JP3550487B2 - 横磁界下シリコン単結晶引上装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は横磁界下シリコン単結晶引上装置に係わり、特に低酸素濃度のシリコン単結晶を引き上げるのに適する横磁界下シリコン単結晶引上装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にシリコンウェーハを製造するには、多結晶シリコンからチョクラルスキー法(以下、CZ法という。)によりシリコン単結晶のインゴットを作り、このインゴットを内周刃式スライシングマシン等で所定の厚さに切断し、シリコンウェーハを製造する。
【0003】
しかし、超LSI製造プロセスの低温化、デバイスの高密度化、高集積化などにより、シリコンウェーハに対しシリコン単結晶の低酸素化、さらにはより狭い範囲で酸素濃度が制御された低酸素濃度のシリコンウェーハの要求があり、これに伴いシリコンウェーハの素材となるシリコン単結晶にもより狭い範囲で酸素濃度が制御された低酸素濃度のシリコン単結晶が要求されている。
【0004】
従来、特公昭57−40119号公報のように、シリコン単結晶を引き上げるのに、炉内を流れる不活性ガスの流れを制御して炉内で発生する不純物の溶融シリコンへの混入を防止するとともにシリコン単結晶への酸素の取り込みを抑制して低酸素濃度のシリコン単結晶を得、かつ溶融シリコンからの放熱を制御するために耐熱部材製の輻射シールドを設け、品質の向上および生産性の向上を図ったシリコン単結晶引上装置はある。
【0005】
しかし、この従来のシリコン単結晶引上装置で引き上げられたシリコン単結晶は十分な低酸素濃度のシリコン単結晶を得ることができず、上記要求を満足していない。
【0006】
また、図1のように横磁界下シリコン単結晶引上装置1cはCZ法を横磁界下で適用したもの(Horizontal Magnetic Field applied Czochralski Method、以下HMCZ法という。)である。この単結晶引上装置1cの炉本体2に設けられた石英ルツボ3内のシリコン融液4に超伝導磁石5により水平方向の磁界が発生するようにコイルを付勢し、すなわち導電性流体であるシリコン融液の対流が磁界Gの方向に対して直角の場合起電力が有効動粘性係数を増加させるため、ルツボ3内の融液対流を制御しながらシリコン単結晶の結晶成長を行うものである。
【0007】
このHMCZ法によれば、シリコン融液の熱対流を抑制することにより石英ルツボ3の溶解を低減し、かつ結晶界面の安定性を増し低酸素濃度のシリコン単結晶が得られる。
【0008】
HMCZ法による酸素低減のメカニズムは石英ルツボ3の溶解量の低減、シリコン融液4の液面近くを流れる対流の流速の低下、固液界面近傍に存在するシリコン融液中の酸素濃度低減などである。
【0009】
これら低酸素化のメカニズムに影響を及ぼす主な引き上げパラメータは磁界強度、ルツボ回転数、結晶回転数、融液量などであるといわれている。
【0010】
しかし、このようなHMCZ法はシリコン融液の対流は磁界に対し直角な成分は抑制されるが、磁界に平行な成分については影響を受けない。すなわち、従来のHMCZ法では2個のコイルから形成される磁界Gの方向に平行な横方向の対流成分がシリコン融液中に存在している。
【0011】
一般のHMCZ法においては、2個のコイルの中心を結ぶ直線がシリコン融液の液面近傍の高さになるようにコイルを配設するため、石英ルツボ内面近傍に存在する酸素濃度の比較的高いシリコン融液は磁界の方向に平行な流れに沿ってシリコン結晶の成長界面に供給される環境にある。
【0012】
このような環境下で引き上げられたシリコン単結晶は一定の低酸素濃度のもの、例えば酸素濃度が1×1018( atoms/cm3 )以下(換算係数はOld ASTM)程度のものは得られるが、より狭い濃度範囲で酸素濃度が低く制御された低酸素濃度のシリコン単結晶は得られない。
【0013】
また、横型と縦型の2つの特徴を組み合わせたカスプ(CUSP)法といわれるシリコン単結晶引き上げ方法が存在する。この引上装置は磁界を上下縦方向から横方向に印加し、低酸素濃度のシリコン単結晶を得るものであるが、機構が複雑で高価であり、かつランニングコストが高いなどの欠点がある。
【0014】
そこでより狭い濃度範囲で酸素濃度が低く制御された低酸素濃度のシリコン単結晶を安価かつ大量に生産できるHMCZ法が要望されていた。
