JP3553187B2 - 圧縮軸力抵抗部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、圧縮軸力の抵抗力を増加させた圧縮軸力抵抗部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の圧縮力を受ける構造部材は、例えば図9に示すように真直ぐな1本の主部材1の構造形式(タイプAという)および、平行な2本の主部材1をつなぎ材2で結合する構造形式(タイプBという)が主である。これは多くの文献、例えばHandbook of Structural Stability(C.R.C of Japan編集、コロナ社刊、1971年)に基本知識として示されている。このような構造形式の主部材1を製作する場合、初期変形あるいは、初期たわみが全く生じないように製作することは不可能であり、部材がある程度の初期変形を持つことは避けられない。つまり、この初期変形は部材の最大強度(最大抵抗力)や変位挙動に大きな影響を及ぼすことになる。部材の最大強度は部材の細長さに反比例し、この比が大きくなると最大強度も小さくなる。また、荷重の増加とともに外側にたわむ量が大きくなるという欠点がある。
【0003】
平行な2本部材(主部材1)をつなぎ材2で結合する構造については、前述のようにHandbook of Structural Stabilityその他多くの文献に記載されているが、主部材同士を結合する方法や、つなぎ材2と主部材1との交点の条件等で種々の形式が考えられる。例えば、単に平行に複数のつなぎ材2をかけ渡す方法や、斜めに交差して結合する方法がある。また、主部材1とつなぎ材2の交点を当該つなぎ材2が自由に回転できる方法(ヒンジ)や、しっかり固定(剛結)する方法等がある。図10は、図9に示したタイプAおよび、タイプBの構造形式において、つなぎ材2の本数や結合方式が圧縮最大荷重に及ぼす解析解を示す。
【0004】
図10において、荷重Pは、図9に示すタイプAの両端ヒンジの1本柱に対して、数式1で得られる座屈荷重PE とよばれる荷重を用いてすべて無次元化して表している。
【0005】
図10において、両端ヒンジの1本部材の柱(図9のタイプA)と同じ曲げ剛性で、同じ初期変形を持つ2本の平行な構造形式(図9のタイプB)は、図10に示すように、ヒンジ端3(図9に示す)のつなぎ材2で結合し、つなぎ材2の本数を変化させても最大荷重はタイプAの場合と変わらない。また、外側にたわむ量も荷重とともに大きくなる欠点がある。
【0006】
なお、数式において、n=1が最小の座屈荷重となり、図10に示すように理論解とタイプAから得られた解析解は、ほぼ最大荷重(max/PE =1となり一致する。
【0007】
【数1】
Figure 0003553187
【0008】
また、つなぎ材2の端部を固定(剛結)にするとヒンジ端より多少効果があることが図10よりわかる。しかし、両者を結合する場合には、つなぎ材2端部に曲げやせん断など複雑な断面力が生じることから、部材設計も難しくなる欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の課題を解決して、構造体の圧縮軸力の最大抵抗を増大させ、かつ外側にたわむ量も小さくすることが可能な圧縮軸力抵抗部材を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するため本発明に係る圧縮軸力抵抗部材は、2本の互いに外側に1回のみ湾曲した曲線形状を持つ不平行材が、少なくとも2本以上のつなぎ材でヒンジ結合され、不平行材の端部は全てヒンジ結合からなることを特徴とする。また、前記つなぎ材として斜材を用いたトラス形式の圧縮軸力抵抗部材とし、さらにまた、中心にある直線の主部材と不平行材をつなぎ材で結合した圧縮軸力抵抗部材とするとよく、このように構成すると、抵抗力を高めるために一層有効である。
【0011】
(実施例)
(実施例1)
図1(a),(b),(c)は本発明の構造体の平面モデルの一例を示す。同図において、タイプCは、2本の放射線形状を持つ端部がヒンジ結合からなる不平行材4を3本のつなぎ材2でヒンジ結合した形式の構造体であり、タイプDは、タイプCの部材両端部を結合した形式の構造体であり、タイプEは、中心にある直線の主部材1と不平行材4の曲がり材と、つなぎ材2で結合した形式の構造体である。図中、EIはモデルの曲げ剛性を示す。
【0012】
図2(a),(b)はモデルの座標系と断面図を示したもので、図3はモデルが持つと予想される初期たわみ形状と最大たわみ量V0 を示す。半波と、一波Aの最大初期たわみ量は部材長Lの1/1000とした。材料は弾性部材であり、主部材1の端部はすべてヒンジ端3としている。なお解析モデルで使用した諸元を表1に示すが、両部材の間隔はa=5cm、f1 とf2 はアーチライズを表す。なお、以下の面外たわみ量とは図2でy方向のたわみ量であり、L/rは細長比で、rは断面二次半径である。
【0013】
【表1】
Figure 0003553187
【0014】
