JP3552712B2 - 屋根裏断熱構造 - Google Patents

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    • Y02B30/90Passive houses; Double facade technology

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  • Building Environments (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽により加熱された屋根材からの熱が、直接、もしくは天井材を介して室内へ伝達することを抑制する構造に関するもので、特に、既築の構造物への適用も可能な、主に放射伝熱による室内への入熱の低減をなす屋根裏断熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギーの観点から住宅の断熱化が重要となってきている。断熱対象となる部位は、屋根、壁、床などが考えられるが、特に夏季の日中の屋根断熱が冷房負荷の低減には有効であり、以下、主に屋根断熱について詳述する。
【0003】
従来、断熱材に工夫を凝らすことで断熱性能を上げることが、盛んに開発されてきた。
例えば、屋根断熱を目的として、セメント系板材に断熱材と反射材を積層して断熱性に優れた屋根材とした技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、壁や屋根パネル裏面に断熱材を貼り、前記断熱材を覆うシートを内面に隙間を持たせて設けて鉛直方向に繋がる空間を作り、外部からの断熱と空気温度差による前記空間でのトンネル効果気流による冷却を狙った技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、壁から屋根に連なる高気密のアルミニュウム被覆断熱ボードを、外壁および屋根との間に通気層を形成するように設けて、家屋の外郭を二重壁構造とする高気密高断熱家屋の提案がされている(特許文献3参照)。
【0006】
これらは、いずれも、まず固体の伝導熱抵抗を増すことを主体に、厚みのある断熱性の高いボード状断熱材を主材として単品面材を構成し、この単品面材を連ねたり、重ねたりして全面としての断熱層を形成するもので、部材の柔軟性がないので、敷設に際し、単品面材の寸法がぴったり合う必要があり、施工に時間を要し、特に既築家屋に後施工として適用することは難しい。
また、工場の建屋のように、天井に相当する部材がなく、屋根材が直接家屋内に剥き出しの構造の家屋では、屋根材を支える構造部材との干渉が生じて、変形性に乏しい面材の全面取り付けは施工が困難で、工費がかかり、また、既築家屋への後施工取付は実質的には不可能に近い。
【0007】
【特許文献1】
特許第3030429号公報
【特許文献2】
特開平9−158353号公報
【特許文献3】
登録実用新案第3009512号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、既存の屋根断熱技術は、伝導による入熱抵抗を上げることに主体をおいているので、断熱材板厚が厚くて施工の簡便性に乏しく、部材は所要寸法精度の高いものを必要とするなどの問題点があった。
【0009】
つまり、特許文献1の技術にあっては、セメント系板材に熱伝導係数の高い金属反射板を接触積層して屋根材としているために、これらの境界で接触伝熱により金属反射板の厚み方向に多量の熱量が貫通し、また、既築家屋では屋根材全てを取り替える必要があり、柔軟な適用が困難である等の問題点がある。
【0010】
また、特許文献2の技術にあっては、自然通気による抜熱を行う構造としているため、入熱量の大半を占める放射熱対策がなされておらず、また、本技術においても既築家屋では屋根材そのものを取り替える必要が生じるので、部材の所要寸法精度は高いものが必要であり、柔軟な適用が困難である。
【0011】
