JP3541928B2 - 電気ブレーキの制御方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流モータ等の電気ブレーキを用いて車両を停止させる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。特には、坂道発進で摩擦ブレーキを解除した際に電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止させることのできる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鉄道車両用のブレーキとして、電気ブレーキ、摩擦ブレーキ、流体ブレーキなどが用いられている。このうち電気ブレーキの代表的なものは、駆動電動機を発電機として電流を発生して車軸に制動トルクを与え車両を減速及び停止させるものである。また、摩擦ブレーキは、圧縮空気や油圧などによって機械的に制輪子を車軸やブレーキディスクなどに押し付けて摩擦力を発生させ車両を減速及び停止させるものである。また、流体ブレーキは、油などの流体を回転翼などで攪拌し、その際の抵抗力をブレーキ力として車両を減速及び停止させるものである。
【0003】
ここで、走行中の電気車などの鉄道車両を停止させる場合、まず電気ブレーキによって徐々に減速し、最後に摩擦ブレーキによって物理的に車軸などを固定して停止させている。その後、車両の発進の際には、摩擦ブレーキを解除して、力行動作を行っている。
【0004】
この車両の発進の際には、例えば、力行操作部と制動操作部が別々の車両においては、力行操作部から所定の力行をかけた後、制動操作部で摩擦ブレーキによる車両の停止制動を解除している。また、力行操作部と制動操作部が一体となった1ハンドルの車両においては、制動(摩擦ブレーキ)状態から中立(N:ニュートラル)を経て、力行状態へハンドルを移行させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の車両の発進においては、力行操作部と制動操作部が別々の車両の場合、勾配のある線路上で車両を発進させる際に、制動操作部で車両の停止制動を解除する前に力行操作部から勾配に釣り合う力行をかける必要があるが、この力行動作は、人の判断によって行われているため、勾配と釣り合う前に車両の停止制動を解除した場合、車両が後退してしまうおそれがあった。
【0006】
また、力行操作部と制動操作部が一体となった1ハンドルの車両の場合には、制動(摩擦ブレーキ)状態から力行状態へハンドルを移行させる際に、中立(N:ニュートラル)を経ているため、勾配のある線路上で車両を発進させる際は、必ず車両の後退が生じていた。
【0007】
本発明はこのような背景の中でなされたものであって、勾配区間であっても車両の後退を生じずに発進することができる電気ブレーキの制御方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御方法は、 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって; (a)車両の質量Mの情報を得、 (b)該質量Mと平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/Mを算出し、 (c)勾配区間における停止直前の車両の減速度αuを測定し、 (d)平坦区間における減速度α0と勾配区間における停止直前の減速度αuとから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=Mgsinθを算出し、 (e)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第2の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両の質量と平坦区間における車両の制動トルクから平坦区間での車両の減速度を算出し、 (b)勾配区間における停止直前の車両の減速度を測定し、 (c)平坦区間における減速度と勾配区間における停止直前の減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (d)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (e)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)平坦区間における車両の減速度と、勾配区間における停止直前の車両の減速度とを得、 (b)平坦区間における減速度と勾配区間における停止直前の減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0011】
上述した本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御方法においては、ステップ(a)で、車両の質量情報から平坦区間における車両の減速度を算出し、勾配区間における停止直前の車両の減速度を測定によって得る、ようにしてもよく、または、測定によって平坦区間における車両の減速度と勾配区間における停止直前の車両の減速度とを得る、ようにしてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第4の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)M0を得、 (b)基準車両重量M0と平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/M0を算出し、 (c)車両が停止する線路の勾配θの情報を得、 (d)勾配θの勾配区間における車両の停止直前の減速度αuを測定し、 (e)基準車両重量M0の場合の平坦区間での減速度α0と、勾配θの勾配区間における停止直前の減速度αuとから、実際の車両重量Mを算出し、 (f)該車両重量Mと勾配θから、勾配区間の勾配θと釣り合う停止トルクFuを算出し、 (g)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、 (h)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第5の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と平坦区間における制動トルクとから平坦区間での車両の減速度を算出し、 (b)勾配区間の勾配情報を得、 (c)該勾配区間における車両の停止直前の減速度を測定し、 (d)基準車両重量の場合の平坦区間での減速度と、勾配区間における停止直前の減速度とから、実際の車両重量を算出し、 (e)該車両重量と勾配区間の勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出し、 (f)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (g)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第6の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と、平坦区間での車両の減速度と、勾配区間の勾配情報と、該勾配区間における車両の停止直前の減速度とから実際の車両重量を算出し、 (b)該車両重量と勾配区間の勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出し、 (c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第7の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0を測定し、 (b)勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1を測定し、 (c)第1の制動トルクF0での減速度αu0と第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、 (d)第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、 (e)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第8の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度を測定し、 (b)勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度を測定し、 (c)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (d)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (e)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第9の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、第2の制動トルクでの車両の減速度を測定し、 (b)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、(d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0018】
上述した本発明の第7乃至9の態様の電気ブレーキの制御方法においては、 第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ようにしてもよい。このとき、第1の制動トルクは、第2の制動トルクよりも大にするとよい。
【0019】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第10の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両の質量Mの情報を得、 (b)該質量Mに応じた制動トルクF0を算出し、 (c)算出した制動トルクF0を生じさせるためのトルク分電流Iq0と磁束分電流Id0とを電気ブレーキに与えて車軸に制動トルクF0を発生し、 (d)車両が第1の速度V1になったときに、磁束分電流の値をId0からIdsに徐々に増加させ、 (e)車両が第2の速度V2(V2<V1)になったときに、トルク分電流の値をIq0から0に徐々に変化させて、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流Idsを記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している磁束分電流Idsを電気ブレーキに与えて、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第11の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両の質量に応じた制動トルクを生じさせるためのトルク分電流と磁束分電流とを電気ブレーキに与えて車軸に制動トルクを発生し、 (b)車両が第1の速度になったときに、磁束分電流の値を徐々に増加させ、 (c)車両が前記第1の速度よりも遅い第2の速度になったときに、トルク分電流を徐々に減少して、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流を記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している磁束分電流を電気ブレーキに与えて、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0021】
上述した本発明の第10及び11の態様の電気ブレーキの制御方法においては、 磁束分電流の増加は、電気ブレーキの固定子側に所定の値以上の電圧を印加することによって行う、ようにするとよい。このとき、所定の値以上の電圧は、発生する磁束が最大値の70%以上となるような磁束分電流を生じさせることのできる電圧にするとよい。
【0022】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって; 車両の質量Mの情報を記憶する記憶手段と、 記憶手段に記憶されている質量Mと平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/Mを算出する手段と、 勾配区間における停止直前の車両の減速度αuを測定する手段と、 平坦区間における減速度α0と勾配区間における停止直前の減速度αuとから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=Mgsinθを算出する手段と、 停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、 電気入力Iqsを電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 記憶手段は、算出された電気入力Iqsを記憶し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0023】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第2の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両の質量と平坦区間における制動トルクから、平坦区間での車両の減速度(平坦減速度)を算出する手段と、 勾配区間における停止直前の車両の減速度(勾配減速度)を測定する手段と、 平坦減速度と勾配減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0024】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御装置は、 平坦区間における車両の減速度(平坦減速度)と、勾配区間における停止直前の車両の減速度(勾配減速度)とを得る減速度獲得手段と、 平坦減速度と勾配減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0025】
上述した本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御装置において、 減速度獲得手段は、平坦減速度を車両の質量情報から算出し、勾配減速度を測定によって得る、ようにしてもよく、または、平坦減速度と勾配減速度を測定によって得る、ようにすることもできる。
