JP3544228B2 - 筒内圧センサの自己診断装置と内燃機関における筒内圧に基づく制御のフェールセーフ装置 - Google Patents
筒内圧センサの自己診断装置と内燃機関における筒内圧に基づく制御のフェールセーフ装置 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は内燃機関の燃料性状検出のためなどに使用される筒内圧センサの異常を自己診断する装置及び該自己診断結果に基づくフェールセーフ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、燃料性状(使用燃料の重軽質による気化率の違い)を判定して、かかる判定結果に応じて、冷機時における燃料供給量の増量補正量を最適化する装置が提案されている(特開平5−195840号公報参照)。
前記特開平5−195840号公報に開示される装置は、筒内圧に基づいて機関のサージトルクを検出し、予め余裕を持って多めに設定されている水温に応じた増量補正量を、許容レベルを越えるサージトルクが検出されるまで徐々に減量補正することで、そのときの使用燃料で要求される(燃料性状に応じた)最低限の増量補正量が得られるようにしたものであり(図7参照)、使用燃料の気化率が高ければそれだけ増量補正量が低く修正されることになる。
【0003】
上記のようにサージトルクを監視しつつ増量補正量を徐々に減少させる構成であれば、許容限界を越えるサージトルクの発生を確実に回避しつつ、増量補正量を必要最小限に抑制できることになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記のように燃料性状を判定するため用いられる筒内圧センサが故障すると、排気浄化性能が悪化してしまうため、該筒内圧センサの異常を自己診断することが義務づけられている。
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、筒内圧センサの自己診断を精度良く、かつ、簡易に行えるようにした筒内圧センサの自己診断装置を提供することを目的とする。
【0005】
また、前記自己診断の結果筒内圧センサが異常と判定されたときに筒内圧センサに基づく制御を安全サイドに導くことを目的とする。
【0006】
このため、請求項1の発明に係る筒内圧センサの自己診断装置は、図1に示すように、内燃機関の筒内圧力を検出する筒内圧センサの異常を自己診断する装置において、機関の非燃焼状態を検出する非燃焼状態検出手段と、前記筒内圧センサが1燃焼サイクル間に検出する複数の筒内圧力を平均化した平均筒内圧力を算出する手段と、算出された燃焼時と非燃焼状態の平均筒内圧力とを比較し、燃焼時の平均筒内圧力が非燃焼時の平均筒内圧力より所定割合以上大きいときは筒内圧センサが正常、それ以外のときは筒内圧センサが異常であると診断する診断手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明に係る装置では、図2に示すように前記非燃焼状態検出手段によって検出される非燃焼状態が、クランキング状態を含んでいることを特徴とする。
また、請求項3の発明に係る装置では、前記非燃焼状態検出手段によって検出される非燃焼状態が、機関への燃料供給が停止される所定の運転状態を含んでいることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の発明に係る内燃機関における筒内圧に基づく制御のフェールセーフ装置では、図2に示すように、前記筒内圧センサが異常であると診断されたときに、該筒内圧に基づく制御を安全サイドへクランプするフェールセーフ手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
【作用】
請求項1の発明に係る筒内圧センサの自己診断装置によると、燃焼時の爆発によって発生する筒内圧は非燃焼時の空気圧縮のみによる筒内圧に比較して十分大きいため、筒内圧センサが正常であれば、その検出値に大きな差がついて正常であると診断され、筒内圧センサが異常であるときは両者の差があまり生じないこととなるから、異常であると診断できる。
【0010】
ここで、請求項2の発明にかかる装置では、クランキング時における着火前の状態を非燃焼状態として検出することができ、特別強制的に非燃焼状態を創らなくて済む。
また、請求項3の発明に係る装置では、所謂燃料カット時を非燃焼状態として検出することができ、同様に強制的に非燃焼状態を創らなくて済む。
【0011】