さらに、特許文献3の技術にあっては、気密性を目的としたアルミニュウム被覆断熱ボードであり、アルミニュウム被覆を硬質ウレタンフォーム室内面側に接触させて貼っているために、外部からの放射入熱と接触伝熱の入熱は殆んど遮断できず、また、特に部材の所要寸法精度は高いものが必要で、可撓性が乏しく、施工に技術と時間を要し、また、既築家屋や、工場や倉庫建物への適用はできない等の問題点がある。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、効果の高い簡易な屋根断熱工法で、安価に迅速に施工できる屋根裏断熱構造を提供することを第1の課題とし、加えて、遮熱性能が長期維持できる屋根裏断熱構造を提供することを第2の課題としている。
【0013】
本発明者らの調査・研究の結果では、瓦などの屋根材は、太陽放射熱で数十℃を超える温度に加熱されており、この裏面から発する放射熱も大変大きくなる。
つまり、瓦等の不透明屋根材を介しても、屋根材から室内に流入する太陽入熱は放射入熱が圧倒的に大きく、例えば、1時間当り10回の強制屋根裏換気を行っても、空気層流動による伝熱量と放射伝熱量の比は、夏期の正午では、約1対4である。
【0014】
このことから、放射率の低いシートを屋根材下面に非接触で挿入することで、支持部以外は接触熱伝導がなく、かつ、入熱の大半の遮断を可能にしたものである。すなわち、入熱側固体である屋根材と遮熱シートが直接接触しないように空気層(空隙)を介在させ、表面の放射率の低いシートを挿入して放射熱の遮断を効果的に行う。
屋根材や下部天井材と遮熱シートの直接接触を避けるのは、低放射率材の殆んどは金属系の材料であり、金属系材は熱伝導率が高いので、接触すると接触伝熱で多くの熱量がシートを貫通するためである。
さらに、遮熱シートの上面だけでなく、下面も空隙を持つ状態で、表面の放射率の低いシートを挿入すればより好ましい。つまり、室の天井材と遮熱シートの直接接触も避けたほうが、こちらの面の接触伝熱もなくなるのでより遮熱性能が高くできる。
これの容易な施工法としては、例えば、架構材や天井材から支持具を用いて、遮熱シートとしての低放射率シートを架空支持すれば、容易に本構成とすることができる。
【0015】
以上の構成で、屋根からの入熱の方向特性が、鉛直上方向からの入熱であり、空気層があればこれが上層から温められるので、温度上昇して軽くなった空気は上部に滞留し、熱伝導としては空気層さえ設ければ、これが非常に高い伝導熱抵抗を持ち、発泡剤などでの断熱を行わなくても高い断熱が可能である。
しかし、放射伝熱は空気層では抑えられないので、放射を跳ね返す表面低放射率のシートを挿入する。
【0016】
前記表面低放射率のシートは、これが複数層になるほどその効果は高くなる。さらに、遮熱性能低下の要因として、これらのシートは室内設置なので太陽光や風雨による劣化は殆ど無いが、気中の埃がシート上面に堆積すると、放射率が低下して性能が落ちるので、シートを複数層にして、シート間の端部を袋状に閉じ、シート層間に埃が入らないようにすれば、2層目以降のシート表面は埃堆積による経時劣化が殆ど生じず、シート全体の遮熱性能が維持できる。
【0017】
特に、天井板を設けない、室内で屋根材が剥き出しになる工場や倉庫などの夏場の室温上昇対策は、労働環境対策として重要であるが、安価にこれを行う断熱構造が実現できていなかった。この対策として、屋根からの入熱抑制、それも放射熱の抑制が最も有効であり、屋根直下での低放射率シートによる簡易遮熱で、安価に、かつ、容易に工場建屋内の夏場の室温上昇対策が実施可能である。
また、軽くて柔軟性のあるシートを張る工法であれば、既存の家屋にシート放射断熱を後施工することも容易である。
屋根裏断熱工事は狭いうえに障害物が多くあり、時としては高所作業となるので、施工する素材が軽く、寸法許容精度が大きいもの、折りたたんだり皺を生じさせて施工できるなど施工自由度が高く、狭い空間への搬入と広い面積への取り付けが容易で、低い寸法精度で施工しても遮熱性能が低下しないものであることが、非常に重要で、さらに、畜舎などの、気中の埃が多い環境での長期遮熱性能維持も重要であり、本発明はこれを可能にしたものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記第1の課題を解決するために、本発明の屋根裏断熱構造(請求項1)は、家屋屋根の内面に、少なくとも片面を低放射率素材で構成した柔軟性のあるシート(低放射率シート)、または、少なくとも片面を低放射率加工した柔軟性のあるシート(低放射率シート)を屋根面に対向させて、室内と屋根材間に複数層に挿入敷設し、該複数層のシート間に空隙を設け、かつ、屋根材と最上層の前記シート間に空気層(空隙)を設けた構成とした。
