JP3550469B2 - プラスチック製表面化粧材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなるプラスチック製表面化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック製表面化粧材は、印刷により様々な模様、絵柄が施されているが、プラスチック用塗料は剥がれやすく、例えば、スケートボードやスキーの表皮材に印刷されている塗料は、使用中に剥離しやすく、外観を損ねるという問題があった。そのため、この剥離を改善する印刷法として、熱転写による印刷法が採用されてきている。熱転写法によれば、塗料がプラスチック表面から内部に浸透しやすく、剥離が解消される。熱転写法による印刷性が優れるプラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。しかしポリブチレンテレフタレート樹脂のシートは、成形時の曲げ加工性、低温下での割れ等に問題があることが判明した。
【0003】
ポリブチレンテレフタレート樹脂に代わる樹脂としては、例えば、芳香族ジカルボン酸と低分子グリコールからなるポリエステルをハードセグメントと、ポリアルキレンオキシドグリコールをソフトセグメントとするポリエステルエラストマーが挙げられるが、かかるエラストマーは、伸びは向上するものの耐候性、特に耐紫外線性に劣り、成形品の着色や表面劣化が起こりやすく、スキー等のスポーツ用途への適用には制約があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、押出加工性、表面平滑性、隠蔽性、成形時の曲げ加工性に優れ、且つ、熱転写印刷性と低温での耐衝撃性に優れたプラスチック製表面化粧材を提供することにある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためにまされたものであり、その要旨は、ジカルボン酸成分、炭素数2〜15の脂肪族ジオール、炭素数6〜20の脂環族ジオールまたは炭素数15〜25のビスフェノール誘導体から選ばれた低分子ジオール成分、および数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分を共重合してなり、該ポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が1〜12重量%であり、融点が210〜245℃であり、250℃で測定した溶融粘度が3000ポイズ以上であるポリエステル樹脂に、酸化防止剤が配合された熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とする、プラスチック製表面化粧材に存する。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体であり、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4、4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、およびアジピン酸、サバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられ、好ましくは芳香族ジカルボン酸が挙げられる。機械的性質や耐熱性の点から、ジカルボン酸の100〜70モル%は芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、好ましくはテレフタル酸が挙げられる。
【0007】
本発明における低分子ジオール成分としては、低分子ジオールおよび/またはそのエステル形成性誘導体であり、低分子ジオールとしては、炭素数2〜15の脂肪族ジオール、炭素数6〜20の脂環族ジオールおよび炭素数15〜25のビスフェノール誘導体が挙げられ、好ましくは、炭素数2〜15の脂肪族ジオールおよび炭素数6〜20の脂環族ジオールが挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜8の脂肪族ジオールが挙げられる。低分子ジオールとしては、混合物であってもよく、低分子ジオールの100〜70モル%は、炭素数2〜15の脂肪族ジオールであることが好ましい。
【0008】
低分子ジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAエチレンオキシド付加ジオール、テトラブロムビスフェノールAエチレンオキシド付加ジオール及びこれらの混合物等が挙げられる。低分子ジオールとしては、好ましくは、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)が挙げられる。
【0009】
数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分としては、数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコールおよび/またはそのエステル形成性誘導体であり、数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコールとしては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリプロピレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、及びこれらのポリアルキレンオキシドグリコールのランダムあるいはブロック共重合体などが挙げられ、好ましくはポリテトラメチレンオキシドグリコールが挙げられる。
【0010】