【0026】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第4の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)M0を記憶する記憶手段と、 記憶手段に記憶されている基準車両重量M0と平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/M0を算出する手段と、 車両が停止する線路の勾配θの情報を得る手段と、 勾配θの勾配区間における車両の停止直前の減速度αuを測定する手段と、 減速度α0と減速度αuとから、実際の車両重量Mを算出する手段と、 車両重量Mと勾配θから、勾配区間の勾配θと釣り合う停止トルクFuを算出する手段と、 停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、 電気入力Iqsを電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 記憶手段は、算出された電気入力Iqsを記憶し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0027】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第5の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と平坦区間における制動トルクとから平坦区間での車両の減速度(平坦減速度)を算出する手段と、 勾配区間の勾配情報を得る手段と、 該勾配区間における車両の停止直前の減速度(勾配減速度)を測定する手段と、 平坦減速度と勾配減速度とから、実際の車両重量を算出する手段と、 車両重量と勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0028】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第6の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と、平坦区間での車両の減速度と、勾配区間の勾配情報と、該勾配区間における車両の停止直前の減速度とから実際の車両重量を算出する手段と、 車両重量と勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0029】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第7の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクFが車軸に与えられたときに、該制動トルクFでの車両の減速度αを測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量Mを算出する車両重量算出手段と、 車両が停止する勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFuを算出する停止トルク算出手段と、 停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、 制動トルクFと減速度αとを関連付けて記憶し、且つ、電気入力Iqsを記憶する記憶手段と、 電気入力Iqsを電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0と、該勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1とを測定し、 記憶手段は、第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1とを記憶し、 車両重量算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両の車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、 停止トルク算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量算出手段で算出された車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0030】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第8の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量を算出する車両重量算出手段と、 車両が停止する勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する停止トルク算出手段と、 停止トルク算出手段で算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を算出する手段と、 電気入力を記憶する記憶手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度とを測定し、 車両重量算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度とから、車両の車両重量を算出し、 停止トルク算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度と、車両重量算出手段で算出された車両重量から、勾配と停止トルクを算出し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0031】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第9の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量と、車両が停止する勾配区間の勾配と、該勾配に釣り合う停止トルクとを算出する算出手段と、 停止トルク算出手段で算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を算出する手段と、 電気入力を記憶する記憶手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0032】
上述した本発明の第9の態様の電気ブレーキの制御装置において、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度とを測定し、 算出手段は、第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度とから、車両重量と、勾配と、停止トルクとを算出する、ようにすることができる。
【0033】
また、上述した本発明の第7乃至第9の態様の電気ブレーキの制御装置において、 第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ようにすることができる。このとき、第1の制動トルクは、第2の制動トルクよりも大にするとよい。
