JP3544823B2 - 放電表面処理方法及び放電表面処理装置 - Google Patents

放電表面処理方法及び放電表面処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は放電を利用した金属材料の表面処理に関するもので、例えば、改質材料或いは改質材料の元となる材料からなる電極と被処理材料である金属との間に放電を発生させることにより、被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法及び放電表面処理装置、並びに電極と被処理材料である金属との間に放電を発生させ、被処理材料である金属表面に被覆層(コーティング層)を形成する放電表面処理方法及び放電表面処理装置に関するものである。
この発明は、工具の表面処理、金型の表面処理、機械構造物、機械部品等の耐食性、耐摩耗性を必要とするものの表面処理に使用できる。
【0002】
【従来の技術】
液中放電によって金属材料の表面をコーテイングし、その金属材料に耐食性、耐摩耗性を与える技術は公知である。
例えば、WC(タングステンカーバイド)とCo(コバルト)の粉末を混合してなる電極材料を圧縮成形した電極で液中放電を行い、それによって電極材料をワークに堆積させ、その後、例えば、Cu(銅)電極、Gr(グラファイト)電極等の別の電極によって、再溶融放電加工を行うことにより、より高い硬度と高い密着力を得ている。
また、鋼材等の強度を高めるために、窒化処理なる方法が知られている。
例えば、鍛造金型等の切削、放電加工による形状加工の後に窒化するものである。しかも、放電加工面はそのままでは窒素が侵入し難いので、研磨等の方法で表面を研磨してから、窒化処理を行っている。その後、焼入等の熱処理を行っても、焼入組織が作業の高温によって容易に戻ることがない。
【0003】
次に、従来技術について図5を用いて詳細に説明する。
図5は従来の放電表面処理方法を示す説明図で、(a)は一次加工の動作説明図、(b)は二次加工の動作説明図、(c)は一次加工及び二次加工の概念図である。
WC−Co(タングステンカーバイド−コバルト)の混合圧粉体電極を用いて、被処理材料(母材S50C)に加工液中で放電加工を行い、被処理材料上にWC−Coを堆積させる1次加工を行う。次いで、Cu電極のようなそれほど消耗しない電極によって再溶融加工、即ち、2次加工を行う。1次加工の被処理材料上にWC−Coを堆積させたままでは、組織は硬度もHv=1410程度であり、空洞も多い。しかし、2次加工の再溶融加工によって被処理材料上に堆積させた被覆層の空洞が無くなり、硬度もHv=1750と向上する。
【0004】
この種の放電表面処理方法によれば、鋼材に対しては、硬くしかも密着度のよい被覆層が得られる。しかしながら、超硬合金のような焼結材料の表面には強固な密着力を持った被覆層を形成することが困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の放電表面処理方法では、上記のように被処理材料の種類等により質のよい被覆層が得られないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、被処理材料の材質が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、良好な被覆層を形成することができる放電表面処理方法及び放電表面処理装置の提供を第1の課題とするものである。
【0007】
また、発明者等の実験によれば水素化金属、例えば、TiH(水素化チタン)を圧縮固形化して放電加工の電極として油中で放電加工を行うと、油が放電の高温により分解して炭素を生じ、TiC(炭化チタン)を作り、また、TiHの分解によって発生する水素による被覆表面のクリーニリング作用によって、高硬度で密着力の強い表面被覆層を形成することができることが確認されている。また、このとき、被覆層表面の構成は、TiHを用いた場合、炭化されたTiCと炭化不十分なTiまたはその中間体で生成され、TiHの代りにVH等を使用しても同様の結果を得ることができ、更に、TiHにV(バナジウム)、VC等を加えれば一層高硬度の被覆層が得られることも確認されている。したがって、水素化金属を圧縮固形化して放電加工の電極として油中で放電加工を行うと、高硬度で多くの場合(通常の摩耗試験等においては)高い耐摩耗性を示すことになる。
しかしながら、切削工具の刃先や冷間鍛造金型のように、被処理材料の金属材料との間に高圧力(高温を伴なうこともある)が加わる場合、放電被覆処理表面(切削工具の刃先等の表面)と被処理材料との間に親和作用が生じ、摩耗量が増加し、高硬度や高耐摩耗性から期待されるだけの切削工具寿命や金型寿命を示さない場合がある。
【0008】
そこで、この発明は、鋼材等の鉄と被処理材料との間に生ずる親和力を減少させることができる被覆層を形成することができる放電表面処理方法及び放電表面処理装置の提供を第2の課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1にかかる放電表面処理方法は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材料の表面に被覆層を形成し、その後、窒化処理を行うものである。
【0010】
請求項2にかかる放電表面処理方法は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物の粉体を含む粉体から成形したものである。
【0011】
請求項3にかかる放電表面処理方法は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、その炭化物、窒化物共にビッカース硬度1000Hv以上の硬質の物質である金属または金属の化合物としたものである。
【0012】
請求項4にかかる放電表面処理装置は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理材料である金属との間に電圧を印加して、パルス状の放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、前記電極を保持する電極保持装置と、前記電極と被処理材料との間に放電を行わせた後に前記被処理材料の表面の被覆層を窒化処理する窒化処理装置とを具備するものである。
【0013】
請求項5にかかる放電表面処理装置は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物の粉体を含む粉体から成形したものである。
【0014】
請求項6にかかる放電表面処理装置は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、その炭化物、窒化物共に硬質の物質である金属または金属の化合物としたものである。
【0015】
請求項7にかかる放電表面処理方法は、電極と被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行うものである。
【0016】
請求項8にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化に、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用するものである。
【0017】
請求項9にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、前記被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを被処理材料表面に供給して行うものである。
【0018】
請求項10にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒化反応を生ずる溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して窒化するものである。
【0019】
請求項11にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、シアン化物の塩類の水溶液中で、放電被覆処理した前記被処理材料を陽極とする電気分解により行うものである。
【0020】
請求項12にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながらのレーザ照射により行うものである。
【0021】
請求項13にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、硬度の高い砥石または砥粒で被覆層表面の研磨を行い、その後、窒化を行うものである。
【0022】
請求項14にかかる放電表面処理方法は、前記被処理材料を、刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を成形し、その後、窒化を行うものである。
【0023】
請求項15にかかる放電表面処理装置は、電極と被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行うものである。
【0024】
請求項16にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用して行うものである。
【0025】
請求項17にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、前記被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを被処理材料表面に供給して行うものである。
【0026】
