JP3546900B2 - コンクリ−ト建物の単位構造および凹所部材 - Google Patents

コンクリ−ト建物の単位構造および凹所部材 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鉄筋コンクリ−ト建物または一部鉄骨を併用した鉄筋コンクリ−ト建物に採用されて店舗一軒や住宅一戸のスペースを構成するコンクリ−ト建物の単位構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリートは、建築材料として多くの利点を有する。使用されるセメント、砕石、砂、鉄筋等が安価で大量に入手でき、耐火性、耐水性に優れ、耐久性を備えた堅牢な建物を構成できる。
鉄筋コンクリートは、圧縮に強いコンクリートを引張りに強い鉄筋で補強した建築材料である。鉄筋は、コンクリート層のアルカリ雰囲気によって酸化から保護されており、コンクリート層に作用する引張り力を受け持ってコンクリートの脆さを補い、建物構造にねばり強さを持たせる。
【0003】
鉄筋コンクリートを現場施工して建物を建築する場合、現場で人手をかけて鉄筋の配筋や型枠の組み立てを行うことで、建物全体の壁、柱、床、天井、隔壁等の構造を継ぎ目無く一体化できる。これに対して、工場で製作した鉄筋コンクリートパネルを現場に運び込んで組み立てる場合、パネルどうしあるいは骨組みの鉄骨とパネルは特別に設計された連結構造によって連結され、連結構造には後から防水処理や防錆処理が行われる。
【0004】
鉄筋コンクリート建物の単位構造は、四方の壁と床と天井で囲まれて店舗、工場、事務所等の一軒や住宅一戸のスペースを構成する。天井は壁と一体に鉄筋を配筋されて継ぎ目無く一体に形成される。屋外の空間と単位構造内の空間を仕切る壁は外壁であり、隣接する2つの単位構造を仕切る壁は戸境壁であり、1つの単位構造内の空間を2つに仕切る壁は隔壁である。外壁に形成した開口は、窓や出入口等に仕上げられ、隔壁に形成した開口は、単位構造の仕切られた2つの空間を行き来する通路等に仕上げられる。従来の単位構造は、1階分の床から天井までを一体に鉄筋コンクリートで形成している。
【0005】
鉄筋コンクリート建物の一般的な施工方法は、下の階の壁、天井、隔壁の施工後、コンクリートの硬化と強度発現を待って次の上の階の壁、天井、隔壁の施工に着手する。
下の階の鉄筋コンクリート構造から突出させた鉄筋に連結して次の1階分の壁と天井の鉄筋構造を組み立て、鉄筋構造の周囲に型枠を組み立てる。ここで、壁の場合には鉄筋構造を挟む両側に型枠を配置するが、天井の場合には底側にだけに型枠を配置し、上側の面は開放状態に残される。組み立て完了した型枠に、品質調整された生コンクリートを流し込んで鉄筋構造をコンクリート層に埋もれさせ、天井(スラブ)部分等のコンクリート層の上側の面を平らに均す。
コンクリートの打ち込み後は、例えば、1〜2週間を養生に当ててコンクリートの硬化と強度の発現を待つ。型枠は、例えば、コンクリート強度がある程度発現した時点で分解されて単位空間の内外から除去されるが、かなり後までそのまま維持される場合もある。
コンクリート強度が十分に発現して次の上の階の施工に耐え得るレベルに到達した後に、次の1階分の壁と天井について、同様な手順で鉄筋構造と型枠が組み立てられ、コンクリートの流し込みとその後の養生が繰り返される。
【0006】
ところで、煉瓦や石を積み上げて壁を形成する工法では、「対向する壁に木材の梁を差し渡して床面を形成する手法」がローマ時代から実用化されている。アーチ構造のような水平力が壁に作用しないで済み、床面を軽量かつ薄型に形成して室内空間を広く確保できるからである。ただし、梁は、壁が梁の高さまで形成された時点で壁の材料に積み重ねられており、梁より上方の壁を積み上げる足場としても使用される。
その後、鉄筋コンクリートを使用したラーメン構造によって、薄くて強く壁に水平力を作用しない床構造(梁構造を伴う)が得られて以来、「対向する壁に木材の梁を差し渡して床面を形成する手法」は、専ら「床、天井、壁、隔壁を鉄筋コンクリートで一体化させた1階分の構造を順次積み上げる手法」に置き換えられている。鉄骨構造では、鉄骨の梁材にデッキプレートと呼ばれる捨て型枠を差し渡してコンクリートを流し込むことにより床面を形成する場合もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
鉄筋コンクリ−トは、下の階を施工して次の階に着手できるまでに、養生期間を含めると、1〜2週間を要するから5階分を施工しようとすると5〜10週間を要する。
これに対して、工場で製作した鉄筋コンクリートパネルを現場で組み立てる場合、現場での養生が不要となるため、工期は大幅に短縮されるが、上述したように、継ぎ目の無い一体化された建物構造を形成することはできない。
【0008】
本発明は、継ぎ目の無い一体化された建物構造を短い工期で形成でき、室内レイアウトの自由度も高まるコンクリ−ト建物の単位構造を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の単位構造は、集合住宅や複合ビルにおける一軒一戸の空間を構成する構造であって、複数の単位構造を水平方向に並べて垂直方向に積層することによって建物が構成される。単位構造は、現場施工された鉄筋コンクリートで形成され、ラーメン構造等の一般的な構造を採用して天井、床、壁が相互一体に形成されている。しかし、従来の鉄筋コンクリート構造が1階分づつを施工して積み重ねるのに対して、本発明の単位構造では、例えば、一度に2階分の壁とその上の天井を形成し、中間高さの床面は、鉄筋コンクリートが硬化して単位構造が完成した後に改めて施工される。そして、壁の中間高さには特別に考慮された凹所または貫通型の開口が配列され、凹所または貫通型の開口に端部を挿入して梁材を支持させ、これらの梁材の上に床面を組立てている。
