JP3545292B2 - 水素可視化剤、吸蔵水素の可視化方法および吸蔵水素可視化材料 - Google Patents

水素可視化剤、吸蔵水素の可視化方法および吸蔵水素可視化材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は鋼、アルミニウム、銅、チタン、シリコン、マグネシウム、金属間化合物、セラミックスなどの各種材料中に吸蔵され、放出される水素を可視化するための水素可視化剤、その水素可視化剤を用いて材料中の吸蔵水素を材料表面において可視化する方法および吸蔵水素を可視化した材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
材料中に含まれた吸蔵水素は、材料の脆化、遅れ破壊の主な原因となる。このような吸蔵水素が問題となる部材としては、例えば、水素燃料ロケットエンジン部材、航空機・船舶・自動車・鉄道などの輸送機部材、原子炉部材、マイクロマシン部材、光ファイバーガラス材、石油・ガス輸送用ラインパイプ部材、橋梁・土木分野に使用される部材などがある。身近な例を挙げれば、ボルト、ネジ部品やばね、ワイヤ、ドアビームなどがある。また、電気自動車やハイブリッド車などの電池などへの利用が進められている水素吸蔵材料やシリコンウェハーの水素切断技術、あるいは水素透過膜などの水素利用技術においても、材料中に吸蔵された水素のチェックが必要になる。
【0003】
材料中に吸蔵された水素の量は、API−MSなどの昇温分析法や電気化学透過法などを用いて、各温度での材料からの放出量として調べることができるが、脆化や破壊などの起点となる水素の局所的な吸蔵部位を調べることはできない。また、材料中の水素の可視化分析には、特性X線による簡便な局所分析を適用することはできない。
【0004】
このため、水素の吸蔵部位を調べるには、トリチウムオートラジオグラフィや2次イオン質量分析法(SIMS)が用いられる。前者は水素の存在位置をトリチウムを用いて可視化する方法であり、後者は数keV〜10数keVのイオンでサンプルを照射することによって放出されるイオンを質量分析する方法である。これらの方法によれば微小領域の水素をppmオーダーで検出することができる。
【0005】
その他の水素可視化方法として、銀デコレーション法、水素マイクロプリント法が知られている。銀デコレーション法はジシアン化銀が水素により還元されて生じる銀粒子を可視化に利用する方法であり、水素マイクロプリント法は臭化銀が水素により還元されて生じた銀粒子を電子顕微鏡で観察する方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
トリチウムオートラジオグラフイによれば、水素の存在位置を金属組織レベルで観察可能であるが、放射性同位元素であるトリチウムを用いるため、簡便な方法とは言えない。また、SIMSによれば材料の水平方向および深さ方向について水素分布の情報が得られるが、昇温分析法や電気化学透過法などと同様、それぞれ高価な設備を要するケースが多く、簡便な方法とは言えない。
【0007】
一方、銀デコレーション法やマイクロプリント法では材料表面の水素を、銀粒子として電子顕微鏡により精密に観察することができ、微小領域の情報を得るには有効であるが、mm以上の領域で水素の分布を調べたり、数10cm程度以上のサンプルを観察、分析することには適さない。勿論、目視観察することは困難である。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、材料中に吸蔵された水素を簡便に可視化することができ、あるいはさらに微小領域から粗大領域において目視観察が可能なように可視化することができる水素可視化剤、水素可視化方法および吸蔵水素可視化材料などを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の水素可視化剤は、請求項1に記載したように、材料の表面に供給することによって、材料中から拡散してきた水素をヨウ素として生成させて可視化する水素可視化剤であって、5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンを本質的成分として含む組成物からなるものである。