請求項18にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒化反応を生ずる溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して行うものである。
【0027】
請求項19にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、シアン化物の塩類の水溶液中で、放電被覆処理した前記被処理材料を陽極として電気分解により行うものである。
【0028】
請求項20にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながら、レーザ照射により行うものである。
【0029】
請求項21にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、硬度の高い砥石または砥粒により被覆層表面の研磨を行い、その後、窒化を行うものである。
【0030】
請求項22にかかる放電表面処理装置は、前記被処理材料を刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を成形し、その後、窒化を行うものである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
前述したように、WC−Co圧粉体電極と被処理材料である金属材料との間に放電を発生させることにより、WC−Coを被処理材料である金属材料に堆積させ、更に、Cu電極により堆積したWC−Co層を再溶融させることにより、WC−Co膜を被処理材料である金属材料に形成できる。
しかし、発明者等の研究によると、Ti(チタン)等の硬質炭化物を形成する材料を電極とし、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、再溶融の過程なしで、即ち、図5(b)に示す二次加工を経ずして、強固な硬質膜を被処理材料である金属表面に被膜層として形成できることが確認された。また、更に、TiH(水素化チタン)等の金属の水素化物の圧粉体電極により、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、Ti等の材料を使用する場合よりも、早く、密着性に富む硬質膜を形成できることがわかった。更に、TiH等の水素化物に他の金属やセラミックスを混合した圧粉体電極により、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、硬度、耐摩耗性等の様々な性質をもった硬質皮膜を素早く形成できることが確認された。
【0032】
次に、本発明の実施の形態として、Ti等の金属電極、TiH等の金属の水素化物の圧粉体電極、TiH等の金属の水素化物に他の金属やセラミックスを混合した圧粉体電極等の電極を使用して形成した被覆層を、更に、質の良い被覆層にする窒化について説明する。
【0033】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の放電表面処理方法及びその装置を示す説明図である。
図において、101は切削工具としてのエンドミル、102はエンドミル101を保持し、かつ、必要に応じてNC制御装置100の指令により保持しているエンドミル101に回転を与える機構を有する保持装置、103は保持装置102をX、Y、Z及び任意の角度及び位置方向にNC制御装置100の指令により移動させる移動装置、104はTiH系の圧粉体電極、105はTiH系の圧粉体電極104を保持する保持装置、106はエンドミル101及び圧粉体電極104を収容する加工槽、107は加工槽106に収容された加工液、108は放電を発生させるための電源装置である。109は窒化処理のための窒化処理槽、110は開閉可能な窒化処理槽109の蓋体、111はヒータ、112は窒化のためのガスを供給する供給装置、101´は被膜層を形成したエンドミルで、図示の状態下で窒化処理中にある。
ここで、NC制御装置100の指令により回転を与える機構を有する保持装置102、X、Y、Z及び任意の角度及び位置方向また必要により回転可能としたNC制御装置100の指令により移動させる移動装置103、圧粉体電極104を保持する保持装置105、エンドミル101及び圧粉体電極104を収容する加工槽106、加工液107等は本実施の形態の放電被膜処理装置114を構成する。また、窒化処理のための窒化処理槽109及び窒化処理槽109の蓋体110、ヒータ111、窒化のためのガスを供給する供給装置112は、本実施の形態の被膜層を形成したエンドミル101´を収容する窒化処理装置113を構成する。
【0034】
次に、この実施の形態の放電表面処理方法及び装置について動作説明する。
エンドミル101に、まず、Ti系の被膜を形成するため、TiH系の圧粉体電極104により、放電加工液107中で放電を発生させる。この場合、圧粉体電極104の極性が「−」、エンドミル101の極性が「+」である。
但し、圧粉体電極104の極性、エンドミル101の極性は、その極性が反対でも、若干の差があるが、同様の効果が得られる。この放電により、圧粉体電極104が消耗し、圧粉体電極104の成分であるTiを中心とした被膜層をエンドミル101の表面に形成することができる。すなわち、電極である圧粉体電極104に含まれる改質材料が電極から被処理材料であるエンドミル101の表面に移動して、被処理材料の金属表面に電極から移動した改質材料を含む被覆層が形成される。この場合の圧粉体電極104は、TiH系の圧粉体で形成した電極に限定されるものではなく、ソリッドのTi電極、Ti系の電極としてもよい。但し、エンドミル101に形成する被膜層の形成の速度、密着性、処理の容易さ等の点で、TiH系の圧粉体電極が有利である。
【0035】
ここで、本実施の形態において金属の水素化物をベースにした電極を使用する理由は、次の事由によるものである。
まず、金属の水素化物は一般的に不安定であり、数100℃の温度で分解し、次式のように水素を放出する。
TiH → Ti+H
このため、金属の水素化物をベースにした電極で放電を行うと、分解した水素が被処理材料としてのエンドミル101の表面をクリーニングする効果がある。また、金属の水素化物をベースにした電極は、放電の熱で容易に崩れるため、コーティングスピードが速くなる効果もある。
【0036】
エンドミル101とTiH系の圧粉体電極104との間の放電で形成された皮膜、即ち、被膜層は、TiC(炭化チタン)が主成分となる。これは、加工液107が油であるため、放電の熱で分解した油の成分のC(炭素)と圧粉体電極104中のTiが熱によって、次式のように化学反応を起こし、TiCとなるためである。
Ti+C → TiC
TiCは非常に硬質(ビッカース硬度2000〜3000)であり、被膜層として良質のものである。Ti以外にも炭化物が硬質の物質であるV(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等を成分とする電極を使用しても同様の効果が得られる。
【0037】
次に、TiCを主成分とする被膜層を形成したエンドミル101´に窒化処理を施す動作について説明する。
窒化処理槽109の中は、供給装置112から窒素ガスが噴出されており、窒素雰囲気になっている。蓋体110は開閉自在になっており、エンドミル101´等の工具の出入れの際には開き、窒素雰囲気中を得る窒化処理の際には閉じることができる。ヒータ111は窒化する対象のエンドミル101´等の工具を熱するもので、窒化中にエンドミル101´等の工具を数100℃の温度に加熱する。
窒化処理槽109の中の窒素雰囲気で、エンドミル101´等の工具を数100℃の温度に加熱することにより、エンドミル101´等の工具を窒化する。
このように、エンドミル101´等の工具を窒化することにより、被膜層中に存在していた未反応のTiをTiNにするだけでなく、同時に、被膜層の主成分であるTiCをTiCNに変化させる。TiCNは工具等のコーティングの被膜層としては、TiCよりも、更に、良好な被膜層で、硬度はTiCと同程度であるが、鉄との親和性がTiCより低く、工具へのコーティング材料としては、TiCNの方がより優れている。
【0038】
一般にTiCNのコーティングはPVD(物理蒸着)により成膜しているが、PVDにより皮膜を成長させる技術は、非常に不安定な装置であり、熟練者でないと十分に使いこなせないという問題があり、また、複雑で高価な装置が必要となる。しかし、本実施の形態では、TiCNの被膜層を形成するのに放電処理及び窒化処理という容易な方法で行うことができる。
なお、窒化処理のための窒化処理槽109は、放電のための加工槽106と共通としてもよいし、本実施の形態のように独立させてもよい。また、窒化の前の放電は、加工液107中で行わなくても、加工液107を吹きかけながら行ってもよい。そして、加工液107を吹きかけながら放電処理を行い、同時に雰囲気を窒素雰囲気にして窒化することもできる。
このときの、窒化のために供給装置112から噴出するガスは、窒素ガス以外にアンニモニアガスの使用も可能である。窒化処理の反応性からみれば、むしろアンモニアガスの方が好適である。しかし、アンモニアガスは強い臭いがあるため、臭いの処理を工夫する必要があり、製造工程の安全管理が必要となり、安全性の管理からみれば、窒素ガスが好適である。
【0039】
放電被膜処理により形成された被膜層は、TiCが主成分であるが、未反応のTiが残留しており、エンドミル101´等の工具のコーティングとしては問題となる場合がある。即ち、金属であるTiは鉄との親和性が高く、エンドミル101´等の工具によって被処理材料である鉄(鋼材)を加工する際に、鉄の溶着や被膜層の剥れの原因となる可能性がある。
