JP4718468B2 - レーザ分析装置、およびレーザ分析方法、並びに気体漏れ検査装置 - Google Patents

レーザ分析装置、およびレーザ分析方法、並びに気体漏れ検査装置 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光を使用して気体を分析する装置および方法に関する。また、本発明はレーザ光を使用して燃料電池スタック、あるいはこれに水素を供給したり排出する水素供給排出システムなどの気体漏れを検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある特定の種類の分析対象気体の有無、あるいは、その気体の濃度などを分析する手法としては、レーザ光により気体を励起させて、蛍光を発生させ、その蛍光の状態(波長や、各波長の強度など)を分析する手法が知られている(例えば特開平8−75651号公報(以下、特許文献1という)を参照)。この手法の動作原理の概要を図7を参照して説明すると、分析対象気体もしくはその気体のプラズマに励起用のレーザ光を照射することによって、気体もしくはプラズマを構成する原子のうち、エネルギー準位が通常のエネルギー準位(基底準位)である下位準位1にある原子にレーザ光のエネルギーを吸収させ、これにより該原子を矢印Yaで示す如く上位準位に励起させる。この場合、レーザ光の波長は、下位準位1と上位準位との間のエネルギー差に対応する波長(これはエネルギー差の逆数に比例する)、すなわち、原子が下位準位1から上位準位に励起するときに吸収すべきエネルギーに対応する波長(共鳴波長)に一致するものに設定される。従って、この励起の際に原子が吸収するエネルギーは励起用のレーザ光の光子1個分のエネルギーである。
【0003】
上記の如く上位準位に励起した気体もしくはプラズマは、その後、矢印Yb,Ycで示す如く下位準位1もしくは2に脱励起し、その際に蛍光AまたはBを発生する。なお、この例では、下位準位1と上位準位との間に下位準位2が存在するものとしている。そして、特許文献1に見られるような分析手法では、この蛍光AまたはBを捕らえてその状態(強度など)を分析する。
【0004】
また、分析対象気体が分子構造である場合にのみ、適用可能な分析手法として、ラマン散乱法(自発ラマン散乱法または誘導ラマン散乱法(CARS))も従来より知られている(例えば特開平9−292341号公報(以下、特許文献2という)を参照)。このラマン散乱法は、レーザ光により分子を回転励起または振動励起させ、その際に分子から散乱された光(散乱光)の状態を分析する手法である。
【0005】
また、水素を可視化して検出する手法として、ヨウ素酸イオン溶液などの水素可視剤を使用し、その水素可視剤と水素とを反応させることで生成されたヨウ素をデンプンと反応させ、それにより水素を可視化する手法も知られている(例えば特開2001−147225号公報(以下、特許文献3という)を参照)。
【0006】
一方、例えば燃料電池スタックは、その本体部やこれに接続される配管などからの気体漏れが生じると、発電効率が低下するなどの不都合が生じるため、該燃料電池スタックの出荷前等に、気体漏れを検出することが望まれていた。
【0007】
前記特許文献1に見られるような従来の蛍光分析手法は、前記したように、照射するレーザ光の波長を、原子もしくはプラズマの準位間エネルギー差に対応する波長に一致させる必要がある。このため、検出しようとする気体(蛍光を発生させるべき気体)の種類に応じてレーザ光の波長を変化させなければならない。従って、従来の蛍光分析手法で種々様々の気体の分析を行なう場合には、レーザ光の波長を可変化するための装置が必要になって、装置構成が複雑化し、また、その装置が高価なものとなるという不都合があった。さらに、発生する蛍光の強度を高めたりするために、気体をプラズマ化(電離させる)する場合には、2つのレーザ装置を使用する必要があり、装置がより高価で複雑なものとなる。
【0008】
また、従来の蛍光分析手法では、以下に示す理由により、一部の種類の気体(例えば水素やヘリウム)を検出することが実際上できないものとなっていた。すなわち、水素やヘリウムは、準位間エネルギー差が大きいため(10eV以上)、それを励起するための吸収波長は、120nm以下の極真空紫外領域にある。そして、このような極真空紫外領域の波長のレーザ光を容易に発生し得るレーザ装置や光学部品は、現状では存在していない。また、極真空紫外領域の光は、空気中では即座に吸収されて減衰してしまうため、そのような光を所望の箇所に照射することは極めて困難である。
【0009】
補足すると、水素やヘリウムは、真空容器や燃料電池(水素を燃料として使用する燃料電池)の漏れ検査を行なう場合に使用する気体として有用であるため、それらの水素やヘリウムを極真空紫外光を使用することなく、光学的に検出する技術が望まれている。
【0010】
また、前記特許文献2に見られるようなラマン散乱法は、レーザ光の照射によって振動励起または回転励起を行なうことが可能な分子で、しかもその際に分極率が大きく変わるような分子、例えば水素分子や窒素分子など、一部の気体にしか適用できない。このため、ヘリウムやアルゴンなどの単原子の気体(希ガス)や、水素原子はラマン散乱法では、検出できず、分析対象気体が限定されてしまうという不都合があった。また、ラマン散乱法のうちの自発ラマン散乱法では、大気中で微量の気体を検出することが困難である。さらに、ラマン散乱法のうちの誘導ラマン散乱法では、2つの異なるレーザ光を必要とすることから、装置構成が大型化あるいは複雑化すると共に、高価なものとなるという不都合もあった。
【0011】
また、前記特許文献3に見られるような水素可視化剤を使用するものでは、例えば燃料電池スタックに水素を供給しながら、その水素の漏れを検出しようとした場合に、燃料電池スタックの特定の小さな領域の部位のみに液体である水素可視化剤を供給することが困難である。このため、気体漏れの発生部位を正確に特定することが困難である。また、燃料電池スタックの表面に付着した水素可視化剤を検査後に除去する作業も必要になるという不都合がある。
【0012】
なお、燃料電池スタックの気体漏れの検査を行なうために、例えば燃料電池スタックを水中に浸漬させると共に、この状態で燃料電池スタックに気体を供給し、該水中に発生する気泡を観測することも考えられる。しかしながら、このような手法では、検査後に燃料電池スタックを乾燥させる作業が必要になる。
【0013】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、気体の種類によらずに、種々様々の種類の気体(特に水素又はヘリウム)を安価で簡単な構成で観測することができるレーザ分析装置およびレーザ分析方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、レーザ光を使用して、燃料電池スタックなどの気体漏れを容易に検出することができる気体漏れ検査装置を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の発明者は、種々様々の実験、検討を行なった結果、次のことを知見した。すなわち、ある適切な所定波長を有するレーザ光を集光し、その集光部分でのレーザ光の強度が比較的大きなものとなるようにしたとき、その集光部分においては、そこに存在する気体の種類によらずに、非線形効果である多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させて、蛍光を発生させることができる。ここで、これらの多光子励起現象または多光子イオン化現象について、図1(a),(b)を参照して説明しておく。図1(a)は多光子励起現象に係るエネルギー準位の遷移と蛍光の発生との関係を示す図であり、図1(b)は多光子イオン化現象に係るエネルギー準位の遷移と蛍光の発生との関係を示す図である。
【0015】
図1(a)を参照して、分析対象気体に対して、比較的大きな強度(例えば光軸の垂直な断面におけるパワー密度が1014W/cm2以上の強度)を持つ所定波長(例えば可視光域の波長)の励起用レーザ光を分析対象気体に照射する。このとき、分析対象気体の原子または分子は、レーザ光の作用で生じる非常に強い電場の影響を受け、非線形効果によって、光子を複数個(例えば5〜10個)同時に吸収し、複数の矢印Y1で示す如く、通常のエネルギー準位としての下位準位1から上位準位に励起される。これが多光子励起現象である。なお、図1(a)中の各矢印Y1は、光子1個分のエネルギー量に対応しており、その意味で矢印Y1は複数記載されている。このような多光子励起現象は、レーザ光の波長を一定としても、分析対象気体の種類によらずに発生する。このように励起した原子または分子は、その後、矢印Y2,Y3で示す如く下位準位1または2に脱励起し、この際に蛍光AまたはBを発生する。原子または分子が採り得るエネルギー準位は、原子または分子の種類によって決まっているので、蛍光A,Bの波長も原子または分子の種類に応じたものとなる。従って、蛍光AまたはBを観測することで、分析対象気体の状態を分析することができる。
【0016】
また、図1(b)を参照して、分析対象気体に対して、比較的大きな強度(例えば光軸の垂直な断面におけるパワー密度が1014W/cm2以上の強度)を持つ所定波長(例えば可視光域の波長)の励起用レーザ光を分析対象気体に照射する。なお、この場合の励起用レーザ光の強度は、図1(a)の場合よりも高いものとする。このとき、エネルギー準位が下位準位1にある原子または分子は、矢印Y1で示す如く、より大量の光子を吸収して連続状態(前記上位準位よりも高いエネルギー状態)にまで励起され、イオン化する(電離してプラズマを形成する)。これが多光子イオン化現象である。なお、図1(b)中の各矢印Y1は、光子1個分のエネルギー量に対応している。このような多光子イオン化現象は、レーザ光の波長を一定としても、分析対象気体の種類によらずに発生させることができる。例えば、レーザ光のパワー密度が1014W/cm2以上であれば、イオン化エネルギーが25eV以上となるヘリウムなどの希ガス、すなわち、化学的に安定な原子についても、多光子イオン化現象を発生させることが可能である。なお、多光子イオン化現象が発生する状態では、前記多光子励起現象も発生する。
