JP3548686B2 - 薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその製造装置 - Google Patents

薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置用の磁気ヘッドであって、インダクティブヘッド素子と、磁気抵抗効果型ヘッド(以下「MRヘッド」と称する)素子とを備えた磁気ヘッドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置は、一般的に図1に示すように、記録媒体である磁気ディスク5上に、磁気ヘッド1を支持バネ4によって支持した構成である。磁気ディスク5を回転させると、磁気ヘッド1の浮上面3が磁気ディスク5上で浮上する。この状態で、駆動装置6により磁気ヘッド1を磁気ディスク5上の所定のトラックに移動させながら、磁気ヘッド1により磁気記録の書き込みおよび読み込みを行う。磁気ヘッド1には、書き込み用ヘッドとしてインダクティブヘッド2が搭載され、読み込み用ヘッドとして磁気抵抗効果型(Magneto−Resistive:MR)ヘッド14あるいは巨大磁気抵抗効果型(Giant−Magneto−Resistive:GMR)ヘッドが搭載されている(図2)。これらインダクティブヘッド2およびMRヘッド14は、磁気ヘッド1の基板9の側面に保護膜10やシールド膜13等とともに積層されている。
【0003】
磁気ヘッド1の浮上量7は、図2のようにインダクティブヘッド2およびMRヘッド14と、磁気ディスク5との間隔である。一般的には磁気ディスク5上の記録ビット長は、図3のように、磁気ヘッド浮上量7と比例関係にあり、浮上量7が増大すると記録密度が低下する。例えば、図3のような関係がある一般的な磁気ヘッド1の場合には、浮上量が10nm増加すると、上記ビット長が50nm増加する。そのため、記録密度を向上させるために、磁気ヘッドの浮上量7を極力低減することが要求されている。現在この浮上量7は、文献「日経メカニカル」5/27号 no.481(1996)に記載されているように約40〜50nmと言われている。
【0004】
一方、MRヘッド14の浮上面3からの奥行き方向の寸法は、MR素子高さ15と呼ばれ、記録再生特性に強く影響する。しかも、MR素子高さ15は、磁気ディスク装置の面記録密度の向上とともに小さくなりつつある。そのため、MR素子高さ1を所望の寸法に高精度に加工することが可能な磁気ヘッド1の製造方法が望まれている。
【0005】
従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法を、図13(a)を用いて簡単に説明する。まず、ウエハ状の基板9上に成膜とリソグラフィの工程により、図2の層構成のインダクティブヘッド2、MRヘッド14および保護膜10等を配列して多数形成する(工程1301)。その後、配列に沿ってウエハ状の基板9を一列ずつ切り出すことにより、複数のヘッド1が連結した状態のローバーと称されるブロックを得る(工程1302)。このローバーの両面を研磨した後(工程1303)、浮上面3となる面を精密に研磨加工することにより、MR素子高さ15を規制する(工程1304)。さらに、基板9の浮上面3の一部に、所望の形状のテーパー101を形成した後、ローバーのまま、基板9の浮上面3に、スライダレール124を形成する(工程1306)。最後に、ローバーを切断して、個々の磁気ヘッド1に分割する(工程1307)。
【0006】