一般的に、工具等の被膜層は鉄との親和性をなるべく低くするのがよいとされている。そこで、本実施の形態による放電表面処理方法においては、被膜層と鉄との親和性を減らすために、窒化処理を行っている。この窒化処理により、放電により形成された被膜層中に存在していた未反応のTiがTiNとなり、被膜層と鉄との親和性を大幅に減少させることができる。
【0040】
本実施の形態における窒化処理により、エンドミル101´を用いた切削試験の結果は、次のようであった。
TiH系の圧粉体電極104により硬質皮膜を形成したエンドミル101´の寿命は、無処理のエンドミルの約2倍であった。更に、TiH系の圧粉体電極104により硬質の被膜層を放電被膜処理によって形成した後に窒化処理を行ったエンドミル101´の寿命は、無処理のエンドミルの約3倍に延びた。
【0041】
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2の放電表面処理方法及びその装置を示す説明図である。
図において、201はエンドミル、202はエンドミル201を保持し、かつ、NC制御装置200の指令によりエンドミル201に回転を与える保持装置、203は保持装置をX、Y、Zの任意の方向及び任意の角度に、また、必要により回転可能としたNC制御装置200の指令により駆動される移動装置、204はTiH系の圧粉体電極、205はTiH系の圧粉体電極204を保持する保持装置、206は加工槽、207は加工液、208は放電を発生させるための電源装置で、更に、間歇パルス電源、交流高周波、無声放電方式電源等を選択使用できる。209は窒化処理のための窒化処理槽であり、金属槽211の内側表面にガラス内容器部210が塗布された構成となっている。212は窒化のためのガスを噴出する供給装置である。201´はエンドミル201の表面に被膜層を形成したエンドミルである。
ここで、NC制御装置200の指令により回転を与える機構を有する保持装置202、X、Y、Z及び任意の角度及び位置方向また必要により回転可能としたNC制御装置200の指令により移動させる移動装置203、圧粉体電極204を保持する保持装置205、エンドミル201及び圧粉体電極204を収容する加工槽206、加工液207等は本実施の形態の放電被膜処理装置214を構成する。窒化処理のための窒化処理槽209及び窒化のためのガスを供給するする供給装置212は、本実施の形態の被膜層を形成したエンドミル201´を収容する窒化処理装置213を構成する。
この実施の形態2の圧粉体電極204は、改質材料の元となる改質材料を含む電極であるが、被処理材料の表面に被膜層が形成できるものであれば、改質材料を含まない電極を用いてもよい。
【0042】
次に、本実施の形態の放電表面処理方法及び装置の動作について説明する。
エンドミル201に、まず、Ti系の被膜層を形成するため、TiH系の圧粉体電極204によって加工液207中において放電を発生させる。この放電により、圧粉体電極204が消耗し、圧粉体電極204の成分であるTiを中心とした被膜層をエンドミル201の表面に形成することができる。この場合の電極は、TiH系の圧粉体電極だけでなく、ソリッドのTi電極でもよく、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極であればよい。または、極論すれば、窒化によって硬質性が表面化するコーティング材料となる電極であればよい。しかし、一般的に、被膜層の形成の速度、密着性、処理の容易さ等の点で、TiH系の圧粉体電極204が勝っている。
【0043】
次に、TiCを主成分とする被膜層を形成したエンドミル201´に窒化処理を施す動作について説明する。
窒化処理槽209は金属槽211の内側表面にガラス内容器部210が塗布された構成となっている。この窒化処理槽209の内側に、供給装置212より窒素ガスが吹き込まれ、窒化処理槽209の内側は窒素雰囲気になっている。TiH系の圧粉体電極204により放電を行ったエンドミル201は、NC制御装置200の指令により、窒化処理槽209まで移動される。その位置で無声放電(誘電体からの交流放電)を発生させて窒化を行う。例えば、周波数は200kHz、電圧は10KV程度が好適であった。
【0044】
図3は本発明の実施の形態2の放電表面処理装置における無声放電による窒化処理を示す説明図である。
図において、窒化処理槽209中に移動したエンドミル201´と窒化処理槽209の金属槽211との間に放電(無声放電)を発生させる。エンドミル201´と窒化処理槽209の金属槽211との間に印加する電圧は数KVの交流電圧であり、この電圧により窒化処理槽209のガラス内容器部210に電荷が誘導される。この電荷が放電することにより、エンドミル201´と窒化処理槽209のガラス内容器部210との間に無声放電が発生する。無声放電は加工を行う力は極めて弱いが、強く化学反応を起こさせる働きがあり、窒素雰囲気中で無声放電を発生させると、窒化の反応を促進することができる。
【0045】
なお、ガラス内容器部210は他の誘電体とすることができる。また、無声放電は、周波数数10Hz〜数MHzの範囲、電圧は数10V〜数MVの範囲がよい。
このときの窒化のために供給装置212から噴出するガスは、窒素ガス以外にアンニモニアガスの使用も可能である。窒化処理の反応性からみれば、むしろアンモニアガスの方が好適である。しかし、アンモニアガスは強い臭いがあるため、臭いの処理を工夫する必要があり、管理からすれば窒素ガスが好適である。
【0046】
このように、本実施の形態では、放電被膜処理によって工具等の表面にTiCとTiが混在するTiC+Tiのような被膜層を形成したものに対して、窒化処理を、グロー放電、コロナ放電、無声放電、パルスアーク放電、高周波交流アーク放電のような放電によって行っている。前述したように、本発明を実施する場合の窒化処理は、500℃以上に被処理面を加熱し、それらの状態における被処理面上に窒素ガス、アンモニアガスを供給して窒化反応を起させたり、シアン化カリ(KCN)のような物質の溶融塩に被処理面を浸漬処理してもよい。更には、レーザで工具表面を加熱しながら窒素ガスを供給して窒化処理を行なうこともできる。
このようにして窒化した被膜層は、TiCとTiからなる表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少し、所謂、傾斜性をもった窒化状態となる。即ち、被膜層の表面はTiCNとTiNの密度が高く、内部に入るに従い、TiCとTiの濃度が高くなる。
これに対して、従来の切削工具等に対する窒化層の形成は、所謂、気相メッキであり、CVD(化学的蒸着法)またはPVD(物理的蒸着法)と称されるもので、TiNまたはTiAlNのようなものをプラズマ化してコーティングするものである。しかし、これらCVDまたはPVDの何れも、TiNまたはTiAlN等の被膜層は工具等の被処理材料の表面に密着しているが、被処理材料の中に拡散しているものではない。また、TiNまたはTiAlN等の被膜層は厚さの方向に関しても等質の窒化物となる。
【0047】
本実施の形態の傾斜性の被膜層と、従来のPVD等によりTiN等を均一に被覆した被膜層とを比較すると、次のようになる。
(1) 傾斜性構造を持つ被膜層は、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難いこととなる。
放電被膜形成の場合にも、被覆の内部に入るに従いTiの濃度が高くなるので、応力や熱応力の緩和に有利となる。即ち、表面は耐摩耗性が高く、被削材との親和性の少ないTiCNやTiNで保護し、内部に入るに従い靭性の高いTiの存在により、応力や熱応力を緩和することができる。
(2) 放電被膜処理によって形成されたTiC+Tiの被膜層(放電によって焼結されている)は、放電の極く短時間の高温高圧力によって、母材への拡散がかなり強固になされているから、放電被膜処理によって被覆層を厚くつけても剥離が生じない。
したがって、かなり窒化層が厚くなるまで生成させても、傾斜性が失われることなく、密着性を損うことはない。これに対して、PVDによる窒化物の被膜形成は、例えば、3μm以上に厚くすると密着性が悪くなる。これはメッキ層が厚いと剥離しやすくなる現象に似ている。
(3) TiC及び残存のTiが窒化され、TiCN,TiNになることにより、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移る。これは通常放電加工表面及び放電被覆表面は引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
このように、放電により被覆層を形成した処理後に、窒化処理を行なうことが有用であり、極めて重要であることが明確である。なお、液体窒素中の放電で窒化反応させたものでも、前述の効果に変化はない。
【0048】
更に、本発明を実施する場合の放電被膜処理方法について仔細に説明する。
被膜層を形成する放電表面処理方法としては、油中放電等の液中放電、窒素雰囲気中或いは空気中或いはアルゴンガス中等で行う気中放電による放電被膜処理方法がある。
まず、TiHの圧粉体電極104,204を使用して、油中、気中(空気中、窒素雰囲気中、窒素以外の非酸化雰囲気中(例えば、Ar(アルゴン)、He(ヘリウム)等)で放電表面処理を行なう事例について説明する。
【0049】
[1] 油中放電
Figure 0003544823
[2] 気中放電
(1) 窒素雰囲気中
TiH→Ti+N→TiN+Ti(残存非窒化物)
(2) 空気中(通常は酸化雰囲気中であり使用しない)
Figure 0003544823
(3) アルゴンガス中
TiH→Ti