ポリアルキレンオキシドグリコール成分の数平均分子量は、300〜6000であり、これより低分子量であると熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の低温衝撃性が不十分であり、分子量が大きすぎると耐熱性が低下しやすい。ポリアルキレンオキシドグリコールの数平均分子量は、好ましくは300〜4000であり、更に好ましくは500〜3000である。
【0011】
本発明におけるポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸成分、低分子ジオール成分および数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分を共重合してなる重合体であり、数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合は、ポリエステル樹脂の1〜12重量%であり、ジカルボン酸と低分子ジオールからなるポリエステル成分の割合は99〜88重量%である。
【0012】
ポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が、この範囲より少ないと低温衝撃強度が不十分となりやすく、この範囲より多いとポリエステル樹脂の融点が低くなり熱転写印刷時の熱履歴に耐えられなく印刷が不鮮明になりやすく、また表面硬度が低下しやすい。数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合は、好ましくは、ポリエステル樹脂の2〜10重量%である。
【0013】
本発明におけるポリエステル樹脂については、例えば、ポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が12重量%を越えるポリエステル共重合体とポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が12重量%未満のポリエステル共重合体とを混合するか、ポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が12重量%を越えるポリエステル共重合体とポリアルキレンオキシドグリコール成分を含有しないポリエステル重合体とを混合する等の方法により、ポリアルキレンオキシドグリコール量を1〜12重量%の所望の重量%に調整することもできる。
【0014】
本発明におけるポリエステル樹脂の融点は210〜245℃であり、好ましくは210〜230℃である。融点がこの温度範囲より低いと熱転写性が不十分となりやすく、高いと加工がしにくくなる。
ポリエステル樹脂の溶融粘度は、250℃で測定した溶融粘度で、3000ポイズ以上であり、好ましくは3000〜20000ポイズであり、より好ましくは5000〜15000ポイズである。ポリエステル樹脂の溶融粘度がこの粘度より低いとシートの押出成形性が低下しやすく、低温衝撃性が不十分となりやすい。
【0015】
本発明におけるポリエステル樹脂の製法としては、通常のポリエステル樹脂の重合法により製造が可能である。その一例としては、ジカルボン酸のジメチルエステルに低分子ジオール及びポリアルキレンオキシドグリコールを過剰量すなわち酸に対して1.1〜1.5倍モル使用して、エステル交換触媒存在下、約150〜260℃で加熱反応させメタノールを留出させる。ついで必要に応じ縮合触媒を添加し、1mmHg以下の減圧度にて、200〜280℃で加熱重縮合させポリマーを得る。この際ポリアルキレンオキシドグリコールを先に加えてエステル交換の後低分子ジオールを添加し引き続きエステル交換し更に重縮合する方法も採用できる。またジカルボン酸、低分子ジオールおよびポリアルキレンオキシドグリコールを直接重縮合する方法も採用できる。
【0016】
上記のごとく溶融重縮合して得られたポリエステルペレットを不活性ガス気流下高温加熱処理(固相重合)することにより、さらに分子量を高めたポリエステルとすることもできる。
【0017】
本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂組成物としては、上記のポリエステル樹脂と酸化防止剤とを配合して得られる。
酸化防止剤としては、チオエーテル系化合物、フォスファイト系化合物、ヒンダードフェノール化合物等が挙げられ、好ましくは、チオエーテル系化合物およびフォスファイト系化合物が挙げられる。
【0018】
チオエーテル系化合物の具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられ、好ましくは、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールーテトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)およびペンタエリスリトールーテトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)等が挙げられる。チオエーテル系化合物の分子量は、好ましくは、1000以上である。
【0019】
チオエーテル系化合物は過酸化物分解剤として作用し、本発明における熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に配合することにより着色が防止できる。
チオエーテル系化合物の添加量は熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の0.01〜1重量%、好ましくは0.1%〜0.5重量%である。これより少ないと熱安定性が低下しやすく、多すぎると、成型品の外観を損ねたり、成形品の強度が低下しやすい。
【0020】