【0017】
上記のような多光子イオン化現象により生じる正イオンおよび電子は、その後、矢印Y4で示す如く再結合して原子または分子に戻り、さらにそのエネルギー準位が矢印Y2,Y3で示す如く下位準位1または2に脱励起し、この際に蛍光AまたはBを発生する。従って、前記図1(a)の場合と同様に、蛍光AまたはBを観測することで、分析対象気体の状態を分析することができる。
【0018】
また、分析対象気体として、例えば水素に着目した場合、1つの水素分子に多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させるためには、多光子によって1つの水素分子に注入されるエネルギーは15eV以上必要である。具体的には、多光子による1つの水素分子へのエネルギーが18eV以上であれば、水素分子の多光子イオン化現象を発生させることができる。なお、水素分子の多光子イオン化現象では、該水素分子が水素イオンと基底状態の水素原子とに解離し、次いで、水素イオンの再結合(電子との再結合)および脱励起によって蛍光を発した後、その脱励起した水素原子と基底状態の水素原子とが再結合して、水素分子に戻る。さらに、多光子による1つの水素分子への注入エネルギーが18eVよりも小さくても、15eV以上であれば、該水素分子の多光子励起現象を発生させることができる。なお、水素分子の多光子励起現象では、該水素分子が2以上の主量子数を持つ励起状態の水素原子と基底状態の水素原子とに解離し、その後、励起状態の水素原子が脱励起して蛍光を発生すると共にその脱励起した水素原子と基底状態の水素原子とが再結合して、水素分子に戻る。
【0019】
従って、水素分子の1個当たりに、15eV以上のエネルギーを多光子によって注入するようにすることで、水素分子の多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させることができる。但し、水素分子への注入エネルギーが15eV以上であっても、17eVよりも小さい場合には、励起される水素原子の主量子数は2に留まる。そして、この場合には、該水素原子の脱励起によって発生する蛍光は、極紫外領域の波長の光となるので、該蛍光を検出することは一般には困難である。一方、水素分子への注入エネルギーが17eV以上となる多光子励起現象では、励起される水素原子の主量子数は3以上となり、この場合には、該水素原子の脱励起によって発生する蛍光は可視光域の波長の光となる。さらに、水素分子の多光子イオン化現象によって発生する蛍光も可視光域の波長の光となる。
【0020】
従って、分析対象気体を水素とする場合には、多光子による水素分子の1個当たりの注入エネルギーは、可視光域の波長の蛍光を発生させるためには、17eV以上であることが望ましい。
【0021】
また、分析対象気体として、例えばヘリウムに着目すると、1つのヘリウム原子に多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させるためには、多光子によって1つの水素分子に注入されるエネルギーは21eV以上必要である。具体的には、多光子による1つのヘリウム原子(ヘリウムは単原子分子である)への注入エネルギーが25eV以上であれば、該ヘリウム原子の多光子イオン化現象を発生させることができる。なお、ヘリウム原子の多光子イオン化現象では、該ヘリウム原子がイオン化し、次いで、そのヘリウムイオンの再結合(電子との再結合)および脱励起によって蛍光を発することで、該ヘリウムイオンが基底状態のヘリウム原子に戻る。さらに、多光子による1つのヘリウム原子への注入エネルギーが25eVよりも小さくても、21eV以上であれば、該ヘリウム原子の多光子励起現象を発生させることができる。なお、ヘリウム原子の多光子励起現象では、該ヘリウム原子は、2以上の主量子数を持つ状態に励起され、その後、該ヘリウム原子が脱励起して蛍光を発生し、基底状態のヘリウム原子に戻る。
【0022】
従って、ヘリウム原子の1個当たりに、21eV以上のエネルギーを多光子によって注入するようにすることで、ヘリウム原子の多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させることができる。但し、ヘリウム原子への注入エネルギーが21eV以上であっても、23eVよりも小さい場合には、励起されるヘリウム原子の主量子数は2に留まる。そして、この場合には、該ヘリウム原子の脱励起によって発生する蛍光は、極紫外領域の波長の光となるので、該蛍光を検出することは一般には困難である。一方、ヘリウム原子への注入エネルギーが23eV以上となる多光子励起現象では、励起されるヘリウム原子の主量子数は3以上となり、この場合には、該ヘリウム原子の脱励起によって発生する蛍光は可視光域の波長の光となる。さらに、ヘリウム原子の多光子イオン化現象によって発生する蛍光も可視光域の波長の光となる。
[0023] 従って、分析対象気体をヘリウムとする場合には、多光子によるヘリウム原子の1個当たりの注入エネルギーは、可視光域の波長の蛍光を発生させるためには、23eV以上であることが望ましい。
【0024】
補足すると、励起用レーザ光のパワー密度が1014W/cm2以上であれば、あらゆる種類の気体に対して多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させることができる。そして、このようなパワー密度を持つレーザ光は、例えば公知のNd:YAGレーザ(パルスレーザ)を光源として使用することで、支障なく発生させることができる。また、例えば水素に関しては、励起用レーザ光のパワー密度が1014W/cm2よりも小さくても、多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させることができる。より具体的には、レーザ光の波長を紫外線域の波長(例えば213nm)とした場合には、パワー密度が1012W/cm2程度の励起用レーザ光により水素を励起もしくはイオン化することができ、レーザ光の波長を可視光域の波長(例えば532nm)とした場合には、パワー密度が1013W/cm2弱の励起用レーザ光により水素を励起もしくはイオン化することができる。
[0025] 以上説明したことを考慮しつつ、以下に本発明を説明する。
【0026】
本発明のレーザ分析装置は、前記の目的を達成するために、レーザ光により分析対象気体を励起して、該分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長を有する蛍光を発生させ、その蛍光の状態に基づき該分析対象気体の状態を分析するレーザ分析装置であって、所定の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、このレーザ光発生手段が発生したレーザ光を、前記分析対象気体の存在箇所で点状に集光させるようにして該分析対象気体の存在箇所に向かって照射する縮小光学系と、該レーザ光の集光部分で分析対象気体が発生した蛍光を受光して、その受光した蛍光の状態を分析する蛍光分析手段とを備え、少なくとも前記レーザ光の集光部分で分析対象気体の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させるエネルギーを該レーザ光に持たせるようにしたことを基本構成とする(第1発明)。
【0027】
また、本発明のレーザ分析方法は、前記の目的を達成するために、レーザ光により分析対象気体を励起して、該分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長の蛍光を発生させ、その蛍光の状態に基づき該分析対象気体の状態を分析するレーザ分析方法であって、所定の波長のレーザ光を前記分析対象気体の存在箇所で点状に集光させるようにして該分析対象気体の存在箇所に向かって該レーザ光を照射するステップと、該レーザ光の集光部分で該レーザ光のエネルギーによって前記分析対象気体の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴う該分析対象気体の蛍光を発生させるステップと、その発生した蛍光を受光して、該蛍光の状態を分析するステップとを備えたことを基本構成とする(第12発明)。
[0028] かかる第1および第12発明によれば、レーザ光を分析対象気体の存在箇所に集光させると共に、少なくともその集光部分で分析対象気体の多光子イオン化現象を発生させるエネルギーを該レーザ光に持たせるようにしたので、レーザ光の波長を所定の波長(一定の波長)としても、前記集光部分に存在する種々様々の気体に対して多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させ、ひいては、該集光部分の分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長の蛍光を発生させることができる。従って、その集光部分で発生した蛍光を受光して、該蛍光の状態(該蛍光の波長毎の強度(波長分布)や、特定の波長の蛍光の強度など)を分析することにより、分析対象気体の状態(分析対象気体の濃度や、分析対象気体を組成する各種類の気体の濃度、または特定の種類の気体の有無等)を観測することが可能となる。この場合、レーザ光は、分析対象気体の種類あるいは該分析対象気体を組成する各気体の種類によらずに所定の波長(一定の波長)のものでよいので、レーザ光の波長が異なる2つのレーザを使用したり、分析対象気体の種類によってレーザ光の波長を可変化する必要がない。このため、レーザ分析装置の構成を安価で簡単なものにすることができる。つまり、前記第1または第12発明によれば、レーザ分析装置の構成を安価で簡単なものとしつつ、種々様々の種類の気体を分析することができる。