【0010】
請求項1のコンクリート建物の単位構造では、凹所が縦長の開口として形成され、梁材を上方に回動させて凹所に着脱できる。
請求項2のコンクリート建物の単位構造では、凹所が縦長の開口として形成され、梁材の高さ調節のためのスペーサを配置できる。
請求項3のコンクリート建物の単位構造では、凹所が高さ位置を異ならせて2組準備され、床面の施工時に都合の良い高さの組を選択できる。
これらの凹所は、非保水性の腐食しない材料、例えばセラミックで内張りし、梁材等をコンクリートの組織に接触はもちろん単に対向させもしない構造とすることが望ましい。
【0011】
単位構造は、床から天井まで達して内部空間を仕切る鉄筋コンクリートの隔壁を設け、
給排水やガス配管が必要な水回り空間に隔壁の内側空間を割り当てて水回り設備を集中的に配分し、外側の居室空間や店舗空間から分離してもよい。
外壁に面して水回り空間を形成し、この外壁の外側面に垂直方向に連続させた配管溝を設けてもよい。配管溝に給排水やガスの共同配管を集中的に配置して上下の階で共用してもよい。配管溝と水回り空間を仕切る外壁に配管口を形成して、水回り空間内の設備をそれぞれの共同配管へ接続してもよい。
【0012】
外壁は、壁厚の中間深さに空き瓶等のガラス容器を面状に配列して鉄筋コンクリートに埋め込むことで、その強度や保温性を高めることができる。
【0013】
凹所部材は、箱状の凹所を有するセラミックの内張り部材の周囲にコンクリート(モルタルや透水性の粗い組織を含む)の緩衝層を形成してもよい。凹所部材を壁の鉄筋や型枠に固定した状態でコンクリートを流し込んで壁に埋め込み一体化させてもよい。緩衝層には、打ち込まれるコンクリートとの接合や一体性を改善するための構造を追加してもよい。例えば、コンクリートの流れ方向に沿ったひれ構造や細かな溝構造である。
緩衝層の下部の外観は、打ち込んだコンクリートを円滑に流すべく、凹所の開口側と反対側に底面を配置して下側に側辺を配置した三角柱状またはこれに類した形状とすることが望ましい。
【0014】
水回り空間と居室空間を隔壁で分離した単位構造を水平方向に並べて垂直方向に積み重ねることにより集合住宅を構成できる。単位構造は、2階分の壁を先に形成して後から中間高さの床面を形成するものに限定されないが、水回り空間を外壁に隣接させて設けることが望ましく、このとき、水回り空間の外壁の一部を内側へ後退させて上下の階で連続した配管溝を形成してもよい。垂直方向に積み重ねた複数の単位構造を上方から透視すると、水回り空間の外壁と隔壁がそれぞれぴったり重なり合い、配管溝に共同の給排水管が配置される。
【0015】
【作用】
本発明のコンクリート建物の単位構造では、例えば、2階分の天井高さを持たせて鉄筋コンクリートで形成した単位構造の中間高さに、後から床面を追加形成して単位構造内の1階と2階を分離する。この構造は、古来の「積み上げ過程で対向する壁に梁を差し渡して床面を形成する手法」とは異なり、壁と天井の一体構造が完成した後に、壁の中間高さの凹所に梁材の端部を直接挿入して床面を支持させる。
例えば、材木の角材や鉄パイプの梁材を複数本平行に差し渡し、梁材の上に床板を固定する。1階部分の天井は、床面を固定した梁材から吊り下げてもよく、別の凹所に専用の梁材を差し渡して支持させてもよく、2階部分の床構造の裏面をそのまま利用してもよい。隣接する壁面の凹所に梁材を差し渡して三角形の床支持構造を形成してもよく、丸太梁を平行に並べて丸太梁の質感をそのまま1階の天井の意匠に利用してもよい。
壁に凹所を設ける手法としては、硬化して型枠が取り外された壁の鉄筋コンクリートに孔を開けたり、開けた孔に後述する内張り部材をモルタルで埋め込む手法があるが、好ましくは、単位構造の配筋型枠工事の際に、鉄筋構造や型枠に対して後述する内張り部材や凹所部材を固定しておき、型枠にコンクリートを流し込む過程で一気に壁に一体化させる。
【0016】
請求項1のコンクリート建物の単位構造では、梁材の両方の端部が対向する壁の凹所に直接に挿入される。梁材の端部は、凹所の側面によって水平方向に拘束され、凹所の棚部によって荷重を支持され、凹所の底面によって軸方向の移動を限界付けられているが、回動空間を通して上方に回動すれば、端部を凹所の外へ出して梁材を一対の凹所から取り外し可能である。
梁材は、床面を乗せて重量を課したり、回動空間に邪魔物を詰め込んでおく等すれば、上方への回動が阻止されて、梁材が折れたり曲がったりしない限り凹所から脱落しない。
そして、単位構造の中間高さに床面を組み立てる際は、対向する凹所の一方に梁材の端部を斜めに挿入し、梁材の反対側の端部を他方の凹所に上方から案内して回動空間を通じて棚部に乗せる。これにより、梁材の容易な取り付けと脱落しない強固な位置決めが確保される。
【0017】
請求項2のコンクリート建物の単位構造では、凹所が縦長の開口であることを利用して、梁材の取り付け高さ位置を調整する。梁材の取り付け高さ位置を上げれば1階部分の天井高さが高くなり、下げれば2階部分の天井高さが高くなる。