細長比L/rが200と400のタイプCにおいて、曲がり材のアーチライズf1 を0.05L〜0.15L、つなぎ材の本数を3〜11と変化させた場合の最大荷重( max /P E )の結果を示したのが図4である。つなぎ材2の本数が11本程度あれば、ほぼ両端ヒンジの1本柱(図9のタイプA)の座屈荷重の4倍近くに達することがわかる。このPmax /PE の4は数式1のn=2の強度に対応しており、このときの座屈モードは、二次の逆対称モードになる。つまり、数本以上のつなぎ材で簡単に結合した場合の最大荷重は、曲がり材のアーチライズやある程度のつなぎ材があれば十分強度向上が望め、それは1本柱の4倍近くに達することがわかる。
【0015】
また、最大荷重をさらに上げることは容易にでき、図5(a)または(b)に示すように斜材5をトラス形式に入れればよい。つまり、二次の逆対称座屈モードを生じないように中央部のX軸方向変位を拘束することを考えればよいので、非常に簡単である。図5に示す例では、(a)の場合に最大荷重が max /P E=9.3、(b)の場合には、最大荷重が11.6となった。
【0016】
図6(a),(b)は、タイプA,B,Cで、つなぎ材2の本数が3本と11本の時の荷重と、面外方向のたわみ量の関係を示したもので、各タイプの変形挙動の特徴がよく表われており、特に、タイプCが面外たわみ量も小さく、かつ最大荷重が大きくなっている様子が示されている。
【0017】
(実施例2)図7は、本発明の第2実施例であり、実験モデルの座標系と断面図を示している。第 1実施例では解析を行って、その最大強度や挙動から本発明の特徴を調べたが、本実施例では実際に鋼材でモデルを製作し、実験挙動を調べたものである。ここで用いたモデルの諸元を表2に示す。なお、実験ではタイプBとタイプC1(f1/L=0.02)、タイプC2(f1 /L=0.04)の計3タイプのモデルを使用している。なお、つなぎ材2は表2に示すように3〜11本に変化させた。つなぎ材2の断面積は不平行材の1/10とした。
〔以下余白〕
【0018】
【表2】
Figure 0003553187
【0019】
実験で得られた最大荷重を表3に示す。解析結果と同様にタイプCは、ほぼ両端ヒンジ柱の座屈荷重の4倍近くに達していることがわかる。このときの座屈モードを図8に示すが、座屈モードも解析の結果と同様に二次の逆対称モードになっていることが確認できる。
【0020】
【表3】
Figure 0003553187
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の構造体は、2本の外側に1回のみ湾曲した曲線形状を持つ不平行材が、少なくとも2本以上のつなぎ材でヒンジ結合され、不平行材の端部は全てヒンジ結合からなる形式としているので、従来の平行材からなる構造体と比べて、構造体の最大圧縮抵抗力(圧縮荷重)を大幅に増大させることが可能となり、かつ、外側にたわむ量を著しく小さくすることができる。特に、つなぎ材として斜材を用いるトラス形式の構造体にすれば、最大圧縮荷重を著しく増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の構造体で、平面モデルの一例を示す図である。
【図2】図1の平面モデルの断面図と部材の座標形状を示す図である。
【図3】平面モデル(1本及び2本)が持つと予想される初期変形形状を示す図である。
【図4】図1のタイプCモデルにおいて、アーチライズやつなぎ材の本数を変化させた場合の最大荷重を示す図である。
【図5】曲がり部材の中央部分に斜材を入れたつなぎ形式の構造体の平面モデル図である。
【図6】タイプA,B,Cのモデルにおいて、つなぎ材の本数が3本と11本の時の荷重と面外たわみ量の関係を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例である実験モデル図である。
【図8】本発明の第2実施例の実験で得られたタイプB,Cの座屈モードを示す図である。
【図9】従来の1本柱及び平行な2本柱の構造体の一例を示す図である。
【図10】従来の1本柱及び平行な2本柱の構造体における荷重とたわみ量の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 主部材
2 つなぎ材
3 ヒンジ端
4 不平行材
5 斜材
L 部材長
r 断面二次半径
a 部材間隔
1 ,f2 アーチライズ
v たわみ量
EI 曲げ剛性
m 圧縮荷重
E 座屈荷重

Claims (3)

  1. 2本の互いに外側に1回のみ湾曲した曲線形状を持つ不平行材少なくとも2本以上のつなぎ材でヒンジ結合され、該不平行材の端部は全てヒンジ結合からなることを特徴とする圧縮軸力抵抗部材。
  2. 前記つなぎ材として斜材を用いるトラス形式の請求項1に記載の圧縮軸力抵抗部材。
  3. 中心にある直線の主部材と、前記不平行材とを前記つなぎ材で結合した形式の請求項1に記載の圧縮軸力抵抗部材。
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