JP3547263B2 - 成形機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動源として油圧シリンダを用いた射出成形機やダイカストマシン等の成形機に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧式の射出成形機においては、射出シリンダ(油圧シリンダ)による射出速度および射出圧力の制御条件は、良品を成形する上での重要なファクターであり、この射出速度あるいは射出圧力をオープン制御によってコントロールする手法や、フィードバック制御によってコントロールする手法は、各種のものが提案されている。
【0003】
当然のことであるが、フィードバック制御によって射出速度または射出圧力をコントロールすると、精緻な制御が行えるが、反面、高速応答が可能な高価な電磁制御弁を用いることを余儀なくされるため、マシンのコストを押し上げる。
【0004】
そこで、速度制御あるいは圧力制御の主体をオープン制御出力値にゆだね、目標設定値から外れた量だけの補正をフィードバック制御出力値に担わせるようにした、成形機のフィードバック制御方法を、本願出願人は特開平8−80554号公報において提案した。この先願公報に開示された手法によれば、目標とする設定値に近い実測値(速度実測値または圧力実測値)が得られるオープン制御用の出力値に、PID演算によって得られたフィードバック制御用の出力値を加算するので、フィードバック制御量は小さくて済み、かつ、フィードバックゲインを大きくできるので、応答性が多少鈍い電磁制御弁でも(つまり、安価な電磁制御弁でも)フィードバック制御を行うことが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した先願公報によるフィードバック制御方法においては、射出時の負荷(樹脂による抵抗)が小さかったり、射出が低速の場合には、比較的きれいに速度フィードバックがかかってくれるが、電磁制御弁に例え高速応答可能な電磁比例制御弁を用いたとしても(上記した先願公報では応答性の多少鈍い安価な電磁制御弁を用いているが)、高負荷で高速の場合には、油圧回路の設計計算上では余裕があるにもかかわらず、設定通りの速度にならず、速度フィードバックがかからない状態となる事態が間々生じた。かような場合、速度の補正ができないため、外乱(樹脂温度変動,周囲温度変動等)による速度バラツキを抑えるという、フィードバック制御本来の効果が全く期待できず、最悪の場合にはバラツキを増幅してしまう。
【0006】
上記の要因の1つは、ある程度のオープン制御用出力値に、所定の制限幅を設けたフィードバック制御用出力値を加算することにより、速度フィードバック制御を実現しているため、負荷が大きい場合には、上記のある程度のオープン制御用出力値が実際の負荷圧値とかけ離れてしまって、速度フィードバックがかからなくなるためである。
【0007】
すなわち、フィードバックの直接の制御対象となる電磁制御弁における、バルブ駆動指令値(バルブ駆動電圧値)−流量値の特性は、電磁制御弁の入力側と出力側との差圧値(換言すると、電磁制御弁の出力圧力値)が異なる毎に、各差圧値毎に異なった特性を示すものであり、かつ、非直線のデータとなるものであったが、従来は、単一の直線データで示されるバルブ駆動指令値−流量値の擬似特性データを用いていた。このため、上記したある程度のオープン制御用出力値は、電磁制御弁の出力圧力値にどのようなバラツキがあっても、直線かつ固定の(単一の)バルブ駆動指令値−流量値の擬似特性データに則って、設定速度(すなわち流量)から割り出されるバルブ駆動指令値(バルブ駆動電圧値)となるため、バルブ駆動指令値が示す速度(流量)が実際に出力すべく速度とかけ離れてた値となってしまうことが、しばしば生じるからであった。なお、これはオープン制御のみで速度制御を行う場合にも言える事柄で、設定速度に対して実際の速度が大きく異なってしまう。
【0008】
一方また、1次射出において圧力フィードバック制御を行うと、1次射出(射出・充填)動作中は、射出シリンダのピストン体が前進を続けているので、このピストン体が移動し続けている際の圧力制御(動圧の制御)は相当に難しく、1次射出の圧力フィードバック制御は精度が落ちるという問題もあった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、負荷が大きく変動しても、変動した負荷に見合った適切なオープン制御用出力値を出力可能とすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した目的を達成するため、油圧シリンダを駆動制御するための流量(速度)制御用の比例電磁制御弁を備え、少なくとも上記油圧シリンダの速度制御を行う成形機において、上記比例電磁制御弁の入力側と出力側との実測差圧値と、上記比例電磁制御弁の特定の基準差圧値における既知のバルブ駆動指令値−流量値特性線データとから、上記実測差圧値に対応するバルブ駆動指令値−流量値特性線データを求め、この求めたバルブ駆動指令値−流量値特性線データを用いて、速度(流量)指令値に対応するバルブ駆動指令値を算出し、この算出したバルブ駆動指令値に基づく駆動信号を上記比例電磁制御弁に出力して、速度制御を行うようにする。