このような製造工程において、MR素子高さ15を決定するのは、工程1304の浮上面3の研磨加工である。この研磨加工は、図4に示すように回転する軟質金属製定盤16上にダイヤモンド等の砥粒を含んだ水溶性または油性のスラリー17を滴下し、研磨治具18に接着した磁気ヘッド1の浮上面3を押圧摺動させるものである。この押圧摺動時に、定盤16に埋め込まれた砥粒または、該定盤とヘッドとの間で転動する転動砥粒により浮上面3が加工される。特開平2−95572号公報では、ローバーを構成する複数の磁気ヘッド1のMR素子高さ15をそれぞれ所望の寸法に加工するために、この研磨加工中に、研磨治具18を変形させて、ローバー内の素子の曲り、傾きを制御することにより、ローバーのうち研磨量を多くすべき部分を定盤16に押しつける加工方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の研磨による浮上面3の加工ではダイヤモンドをはじめとする微細な砥粒を水溶性あるいは油性の分散剤と混合したスラリー17を用いるため、加工面に砥粒によるひっかき傷(スクラッチ)が発生したり、浮上面3の表面に加工変質層が生じるという問題がある。さらに、研磨加工後は、洗浄液を用いた洗浄工程が必須となる。しかも、スラリー17の分散剤や洗浄液のなかには、砥粒の分散性や洗浄性を考慮して様々な添加剤が含まれるため、スクラッチや加工変質層の中には、スラリー17の分散剤や洗浄液と反応してMRヘッドやGMRヘッドに対して腐食反応を起こすものがあり、信頼性の高いヘッドを加工するためには大きな問題となる。さらに、このような砥粒を用いる方法では微細な砥粒でもその粒径は1/10〜1/20ミクロンもあり、加工単位の微小化には限界がある。
【0008】
また、特開平2−95572号公報記載の加工方法は、ローバーを構成する個々の磁気ヘッドについて、研磨量を制御しようとするものであるが、この方法で制御できる研磨量には限界があり、素子高さ15のばらつきを一定値以下にすることはできなかった。また、この加工方法は、この工程よりも前の工程によって生じているローバーの曲がりやうねりの形状精度の影響を受けやすい。また、この方法による浮上面研磨工程によってさらにローバーの曲がりやうねりが生じるため、プロセス全体を通してローバーの曲がりやうねりに対応して高精度な加工を行う必要があり、製造コストの増大につながるという問題がある。
【0009】
一方、一般的に磁気ヘッド1は、複数の材料を複合体であるため、研磨加工により加工段差が生じるという問題である。すなわち、一般的には、基板9はアルミナチタンカーバイト、保護膜10はアルミナ、インダクティブヘッド2の上部磁性膜11および下部磁性膜(上部シールド膜を兼用)12、ならびに、下部シールド膜13はパーマロイなどの軟質磁性金属からなる。これらの硬度は、アルミナチタンカーバイトが2000kgf/mm、アルミナが1000kgf/mm、パーマロイが200kgf/mmである。このため、浮上面3を研磨加工すると、各材質の硬度差から生じる研磨効率の差によって、柔らかいインダクティブヘッド2やMRヘッド14の部分が、基板9に対してくぼんでしまい、図5に示すような加工段差8が生じる。この加工段差8が生じると磁気ヘッド1の実効浮上量が増大し薄膜磁気ヘッドの記録再生特性を低下させる一因となる。このため、この加工段差8は極力小さいことが要求される。
【0010】
本発明は、磁気ヘッドの浮上面の磁気ヘッド素子の腐食を防止し、加工段差が小さく、しかも、素子高さを高精度に制御できる磁気ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、以下の磁気ヘッドの製造方法が提供される。
【0012】
すなわち、
平板状の基板上に、複数の薄膜磁気ヘッド素子と複数の薄膜抵抗体とを、当該薄膜磁気ヘッド素子と当該薄膜抵抗体とが互いに隣り合うように配列して形成した後、前記基板を前記配列に沿って所定の方向に切り出すことにより、前記複数の薄膜磁気ヘッド素子が一列に連結した状態のブロックを形成する第1の工程と、
前記各薄膜磁気ヘッド素子の浮上面となる面にイオンビームを照射することにより、前記浮上面を削りとる加工を行、前記各薄膜磁気ヘッド素子とり合う前記薄膜抵抗体の抵抗値をそれぞれ検出することにより、該抵抗値を用いて前記各薄膜磁気ヘッド素子の浮上面の加工量をモニターする第2の工程と、
前記抵抗値が予め定めた値に達したとき、当該抵抗値が検出された薄膜抵抗体の隣りの磁気ヘッドの浮上面を、前記複数の薄膜磁気ヘッド素子のそれぞれについて設けられたシャッタのうち、当該薄膜抵抗体と隣り合う薄膜磁気ヘッド素子に対応するシャッタで覆うことにより、加工を停止させる第3の工程と、