【0015】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、HMCZ法において、ランニングコストを低減し、狭い濃度範囲で酸素濃度が低く制御された低酸素濃度のシリコン単結晶を安価かつ大量に生産できる横磁界シリコン引上装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本願請求項1の発明は、炉本体を挟むように対向して炉本体の側面に配設された磁石を具備する横磁界下シリコン単結晶引上装置において、前記炉本体内のルツボ上方に設けられ炉本体内を流れる不活性ガスの流れを制御する輻射シールドと、この輻射シールドの外側面に沿って設けられ前記対向する磁石のコイルの中心を結ぶ直線と同一方向に配置された複数の拡大通気部と、この拡大通気部に前記ルツボの側方を通して連通され、炉本体に設けられた排気口とを有することを特徴とする横磁界下シリコン単結晶引上装置であることを要旨としている。
【0017】
本願請求項2の発明は、輻射シールドは円筒部と、この円筒部から伸長し截頭円錐形の円錐部と、この円錐部に設けられ単結晶引き上げ用の開口部を有する底面部と、円筒部と円錐部の外側面に一体に形成されかつコイルの中心を結ぶ直線と同一方向に配設された複数の不活性ガス流通用の拡大通気部からなることを特徴とする請求項1記載の横磁界下シリコン単結晶引上装置であることを要旨としている。
【0018】
本願請求項3の発明は、複数の不活性ガス流通用の拡大通気部に各々対向して炉本体の底部に排気口を設けたことを特徴とする請求項1記載の横磁界下シリコン単結晶引上装置であることを要旨としている。
【0019】
本願請求項4の発明は、磁石は2個の超伝導磁石であり、輻射シールドは炉本体内のルツボ上方に設けられ、円筒部とこの円筒部から伸長し截頭円錐形状の円錐部とこの円錐部の端部に設けられ単結晶が貫通する開口部を有する底面部とを有し、かつ不活性ガス流通用で対向するように設けられた2個の拡大通気部は円筒部と円錐部に一体に形成され、拡大通気部の一部が円筒部の上端から底面部に亘り傾斜する傾斜面部で構成される凹部であり、この凹部が炉本体の底部に設けられ対向する2個の超伝導磁石のコイルの中心を結ぶ直線と同一方向に配置された2個の排気口とそれぞれ対向することを特徴とする請求項1記載の横磁界下シリコン単結晶引上装置であることを要旨としている。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置の実施の形態について添付図面に基づき説明する。図2は本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置1の断面図であり、この装置1はHMCZ法を適用したものである。
【0021】
密閉容器を構成する炉本体2の内部には石英ルツボ3とこの石英ルツボ3を加熱し、石英ルツボ3に供給されたナゲット状ポリシリコンを溶融しシリコン融液4にするためのヒータ7が設けられている。
【0022】
また、石英ルツボ3およびシリコン融液4の上方にはこのシリコン融液4からの熱輻射を防止しかつ炉本体2内を流れる不活性ガス、例えばアルゴンガス(以下Arという。)の流路を制御する耐熱部材製の輻射シールド8である。
【0023】
一方、炉本体2の外部には、2個の超伝導磁石5が炉本体2を挟むように直径方向に対向して配設されており、各超伝導磁石5は各々コイル5aから構成される。
【0024】
超伝導磁石5はコイル5aの中心を結ぶ直線Lがシリコン融液4の液面近傍になるように配設される。
【0025】
さらに、炉本体2の上方から導入されたArが、輻射シールド8に設けられ種結晶6aから成長したシリコン単結晶6が貫通する開口部9および石英ルツボ3とヒータ7に形成された通気路10を介し炉本体2外に排出されるように、炉本体2の底部11に複数個例えば2個の排気口12が設けられている。
【0026】
この2個の排気口12は図3に示すように超伝導磁石5のコイル5aの中心を結ぶ直線Lと同一方向になるように配設されている。図4(a)および(b)は輻射シールド8の構造を詳細に説明するためのもので、輻射シールド8は取り付け用のフランジ部13を有する円筒部14と、この円筒部14から伸長し截頭円錐形状の円錐部15と、この円錐部15の端部に設けられ単結晶が貫通する開口部9を有する底面部16とより構成されている。
【0027】
さらに、輻射シールド8には不活性ガス流通用で、かつ直径方向に対向するように外側から凹設された2個の拡大通気部、例えば凹部17が円筒部14と円錐部15に一体に軸方向に近接して形成されている。凹部17の一部が円筒部14の上端18から底面部16に亘り傾斜する傾斜面部19で構成されている。