また、請求4の発明に係るフェールセーフ装置では、筒内圧センサに異常があると判定されたときは、筒内圧に基づく制御を安全サイドに導いて、排気浄化性能の悪化等を抑制することができる。
【0012】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
一実施例を示す図2において、内燃機関1にはエアクリーナ2から吸気ダクト3,スロットル弁4及び吸気マニホールド5を介して空気が吸入される。吸気マニホールド5の各ブランチ部には、各気筒別に燃料噴射弁6が設けられている。
【0013】
この燃料噴射弁6は、ソレノイドに通電されて開弁し、通電停止されて閉弁する電磁式燃料噴射弁であって、後述するコントロールユニット12からの駆動パルス信号により通電制御されて開弁し、図示しない燃料ポンプから圧送されてプレッシャレギュレータにより所定の圧力に調整された燃料を、機関1に間欠的に噴射供給する。
【0014】
機関1の各燃焼室には点火栓7が設けられていて、これにより火花点火してシリンダ内の混合気を着火燃焼させる。そして、機関1からは、排気マニホールド8,排気ダクト9,触媒10及びマフラー11を介して排気が排出される。
機関への燃料供給を電子制御するために設けられたコントロールユニット12は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器及び入出力インタフェイス等を含んで構成されるマイクロコンピュータを備え、各種のセンサからの入力信号を受け、後述の如く演算処理して、燃料噴射弁6の作動を制御する。
【0015】
前記各種のセンサとしては、吸気ダクト3中にエアフローメータ13が設けられていて、機関1の吸入空気流量Qに応じた信号を出力する。
また、クランク角センサ14が設けられていて、基準角度位置毎(例えばTDC毎)の基準角度信号REFと、1°又は2°毎の単位角度信号POSとを出力する。ここで、前記基準角度信号REFの周期、或いは、所定時間内における前記単位角度信号POSの発生数を計測することにより、機関回転速度Neを算出できる。
【0016】
また、機関1のウォータジャケットの冷却水温度Tw(機関温度を代表するパラメータ)を検出する温度条件検出手段としての水温センサ15が設けられている。
更に、前記各点火栓7には、実開昭63−17432号公報に開示されるような点火栓7の座金として装着されるタイプの筒内圧センサ16が設けられており、各気筒別に筒内圧を検出できるようになっている。前記筒内圧センサ16は、リング状に形成される圧電素子及び電極を含んで構成され、点火栓7とシリンダヘッドとの間に挟み込まれるものである。
【0017】
尚、前記筒内圧センサ16は、上記のように点火栓7の座金として装着されるタイプの他、センサ部を直接燃焼室内に臨ませて筒内圧を絶対圧として検出するタイプのものであっても良い。
また、コントロールユニット12には、機関のスタータスイッチ17のON・OFF信号の他、図示しないエアコンスイッチやパワステスイッチや各種電気負荷スイッチ(リヤデフォッガースイッチ等)などのON・OFF信号が、前記各種補機による機関の負荷状態を示す信号として入力されるようになっている。
【0018】
ここにおいて、コントロールユニット12に内蔵されたマイクロコンピュータのCPUは、ROM上のプログラムに従って演算処理を行い、機関1への燃料噴射量(噴射パルス幅)Tiを演算し、所定の噴射タイミングにおいて前記燃料噴射量Ti(燃料供給量)相当のパルス幅の駆動パルス信号を燃料噴射弁6に出力する。
【0019】
前記燃料噴射量Tiは、
燃料噴射量Ti=基本噴射量Tp×各種補正係数Co+電圧補正分Ts
として算出される。
前記基本噴射量Tpは、吸入空気流量Qと機関回転速度Neとに基づいて決定される基本的な噴射量であり、電圧補正分Tsは、バッテリ電圧の低下による無効噴射量の増加に対応するための補正分である。
【0020】
また、前記各種補正係数Coは、Co={1+空燃比補正係数KMR+水温増量補正係数KTW+始動後増量補正係数KAS+加速増量補正係数KACC +減速減量補正係数KDC+・・・}として算出される。
前記空燃比補正係数KMRは、機関回転速度Neと基本噴射量Tp(機関負荷)に対して最適な空燃比となるように基本噴射量Tpを補正するための係数であり、水温増量補正係数KTWは冷却水温度Twが低いときほど噴射量を増大補正する。また、前記始動後増量補正係数KAS(始動後増量補正手段)は、始動直後に冷却水温度Twが低いほど噴射量を増量補正するものであり、所定の割合で徐々にその増量補正量を減じて最終的には0になる。更に、加速増量補正係数KACC 及び減速減量補正係数KDCは、機関の加減速時の空燃比の変動を回避すべく噴射量を増減補正するものである。