ここで、複数層とは、2層以上であればよく、多層を含むものとする。
【0019】
この屋根裏断熱構造(請求項1)において、複数層のシート間に空隙を作る手段として、上層シートより下層シート長さを長くし、これらのカテナリー差(垂み)を用いている態様(請求項2)がある。
【0020】
また、前記屋根裏断熱構造(請求項1又は2)において、複数層シートの少なくとも片側端部のシート間隙を閉じている態様(請求項3)がある。
【0021】
また、前記屋根裏断熱構造(請求項1〜3のいずれか)において、屋根裏架構材および/または屋根材より支持具を用いてシートを架空敷設する構造とした態様(請求項4)がある。
【0022】
【発明の実施の形態】
低放射率シートの表面部材は、放射熱遮断の効果が期待できるものであればなんでも良く、アルミニュウム、銅などの金属系のフィルムや、これらの片を混入した塗装面でも良いが、光沢を持たせた面とすることが最も好ましい。
また、放射率は好ましくは0.5以下、さらには0.3以下で小さいほど好ましく、さらに、前記シートの屋根に対応する側の面の放射率が、該シートの裏面より等しいか、もしくは低い放射率とすることが最も好ましい。
前記低放射率シートを単層で設置すると、設置構造が簡単になり、コストも安価になる。
【0023】
また、前記低放射率シートを単層でなく、複数層に該シート間同士に空隙を設けて挿入するほど断熱効果は高くなるし、かつ、複数層にしたシートの少なくとも片側(埃堆積から考えればシート敷設における上端側)端部を閉じて、シート間への空気の流入を無くせば、気中の埃の内部堆積、つまり、その層の放射率低下が防止でき、埃の多い環境においてもシート全体の遮熱性能として、ほぼ初期性能の維持が可能となる。
なお、低放射率シートを複数層にする場合、シート層数を多くするほど遮熱性能と、その経時変化防止機能は高いが、コストやシート重さ増による工事性が悪くなるので、一般には2層のシートとすれば十分である。
【0024】
【実施例】
以下説明を容易にするために、図を用いて実施例を示す。
図1は、一般家屋に適用した本発明の参考例である。
低放射率シート10は、ほぼ屋根裏全面積に対応して、屋根材1を支える屋根架構2から直接吊り下げて、屋根材1と低放射率シート10間に空隙4を設ける状態に敷設され、室内への入熱遮断を行っている。
低放射率シート10は合成繊維やガラス繊維で織られた丈夫なシートに、両面アルミペイントが塗布されており、表面・裏面ともに放射率が0.3程度のシートとなっている。もし、片面にのみアルミペイントが塗布されたシートであれば、太陽熱の入熱側の放射率を低くすることが肝要なので、放射率が0.9に近い合成繊維の剥き出し面でなく、アルミペイントが塗布された側を屋根面方向、つまり、上面にして低放射率シート10を敷設する。
【0025】
低放射率シート10は全面1枚ものシートである必要は無く、施工性を良くするために、1枚重量が10kg程度以下で、人手での取扱が容易な反物状のシートを、なるべくシート間の接続隙間が少なくなるように、その端を繋いで、複数枚敷設しても良い。
この場合、通常のテントシートなどでよく行われているように、反物状シートの端を適当なピッチで穴あけ加工して、鳩目リング金具で穴部を補強し、該リングにロープを通してシート同士を繋げるようにしたものを用いると、施工が容易で、かつ丈夫なシートとすることができる。
【0026】
なお、本参考例では換気口との接続がなく、シート上の隙間空気は滞留するが、屋根裏放射熱の遮断は十分効果を発揮する。
【0027】
また、本発明の目的とシート材の環境においては、屋根裏での150℃以下の遠赤外線域の波長での放射遮蔽が主体であり、太陽光における可視光線領域での反射のような色の効果は殆んど無いので、低放射率化のために、シートを白色にする意味は殆んどない。
【0028】
