JP3546096B2 - 石炭の事前処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、石炭を予熱し乾燥した後コークス炉に装入し高炉用コークスを製造する際の微粉石炭による発塵の防止に関する。
【0002】
【従来の技術】
コークス炉の生産量を増大しかつ生成コークス品質を改善するためには、コークス製造用原料炭を事前に乾燥加熱してコークス炉に装入することにより装入密度を向上せしめる方法が有効である。この種の方法として、例えば原料炭を約200℃に加熱しコークス炉にて乾留するプレカーボン法がある(「Transaction of ISIJ」Vol.21(1981))。しかし、この方法においては乾燥した石炭中に含まれる微粉炭の運搬時の発塵を防止するための密閉したコンベア等の高額の設備が必要であり一般的には採用されていない。
【0003】
一方、発塵防止設備を設置せず乾燥機のみ設置して石炭水分を低減する方法として石炭調湿法がある(「材料とプロセス」No.4 999(1990))。この方法においては、発塵の発生を回避するため石炭の乾燥後水分は5.5%以上とせざるを得ない。
【0004】
以上の理由から、石炭調湿法以上に石炭の乾燥後水分を低下させコークス炉の消費エネルギーを低減せしめるには、発塵源となる微粉炭を塊成化する処理が必要とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常全水分8〜10%であるコークス用原料石炭を乾燥していくと、水分により結合し疑似粒子化している微粉石炭が単離する。この微粉炭は乾燥に使用する加熱ガス気流に同搬しサイクロンあるいはバックフイルターにより捕集することができる。通常発塵源となる危険のある石炭粒径は0.3mm以下であるがこの範囲の微粉石炭は全原料石炭中重量比率で30%に達する。
【0006】
大量の乾燥微粉炭をコークス用原料として有効活用しかつ輸送時の発塵を防止するためには、水との混練による団塊化あるいは機械的成型による塊成化が想定されるが、以下に述べる問題がある。水との混練による団塊化では折角乾燥した石炭水分が10%以上に増加し本来の石炭乾燥の目的である省エネルギー効果を著しく減少させてしまう。このため、機械的成型による塊成化が望ましいが流動性の高い乾燥微粉炭を成型するには、軟ピッチのような高価なバインダーを6乃至8%と多量に添加する必要があり石炭乾燥の省エネルギーによる経済効果を大幅に低下させてしまう問題があった。
【0007】
本発明は、乾燥により疑似粒子が崩壊し発生する微粉石炭を高価なバインダーの使用量を低減して成型する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は次の通りである。
【0009】
(1)石炭を予熱乾燥した後、塊成化してコークス炉に装入する石炭の事前処理方法において、石炭を含水率が0〜2.7%まで乾燥後、分級し回収した0.3mm以下の微粉炭にタールおよび/またはタール滓を3〜5wt%添加した後、ロール表面に溝凹部の総開孔面積がロール表面積の50〜70%で溝凹部を設けたロール成型機で成型することを特徴とする石炭の事前処理方法。
【0010】
(2)記溝凹部の深さが5〜10mmであることを特徴とする前記1項記載の石炭の事前処理方法。
【0011】
【作用】
先ず、石炭中微粉が疑似粒子の崩壊により単離する現象を正確に把握するため、1mm以下の粒径の石炭試料を水分6%に調製しミキサーにて混合造粒した後、徐々に乾燥し震動篩にて疑似粒子の破壊と篩分けをおこない粒度分布を測定した。表1に各水分における粒度分布および75ミクロン以下微粉の疑似粒子化率を示す。石炭水分が4%以上では40%以上の微粉が疑似粒子を形成しているが、水分2.7%以下では微粉の疑似粒子化は非常に少ない。又、別途行った発塵試験から乾燥石炭の運搬時およびコークス炉投入時の発塵粒子径は0.3mm以下であることが確認されている。以上の知見から、水分0以上2.7%以下の石炭に含まれる粒径0.3mm以下の微粉石炭は発塵を防止するため分級回収して塊成化する。
【0012】
【表1】
Figure 0003546096
【0013】
次に、成型性評価の方法であるが、流動性の高い乾燥微粉石炭を成型する場合問題となるのは、微粉炭のロールへのスクリューフィーダーによる押し込み性と成型ロールへの噛み込み性である。共に微粉炭と金属基材との摩擦係数により評価でき、原料の摩擦係数が低い場合押し込み、噛み込みの不足から安定した成型ができず、ロールの空転あるいは原料の粉体のままでのロール下への吹き出しを招く。今回は粉体剪断強度測定装置(ピストン径29.5mmφ、試料量5.0g、荷重1.0t〜2.5t)にて荷重下垂直伝達荷重を測定し壁摩擦係数を決定した。表2に試料とした微粉炭性状を示す。
【0014】
【表2】
Figure 0003546096
【0015】
通常の成型炭製造においては、軟ピッチ等バインダーの添加により成型性の向上と製品成型炭の強度確保が必要である。しかし、本発明の微粉石炭の成型による発塵抑制の場合には成型炭が破損した場合でも微粉粒子が結合した状態が維持できれば目的は達成できる。このことから、固化後強度は低いが安価なコークス炉発生タールを使用して成型する上で問題となる微粉炭の摩擦係数の向上を図った。実験結果を表3に示すが、タールを4%添加することにより壁摩擦係数は15%上昇すること、および添加率をそれ以上上げても原料微粉炭の摩擦係数への効果はないことが判明した。この結果より、請求範囲に記載したように前記微粉炭へのタールの添加率は3wt%以上5wt%以下が適正である。又、コークス炉より発生する微粉炭とタールの混合物であるタール滓を3wt%以上5wt%以下添加した場合も同様の効果を確認した。