この発明によると、5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンを本質的成分として含む組成物を材料表面に供給することによって、前記イオンが材料中から拡散してきた水素と反応して、ヨウ素を生成し、そのヨウ素が成長、凝集してヨウ素粒子となるため、可視化が可能となる。これを電子顕微鏡やEPMA(Electron Probe Micro Analyser )などの拡大観察手段によって拡大観察することで、材料中の吸蔵水素を材料表面において簡単容易に認識することができる。4価以下の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンでは、ヨウ素の生成が困難であるので、本発明では、例えば5価の酸化状態にあるヨウ素酸イオンや7価の酸化状態にある過ヨウ素酸イオンなど、5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンを本質的成分として用いる。
【0010】
前記発明において、可視化に用いる組成物としては、請求項2に記載したように、ヨウ素酸イオン:0.010mol/l(モル/リットル)以上を本質的成分として含むヨウ素酸イオン溶液を用いることが好ましい。かかるヨウ素酸イオン溶液からなる水素可視化剤を用いることで、5価の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンであるヨウ素酸イオンを材料の表面に容易に均一に供給することができ、またミクロ観察に十分な量のヨウ素を生成させることができる。
【0011】
また、本発明の他の水素可視化剤は、請求項3に記載したように、材料の表面に供給することによって、材料中から拡散してきた水素をヨウ素として生成させ、生成したヨウ素とデンプンとをヨウ素デンプン反応によって発色させて可視化する水素可視化剤であって、5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとデンプンとを本質的成分として含む組成物からなるものである。
この発明によると、材料表面に生成したヨウ素粒子を拡大観察することができるほか、ヨウ素をヨウ素デンプン反応により発色させ、可視化することができるので、目視観察により簡単容易に材料中の吸蔵部位を広狭にかかわらず特定することができる。また、発色した部位を中心として、ヨウ素粒子を拡大観察することで、ミクロ領域においける水素吸蔵部位を効率よく特定することができる。
【0012】
前記発明において、可視化に用いる組成物としては、請求項4に記載したように、ヨウ素酸イオン:0.010mol/l以上、デンプン:1〜50g/lを本質的成分として含むヨウ素酸イオン・デンプン溶液が好ましい。この溶液を用いることによって、ヨウ素酸イオンおよびデンプンを材料の表面に容易に均一に供給することができ、またミクロ観察に十分な量のヨウ素粒子が生成し、ヨウ素デンプン反応の発色の濃淡によって、吸蔵水素量の量的把握がある程度可能な良好な発色が得られる。
【0013】
また、本発明の水素可視化粘着材は、請求項5に記載したように、材料の表面に付着させることによって、材料中から拡散してきた水素をヨウ素として生成させ、生成したヨウ素とデンプンとをヨウ素デンプン反応によって発色させて可視化する水素可視化粘着材であって、透明あるいは半透明の合成樹脂製のフィルムあるいはシートからなる基材と、前記基材表面に形成された水素可視化粘着層とを備え、前記水素可視化粘着層はヨウ素酸イオン:0.010mol/l以上、デンプン:1〜50g/lを本質的成分として含むものである。
この発明によると、水素可視化粘着材の水素可視化粘着層を材料の表面に付着させるだけで、材料の表面に拡散してきた水素と水素可視化粘着層中のヨウ素酸イオンとが反応して十分な量のヨウ素が生成し、ヨウ素デンプン反応により良好な発色が得られる。この発色は、基材を透して目視観察することができるため、材料の水素吸蔵部位を簡便に知ることができる。また、可視化用材料としての取り扱い性にも極めて優れる。
【0014】
本発明の吸蔵水素の可視化方法は、請求項6に記載したように、材料の表面に請求項1〜4に記載した水素可視化剤を供給し、材料の表面において材料中から拡散してきた水素と5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとを反応させ、生成したヨウ素によって水素を可視化する方法である。生成した粒子状のヨウ素は電子顕微鏡、EPMA等の拡大観察手段によって拡大観察することによって認識することができ、材料中の水素の吸蔵部位を知ることができる。