前記薄膜磁気ヘッド素子の境界で前記ブロックを切断する第4の工程と、
を備えてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態の薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。
【0014】
本実施の形態で製造する薄膜磁気ヘッドの構成は、図1および図5の従来の薄膜磁気ヘッドと同様の構成である。すなわち、基板9の側面上には、順に、下部保護膜10、下部シールド膜13、MRヘッド14、インダクティブヘッド2、上部保護膜10が積層されている。インダクティブヘッド2は、上部磁性膜11および下部磁性膜12およびコイル等により構成される。下部磁性膜12は、MRヘッド14との間の上部シールド膜を兼用している。これらの積層膜の端面および基板9の主平面は、浮上面3を構成している。基板9の浮上面には、浮上特性を制御するためにレール124およびテーパー101が形成されている。
【0015】
つぎに、このような薄膜磁気ヘッドを製造する本実施の形態の製造方法について。
【0016】
まず、ウエハ状の基板9上に成膜とリソグラフィの工程により、図2の層構成のインダクティブヘッド2、MRヘッド14および保護膜10等を、成膜とフォトリソグラフィの工程により、配列して多数形成する(工程1301)。この成膜とフォトリソグラフィの工程の際に、後のイオンポリシング工程1311でセンサーとして用いる抵抗検知素子141を、インダクティブヘッド2等と交互に配置しておく。その後、ウエハ状の基板9を一列ずつに切り出すことにより、複数のヘッド1が連結した状態のローバー122と称されるブロックを得る(工程1302)。抵抗検知素子141は、薄膜抵抗体145と、薄膜抵抗体145に電流を流すためパッド146とにより構成される。この薄膜抵抗体145が、ローバー122の浮上面3に面するような配置で、工程1301で抵抗検知素子141を形成しておく。
【0017】
つぎに、前の工程1302の切断によってローバーに生じる切断歪みを除去するため、ローバー122の両面を研磨する(工程1303)。その後、浮上面3の研磨の工程を、本実施の形態では、イオンポリシングにより行う(工程1311)。
【0018】
イオンポリシング工程1311について詳しく説明する。イオンポリシング工程には、図6に示すようなイオンポリシング装置を用いる。このイオンポリシング装置は、イオン源700、真空排気装置606、ロードロック機構607が取り付けられた真空容器608を有する。イオン源700は、マイクロ波発生装置601、導波管610、磁場発生装置602、ガス導入機構604およびイオン引き出し電極603を有するECR方式のイオン源である。マイクロ波発生装置601の発生したマイクロ波は、磁場発生装置602の磁場と相互作用し、電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance)を生じさせてプラズマを生成する。イオン引き出し電極603は、このプラズマからイオンビーム21を引き出す。
【0019】
真空容器608の内部には、ローバーホルダー22(図7)を取り付けるための支持機構609が備えられている。ローバー122は、このローバーホルダー22に保持される。支持機構609は、イオン源700の出射するイオンビーム21に対して、ローバーホルダー22を任意の角度に傾斜させるための傾斜機構が備えられている。支持機構609には、ローバー122を冷却するための冷却機構605が取り付けられている。
【0020】