【0034】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第10の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両の質量Mの情報と該質量Mに応じた制動トルクF0を記憶する記憶手段と、 記憶手段に記憶した制動トルクF0を生じさせるための電流を電気ブレーキに与える電流発生手段と、 車両の速度Vtを測定する速度測定手段と、 記憶手段、電流発生手段、及び速度測定手段を制御する制御手段と、を備え、 電流発生手段は、トルク分電流Iqを発生するトルク分電流手段と、磁束分電流Idを発生する磁束分電流発生手段とを有し、 制御手段は、速度測定手段によって測定された車両の速度が第1の速度V1になったとき、磁束分電流発生手段から発生する磁束分電流Idの値がId0からIdsに増加するように磁束分電流発生手段を制御し、速度測定手段によって測定された車両の速度が第2の速度V2になったとき、トルク分電流発生手段から発生するトルク分電流Iqの値がIq0から0になるようにトルク分電流発生手段を制御し、且つ、トルク分電流Iqの値が0のときの磁束分電流Idsを記憶手段に記憶し、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している磁束分電流Idsを、磁束分電流発生手段から発生するように磁束分電流発生手段を制御する、ことを特徴とする。
【0035】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第11の態様の電気ブレーキの制御装置は、 制動トルクを生じさせるための電流を電気ブレーキに与える電流発生手段と、 車両の速度を測定する速度測定手段と、 電流発生手段及び速度測定手段を制御する制御手段と、を備え、 電流発生手段は、トルク分電流を発生するトルク分電流手段と、磁束分電流を発生する磁束分電流発生手段とを有し、制御手段は、速度測定手段によって測定された車両の速度が第1の速度になったとき、磁束分電流発生手段から発生する磁束分電流の値が増加するように磁束分電流発生手段を制御し、速度測定手段によって測定された車両の速度が第2の速度になったとき、トルク分電流発生手段から発生するトルク分電流の値が0になるようにトルク分電流発生手段を制御し、且つ、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流を記憶手段に記憶し、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している磁束分電流を、磁束分電流発生手段から発生するように磁束分電流発生手段を制御する、ことを特徴とする。
【0036】
上述した本発明の第10及び11の態様の電気ブレーキの制御装置において、制御手段は、電気ブレーキの固定子側に所定の値以上の電圧を印加することによって磁束分電流を増加するように磁束分電流発生手段を制御する、ようにすることができる。このとき、制御手段は、発生する磁束が最大値の70%以上となるような磁束分電流を生じさせることのできる電圧を印加するように制御するとよい。
【0037】
上述の本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置においては、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを求め、それに応じた電気入力を算出して記憶しておき、勾配のある線路上で車両を発進させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えるため、摩擦ブレーキを解除しても車両の後退を防止することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0039】
まず、鉄道車両(以下、単に「車両」とも言う)の車両重量が既知で、該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が未知の場合について、図1〜図5を参照して説明する。なお、車両の重量は、不変の車両本体重量と乗客や荷物等の積載重量の和である。後者は、例えば、車体を支える空気バネの圧力から推定することができる。あるいは、別途の車体重量センサを設置して検出することもできる。
【0040】
図1は、本発明の電気ブレーキ制御装置を使用した電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、電気ブレーキ制御装置10と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。
【0041】
ここで、電気ブレーキ制御装置10は、同装置10の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、トルク発生装置16にトルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)で構成される加速度測定部14とを備えている。
【0042】
図2は、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方の一例を示す概略図である。ここで、線路の平坦区間としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この平坦区間で複数の任意の車両重量Mに応じた減速度を求めておくようにする。まず、この車両1は、最初一定速度V0で走行しているものとする。この状態から、平坦区間で速度0になるまで減速するときの減速度α0を制御部11によって求める。この減速度α0は、以下の数式で求めることができる。
【0043】
数式1
M・α0=F0=k・φ・Iq0
∴ α0=F0/M=k・φ・Iq0/M
ここで、Mは車両1の実重量、kは比例定数、φは磁束、Iq0は車輪2の車軸にトルクを生じるためのトルク分電流を示す。
【0044】
なお、車両の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、車両の減速動作は、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18から制御部11への信号に応じて行われる。また、車両1の実重量Mは、乗客などが乗車していない場合の車両1の重量(ノミナル重量)M0に基づいて、車両1に設けられている重量センサ19(図1)によって、減速度測定の際の車両1の重量Mを測定または推定して求めることができる。この重量センサ19によって求められた車両の重量Mは、メモリ12に記憶され、所定のタイミング、例えば、各駅の発車直後などで更新することができる。
【0045】
また、車両重量Mに応じた平坦区間での減速度α0の求め方としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された平坦区間で、車両1のノミナル重量M0に基づいて上述の数式1で基準減速度α(α=F0/M0)を求めてメモリ12に記憶しておき、重量センサ19によって求められた車両重量Mとノミナル重量M0の比で基準減速度αを演算して、車両重量Mに応じた平坦区間での減速度α0を算出するようにしてもよい。
【0046】