[0029] なお、第1および第12発明では、レーザ光の所定の波長としては、実用上は例えば紫外線の波長あるいは可視光の波長が好ましい。
【0030】
前記第1または第12発明を基本構成とする本発明の一態様は、前記分析対象気体は水素であり、前記集光部分に存在する1つ以上の水素分子の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴い可視光域の波長の蛍光を発生させるために、前記集光部分に存在する1つ以上の水素分子のそれぞれに17電子ボルト(17eV)以上のエネルギーを注入可能なエネルギーを前記レーザ光に持たせたことを特徴とする(第2発明、第13発明)。
[0031] これによれば、前記した如く、水素分子の多光子励起現象または多光子イオン化現象によって、可視光域の波長の蛍光を発生させることができる。従って、該蛍光の状態を支障なく分析することができ、従来の手法では困難であった、水素の状態(水素の有無、水素の濃度等)を容易に観測することが可能となる。
【0032】
また、第1または第12発明を基本構成とする本発明の他の態様は、前記分析対象気体はヘリウムであり、前記集光部分に存在する1つ以上のヘリウム原子の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴い可視光域の波長の蛍光を発生させるために、前記集光部分に存在する1つ以上のヘリウム原子のそれぞれに23電子ボルト(23eV)以上のエネルギーを注入可能なエネルギーを前記レーザ光に持たせたことを特徴とする(第3発明、第14発明)。
[0033] これによれば、前記した如く、ヘリウム原子の多光子励起現象または多光子イオン化現象によって、可視光域の波長の蛍光を発生させることができる。従って、該蛍光の状態を支障なく分析することができ、従来の手法では困難であった、ヘリウムの状態(ヘリウムの有無、ヘリウムの濃度等)を容易に観測することが可能となる。
【0034】
また、上記の本発明のレーザ分析装置またはレーザ分析方法では、好ましくは、前記レーザ光の集光部分におけるピーク強度(より詳しくはレーザ光の光軸に垂直な断面でのピーク強度)1014W/cm2以上にする(第4発明、第15発明)。
[0035] この第4発明および第15発明によれば、分析対象気体の種類あるいは該分析対象気体を組成する各気体の種類によらずに、あらゆる種類の気体に対して前記多光子イオン化現象を発生させることが可能となる。なお、この場合、レーザ光の波長は、例えば可視光の波長であることが好適である。
[0036] 補足すると、第4発明、第15発明によれば、前記集光部分のレーザ光の多光子によって、水素分子の1個当たりに18eV以上のエネルギーを注入することができると共に、ヘリウム原子の1個当たりに25eV以上のエネルギーを注入することができる。従って、分析対象気体に水素およびヘリウムのいずれが含まれる場合であっても、該水素、ヘリウムに対応する可視光域の蛍光を発生させることができる。
[0037] また、特に、前記第1〜第4発明では、前記レーザ光発生手段の光源を、該光源から出力されるレーザ光の光軸に垂直な断面におけるパワー密度分布がトップハット型となるパルスレーザにより構成することが好適である(第5発明)。
【0038】
この第5発明によれば、前記光源から発生するレーザ光のピーク強度を比較的簡単な光源構成で大強度にし、ひいては、前記集光部分におけるレーザ光の強度(エネルギー)を種々様々な気体に対して前記多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させ得る強度(好ましくは1014W/cm2以上)にすることができる。なお、レーザ光のピーク強度を高め得るパワー密度分布としてはトップハット型のほか、例えばガウシアン型もあるが、ピーク強度をできるだけ高める上で、トップハット型が好適である。
[0039] この第5発明では、前記レーザ光発生手段から前記縮小光学系に至るレーザ光の光路に位相共役型レーザ転送光学系を備えることが特に好ましい(第6発明)。
[0040] すなわち、位相共役型レーザ転送光学系は、これに入力されるレーザ光の光成分を光学的に逆変換することで、入力されるレーザ光のパワー密度分布(光軸に垂直な断面におけるパワー密度分布)を維持するようにして、レーザ光を効率よく転送する光学系である。このため、このような位相共役型レーザ転送光学系を前記光路に備えることで、前記光源から出力されたレーザ光のパワー密度分布(トップハット型)を維持しつつ、縮小光学系に入力することができる。
【0041】
さらに詳細には、一般にレーザ光が空間中を伝搬していく過程では、光線を構成する様々な位相をもった光成分が互いに干渉するため、伝搬距離が長くなるとパワー密度分布が劣化してしまう。その結果、レーザ共振器(光源)から出力された直後のレーザ光が、トップハット型もしくはガウシアン型などの理想的なパワー密度分布をもっていても、例えば数メートルから数10メートルの距離を伝搬した後は、該レーザ光の中心部分のエネルギーが外側へと分散してしまい、該レーザ光のパワー密度分布が裾の広がったパワー密度分布へと変化してしまう。また、場合によっては、レーザ光が伝搬するうちに、そのパワー密度分布が長楕円状、ドーナツ状、短冊状、縞模様状などの好ましくない形状へと大きく変形することもある。このように、パワー密度分布が劣化したレーザ光を小さな点に効率よく集光させることは一般には難しいため、このままでは、レーザ共振器(光源)から離れた場所で、気体に大強度のレーザ光を照射して、蛍光を発生させることは困難になる。また、本発明の種々様々な用途を考慮すると、光源から離れた場所に存在する水素やヘリウムなどの分析対象気体の状態(濃度分布など)を測定できることが望まれる。そして、前記位相共役型レーザ転送光学系においては、レンズと鏡と真空管とを適切な組み合わせで配置することによって、レーザ共振器(光源)から出力されたレーザ光のパワー密度分布を、該レーザ共振器から任意の距離を隔てた場所に正確に転写して再現することができる。従って、レーザ光の密度分布の劣化という、上記の問題点を解決することができる。その結果、前記光源から前記集光部分に至るレーザ光の光路上で、該レーザ光のピーク強度が減少するのを極力抑制することができる。このため、光源から出力するレーザ光のピーク強度を必要最低限に抑えつつ、前記集光部分におけるレーザ光の強度(エネルギー)を種々様々な気体に対して前記多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させ得る強度(好ましくは1014W/cm2以上)にすることができる。換言すれば、レーザ光の光源として、比較的安価で簡単な構成のものを使用しつつ、前記集光部分におけるレーザ光の強度(エネルギー)を種々様々な気体に対して前記多光子励起現象または多光子イオン化現象を発生させ得る強度(好ましくは1014W/cm2以上)にすることができる。
【0042】
また、本発明の気体漏れ検査装置は、気体の通路を内部に有する検査対象物における気体漏れを前記第1〜第6発明のいずれかのレーザ分析装置を用いて検査する気体漏れ検査装置であって、前記検査対象物に水素を供給する手段を備えると共に、該水素の供給状態において、前記レーザ光の集光部分が前記検査対象物の近傍位置に存するように前記縮小光学系からレーザ光を照射するようにしたことを特徴とするものである(第7A発明
あるいは、本発明の気体漏れ検査装置は、気体の通路を内部に有する検査対象物における気体漏れを前記第1〜第6発明のいずれかのレーザ分析装置を用いて検査する気体漏れ検査装置であって、前記検査対象物にヘリウムを供給する手段を備えると共に、該ヘリウムの供給状態において、前記レーザ光の集光部分が前記検査対象物の近傍位置に存するように前記縮小光学系からレーザ光を照射するようにしたことを特徴とするものである(第7B発明)。
【0043】
かかる第7A発明または第7B発明によれば、前記集光部分で発生する蛍光の状態を分析することで、水素またはヘリウムに対応する波長の蛍光の状態(該波長の蛍光の強度など)を把握することができるので、該水素またはヘリウムの漏れ状態(漏れているか否かやその漏れ量など)を観測することが可能となる。この場合、前記第1〜第6発明のレーザ分析装置を用いるので、安価で簡単な構成で、検査対象物の気体漏れを容易に検査することができる
【0044】
かかる第7A発明または第7B発明では、前記検査対象物は、燃料電池スタック、または、該燃料電池スタックに水素を供給する水素供給システム、または、該燃料電池スタックから水素を排出する水素排出システムであることが好適である(第8発明)。
【0045】
この第8発明によれば、燃料電池スタックの内部の高分子電界質膜などに悪影響を及ぼすことなく、燃料電池スタック、または、該燃料電池スタックに水素を供給する水素供給システム、または、該燃料電池スタックから水素を排出する水素排出システムの気体漏れを検査することができる。また、水素やヘリウムは、気体としては通常の大気中にほとんど含有されていないので、大気中でも(検査対象物を大気中に開放した状態であっても)、気体漏れを検査することが可能である。なお、水素供給システムもしくは水素排出システムとしては、水素貯蔵容器、水素供給用ポンプ、配管などが挙げられる。
【0046】
そして、上記第7または第8発明のうち、特に、前記検査対象物に供給する気体は水素である場合の発明では、少なくとも前記検査対象物を窒素が充填された密閉室に収容した状態でレーザ光を該検査対象物の近傍位置に向かって照射するようにすることが好適である(第9発明)。