ローバーホルダー22の構成を説明する。ローバーホルダー22は、図7、図15に示すように、ローバー122をそれぞれ装着するための溝状のトレー151が複数設けられている。ローバー122は、浮上面3を上に向けてトレー151に装着される。トレー151の側面には、ローバー122の抵抗検知素子141と対応する位置に、プローブ153が配置されている。トレー151にローバー122が装着されると、プローブ153が不図示のバネの弾性により、抵抗検知素子141のパッド146に押しつけられる。また、ローバーホルダー22の上面には、装着されたローバー122の上面を覆うためのシャッター152が配置されている。シャッター152は、図15ではローバー122を構成する個々の磁気ヘッド1ごとに1枚ずつ配置されている。ローバーホルダー22には、シャッタ152を個別に開閉するための駆動機構が内蔵されている。シャッター152の大きさは、ローバー122を構成する磁気ヘッド1と同程度の大きさのため、数mm角と非常に小さい。このため、ローバーホルダー22は、シリコンウエハをエッチングして作製する。また、駆動機構は、マイクロマシニング技術によりシリコンウエハに造り込んだ、微細なモータ等を用いる。
【0021】
ローバーホルダー22の裏面には、プローブ153と接続された端子と、駆動機構へ駆動信号を入力するための端子とが配置されている。支持機構609の上面には、これらの端子に対応する端子が設けられており、支持機構609にローバーホルダー22を取り付けることにより、これらの端子が接続される。支持機構609の端子は、外部の制御装置23に接続されている。この制御装置23が、抵抗検知素子141の抵抗を検出するとともに、駆動機構にシャッターを開閉させる駆動信号を出力する。制御装置23は、出力装置24を介して、外部に抵抗検知素子141の抵抗値およびシャッター152の開閉状況を出力する。
【0022】
つぎに、図6のイオンポリシング装置を用いて、ローバー122の浮上面3をイオンポリシングする方法について説明する。
【0023】
まず、真空容器608の外部において、ローバーホルダー22に複数のローバー122を浮上面3が上面を向くように装着する。同時に、プローブ153をローバー122のそれぞれの抵抗検知素子141に接触させる。このときシャッタ152は、全て開いた状態にしておく。
【0024】
このようにローバー122がセットされたローバーホルダー22を、ロードロック機構607を介して真空容器608に挿入し、支持機構609に取り付ける。そして、支持機構609を傾斜させて、ローバー122の浮上面3の法線に対して、イオンビーム21が所望の入射角θをなすように設定する。また、基板冷却機構605により、ローバー122を所望の温度まで冷却するとともに、真空排気装置606により真空容器608内を真空排気する。この状態で、反応ガス604を供給し、イオン源700を動作させて、イオンビーム21を引き出し、ローバー122に照射する。イオンビーム21の衝突により、浮上面3が削り取られ、浮上面3が研磨される。このとき、浮上面3に位置する抵抗検知素子141の薄膜抵抗体145も削り取られるため、研磨の進行とともに、薄膜抵抗体145の抵抗値が上昇する。
【0025】
制御装置23は、支持機構609およびプローブ153を介して、各抵抗検知素子141に微小電流を流し、抵抗値を検出する。そして、抵抗値が予め定めた一定値に達したならば、その抵抗検知素子141に隣接する磁気ヘッド1が所望の量だけ研磨させたと見なせるため、制御装置23は駆動機構に駆動信号を出力し、その磁気ヘッド1上のシャッタ152のみを閉める(図8)。他のシャッタ152は、まだ開いた状態であるので、イオンポリシングは進行する。このように、抵抗検知素子141の出力が所望の値に達したものから、順にシャッタ152を閉じていくことにより、磁気ヘッド1の研磨量を個別に制御でき、全ての磁気ヘッドの研磨量を所望の値にすることができる。全てのシャッタ152が閉じたならば、ローバー122を構成する全ての磁気ヘッド1の研磨が終了したことを意味するので、イオンポリシングを終了させ、ロードロック機構607からローバーホルダー22を取り出し、ローバーホルダー22からローバーを取り外す。
【0026】
このイオンポリシング方法は、従来の砥粒を用いる研磨中にローバー内の素子の曲り、ばらつきを矯正する方法と比較して、ローバー122の形状精度による影響がないという利点がある。しかも、各磁気ヘッド1の浮上面3の研磨量を個別にモニターしながら研磨できるため、研磨量を個別に制御できる。したがって、各磁気ヘッドのMR素子高さ15を高精度に所望の範囲内の値にすることができる。
