JP3551546B2 - シールド掘進機の障害物切削装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は地中掘進中に鉄筋コンクリート杭や鋼製の杭などが現れた場合、これを切削するシールド掘進機の障害物切削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
都市部などでは、シールド工事計画路線上にビルの鉄筋コンクリート製の杭や鋼杭などが存在する場合がある。このような場合、土砂切削用カッタヘッドで鉄筋、H鋼、鋼鉄板等を切削した場合、被切削物がビットにからみつき、または、被切削物にてビットが破損し、連続して安定な掘削ができない。このため従来はシールド掘進機の前面、つまり切羽に土砂の流入を防止するため、安定化用の薬液を注入する薬液注入工法や、凍結工法を用いて切羽の土砂を固め、作業員が切羽へ出て鉄筋コンクリート杭などの切断を行っていた。これらの工法は莫大な費用と工期を必要とするため、シールド掘進機側からの操作により障害物を切削する方法が提案されている。
【0003】
特公平6−54078号には、カッタヘッドに円筒形の外周にスパイラル状のカッタを設け、カッタヘッドの半径方向に円筒軸を向けて配置したトンネル掘削機が開示されている。このスパイラルの刃は円周の一部の同一位置で全ての刃が欠けており、通常の掘削時は、この刃の欠けた面を掘進方向に向くようにして前進する。これにより通常の掘進時にはスパイラルの刃より先に土砂切削用のビットが土砂を切削する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の公報記載の掘削機の場合、全てのスパイラルカッタの同一回転位置では、刃が欠けているので、鉄筋コンクリート杭などを切断中スパイラルカッタに加わる力が不均一になり、振動や騒音を発生する。また実開平4−122798号には、埋設管削破枠用カッタヘッドとしてシールド掘削機のカッタヘッドに相当する面にローラカッタを設けた技術が開示されている。しかし、この技術では、ローラカッタはカッタヘッドの回転によって回転するだけで、自転装置がないため鉄筋コンクリート杭などを切削するのは困難である。また、このローラカッタは常に被掘削物に当たるので、普通の土砂掘削にも使用されることになり寿命が短くなるという問題点もある。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、鉄筋コンクリート杭等の地中障害物をシールド掘削により機械的に削除する装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1の発明では、土砂掘削用ビットを備えたカッタヘッドに設けられ、互いに反対方向に回転する向かい合った一対のカッタと該カッタをそれぞれ回転する回転装置とを有したローラカッタと、該ローラカッタをカッタヘッドの面板に対して垂直方向に進退させる進退装置とを備え、前記ローラカッタは、前記カッタの刃の向きがカッタヘッドの半径方向と交差する方向に配置されている。
【0007】
請求項2の発明では、前記ローラカッタは、前記カッタヘッドの半径方向に複数個設けられ、カッタヘッドを1回転した場合、カッタヘッドの前面切羽のほぼ全域が切削されるように配置されている。
【0008】
請求項3の発明では、前記一対のカッタの一方は単一のローラ刃からなるか、または複数のローラ刃を重ねてなり、他方のカッタは前記一方のカッタのローラ刃の数より一つ多い複数のローラ刃を重ねてなり、他方のカッタのローラ刃の重ね位置に一方のカッタのローラ刃の中心がくるように配置されている。
【0009】
請求項4の発明では、前記刃は、のこぎり刃の形状をしている。
【0010】
【作用】
請求項1の発明では、カッタヘッドの回転により各ローラカッタのカッタは障害物に交差して当たり、一対のカッタは互いに反対方向に回転装置によって回転しながら鉄筋コンクリートなどの障害物を切削し、かみ込んで圧壊する。また進退装置により障害物を切削するときのみローラカッタのカッタを土砂切削ビットより高くして通常の土砂切削には使用しないため、ローラカッタの摩耗が少なくなり寿命が長くなり、かつ通常の土砂切削時に地山を乱すことがないので、安定した施工が可能となる。また、ローラカッタは刃の円周方向に均一な形状なので、回転による振動や騒音の発生も少ない。
【0011】
請求項2の発明では、ローラカッタをカッタヘッドの前面切羽のほぼ全域を切削できるように配置しているので、シールド掘進機の前進を阻害する障害物を同時に除去できる。
【0012】