[0047] すなわち、検査対象物に供給する気体として水素を使用すると共に、大気中で気体漏れの検査を行なった場合には、特に大気の湿度が高い場合に、水蒸気がレーザ光により解離されることで生成される水素の影響で、漏れている微小量の水素の検出を行なうことが困難となる場合がある。しかるに、第9発明によれば、窒素を充填した密閉室内で気体漏れの検査を行なうので、漏れている水素が比較的微小量であっても、その微小量の水素を検出することが可能となる。つまり、検出し得る水素の濃度の分解能を高めることができる。
[0048] また、上記第7〜第9発明では、前記レーザ光の集光部分を前記検査対象物に対して相対移動させる移動手段を備えることが好ましい(第10発明)。
[0049] これによれば、レーザ光の集光部分を検査対象物に対して走査させ、検査対象物の多数の部位での気体漏れを検査することができる。なお、気体漏れの発生部位を特定する上では、検査対象物を固定し(不動とし)、前記縮小光学系等を移動させたりすることで、レーザ光の集光部分を検査対象物に対して移動させることが望ましい。
【0050】
また、上記第10発明では、前記検査対象物に供給する気体が水素である場合には、前記蛍光分析手段は、前記レーザ光の集光部分の前記検査対象物に対する相対位置と該集光部分で発生した前記蛍光のうちの水素に対応する波長の蛍光の強度との関係を示す画像データを生成する手段を備えることが好適である(第11A発明。同様に、前記検査対象物に供給する気体がヘリウムである場合には、前記蛍光分析手段は、前記レーザ光の集光部分の前記検査対象物に対する相対位置と該集光部分で発生した前記蛍光のうちのヘリウムに対応する波長の蛍光の強度との関係を示す画像データを生成する手段を備えることが好適である(第11B発明)。
[0051] これによれば、前記画像データによって、漏れた気体の空間的な分布状態を把握することができるので、検査対象物の気体漏れの部位を容易に特定することが可能となる。
【0059】
本発明の第1実施形態を図2および図3を参照して説明する。なお、本実施形態は、本発明のレーザ分析装置の一実施形態であると共に、気体漏れ検査装置の一実施形態でもある。
【0060】
図2は本実施形態の装置の全体構成を示すブロック図である。この装置1は、その構成を大別すると、レーザ光を発生し、それを所定の検査対象領域Eに導くレーザ光発生・転送装置2と、検査対象領域Eに導かれたレーザ光によって気体が発する蛍光を入力する蛍光分析処理装置3とを備えている。
【0061】
検査対象領域Eには、基台4が固設されており、この基台4上に、検査対象物としての燃料電池スタックFCが設置されて、固定されるようになっている。燃料電池スタックFCは、これにアノードガスとしての水素と、カソードガスとしての空気(より正確には空気中の酸素)とを供給することで、それらのガスの化学反応によって発電するものである。本実施形態の装置1は、このような燃料電池スタックFCのガス流路(燃料電池スタックFCの内部のガス流路、あるいは、これに連通して燃料電池スタックFCの外部に接続される配管流路)の気体漏れを検査するようにしている。そして、基台4上に設置された燃料電池スタックFCには、これに気体漏れ検査用の気体を供給する配管5が接続されるようになっている。気体漏れ検査用の気体として、本実施形態では、水素あるいはヘリウムが用いられる。
【0062】
レーザ光発生・転送装置2は、所定波長のレーザ光を発生して出力するレーザ光発生手段10と、前記検査対象領域E内の所望の部分Exに集光させるように検査対象領域Eに導くレーザ光転送手段11とを備えている。
【0063】
レーザ光発生手段10は、高精度同期回路12、パルスレーザ13、高調波発生器14および高調波分離鏡15を備えている。高精度同期回路12は、2種類の電気パルス信号を生成し、それをパルスレーザ13に入力することにより、該パルスレーザ13を発振させるものである。
【0064】
パルスレーザ13は、高精度同期回路12から入力された電気パルス信号に応じて発振して、パルス状のレーザ光を出力するものであり、レーザ光の光源に相当するものである。この場合、電気パルス信号に対するパルスレーザ13の発振の時間的ゆらぎは、数ナノ秒以下である。このパルスレーザ13は、出力するレーザ光の、光軸に垂直な断面におけるパワー密度分布がトップハット型となるパルスレーザであり、本実施形態では、Nd:YAGレーザが使用されている。このパルスレーザ13が出力するレーザ光は、その1パルスの時間幅が数ナノ秒以下、強度が1パルス当たり0.5〜1ジュール、ビームの広がりが回折限界に対して約1.2〜1.5、波長が1064nmのものである。なお、本実施形態では、パルスレーザ13が出力するレーザ光のパワー密度分布をトップハット型にしたが、例えばガウシアン型でもよい。但し、レーザ光のピーク強度をできるだけ高める上では、レーザ光のパワー密度はトップハット型であることが好適である。
【0065】
パルスレーザ13から出力されるレーザ光は、その進行方向(光軸方向)が2つの反射鏡16,17を介して反転された後、高調波発生器14に入力される。この高調波発生器14は、入力されたレーザ光の波長を変換するものである。より詳しくは、高調波発生器14は、非線形光学結晶から構成されており、入力されたレーザ光の一部を、その波長の1/n(n:2以上の整数)の波長を持つレーザ光(入力されたレーザ光の周波数の高調波周波数のレーザ光)に変換し、それを元の波長のレーザ光と共に出力する。波長が変換されたレーザ光の波長は、本実施形態では、パルスレーザ13が出力するレーザ光の波長の1/2、すなわち、532nmであり、これは緑域の波長(可視光の波長)である。なお、高調波発生器14を構成する非線形光学結晶は、例えば22.8度の結晶角に切断したBBO結晶(ベータバリウムボライト結晶)で、長さが5〜10mm程度のものである。
【0066】
高調波発生器14から出力されるレーザ光は、高調波分離鏡15に入力される。この高調波分離鏡15は、高調波発生器14で波長が変換されたレーザ光(波長532nmのレーザ光)を反射する一方、これ以外の波長のレーザ光を透過するものである。この高調波分離鏡14で反射されるレーザ光が、本実施形態のレーザ光発生手段10が最終的に出力するレーザ光である。
【0067】
なお、高調波分離鏡15で反射されるレーザ光の光軸(進行方向)は、該高調波分離鏡15に入力されるレーザ光の光軸に対して直角な方向に向けられる。また、高調波分離鏡15を透過したレーザ光は、ビームダンプ18に入力される。このビームダンプ18は、入力されたレーザ光のエネルギーを吸収して減衰させるものである。
【0068】
補足すると、本実施形態では、パルスレーザ13が出力するレーザ光の第2高調波のレーザ光(波長532nm)をレーザ光発生手段10から出力するようにしたが、パルスレーザ13が出力するレーザ光の第3高調波、第4高調波、第5高調波などの波長のレーザ光を出力するようにしてもよい。また、パルスレーザ13としては、Nd:YAGレーザのほか、エキシマガスレーザ、Nd:YLFレーザ、チタンサファイアレーザ、アト秒レーザ、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザを使用することも可能である。但し、レーザのメンテナンス性や小型軽量化を考慮すると、Nd:YAGレーザやNd:YLFレーザ等の固体レーザを使用することが好適である。また、気体の励起もしくはイオン化(電離)の効率や、蛍光分析処理装置3への迷光の侵入の少なさを考慮すると、紫外線レーザ光を生成して出力するようにしてもよい。この場合には、高調波発生器14で第5高調波のレーザ光(波長213nm)を発生させると共に、高調波分離鏡15でその波長のレーザ光を反射するようにすればよい。
【0069】
レーザ光発生手段10から出力されたレーザ光(高調波分離鏡15で反射されたレーザ光)は、レーザ光転送手段11に供給される。
【0070】
レーザ光転送手段11は、反射鏡20、真空管型レーザ空間フィルタ21、位相共役型レーザ転送光学系22、およびビーム縮小光学系23を備える。レーザ光発生手段10から供給されたレーザ光は、その進行方向が反射鏡20で90度、変更された後、真空管型レーザ空間フィルタ21に入力される。該真空管型空間フィルタ21は、入力されたレーザ光の横モード形状を整形するものであり、その整形後のレーザ光を位相共役型レーザ転送光学系22を介してビーム縮小光学系23に転送する。位相共役型レーザ転送光学系22は、前記した如く、これに入力されるレーザ光のパワー密度分布を前記レーザ光発生手段10から出力されるレーザ光のパワー密度分布であるトップハット型またはガウシアン型に維持し、それによって、該レーザ光のピーク強度が減少するのを防止するものである。
【0071】
ビーム縮小光学系23は、入力されたレーザ光のビーム径をその進行方向に向かって絞る(縮径する)ための光学系である。本実施形態では、ビーム縮小光学系23は、第1ビーム縮小光学系23aおよび第2ビーム縮小光学系23bとこれらの間に介在された反射鏡24とから構成されている。そして、該ビーム縮小光学系23は、位相共役型レーザ転送光学系22から供給されたレーザ光のビーム径を第1ビーム縮小光学系23aで縮径した後、反射鏡24を介して該レーザ光を検査対象領域Eに向かう方向(検査対象領域Eを横断する方向)に変更し、その後、第2ビーム縮小光学系23bによりビーム径をさらに縮径させるようにしている。
