直径、高さともに40mmのPtるつぼ内で、50gの化学量論組成BaBを大気中で融解(融点:1100℃)し、直径15mm、長さ30mmのBaB単結晶を製造した。製造した単結晶から、マルチワイヤーソーを用いて、長手方向がC軸となる10×5×20mmの角柱を切り出した。
【0014】
その単結晶角柱の表面をアセトンにて脱脂洗浄後、その表面に直径0.5mm、長さ20mmのAlファイバーを乗せ、マッフルタイプ電気炉にて、反応拡散のため、大気中、850℃で5時間加熱した。
加熱炉、炉外に取りだしたところ、幅1mm、長さ20mmのBa(B0.9 0.1 単結晶光導波路が形成された。
【0015】
この光導波路に波長1064nmのYAGレーザー光を照射したところ、図2に示すような、波長532nmの第2高調波が出射されることを確認した。
また、BaB単結晶にAlファイバーを乗せる代わりに、Gaファイバーを乗せて反応拡散させ、同様の光導波路を得た。
この光導波路に波長1064nmのYAGレーザー光を照射したところ、前記の場合同様に、波長532nmの第2高調波が出射されることを確認した。
実施例2
高周波加熱引き上げ装置を用いて、直径、高さともに40mmのPtるつぼ内で、50gの化学量論組成BaBを大気中で融解(融点:1100℃)し、直径15mm、長さ30mmのBaB単結晶を製造した。
【0016】
製造した単結晶から、マルチワイヤーソーを用いて、長手方向がC軸となる10×5×20mmの角柱を切り出した。
単結晶角柱の表面をアセトンにて脱脂洗浄後、1mm角、長さ20mmの角棒状BaAl結晶を乗せ、マッフルタイプ電気炉にて、反応拡散のため、大気中、850℃で5時間加熱した。
【0017】
加熱後、炉外に取りだしたところ、幅1mm、長さ20mmの光導波路が形成された。
この光導波路に波長1064nmのYAGレーザー光を照射したところ、波長532nmの第2高調波が出射されることを確認した。
実施例1の場合と比較して、光導波路は狹い領域で形成され、光導波路内の組成も均一で、強度の強い光が得られた。
【0018】
また同様に、BaB単結晶に角棒状BaAl結晶を乗せる代わりに、角棒状BaGaを乗せて反応拡散させ、同様の光導波路を得た。
この光導波路に波長1064nmのYAGレーザー光を照射したところ、前記の場合同様に、波長532nmの第2高調波が出射されることを確認した。
さらに、このBaB単結晶に角棒状BaAl結晶および角棒状BaGaを乗せる代わりに、Ba(B1−x (ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15)乗せて反応拡散させた場合も、同様の結果が得られた。
【0019】
このBa(B1−x の場合、元素Mの量により、光導波路の組成を制御することが可能であった。
比較例1
高周波加熱引き上げ装置を用いて、直径、高さともに40mmのPtるつぼ内で、50gの化学量論組成BaBを大気中で融解(融点:1100℃)し、直径15mm、長さ30mmのBaB単結晶を製造した。
【0020】
製造した単結晶から、マルチワイヤーソーを用いて、長手方向がC軸となる10×5×20mmの角柱を切り出した。
その単結晶角柱の表面をアセトンにて脱脂洗浄後、直径0.5mm、長さ20mmのAlファイバーを乗せ、マッフルタイプ電気炉にて、反応拡散のため、大気中、930℃で5時間加熱した。この930℃という温度は、この発明の製造方法における温度範囲外のものである。
【0021】
加熱後、炉外に取りだし、波長1062nmのYAGレーザー光を照射した。しかしながら、第2高調波は観察されなかった。
比較例2
高周波加熱引き上げ装置を用いて、直径、高さともに40mmのPtるつぼ内で、50gの化学量論組成BaBを大気中で融解(融点:1100℃)し、直径15mm、長さ30mmのBaB単結晶を製造した。
【0022】
製造した単結晶から、マルチワイヤーソーを用いて、長手方向がC軸となる10×5×20mmの角柱を切り出した。
その単結晶角柱の表面をアセトンにて脱脂洗浄後、直径0.5mm、長さ20mmのAlファイバーを乗せ、マッフルタイプ電気炉にて、反応拡散のため、大気中、790℃で5時間加熱した。
【0023】
この790℃という温度は、本発明の請求項で規定した温度範囲外である。
加熱後、炉外に取りだしたところ、わずかに反応拡散が生じていたが、断続的で、光導波路は形成されなかった。
【0024】
【発明の効果】
以上詳しく述べた通り、この発明によって、不純物をドーピングすることなく、置換による光損傷がない高性能な高調波発生による波長変換用の光導波路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を例示した概略図である。
【図2】光導波路において発生した高調波スペクトルの強さを示した関係図である。なお、比較のために、1×1×20mmの角柱状Ba(B0.5 Al0.5 バルク単結晶にYAGレーザー光を照射した場合に出射した第2高調波スペクトルもBulkの表示のもとに示した。
【符号の説明】
1 支持体単結晶
2 単結晶光導波路
3 入射面
4 出射面

Claims (1)

  1. 支持体単結晶がBaB 2 4 単結晶であり、光導波路が、その組成としてBa(B1-xMx)24(ただし、MはAlまたはGaで、0.01<X<0.15である)で示される非線形光学酸化物単結晶からなることを特徴とする高調波発生による波長変換用の光導波路。
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