また、埃の定期的清掃を容易にすると、さらに長期に渡る遮熱性能維持ができるので、シートの上面側に低摩擦材のコーティング、及び/又は、低摩擦化処理を施し、また、清掃容易化手段を設けることも有効である。例えば、埃の清掃は吸引集塵による方法が好ましいので、シートの端部を清掃時には円筒状に丸めて掃除機に繋ぐ構成としたり、シートの特定部に掃除機への集合気流口を設けたりすることなども有効である。なお、これらの機構をさらに発展させて、夏と冬で遮熱シートを簡単に広げたり縮めたりできる手段として、紐を引っ張れば、シートを円筒状に丸められる構成としたり、カーテン状に折り畳んで、屋根裏下部に収納できる構造として、冬季は太陽入熱の遮断を少なくすることも有効である。
【0029】
図2は、支持具を用いて、換気口のある屋根裏に、低放射率シートを敷設した本発明の他の参考例である。
低放射率シート10は、ほぼ屋根裏全面に対応して、屋根材1および屋根架構2から支持具11−aや支持具11−bを用いて、屋根材1と低放射率シート10間に空隙4を設ける状態に架空支持にて敷設され、室内への熱遮断を行っている。
本参考例では換気口30を有効に使って、自然換気のドラフト効果を最大限に生かすため低放射率シート10の上部位置を換気口30の位置より低くすることで、屋根材1と低放射率シート10間で空気が暖められ、軽くなった空気の上昇気流による換気での抜熱効果も、大きく発揮できる構成としている。
【0030】
以上の構成において、上昇気流は低放射率シート10の下部から上部に向かって流れるので、上部流路面積を下部流路面積より小さくすると、上昇気流の速度は上に行くほど速くなり、気流中の埃の運動が上部ほど激しくなり、低放射率シート10の上面への埃の堆積を少なくすることができる。
【0031】
図3は、図2の一部変形の参考例である。
低放射率シート10は、ほぼ屋根裏全面に対応して、屋根材1および屋根架構2から支持具11−aや支持具11−bを用いて、屋根材1と低放射率シート10間に空隙4を設ける状態に架空支持にて敷設され、室内への熱遮断を行っている。
しかし、本参考例では、低放射率シート10の上面の上昇気流の流路面積を換気口30の最上部まで順次狭めるのではなく、換気口30の部分より少し気流の前部分で流路面積を最小にしている。
流路を次第に狭める目的は、気流速度を次第に上げて埃の堆積を少なくするためであり、換気口30の対応部で若干埃が堆積しても、それがシート全体に占める面積率は大きくなく、この部分だけであれば、放射率の部分低下による熱遮断性能の低下は大きな問題とならない。また、必要であればこの部分のみを定期的に清掃して堆積している埃を除去することも容易である。重要なことは、部分遮熱性能の低下防止もさることながら、全体の施工性の良さであり、この構成とすることで、屋根裏全面に大きな空間を取って低放射率シート10全体を下げる必要が無く、シートの殆んどの面積の埃堆積を防止しながら、狭いスペースでの適切な敷設が可能となる。
【0032】
次に、図4に低放射率シートを単層で布設したときの遮熱効果を示す。
スレート屋根の通常の住宅で、夏期の正午における遮熱効果を示したもので、1時間に10回の天井換気を行っている時のデータである。
屋根材はスレート7mm厚み、天井には60mm厚みの通常のグラスウール断熱施工がされている家屋で、低放射率シート有り無しでの室内の天井温度を比較している。
シートなしでは50℃であったものが、放射率(以下εで示す)が、上面・下面とも0.3で厚み0.2mmの低放射率シートを敷設すると、室内の天井温度が18℃まで低下した。また、ε上面/ε下面が0.3/0.6で厚み0.2mmの低放射率シート敷設では26℃、ε上面/ε下面が0.3/0.3で厚み1.0mmの低放射率シート敷設では17℃の室内の天井温度であった。
【0033】
このように、挿入するシートが低放射率であることが重要で、シートの厚みは殆んど遮熱効果に影響を及ぼさず、屋根材に面したシート上面側の放射率を低くしておけば、室内への入熱を大きく低減できる。
【0034】
次に、図5は一般家屋に適用した本発明の2層(複数層)シートの第1実施例である。
低放射率シート10a,10bは、ほぼ屋根裏全面積に対応して、屋根材1を支える屋根架構2から直接吊り下げて敷設され、室内への入熱遮断を行っている。