[0072] この場合、第2ビーム縮小光学系23bから出力されるレーザ光(以下、これに参照符号Lを付する)を、その光軸上で、該2ビーム縮小光学系23bから所定距離だけ離れた、検査対象領域E内の部分Exにて点状(直径50〜100μm程度の領域)に集光させる(焦点を結ぶ)ように第1および第2ビーム縮小光学系23a,23bが構成されている。なお、第2ビーム縮小光学系23bから、レーザ光Lが集光する部分Ex(以下、集光部分Exという)までの距離は、例えば0.3〜10mの範囲で設定可能である。そして、本実施形態では、前記したパルスレーザ13を使用してレーザ光発生手段10を構成し、また、前記位相共役型レーザ転送光学系22を備えたことによって、集光部分Exでのレーザ光Lのピーク集光強度(強度のピーク値)は、1014W/cm以上の強度、例えば1015〜1016W/cmの強度が確保されるようになっている。
[0073] 本実施形態では、レーザ光Lの集光部分Exでの強度をこのような大強度にすることによって、その集光部分Exに存在する種々様々の気体(水素、ヘリウム、窒素、酸素、水蒸気など)に対して、多数の光子を吸収させる非線形現象である多光子励起現象および多光子イオン化現象を発生させることが可能となっている。補足すると、集光部分Exにおいて、多光子イオン化現象によって電離してイオン化した気体は、数ナノ秒から数ミリ秒の寿命で再結合および脱励起をして、非イオンの原子あるいは分子に戻る。そして、この際、気体の種類に応じた波長(1つの種類の気体に対して1つの波長とは限らない)の蛍光が発生する。同様に、集光部分Exにおいて、多光子励起現象によって励起された気体は脱励起をし、この際、気体の種類に応じた波長の蛍光が発生する。それらの蛍光は、指向性を持つことなく四方に飛散する。また、本実施形態では、レーザ光Lの集光部分Exでの強度をこのような大強度にすることによって、集光部分Exに水素が存在する場合には、その個々の水素分子に18eV以上のエネルギーを注入可能で、且つ、ヘリウムが存在する場合には、その個々のヘリウム原子に25eV以上のエネルギーを注入可能となっている。つまり、集光部分Exにおけるレーザ光Lの強度は、水素およびヘリウムのいずれについても、それらを、可視光の蛍光を発生し得る状態に励起またはイオン化できるような大強度のものとなっている。
[0074] なお、レーザ発生・転送装置2は、集光部分Exを通った後のレーザ光Lを捕捉するためのレーザ光捕捉手段25として、光学系26、一対の反射鏡27a,27bおよびビームダンプ28をさらに備えている。集光部分Exを通った後のレーザ光Lは、光学系26に導入されて平行光線にされた後、反射鏡27a,27bを介してビームダンプ28に導入される。そして、このビームダンプ28にてエネルギーが吸収されて減衰する。また、ビームダンプ28では、その発熱(レーザ光Lのエネルギー吸収に伴う発熱)に基づいて、レーザ光Lの強度が測定されるようになっている。
[0075] レーザ光転送手段11には、さらに、前記レーザ光Lの集光部分Exを前記検査対象領域Eの基台4上の燃料電池スタックFC(あるいはこれに付設されている配管)の表面沿いに検査対象領域E内で移動させる移動手段としてのXYテーブル29が備えられている。
[0076] このXYテーブル29は、レーザ光発生手段10から出力されるレーザ光の光軸方向に図示しない電動モータにより移動可能な第1可動テーブル30と、前記反射鏡20で反射されたレーザ光の光軸方向(第1可動テーブル30の可動方向と直交する方向)に図示しない電動モータにより移動可能な第2可動テーブル31とを備え、第1可動テーブル30には、これと共に移動し得るように、第2可動テーブル31、反射鏡20、真空管型レーザ空間フィルタ21、位相共役型レーザ転送光学系22、および第1ビーム縮小光学系23aが搭載されている。また、第2可動テーブル31には、これと共に移動し得るように、前記反射鏡24および第2ビーム縮小光学系23bが搭載されている。従って、第1および第2可動テーブル30,31を移動させることで、第2ビーム縮小光学系23bが水平移動し、それにより、該第2ビーム縮小光学系23bから出力されるレーザLの集光部分Exが前記検査対象領域E内で燃料電池スタックFCの表面沿いに移動し得る(燃料電池スタックFCに対して集光部分Exが相対移動する)ようになっている。換言すれば、レーザLの集光部分Exは、第1および第2可動テーブル30,31を移動させることにより、検査対象領域E内で走査可能となっている。
【0077】
なお、本実施形態では、レーザ光Lの集光部分を移動させるためにXYテーブル29を使用したが、レーザ光転送手段11を3軸方向の移動手段(例えばXYZテーブル)に搭載することで、レーザ光Lの集光部分Exを空間的(3次元的)に移動し得るようにしてもよいことはもちろんである。また、レーザ光転送手段11のビーム縮径光学系23のみを移動させることで、レーザ光Lの集光部分Exを移動させるようにしたり、第2ビーム縮小光学系23bを揺動させることで、レーザ光Lの集光部分Exを移動させるようにすることも可能である。あるいは、レーザ光Lの光軸方向における集光部分Exの移動は、ビーム縮小光学系23(あるいは第2ビーム縮小光学系23b)の焦点位置を可変化することで行なうようにすることも可能である。
【0078】
さらには、レーザ光転送手段11やビーム縮小光学系23は動かさずに、燃料電池スタックFCをXYテーブルなどにより移動させるようにすることも可能である。但し、燃料電池スタックFCを移動させると、燃料電池スタックFCで気体漏れが生じている場合に、その気体漏れの箇所と、燃料電池スタックFCの移動位置との間のずれが生じやすい。このため、本実施形態では、燃料電池スタックFCは不動状態に固定し、ビーム縮小光学系23などを移動させるようにした。
【0079】
前記レーザ光捕捉手段25には、レーザ光転送手段11のXYテーブル29と連動して、図示しない電動モータなどにより移動する可動テーブル32が備えられ、この可動テーブル32上に、これと共に移動し得るように前記光学系26、一対の反射鏡27a,27bおよびビームダンプ28が搭載されている。そして、可動テーブル32がレーザ光転送手段11のXYテーブル29と連動して同じ方向に移動することで、前記光学系26がレーザ光転送手段11の第2ビーム縮小光学系23bに常時対向するようになっている。
【0080】
なお、可動テーブル32は、光学系26がレーザ光転送手段11の第2ビーム縮小光学系23bに常時対向する(レーザ光Lの光軸上に光学系26が位置する)ように移動できればよく、必ずしも2軸もしくは3軸方向の移動が可能でなくてもよい。例えば、レーザ光Lの光軸と直交する方向にのみ、可動なものであってもよい。
【0081】
前記蛍光分析処理装置3は、レーザ光Lの集光部分Exにて気体が発する蛍光を受光し、その波長分布(スペクトル分布)等を分析するものであり、本発明のうちの第1発明における蛍光分析手段、あるいは第16発明における分析手段に相当するものである。図3は、この蛍光分析処理装置3の構成を示すブロック図である。
【0082】
図3に示すように、蛍光分析処理装置3は、その受光口側に、レーザ光Lの集光部分Exにて気体が発する蛍光を、順次通過させるフィルタ41、対物レンズ群42、平行光線発生レンズ群43およびフレア・迷光カット板44を備えている。
【0083】
集光部分Exで発生した蛍光は、まず、フィルタ41に進入する。このフィルタ41は、レーザ光Lの波長(532nm)の光を遮断するものであり、このフィルタ41により、レーザ光Lの散乱光が、蛍光分析処理装置3に取り込まれるのを防止するようにしている。フィルタ41を通過した蛍光は、対物レンズ群42に進入し、この対物レンズ群42で、前記集光部分Exで発生した蛍光の映像が拡大される。次いで、その蛍光は、平行光線発生レンズ郡43に進入して、この平行光線発生レンズ郡43にて、平行光線にされる。この場合、平行光線発生レンズ群43の全てのレンズは、その表面に反射防止マルチコートが施され、また、球面収差、色補正などを補正したものが用いられるものの、平行光線発生レンズ群43を通過した蛍光には、レンズ表面などで反射された反射光が僅かに残留する。そこで、本実施形態では、平行光線発生レンズ郡43を通過した蛍光を、フレア・迷光カット板44に進入させ、このフレア・迷光カット板44により、蛍光に残留する反射光を取り除くようにしている。
【0084】
蛍光分析処理装置3は、さらに、30%可視域ビームスプリッタ45および50%可視域ビームスプリッタ46を備えており、フレア・迷光カット板44を通過した蛍光は、30%可視域ビームスプリッタ45に進入して、該スプリッタ45で2つの蛍光LL1,LL2に分割される。そして、分割された蛍光LL1,LL2のうちの一方の蛍光LL1は、さらに50%可視域ビームスプリッタ46に進入して、該スプリッタ46で2つの蛍光LL3,LL4に分割される。これにより本実施形態では、蛍光分析処理装置3に進入する蛍光は、3つの蛍光LL2,LL3,LL4に分割されることとなる。
【0085】
蛍光分析処理装置3は、上記の如く分割された蛍光LL2の進行経路と、蛍光LL3の進行経路とに、それぞれ、あらかじめ定めた特定波長の蛍光の映像を得る撮像装置47a,47bを備えると共に、蛍光LL4の進行経路に、その蛍光LL4の波長分布(スペクトル分布)を示す波長分布データを得る分析装置48を備えている。さらに、蛍光分析処理装置3は、撮像装置47a,47bで得られた映像データ(画像データ)と分析装置48で得られた波長分布データを基に画像データを作成する等の処理を行なう画像処理装置49を備えている。
【0086】