スペーサの枚数や厚みを変化させることで、梁材の端部を棚部に直接乗せた場合を最低高さとして、凹所の開口の縦の長さから梁材の厚みを差し引いた距離までの任意の高さを細かく設定できる。
これに対し、1階分の壁と天井と床を鉄筋コンクリートで一体に形成する従来の構造では、天井高さを後から調整することは不可能である。
【0018】
請求項3のコンクリート建物の単位構造では、梁材の取り付け高さ位置を調整するための別の構造が示される。この構造によれば、凹所の開口の縦の長さと無関係に梁材の高さを設定できる。1階部分の天井高さを高くする場合には高い凹所の組、2階部分の天井高さを高くするには低い凹所の組を選択する。
【0019】
請求項6の凹所部材は、コンクリート層の水分やアルカリ雰囲気を梁材等に対して直接に作用させたくない場合に必須の構造である。例えば、木材で形成された梁材の端部をコンクリートに接触させると接触面が湿気を帯びて白蟻やカビが発生し易くなる。
凹所の内側面は、コンクリートの水分やアルカリ雰囲気に侵されず浸み出しもさせない材料で内張りされる。セラミックやガラスや樹脂材料で内張りされた凹所は、金属や木材で製作された梁材の端部をコンクリートから隔離して、中性の乾燥状態に維持する。
【0020】
単位構造の中に隔壁を設けて水回り空間と居室空間(店舗空間等を含む)を分離する場合、隔壁には2つの空間を行き来するための開口が形成されるが、開口の下辺には鉄筋コンクリートの床よりも高い段差や堤防を確保しておき、水回り空間の底にたまった水が居住空間側に流れ出さないようにすることが望ましい。
鉄筋コンクリートの隔壁は防火壁としても機能し、調理設備や浴室で火事が発生しても居住空間側への類焼を妨げ遅らせる。
鉄筋コンクリートの隔壁は防音壁としても機能し、浴室、洗濯設備、トイレ等で発生する生活騒音を居室空間側へ伝わりにくくする。
鉄筋コンクリートの隔壁は単位構造の補強構造としても機能し、地震や土砂崩れに伴って発生する水平力や地盤の不等沈下によって発生する垂直力に対する建物構造の抵抗力を高める。
【0021】
隔壁によって単位構造内に仕切られた水回り空間の好ましい構造では、屋外に形成された配管溝に排水の主管を配置し、主管から分岐させた排水管を外壁の配管孔を通じて水回り空間に導き水回り設備に接続する。
好ましくは、ガス配管、電気配線、通信ケーブル、トイレ排気等の配管も配管溝に配置して、修理、改造、保守点検等の便宜を確保し、建物構造に損傷を与えることなくレイアウトや設備の変更が可能となるようにする。
【0022】
特願平6−79133号で提案された外壁構造を採用して外壁を構成してもよい。外壁
の表裏一対の鉄筋の間にガラス容器を面状に配列した層を形成すれば、(1)少ないコンクリート量で強い外壁を形成できる、(2)外壁の断熱性が増す、(3)緻密なコンクリート組織で鉄筋を表面から深い位置に沈める(かぶり厚さを大きくする)ことにより、中性化を遅らせて鉄筋コンクリートの寿命を延長できる等の利点がある。
外壁の鉄筋コンクリートの所定深さにガラス容器を配列する手法は、(1)鉄筋で薄い壁状に形成に形成した籠状の構造(コンテナ)に多数のガラス容器を格納して型枠や鉄筋に固定し、籠状の構造ごとガラス容器を現場でコンクリートに埋め込む、(2)多数のガラス容器(ガラス管でもよい)をコンクリートやセメントで一体に拘束して壁状の埋め込みブロックを形成し、この埋め込みブロックを型枠や鉄筋に固定して現場でコンクリートに埋め込む等である。
なお、(1)の籠状の構造を鉄筋で形成する理由は、コンクリートとの相性が良く、籠状の構造自体が完成した壁の鉄筋の一部となるからである。しかし、籠状の構造の主要な役割は、コンクリートの流動や衝突、コンクリートに沈められたガラス容器に発生する浮力に耐えて多数のガラス容器をそれぞれの位置に保持することであるから、材料が鉄筋に限定される必要は無い。籠状の構造は、ワイヤーや針金やパイプ材料、鉄以外の金属、果ては竹や樹脂や麻ひもで形成することも可能である。
【0023】
緩衝層を設けた凹所部材では、緩衝層のコンクリートを壁のコンクリートと一体化させて、梁材を支持させる凹所を壁に形成する。箱状の開口は、内張り部材によって周囲のコンクリートから絶縁され、梁材の端部をコンクリートの水分やアルカリ雰囲気から隔離した乾燥状態に保つ。緩衝層は、コンクリート打ち込み時に上方から落下するコンクリートの衝突から内張り部材を保護する。
凹所部材は、壁の鉄筋や型枠に固定したり、上述の籠状の構造や埋め込みブロックに固定して位置決めされた状態でコンクリートに埋め込まれる。この際、箱状の開口の入口は別部材や型枠で封止し、内部にコンクリートが流れ込まないようにしている。
【0024】
緩衝層の下部をくさび型に形成した凹所部材では、型枠の上方からコンクリートを流し込んで緩衝層を下部から次第に埋没させる際に、緩衝層の下側の空間に円滑にコンクリートが回り込んで隙間が残らない。凹所部材の下側の空間を隙間無くコンクリートで置き換えることによって、硬化後、床面を支持させた際に凹所部材にかかる荷重がコンクリートによって広い面積でばらつき少なく支持される。
凹所部材にかかる荷重は緩衝層によってくさび状に分解されてコンクリートに伝達されるから、緩衝層を水平に貫通して左右に突出する鉄筋を設け、この鉄筋を壁の鉄筋に接続してコンクリートに埋め込むことにより、この押し広げる力に対抗させることが望ましい。