このように、TiC、TiN、TiOの他にTiが炭化も、酸化も、窒化もされないまま残存する。
【0050】
ここで、油中放電または気中放電によって得た被膜層の窒化を行なうと、次のようになる。
[1] 油中放電によるものの窒化
TiC+Ti→TiCN+TiN
即ち、被膜層の表面はTiCNとTiNのみとなるが、被膜層の内部に入るに従い、残存Tiは存在する。
TiCNは極めて高硬度の物質、即ち、ビッカース硬度HV2600程度で、切削工具の被膜形成に好適である。
【0051】
[2] 気中放電によるものの窒化
(1) 窒素雰囲気中
TiN+Ti→TiN+TiN
即ち、被膜層の表面はTiNのみとなり、内部に入れば残存Tiは存在する。
(2) 空気中(通常は酸化雰囲気中であり使用しない)
TiO+TiN+Ti→TiO+TiN+TiN
TiOは硬度がHV980程度と低く、この条件では使用せず、実施する場合には、N ガスを流してTiOの生成を阻止する必要がある。
(3) Ti→TiN
[注] なお、窒素ガスは、通常、Nとして示すが、窒化反応では原子状
となるのでNとして示す。
【0052】
更にまた、本発明を実施する場合の窒化処理について説明する。
窒化の具体的方法として、放電を利用する方法、被膜層を500℃以上に加熱し、窒素ガス或いはアンモニアガスを被膜層表面に供給する方法、溶融塩に浸漬する方法、電解する方法、レーザ加熱する方法等がある。
【0053】
[1] 放電を利用するもの
(1) グロー放電、コロナ放電
極めて放電電流は微弱であるが、窒素ガスをイオン化するので、窒化作用が生ずる。このときの平均温度上昇は100℃以下で常温に近く、被処理材料である金属が変化し難い。
(2) 無声放電
放電現象からすれば、コロナ放電に近いが、被膜層と放電電極との間に絶縁物を置き(電極面をガラス被膜形成等を行なって形成する)交流高周波高圧電源を使用することにより、絶縁物上に発生された電荷と被膜層との間に放電を発生させる。電圧を高くし、周波数を高くすれば、入力を大きくすることができる。容易にはアーク放電にはならないので、放電が特定の点に集中することがない。
ここで、入力をωとし、誘電率をε、電圧をV、周波数をfとすると、
ω∝ε・V・f
となる。
なお、無声放電においては、平均温度を500℃以下に保つことが容易になり、また、炭素ガスはイオン化するので、窒化作用を呈することとな
る。
(3) 高周波交流アーク放電
ワイヤ放電加工等に利用されている電源方式であり、放電点は高い電流密度のアーク放電である。そのため、微少面積ではあるが、放電点の温度は被膜層の沸点に達するので、窒化の化学反応としては激しく、被膜層の表面から数10μmの深さに容易に到達する。放電点の温度は著じるしく高いが、被膜層の平均温度は低い。液中放電で知られているように液中では50℃程度以下であり、気中でも焼入鋼材の軟化温度以下に保つことは容易である。なお、極間距離が狭くなりがちであるから、電圧を高くとる
のが好ましい。
(4) 間歇パルスアーク放電
特に、型彫放電加工の電源と同じであり、上記(3)と同様の放電電流密度の高いアーク放電である。そのため放電点の窒化の化学反応が激しくなるのは上記(3)と同様である。温度上昇等も同様であり平均温度は低い。高周波交流アーク放電と異なる点は、高周波交流は放電が交互に極性が転換されて繰返され、休止時間が転換の前後に僅か存在するだけである。このため、放電が前に発生した放電点に再度発生することがあり、所謂、高周波アークになる可能性がある。この種の間歇パルスアーク放電は休止時間を特定してとることができるので、休止時間の制御ができる。
このように、何れの方法にしても、これらの放電を利用する窒化方法は、放電点温度は高くなるが、平均温度は少くとも100℃以下に保つことができるので鋼材を焼入した場合等でも母材硬度を軟化させないで窒化させることができる。また、放電点の温度が高いために表面から数10μmの深さまで窒化させることができる。特に、放電による窒化は、数10μmの深さまで窒化が進むため、その切削寿命は10倍以上に延びる。
なお、特に、窒素ガス気中の放電被膜処理は、液中放電と同一電圧でも極間距離が狭くなるので、放電による短絡が発生し易い。この際の短絡防止のためには、放電加工電圧を高くするか、或いは、窒化処理においても、図2に示したように、保持装置202に取付けたエンドミル201´を廻転させるのが有用である。
【0054】
[2] 被膜層を500℃以上に加熱し、窒素ガス或いはアンモニアガスを被膜層表面に供給する方法
上記実施の形態に示すように被膜層を500℃以上、特に好ましくは、700℃程度に加熱して窒化する場合が手軽に実施でき、実用上の効果も得られることから、多く使用される可能性が高い。しかし、焼入鋼では硬度低下を引き起す可能性が高くなる。また、加熱によって窒化する場合は窒素ガスはあくまで高温ガスであり、多少イオン化(解離)する可能性がある。しかし、前述の放電現象を使用したもののようにイオン化していないので、化学反応が被膜層の表面の極く薄い層(数μm)に限られる。少しでも、深く反応させるためには、加熱温度を高くし、加熱時間を長くする必要があるので、超硬合金のような、或いは、ある種の高速度鋼のようなものならばよいが、被処理母材の焼入硬度が低下するようなものは好ましくない。
なお、窒素ガスを使用する代りにアンモニアを使用してもよい。アンモニアを使用した場合には、反応温度を低くすることができる。即ち、NH3(アンモニア)が分解すればNは発生期であるから、反応が活性化される。しかし、嗅気の問題があり取扱いが面倒であるが、大量生産には有利な面もある。
【0055】
[3] 溶融塩に浸漬する方法
KCN等のシアン化物を溶融しておき、その中に被膜層を形成した被処理材料を浸漬する。安全性を十分に確保する必要性があるが、処理条件を一定に保ち易い特長がある。反応を早くするためには、溶融塩浴中で、放電被覆処理を行ったものを陽極として電気分解を行なうこともできる。
【0056】
[4] 電解する方法
KCN,NaCN等のシアン化物水溶液中で、放電被覆層を陽極として電気分解を行う。窒化は放電被覆処理によって形成した被覆層の表面のみであるが、作業上の操作が容易である。
【0057】
[5] レーザ加熱する方法
放電被覆処理を行ったものの表面に窒素ガスを供給しながら、レーザ照射を行う。レーザ照射のエネルギー密度を溶融点を少し越す程度に保つことによって、表面から20〜40μm程度まで窒化させることができる。但し、レーザ照射は照射による掃引の痕跡が残る可能性がある。
【0058】
前述のように、種々の窒化方式があるけれども、本実施の形態では鉄鋼等に対する窒素の侵入のようなものではなく、新しい窒素化合物を作ることによって、被処理材料の表面の被膜層を窒化し、切削加工或いは塑性加工、高圧力(及び高温)で相手金属を接触移動する場合の相手金属に対する親和性を減少させることができる。
【0059】
実施の形態3.
発明者等は、放電被覆処理した被覆層表面への窒化が極めて有益な作用効果を示す事例として、図4に示す本発明の実施の形態にかかる放電表面処理装置を製作して具体的データを得た。
図4は本発明の実施の形態3の放電表面処理装置における無声放電による窒化処理を示す説明図である。
図において、321は液体窒素の入ったガスボンベ、322はガスボンベ321から窒素ガスを取出すバルブ、323はガスボンベ321から管路324を介して排出される窒素ガスを、管路324から所定の圧力に調圧する調圧器である。なお、管路324はその開口端部を窒化処理のための窒化処理槽309の中間よりも下部の位置に挿入している。325は窒素ガス温度保持のための鉄またはステンレスからなる金属の蓋体、326はガス抜孔、327は蓋体305に熱絶縁の状態で挿着されたアルメル−クロメル熱電対、328はそのアルメル−クロメル熱電対327の出力によって温度を表示する温度計である。
311は鉄またはステンレスからなる金属槽、310は金属槽311の外側を断熱体で覆った断熱部で、これら鉄またはステンレスからなる金属槽311及び断熱部310によって窒化処理槽309を構成している。315はヒータ、301´は油中放電被膜処理後の工具試料(母材超硬合金GTi)としてのエンドミルであり、普通、超硬合金または高速度鋼ドリル等の鋼材からなる。301´は表面に被膜層を形成したエンドミルである。
ここで、窒化処理のための窒化処理槽309及び窒化のためのガスを供給するガスボンベ321及び取出すバルブ322、管路324からなる供給装置は、本実施の形態の被膜層を形成したエンドミル301´を収容する窒化処理装置313を構成する。
【0060】
次に、本実施の形態の放電表面処理装置における窒化処理について説明する。まず、圧粉体電極(図示せず)は、TiHを成形圧力比5トン/cmとして圧縮成形したもので、これを電極として超硬合金(GTi30)旋削用バイトチップに放電被膜処理を行った。このときの放電被膜処理条件は、放電電流Ip=8A、パルス幅Zp=2μs、休止時間=32μs、放電加工時間=5分で、加工液は灯油であった。
次に、エンドミル301´を油中放電被膜処理により放電被覆を形成した後、窒化処理槽309に入れ、ヒータ312で加熱し、温度計に示された温度700℃とし、加熱時間は10分とした。そこにガスボンベ301から管路304を介して排出されるNガスを供給する。このとき、窒化処理槽309のNのガス圧は、略大気圧である。これにより、被処理材料であるエンドミル301´の表層の極く薄い数μmの層に窒化反応が生ずる。
このエンドミル301´を切削試験によって評価した結果を、窒化処理装置313で窒化したものと放電被覆処理した被覆層だけのものとを比較すると、切削寿命が著るしく伸びた。即ち、超硬合金の表面処理しないものの寿命を「1」とした場合、放電被覆処理のみのものが「2〜4」、放電被覆処理の後、窒化処理を行ったものが「7〜8」となった。また、TiHにAlNを7:3の割合で加え、前者と同様に圧縮成形した圧粉体電極で放電処理を行ったものも、前者と同様の窒化処理によって、前者と同様の切削寿命の延長が認められた。