撮像装置47a,47bは、いずれも同じ構造であり、2段式干渉フィルタ50、結像レンズ51、電子シャッタ52、絞り53、CCDセンサ54を備えている。以下、撮像装置47aを中心に説明すると、30%可視域ビームスプリッタ45から得られる蛍光LL2のは、2段式干渉フィルタ50に進入する。この2段式干渉フィルタ50は、進入する蛍光LL2のうちの、あらかじめ定めた特定波長を中心とする1オングストローム(10-10m)以内の波長の蛍光のみを抽出して通過させるものである。この場合、2段式干渉フィルタ50は、そのフィルタとこれに進入する光線との角度を微調整することが可能となっており、それにより、特定波長の蛍光の透過率が最適化されている。2段式干渉フィルタ50で抽出された特定波長の蛍光は、結像レンズ51、電子シャッタ52、および絞り53を順に通って、CCDカメラ54上に結像される。結像レンズ51は、ズーム機能を備えており、蛍光の映像を拡大したり、縮小することが可能となっている。なお、電子シャッタ52は、パルスレーザ13の発振に同期して開閉制御されるシャッターであり、レーザ光Lが検査対象領域Eに照射されている瞬間に発生する蛍光、あるいは、その後、数ナノ秒を経過したときに発生する蛍光の映像のみをCCDカメラ54に結像させるようにしている。そして、このCCDカメラ54から、該特定波長の蛍光の映像データがペルチエ冷却素子55を介して画像処理装置49に出力される。該ペルチエ冷却素子55は、CCDカメラ54のCCDセンサ(図示せず)を−30℃以下に冷却することによって、該CCDセンサに悪影響を及ぼす熱雑音を低減させるものである。CCDセンサをこのように冷却することにより、CCDセンサの感度は常温時に比べて約1000倍に高まり、微弱な蛍光を高い感度でCCDセンサにより捕らえることが可能となっている。
【0087】
撮像装置47bについても、上記した撮像装置47aと同様である。この場合、各撮像装置47a,47bで撮像する蛍光の特定波長は、観測したい特定種類の気体に対応する波長である。本実施形態では、撮像装置47aで撮像する蛍光の特定波長は、ヘリウムをレーザ光Lにより励起もしくはイオン化したときに発生する蛍光の波長(例えば588nm)であり、撮像装置47bで撮像する蛍光の特定波長は、水素をレーザ光Lにより励起もしくはイオン化したときに発生する蛍光の波長(例えば656nm)である。これらの蛍光の波長は、レーザ光Lの波長(532nm)とは異なる波長であると共に、可視光域の波長である。
【0088】
なお、観測したい特定種類の気体が1種類でよい場合には、撮像系装置47a,47bいずれか一方のみを備えるようにしてもよい。例えば、本実施形態では、燃料電池スタックFCの気体漏れを検査するとき、燃料電池スタックFCに水素およびヘリウムのいずれか一方を供給するので、撮像装置47a,47bいずれか一方のみにより、水素またはヘリウムに対応する特定波長の蛍光を撮像するようにすればよい。
【0089】
分析装置48は、集光レンズ56、光ファイバー57、分光計58、電子シャッタ59、およびCCDセンサ60を備えている。50%可視域ビームスプリッタ46から分析装置48に進入する蛍光LL4は、まず、集光レンズ56で集光され、該集光レンズ56から光ファイバー57を経由して分光計58に転送される。集光レンズ56は、そのN.A.値が0.2程度に調整されている。分光計58では、入力された蛍光LL4がその波長毎の蛍光に分割され、その波長毎の蛍光を直線状に配列したものの映像がCCDセンサ60で撮像される。そして、その映像データがCCDセンサ60から画像処理装置49に出力される。
【0090】
次に、本実施形態の装置1によって、燃料電池スタックFCの気体漏れを検査する場合の作動を説明する。
【0091】
基台4上に設置された検査対象の燃料電池スタックFCに配管5が接続された後、その配管5を介して燃料電池スタックFCに気体漏れ検査用の気体(水素あるいはヘリウム)が供給される。この状態で、レーザ光発生・転送装置2を作動させることで、前記した如くレーザ光発生手段10により所定波長(532nm)を有するパルス状のレーザ光が発生され、さらにこのレーザ光Lがレーザ光転送手段11によって転送されて、検査対象領域E内の集光部分Exにて集光するように該検査対象領域E内に照射される。このとき、レーザ光発生手段10のパルスレーザ13は、例えば1秒間に100回の割合で発振される。また、前記XYテーブル29の作動によって、検査対象領域Eに照射されるレーザ光Lの集光部分Exは、所定の速度(例えば10cm/秒)で該検査対象領域E内で移動されて、該検査対象領域Eを走査する。
【0092】
パルス状のレーザ光Lが検査対象領域E内に照射される毎に、そのレーザ光Lの集光部分Exにおいて、そこに存在する気体の前記した電離(イオン化)、再結合、脱励起(すなわち多光子イオン化現象)、あるいは、励起、脱励起(すなわち多光子励起現象)に伴う蛍光が発生する。この場合、燃料電池スタックFCの、レーザ光Lの集光部分Exに対応する(近接する)部位または近傍部位で気体漏れが生じていない場合には、該集光部分Exで蛍光を発する気体は空気(詳しくはその空気中の窒素、酸素、水蒸気など)である。また、燃料電池スタックFCの、集光部分Exに対応する(近接する)部位または近傍部位で気体漏れが生じている場合には、該集光部分Exで蛍光を発する気体は、空気のほか、気体漏れ検査用の気体としての水素またはヘリウムである。なお、気体漏れ検査用の気体が水素であるときには、その水素分子のうちのいくつかは、レーザ光Lの集光部分Exで17eV以上のエネルギーが多光子により注入されて励起またはイオン化し、その後の脱励起によって、可視光域の波長(656nm)の蛍光を発生する。また、気体漏れ検査用の気体がヘリウムであるときには、そのヘリウム原子のうちのいくつかは、レーザ光Lの集光部分Exで23eV以上のエネルギーが多光子により注入されて励起またはイオン化し、その後の脱励起によって、可視光域の波長(588nm)の蛍光を発生する。
【0093】
そして、上記の如くレーザ光Lの集光部分Exで発生した蛍光が蛍光分析処理装置3で受光される。この蛍光分析処理装置3では、前記撮像装置47aまたは47bにより、レーザ光Lの集光部分Exで発生した蛍光のうちのヘリウムに対応する特定波長(588nm)、あるいは水素に対応する特定波長(656nm)の蛍光の映像が撮像され、その映像データが画像処理装置49に取り込まれる。この場合、気体漏れ検出用の気体として、ヘリウムを使用した場合には、撮像装置47aで得られる映像データが画像処理装置49に取り込まれ、水素を使用した場合には、撮像装置47bで得られる映像データが画像処理装置49に取り込まれる。
【0094】
この画像処理装置49では、パルス状のレーザ光Lが検査対象領域E内に照射される毎に、そのレーザ光Lの集光部分Exの位置に対応づけて、撮像装置47aまたは47bから得られた蛍光の映像データを記憶保持する。そして、各集光部分Exに対応する映像データを、検査対象領域Eの各位置に対応させて合成することにより、検査対象領域Eにおける気体漏れ検査用の気体(水素またはヘリウム)の分布を表す画像(以下、漏れガス空間分布画像という)を作成し、それを図示しないディスプレイに表示する。その漏れガス空間分布画像は、燃料電池スタックFCの気体漏れが発生している部分およびその周辺では、気体漏れ検査用の気体の蛍光の映像が密集し、また、気体漏れが発生している部分もしくはその近傍にて、蛍光の映像の明度が高くなる。なお、気体漏れ検査用の気体の蛍光の映像は、色付けされていてもよく、あるいは、その蛍光の強度に応じて色が変化するようにしてもよい。また、上記漏れガス空間分布画像は、本発明における画像データに相当するものである。
【0095】
また、蛍光分析処理装置3では、前記分析装置48により、レーザ光Lの集光部分Exで発生した蛍光の波長毎の蛍光の映像データが生成され、それが画像処理装置49に取り込まれる。そして、画像処理装置49では、パルス状のレーザ光Lが検査対象領域E内に照射される毎に、そのレーザ光Lの集光部分Exの位置(検査対象領域E内の位置)に対応づけて、分析装置48から得られた映像データを記憶保持する。そして、その映像データを基に、画像処理装置49は、検査対象領域E内の各位置(集光部分Exの各位置)における蛍光の波長分布(スペクトル分布)を示す画像(以下、波長分布画像という)を作成し、それを適宜(画像処理装置49の所定の操作によって)、図示しないディスプレイに表示する。
【0096】
以上のようにして、画像処理装置49のディスプレイで表示される画像を解析することで、燃料電池スタックFCの気体漏れの有無の検知、気体漏れ部位の特定、気体漏れ部位での気体漏れ検査用の気体の濃度の検出を行なうことができる。例えば、前記漏れガス空間分布画像に基づいて、燃料電池スタックFCの気体漏れの有無を検知したり、その気体漏れ部位を特定することができる。また、気体漏れがある場合には、気体漏れ部位の位置に対応する前記波長分布画像に基づいて、気体漏れ検査用の気体の濃度を検出することができる。なお、その濃度の検出に係わる具体的な実施例については後述する。
【0097】
次に、本発明の第2実施形態を図4を参照して説明する。なお、本実施形態の装置は、前記第1実施形態の装置1と一部の構成のみが相違するものであるので、第1実施形態の装置1と同一構成部分については、第1実施形態と同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、本実施形態は、第1実施形態と同様、本発明のレーザ分析装置の実施形態であると共に、気体漏れ検査装置の実施形態でもある。
【0098】
図4は本実施形態の装置の全体構成を示すブロック図であり、この装置1’では、密閉室70が備えられ、この密閉室70内に、レーザ光発生・転送装置2のレーザ光転送手段11と、燃料電池スタックFCを設置する基台4と、レーザ光捕捉手段25とが収容されている。そして、この密閉室70の側壁には、前記レーザ光発生手段10から出力されるレーザ光(前記高調波反射鏡15から反射されたレーザ光)の光軸上で石英窓71(石英からなる透明窓)が設けられ、この石英窓71を介して、レーザ光発生手段10から出力されるレーザ光がレーザ光転送手段11の反射鏡20に導かれるようになっている。さらに、密閉室70の側壁には、前記蛍光分析処理装置3の受光口に臨む石英窓72が設けられ、レーザ光Lの集光部分Exで発生する蛍光が、該石英窓72を介して蛍光分析処理装置3で受光されるようになっている。また、密閉室70には、その内部空間に窒素を供給する給気配管73と、該内部空間内の気体を排出する排気配管74とが接続されている。