【0011】
さらに、上記の手法で算出したバルブ駆動指令値をオープン制御用の出力値とし、このオープン制御用の出力値と、PID演算によって得られるフィードバック制御用の出力値とを加算して、この加算結果に基づく駆動信号を比例電磁制御弁に出力して、速度のフィードバック制御を行うようにする。
【0012】
また、油圧シリンダを駆動制御するための圧力制御用の比例電磁制御弁を備え、少なくとも上記油圧シリンダの圧力制御を行う成形機の制御方法において、上記油圧シリンダへの実測供給流量値と、上記比例電磁制御弁の入力側の実測圧力値と、設定された圧力指令値と、上記比例電磁制御弁の特定の基準差圧値における既知のバルブ駆動指令値−流量値特性線データとから、上記圧力指令値が実際に出力される差圧(上記比例電磁制御弁の入力側と出力側との差圧)となるバルブ駆動指令値−流量値特性線データを求め、この求めたバルブ駆動指令値−流量値特性線データを用いてバルブ駆動指令値を算出し、この算出したバルブ駆動指令値に基づく駆動信号を上記比例電磁制御弁に出力して、圧力制御を行うようにする。
【0013】
さらに、上記の手法で算出したバルブ駆動指令値をオープン制御用の出力値とし、このオープン制御用の出力値と、PID演算によって得られるフィードバック制御用の出力値とを加算して、この加算結果に基づく駆動信号を前記比例電磁制御弁に出力して、圧力のフィードバック制御を行うようにする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の1実施形態に係る射出成形機の射出系の油圧回路を簡略化して示す図である。同図において、1は図示せぬスクリューを前後進駆動するための射出シリンダ、2は流量(速度)優先の制御または圧力優先の制御を択一的に行う高速電磁比例制御弁(圧力制御弁を兼用する高速電磁比例流量制御弁;以下、電磁制御弁2と称す)、3は図示せぬ油圧ポンプからの圧油を蓄圧する射出用高圧作動油供給源たるアキュームレータ(以下、ACC3と称す)である。また、4,5は油圧センサ、6は速度センサである。本実施形態では、高圧の作動油を供給するACC3を用いているので、高圧かつ高速の射出が可能となっており、また、高速応答の電磁制御弁2を用いているので、高速の速度または圧力制御が可能なようになっている。
【0015】
電磁制御弁2はバルブ駆動信号XT によって駆動制御され、流量(速度)優先の制御または圧力優先の制御によって、ACC3からの圧油を射出シリンダ1に供給して、これにより公知の1次射出および保圧を実行させる。
【0016】
圧力センサ4は、電磁制御弁2の入力ポート側の圧力(すなわち、ACC3の出力する圧油の圧力)を検出して、ACC圧力実測値PACC をマシン(射出成形機)の制御系へ出力する。圧力センサ5は、電磁制御弁3の出力ポート側の圧力(すなわち、射出圧力に相当する圧力)を検出して、射出圧力実測値Pi をマシンの制御系へ出力する。速度センサ6は、射出シリンダ1の図示せぬピストン体の実測ストロークデータに基づき射出速度を検出して、射出速度実測値Vi をマシンの制御系へ出力する。
【0017】
図2は本実施形態の射出速度制御系の構成を示す図で、同図において、図1と均等なものには同一符号を付してある。図2において、7は比較器(減算器)、8は速度フィードバック制御部(以下、速度FB制御部8と称す)、9はPID演算部、10は出力変換部、11はオープン出力値算出部、12は加算器、13はD/A変換器、14は前記射出シリンダ1や電磁制御弁2等を含む射出系油圧回路である。
【0018】
また、VO は射出速度設定値、eは偏差、uは操作量、XFBはフィードバック制御用のバルブ駆動指令値(以下、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBと称す)、XOPはオープン制御用のバルブ駆動指令値であり、また、XT は前記バルブ駆動信号、Vi は前記射出速度実測値、PACC は前記ACC圧力実測値、Pi は前記射出圧力実測値である。
【0019】