【0021】
ここで、前記各種補正係数Coによる噴射量の補正要求は、使用燃料の性状、特に燃料の重軽質(気化率)によって変化し、気化率の低い重質燃料を使用しているときには、前記水温増量補正係数KTWや加速増量補正係数KACC による増量要求は、気化率の高い軽質燃料を使用しているときに比べて大きくなる。
従って、増量補正要求に対して実際の増量補正レベルが不足して、これにより空燃比がリーン化して機関運転の安定性を損なうことがないようにするために、前記水温増量補正係数KTWや加速増量補正係数KACC の初期値は、増量要求レベルが最も高い重質燃料に適合されている。
【0022】
しかしながら、実際の使用燃料が軽質燃料であると、前記初期値では増量補正量が過剰になって、排気性状の悪化(HC濃度の増大)を招くことになってしまう。そこで、コントロールユニット12が、燃料の重軽質(気化率)を間接的に検出し、該検出結果に応じて前記水温増量補正係数KTWや加速増量補正係数KACC を、実際の使用燃料に適合する値に修正するようにしてある。
【0023】
図4のフローチャートは、コントロールユニット12による燃料性状 (重軽質) の検出及び該検出結果に基づく各種補正係数の修正制御の一例を示す。
図4のフローチャートにおいて、ステップ (図ではSと記す。以下同様) 1では、冷却水温度Twが所定温度Tws以下であるか否かを判別する。これは、高温始動時には、使用燃料の気化率の違いが明確に表れないためであり、冷却水温度Twが所定温度Twsを越えている場合には、燃料性状の誤検出を回避すべく、そのまま本プログラムを終了させる。
【0024】
ここで、機関運転の温度条件として、本実施例では冷却水温度Twを判別させたが、外気温度や燃料温度やシリンダヘッド或いはシリンダブロック等の機関本体の温度を判別させる構成としても良い。
冷却水温度Twが所定温度Tws以下であると判別されると、ステップ2へ進み、後述する時間計測中に前記エアコンやパワステや各種電気負荷などの機関の補機負荷(外部負荷)に変動(補機負荷のON・OFF切り換え)が発生したか否かを判別する。
【0025】
本制御では、後述するように、燃料量の強制的な補正から筒内圧積分値Piの変動が発生するまでの時間に基づいて燃料性状を検出する構成であるから、前述のような補機負荷の変動が発生すると、これが外乱となって燃料性状の検出精度を悪化させることになってしまう。そこで、燃料性状の検出途中(時間計測途中)に、前述のような補機負荷の変動が検出されると、そのまま本プログラムを終了させて、燃料性状の誤検出を回避する。
【0026】
冷却水温度Twが所定温度Tws以下で、かつ、補機負荷の変動がないときには、ステップ3へ進む。
ステップ3では、スタータがOFFされてからの経過時間が、所定時間に達していない状態であるか、前記所定時間の経過時点であるか、更には、前記所定時間以上に経過しているかを判別する。
【0027】
尚、前記所定時間は、スタータがOFFされてから機関回転速度Neが略安定するまでの時間とすることが好ましい。
スタータがOFFされてから所定時間が経過していない場合には、そのまま本プログラムを終了させ、前記所定時間の経過時点でステップ4へ進む。
ステップ4では、前記始動後増量補正係数KASによる増量補正が施されている状態であるか否かを判別する。
【0028】
前記始動後増量補正係数KASによる増量補正は、前述のように、スタータがOFFされたときに増量補正の初期レベルが冷却水温度Twに応じて設定されて、その後徐々に補正レベルが減じられて最終的に増量補正レベルが0になるものであり(図4参照)、この始動後増量補正係数KASによって前記水温増量補正係数KTWによる増量補正レベルよりも更に増量補正して、始動動作終了直後における機関運転の安定化を図るようにしてある。
【0029】
ステップ4で始動後増量補正係数KASによる増量補正中でないと判別されたときには、そのまま本プログラムを終了させ、前記始動後増量補正係数KASによる増量補正中であるときには、ステップ5へ進む。
ステップ5では、予め設定した特定の1気筒を判別し、ステップ6では、当該特定気筒における燃料噴射量を所定時間だけ一時的に強制的に増大補正(又は減少補正)する(図5参照)。
【0030】