【0015】
本発明の他の吸蔵水素の可視化方法は、請求項7に記載したように、材料の表面に請求項3または4に記載した水素可視化剤を供給し、材料の表面において材料中から拡散してきた水素と5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとを反応させ、生成したヨウ素とデンプンとをヨウ素デンプン反応によって発色させ、その発色によって水素を可視化する方法である。生成したヨウ素とデンプンとの反応によって生じた発色は目視観察することができ、これによって材料中の水素の吸蔵部位を広狭にかかわりなく、簡便に知ることができる。
【0016】
本発明の吸蔵水素可視化材料は、請求項10に記載したように、母材と、この母材の表面に請求項1〜4のいずれか1項に記載した水素可視化剤によって形成された水素可視化層とを備えたものである。前記水素可視化剤によって、母材中の水素の吸蔵部位が広狭にかかわらず、簡便に可視化され、吸蔵部位を容易に拡大観察あるいは目視観察することができる。
【0017】
本発明の他の吸蔵水素可視化材料は、請求項11に記載したように、母材と、請求項5に記載した水素可視化粘着材とを備え、前記母材の表面に前記水素可視化粘着材の水素可視化粘着層が付着したものである。前記水素可視化粘着材の水素可視化粘着層によって、基材中の水素の吸蔵部位が簡便に可視化され、広狭にかかわらず、容易に目視観察することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明者は、材料から放出された水素を5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンと反応させ、反応により生成した粒状のヨウ素、さらにはこのヨウ素とデンプンとの反応により生じた発色により、水素を可視化することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。特に、ヨウ素デンプン反応による発色状態を目視観察することで、mm以上の領域にわたる水素の吸蔵部位や水素濃度を容易に知ることができる。
【0019】
水素可視化剤を構成する組成物の本質的成分である、5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとしては、例えばヨウ素酸イオン、過ヨウ素酸イオンなどがあるが、ここでは水素可視化剤として、ヨウ素酸イオンを本質的成分として含む組成物からなる水素可視化剤を用いて、材料中の吸蔵水素の可視化を行う方法について説明する。
【0020】
材料中に水素が取り込まれる原因として、水素ガスとの接触や溶接、腐食、酸洗、めっき、化成処理などがある。たとえば鋼材が腐食する場合
4Fe+6HO+3O→4Fe(OH)
Fe+3H→Fe3++3H
Fe3++3HO→Fe(OH)+3H
のような反応がおこり、水素の発生が伴う。この水素が鋼材中に侵入すると、鋼は割れや脆化を引き起こすことがある。侵入した水素は、材料の内外に拡散するため、材料表面にも徐々に拡散してくる。
【0021】
本発明では材料表面に拡散した水素を、ヨウ素酸イオンと反応させてヨウ素を生成させ、あるいはさらにそのヨウ素をヨウ素デンプン反応により発色させることで、可視化を実現している。
【0022】
ヨウ素酸イオンの供給源としてヨウ素酸カリウムを用いた場合には、下記のような反応が進行してヨウ素が生成する。このヨウ素は、生成に従って粒子状に成長、凝集する。
2KIO+10H+2H→I+6HO+2K
【0023】
かかる反応により生成したヨウ素は、拡大観察手段あるいは手法によって拡大観察が可能であり、拡大観察によって材料表面上の水素発生部位、ひいては材料中の吸蔵部位を特定することができる。前記拡大観察手段あるいは手法としては、電子顕微鏡、EPMA(Electron Probe Micro Analyser )、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy )、AES(Auger Electron Spectroscopy )、AFM/STM(Atomic−force Microscopy/Scanning Tunnel Microscopy)、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡などの表面元素分析手段あるいは手法、表面形態・形状観察手段あるいは手法を用いることができる。