射出シリンダ1のピストン体の前進位置(ストローク)に応じて予め設定された射出速度設定値VO は、比較器7およびオープン出力値算出部11に入力される。また、射出シリンダ1からの射出速度実測値Vi は、比較器7に入力される。比較器7では、射出速度設定値VO と射出速度実測値Vi との差分(偏差e)を算出して、速度FB制御部8のPID演算部9に出力する。
【0020】
PID演算部9は、公知のPID(比例・積分・微分)演算動作を行い、「P」演算動作で単位ステップ入力に対して大きさ任意倍の出力とし、「I」演算動作で単位ステップ入力に対し出力を積分作用によって直線的に増減させたものとし、「D」演算動作で微分作用によって時間進みを生じさせ、これら「P」,「I」,「D」演算動作を同時に行うことによって、フィードバック操作量uを算出して、出力変換部10に出力する。
【0021】
なお、PID演算部9で実行される演算式を参考までに示せば、次の▲1▼式の通りである。ただし、▲1▼式において、P,Ti ,Td は定数である。
【0022】
【数1】
【0023】
出力変換部10では、PID演算部9の出力たる操作量uを、操作量u→制御出力値yの出力変換式、すなわち、y= g1(u)によって制御出力値yに演算変換処理して求め、これをFB制御用のバルブ駆動指令値XFBとして、加算器12に出力する。なお、出力変換部10は、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBに所定の制限幅を設けて、従来のフィードバック制御のように無制限にフィードバック出力値が出ないように、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBの最大値を規制するようになっている。この点は前記した先願公報(特開平8−80554号公報)においても開示しているが、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBの最大値は、後記するオープン制御用のバルブ駆動指令値XOPの±数%〜±10%程度の範囲に収まるようにされる。
【0024】
オープン出力値算出部11には、射出速度設定値VO の他に、射出系油圧回路14中の前記圧力センサ4,5からのACC圧力実測値PACC ,射出圧力実測値Pi が入力される。このオープン出力値算出部11には、電磁制御弁2の特定の基準差圧値(ΔPR )におけるバルブ駆動指令値−流量値特性線データ(詳細は後述する)が予め格納されており、オープン出力値算出部11は、この特性線データと、ACC圧力実測値PACC ,射出圧力実測値Pi (すなわち、PACC −Pi =ΔPm で示される電磁制御弁2の入力側と出力側との実測差圧値)とから、実測差圧値ΔPm に対応するバルブ駆動指令値−流量値特性線データを算出する。そして、算出したバルブ駆動指令値−流量値特性線データを用いて、射出速度設定値VO に対応するバルブ駆動指令値を算出し、これをオープン制御用のバルブ駆動指令値XOPとして、加算器12に出力する。
【0025】
加算器12では、上記オープン制御用のバルブ駆動指令値XOPに、前記FB制御用のバルブ駆動指令値XFBを加算し、加算結果はD/A変換器13に出力される。D/A変換器13では、加算結果をアナログ信号に変換し、前記バルブ駆動信号XT として電磁制御弁2に出力する。
【0026】
次に、オープン出力値算出部11について詳述する。
図5に示し公知のように、オリフィスの式から、差圧ΔP=P1−P2のときの流量Qは、次の▲2▼式で示される。ただし、▲2▼式において、Aはオリフィス開口面積、Cは定数である。
【0027】
【数2】
【0028】
いま、電磁制御弁2の入力側と出力側とのある特定の差圧ΔPR (基準差圧値ΔPR )が一定であるとしたときの、バルブ駆動指令値−流量値特性線データ(Q0 =fq(Volt) )が既知であるとする。このバルブ駆動指令値−流量値特性線データ(Q0 =fq(Volt) )は非直線のデータで、基準差圧値ΔPR (例えば40kgf/cm2 )のデータをバルブメーカから入手したり、あるいは、後述するようにマシン(射出成形機)自体が計測・演算することによって、オープン出力値算出部11が保持している。図4は、バルブ駆動指令値−流量値特性線データを示す図で、同図において、41が基準差圧値ΔPR (ここでは、ΔPR =40kgf/cm2 )が一定のときの、バルブ駆動指令値−流量値特性線データ(Q0 =fq(Volt) )である。
【0029】
オープン出力値算出部11には、前記のようにACC圧力実測値PACC と射出圧力実測値Pi とが入力されるので、電磁制御弁2の入力側と出力側との実測差圧値ΔPm を、ΔPm =PACC −Pi によって求めることができる。この実測差圧値ΔPm のときの流量Qm は、先に述べたオリフィスの式を用いて、次の▲3▼式によって求めることができる。