【0027】
なお、具体的なイオンポリシングの条件としては、本実施の形態は、ガス604としてArを用い、イオンビーム21の加速電圧800V、イオン電流密度0.5mA/cm、真空度2×10−4Torrにて加工を行った。その結果、従来の方法においては3σで±0.2〜0.3μmとなっていたMR素子高さ15の精度が、本実施の形態では、±0.1μmとなり、高精度に浮上面3を加工することができた。
【0028】
また、浮上面3は、磁気ヘッド1の浮上量を低減するために、表面粗さや加工段差8を極力小さくする必要がある。このために、まず、本実施の形態のイオンポリシング工程1311において、入射角(θ)25と、ヘッド1を構成する各材料のイオンポリシング速度の関係を調べた。その結果を、図9に示す。図9からわかるように、イオンビーム21のローバー122に対する入射角(θ)25を80度以上にすると、アルミナチタンカーバイトの基板9、アルミナの保護膜10、パーマロイの磁性膜11、12についての加工速度の差が小さくなる。そこで、実際に、イオンポリシングした磁気ヘッド1の加工段差8(インダクティブヘッド2とMRヘッド14の部分の浮上面3の高さの平均と、基板9の浮上面3の高さとの差)について、原子間力顕微鏡を用いて測定を行ったところ、図11に示すようにイオン入射角が80度以上になると、絶対値で加工段差8の値が2nm以下になり、浮上面3全体として平滑な面が得られることがわかった。
【0029】
さらに、このときの各材料の表面粗さを調べたところ、図10のように、アルミナチタンカーバイトの基板9がRmax5nm以下、アルミナの保護膜10がRmax4nm以下、パーマロイの磁性膜11、12がRmax3nm以下になり、研磨加工と同等以上の面精度が得られた。これらの結果は、入射角(θ)25を90度に近づけると、イオンビーム21により除去される加工単位をオングストローム単位に微小化され、材料ごとの物性の違いによる加工性の影響を少なくすることができることを示している。
【0030】
これらのことを総合すると、入射角(θ)25は、80度から90度に設定することが望ましいことがわかる。これにより、加工段差8が小さく、しかも、表面粗さが滑らかな浮上面3を得ることができる。
【0031】
このように、イオンポリシング工程1311により、ローバー122の浮上面3を磁気ヘッド1ごとに精密に加工し、MR素子高さ15を規制した後は、図13(b)のように、従来と同様に、浮上面3の一部に所望のテーパー101を形成する(工程1305)。そして、ローバー122のまま、基板9の浮上面3に、スライダレール124を形成し(工程1306)、最後に、ローバー122を切断して、個々の磁気ヘッド1に分割する(工程1307)。その際、隣接する磁気ヘッド1の間の抵抗検知素子141の部分でローバー122を研削することにより、抵抗検知素子141は研削により失われ、完成された磁気ヘッド1には抵抗検知素子141は残らない。
【0032】
これにより、上述のように、MR素子高さ15が3σで±0.1μmの高精度に規制でき、しかも、加工段差が小さい磁気ヘッド1を製造することができる。さらに、本実施の形態のイオンポリシング工程1311は、ドライ加工のため加工後に液洗浄する必要がなく、浮上面3の表面部の腐食や、特性の変化の恐れがないという利点もある。
【0033】
なお、本実施の形態では、イオンポリシング工程1311中はローバー122を固定状態にしているが、浮上面3の面内で20rpm以下で回転させながら加工を行ってもほぼ同様の結果が得られる。
【0034】
また、イオンポリシングを行う際のイオンビーム21は、ローバー122の浮上面3に対して拡散した状態や、浮上面3の一部分に集束させた状態あるいはそれらを組み合わせた状態にすることもできる。
【0035】