フォスファイト系化合物の具体例としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルフォスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)、ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト等が挙げられ、好ましくは、ビス(2、6ージーt−ブチルー4ーメチルフェニル)ペンタエリスリトールージーフォスファイト等が挙げられる。フォスファイト系化合物の分子量は約500以上が好ましい。
【0021】
フォスファイト系化合物は加工時の樹脂の酸化を防止し、色相変化を抑制すると共に、高温下使用時の熱褪色に効果がある。
フォスファイト系化合物の添加量は熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の0.01〜1重量%、好ましくは0.1%〜0.5重量%である。これより少ないと熱安定性が低下しやすく、多すぎると成形品の外観を損ねたり、強度低下が起こりやすい。
【0022】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、トリエチレングリコール[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピル]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられ、好ましくは、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられる。
【0023】
ヒンダードフェノール系化合物の添加量は熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の0.01〜1重量%、好ましくは0.1%〜0.5重量%である。これより少ないと熱安定性が低下しやすく、多すぎると成形品の外観を損ねたり、強度低下が起こりやすい。
【0024】
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物またはヒンダードアミン系化合物が配合(添加)される。熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、更に好ましくは、チオエーテル系化合物、フォスファイト系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物およびヒンダードアミン系化合物が配合される。かかる樹脂組成物から成形されるプラスチック製表面化粧材は耐候性に優れ、紫外線による表面劣化の防止、変色防止に優れており、スポーツ用品の表皮材である表面化粧材に極めて有用である。
【0025】
ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−t−オクチルフェニル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等があり、好ましくは2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾールである。
【0026】
ベンゾトリアゾール系化合物は成型品の紫外線による変色や劣化の抑制に効果があり、上記のベンゾトリアゾール系化合物は、チオエーテル系化合物やフォスファイト系化合物と組み合わせて使用した場合にあっても、黄変着色が少なく、かつ、紫外線吸収剤としての効果も十分に発現できる。
ベンゾトリアゾール系化合物の添加量は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の0.01〜1重量%であり、好ましくは0.1%〜0.5重量%である。添加量がこれより少ないと耐候性が低下しやすく、多すぎると着色やシート成形時ガス発生等が起こりやすく、成形品の強度も低下しやすい。
【0027】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレート、下記の式(1)で表される化合物、および式(2)で表される化合物等が挙げられ、好ましくは、式(2)で表される化合物である。
【0028】
【化1】
Figure 0003550469
【0029】
ヒンダードアミン系化合物は、成形品の紫外線による変色や劣化の抑制に効果があり、特に成形品表面の劣化を防止できる。特に、チオエーテル系化合物やフォスファイト系化合物とベンゾトリアゾール系化合物との併用により、初期着色を防止でき、かつ紫外線による表面劣化を抑制できる。
【0030】
ヒンダードアミン系化合物の添加量は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の0.01〜1重量%であり、好ましくは0.1〜0.5重量%である。添加量がこれより少ないと紫外線劣化の抑制効果が得られにくく、多すぎると外観不良が生じやすく、成形品の強度が低下しやすい。
【0031】
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、好ましくは、平均粒子径が3μ以下の無機粒子(無機フィラー)が添加(配合)される。平均粒子径が3μ以下の無機粒子の具体例としては、ルチル型酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、クレー、白マイカおよび硫化亜鉛などが挙げられ、中でも好ましいのは、ルチル型酸化チタン、タルク、炭酸カルシウムである。平均粒子径が3μ以下の無機粒子を添加することにより、表面化粧材シートの下地を隠蔽することができ、隠蔽性を向上できる。平均粒子径が3μ以下の無機粒子の添加量は1重量%以下であり、好ましくは1〜0.1重量%である。無機粒子の添加量が多いと、伸びや低温靭性が低下しやすいので、好ましくない。無機粒子の平均粒子径は、好ましくは3〜0.1μである。