【0030】
【数3】
【0031】
したがって、上記の▲3▼式から、流量Qm (つまり、射出速度設定値V0 に対応する流量Qm )を流したいときの、電磁制御弁2へのバルブ駆動指令値XOP’(前記バルブ駆動指令値XOPをアナログ変換したものに相当)は、次の▲4▼式によって求めることができる。
【0032】
【数4】
【0033】
これは、ΔPm =PACC −Pi が一定であるとしたときの、図4で42で示すバルブ駆動指令値−流量値特性線データ(Qm =fq(Volt) )を求め、この特性線データ42に則って、流量Qm に対応するバルブ駆動指令値XOP’−mを求めることに相当する。
【0034】
よって、射出速度の制御を行う間、常時ACC圧力実測値PACC と射出圧力実測値Pi とを計測し、上記の▲4▼式によってリアルタイムで、例えば多段設定された各射出速度設定値V0 (各流量Qm )に対する適切なバルブ駆動指令値を求めることができ、リアルタイムで求めたバルブ駆動指令値を出力することによって、ほぼ射出速度設定値V0 通りの速度(流量)を出すことができる。
【0035】
ところで、上記の計測/演算手法により、実測差圧値ΔPm 等に基づきリアルタイムで求められる、射出速度設定値V0 (流量Qm )に対応する適切に修正演算されたバルブ駆動指令値を出力するということは、電磁制御弁2に高速応答性のものを用いているので、電磁制御弁2にオープン制御用のバルブ駆動指令値XOP’(XOP)のみを出力するだけで、つまり、図2の構成からフィードバック制御系を省いたオープン制御系のみの構成としても、ほぼ射出速度設定値V0 通りの速度(流量)を出すことができることを示している。したがって、本実施形態では、フィードバック制御系を付加した構成としているが、オープン制御のみの射出速度制御系にも本発明は適用可能であることは言うまでもなく、この場合にも、精度の良好な射出速度の制御を行うことができる。なお、本実施形態では、フィードバック制御系を付加した構成としているので、さらに一層精度の良好な速度制御を行うことができ、高負荷で高速の場合であっても良好な速度制御(速度フィードバック制御)を行うことができる。
【0036】
図3は本実施形態の射出圧力制御系の構成を示す図で、同図において、図2と均等なものには同一符号を付してある。図2において、21は比較器、22は圧力フィードバック制御部(以下、圧力FB制御部22と称す)、23はPID演算部、24は出力変換部、25はオープン出力値算出部、26は加算器である。また、P0 は射出圧力設定値、Pi は前記射出圧力実測値、PACC は前記ACC圧力実測値、Vi は前記射出速度実測値である。
【0037】
射出圧力設定値P0 は、射出行程の1次射出を圧力優先制御で行う場合には、射出シリンダ1のピストン体の前進位置(ストローク)に応じて予め設定され、また、射出行程の保圧時には時間軸に沿って予め設定される。この射出圧力設定値P0 は、比較器21およびオープン出力値算出部25に入力される。また、射出系油圧回路14からの射出圧力実測値Pi は、比較器21に入力される。
【0038】
比較器21では、射出圧力設定値P0 と射出圧力実測値Pi との差分(偏差e)を算出して、圧力FB制御部22のPID演算部23に出力する。PID演算部23は、PID演算動作によって偏差eを操作量uに変換し、これを出力変換部24に送出する。出力変換部24では操作量uを先と同様に変換処理して、制御出力値yを求め、これをFB制御用のバルブ駆動指令値XFBとして、加算器26に出力する。なお、出力変換部24も先と同様に、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBに所定の制限幅を設けて、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBの最大値が、後記するオープン制御用のバルブ駆動指令値XOPの±数%〜±10%程度の範囲に収まるようにする。
【0039】
オープン出力値算出部25には、射出圧力設定値P0 の他に、ACC圧力実測値PACC と射出速度実測値Vi とが入力され、射出速度実測値Vi は流量実測値Qi に変換される。オープン出力値算出部25にも、電磁制御弁2の特定の基準差圧値(ΔPR )におけるバルブ駆動指令値−流量値特性線データ(図4中のバルブ駆動指令値−流量値特性線データ41(Q0 =fq(Volt) )が予め格納されている。そして、オープン出力値算出部25は、この特性線データ41と、ACC圧力実測値PACC と、流量実測値Qi と、射出圧力設定値P0 とから、PACC −P0 =ΔPn の差圧が出るようなバルブ駆動指令値−流量値特性線データを算出する。そして、算出したバルブ駆動指令値−流量値特性線データを用いて、流量実測値Qi に対応するバルブ駆動指令値を算出し(つまり、射出圧力設定値P0 が出るような差圧ΔPn となるように、バルブ駆動指令値を算出し)、これをオープン制御用のバルブ駆動指令値XOPとして、加算器26に出力する。