また、本実施の形態では、ECR方式のイオン源700を用いているが、イオン源700は、この構成のものに限定されるものではない。例えば、熱電子発生用フィラメントを有し、このフィラメントより発生した熱電子に外部磁場によりトロイダル運動を与え、活性ガスの効率的なイオン化によりプラズマを生成し、このプラズマから活性イオン(イオンビーム)を電極より引き出すイオン源を用いることもできる。
【0036】
さらに、上述の実施の形態では、ガス導入機構604からArのみを供給し、浮上面3をArイオンの衝突によって物理的に削っているが、Arに反応性のガスを混入することもできる。例えば、フッ化炭化水素であるテトラフロロメタンを混合することができる。混合量はイオンポリシングを行う上で、適正な真空度(0.8〜5×10−4Torr)となるように調節すればよい。このフッ化炭化水素のプラズマから発生するFラジカルは、基板9や保護膜10の材料と化学反応し、これらの材料の加工速度を高める一方で、磁性膜11、12やMRヘッド14やシールド膜13とは反応しない。したがって、このように反応性のガスを混入することにより、硬度の高い基板9を積極的に加工することができる。通常のAr等の不活性ガスのイオンビームでポリシングを行うと、材料の硬度の関係から磁性膜11、12が基板9よりもくぼむが、反応性ガスを混入することにより、磁性膜11、12やMRヘッド14やシールド膜13の端面を基板9よりと同一平面上(すなわち加工段差8がゼロ)にすることや、磁性膜11、12の端面を基板9よりも突出させることが可能になる。これにより、磁気ヘッド1を使用する際に、インダクティブヘッド2およびMRヘッド14を磁気ディスク5により接近させることができるため、浮上量7を低減することができる。なお、これら反応性ガスを混合にしてもイオンポリシング速度、表面粗さ、加工段差はほとんど変化しない。また、Ar以外に、He、Ne、Xe等の希ガスも用いることができる。
【0037】
なお、上述してきた製造方法において、イオンポリシング工程1311を行った後に、図12に示すように、浮上面3の一部上で、微細な曲率を持つプローブ27を走査させて、所望の部分のみを数ナノメートル程度物理的に削り取る追加工工程1312(図13(b))を行うことも可能である。この追加工は、上述のように反応性ガスを混合してイオンポリシングを行い、インダクティブヘッド2およびMRヘッド14が基板9よりも大きく突出しているときに行うと特に有効であり、突出したインダクティブヘッド2等を基板9と同程度の高さまで削るころができる。これにより、加工段差8をほぼゼロにすることができ、加工段差の制御性がより高まる。プローブ27としては、本実施の形態では、Degital Instrument社製原子間力顕微鏡(AFM)の単結晶ダイヤモンド製のプローブを用い、当原子間力顕微鏡装置を用いてプローブ27を走査させた。なお、インダクティブヘッド2およびMRヘッド14を基板9よりも突出させるための条件としては、イオンビーム21の入射角(θ)25を80度近傍にするか、Arガスにフッ化炭化水素ガスを60%以上混合する。これにより、数ナノメートルの範囲で任意に突出させることができる。
【0038】
また、図13(b)のイオンポリシング工程1311の前に、砥粒を用いた研磨加工により浮上面研磨工程1320を行い、イオンポリシング工程1311を仕上げ加工として用いることも可能である(図13(d))。この場合、ローバー122に抵抗検知素子141が配置されているため、砥粒を用いた浮上面研磨工程1320中に抵抗検知素子141の抵抗検知を行うことにより、研磨量をモニタすることが可能である。したがって、砥粒を用いた研磨工程1320中に、抵抗検知素子によって加工量をモニタしながら、研磨治具を変形させて、ローバーの曲り、傾きを制御し、予め定めた範囲内に加工量が達するように研磨を行った後に、イオンポリシング工程1311で、集束させたイオンビームを用いたイオンポリシングを行い、各磁気ヘッド浮上面3に対して個別に加工を行うことにより、イオンポリシング工程での加工量を少なくすることができる。具体的には、従来の砥粒を用いた研磨では、素子高さ精度は±0.3μmのばらつきを持つため、上記の抵抗検知素子141から得られた抵抗値データをもとに換算した0.05μm〜0.6μmの微小な加工量だけ各磁気ヘッド1にイオンポリシングによる追加工を行った。その結果、MR素子高さ15については、加工精度±0.15 μmとなり砥粒の研磨方法だけよりも素子高さの加工精度向上が実現できた。また、浮上面3の表面粗さについても研磨加工と同等以上の良好な結果が得られた。