尚、前記増量・減量補正は、燃料噴射量Ti(噴射パルス幅)の増量・減量補正演算であっても良いし、増量補正の場合には、燃料噴射量Tiに基づく噴射パルスの他に増量補正用の追加の噴射パルスを発生させる構成であっも良く、また、噴射圧力の調整などであって良く、結果的に噴射供給量を強制的かつステップ的に増減させることができる方法であれば良い。
【0031】
ここで、前記ステップ6における一時的な噴射量の増減補正は、後述するように、燃料性状の検出するために強制的に行わせるものであり、増量補正を行わせる場合には空燃比のリッチ化を、また、減量補正を行わせる場合には空燃比のリーン化を招くことになるが、かかる増減補正を1つの気筒のみで行わせるから、運転性への影響を最小限に抑制できることになる。
【0032】
また、次のステップ7では、前記特定気筒における噴射量の増量・減量補正を開始させたタイミング、即ち、前記特定気筒の吸気系に噴射供給される燃料量がステップ的に増大又は減少変化したタイミングでタイマー(t)を起動させる。一方、ステップ3で、スタータがOFFされてからの経過時間が所定時間以上になっていると判別されると、ステップ8へ進み、前記噴射量の強制的な補正を行った特定気筒を判別し、次のステップ9では、前記特定気筒における筒内圧の積分値Piに変動が発生したか否かを判別する。
【0033】
前記積分値Piは、前記特定気筒に設けられる筒内圧センサ16で検出される筒内圧Pを少なくとも爆発行程を含む所定積分区間で積分した値である。
そして、強制的な燃料増量補正を行った場合には、前記ステップ9では前記積分値Piが所定以上に増大変化した時点を検知し、強制的な燃料減少補正を行った場合には、前記ステップ9では前記積分値Piが所定以上に減少変化した時点を検知させる。
【0034】
ステップ9で積分値Piの変動が検知されると、ステップ10へ進み、その時点におけるタイマー(t)の計測時間(ステップ的な噴射量補正からの経過時間)を、燃料の重軽質(気化率)を示すパラメータとしてデータ〔t〕にセットする。
即ち、燃料を機関吸気系に供給しても、それが全てそのままシリンダ内に吸引されるのではなく、燃料の気化率に応じて吸気通路内壁や吸気バルブなどに付着する燃料が発生する。例えば燃料が重質で気化率が低いと、供給された燃料のうち前記付着燃料となる割合(付着率)が高くなり、燃料供給量をステップ的に変化させてもかかるステップ変化に対応してシリンダ吸入混合気の空燃比が変化するまでに大きな応答遅れを生じる。逆に、燃料性状が軽質で気化率が高い場合には、付着率が低くなり、燃料供給量のステップ的な変化に対して応答良くシリンダ吸入混合気の空燃比変化が生じることになる。
【0035】
従って、燃料供給量をステップ的に変化させたときに、かかるステップ変化に対応する空燃比変動が検出されるまでの時間がそのときの使用燃料の重軽質に相関することになる。ここで、シリンダに吸入される混合気の空燃比が変化すると燃焼圧(筒内圧)が変化することになるので、シリンダ内の空燃比を直接的に検出する代わりに、シリンダ内に吸引された混合気の空燃比に相関する運転状態パラメータとして筒内圧を検出させる構成とした。
【0036】
ステップ10で燃料噴射量のステップ的変化に対する燃焼圧(空燃比)変化の応答遅れ時間〔t〕をサンプリングすると、ステップ11では、前記応答遅れ時間〔t〕を燃料性状(重軽質)を示すパラメータに変換する。
そして、ステップ12では、前記燃料の重軽質を示すパラメータに基づいて前記水温増量補正係数KTWや加速増量補正係数KACC の初期値(重質燃料に適合されている値)を修正する処理を行い、燃料性状が検出された後は、使用燃料で要求される必要最小限の増量補正が実行されるようにする。
【0037】
上記のように、本実施例によると、使用燃料の性状(重軽質)検出が、一時的な燃料噴射量の増大補正又は減少補正と、該補正結果がシリンダ内の空燃比状態の変化として検知されるまでの時間計測とによって行われるから、早期に燃料性状を特定することが可能である。また、燃料性状が早期に検出されて水温増量補正係数KTWや加速増量補正係数KACC がそのときの使用燃料に適合するように早期に修正されれば、該修正によって得られる排気性状の改善効果を増大させることが可能となる。
【0038】
また、前記強制的な噴射量の補正を、空燃比が大幅にリッチ側に設定される始動後増量補正中に行わせるから、たとえ減少補正を実行させても当該気筒の燃焼性が大幅に悪化することを回避できる。
更に、スタータのOFFから所定時間以上経過していることを噴射量の強制補正を行う条件とするから、始動動作終了直後の不安定状態で噴射量の補正がなされてしまうことも回避できる。