【0032】
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製する際に、ポリエステル樹脂に、チオエーテル系化合物、フォスファイト系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物および/または無機粒子(無機フィラー)等を配合(添加)する方法としては、ポリエステルの重合時もしくは重合終了後に添加することができ、また、ポリエステル樹脂を溶融混練する際に添加することもできる。
【0033】
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、上記の添加剤以外に、熱老化性や加工性、耐候(光)性等の特性を損なわない限りにおいて、その他の添加剤、例えば染料や顔料等の着色剤、帯電防止剤、結晶核剤、可塑剤、滑剤、離型剤等を任意に配合添加できる。
【0034】
本発明に係るプラスチック製表面化粧材は、上記の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を原料として成形したものである。プラスチック製表面化粧材の製造は、例えば、通常のシート押出機を用い、シリンダー温度220〜260℃の条件下、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を溶融させて押出し、温度を60〜120℃に設定したロールに挟んでシート化する。ついでシート片面に、コア材との接着力を向上させる目的で、例えば、コロナ処理、サンディング処理、ブラスト処理等を施す。更に好ましい処理方法としては、各種布や不織布をシートに貼り合せる方法である。この方法は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を押出し、溶融状態で貼り合せるので、押出成形温度を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートよりなるポリエステル不織布が好ましい。
【0035】
シートに不織布等を貼り合わせた後、冷却ロールに導き、冷却し、巻き取る。次に、処理されたシートを、必要に応じ所定の長さに裁断し、塗料で印刷した紙基材の印刷面と張り合わせ、加熱プレスにより加熱して塗料を転写することにより、プラスチック製表面化粧材が得られる。熱転写印刷は、通常150〜200℃、好ましくは170〜190℃で、例えば30秒〜2分間プレスして、印刷紙からシートに印刷インキを転写させる。
【0036】
プラスチック製表面化粧材をコア材に貼り合わせるには、所定の長さに裁断し、例えば、プリプレグや接着剤等を用いる。接着剤としては、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられ、好ましくは、ポリアミドアミン硬化タイプの2液型エポキシ接着剤が、作業性、接着強度の観点から好ましい。張り合わせには、通常、加熱プレスが用いられる。表面化粧材が張り合わせた製品で特に強度を要求される製品においては、エポキシプリプレグの積層接着が有用であり、加熱プレスにより熱溶着硬化することにより、表面化粧材が積層された製品が得られる。また、曲面を有する基材への接着は、曲面加工されたプレス板を用いて行う。プラスチック製表面化粧材のサイズが小さい場合には、射出成形法によってシートを得ることもできる。
【0037】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
尚、実施例及び比較例における評価方法は、以下のとおりである。
【0038】
(1)隠蔽性
熱可塑性ポリエステル樹脂組成物のペレットを押出機を用いて、シートに押出し、ポリエステル不織布を裏打ちし、このシートから試験片を切りだし、目視で反不織布側から下地の隠蔽性を判定した。
×:下地が透けてみえる。○:下地がほとんど判別出来ない。◎:下地が全く見えない。
(2)変色度
試験片で初期色相をカラーコンピューターで測定後、サンシャインウエザオメーターにてブラックパネル温度63℃、照射60分中12分降雨で20時間処理した。処理試験片をカラーコンピューターで色差測定を行い、変色度を評価した。
【0039】
(3)印刷性
得られたシートを印刷紙と積層し、190℃で加熱プレスし転写印刷し、印刷性を評価した。○:にじみの発生しないもの。×にじみが発生するもの。
(4)曲げ加工性
最小曲率半径4mmコーナーの合板にエポキシ系接着剤でシートを張り合わせ曲げ加工性を評価した。◎:作業性の優れるもの、○:加工可能なもの、△:加工しにくいもの。
(5)耐衝撃性
耐衝撃性の評価としては、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で成形した100mm角、1mm厚みの試験片を用い、デユポン衝撃試験(撃錐R=1/2”、荷重500g、距離50cm)を23℃,0℃,ー20℃でおこない、耐衝撃性を評価した。○:割れ無し、×:割れ有り。
【0040】
また、実施例及び比較例において使用した添加剤は、以下のとおりである。実施例中、部または%とあるは重量部または重量%を意味する。
(1)酸化防止剤−1(チオエーテル系化合物−1):ペンタエリスリトールーテトラキス(3ーラウリルチオプロピオネート)
(2)酸化防止剤−2(フォスファイト系化合物−1):ビス(2、6ージーt−ブチルー4ーメチルフェニル)ペンタエリスリトールージーフォスファイト
(3)酸化防止剤−3:ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフエニル)プロピオネート〕。