【0028】
また、図4に示すように通気路10の一部を構成する通気用の凹部17は、各々がコイル5aの中心を結ぶ直線Lと同一方向に配設された炉本体2の2個の排気口12に各々対向し、かつコイル5aの中心を結ぶ直線Lと同一方向になるように配設されている。
【0029】
従って、図5に示すように炉本体2内には、炉本体2の上方から導入されたArがシリコン単結晶6と輻射シールド8の内側間に形成される空隙を通り、シリコン単結晶6が貫通する開口部9を通りシリコン融液4の液面に当たり、方向を変え、石英ルツボ3の上部内面と輻射シールド8の円錐部15の外面間でかつ輻射シールド8の外周全面に亘り形成される空隙通気路10aおよび主として輻射シールド8の外面に形成された凹部17を通り石英ルツボ3とヒータ7間に形成された通気路10bを経て、凹部17に対向して設けられた排気口12から炉本体2外に排出される不活性ガスの通気流路が形成される。
【0030】
なお、石英ルツボ3はモータ(図示せず)に結合された回転軸20により回転を与えられ、成長したシリコン単結晶6はシード軸21により上方に引き上げられる。
【0031】
本発明に係るHMCZ法は以上のような構造になっているから、シリコン単結晶6を引き上げるには、ナゲット状ポリシリコンを石英ルツボ3に入れ、Arを炉本体2の上方より炉本体2内に流入させ、ヒータ7を付勢して石英ルツボ3を加熱し、モータを付勢してこのモータに結合された回転軸20を回転させて石英ルツボ3を回転させる。
【0032】
一定時間が経過した後、シード軸21を下ろし、種結晶6aをシリコン融液4の液面に接触させる。しかるのち、超伝導磁石5のコイル5aを付勢し、磁界Gをシリコン融液4の液面近傍に集中させる。
【0033】
このシリコン融液4の溶融状態で、シリコン融液4は石英ルツボ3内で対流を起こすが、シリコン融液4の対流が磁界の方向に対して直角の場合には、起電力が有効動粘性係数を増加させるため対流は抑制される。
【0034】
このシリコン融液4の対流の抑制により、石英ルツボ3からシリコン融液4に溶出する酸素を抑制し、従ってシリコン単結晶6に取り込まれる酸素を相当減少させることができるが、石英ルツボ3近傍に存在して酸素濃度が比較的高いシリコン融液4は磁界の方向に平行な流れに沿ってシリコン単結晶6の成長界面に輸送され、酸素が成長界面からシリコン単結晶6内に取り込まれる。
【0035】
一方、炉本体2上部から導入されたArはシード軸21、シリコン単結晶6に沿って降下し、輻射シールド8に設けられた開口部9を通過し、空隙通気路10aおよび通気用の凹部17を通り通気路10bを経て、炉本体2の底部11に設けられた排気口12から炉本体2外に排出される。
【0036】
このArの流れにおいて、拡大通気部、すなわち凹部17で形成される通気流路の断面積が、通気路10aで形成される通気流路の断面積より著しく大きく形成されているので、Arの大部分はこの凹部17を通り通気路10bへと流れる。
【0037】
2個の凹部17はコイル5aの中心を結ぶ直線Lと同一方向になるように配設されているので、Arがこの直線Lと同一線上に集中し、磁界の方向、すなわち直線Lに平行な流れに沿ってシリコン単結晶6の成長界面に輸送される途中の酸素はシリコン融液4外へ効果的に放出される。また、2個の排気口12は各々2個の凹部17に対向している、すなわち直線Lと同一線上の設けられているので、さらに効果的に酸素を含んだArは2個の排気口12から炉本体2外に排出される。
【0038】
また、本実施の形態のように拡大通気部を凹部17で形成する場合には、構造が簡単で輻射シールド8を容易に製造でき、かつ十分な通気路機能を果たすことができる。
【0039】
上述のようにHMCZ法を用いることで、石英ルツボ3からシリコン融液4中に溶出する酸素を抑制してシリコン単結晶6中に取り込まれる酸素量を低減し、シリコン単結晶6の酸素濃度を低減するとともに、さらに輻射シールド8の2個の凹部17はコイル5aの中心を結ぶ直線Lと同一方向になるように配設されているので、Arがこのコイル5aの中心を結ぶ直線Lと同一線上に集中し、磁界の方向に平行な流れに沿ってシリコン単結晶6の成長界面に輸送される途中の酸素をシリコン融液4外に効果的に放出する。すなわち、HMCZ法とArの効果的流れの相乗効果により低酸素濃度のシリコン単結晶6が得られる。
【0040】
【実施例】