これに対して、緩衝層の外観が下部に頂点を設けた四角錐である場合、四角錐と型枠が交差する部分(開口に近い部分)へのコンクリートの回り込みが不足して隙間を発生し易い。また、コンクリートと緩衝層の接合が不足して、凹所に荷重をかけるとこの部分が壁から押し出される方向に力を受けて手前側に脱落する可能性がある。
【0025】
垂直方向に壁と隔壁を連続させた集合住宅では、上層階の外壁の荷重が真っ直ぐ下層階の外壁にかかり、上層階の隔壁の荷重が真っ直ぐ下層階の隔壁にかかる。垂直に重ねた複数の単位構造間で単位構造の構造壁や柱を垂直に接続することによって、垂直方向の力を水平方向に分散する梁やアーチの構造が不要となり、少ない材料で広い建物内空間を確保でき、建物の水平力に対する抵抗力も増す。
また、水回り空間を垂直方向に積み重ねて、居室空間との重なりを避けた場合、他の単位空間の水回り空間の騒音や水漏れが居室空間に侵入しない。
【0026】
水回り空間を垂直方向に積み重ねて配管溝を形成し、配管溝に共同配管を配置した場合、排水の配管が短くて効率的な配置となる。
【0027】
【実施例】
図1は実施例の集合住宅における単位構造の説明図、図2は集合住宅の全体構造の説明図、図3は1階の間取りの説明図、図4は2階の間取りの説明図、図5は1階高さの単位構造の間取りの説明図、図6は外壁構造の説明図、図7は凹所ブロックの説明図、図8は凹所部材と梁材の別の構造例の説明図である。
【0028】
図1の(a)、(b)に示されるように、実施例の単位構造は、外壁11A、11B、11Cによって屋外空間から仕切られ、戸境壁11Dによって隣接する単位構造から仕切られる。隔壁15A、15Bは、外壁11A、11B、戸境壁11Dを連絡して、単位構造内に水回り空間10Aを形成する。外壁11A、11B、11C、戸境壁11D、隔壁15A、15Bは、前回に現場施工されて養生を終えた床17Aの上に、2階分の高さを持たせて天井17Bまで、鉄筋コンクリートで継ぎ目無く一体に形成されている。
【0029】
外壁11A、11B、11C、戸境壁11D、隔壁15A、15Bの中間高さ位置には、壁に一体化させた多数の支持ブロック14が配置される。支持ブロック14は、壁を形成する過程で型枠や鉄筋に固定され、型枠に流し込まれたコンクリートによって壁に埋め込まれている。
支持ブロック14は、梁材13の端部を直接に挿入して両持ち支持する開口を有する。
支持ブロック14に対する梁材13の挿入は、外壁11A、11B、11C、戸境壁11D、隔壁15A、15B、天井17Bが同時に施工されて養生を終えた後(すなわち鉄筋コンクリートの強度発現後)に実施される。支持ブロック14に差し渡した梁材13の上に2階の床12が形成される。なお、1階の床についても2階の床12と同様に施工されており、支持ブロックを埋め込んで壁に形成しておいた凹所に梁材を差し渡し、梁材の上に床を組み立てている。
一階の床と2階の床12を連絡する階段16は、隔壁15Aに支持させて、床12と同時期に施工されている。
【0030】
外壁11A、11B、隔壁15Aの一部に配置された支持ブロック14は片面にだけ開口を設けた片面型、戸境壁11Dに配置された支持ブロック14は両面に独立した開口を設けた両面型、隔壁15B、隔壁15Aの残りの部分に配置された支持ブロック14は梁材13を貫通可能な貫通型である。戸境壁11Dでは両側の空間の独立性を高く保つ必要があるが、隔壁15A、15Bではその必要が小さいからである。
外壁11A、戸境壁11D、隔壁15A、15Bで仕切られた水回り空間10Aには、浴槽や冷蔵庫等の重い設備でも支持可能とすべく、隔壁15Aを挟む反対側の居室空間に比較して密度高く梁材13を配置している。
【0031】
外壁11Aには、垂直方向に連続させて外壁11Aを水回り空間10A側に退去させた配管溝11Eが形成されている。配管溝11Eの1階と2階の床高さに適合させて設けた配管孔18を通じて、後に、配管溝11Eに配置される給排水等の主管から水回り空間10Aへの分岐および集合の枝管が施工される。
【0032】
実施例の住戸空間では、梁材13の取り付け高さを支持ブロック14の開口の縦の長さの範囲で上げ下げすることにより、床12の高さ、すなわち1階と2階の天井高さを調整可能である。このため、支持ブロック14の開口の縦の長さは1階の床を支持する支持ブロックの開口よりも大きく、梁材13の厚さのほぼ3倍である。そして、床12の高さを変えても配管溝11Eから水回り空間10Aへの体裁の良い配管が可能となるように、2階の配管孔18については、2段階の高さを持たせて2組設けており、都合の良い組を選択して利用する。
【0033】
外壁11A、11B、11C、隔壁15B、配管溝11Eには、住戸空間各部の通風と採光を確保し、人の出入りを可能とするために、図示しない開口がいくつか形成されており、窓や出入口にそれぞれ仕上げられる。隔壁15Aには、後に通路に仕上げられる開口15C、15Dが形成されている。開口15C、15Dについても、床12の高さの上げ下げに適合できるようにやや縦長に形成されているが、外壁11Bに連絡する部分15Fと戸境壁11Dに連絡する部分15Eを梁状に残して単位構造の剛性を確保している。
【0034】
図2の(a)、(b)に示されるように、実施例の集合住宅は、一体に連結された4つの建物BR1、BR2、BR3、BR4を前後左右に対称に配置して構成される。4つの建物は柔軟な構造で連結され、地震や不等沈下によって4つの建物の相対位置や高さが変化しても建物構造に無理な力がかからないようにしている。