【0024】
また、生成したヨウ素をデンプンと反応(ヨウ素デンプン反応)させて、青ないし赤紫色を呈するデンプン−ヨウ素複合体を形成させることで、水素吸蔵部位を目視にて観察することができる。もちろん、ヨウ素デンプン反応により発色させた場合においても、電子顕微鏡、EPMAなどの拡大観察手段を用いて析出したヨウ素粒子を観察してもよく、これによって微小領域の水素吸蔵部位を容易に認識することができる。この場合、ヨウ素デンプン反応により発色した部位を中心に観察することで、問題のある微小領域を効率よく観察することができる。
【0025】
前記ヨウ素と反応させるデンプンの供給は、ヨウ素酸イオンを本質的成分として含むヨウ素酸イオン溶液からなる水素可視化剤を材料表面に塗布して、ヨウ素を生成させた後に、材料表面にデンプン溶液を塗布してヨウ素デンプン反応を生じさせてもよい。また、水素可視化剤として、ヨウ素酸イオンとデンプンとを本質的成分として含むヨウ素酸イオン・デンプン溶液を用いて、両者を同時に塗布してもよい。なお、ヨウ素酸イオンは、ヨウ素酸カリウムやヨウ素酸ナトリウムなどのヨウ素酸化合物を適宜の溶媒、例えば水、アルコール、エステルに溶かすことで得られる。また、溶液中には、適宜の増粘剤、例えば合成ゴム、キサンタンガム、寒天などを添加してもよい。
【0026】
水素可視化剤を構成するヨウ素酸イオン溶液、あるいはヨウ素酸イオン・デンプン溶液におけるヨウ素酸イオンの濃度は0.010mol/l以上とするのがよい。0.010mol/l未満の希薄な領域ではヨウ素の生成が少なく、ヨウ素粒子が微小で、少ないため観察が難しくなる。また、デンプンとの発色が不鮮明になりやすい。ヨウ素酸イオン濃度の上限は特に限定しないが、過多に添加してもヨウ素の生成、その粒子の成長が飽和し、またヨウ素デンプン反応による発色の改善は見られないので、0.3mol/l程度以下に止めるのが実用的である。
【0027】
前記ヨウ素酸イオン・デンプン溶液におけるデンプン量は、1g/lより少ない場合には目視確認がやや難しくなり、60g/lより多くてもヨウ素量による明度差(濃淡差)が付きにくく、目視確認性の改善は少ない。このため、好ましくは1〜60g/lとするのがよい。材料の垂直面へ塗布する場合など、水素可視化溶液が垂れ落ちない程度の粘度を必要とする場合には60g/lよりも多くすることが望ましい。
【0028】
上記水素可視化剤は、ヨウ素酸イオンを含む溶液であり、検査材料に塗布することで、簡単に吸蔵水素の可視化を行うことができるが、さらに取り扱い性を改善した水素可視化粘着材について説明する。
【0029】
図1は、かかる水素可視化粘着材を示しており、ポリエチレン、ポリプロピレン等の透明あるいは半透明の合成樹脂で形成されたフィルムあるいはシートからなる基材1と、この基材1の表面に被覆形成された水素可視化粘着層2とを備え、前記水素可視化粘着層2はヨウ素酸イオンを含む化合物としてヨウ素酸カリウムを好ましくは0.010mol/l以上、デンプンを好ましくは1〜50g/l、残部を合成ゴム等の粘着性樹脂からなる組成物によって形成されたものである。
【0030】
この水素可視化粘着材によれば、検査対象となる材料ないし製品材料の表面に水素可視化粘着層2が付着するように材料表面に水素可視化粘着材を貼着するだけで、材料中の吸蔵水素の存在領域を目視観察により知ることができる。すなわち、材料中から表面に拡散してきた水素が水素可視化粘着層2のヨウ素酸イオンと反応してヨウ素を生成し、このヨウ素がデンプンと反応して発色する。この発色は、基材1を透して外部から目視観察することができるため、水素の吸蔵部位を容易に認識することができる。
【0031】
本発明を下記の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0032】
【実施例】
供試材として冷延鋼板(板厚0.5mm)およびアルミニウム合金板(JIS規定5182材、板厚0.5mm)を用い、これらの板材から2種の方形状試験片(A:20W×20Lmm、B:20W×30Lmm)を採取した。この試験片をアセトン中で1min 間超音波洗浄し、自然乾燥させた。
【0033】