図6は従来の横磁界下シリコン単結晶引上装置および本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置により引き上げたシリコン単結晶の長さ方向(全長=固化率100%)の酸素濃度を比較したものである。本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置により引き上げたシリコン単結晶の酸素濃度はいずれの固化率(長さ位置)においても、従来の横磁界下シリコン単結晶引上装置により引き上げたシリコン単結晶の酸素濃度の約1/2程度に低減される。
【0041】
【発明の効果】
以上に述べたように本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置において、HMCZ法によるシリコン融液の融液対流の制御によりシリコン単結晶中に取り込まれる酸素量を低減しシリコン単結晶の酸素濃度を低減するとともに、複数の不活性ガス通気用の拡大通気部を磁石のコイルの中心を結ぶ直線と同一方向になるように輻射シールドに配設し、不活性ガスがこの直線と同一線上に集中し、磁界の方向に平行な流れに沿ってシリコン単結晶の成長界面に輸送される途中の酸素をシリコン融液外に効果的に放出する。すなわち、HMCZ法と不活性ガスの効果的流れの相乗効果により低酸素濃度のシリコン単結晶が得られる。また、本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置はHMCZ法の不活性ガス流れを改善し、磁界の方向と不活性ガスの流れの方向に相関関係を持たせたので、カスプ法のように高価な装置を必要とせず、またFZ法に比べ生産性もよく、大口径のシリコン単結晶を引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の横磁界下シリコン単結晶引上装置の概略図。
【図2】本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置の縦断面図。
【図3】図3の平面概略図。
【図4】(a)および(b)は本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置に用いられる輻射シールドの平面図および側面図。
【図5】図2の要部拡大図。
【図6】従来および本発明に係る横磁界下シリコン単結晶引上装置により引き上げたシリコン単結晶の酸素濃度比較図。
【符号の説明】
1,1c 横磁界下シリコン単結晶引上装置
2 炉本体
3 石英ルツボ
4 シリコン融液
5 超伝導磁石
5a コイル
6 シリコン単結晶
6a 種結晶
7 ヒータ
8 輻射シールド
9 開口部
10 通気路
11 底部
12 排気口
13 フランジ部
14 円筒部
15 円錐部
16 底面部
17 拡大通気部
18 上端
19 傾斜面部
20 回転軸
21シード軸
L コイルの中心を結ぶ直線
Ar アルゴンガス
G 磁界
Claims (4)
- 炉本体を挟むように対向して炉本体の側面に配設された磁石を具備する横磁界下シリコン単結晶引上装置において、前記炉本体内のルツボ上方に設けられ炉本体内を流れる不活性ガスの流れを制御する輻射シールドと、この輻射シールドの外側面に沿って設けられ前記対向する磁石のコイルの中心を結ぶ直線と同一方向に配置された複数の拡大通気部と、この拡大通気部に前記ルツボの側方を通して連通され、炉本体に設けられた排気口とを有することを特徴とする横磁界下シリコン単結晶引上装置。
- 輻射シールドは円筒部と、この円筒部から伸長し截頭円錐形の円錐部と、この円錐部に設けられ単結晶引き上げ用の開口部を有する底面部と、円筒部と円錐部の外側面に一体に形成されかつコイルの中心を結ぶ直線と同一方向に配設された複数の不活性ガス流通用の拡大通気部からなることを特徴とする請求項1記載の横磁界下シリコン単結晶引上装置。
- 複数の不活性ガス流通用の拡大通気部に各々対向して炉本体の底部に排気口を設けたことを特徴とする請求項1記載の横磁界下シリコン単結晶引上装置。
- 磁石は2個の超伝導磁石であり、輻射シールドは炉本体内のルツボ上方に設けられ、円筒部とこの円筒部から伸長し截頭円錐形状の円錐部とこの円錐部の端部に設けられ単結晶が貫通する開口部を有する底面部とを有し、かつ不活性ガス流通用で対向するように設けられた2個の拡大通気部は円筒部と円錐部に一体に形成され、拡大通気部の一部が円筒部の上端から底面部に亘り傾斜する傾斜面部で構成される凹部であり、この凹部が炉本体の底部に設けられ対向する2個の超伝導磁石のコイルの中心を結ぶ直線と同一方向に配置された2個の排気口とそれぞれ対向することを特徴とする請求項1記載の横磁界下シリコン単結晶引上装置。
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