請求項3の発明では、一対のカッタの一方は単一のローラ刃からなるか、または複数のローラ刃を重ねてなり、他方のカッタは一方のカッタのローラ刃の数より一つ多い複数のローラ刃を重ねてなり、他方のカッタのローラ刃の重ね位置に一方のカッタのローラ刃の中心がくるように配置されているので、すき間なく切削でき、かつ鉄筋等をせん断的に破壊することができる。
【0013】
請求項4の発明では、ローラ刃の各刃はのこぎり刃の形状をしているので、鉄筋等を確実に捕らえることができ、切削効率がよい。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例を示す縦断面図、図2は図1の正面図である。カッタヘッド1は厚みのある円盤形で、前後面はカッタ前面板2とカッタ後面板3で構成されている。カッタヘッド1には半径方向に伸びた開口4が設けられ、開口4には半径方向にスポーク5が設けられており、このスポーク5には多数の土砂切削ビット6が取付られている。土砂切削ビット6はカッタヘッド1の同心円上に対向して2個ずつ設けられ、カッタヘッド1の正転、逆転に対していずれか一方が切削する。土砂切削ビット6はカッタヘッド1の中心からの半径上の位置をそれぞれずらして配置され、カッタヘッド1が1回転したとき切削面がその全域を覆うようになっている。隔壁7は円筒形のシェル8と共に外圧を支え、シールド掘進機内を大気圧に保つ。隔壁7にはカッタ駆動モータ9が設けられ、カッタヘッド1を正転、逆転方向に回転する。スクリューコンベヤ10は土砂切削ビット6やローラカッタ12が切削、圧壊した土砂やコンクリート片、鉄筋くずが開口4から隔壁7側に入ってきたものを本装置の後方へ送り出す。11は障害物を示し、カッタヘッド1の前面に現れた状態を示す。
【0015】
ローラカッタ12はカッタヘッド1の直径上に設けられた幅広のスポーク5上に設けられ、中心からのそれぞれの位置はカッタヘッド1が1回転したとき、切削範囲がカッタヘッド1の前面切羽のほぼ全面を覆うように互いの位置を設定している。ただし、中心とその近傍は覆われていないが、その範囲は少ないので支障とならない。ローラカッタ12の刃の向きはカッタヘッド1の円周方向に配置されている。
【0016】
図3,図4はローラカッタ12の構造を示し、図3は平面図、図4は図3のX−X矢視図である。ローラカッタ12の刃は、3枚のローラ刃14からなる第1カッタ13aと2枚のローラ刃14からなる第2カッタ13bより構成され、各ローラ刃14の形状は図5に示すようにのこぎり刃の形状となっている。第1カッタ13aのローラ刃14の重ね合わせ部には第2カッタ13bのローラ刃14の中心がくるように配置され、すき間なく切削できるようになっている。油圧モータ15は第1カッタ13aと歯車で接続され、第1カッタ13aの回転軸と第2カッタの回転軸とを歯車で接続し、第1カッタ13aと第2カッタ13bは互いに反対方向に回転するようになっている。これによりコンクリートや鉄筋などを少しずつかき取りかみ込んでくだくようにする。
【0017】
ローラカッタ12は油圧シリンダ16によりカッタヘッド1の前後方向、すなわち、カッタヘッド1の面板に対して垂直方向に進退移動する。油圧シリンダ16はカッタ後面板3に固定されている。図5はローラカッタ12の移動範囲を説明する図で、障害物切削時には実線で示す位置にローラ刃14を移動し、土砂切削時には破線で示す位置に移動する。
【0018】
図6はローラカッタの移動を説明する図である。(A)は通常のシールド掘進時の状態を示し、(B)は障害物切削時の状態を示す。通常切削時は土砂切削ビット6で切削を行うため、ローラカッタ12のローラ刃14の先端をカッタ前面板2と面位置として土砂を切削しないようにし、摩耗を防止する。障害物切削時はローラ刃14の先端を土砂切削ビット6より突き出し、障害物11が土砂切削ビットに当たらないようにして、障害物11を少しずつ削りとり第1カッタ13aと第2カッタ13bとではさみ込みくだいてゆく。
【0019】
次に動作について説明する。通常の土砂掘進中に鉄筋コンクリート杭などの障害物11に当たったときはシールド掘進機を停止し、カッタヘッド1の回転を止める。次に油圧シリンダ16を操作してローラカッタ12のローラ刃14を土砂切削ビット6よりも先の図6(B)に示す位置まで突き出し、カッタヘッド1の回転と共に油圧モータ15を回転させてローラ刃14を回転させながらシールド掘進機を少しずつ前進させ障害物11を削り取ってゆく。この間カッタヘッド1は正転、反転を一定期間で繰り返し、シールド掘進機が一方向にローリングしないようにする。これにより鉄筋コンクリート杭の場合はコンクリート、鉄筋を少しずつ削りとりながら欠けたコンクリート片やコンクリートから外れた鉄筋片を第1カッタ13aと第2カッタ13bのかみ合い部でかみ込んで押しつぶし、開口4を通ってスクリューコンベヤ10により外部へ排出してゆく。障害物11の切削が終了するとローラカッタ12のローラ刃14を引き込んで図6(A)に状態に戻し、通常の土砂切削に入る。