建物BR1は、2階分の高さを持たせた単位構造U1、U2、U3、U4、U5、U6を水平方向に配列して1、2階および4、5階を構成する。2層の単位構造列の中間に1階分の高さを持たせた6個の単位構造を配列して、3階を構成する。1階高さの単位構造は、単位構造U1、U2、U3、U4、U5、U6と同様な平面構成であり、5階分の外壁と戸境壁と隔壁が垂直に連絡されて、建物構造の重量が途中の高さで水平力に分解されないようにしている。
10日間程度の養生期間を置いて2週間ごとにコンクリートの打ち込みを行う場合、従来の1階分の床面から天井までを形成して積み上げる方法では、5階分で10週間を要するが、実施例では単位構造3層の積み上げとなるため、6週間で済む。
【0035】
単位構造U1と単位構造U6、単位構造U2、U4と単位構造U3、U5はそれぞれ平面構造が対称である。ただし、1、2階と4、5階では、建物の強度や構造(屋根や基礎との関係)の都合で、壁の厚さや天井や床の処理を少し異ならせている。
建物BR1の両端に位置する単位構造U1、U6では、建物BR3中に図示されるように、水回り空間10Aを仕切る隔壁15Aを外壁に到達させて、建物BR1の水平力に対する強度を優先している。一方、中間の単位構造U2、U3、U4、U5では、隔壁15Aを水回り空間10Aの幅に留めて反対側の戸境壁に連絡させない。図1の(a)を参照して説明すれば、隔壁15Aが隔壁15Bを越えた張出部分15Gが無く、奥行き方向に素通しの構造として、居室空間の採光や通風を優先している。
【0036】
建物BR1と建物BR3では、廊下SR1、SR2や階段K1、K2、K3、K4、K5が共用される。階段K1、K2は建物BR1と一体に鉄筋コンクリートで形成され、階段K3と廊下SR1(3階部分と4階部分)は建物BR3と一体に鉄筋コンクリートで形成されている。
建物BR3の3階および4、5階の単位構造では、廊下SR1に対して出入口を設けている。建物BR1の3階および4、5階の単位構造では、個別に設けた渡り廊下10Cに対して出入口を設けており、渡り廊下10Cを通じて廊下SR1に出入りする。2つの渡り廊下10Cの間隔は、1階部分にまで貫通する空間10Dとして残され、3、2、1階の通風と採光に寄与している。
5階と2階、特に5階に廊下を設けていないので、上空からの採光の間口が広く、廊下に遮られること少なく下層階まで採光が及ぶ。
【0037】
階段K4は建物BR3と一体に鉄筋コンクリートで形成されている。階段K5は建物BR4と一体に鉄筋コンクリートで形成されている。建物BR1の4、5階の単位構造U5に到達する1つの経路は、階段K4を登って建物BR3の3階の廊下SR1から建物BR4の3階の廊下SR2に渡り、階段K5を登って5階の廊下SR2から廊下SR1に渡り、廊下SR1から渡り廊下10Cを通る経路である。また、別の経路は、建物BR3の階段K3を登って建物BR1の階段K2に移り、階段K2を登って建物BR3の3階の廊下SR1に移り、廊下SR1を通って建物BR1の階段K1に移り、階段K1を登って建物BR3の4階の廊下SR1に移り、廊下SR1から渡り廊下10Cを通る経路である。
【0038】
連続した3つの単位構造U1、U2、U3は、2階分の高さを持たせて形成されており、コンクリート強度発現後、壁の凹所を利用して内部の1階と2階の床が施工される。単位構造U1、U2、U3の内部で分離された1階の空間が図3に示すように間取りされ、2階の空間が図4に示すように間取りされる。
実施例では、図3に示すように隔壁で囲まれた水回り空間の1階に台所D1を配置し、
図4に示すように水回り空間の2階に浴室B1、B2、洗面洗濯室M1、M2、トイレW1、2を配置している。
単位構造U1の渡り廊下10Cと単位構造U2の渡り廊下10Cの間の空間10Dに、図2に示して上述したように3階と4階を連絡する階段(K1)が配置される。2つの渡り廊下に挟まれた空間は、3階および1、2階の単位空間に対する通風と採光の経路である。階段が配置されていない空間では、通風と採光の機能がさらに高まる。
【0039】
隣接する2つの単位構造U1、U2は、水回り空間の配置が戸境壁を挟んで対称である。単位構造U1では、渡り廊下10Cを通じて玄関G1に入り、居室空間の居間L1を経て部屋R1、R2に至る。玄関G1と居間L1の間に2階へ連絡する階段が配置される。
単位構造U1では外壁の開口(図中上方)を通じて居間L1に直接採光を確保できるが、単位構造U2では該当する壁が戸境壁であるため、居間L2は、開口を持つ別の外壁まで拡張され、この開口から採光を確保する。また、(1)水回り空間を囲む隔壁を単位構造U3側の戸境壁に接続せず、(2)階段の手すり部分を格子とすることによって、居間L2に対する玄関側からの採光を改善している。部屋R3の外側には収納壁S1を設けて部屋R3の独立性を高めた。
2つの単位構造U1、U2の一体化した配管溝11Eに、建物を縦に貫通する給排水の主管、ガスの主管、トイレ排気の主管、電力ケーブル等が配置されている。排水を必要とする設備は、隣接する水回り空間の1、2階に配置されているから、主管から分岐させた排水管の長さが短くて済む。
【0040】
図4に示すように、単位構造U1では、図3の玄関G1の2階を物干し等の作業室Q1とし、外壁の開口(図中上方)を通じて階段の周囲に採光を確保できるから、図中右側の外壁側を封鎖して2つの部屋R6、R7を設けた。単位構造U2では、階段の周囲の採光と換気を確保するために、2つの外壁を結ぶ素通しの廊下Q3を設けた。部屋R8の外側に収納壁S3を設けた。