即ち、この窒化処理をしたものと、窒化処理しない放電被覆処理のみのものと超硬合金未処理のものの切削試験結果は、前記の通りの寿命比で、窒化しないものの約2倍となっている。
なお、特に、放電による窒化は、数10μmの深さまで窒化が進むため切削試験による切削寿命は10倍以上に延びることが判った。
【0061】
更に詳しく、発明者等が行った他の放電処理及び窒化処理について各種の具体的事例を説明する。
前述の切削工具の被膜形成処理例では、TiH等の圧粉体電極を使用する場合について述べたが、VH、ZrH、TaH等の遷移金属の水素化物及びこれにV,VC,Al、TiB、AlN、TiN、Nb、NbN等の何れか1以上を混合した場合においても、同様の作用効果があることが確認された。
そして、被処理材料である金属としては、切削工具のみならず、金型等の全面または部分的な高耐摩耗性を得る場合、例えば、農機具、土木建築用具、土砂を取扱う用具等の高耐摩耗性部分を得る場合には、メッキ、溶射、粉末冶金等による遷移金属の表面の窒化にも使用できることが確認された。
【0062】
このように、上記実施の形態の放電表面処理方法は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなるソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極と、エンドミル101,201等の被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に液中放電、窒素雰囲気中或いは気中放電等による放電を発生させることによりエンドミル101,201等の被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、エンドミル101,201等の被処理材料の表面に被覆層を形成し、その後、窒化処理槽109,209内で放電を利用する方法、被膜層を500℃以上に加熱し、窒素ガス或いはアンモニアガスを被膜層表面に供給する方法、溶融塩に浸漬する方法、電解する方法、レーザ加熱する方法等により被処理材料の表面に被覆層を形成したエンドミル101´,201´等の被覆層に窒化処理を行うものであるから、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わずエンドミル101,201等の被処理材料の表面に良好な硬質層を形成することができる。
なお、ここでは、上記実施の形態の被処理材料としての金属は、エンドミル101,201として説明したが、被処理材料としては、勿論、表面処理する工具、金型、機械構造物、機械部品等の耐食性、耐摩耗性を必要とするものを対象とすることができる。
【0063】
上記実施の形態の放電表面処理方法は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなるソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極を、TiH等の金属の水素化物の粉体を成形した圧粉体電極104,204を有するものであるから、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く、密着力のよい被覆層を金属表面に形成することができる。また、二次加工を経ずして、強固な硬質膜を被処理材料である金属表面に形成でき、更に、TiH等の金属の水素化物の圧粉体電極104,204により、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、Ti等の材料を使用する場合よりも、早く、密着性に富む硬質膜を形成することができる。そして、TiH等の水素化物に他の金属やセラミックスを混合した圧粉体電極104,204により、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、硬度、耐摩耗性等の様々な性質をもった硬質皮膜を素早く形成することができる。
【0064】
上記実施の形態の放電表面処理方法は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなるソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極を、その炭化物、窒化物共にビッカース硬度1000Hv以上の硬質の物質である金属または金属の化合物としたものであり、Ti(チタン)等の硬質炭化物を形成する材料を電極とし、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、再溶融の過程なしで、強固な硬質膜を被処理材料である金属表面に形成できる。よって、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、良好な被覆層をすばやく均一に金属表面に形成することができる。
【0065】
上記実施の形態の放電表面処理装置は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなるソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極と、エンドミル101,201等の被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることによりエンドミル101,201等の被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、圧粉体電極104,204等の電極を保持する電極保持装置102と、圧粉体電極104,204等の電極とエンドミル101,201等の被処理材料との間に放電を行わせた後にエンドミル101´,201´等の被処理材料の表面の被覆層を窒化処理する窒化処理のための窒化処理装置113,213とを具備するものであるから、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、金属表面に良好な被覆層を形成することができる。故に、窒化によって鋼材等の鉄と被処理材料との間に生ずる親和力を減少させることができる。
なお、上記実施の形態では、例えば、エンドミル101及び圧粉体電極104を収容する加工槽106と窒化処理のための窒化処理槽109は、各々独立した槽となっているが、本発明を実施する場合には、両者を一体にすることもできる。また、窒化処理槽109の蓋体110は、窒化のためのガスの有効利用率を高めるものであるから、省略することもでき、また、特定の開口面積の開口のみとすることもできる。そして、窒化処理槽109は、その下部のみを開口させることもできる。
【0066】
上記実施の形態の放電表面処理装置は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極としてTiH等の金属の水素化物の粉体を成形した圧粉体電極104,204を有するものであるから、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く、密着力のよい改質層を金属表面に形成することができる。また、二次加工を経ずして、強固な硬質膜を被処理材料である金属表面に形成できる。更に、TiH等の金属の水素化物の圧粉体電極104,204により、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、Ti等の材料を使用する場合よりも、早く、密着性に富む硬質膜を形成することができる。
【0067】
上記実施の形態の放電表面処理装置は、前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなるソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極を、その炭化物、窒化物共に硬質の物質である金属または金属の化合物としたものであるから、その炭化物、窒化物共にビッカース硬度1000Hv以上の硬質の物質である金属または金属の化合物としたものであり、Ti(チタン)等の硬質炭化物を形成する材料を電極とし、被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、再溶融の過程なしで、強固な硬質膜を被処理材料である金属表面に形成できる。よって、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、良好な改質層をすばやく均一に金属表面に形成することができる。
【0068】
上記実施の形態の放電表面処理方法は、ソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極とエンドミル101,201等の被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることによりエンドミル101,201等の被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、エンドミル101等の被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行うものであるから、金属やセラミックスを混合したソリッドまたは圧粉体電極104,204と被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、硬度、耐摩耗性等の様々な性質をもった硬質皮膜の良好な硬質層を形成でき、しかも、窒化によって鋼材等の鉄と被処理材料との間に生ずる親和力を減少させることができる。即ち、新しい窒素化合物を作ることによって、被処理材料の表面を窒化し、切削加工或いは塑性加工、高圧力(及び高温)で相手金属が接触移動する場合の相手金属に対する親和性を減少させることができる。