【0041】
(4)ベンゾトリアゾール系化合物−1:2−(5‘−t−オクチルフェニル−2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール
(5)ベンゾトリアゾール系化合物−2:2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α―ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
(6)ヒンダードアミン系化合物−1:式(2)で表されるヒンダードアミン系化合物
【0042】
(7)無機粒子−1:平均粒子径0.2μのルチル型酸化チタン。
(8)無機粒子−2:平均粒子径2μのタルク。
(9)無機粒子−3:平均粒子径0.2μの軽微性炭酸カルシウム。
(10)無機粒子−4:平均粒子径0.5μの中性クレー。
(11)無機粒子−5:平均粒子径2μの白マイカ。
(12)無機粒子−6:平均粒子径0.3μの硫化亜鉛。
(13)PBT:ポリテトラメチレンテレフタレート樹脂(溶液粘度1.16、融点225℃)。
【0043】
[参考例1](ポリエステル樹脂の合成例)
攪拌機、温度計、ガス置換口、蒸留塔を備えた反応器に、ジメチルテレフタレート288.3部、1,4−ブタンジオール1594部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンオキシグリコール100部、触媒としてテトラブチルチタネート0.20部を仕込み、反応器内を窒素置換した後、210℃まで150分かけて昇温し、210℃で30分間保持して、メタノールを流出させた。ついで反応器に、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を1.7部と、テトラブチルチタネート0.1部とを添加し、この後245℃まで30分かけて昇温し、同時に反応系を徐々に減圧として真空度を1Torrとし、更に2時間保持した。この後、得られた溶融樹脂をダイ穴から水中に押出し、ストランド状にして引き取り、切断しペレットを得た。
このペレットを混合器付き真空釜で、真空下、200℃で熱処理し、融点223℃、溶融粘度11500ポイズのポリエステル樹脂(A−1)を得た。このポリエステル樹脂のポリテトラメチレンオキシドグリコール含有量は、3重量%であった。
【0044】
〔参考例2〕(ポリエステル樹脂の合成例2)
参考例1において、ジメチルテレフタレートを1600部、1,4−ブタンジオールを880部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンオキシドグリコールを100部にする以外は参考例1と同様にして、ポリエステル樹脂(A−2)を得た。ポリエステル樹脂(A−2)は、ポリテトラメチレンオキシドグリコール含有量が5重量%であり、融点は222℃、溶融粘度は9800ポイズであった。
【0045】
〔参考例3〕(ポリエステル樹脂の合成例3)
参考例1において、ジメチルテレフタレートを1151部、1,4−ブタンジオールを630部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンオキシドグリコールを100部にする以外は参考例1と同様にして、ポリエステル樹脂(A−3)を得た。ポリエステル樹脂(A−3)は、ポリテトラメチレンオキシドグリコール含有量が7重量%であり、融点は221℃、溶融粘度は9300ポイズであった。
【0046】
〔参考例4〕(ポリエステル樹脂の合成例4)
参考例1において、ジメチルテレフタレートを522.3部、1,4−ブタンジオールを280部、数平均分子量1000のポリテトラメチレンオキシドグリコールを100部にする以外は参考例1と同様にして、ポリエステル樹脂(A−4)を得た。ポリエステル樹脂(A−4)は、ポリテトラメチレンオキシドグリコール含有量が15重量%であり、融点は218℃、溶融粘度は8600ポイズであった。
【0047】
[実施例1]
ポリエステル樹脂(A−1)を99.4部、チオエーテル系化合物−1を、0.2部、フォスファイト系化合物−1を0.2部、ベンゾトリアゾール系化合物−1を0.15部、ヒンダードアミン系化合物−1を0.05部それぞれ秤量し、タンブラー型ミキサーで混合した後、直径65mm、L/D=25の押出機を用い、シリンダー温度を250℃として混練し、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを、直径65mmの押出機を用いて、シリンダー温度240℃、ロール温度95℃で、厚み0.8mm、幅100mmのシートを押出し、このシートの裏面にポリエステル不織布を裏打ちして補強した後、シート表面と印刷紙とを積層し、190℃で加熱プレスしシート表面に印刷面を転写印刷し、プラスチック製表面化粧材を作成した。評価結果を、表―1に示す。
【0048】
〔実施例2〜5〕
実施例1と同様にして表−1に示す組成の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製しシート化しプラスチック製表面化粧材を作成、実施例−1と同様に評価を行った。評価結果を表−1に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0003550469
【0050】
〔実施例6〜11〕
無機フィラーを0.2%添加する以外は、実施例5と同様にして表−2に示す組成の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製しシート化しプラスチック製表面化粧材を作成、実施例5と同様に評価を行った。評価結果を表−2に示す。
【0051】
【表2】