【0016】
【表3】
Figure 0003546096
【0017】
以上の結果から乾燥微粉石炭の成型実験を実施したが、表4にデータを示すようにタール添加のみでは塊成化率は目標の80%に対し40%程度に止まった。そこで、更に原料微粉炭とロールの噛み込み性を改善するため、ロール形状につき検討した。本成型の場合発塵の抑制のみを目的とすることから、塊成物の形状は任意であり、最も製作が容易でかつ安定した圧下が可能な平滑ロールの使用が望ましい。
【0018】
【表4】
Figure 0003546096
【0019】
本発明では、ロールへの石炭の噛み込みが容易となるよう平滑ロール表面にロール回転方向に垂直に溝パターンを彫り、原料微粉炭とロールの摩擦係数を向上することを検討した。図1に示すU字型溝および楔型溝の溝部面積が異なる模擬ロール表面を作成し、粉体剪断強度測定装置にて表2に示す乾燥微粉炭との摩擦係数に与える効果を測定した。表5および図2に結果を示すが、溝形状に係わらず、溝部開口面積比率を全ロール表面の50%以上とすることによりロールと微粉炭の摩擦係数を約20%向上させることが可能であることを見いだした。この結果より、請求範囲に記載したように開口部面積比率は50%以上が適正と判断した。一方開口面積比率が70%を越えると溝間部の幅が狭くなりすぎロール強度を保持できなくなる。
【0020】
又、溝深さは原料微粉径の10倍以上あれば殆ど摩擦係数に影響しないが、切削の困難さと一方使用により生じるロール表面摩耗を勘案して5mm以上10mm以下とした。
【0021】
さらに、溝はロールの幅方向に断続的に設けてもかまわないが、ロールの加圧性を考慮するとロールの幅方向に連続した溝をロール回転に対して垂直又は傾斜して設けることが好ましい。
【0022】
以上の2つの技術と組み合わせ、小型成型機(400φ×200mmL、加圧5t/cm)による表2に示す乾燥微粉炭の成型実験結果を表5に示すが、微粉炭の塊成化率は発塵量の推定から求めた目標レベルの80%を越える結果を得た。
【0023】
【表5】
Figure 0003546096
【0024】
【実施例】
図3に本発明を用いた石炭の乾燥、成型、コークス炉投入プロセスの模式図を示す。
【0025】
4000トン/日の生産能力を持つコークス炉の装入炭製造プロセスを例として図3のフローに従い説明する。この場合石炭処理能力としては230トン/時となる。230トン/時程度の能力を持つ流動層加熱機2は、寒冷地の炭鉱において石炭の凍結を防止するための乾燥用途に実機例は多数あり工業技術としては容易に設計が可能である。この場合には、微粉分級を同時に行うため微粉炭の飛散速度に準拠した加熱機内ガス流速の決定が必要であるが、石炭微粉のガス搬送については例えば製鉄用高炉の微粉炭吹込み装置等で多くの実機例があり経験範囲内で対処できる。このような加熱機で石炭を出口温度80℃迄加熱した場合、含水率は約2%となり、0.3mmで分級した場合石炭の粒度分布データから約30%が0.3mm以下の微粉炭としてサイクロン3にて分離されるため、成型機4は80トン/時の能力で充分である。成型機はロール径1.5m、ロール長さ1m程度のダブルロール成型機2基にて構成し、平滑ロール表面にロール回転方向に垂直に図1に示す幅10mm、深さ5mmのU字型溝を20mmピッチで連続的に彫った構造とする。又、タールはコークス炉よりリサイクルし成型機前にて対微粉石炭3wt%で添加し微粉石炭と混練後成型機に供給される。混合機5は粗粒石炭と成型炭を混合しコークス炉の装入炭とするものであり、ベルト上に粗粒石炭と成型炭を所定比率でパイルする形式が望ましい。
【0026】
【効果】
エネルギー消費量の多いコークス炉における石炭のコークス化に本技術を適用することにより、微粉炭の発塵が防止できるとともに、石炭の含水量を0〜2.7%まで乾燥できるためコークス炉エネルギーの約20%の削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a),(b)は本発明に用いるロール成型機のロール表面形状例を示す図。
【図2】各種ロール表面形状と壁摩擦係数の関係を示す図。
【図3】本発明を用いた石炭加熱プロセスフロー図。
【符号の説明】
1…石炭配合ビン 2…流動層加熱機
3…サイクロン 4…成型機
5…混合機 6…コークス炉

Claims (2)

  1. 石炭を予熱乾燥した後、塊成化してコークス炉に装入する石炭の事前処理方法において、石炭を含水率が0〜2.7%まで乾燥後、分級し回収した0.3mm以下の微粉炭にタールおよび/またはタール滓を3〜5wt%添加した後、ロール表面に溝凹部の総開孔面積がロール表面積の50〜70%で溝凹部を設けたロール成型機で成型することを特徴とする石炭の事前処理方法。
  2. 記溝凹部の深さが5〜10mmであることを特徴とする請求項1記載の石炭の事前処理方法。
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