【0069】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、エンドミル101,201等の被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用するものである。したがって、これらの放電を利用する窒化方法及びその装置では、放電点温度は高いが、平均温度は少くとも100℃以下に保つことができるので鋼材を焼入した場合等でも母材硬度を軟化させないで窒化させることができる。また、放電点の温度が高いために表面から数10μmの深さまで窒化させることができる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する、所謂、傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0070】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを被処理材料表面に供給して行うものである。したがって、被膜層を500℃以上に加熱して窒化するものであり、放電現象を使用したもののように雰囲気がイオン化していないので、化学反応が被膜層の表面の極く薄い層(数μm)に限られ、深く反応させるためには、加熱温度、加熱時間を調節する必要があり、超硬合金、ある種の高速鋼のようなものに好適となる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する、所謂、傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させることがない。
【0071】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、窒化反応を生ずるKCN等の溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して窒化するものであるから、処理条件を一定に保ち易い。また、反応を早くするためには、溶融塩浴中で、放電被覆処理を行ったものを陽極として電気分解を行なうこともできる。この場合にも、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する、所謂、傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0072】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、KCN,NaCN等のシアン化物の塩類の水溶液中で放電被覆処理した前記被処理材料を陽極として電気分解を行うものであるから、窒化は放電被覆処理によって形成した被覆層の表面のみであるが、作業上の操作が容易である。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させない。
【0073】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながら、レーザ照射を行うものであるから、レーザ照射のエネルギー密度を溶融点を少し超過する程度に保つことによって、表面から20〜40μm程度まで窒化させることができる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させない。
【0074】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、微細なダイヤモンド砥石あるいはダイヤモンド遊離砥粒その他の硬度の高い砥石、砥粒により放電被覆表面の「みがき仕上」を行い、その後、窒化を行うものであるから、放電加工面のままでは窒素が侵入し難いが、研磨等の方法及びその装置で表面を研磨してから窒化処理を行っているので、窒素が侵入し易くなり、焼入等の熱処理を行っても、焼入組織が作業の高温によって容易に戻ることがない。
【0075】
上記実施の形態の放電表面処理方法及びその装置は、被処理材料を刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を整形し、その後、窒化を行うものであるから、刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成した後、刃先をシャープに整形し、その後、窒化を行うので、刃先の高度が増す以前に刃先をシャープに形成しておき、その後、窒化によって行刃先の高度を増すものであるから、刃先の細かな調整が容易である。
【0076】
上記実施の形態の放電表面処理装置は、ソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極とエンドミル101,201等の被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることによりエンドミル101,201等の被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、エンドミル101,201等の被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行う窒化処理槽109,209,309を有するものであるから、ソリッドまたは圧粉体電極104,204等の電極と被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、硬度、耐摩耗性等の様々な性質をもった硬質皮膜の良好な硬質層を形成でき、しかも、窒化によって鋼材等の鉄と被処理材料との間に生ずる親和力を減少させることができる。即ち、新しい窒素化合物を作ることによって、被処理材料の表面を窒化し、切削加工或いは塑性加工、高圧力(及び高温)で相手金属を接触移動する場合の相手金属に対する親和性を減少させることができる。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の放電表面処理方法は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材料の表面に被覆層を形成し、その後、窒化処理を行うものであるから、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず金属表面に良好な硬質層を形成することができる。
【0078】
請求項2に記載の放電表面処理方法は、請求項1に記載の前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物の粉体を含む粉体から成形したものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く密着力のよい改質層を金属表面に形成することができる。
【0079】
請求項3に記載の放電表面処理方法は、請求項1に記載の前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、その炭化物、窒化物共にビッカース硬度1000Hv以上の硬質の物質である金属または金属の化合物としたものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬質で良好な改質層をすばやく均一に金属表面に形成することができる。
【0080】
請求項4に記載の放電表面処理装置は、改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理材料である金属との間に電圧を印加して、パルス状の放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、前記電極を保持する電極保持装置と、前記電極と被処理材料との間に放電を行わせた後に前記被処理材料の表面の被覆層を窒化処理する窒化処理装置とを具備するものであるから、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、金属表面に硬質で良好な改質層を形成することができる。
【0081】
請求項5に記載の放電表面処理装置は、請求項4に記載の前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、金属の水素化物の粉体を含む粉体から成形したものであるから、請求項4に記載の効果に加えて、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず、硬度が高く密着力のよい改質層を金属表面に形成することができる。
【0082】
請求項6に記載の放電表面処理装置は、請求項4に記載の前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極を、その炭化物、窒化物共に硬質の物質である金属または金属の化合物としたものであるから、請求項4に記載の効果に加えて、被処理材料が鋼材であるか超硬合金であるかを問わず硬質で良好な改質層をすばやく均一に金属表面に形成することができる。
【0083】
請求項7に記載の放電表面処理方法は、電極と被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、前記被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行うものである。