【0099】
本実施形態の装置1’は、以上説明した以外の構成は第1実施形態と同一である。
【0100】
次に、本実施形態の装置1’によって、燃料電池スタックFCの気体漏れを検査する場合の作動を説明する。
【0101】
本実施形態の装置1’では、密閉室70内の空気(大気)を窒素で置換した状態で、基台4上の検査対象の燃料電池スタックFCの気体漏れ検査が行われ、この点でのみ、第1実施形態の装置1の作動と相違している。
【0102】
すなわち、基台4上に検査対象の燃料電池スタックFCを設置し、また、この燃料電池スタックFCに気体漏れ検査用の気体(水素またはヘリウム)を供給する配管5を接続した状態で、前記給気配管73を介して図示しない窒素供給器から窒素が密閉室70に供給されると共に、密閉室70内の空気が前記排気配管74を介して密閉室70内から排気される。これにより、密閉室70内に窒素が充満される。
【0103】
そして、その後に、前記第1実施形態と全く同様に、レーザ光発生・転送装置2および蛍光分析処理装置3の作動が行なわれる。なお、この場合には、レーザ光Lの集光部分Exで発生する蛍光は、主に、窒素に対応する蛍光および/または気体漏れ検査用の気体に対応する蛍光となる。
【0104】
かかる本実施形態の装置1’では、蛍光を発生する気体の種類が少ないため、特に、前記分析装置48から得られる波長分布の映像データに基づき、気体漏れ検査用の気体の濃度を検出する場合に、その濃度検出の分解能(検出し得る濃度の下限値)を高めることができる。そして、このことは特に、後述する実施例で説明する如く、気体漏れ検査用の気体として水素を使用した場合に効果的である。
【0105】
なお、前記第1実施形態では、燃料電池スタックFCの気体漏れの検査を開放された環境下で行なうようにしたが、第2実施形態のように、密閉室70内で行なうようにしてもよい。
【0106】
また、前記第1および第2実施形態では、検査対象の燃料電池スタックFCを基台4上に固定して、レーザ光Lの集光部分Exを移動させるようにしたが、これと逆に、レーザ光Lの集光部分Exを不動として、燃料電池スタックFCもしくは基台4を移動させるようにしてもよい。但し、燃料電池スタックFCの気体漏れ部位を特定する上では、燃料電池スタックFCは前記第1および第2実施形態の如く、動かないように固定しておくことが望ましい。
【0107】
また、前記第1および第2実施形態では、気体漏れの検査対象を燃料電池スタックFCとしたが、例えばこの燃料電池スタックFCに水素を供給したり、その供給した水素を該燃料電池スタックFCから排出する水素供給排出システム(具体的には、水素貯蔵容器や、水素供給用のポンプ、あるいは、燃料電池スタックFCに接続される水素供給用もしくは水素排出用の配管など)を気体漏れ検査対象としてもよい。
【0108】
次に、前記第1および第2実施形態の装置1,1’の検証試験の実施例について図5および図6を参照して説明する。補足すると、以下に説明する実施例1および実施例2のいずれにおいても、環境温度は、通常の室内温度程度の温度である。また、レーザ光の集光部分Exを含む装置1,1の周囲の明るさも通常の室内の明るさと同程度である。
【実施例1】
【0109】
所定の種類の気体を封入したガラス管を、第1実施形態の装置1の検査対象エリアE内に配置し、この状態で、レーザ光発生・転送装置2を作動させて、ガラス管内に集光部分Exが位置するように該ガラス管にレーザ光Lを照射した。そして、このとき、ガラス管内で発生する蛍光を蛍光分析処理装置3で受光し、前記分析装置48から得られる映像データにより、該蛍光の波長分布を計測した。ガラス管に封入した気体の種類は、空気、窒素、ヘリウム、水素の4種類である。
【0110】
この計測結果を図5(a)〜(d)に示す。これらの図5(a)〜(d)はそれぞれガラス管内に封入した気体が空気、窒素、ヘリウム、水素であるときの蛍光の波長分布(より詳しくは、400〜800nmの範囲内の各波長に対する蛍光の強度)を示している。これらの図5(a)〜(d)において、インパルス状の部分(以下、輝線部分ということがある)が、発生した蛍光の波長に対応している。
【0111】
これらの図5(a),(b)を参照して判るように、空気あるいは窒素が発生する蛍光は、概ね580〜740nmの波長範囲内における波長成分の強度が微小なものとなる。例えば、空気および窒素が発生する蛍光は、661nmの波長成分(輝線部分a,b)を持つが、その強度は微小である。これに対して、図5(c),(d)を参照して判るように、ヘリウムあるいは水素が発生する蛍光は、580〜740nmの波長範囲内に、比較的強度が大きなものとなる波長成分を持つ。具体的には、ヘリウムが発生する蛍光は、例えば588nmの波長成分(輝線部分c)の強度が高いものとなり、水素が発生する蛍光は、例えば656nmの波長成分(輝線部分d)の強度が高いものとなる。なお、水素に係わる輝線部分dの波長656nmは、空気および窒素に係る前記が輝線部分a,bの波長661nmに近いが、水素に係る輝線部分dの強度は、空気および窒素に係る輝線部分a,bの強度よりも十分に高い。
【0112】
従って、気体漏れ検査用の気体としてヘリウムを使用した場合には、前記第1実施形態、第2実施形態のいずれであっても、発生する蛍光のうち、588nmの波長成分を観測することで、レーザ光Lの集光部分Exにヘリウムが存在すること(その近傍で燃料電池スタックFCから気体漏れが発生していること)を認識することができることが判る。
【0113】
同様に、気体漏れ検査用の気体として水素を使用した場合には、前記第1実施形態、第2実施形態のいずれであっても、発生する蛍光のうち、656nmの波長成分を観測することで、レーザ光Lの集光部分Exに水素が存在すること(その近傍で燃料電池スタックFCから気体漏れが発生していること)を認識することができることが判る。
【0114】
補足すると、ヘリウムの輝線部分は、ほとんど広がりを持たないものとなっているのに対し、水素や窒素の輝線部分は若干の広がりを持っている。これは次の理由による。すなわち、水素もしくは窒素の気体は2原子分子であるので、レーザ光により励起もしくは電離すると共に、その分子が個々の原子に解離し、それらの原子が互いに反対方向(接近・離反する方向)に激しく振動する。このため、水素あるいは窒素の各原子が脱励起する際に発生する蛍光のドップラーシフトが生じ、この結果、その蛍光の前記輝線部分に広がりが生じると考えられる。これに対して、ヘリウムの気体は単原子分子であるので、レーザ光により励起もしくは電離されても、水素や窒素のような原子の振動が発生しない。このため、ヘリウムの原子が脱励起する際に発生する蛍光のドップラーシフトが発生せず、この結果、その蛍光の前記輝線部分に広がりが生じないと考えられる。
【実施例2】
【0115】
水素を含有する窒素の気体を封入したガラス管(以下、ガラス管1という)と、水素を含有する空気の気体を封入したガラス管(以下、ガラス管2という)とを用意し、それぞれのガラス管1,2を第1実施形態の装置1の検査対象エリアE内に配置し、この状態で、レーザ光発生・転送装置2を作動させて、ガラス管1,2内に集光部分Exが位置するように該ガラス管1,2にレーザ光Lを照射した。そして、このとき、ガラス管1,2内で発生する蛍光を蛍光分析処理装置3で受光し、前記分析装置48から得られる映像データにより、653nm〜663nmの波長範囲で該蛍光の波長分布を計測した。この場合、ガラス管1については、水素の含有濃度を50ppm、100ppm、500ppm、1000ppmの4種類の濃度に設定した。また、ガラス管2については、水素の含有濃度を100ppm、500ppm、1500ppm、4600ppm、10000ppmの5種類に設定した。
【0116】
この計測結果を図6(a),(b)に示す。図6(a),(b)は、それぞれガラス管1、ガラス管2に係る蛍光の波長分布を示している。なお、これらの図6(a),(b)において、「水素輝線」で示す波長(約656nm)が、水素が発生する蛍光の波長を示しており、「窒素輝線」で示す波長(約661nm)が、窒素が発生する蛍光の波長を示している。
【0117】
図6(a)を参照して、窒素ガス中の水素の検出に関しては、水素濃度が概ね100ppm以上であれば、水素濃度と、約656nm(656.5nm)の波長の蛍光の信号強度との間の相関性が認められた。水素濃度が100ppmを下回ると、約661nmでピーク強度を持つ窒素の蛍光の影響によって、水素と窒素とを区別して水素を検出することは困難であった(図6(a)中の、水素濃度が50ppmである場合に対応するグラフを参照)。
【0118】
このことから、前記第2実施形態の如く、密閉室70内に窒素を充填した環境下では、密閉室70内の検査対象領域Eに水素が存在する場合、約100ppm以上の水素濃度であれば、前記分析装置48の出力データ(映像データ)あるいは前記撮像装置47の出力データ(映像データ)を基に、その水素の存在を検知することが可能であると同時に、その水素濃度を検出することが可能であることが判る。
【0119】
また、図6(b)を参照して、空気中の水素の検出に関しては、水素濃度が概ね500ppm以上であれば、水素濃度と、約656nm(656.5nm)の波長の蛍光の信号強度との間の相関性が認められた。水素濃度が500ppmを下回ると、空気中に含ませた当初の水素の蛍光に対して、空気中に含まれる水蒸気もしくは水分がレーザ光Lによって解離することで生成される水素の蛍光が多くなることによって、当初の水素と、水蒸気の解離により生成された水素とを区別して、当初の水素を検出することは困難であった。なお、図6(b)の「水素輝線」に対応する波長における蛍光の強度は、水蒸気もしくは水分の解離により生成された水素の蛍光を含むものである。