単位構造U1、U2の間仕切りは、吸音材を挟み込んだ木質系のパネルで形成され、壁や梁に直接固定される。なお、外壁や戸境壁に間仕切り専用の支持ブロックを垂直方向に配列して設けておき、支持ブロックの凹所に挿入した水平部材によって間仕切りを支持させてもよい。
また、実施例では、各階の間取りが相互に拘束されず、将来の間取り変更の自由度を大きく残すために、水回り空間を囲む隔壁だけを単位構造に一体化させているが、間仕切りに相当する隔壁を鉄筋コンクリート単位構造と一体に形成してもよい。この場合、1階から5階まで間仕切りの隔壁が貫通して間取りの自由度が損なわれるが、隔壁で囲まれた部屋ごとに床面が独立して床面の支持剛性が増し、部屋ごとに床面の高さを変更することも可能となる。
【0041】
単位構造U3では、両側を戸境壁で囲まれた四角筒状の空間の中央部分における採光を別の手法で改善している。図3、図4に示すように、単位構造U3では単位構造U1の玄関G1を階段室に共用し、階段を2階に上った突き当たりに外壁の開口を位置させており、2階の開口から取り入れた外光が階段を下って居間L3を照明する。階段室を通じた採光を前提として、図中右側の開口を含む外壁を部屋R4として居間L3から独立させ得た。
また、図4に示すように、単位構造U2とは隔壁に設ける開口の位置を異ならせ、トイレW2と浴室B2への出入りを踊り場Q2側からとして、隔壁の防火壁としての機能を高めるとともに、隔壁に隣接する空間を独立させて倉庫S4とし得た。反対側の外壁を占めて部屋R9、R10を設けた。
【0042】
ところで、一般的な集合住宅では、両側を戸境壁で挟まれて前後を外壁に到達させた「間口が狭くて奥行きの長い四角筒状の住戸空間」を形成し、奥行き方向の中央部分に水回り設備を配置し、外壁に接する2面に居間と部屋を配置する間取りが一般的である。この場合、水回り設備の周辺で採光や換気が不足し易くなり、外壁に接する面に大きな開口を確保したとしても、昼間でも電灯に頼り終日換気扇を回さざるを得ない。
側面から採光できない四角筒状の住戸空間の中央部分の採光を改善するためには、天井高さを高くして奥行き方向の隔壁を少なくすればよい。この点、実施例の単位構造は、1階分の床から天井までを一体に鉄筋コンクリートで形成した従来構造に比較して、(1)中間の床の構造の厚みを薄くして天井高さを高く確保でき、(2)採光の必要な階だけ天井高さを増すことが可能で、(3)間取りに応じて採光を考慮した天井高さを容易に設定できる点で優れる。さらに、単位構造U3に見られるように、(4)階段室を利用して実質2階分の吹き抜け空間を通じた立体的な採光を確保できる。従って、従来構造に比較して採光や通風の苦労が少なく、万が一不足な場合にも後から改善が容易である。
【0043】
実施例の集合住宅の3階部分を占める1階高さの単位構造の間取り例が図5に示される。1階高さの単位構造では内部に階段を設ける必要が無いため、その分だけ空間を広く使用できるが、水回り空間の面積と平面形状を2階高さの単位構造に揃えているため、水回り空間のレイアウトが少し窮屈となる。
玄関G3を居間L4と素通しにして玄関G3側からの採光を確保し、反対側の外壁を占めて部屋R13、R14を配置した。部屋R13、R14にそれぞれ収納S5、S6を設けた。また、隔壁の開口の位置を単位構造U2、U3とは異ならせて玄関G3側からトイレW3に出入りさせるとともに、図中下側の外壁の開口を浴室B3に割り当てた残りのスペースを台所D3とした。
【0044】
実施例の集合住宅では、図6に示すように、ガラス容器を外壁に埋め込んで外壁の断熱性能を向上させている。特願平6・79133号に示されるように、鉄筋コンクリートの中間層に多数のガラス容器を面状に配置すれば、(1)厚い壁を少ないコンクリートで製作できる、(2)表面層が緻密で中間層が空疎な構造によって壁の強度を損なうことなく建物構造を軽量化できる、(3)表面組織が緻密で内部の空間がすべてガラスで表面を覆われているから、気泡コンクリートに比較して透水性や通気性が低くて耐久性に富み、コンクリートの中性化の進行が遅くて建物構造の寿命が長い、(4)鉄筋のコンクリートのかぶり厚さを大きく設定しても壁の表裏の鉄筋の間隔を広く確保でき、鉄筋の負担を軽減して鉄筋構造を簡略化できる等、種々の利点がある。
【0045】
実施例では、埋め込みブロック40A、40Bを外壁の表裏の鉄筋43、46の間に配列させて、コンクリート打ち込み時の浮力や偏荷重に耐える十分な拘束と連結を型枠41、42に対してタイボルト45を用いて行い、その後に、型枠41、42の上方からコンクリートを流し込んで埋め込みブロック40A、40Bを外壁に一体化させている。埋め込みブロック40Aは平面用、埋め込みブロック40Bは角用である。埋め込みブロック40A、40Bは、両端を封じた円筒状のガラス容器49を千鳥配列してセメントモルタルで拘束した建築材料であって、予め工場で2階分の高さを持たせて製作され、現場に運び込んで組み立てられる。
埋め込みブロック40A、40Bには、凹所ブロック14が一体に製作されている。凹所ブロック14は、セラミックの箱状容器47の周囲にセメントモルタルの緩衝層48を配置することにより、打ち込まれたコンクリートの衝撃から箱状容器47を保護し、また、表面に沿ったコンクリートの流れを円滑にして、凹所ブロック14の下側にコンクリートの隙間や接合不良を起こさない。