ここで、トルク分電流発生回路13で派生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図2においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図2のように車両1を減速する場合に発生するトルク電流Iq0は、負の値となる。したがって、数1によって求められる減速度α0も負の値となる。
【0047】
図3は、平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。この図においては、ブレーキ入力部18(図1参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、図1に示した電気ブレーキシステムによる平坦区間における車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下になった場合、徐々にトルク分電流Iqを0に近づけていくようにブレーキ入力部18を操作している。このようにして、平坦区間では、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0048】
上述のようにして求められた減速度α0は、車両1の電気ブレーキ・システムを制御する電気ブレーキ制御装置10(図1)に設けられているメモリ12(図1)に記憶される。
【0049】
図4は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両の停止状態を維持するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。また、図5は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図5においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキ・システム(図1)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0050】
この車両1は、最初一定速度V0'で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ:θは未知数)での減速度αuをディジタル・フィルタ回路(D/F)で構成される加速度測定部14で測定する(図5参照)。この勾配区間で測定された減速度αuは、メモリ12に記憶される。次に、メモリ12に記憶されている勾配区間での減速度αuと平坦区間での減速度α0とを使用して以下の式により未知数である勾配角度θを算出する(図4参照)。
【0051】
ここで、Mは車両1の実重量、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0052】
上述のようにして、未知数であった勾配角度θを求めることができる。この数2の結果を基にして、制御部11は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図3参照)。
【0053】
ここで、Mは車両1の実重量、Fuは停止トルク、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0054】
上述のようにして求められた停止トルク分電流Iqsは、制御部11によってメモリ12に記憶される。
【0055】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0056】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶している上述の数3で求めた停止トルク分電流Iqs=Iq0(1−αu/α0)を読み出す。そして、制御部11は、該停止トルク分電流Iqsをトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクFuが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0057】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0(1−αu/α0)を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0058】
次に、車両の車両重量Mが未知で、該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が既知の場合について、図6〜図10を参照して説明する。なお、線路の勾配情報は、新幹線の全長の区間及び在来線の全駅で、線路の位置に応じた情報として得ることができる。
【0059】
図6は、本発明の電気ブレーキ制御装置を使用した電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、図1で示した電気ブレーキシステムと次の点を除いて同じ構成である。すなわち、電気ブレーキ制御装置10の制御装部11が、重量センサ19(図1)の換わりに列車信号受信機等の信号受信機20に接続されている点のみで図1と相違している。
【0060】
図7は、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方を示す概略図である。図2との相違点は、この減速度α0を計測する際に、車両重量を乗客等が乗車していない車両重量(ノミナル重量)M0の場合に求めることである。ここで、車両1のノミナル重量M0は、予めメモリ12に記憶されている。なお、このときの車両の走行速度の測定と車両の減速動作は、図1で示した場合と同様である。
【0061】
車両1は、最初一定速度V0で走行しているものとし、この状態から、平坦区間で速度0になるまで減速するときの減速度α0を制御部11によって、図2と同様にして求める。この減速度α0は、数1のMにM0を代入して以下ように求めることができる。
【0062】
数式4
α0=k・φ・Iq0/M0
ここで、M0は車両1のノミナル重量、kは比例定数、φは磁束、Iq0は車輪2の車軸にトルクを生じるためのトルク分電流を示す。
【0063】
図8は、平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。この図8は、上述の図3と同様に、平坦区間において車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止することを示している。
【0064】
上述のようにして求められた減速度α0は、車両1の電気ブレーキシステムを制御する電気ブレーキ制御装置10(図6)に設けられているメモリ12(図6)に記憶される。
【0065】
図9は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。また、図10は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図10においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキシステム(図6)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0066】