次に、試験片の片面に水素を以下の要領でチャージした。図2(図中の数字は寸法mmを示す。)に示すように、試験片の一面の外周部を粘着テープでシールするとともに反対面を全面シールした後、これを陰極として0.01mol/lのKSCNと0.1mol/lのHSOの混合溶液中、電流密度1mA/cm、室温で30分間電解し、非シール領域(図中の斜線部)に水素をチャージした。その後、シールをはずして水洗、乾燥した。また、比較のため、水素チャージを行わない試験片をも準備した。
【0034】
上記試験片を用いて、表1に示す各種試料を作成した。試料No. 1〜5、7〜11、15、16〜18、19については、サイズAの試験片に、水素可視化剤として、ヨウ素酸カリウム溶液あるいはヨウ素酸カリウム・デンプン溶液を塗布し、所定の反応時間経過後、色の変化を目視観察するとともにSEM(走査電子顕微鏡)観察した。ヨウ素酸カリウム・デンプン溶液は、所定量のデンプンを水と煮沸し、半透明になった後ヨウ素酸カリウムを加えて溶解させ、水冷したのもである。
【0035】
また、試料No. 6、12は、サイズBの試験片にヨウ素酸カリウム・デンプン溶液を塗布し、水素チャージしていない反対面が山側となるように約90°折り曲げて、その際の色の変化を目視観察し、変色部をSEMにより拡大観察した。
【0036】
また、試料No. 13、14、20、21については、試験片の水素チャージ面に下記の要領で作成した水素可視化粘着材を貼り付けた。水素可視化粘着材は、ヨウ素酸カリウム、デンプンおよび合成ゴムを混合し、酢酸エチルを少量加えてスラリー状とした水素可視化剤を、透明な基材(ポリエチレンフィルム)に塗布したものである。
【0037】
各試料に用いた水素可視化剤のヨウ素酸カリウム(ヨウ素酸イオン)、デンプンの濃度を表1に併せて示すと共に観察結果を同表に記す。
【0038】
【表1】
Figure 0003545292
【0039】
ヨウ素酸イオンとの反応時間が比較的短い試料No. 2〜4、8〜10では鋼、アルミニウム合金において水素をチャージした部分に青変が見られ、水素が水素チャージ面から放出されたことがわかる。また、反応時間の長い試料No. 5、11では水素チャージ面の反対面(非チャージ面)にチャージ部分に対応した形状の変色部が現れた。これは、材料中に侵入した水素がチャージ面の反対面まで拡散したことを示している。
【0040】
これに対し、水素をチャージしなかった試料No. 18、19では、変色もなく、ヨウ素粒子も観察されなかった。これにより、水素をチャージした試料におけるヨウ素の生成および発色が材料中の水素によるものであることが裏付けられた。
【0041】
また、試料No. 6、12では、材料を折り曲げることにより、ごく短時間の反応でも折り曲げ部の周辺が発色した。これは材料が変形することによって材料中の水素が放出されたものと推測することができる。
【0042】
以上のとおり、水素チャージした試料に対して、ヨウ素酸カリウム・デンプン溶液を材料表面に供給した場合、ヨウ素デンプン反応の発色が起こっていることから、ヨウ素が生成していることは明らかである。実際、試料No. 1〜12のサンプルをSEM/EDS(Scanning Electron Microscope/Energy Dispersive Spectrometer)観察したところ、ヨウ素粒子を確認することができた。一例として試料No.1の拡大観察結果を図3に示す。かかる拡大観察により、微小領域の水素吸蔵部位を求めることも可能である。
【0043】
また、試料No. 15に見るように、ヨウ素酸イオン濃度が0.30mol/lを超えても、発色の改善は見られず、一方試料No. 16から、0.010mol/l未満では水素によるヨウ素の生成量が少ないため、目視観察がやや困難であるが、ミクロ観察ではヨウ素粒子が少ないものの、観察することができた。No. 17はデンプンを含まないため、発色は認められなかったが、No. 16と同様、ヨウ素粒子は少ないものの、拡大観察することができた。
【0044】