2層の低放射率シート10a,10bは、各層がガラス繊維で織られた丈夫なシートに、上面にアルミ箔を貼付して、表面放射率が0.2、裏面放射率が0.9程度のシートとなっており、下層シート10a長さを上層シート10b長さより長くして、重力で生じるカテナリー差でシート層間の腹部の空隙5を生じせしめ、かつ、端部は縫合して内部への周囲の空気流入を防いでいる。
【0035】
本構成では、節部のシート同士は接触しているので、節部の低反射の効果は上面だけしか生じないが、全体に占める節部の面積は非常に小さく、埃を堆積することのない2層目の低反射効果が長期に渡り持続するので、シート全体の効果としても殆ど初期の遮熱性能を維持できる。
なお、低反射面上への埃の堆積防止が重要なので、図5の低放射率シートの下面シート10aは袋空間となる内側、つまり、シートの上面側を低反射率面とする。
又、図5で紙面の垂直方向からのシート間への埃流入防止のため、この方向のシート開口端部を縫合する、つまり四周を縫合して中に隙間5のある袋状とすることが最も好ましい。
端部のシート開口を閉じる方法としては、縫合に限らず、接着やホッチキス等の金具止め等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、埃進入防止が目的なので、密閉度の高い開口端部密閉は不要である。
【0036】
図6は、支持具12−a,12−bを用いて、換気口30のある屋根裏に、低放射率シート10a,10bを敷設した本発明の第2実施例であり、前記第1実施例と同様である。
【0037】
次に、図7に低放射率シートを複数層(2層)で布設したときの遮熱効果を示す。
スレート屋根の畜舎で、夏期の正午における遮熱効果を示したもので、1時間当りの畜舎内換気量は10回である。屋根材はスレート7mm厚みでその下は直接室内(畜舎)となっている。
シートなし(図7の一番上の実線)では室内の天井温度が65℃であったものが、放射率が上面0.15で下面0.9、厚み0.2mmの低放射率一層シートを敷設すると(図7の上から3番目の点線)、室内の天井温度が46℃まで低下した(シート挿入で19℃の低減効果)。但し、埃が上面に堆積すると(図7の上から2番目の実線)、54℃まで上昇した(シート挿入で11℃の低減効果)。
これに対し、同じシートを2層にし、内部シートへの埃堆積を防止した場合では、新品時で41℃(図7の一番下の点線・・・シート挿入で24℃の低減効果)、埃が第一層表面に堆積した後(図7の下から2番目の実線)でも、43℃に収まっており(シート挿入で22℃の低減効果)、効果も高く、経時劣化も少ない結果を得た。また、室の床温度も一層シート挿入で、新品時14℃、埃堆積時8℃の低減効果であるが、2層シート挿入では、新品時17℃、埃堆積時16℃の低減効果が確認でき、室温についても似たような効果が確認できた。
【0038】
このように、挿入シートの少なくとも1つの層が長期に渡って低放射率であることが重要で、シートの厚みは殆んど遮熱効果に影響を及ぼさず、屋根材に面した少なくとも1つのシート上面側の埃堆積を防止して、低放射率を維持できれば、長期に安定して室内への入熱を大きく低減できる。
【0039】
なお、本発明において、シートの支持ピッチや支持法はシートのたるみを適当にできるものであればよい。支持具もそう強固である必要はなく、紐や針金による締結支持や、吊り下げ支持でなく天井架台からの持ち上げ支持具など、本事例での説明以外の方法でも可能であり、本実施例に限定されるものではない。
さらに、最上部に外気との換気口を設け、屋根裏空気の温度上昇によるドラフト力により、屋根裏側と敷設した低放射率シートとの隙間で、外気との循環流が生じるように構成すれば、強制換気に負けない流量が発生するので、空気流による抜熱も加味され、より好ましい。
なお、スペース的に可能であれば、低放射率シートの換気口対応部を換気口位置より低く敷設することが好ましい。
【0040】
以上のように、本発明は、一般家屋の屋根裏断熱に適用できるだけでなく、工場や倉庫や畜舎などにみられる屋根が剥き出しの建物の屋根裏断熱にも適用可能であり、コンクリート構造の建築物での屋根裏断熱にも適用可能である。
また、シート母材は特に材質の制限はないが、条件によっては100℃近くまで温度が上がるので、この場合は耐熱性に配慮した材質の選定が必要である。シートの低放射率化はアルミペイント塗布による方法が最も簡単であるが、より低放射率化を狙って、アルミの箔を表層に貼っても良いし、亜鉛や銅、チタンなどいろいろな金属によっても用途に応じた低放射率化が可能である。