【0039】
また、噴射量の強制的な補正を一部の気筒のみで然も短時間で終了させることができるから、増量補正を行わせる場合であっても、排気性状への影響を充分に小さくできる。
また、燃料噴射量をステップ的に変化させて、かかる噴射量のステップ的変化に対応する燃焼圧(空燃比)変化が発生するまでの時間を計測させる構成であり、前記燃焼圧の変化の有無は比較的容易に検出できることから、運転条件に左右されることが少なく、また、外乱があっても比較的安定して燃料性状を検出することが可能であり、特に、本実施例のように筒内圧積分値Piに基づいて空燃比変化を捉える構成であれば、明確かつ容易に空燃比変化を検出できる。
【0040】
尚、前記ステップ11において検出された燃料性状(重軽質)のデータは、イグニッションスイッチのOFFによって消滅させても良いが、機関の停止中に給油が行われなかった場合には、燃料性状に変化はないもののと見做して前回の運転時に検出した燃料性状データをそのまま継続的に使用させるようにしても良い。ところで、上記実施例では、通常の噴射量の強制的な増大又は減少補正を開始したタイミングから、該補正に対応する空燃比変動(燃焼圧変化)が生じるまでの時間を計測させたが、強制的に発生させる噴射量のステップ的変化は、上記のように通常噴射量からの増大又は減少変化に限定されるものではなく、強制的に補正された噴射量から通常の噴射量にステップ的に戻すタイミングで時間計測を起動させ、前記通常噴射量に戻したことに対応する空燃比変化がシリンダ内で生じるまでの時間を計測させる構成であっても良い (詳細は特願平6−29312号参照) 。
【0041】
また、コントロールユニット12は、筒内圧に基づいて失火の有無も診断するようになっている。
このような筒内圧に基づいて燃料性状を判定して燃料増量の補正を行ったり、失火診断を行ったりするシステムにおいて、コントロールユニット12は筒内圧センサ16の異常の有無を自己診断する。
【0042】
図3のフローチャートは、該コントロールユニット12による筒内圧センサの自己診断及び診断結果に応じたフェールセーフ制御を示す。
尚、本実施例において、非燃焼状態検出手段,診断手段,フェールセーフ手段としての機能は、前記図6のフローチャートに示すようにコントロールユニット12がソフトウェア的に備えている。
【0043】
図6のフローチャートにおいて、まず、ステップ21では、筒内圧センサ16の出力をA/D変換して筒内圧Pを読み込む。
ステップ22では、1気筒の1燃焼サイクル間に読み込まれたn個の筒内圧Pを積分し、平均有効圧Piとして算出する。
ステップ23では、クランキング中か否かをスタータスイッチ17がONであるか否かによって判定する。クランキング中と判定された場合は、ステップ24へ進み前記ステップ22で算出された平均有効圧Piをクランキング中の平均有効圧Pisとしてセットする。
【0044】
ステップ23でクランキング中ではないと判定された場合は、ステップ25へ進み完爆状態となったか否かを判定する。そして、完爆状態となったと判定されるとステップ26へ進む。
ステップ26では、前記完爆後の平均有効圧Piから前記クランキング中の平均有効圧Pisを差し引いた値を、所定値ΔPi1と比較する。
【0045】
そして、 (Pi−Pis) ≧ΔPi1と判定されたときは、完爆後の爆発によって発生する筒内圧がクランキング中の非燃焼状態での空気圧縮により発生する筒内圧に比較して十分大きいことが筒内圧センサ16によって正常に検出されていると判断し、ステップ27にて筒内圧センサ16は正常であると診断する。一方、 (Pik−Pis) <ΔPiと判定されたときは、筒内圧センサ16が前記完爆後の筒内圧とクランキング中の筒内圧との大きな偏差を捉えていないため、ステップ28にて筒内圧センサ16に異常を生じていると診断する。
【0046】
以上の診断が請求項2に係る発明の診断に相当する。
このようにして始動を経た後ステップ29へ進み、所定の減速運転時に行われる燃料供給停止 (燃料カット) 中か否かを判定する。
そして、燃料カット中であると判定された場合はステップ30へ進み、ステップ22で算出された平均有効圧Piを燃料カット中の平均有効圧Pifとしてセットする。
【0047】
また、燃料カット中ではなく燃料供給が行われる通常運転中ととてされた場合はステップ31へ進み、クランク角センサ14によって検出される機関回転速度Neと機関の負荷を表す基本燃料噴射量TP とを読み込む。