【0046】
図1に示される戸境壁11Dに一体に埋め込まれた凹所ブロック14の施工方法が図7の(a)、(b)に示される。両面から梁材を挿入可能な凹所ブロック14は、両面に凹所54を形成したセラミックの内張り材55の周囲にセメントモルタルの緩衝層56を形成している。緩衝層56を水平に貫通させて設けた鉄筋57はタイボルト58に支持され、垂直方向の鉄筋53等にも複数箇所で縛り付けてある。タイボルト58は、ナット59と共働して型枠51、52を壁厚さ方向に拘束する。
緩衝層56の上部61が四角錐状に形成した理由は、型枠51、52に沿って流れ落ちるコンクリートの割合を増して、内張り材55の開口の真下位置への回り込みを改善するためである。また、下部62を三角柱状に形成した理由は、内張り材55の開口の真下位置に隙間や弱い部分を作らないためである。打ち込まれたコンクリートの侵入を避けるため、内張り材55の凹所54の入口には、樹脂フィルムで覆った厚紙の蓋60が接着されている。
施工された戸境壁に凹所ブロック14を良好に一体化させるためには、後から打ち込まれたコンクリートの水分が緩衝層の表面に水膜を形成しないことが肝心である。従って、緩衝層56を透水性のある粗い組織としたり、上方への排水を円滑にする垂直方向の細い溝を表面に形成することは有効である。型枠51、52と平行な縦長のひれ構造を側面に設けてもよい。
【0047】
実施例では、凹所の形状を箱型として、梁材の端部を直接挿入する構成としたが、凹所と梁材の組み合わせは、図8に示すような構造としてもよい。
図8の(a)では、鉄パイプを溶接して塗装したトラス梁31の端部31Aを壁に埋め込んだ長円開口の凹所21に挿入する。トラス梁31を使用すれば、材木の梁を使用する場合に比較して少ない本数でたわみの小さな丈夫な床面を形成できる。また、1階の間仕切りを吊り下げたり、トラス構造を上方に拡張して2階の間仕切りの骨組みとすることも可能である。
図8の(b)では、床33を支持する梁材32の端部32Aと凹所22の支持面との間にスペーサ34を重ねて、梁材32の取り付け高さを調整する。スペーサ34を除去して反対側の凹所の支持面を支点にして梁材32の端部32Aを上方に回動させることにより、梁材32を一対の凹所22による拘束から解放できる。凹所22に梁材32を取り付ける際には逆の手順とし、スペーサ34を挿入することで端部32Aを上方へ回動できなくする。
図8の(c)では、凹所25に対して梁材35が間接的に支持される。複数の高さ位置を採らせて複数組の凹所25が形成され、都合の良い高さ位置の組みを選択して支持部材36を取り付け、支持部材36に梁材35を支持させる。支持部材を使用すれば、凹所25の開口の大きさを梁材35の断面積よりも小さくできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の単位構造によれば、鉄筋コンクリートを用いて一体化させた継ぎ目の無い建物を確保できるにもかかわらず、建物の2階分を1度に形成することができる。このとき、1階分づつを形成する場合に比較して施工と養生の繰り返し回数が半分となり、十分な養生期間を確保しつつ短い工期で建物を完成できる。また、単位構造の中で1階と2階の天井高さの割合を調整できるから、固定された天井高さの従来の構造に比較して間取りや内装の自由度が高まる。特に、住宅から店舗へ等、単位構造の用途を大幅に変更する際に、建物の構造に手を加えることなく、用途に適した内装を自由に選択できる利点が重要となる。すなわち、規格化された単調な同じ作りの単位構造の中に、多種多様な住戸空間を形成できる。
また、木材や鉄骨等、梁材自体の質感を利用して多様な天井の意匠を採用できる。これに対して、従来の鉄筋コンクリートのスラブ天井では天井の意匠が単調となり易く、デザイン効果を目的として梁や凹凸を設けると天井高さが損なわれた。
また、鉄筋コンクリートのスラブ天井とする場合よりも床の構造を薄く軽量に形成できるから、天井高さが増して室内空間が広くなり、建物全体の重量を増すことなく上下の単位構造の間を仕切るスラブ天井を厚く形成して、上下の単位構造の間の遮音性を高めることも可能である。
【0049】
凹所に挿入された梁材の端部を凹所内で上方に回動させて一対の凹所による拘束から解放させる場合、対向する一対の凹所にそれぞれ端部を挿入した2つの梁材を中間で接続する構造とする必要が無く、梁材の施工や交換が簡単で済み、施工された梁材が凹所に安定に保持されて脱落する心配が無い。
凹所にスペーサを配置したり、高さの異なる凹所の2組から都合の良い組を選択する場合、単位構造内や隔壁の内側で天井高さを容易に変更できる。凹所を非保水性の腐食しない材料で内張りすることで、梁材の寿命を長くできる。
【0050】
単位構造の中に隔壁で仕切った水回り空間を設けた場合、万が一の漏水や排水漏れや火災等の影響を水回り空間内に限定させて被害を最小限にできる。給排水の配管が短くなるから、工事費が節約され、配管による空間の占拠率が低下して利用できる空間が増し、排水の漏れや詰まり等の事故も発生しにくい。
水回り空間を外壁に隣接して形成すれば、細長い筒状の住戸空間の奥行き方向の中間位置に配置される場合よりも採光や換気が容易となり、長い排気ダクトが室内空間を損なうこともない。そして、配管溝に配置された共同配管から分岐させた配管を配管孔を通じて水回り空間に導くことにより、建物全体の給排水やガスの配管形態が単純化され、単位構造内のレイアウト変更や設備変更に伴う配管の改造や古くなった配管の交換や漏れ等に伴う修理や点検が容易となる。