したがって、金属やセラミックスを混合した電極と被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、硬度、耐摩耗性等の性質をもった硬質皮膜の良好な被膜層を形成でき、しかも、窒化によって、高圧力、高温度下における耐摩耗を著るしく高めることができ、また、鋼材等の鉄と被処理材料との間に生ずる親和力を減少させることができる。故に、新しい窒素化合物を作ることによって、被処理材料の表面を窒化し、切削加工或いは塑性加工、高圧力(及び高温)で相手金属が接触移動する場合の相手金属に対する親和性を減少させることができる。
【0084】
請求項8に記載の放電表面処理方法は、請求項7に記載の前記被処理材料に被覆層を形成した後の窒化を、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用するものであるから、請求項7に記載の効果に加えて、放電点温度は著るしく高くなるが、平均温度は低く保つことができるので鋼材を焼入した場合等でも母材硬度を軟化させないで窒化させることができる。また、放電点の温度が高いために表面から数10μmの深さまで窒化させることができる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0085】
請求項9に記載の放電表面処理方法は、請求項7に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、前記被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを被処理材料表面に供給して行うものであるから、請求項7に記載の効果に加えて、放電現象を使用したもののように雰囲気がイオン化していないので、化学反応が被膜層の表面の極く薄い層(数μm)に限られ、深く反応させにも、加熱温度、加熱時間を調節することにより対応できる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0086】
請求項10に記載の放電表面処理方法は、請求項7に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒化反応を生ずる溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して窒化するものであるから、請求項7に記載の効果に加えて、処理条件を一定に保ち易い。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0087】
請求項11に記載の放電表面処理方法は、請求項7に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、シアン化物の塩類の水溶液中で、放電被覆処理した前記被処理材料を陽極として電気分解を行うものであるから、請求項7に記載の効果に加えて、窒化は放電被覆処理によって形成した被覆層の表面のみであるが、電気分解の電流の制御によって任意の設定ができるから、作業上の操作が容易である。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0088】
請求項12に記載の放電表面処理方法は、請求項7に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながら、レーザ照射を行うものであるから、請求項7に記載の効果に加えて、レーザ照射のエネルギー密度を溶融点を少し超過する程度に保つことによって、表面から数10μm程度を越えるまで窒化させることができる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0089】
請求項13に記載の放電表面処理方法は、請求項7乃至請求項12の何れか1つに記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、硬度の高い砥石または砥粒により被覆層表面の研磨を行い、その後、窒化を行うものであるから、請求項7乃至請求項12の何れか1つに記載の効果に加えて、放電加工面はそのままでは窒素が侵入し難いが、研磨等の方法及びその装置で表面を研磨してから窒化処理を行っているので、焼入等の熱処理を行っても、焼入組織が作業の高温によって容易に戻ることがない。
【0090】
請求項14に記載の放電表面処理方法は、請求項7乃至請求項12の何れか1つに記載の前記被処理材料は、刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を成形し、その後、窒化を行うことを特徴とする請求項7乃至請求項12の何れか1つに記載の効果に加えて、刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成した後、刃先をシャープに整形し、その後、窒化を行うので、刃先の高度が増す以前に刃先をシャープに形成しておき、その後、窒化によって行刃先の高度を増すものであるから、刃先の細かな調整が容易である。
【0091】
請求項15に記載の放電表面処理装置は、電極と被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、前記被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行う窒化処理槽を有するものである。
したがって、金属やセラミックスを混合した電極と被処理材料である金属材料との間に放電を発生させると、硬度、耐摩耗性等の性質をもった硬質皮膜の良好な被膜層が形成でき、しかも、窒化によって、高圧力、高温度下における耐摩耗を著るしく高めることができ、また、鋼材等の鉄と被処理材料との間に生ずる親和力を減少させることができる。故に、新しい窒素化合物を作ることによって、被処理材料の表面を窒化し、切削加工或いは塑性加工、高圧力、高温度で相手金属が接触移動する場合の相手金属に対する親和性を減少させることができる。
【0092】
請求項16に記載の放電表面処理装置は、請求項15に記載の前記被処理材料に被覆層を形成した後の窒化を、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用するものであるから、請求項15に記載の効果に加えて、放電点温度は著るしく高くなるが、平均温度は低く保つことができるので鋼材を焼入した場合等でも母材硬度を軟化させないで窒化させることができる。また、放電点の温度が高いために表面から数10μmの深さまで窒化させることができる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0093】
請求項17に記載の放電表面処理装置は、請求項15に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、前記被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを被処理材料表面に供給して行うものであるから、請求項15に記載の効果に加えて、放電現象を使用したもののように雰囲気がイオン化していないので、化学反応が被膜層の表面の極く薄い層(数μm)に限られ、深く反応させても、加熱温度、加熱時間を調節することにより対応できる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0094】
請求項18に記載の放電表面処理装置は、請求項15に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒化反応を生ずる溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して窒化するものであるから、請求項15に記載の効果に加えて、処理条件を一定に保ち易い。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0095】
請求項19に記載の放電表面処理装置は、請求項15に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、シアン化物の塩類の水溶液中で、放電被覆処理した前記被処理材料を陽極として電気分解を行うものであるから、請求項15に記載の効果に加えて、窒化は放電被覆処理によって形成した被覆層の表面のみであるが、電気分解の電流の制御によって任意の設定ができるから、作業上の操作が容易である。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0096】
請求項20に記載の放電表面処理装置は、請求項15に記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化を、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながら、レーザ照射を行うものであるから、請求項15に記載の効果に加えて、レーザ照射のエネルギー密度を溶融点を少し超過する程度に保つことによって、表面から数10μm程度を越えるまで窒化させることができる。特に、表面が最も良く窒化され、内部に入るに従い窒化の程度は減少する傾斜性をもった窒化状態となり、表面に外力が加わったり、熱が加わった場合に応力または熱応力を緩和して母材に伝えるので、剥離発生や亀裂発生が起り難く、応力や熱応力の緩和に有利となる。また、母材への拡散がかなり強固になされるから、放電被覆層を厚くつけても剥離が生じない。そして、体積膨張が生じ、放電被覆処理の状態よりも残留応力が圧縮側に移るから、通常放電加工表面及び放電被覆表面には引張応力を生じているが、窒化によって一度溶融したものが凝固し、残留応力が圧縮側に移行するからクラックを発生させないことになる。