【0120】
以上のことから、前記第1実施形態の如く、大気環境下では、検査対象領域Eに水素が存在する場合、約500ppm以上の水素濃度であれば、前記分析装置48の出力データ(映像データ)あるいは前記撮像装置47の出力データ(映像データ)を基に、その水素の存在を検知することが可能であることが判る。なお、本願発明者の実験によれば、大気環境下では、約500ppm〜30000ppmの範囲で、水素濃度の検出も可能である。
【0121】
なお、上記の実施例2では、100ppmの水素濃度あるいは500ppmの水素濃度までの水素の存在を検知することを可能としたが、検知可能な濃度は、実施形態の装置の周囲の明るさや、蛍光分析処理装置3の能力、レーザ光のパワーなどに依存する。検知可能な水素濃度の限界は、必要に応じて、100ppmあるいは500ppmよりも大きくてもよく、あるいは、さらに小さくすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上のように、本発明は、種々様々の種類の気体を気体の存在の有無やその濃度などを検知したり、あるいは、燃料電池スタックなどの種々様々の検査対象物の気体漏れを検知する手法として有用である。特に、従来のレーザ装置では困難であった、水素やヘリウムを検知し得る手法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1(a),(b)はそれぞれ本発明における多光子励起現象、多光子イオン化現象を説明するための図。
【図2】本発明のレーザ分析装置および気体漏れ検査装置の第1実施形態の装置の全体構成を示すブロック図。
【図3】図1の装置に備えた蛍光分析処理装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明のレーザ分析装置および気体漏れ検査装置の第2実施形態の装置の全体構成を示すブロック図。
【図5】図5(a)〜(d)は、それぞれ空気、窒素、ヘリウム、水素の発生蛍光の波長分布を計測したときの計測データを示すグラフ。
【図6】図6(a),(b)は、それぞれ窒素中の水素、空気中の水素を検出したときの発生蛍光の波長分布の計測データを示すグラフ。
【図7】従来の蛍光分析法を説明するための図。

Claims (14)

  1. レーザ光により分析対象気体を励起して、該分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長を有する蛍光を発生させ、その蛍光の状態に基づき該分析対象気体の状態を分析するレーザ分析装置であって、
    所定の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、このレーザ光発生手段が発生したレーザ光を、前記分析対象気体の存在箇所で点状に集光させるようにして該分析対象気体の存在箇所に向かって照射する縮小光学系と、該レーザ光の集光部分で分析対象気体が発生した蛍光を受光して、その受光した蛍光の状態を分析する蛍光分析手段とを備え、
    前記分析対象気体は水素であり、前記集光部分に存在する1つ以上の水素分子の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴い可視光域の波長の蛍光を発生させるために、前記集光部分に存在する1つ以上の水素分子のそれぞれに17電子ボルト以上のエネルギーを注入可能なエネルギーを前記レーザ光に持たせたことを特徴とするレーザ分析装置。
  2. 前記レーザ光の集光部分におけるピーク強度を1014W/cm2以上にしたことを特徴とする請求項1記載のレーザ分析装置。
  3. 前記レーザ光発生手段の光源を、該光源から出力されるレーザ光の光軸に垂直な断面におけるパワー密度分布がトップハット型となるパルスレーザにより構成したことを特徴とする請求項1記載のレーザ分析装置。
  4. 前記レーザ光発生手段から前記縮小光学系に至るレーザ光の光路に位相共役型レーザ転送光学系を備えたことを特徴とする請求項3記載のレーザ分析装置。
  5. 気体の通路を内部に有する検査対象物における気体漏れを請求項1に記載のレーザ分析装置を用いて検査する気体漏れ検査装置であって、
    前記検査対象物に水素を供給する手段を備えると共に、該水素の供給状態において、前記レーザ光の集光部分が前記検査対象物の近傍位置に存するように前記縮小光学系からレーザ光を照射するようにしたことを特徴とする気体漏れ検査装置。
  6. 前記検査対象物は、燃料電池スタック、または、該燃料電池スタックに水素を供給する水素供給システム、または、該燃料電池スタックから水素を排出する水素排出システムであことを特徴とする請求項5記載の気体漏れ検査装置。
  7. なくとも前記検査対象物を窒素が充填された密閉室に収容した状態でレーザ光を該検査対象物の近傍位置に向かって照射するようにしたことを特徴とする請求項5記載の気体漏れ検査装置。
  8. 前記レーザ光の集光部分を前記検査対象物に対して相対移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項5記載の気体漏れ検査装置。
  9. 前記蛍光分析手段は、前記レーザ光の集光部分の前記検査対象物に対する相対位置と該集光部分で発生した前記蛍光のうちの前記水素に対応する波長の蛍光の強度との関係を示す画像データを生成する手段を備えることを特徴とする請求項8記載の気体漏れ検査装置。
  10. レーザ光により分析対象気体を励起して、該分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長の蛍光を発生させ、その蛍光の状態に基づき該分析対象気体の状態を分析するレーザ分析方法であって、
    所定の波長のレーザ光を前記分析対象気体の存在箇所で点状に集光させるようにして該分析対象気体の存在箇所に向かって該レーザ光を照射するステップと、該レーザ光の集光部分で該レーザ光のエネルギーによって前記分析対象気体の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴う該分析対象気体の蛍光を発生させるステップと、その発生した蛍光を受光して、該蛍光の状態を分析するステップとを備え
    前記分析対象気体は水素であり、前記集光部分に存在する1つ以上の水素分子の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象の発生に伴い可視光域の波長の蛍光を発生させるために、前記集光部分に存在する1つ以上の水素分子のそれぞれに17電子ボルト以上のエネルギーを注入可能なエネルギーを前記レーザ光に持たせたことを特徴とするレーザ分析方法。
  11. 前記レーザ光の集光部分におけるピーク強度を1014W/cm2以上にしたことを特徴とする請求項10記載のレーザ分析方法。
  12. レーザ光により分析対象気体を励起して、該分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長を有する蛍光を発生させ、その蛍光の状態に基づき該分析対象気体の状態を分析するレーザ分析装置であって、
    所定の波長のレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、このレーザ光発生手段が発生したレーザ光を、前記分析対象気体の存在箇所で点状に集光させるようにして該分析対象気体の存在箇所に向かって照射する縮小光学系と、該レーザ光の集光部分で分析対象気体が発生した蛍光を受光して、その受光した蛍光の状態を分析する蛍光分析手段とを備え、
    前記分析対象気体はヘリウムであり、前記集光部分に存在する1つ以上のヘリウム原子の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴い可視光域の波長の蛍光を発生させるために、前記集光部分に存在する1つ以上のヘリウム原子のそれぞれに23電子ボルト以上のエネルギーを注入可能なエネルギーを前記レーザ光に持たせたことを特徴とするレーザ分析装置。
  13. 気体の通路を内部に有する検査対象物における気体漏れを請求項12に記載のレーザ分析装置を用いて検査する気体漏れ検査装置であって、
    前記検査対象物にヘリウムを供給する手段を備えると共に、該ヘリウムの供給状態において、前記レーザ光の集光部分が前記検査対象物の近傍位置に存するように前記縮小光学系からレーザ光を照射するようにしたことを特徴とする気体漏れ検査装置。
  14. レーザ光により分析対象気体を励起して、該分析対象気体の種類または該分析対象気体を組成する各気体の種類に応じた波長の蛍光を発生させ、その蛍光の状態に基づき該分析対象気体の状態を分析するレーザ分析方法であって、
    所定の波長の単一のレーザ光を前記分析対象気体の存在箇所で点状に集光させるようにして該分析対象気体の存在箇所に向かって該レーザ光を照射するステップと、該レーザ光の集光部分で該レーザ光のエネルギーによって前記分析対象気体の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴う該分析対象気体の蛍光を発生させるステップと、その発生した蛍光を受光して、該蛍光の状態を分析するステップとを備え
    前記分析対象気体はヘリウムであり、前記集光部分に存在する1つ以上のヘリウム原子の多光子イオン化現象または多光子励起現象を発生させると共に当該現象に伴い可視光域の波長の蛍光を発生させるために、前記集光部分に存在する1つ以上のヘリウム原子のそれぞれに23電子ボルト以上のエネルギーを注入可能なエネルギーを前記レーザ光に持たせたことを特徴とするレーザ分析方法。
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