【0051】
単位構造の外壁にガラス容器を面状に配列して埋め込んだ場合、外壁の断熱性が改善されて暖房費や冷房費が節約される。また、特願平6−79133号に示されるように種々の利点が得られる。
【0052】
本発明の凹所部材によれば、非透水性の内張り部材の周囲にコンクリート(モルタル等を含む)の緩衝層を形成しているから、内張り部材によって梁材の端部等が乾燥状態に維持されて腐敗やしろありの発生が防止される。そして、内張り部材がコンクリートになじみにくい材料で、打ち込まれたコンクリートを案内しにくい外観に形成されている場合でも、凹所部材を良好な状態で壁と一体化できるから、梁材に大きな荷重を支持させることが可能となる。
緩衝層の下部の外観を三角柱状とした場合、凹所部材の真下に打ち込んだコンクリートの隙間で発生しにくく、コンクリートと緩衝層の界面の自由水が斜面に沿って上方に逃げるから、コンクリートと緩衝層が強固に一体化する。
【0053】
隔壁を一致させて単位構造を積み上げた集合住宅によれば、壁に設けた開口の位置は異なるにせよ、重ねた単位構造の壁が垂直方向に連続しているから、建物構造の重量が壁に垂直な圧縮力として作用し、比較的に薄い壁として広い室内空間を確保した場合でも建物の地震や地盤沈下等に対する強度が損なわれない。
水回り空間の外壁に配管溝を形成して共同の給排水管を配置した場合、建物全体の配管が単純化されて修理や改造が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の集合住宅における単位構造の説明図である。
【図2】集合住宅の全体構造の説明図である。
【図3】1階の間取りの説明図である。
【図4】2階の間取りの説明図である。
【図5】1階高さの単位構造の間取りの説明図である。
【図6】外壁構造の説明図である。
【図7】凹所ブロックの説明図である。
【図8】凹所部材と梁材の別の構造例の説明図である。
【符号の説明】
10A 水回り空間
11A、11B、11C 外壁
11D 戸境壁
11E 配管溝
12 床
13 梁材
14 凹所ブロック
15A、15B 隔壁
15C、15D 開口
16 階段
17A 床
17B 天井
18 配管孔
U1、U2、U3、U4、U5、U6 単位構造
BR1、BR2、BR3、BR4 建物
10C 渡り廊下
10D (採光用の)空間
SR1、SR2 廊下
K1 K2 K3 K4 K5 階段
41、42、51、52 型枠
43、46、53、57 鉄筋
47、55 容器(内張り部材)
48、56 緩衝層
45、58 タイボルト

Claims (8)

  1. 鉄筋コンクリートを使用して天井、床、壁が一体に形成され、壁の中間高さに配列させた凹所で梁材を支持させるコンクリート建物の単位構造において、
    凹所は、梁材高さの上方へ開いた縦長に形成され、この開かれた空間で梁材を回転して梁材を着脱可能であることを特徴とするコンクリ−ト建物の単位構造。
  2. 鉄筋コンクリートを使用して天井、床、壁が一体に形成され、壁の中間高さに配列させた凹所で梁材を支持させるコンクリート建物の単位構造において、
    凹所は、梁材の端部よりも縦長に形成され、梁材の端部下にスペーサを配置して梁材高さを調整可能であることを特徴とするコンクリ−ト建物の単位構造。
  3. 鉄筋コンクリートを使用して天井、床、壁が一体に形成され、壁の中間高さに配列させた凹所または貫通型開口で梁材を支持させるコンクリート建物の単位構造において、
    凹所または貫通型開口は、壁面の異なる高さ位置に2組が配列され、必要な天井高さに
    応じて一方の組を選択可能であることを特徴とするコンクリ−ト建物の単位構造。
  4. 鉄筋コンクリートを使用して天井、床、壁が一体に形成され、壁の中間高さに対向配列させた凹所で梁材を支持させるコンクリート建物の単位構造において、
    凹所は、隣接する単位構造と表裏同じ位置に開口して壁厚の中間で仕切られた非貫通型の梁材挿入空間であることを特徴とするコンクリ−ト建物の単位構造。
  5. 鉄筋コンクリートを使用して二階分の高さで天井、床、壁が一体に形成され、内側空間の一部分を囲い込んで天井から床まで達する鉄筋コンクリートの内壁を有するコンクリート建物の単位構造において、
    梁材挿入空間として壁に形成された凹所と梁材挿入空間として内壁に形成された貫通型開口の間に梁材を差し渡すことを特徴とするコンクリ−ト建物の単位構造。
  6. 型枠または鉄筋に固定してコンクリートに埋め込まれ、非保水性の腐食しない材料で内張りされて挿入後の梁材の断面をコンクリートに接触させることなく支持する凹所部材。
  7. 請求項6の凹所部材において、下方に向かって断面が細くなる外観形状としてコンクリートの回り込みを改善したことを特徴とする凹所部材。
  8. 梁材の端部を保持する箱状の開口を内側に設けてセラミックから形成された内張り部材と、
    箱状の開口を囲んで内張り部材の周囲にコンクリートで一体に形成した緩衝層と、
    壁の鉄筋または型枠構造に接続される鉄筋とを有することを特徴とする凹所部材。
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