Figure 0003550469
【0052】
〔実施例12〜15〕
実施例1と同様にして表−3に示す組成の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製し、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の射出成形で150×150mmで厚み1mmのシート状の成形品を成形し、実施例1と同様に印刷し、印刷面とは反対の面にポリアミドアミン硬化エポキシ系接着剤を約0.3mm厚に塗布し、コーナーR4mmの加工を施した。この表面化粧材を合板に90℃で30分間プレス接着し、表面化粧板を得た。これを試験片として実施例−1と同様に評価を行った。評価結果を表−3に示す。
【0053】
【表3】
Figure 0003550469
【0054】
〔比較例1〜4〕
実施例1と同様にして表−4に示す組成の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を調製しシート化しプラスチック製表面化粧材を作成、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表−4に示す。
【0055】
【表4】
Figure 0003550469
【0056】
【発明の効果】
本発明のプラスチック製表面化粧材は、押出加工性、表面平滑性、隠蔽性、成形時の曲げ加工性、表面硬度に優れ、且つ、熱転写印刷性、低温での耐衝撃性に優れており、スケートボード、スキー、スノーボード、スノーモビール等のスポーツ用品の表面化粧材や、家具類等の各種化粧板等に有用であり、特に曲面をもつ用具類の表面化粧材に好適である。

Claims (13)

  1. ジカルボン酸成分、炭素数2〜15の脂肪族ジオール、炭素数6〜20の脂環族ジオールまたは炭素数15〜25のビスフェノール誘導体から選ばれた低分子ジオール成分、および数平均分子量が300〜6000のポリアルキレンオキシドグリコール成分を共重合してなり、該ポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が1〜12重量%であり、融点が210〜245℃であり、250℃で測定した溶融粘度が3000ポイズ以上であるポリエステル樹脂に、酸化防止剤が配合された熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とする、プラスチック製表面化粧材。
  2. ジカルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸である、請求項1に記載のプラスチック製表面化粧材。
  3. 芳香族ジカルボン酸が、テレフタール酸である、請求項2に記載のプラスチック製表面化粧材。
  4. 低分子ジオール成分が、炭素数2〜15の脂肪族ジオールである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  5. 低分子ジオール成分が、テトラメチレングリコールである、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  6. ポリアルキレンオキシドグリコール成分が、ポリテトラメチレンオキシドグリコールである、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  7. ポリアルキレンオキシドグリコール成分の割合が、ポリエステル樹脂の2〜10重量%である、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  8. 酸化防止剤が、チオエーテル系化合物、フォスファイト系化合物またはヒンダードフェノール系化合物である、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  9. 酸化防止剤の配合量が、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の0.01〜2重量%である、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  10. 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に、ベンゾトリアゾール系化合物またはヒンダードアミン系化合物が配合されてなる、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  11. 熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に、チオエーテル系化合物、フォスファイト系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物またはヒンダードアミン系化合物が、それぞれ0.01〜1重量%配合されてなる、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  12. 可塑性ポリエステル樹脂組成物に、平均粒子径が3μ以上の無機粒子1重量部以下配合されてなる、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のプラスチック製表面化粧材。
  13. 無機粒子が、ルチル型酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、クレー、白マイカまたは硫化亜鉛から選ばれたものである、請求項12に記載のプラスチック製表面化粧材。
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