又、実施例では、低放射率シートを、ほぼ屋根裏全面積に対応して敷設するとしたが、屋根裏の一部分、例えば、居間や寝室の天井裏部分等、部分的に対応して敷設させるものについても本発明に含まれる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明の屋根裏断熱構造を用いれば、柔軟性のある低放射率シートを用いているため、障害物が多くあり、時としては高所作業となる屋根裏断熱工事の安全性や作業性が向上し、折りたたんだり皺を生じさせて施工できるので、施工自由度が高く、狭い空間への搬入と広い面積への容易な取り付けが可能で、迅速で効果の高い屋根断熱が実施できる。
特に、天井板を設けない、室内で屋根材が剥き出しになる工場や倉庫、畜舎などの夏場の室温上昇対策が安価に、かつ、容易に実施可能で、また、既存の家屋にシート断熱を後施工することも可能になる等の利点もある。
【0042】
また、前記低放射率シートを単層でなく、複数層に該シート間同士に空隙を設けて挿入するほど断熱効果は高くなる。
又、複数層にしたシートの少なくとも片側端部を閉じて、シート間への空気の流入を無くせば、気中の埃の内部堆積、つまり、その層の放射率低下が防止でき、埃の多い環境においてもシート全体の遮熱性能として、ほぼ初期性能の維持が可能となる。
このように、複数層シートにすると、塵埃の多い環境で使用し,気中の埃が時の経過と共にシートに堆積し、シート表面の放射率を低下させても、多層シートでの下部シートには埃堆積が生じないので、全体としての初期遮熱性能を維持でき、室内設置なので太陽光や風雨による劣化も少なく、また、既存の家屋にシート断熱を後施工することも容易になる等の利点もある。
【0043】
従って、本発明によれば、特に冷房負荷の低減に非常に有効な夏季の日中の屋根裏断熱が、簡易、かつ安全で安価に達成でき、工場の熱的労働環境を改善し、畜舎などの夏季の猛暑環境回避ができ、また、地球環境を守るために重要テーマとなっている住宅の高断熱化による省エネルギーに大きく貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般家屋に適用した本発明の参考例である。
【図2】支持具を用いて、換気口のある屋根裏に、低放射率シートを敷設した本発明の他の参考例を示す図である。
【図3】図2の一部変形の参考例を示す図である。
【図4】低放射率シートを単層で布設したときの遮熱効果データを示す図である。
【図5】本発明を適用して一般家屋の屋根裏断熱を実施した第1実施例を示す図である。
【図6】支持具を用いて、換気口のある屋根裏に、低放射率シートを敷設した本発明の第2実施例を示す図である。
【図7】低放射率シートを複数層(2層)で布設したときの遮熱効果データを示す図である。
【符号の説明】
1 屋根材
10 低放射率シート
10a 低放射率シート
10b 低放射率シート
11−a 支持具
11−b 支持具
12−a 支持具
12−b 支持具
2 屋根架構
30 換気口
4 空隙
5 空隙

Claims (4)

  1. 家屋屋根の内面に、少なくとも片面を低放射率素材で構成した柔軟性のあるシート、または、少なくとも片面を低放射率加工した柔軟性のあるシートを屋根面に対向させて、室内と屋根材間に複数層に挿入敷設し、該複数層のシート間に空隙を設け、かつ、屋根材と最上層の前記シート間に空隙を設けたことを特徴とする屋根裏断熱構造。
  2. 請求項1記載の屋根裏断熱構造において、複数層のシート間に空隙を作る手段として、上層シートより下層シート長さを長くし、これらのカテナリー差を用いている屋根裏断熱構造。
  3. 請求項1又は2記載の屋根裏断熱構造において、複数層シートの少なくとも片側端部のシート間隙を閉じている屋根裏断熱構造。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の屋根裏断熱構造において、屋根裏架構材および/または屋根材より支持具を用いてシートを架空敷設する構造とした屋根裏断熱構造。
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