【0097】
請求項21に記載の放電表面処理装置は、請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、硬度の高い砥石または砥粒により被覆層表面の研磨を行い、その後、窒化を行うものであるから、請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の効果に加えて、放電加工面はそのままでは窒素が侵入し難いが、研磨等の装置及びその装置で表面を研磨してから窒化処理を行っているので、焼入等の熱処理を行っても、焼入組織が作業の高温によって容易に戻ることがない。
【0098】
請求項22に記載の放電表面処理装置は、請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の前記被処理材料は、刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を成形し、その後、窒化を行うことを特徴とする請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の効果に加えて、刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成した後、刃先をシャープに整形し、その後、窒化を行うので、刃先の高度が増す以前に刃先をシャープに形成しておき、その後、窒化によって行刃先の高度を増すものであるから、刃先の細かな調整が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の放電表面処理方法及び放電表面処理装置を示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態2の放電表面処理方法及び放電表面処理装置を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2の放電表面処理装置における無声放電による窒化処理を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態3の放電表面処理装置における無声放電による窒化処理を示す説明図である。
【図5】従来の放電表面処理方法を示す説明図で、(a)は一次加工の動作説明図、(b)は二次加工の動作説明図、(c)は一次加工及び二次加工の概念図である。
【符号の説明】
101,201 エンドミル、101´,201´,301´ 放電被膜処理をしたエンドミル、104,204 圧粉体電極、106,206 加工槽、109,209,309 窒化処理槽、113,213,313 窒化処理装置、114,214 放電被膜処理装置

Claims (22)

  1. 改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、
    前記被処理材料の表面に被覆層を形成し、その後、窒化処理を行うことを特徴とする放電表面処理方法。
  2. 前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極は、金属の水素化物の粉体を含む粉体から成形したことを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理方法。
  3. 前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極は、その炭化物、窒化物共にビッカース硬度1000Hv以上の硬質の物質である金属または金属の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の放電表面処理方法。
  4. 改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極と、被処理材料である金属との間に電圧を印加して、パルス状の放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、
    前記電極を保持する電極保持装置と、前記電極と被処理材料との間に放電を行わせた後に前記被処理材料の表面の被覆層を窒化処理する窒化処理装置と
    を具備することを特徴とする放電表面処理装置。
  5. 前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極は、金属の水素化物の粉体を含む粉体から成形してなることを特徴とする請求項4に記載の放電表面処理装置。
  6. 前記改質材料の元となる材料を含む改質材料からなる電極は、その炭化物、窒化物共に硬質の物質である金属または金属の化合物からなることを特徴とする請求項4に記載の放電表面処理装置。
  7. 電極と被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理方法において、
    前記被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、その窒化を行うことを特徴とする放電表面処理方法。
  8. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用することを特徴とする請求項7に記載の放電表面処理方法。
  9. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、前記被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを前記被覆層表面に供給して行うことを特徴とする請求項7に記載の放電表面処理方法。
  10. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、窒化反応を生ずる溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して窒化することを特徴とする請求項7に記載の放電表面処理方法。
  11. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、シアン化物の塩類の水溶液中で、放電被覆処理した前記被処理材料を陽極として電気分解を行うことを特徴とする請求項7に記載の放電表面処理方法。
  12. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながら、レーザ照射を行うことを特徴とする請求項7に記載の放電表面処理方法。
  13. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、硬度の高い砥石または砥粒により被覆層表面の研磨を行い、その後、窒化を行うことを特徴とする請求項7乃至請求項12の何れか1つに記載の放電表面処理方法。
  14. 前記被処理材料は、刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を整形し、その後、窒化を行うことを特徴とする請求項7乃至請求項12の何れか1つに記載の放電表面処理方法。
  15. 電極と被処理材料である金属との間に電圧を印加して、その間に放電を発生させることにより前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成する放電表面処理装置において、
    前記被処理材料である金属表面に、セラミックス、金属の何れか1以上を被覆層として被覆した後、窒化を行う窒化処理槽を具備することを特徴とする放電表面処理装置。
  16. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、気体または液体窒素中でグロー放電、コロナ放電、無声放電、間歇パルスアーク放電、高周波交流アーク放電の何れかの放電現象を使用することを特徴とする請求項15に記載の放電表面処理装置。
  17. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、前記被処理材料を500℃以上に加熱し、窒素ガス、アンモニアガスの何れかを前記被覆層表面に供給して行うことを特徴とする請求項15に記載の放電表面処理装置。
  18. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、窒化反応を生ずる溶融塩中に前記被処理材料を浸漬して窒化することを特徴とする請求項15に記載の放電表面処理装置。
  19. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、シアン化物の塩類の水溶液中で、放電被覆処理した前記被処理材料を陽極として電気分解を行うことを特徴とする請求項15に記載の放電表面処理装置。
  20. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、窒素ガスを前記被処理材料の表面に供給しながら、レーザ照射を行うことを特徴とする請求項15に記載の放電表面処理装置。
  21. 前記被処理材料である金属表面に被覆層を形成した後の窒化は、硬度の高い砥石または砥粒により被覆層表面の研磨を行い、その後、窒化を行うことを特徴とする請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の放電表面処理装置。
  22. 前記被処理材料は、刃先を摩耗した工具とし、前記刃先の摩耗部分よりも厚く被覆層を形成し、その形成された被覆層を含む刃先形状を整形し、その後、窒化を行うことを特徴とする請求項15乃至請求項21の何れか1つに記載の放電表面処理装置。
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