【0039】
なお、上述してきたイオンポリシング工程1311で用いた図6の装置では、ローバーホルダー22が、1個の磁気ヘッド1に対して、1枚のシャッタ152を備えている構成のものであるが、ローバー122内の磁気ヘッド1の数が多い場合には、シャッタ152の数も多くなる。その場合、いくつかの磁気ヘッド1をまとめて1枚のシャッタ152で覆うように、シャッタ152を大きくすることにより、シャッタ152の枚数を少なくすることができる。イオンポリシングによる加工量の分布は、それほど大きくないので、このようにシャッタ152の枚数を減らしても、高精度にMR素子高さ15を仕上げることが可能である。
【0040】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明によれば、磁気ヘッドの浮上面の磁気ヘッド素子の腐食を防止し、加工段差が小さく、しかも、素子高さを高精度に制御できる磁気ヘッドの製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の磁気ヘッドおよび磁気ディスク装置の概略構成を示す説明図。
【図2】図1の磁気ヘッドの層構成、および、磁気ヘッドと磁気ディスクとの位置関係を示す説明図。
【図3】図1の磁気ヘッドの浮上量と、磁気ディスクの記録ビット長との関係を示すグラフ。
【図4】従来のダイヤモンド砥粒を用いたラッピング方法を示す説明図。
【図5】図4の方法で浮上面を加工した磁気ヘッド加工段差を示す説明図。
【図6】本発明の一実施の形態の磁気ヘッド製造方法において、イオンポリシング方法に用いる装置の構成を示すブロック図。
【図7】図6のイオンポリシング装置のローバーホルダー22の構成を示す斜視図。
【図8】図6のイオンポリシング装置において、ローバーホルダー22のシャッタ152を閉じる制御を説明する説明図。
【図9】図6のイオンポリシング装置によるイオンポリシングにおいて、イオンビームの入射角とイオンポリシング速度との関係を示すグラフ。
【図10】図6のイオンポリシング装置によるイオンポリシングにおいて、イオンビームの入射角と磁気ヘッド浮上面の各材料の表面粗さとの関係を示すグラフ。
【図11】図6のイオンポリシング装置によるイオンポリシングにおいて、イオンビームの入射角と加工段差との関係を示すグラフ。
【図12】本実施の形態の磁気ヘッド製造方法において、イオンポリシングの後にプローブによる追加工を行う工程を示す説明図。
【図13】(a)従来の磁気ヘッド製造工程の流れを示すブロック図。(b)本実施の形態の磁気ヘッド製造工程の流れを示すブロック図。(c)本実施の形態の別の磁気ヘッド製造工程の流れを示すブロック図。(d)本実施の形態のさらに別の磁気ヘッド製造工程の流れを示すブロック図。
【図14】本実施の形態の磁気ヘッドの製造工程において形成されるローバー122の側面のインダクティブヘッド2とMR素子14と磁気抵抗素子141の配置を示す説明図。
【図15】図6のイオンポリシング装置のローバーホルダー22の構成を示すための部分上面図。
【符号の説明】
1・・・磁気ヘッド、2・・・インダクティブヘッド、3・・・浮上面、4・・・支持バネ、5・・・磁気ディスク、6・・・駆動装置、7・・・浮上量、8・・・加工段差、9・・・基板、10・・・保護膜、11・・・上部磁性膜、12・・・下部磁性膜(兼用上部シールド膜)、13・・・下部シールド膜、14・・・MR(磁気抵抗効果型)素子、15・・・素子高さ、16・・・定盤、17・・・スラリー、18・・・研磨治具、21・・・イオンビーム、22・・・ローバーホルダー、23・・・制御装置、24・・・出力装置、25・・・イオン入射角、27・・・プローブ、122・・・ローバー、141・・・抵抗検知素子、145・・・薄膜抵抗体、146・・・パッド、151・・・トレー、152・・・シャッタ、153・・・プローブ、601・・・マイクロ発生装置、602・・・磁場発生装置、603・・・イオン引き出し電極、605・・・基板冷却機構、606・・・真空排気装置、607・・・ロードロック機構、610・・・導波管、700・・・イオン源。