【0020】
次に本発明による立抗の壁切削について説明する。シールド掘進機は立抗を掘って所定の深さまで下ろし、横方向に掘り進んでゆく。また掘進の到着位置にも立抗を設け、そこから引き上げる。この立抗の壁は土圧に耐えるため鉄筋コンクリートで作られており、発進または到着する壁を破壊して、立抗より出てゆき、または入ってくる。この壁の破壊作業は従来、破壊する壁の裏の土砂を薬液注入工法や凍結工法により固めた後、人手により破壊している。しかし、本発明の障害物切削装置により、シールド機自体でこれらの壁の切削作業を行うことができる。これにより作業時間、費用が大幅に減少できる。
【0021】
上記実施例ではローラカッタ12のローラ刃14を第1カッタ13aでは3枚、第2カッタ13bでは2枚としたが、適宜変更可能である。この場合一方のカッタのローラ刃14の数を他方より1枚少なくして、相互のローラ刃14の重ね合わせ目に他方の刃が位置するようにする。すなわち、一対のカッタの一方は単一のローラ刃14からなるか、または複数のローラ刃14を重ねてなるものとし、他方のカッタは一方のカッタのローラ刃14の数より一つ多い複数のローラ刃14を重ねてなるものとし、他方のカッタのローラ刃14の重ね位置に一方のカッタのローラ刃14の中心がくるように配置する。またローラ刃14の形状はのこぎり刃ではなく円形でもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明はカッタヘッドに互いに反対方向に回転する一対のカッタとその回転装置を有するローラカッタを設け、このローラカッタをカッタヘッドの面板に対して垂直方向に進退させるようにしたので、従来人力により行っていた障害物の撤去をシールド掘削のみで確実に行い、かつローラカッタの寿命を長くすることができる。これにより工期の短縮、作業の安全が図れる。また立抗における発進時や到着時の壁の切削も可能となり、工期の短縮、工費の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のシールド掘進機の縦断面図である。
【図2】実施例のシールド掘進機の正面図である。
【図3】ローラカッタの平面図である。
【図4】図3のX−X矢視図である。
【図5】ローラカッタの刃の形状とその移動を示す図である。
【図6】ローラカッタの進退動作を説明する図である。
【符号の説明】
1 カッタヘッド
2 カッタ前面板
3 カッタ後面板
4 開口
5 スポーク
6 土砂切削ビット
11 障害物
12 ローラカッタ
13a 第1カッタ
13b 第2カッタ
14 ローラ刃
15 油圧モータ(回転装置)
16 油圧シリンダ(進退装置)
Claims (4)
- 土砂掘削用ビットを備えたカッタヘッドに設けられ、互いに反対方向に回転する向かい合った一対のカッタと該カッタをそれぞれ回転する回転装置とを有したローラカッタと、該ローラカッタをカッタヘッドの面板に対して垂直方向に進退させる進退装置とを備え、前記ローラカッタは、前記カッタの刃の向きがカッタヘッドの半径方向と交差する方向に配置されていることを特徴とするシールド掘進機の障害物切削装置。
- 前記ローラカッタは、前記カッタヘッドの半径方向に複数個設けられ、カッタヘッドを1回転した場合、カッタヘッドの前面切羽のほぼ全域が切削されるように配置されていることを特徴とする請求項1記載のシールド掘進機の障害物切削装置。
- 前記一対のカッタの一方は単一のローラ刃からなるか、または複数のローラ刃を重ねてなり、他方のカッタは前記一方のカッタのローラ刃の数より一つ多い複数のローラ刃を重ねてなり、他方のカッタのローラ刃の重ね位置に一方のカッタのローラ刃の中心がくるように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のシールド掘進機の障害物切削装置。
- 前記刃は、のこぎり刃の形状をしていることを特徴とする請求項1ないし3記載のシールド掘進機の障害物切削装置。
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JP12643295A JP3551546B2 (ja) | 1995-05-25 | 1995-05-25 | シールド掘進機の障害物切削装置 |
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1995
- 1995-05-25 JP JP12643295A patent/JP3551546B2/ja not_active Expired - Fee Related
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