この車両1は、最初一定速度V0'で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ)での減速度αuをディジタル・フィルタ回路(D/F)で構成される加速度測定部14で測定する(図10参照)。この勾配区間で測定された減速度αuは、メモリ12に記憶される。また、勾配区間の勾配角度θは、予め所定の区間毎にメモリ12に記憶しておくことができる。また、区間情報として予め距離情報(位置情報)と勾配角度θの対応テーブル(図示せず)をメモリ12に記憶しておき、所定の間隔で線路上に接地している情報装置(図示せず)から距離情報を信号受信機20で受信してその距離情報から対応テーブルを参照し、勾配角度θを得るようにしてもよい。次に、メモリ12に記憶されている勾配区間での減速度αuと、平坦区間での減速度α0と、車両1のノミナル重量M0と、勾配角度θを使用して未知数である車両1の実重量Mを算出する。この車両1の実重量Mは、以下の数式で求めることができる(図9参照)。
【0067】
ここで、Mは車両1の実重量、M0は車両1のノミナル重量、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0068】
上述のようにして、未知数であった車両1の実重量Mを求めることができる。この数5の結果を基にして、制御部11は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図8参照)。
【0069】
ここで、Mは車両1の実重量、M0は車両1のノミナル重量、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0070】
上述のようにして求められた停止トルク分電流Iqsは、制御部11によってメモリ12に記憶される。
【0071】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0072】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶している上述の数6で求めた停止トルク分電流Iqs=Iq0・{g・sinθ/(αu+g・sinθ)}を読み出す。そして、制御部11は、該停止トルク分電流Iqsをトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクFuが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0073】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0・{g・sinθ/(αu+g・sinθ)}を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0074】
以上、本発明の電気ブレーキ制御装置及び電気ブレーキ制御方法の形態例を示たが、電気ブレーキ制御装置10に重量センサと信号受信機の両方を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて重量センサと信号受信機のどちらか一方を使用するようにしてもよく、両方のセンサを使用して停止トルク分電流Iqsをそれぞれ求め、一方をメインの値、他の一方を補正値として使用して、又はそれらの平均値で、より精度よく車両の停止状態を維持するようにすることもできる。
【0075】
次に、本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置の他の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、車両の重量、及び該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が未知の状況である。
【0076】
図11は、本発明の電気ブレーキの制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)を用いた電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、制御装置110と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。
【0077】
ここで、制御装置110は、同装置110の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、トルク発生装置16にトルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14と、未知量を算出する算出部119とを備えている。
【0078】
以下、上述した図7及び図8を用いて、本発明による制動トルクに対する車両の減速度及びトルク分電流の基本的な求め方を示す。なお、図7において、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度(加速度)の求め方を説明する。ここで、線路の平坦区間としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この平坦区間で車両重量がノミナル重量(乗客等が乗車していない車両重量)M0における複数の制動トルクに対する車両1の減速度及びトルク分電流を求めておくようにする。ここで、車両1のノミナル重量M0は、予めメモリ12(図11)に記憶されている。
【0079】
図7において、この車両1は、最初一定速度V0で走行している。この状態から、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ5ノッチで、平坦区間で速度0になるまで減速する。図11において、まず、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18からブレーキ5ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、ブレーキ5ノッチの信号に応じて、トルク分電流発生回路13を制御する。トルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じてトルク分電流Iq0を制動トルク発生装置16に対して発生する。制動トルク発生装置16は、このトルク分電流Iq0に応じて、駆動部17を駆動する。車両1の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、このときの減速度α0は、加速度測定部14で測定して求めることができる。この制動トルクF0と、減速度α0と、トルク分電流Iq0との関係は、以下の数式7で示すことができる。
【0080】
数式7
M0・α0=F0=k・φ・Iq0
ここで、kは比例定数、φは磁束、M0は車両のノミナル重量を示す。この数式7によって、算出部119は、減速度α0、トルク分電流Iq0から、ブレーキ5ノッチに対応する制動トルクF0を求めることができる。
【0081】
ここで、トルク分電流発生回路13で発生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図7においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図7のように車両1を減速する場合に発生するトルク電流Iq0は、負の値となる。したがって、加速度測定部14で求められる減速度α0も負の値となる(数式7参照)。
【0082】