【0040】
上記オープン出力値算出部25における演算処理は、前記オープン出力値算出部11におけるそれとほぼ同様に、バルブ駆動指令値XOP’(Volt)=g3 (Qi ,PACC ,P0 )=g3 (Vi ,PACC ,P0 )で求められる。なお、保圧時の圧力制御においては、Qi ≒0として同様の演算処理を行うことになる。
【0041】
加算器26では、上記オープン制御用のバルブ駆動指令値XOPに、FB制御用のバルブ駆動指令値XFBを加算し、加算結果はD/A変換器13に出力される。D/A変換器13では、加算結果をアナログ信号に変換し、バルブ駆動信号XT として電磁制御弁2に出力する。
【0042】
上述の圧力制御においても、電磁制御弁2に高速応答性のものを用いているので、電磁制御弁2にオープン制御用のバルブ駆動指令値XOP’(XOP)のみを出力するだけで、つまり、図3の構成からフィードバック制御系を省いたオープン制御系のみの構成としても、ほぼ射出圧力設定値P0 通りの圧力を出すことができる。したがって、本実施形態では、フィードバック制御系を付加した構成としているが、オープン制御のみの射出圧力制御系にも本発明は適用可能であることは言うまでもなく、この場合にも、精度の良好な射出圧力の制御を行うことができる。なお、本実施形態では、フィードバック制御系を付加した構成としているので、さらに一層精度の良好な圧力制御を行うことができるのは当然である。
【0043】
なおここで、図2の射出制御系と図3の圧力制御系とは別個の制御系として示してあるが、実際には図2の射出制御系と図3の圧力制御系とは1つの制御系として一体化されており、図2の加算器12の出力と図3の加算器26の出力を択一選択するスイッチ回路の出力が、D/A変換器13に出力されるようになっている。
【0044】
以上の説明では、電磁制御弁2の特定の基準差圧値(ΔPR )におけるバルブ駆動指令値−流量値特性線データ(図4中のバルブ駆動指令値−流量値特性線データ41;Q0 =fq(Volt) )が、予め求められていて、固定のものであることを前提として説明した。しかし本実施形態では、射出を行っているときの、実測差圧値ΔPm =PACC −Pi ,流量実測値Qi ,バルブ駆動指令値XOP’(XOP)が計測・記憶可能であるので、これらをサンプリングすることにより、特定の基準差圧値(ΔPR )が一定であるとしたときの、バルブ駆動指令値−流量値特性線データ41(Q0 =fq(Volt))を、より正確なデータとして更新・保持することも可能である。
【0045】
例えば、基準となるバルブ駆動指令値−流量値特性線データの自動調整モードを設けておき、この自動調整モードで、バルブ駆動指令値XOP’を0→0.5→1.0→……5.0(Volt)のように変えながらテスト射出を行い、その射出中の実測差圧値ΔPm =PACC −Pi ,流量実測値Qi を測定してサンプリングすれば、Q0 =fq(Volt)の特性データを最適のものに補正することができる。また、このサンプリングは、マシンの自動運転中に行うことも可能であるため、自動運転中に随時、Q0 =fq(Volt)の特性データの自動調整(自動修正)を行うことも可能となる。なおまた、テスト射出で多数のサンプリングデータを収集することによって、Q0 =fq(Volt)の特性データを全く新たに作成することも可能である。
【0046】
上記のような特性データの自動調整(自動修正)手法を採用することによって、より正確な速度オープン制御または圧力オープン制御を行うことが可能となり、このオープン制御に前記したフィードバック制御を付加することにより、より高精度の速度または圧力制御が達成される。
【0047】
以上述べたように本実施形態においては、適切な速度オープン制御出力または圧力オープン制御出力を行うので、ACC3を用いた構成でありながら、フィードバック制御を用いないオープン制御のみの構成であっても、高応答でほぼ正確な速度または圧力の制御が行える。
【0048】
また、オープン制御に前記したフィードバック制御を付加することにより、より一層高精度の速度または圧力制御が達成できる。すなわち、1次射出中の負荷変動や温度変動等に対して、高応答で高精度な速度フィードバック制御を行うことができる。また、射出シリンダが動いている1次射出中や、保圧中に射出シリンダが微妙に動いている際の、高応答で高精度な圧力フィードバック制御が可能となる。