また、試料No. 13、14、20、21の水素可視化鋼板でも、No. 20はやや観察困難であったものの、基材を透して発色が目視観察された。もっとも、ヨウ素酸カリウム濃度が0.30mol/lと多い試料No. 21ではNo. 14に比して発色性は改善されなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼やアルミニウム合金などの材料中から表面に拡散してきた水素をヨウ素酸イオンなどの5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンと反応させて粒子状のヨウ素を生成させ、あるいはさらに生成したヨウ素をヨウ素デンプン反応により発色させることにより、材料表面において材料中から拡散してきた水素を簡便に可視化することができ、そのヨウ素を拡大観察することで、材料中の吸蔵水素の存在を把握することができる。特に、生成したヨウ素をヨウ素デンプン反応により発色させる場合には、目視観察によって材料中の吸蔵水素の存在を広狭にかかわらず容易に把握することができる。このため、本発明は、例えば橋梁などの鋼構造物や自動車用鋼、アルミ部品等の応力集中部などにおいて、吸蔵水素による脆化、遅れ破壊の起こる可能性の予測を簡便に行うことができる。また、電池分野の水素吸蔵合金などの水素利用技術における水素濃化チェックなどに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素可視化粘着材の部分断面模式図である。
【図2】実施例で用いた試験材の平面図である。
【図3】材料表面に拡散してきた水素とヨウ素酸イオンとの反応によって材料表面に粒子状に生成したヨウ素の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 基材
2 水素可視化粘着層

Claims (11)

  1. 材料の表面に供給することによって、材料中から拡散してきた水素をヨウ素として生成させて可視化する水素可視化剤であって、
    5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンを本質的成分として含む組成物からなる、水素可視化剤。
  2. 組成物がヨウ素酸イオン:0.010mol/l以上を本質的成分として含むヨウ素酸イオン溶液からなる、請求項1に記載した水素可視化剤。
  3. 材料の表面に供給することによって、材料中から拡散してきた水素をヨウ素として生成させ、生成したヨウ素とデンプンとをヨウ素デンプン反応によって発色させて可視化する水素可視化剤であって、
    5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとデンプンとを本質的成分として含む組成物からなる、水素可視化剤。
  4. 組成物がヨウ素酸イオン:0.010mol/l以上、デンプン:1〜50g/lを本質的成分として含むヨウ素酸イオン・デンプン溶液からなる、請求項3に記載した水素可視化剤。
  5. 材料の表面に付着させることによって、材料中から拡散してきた水素をヨウ素として生成させ、生成したヨウ素とデンプンとをヨウ素デンプン反応によって発色させて可視化する水素可視化粘着材であって、
    透明あるいは半透明の合成樹脂製のフィルムあるいはシートからなる基材と、前記基材表面に形成された水素可視化粘着層とを備え、前記水素可視化粘着層はヨウ素酸イオン:0.010mol/l以上、デンプン:1〜50g/lを本質的成分として含む、水素可視化粘着材。
  6. 材料の表面に請求項1〜4に記載した水素可視化剤を供給し、材料の表面において材料中から拡散してきた水素と5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとを反応させ、生成したヨウ素によって水素を可視化する、吸蔵水素の可視化方法。
  7. 生成したヨウ素を拡大観察する、請求項6に記載した吸蔵水素の可視化方法。
  8. 材料の表面に請求項3または4に記載した水素可視化剤を供給し、材料の表面において材料中から拡散してきた水素と5価以上の酸化状態にあるヨウ素を含むイオンとを反応させ、生成したヨウ素とデンプンとをヨウ素デンプン反応によって発色させ、その発色によって水素を可視化する、吸蔵水素の可視化方法。
  9. 発色を目視観察する、請求項8に記載した吸蔵水素の可視化方法。
  10. 母材と、この母材の表面に請求項1〜4のいずれか1項に記載した水素可視化剤によって形成された水素可視化層とを備えた、吸蔵水素可視化材料。
  11. 母材と、請求項5に記載した水素可視化粘着材とを備え、前記母材の表面に前記水素可視化粘着材の水素可視化粘着層が付着した、吸蔵水素可視化材料。
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