Claims (7)

  1. 平板状の基板上に、複数の薄膜磁気ヘッド素子と複数の薄膜抵抗体とを、当該薄膜磁気ヘッド素子と当該薄膜抵抗体とが互いに隣り合うように配列して形成した後、前記基板を前記配列に沿って所定の方向に切り出すことにより、前記複数の薄膜磁気ヘッド素子が一列に連結した状態のブロックを形成する第1の工程と、
    前記各薄膜磁気ヘッド素子の浮上面となる面にイオンビームを照射することにより、前記浮上面を削りとる加工を行、前記各薄膜磁気ヘッド素子と隣り合う前記薄膜抵抗体の抵抗値をそれぞれ検出することにより、該抵抗値を用いて、前記各薄膜磁気ヘッド素子の浮上面の加工量をモニターする第2の工程と、
    前記抵抗値が予め定めた値に達したとき、当該抵抗値が検出された薄膜抵抗体と隣り合う薄膜磁気ヘッド素子の浮上面を、前記複数の薄膜磁気ヘッド素子のそれぞれについて設けられたシャッタのうち、当該薄膜抵抗体と隣り合う薄膜磁気ヘッド素子に対応するシャッタで覆うことにより、加工を停止させる第3の工程と、
    前記薄膜磁気ヘッド素子の境界で前記ブロックを切断する第4の工程と、
    を備えてなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  2. 前記第1の工程と前記第2の工程との間に、
    前記薄膜磁気ヘッド素子の浮上面を、砥粒を用いて微少量研磨する工程を、更に備えてなることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  3. 前記第2の工程において、前記イオンビームの軸方向と前記浮上面の法線とのなす角度を、80度以上90度以下にすることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  4. 前記イオンビームが、前記浮上面を構成する材料と反応して該浮上面を削りとる反応性イオンを含んでなることを特徴とする請求項1に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  5. 前記第2の工程の後に、
    前記基板よりも突出した、前記浮上面上の部分を、前記浮上面上を走査するためのプローブを用いて除去する工程を更に備えてなることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  6. 基板上に複数の磁気ヘッドが一列に連結した状態で形成されたブロックを保持するためのホルダーと、
    前記ブロックにイオンビームを照射するためのイオン源と、
    を備え、
    前記ホルダーは、
    前記各磁気ヘッドごとにそれぞれに設けられた、当該磁気ヘッドを覆うためのシャッタと、
    前記各シャッタを開閉する駆動機構と、
    を有してなることを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造装置。
  7. 請求項6に記載の、薄膜磁気ヘッドの製造装置であって、
    前記ホルダーが、前記磁気ヘッドに隣接して配置されている薄膜抵抗素子に接触するためのプローブを備え、
    当該製造装置は、
    該プローブを介して、前記薄膜抵抗素子の抵抗値を検出するとともに、該抵抗値が予め定めた値に達したとき、前記薄膜抵抗素子に隣接する前記磁気ヘッドを覆うために前記シャッタを閉じるように前記駆動機構を制御する制御手段を備えてなることを特徴とする、薄膜磁気ヘッドの製造装置。
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