【0049】
したがって、低速・低負荷から高速・高負荷までのあらゆる範囲の成形品に対して、精密かつ安定な成形が実現できる。
【0050】
【発明の効果】
叙上のように本発明によれば、負荷が大きく変動しても、変動した負荷に見合った適切なオープン制御用出力値が出力できるので、精度が高く高応答の成形運転を行うことができ、さらに、フィードバック制御を付加することにより、より一層高精度の速度または圧力制御が達成でき、極めて精密かつ安定な成形が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る射出成形機における、射出系の油圧回路の簡略化した説明図である。
【図2】本発明の1実施形態に係る射出成形機における、射出速度制御系の構成を示す説明図である。
【図3】本発明の1実施形態に係る射出成形機における、射出圧力制御系の構成を示す説明図である。
【図4】バルブ駆動指令値−流量値特性線データを示す説明図である。
【図5】オリフィスの式の説明図である。
【符号の説明】
1 射出シリンダ
2 電磁制御弁(高速電磁比例制御弁)
3 ACC(アキュームレータ)
4,5 圧力センサ
6 速度センサ
7 比較器(減算器)
8 速度FB制御部(速度フィードバック制御部)
9 PID演算部
10 出力変換部
11 オープン出力値算出部
12 加算器
13 D/A変換器
14 射出系油圧回路
21 比較器
22 圧力FB制御部(圧力フィードバック制御部)
23 PID演算部
24 出力変換部
25 オープン出力値算出部
26 加算器
Claims (7)
- 油圧シリンダを駆動制御するための流量(速度)制御用の比例電磁制御弁を備え、少なくとも上記油圧シリンダの速度制御を行う成形機であって、
上記比例電磁制御弁の入力側と出力側との実測差圧値と、上記比例電磁制御弁の特定の基準差圧値における既知のバルブ駆動指令値−流量値特性線データとから、上記実測差圧値に対応するバルブ駆動指令値−流量値特性線データを求め、この求めたバルブ駆動指令値−流量値特性線データを用いて、速度(流量)指令値に対応するバルブ駆動指令値を算出し、この算出したバルブ駆動指令値に基づく駆動信号を上記比例電磁制御弁に出力して、速度制御を行うようにしたことを特徴とする成形機。 - 請求項1記載において、
前記の手法で算出したバルブ駆動指令値をオープン制御用の出力値とし、このオープン制御用の出力値と、PID演算によって得られるフィードバック制御用の出力値とを加算して、この加算結果に基づく駆動信号を前記比例電磁制御弁に出力して、速度のフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする成形機。 - 油圧シリンダを駆動制御するための圧力制御用の比例電磁制御弁を備え、少なくとも上記油圧シリンダの圧力制御を行う成形機であって、
上記油圧シリンダへの実測供給流量値と、上記比例電磁制御弁の入力側の実測圧力値と、設定された圧力指令値と、上記比例電磁制御弁の特定の基準差圧値における既知のバルブ駆動指令値−流量値特性線データとから、上記圧力指令値が実際に出力される差圧(上記比例電磁制御弁の入力側と出力側との差圧)となるバルブ駆動指令値−流量値特性線データを求め、この求めたバルブ駆動指令値−流量値特性線データを用いてバルブ駆動指令値を算出し、この算出したバルブ駆動指令値に基づく駆動信号を上記比例電磁制御弁に出力して、圧力制御を行うようにしたことを特徴とする成形機。 - 請求項3記載において、
前記の手法で算出したバルブ駆動指令値をオープン制御用の出力値とし、このオープン制御用の出力値と、PID演算によって得られるフィードバック制御用の出力値とを加算して、この加算結果に基づく駆動信号を前記比例電磁制御弁に出力して、圧力のフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする成形機。 - 請求項1乃至4の何れか1つに記載において、
圧油供給源としてアキュームレータを用いたことを特徴とする成形機。 - 請求項1乃至5の何れか1つに記載において、
前記した既知のバルブ駆動指令値−流量値特性線データを、予め作成して格納、または更新して格納するための特性線データ生成モードをもつことを特徴とする成形機。 - 請求項6記載において、
前記特性線データ生成モードにおいては、前記比例電磁制御弁に出力するバルブ駆動指令値を順次変化させ、各バルブ駆動指令値に対応する、前記比例電磁制御弁の入力側と出力側との実測差圧値、および前記油圧シリンダへの実測供給流量値を計測することを特徴とする成形機。
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