ステップ32では前記機関回転速度Neと基本燃料噴射量TP とで定まる運転状態が所定の領域 (Ne, TP ) に属しているか否かを判定する。
【0048】
そして、属していると判定された場合にはステップ33〜35へ進み、前記ステップ26〜28と同様に通常運転中の平均有効圧Pi と燃料カット中の平均有効圧Pifとを比較して、前者が後者より所定値ΔPi2以上大きければ、筒内圧センサ16は正常と診断し、所定値ΔPi2未満であれば筒内圧センサ16は異常であると診断する。
【0049】
以上の診断が請求項3に係る発明の診断に相当する。
尚、ステップ27, 28における診断結果の後にステップ34, 35の診断結果が出るので、後者の診断結果が優先されることは勿論であり、ステップ27, 28における診断結果は、ステップ27, 28の診断結果が出るまでの間活かされることとなる。このようにして筒内圧センサ16の診断結果が得られた後、ステップ36へ進んで診断結果の判別を行い、正常である場合は、このルーチンを終了するが、異常であるときは、ステップ37へ進み、筒内圧に基づく燃料の重軽質の判定を停止して強制的に重質であると判定すると共に、同じく筒内圧に基づく失火診断を停止する。即ち、筒内圧センサ16が異常と診断されたときは、筒内圧の検出結果に信頼性が無いため、重軽質判定を停止して重質と強制判定することにより少なくとも燃料増量の不足を防止して加速性能等を確保すると共に、失火診断による誤制御を防止するものである。
【0050】
このようなフェールセーフ機能が請求項4に係る発明に相当する。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る発明の自己診断装置によれば、燃焼時の筒内圧と非燃焼時の筒内圧とを較することにより、筒内圧センサの異常の有無を容易に診断することができる。
また、クランキング時における着火前の状態や燃料カット時を非燃焼状態として検出すれば強制的に非燃焼状態を創らなくて済む。
【0052】
また、請求4の発明に係るフェールセーフ装置では、筒内圧センサに異常があると判定されたときは、筒内圧に基づく制御を安全サイドに導いて、排気浄化性能の悪化等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に係る発明の構成を示すブロック図。
【図2】請求項4に係る発明のブロック図。
【図3】請求項1及び請求項4に係る発明の一実施例を示すシステム概略図。
【図4】燃料性状検出制御を示すフローチャート。
【図5】前記燃料性状検出制御における制御特性を示すタイムチャート。
【図6】請求項1〜請求項4に係る発明の一実施例の制御を示すフローチャート。
【図7】従来の燃料性状検出制御の様子を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 機関
6 燃料噴射弁
12 コントロールユニット
16 筒内圧センサ
17 スタータスイッチ
Claims (4)
- 内燃機関の筒内圧力を検出する筒内圧センサの異常を自己診断する装置において、機関の非燃焼状態を検出する非燃焼状態検出手段と、前記筒内圧センサが1燃焼サイクル間に検出する複数の筒内圧力を平均化した平均筒内圧力を算出する手段と、算出された燃焼時と非燃焼状態の平均筒内圧力とを比較し、燃焼時の平均筒内圧力が非燃焼時の平均筒内圧力より所定割合以上大きいときは筒内圧センサが正常、それ以外のときは筒内圧センサが異常であると診断する診断手段と、を含んで構成されたことを特徴とする筒内圧センサの自己診断装置。
- 前記非燃焼状態検出手段によって検出される非燃焼状態が、クランキング状態を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の筒内圧センサの自己診断装置。
- 前記非燃焼状態検出手段によって検出される非燃焼状態が、機関への燃料供給が停止される所定の運転状態を含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の筒内圧センサの自己診断装置。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載された装置によって筒内圧センサが異常であると診断されたときに、該筒内圧に基づく制御を安全サイドへクランプするフェールセーフ手段を備えたことを特徴とする内燃機関における筒内圧に基づく制御のフェールセーフ装置。
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