図8は、平坦区間及びノミナル重量での車両のトルク分電流Iqと車両速度Vtを示している。この図においては、ブレーキ入力部18(図11参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、図11に示した電気ブレーキシステムによる平坦区間における車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下になった場合、徐々にトルク分電流Iqを0に近づけていくようにブレーキ入力部18を操作している。このようにして、平坦区間では、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0083】
上述のようにして求められた、ブレーキ5ノッチに対応する制動トルクF0、減速度α0、及びトルク分電流Iq0は、車両1の制御装置110(図11)に設けられているメモリ12(図11)に記憶される。
【0084】
次に、上述と同様にして、一定速度V0で走行している車両1を所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ4ノッチで平坦区間で速度0になるまで減速する。図11において、まず、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18からブレーキ4ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、ブレーキ4ノッチの信号に応じて、トルク分電流発生回路13を制御する。トルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じてトルク分電流Iq1を制動トルク発生装置16に対して発生する。制動トルク発生装置16は、このトルク分電流Iq1に応じて、駆動部17を駆動する。車両1の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、このときの減速度α1は、加速度測定部14で測定して求めることができる。また、制動トルクF1、減速度α1、及びトルク分電流Iq1は、上述の数式1の関係を満たし、制動トルクF1は、算出部19で上述と同様にして求められる。
【0085】
上述のようにして求められた、ブレーキ4ノッチに対応する制動トルクF1、減速度α1、及びトルク分電流Iq1は、車両1の制御装置110(図11)に設けられているメモリ12(図11)に記憶される。また、このとき、算出部119でブレーキノッチの出力比(制動トルクの比)δ=F1/F0=Iq1/Iq0を求めておき、メモリ12(図11)に記憶しておく。
【0086】
図12は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。図12(a)は、上述の例で示したブレーキ5ノッチ(制動トルクF0)のときの状態を示し、図12(b)は、上述の例で示したブレーキ4ノッチ(制動トルクF1)のときの状態を示す。
【0087】
また、図13は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図13においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキシステム(図11)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0088】
この車両1は、最初一定速度V0'で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ5ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、このブレーキ5ノッチの信号に応じてトルク分電流回路13を制御し、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ:θは未知数)での減速度αu0をディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14で測定する(図13参照)。この勾配区間で測定された減速度αu0は、メモリ12に記憶される。
【0089】
次に、ブレーキ入力部18を操作して、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ4ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、このブレーキ4ノッチの信号に応じてトルク分電流回路13を制御し、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間での減速度αu1をディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14で測定する(図13参照)。この勾配区間で測定された減速度αu1は、メモリ12に記憶される。
【0090】
次に、メモリ12に記憶されているブレーキ5ノッチの制動トルクF0と減速度αu0、及びブレーキ4ノッチの制動トルクF1と減速度αu1とを使用して、算出部119は、以下の数式8により未知数である車両1の実際の車両量重Mを算出する(図12参照)。
【0091】
数式8
M・αu0=F0−M・g・sinθ (ブレーキ5ノッチ)
M・αu1=F1−M・g・sinθ (ブレーキ4ノッチ)
∴ M=(F0−F1)/(αu0−αu1)
ここで、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0092】
上述のようにして、未知数であった車両1の実際の車両量重Mを求めることができる。この車両1の実際の車両量重Mは、メモリ12に記憶される。この数式8の結果(車両量重M)を基にして、算出部119は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図12参照)。
【0093】
ここで、Fuは停止トルク、δは制動トルク比(F1/F0)、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0094】
上述のようにして算出部119で算出された停止トルク分電流Iqsは、制御部11によってメモリ12に記憶される。
【0095】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0096】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶している上述の数6で求めた停止トルク分電流Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)を読み出す。そして、制御部11は、該停止トルク分電流Iqsをトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクFuが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0097】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0098】
以上、本発明の電気ブレーキの制御装置の形態例を示たが、制御装置110に重量センサや勾配情報を得るための信号受信機を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて重量センサや信号受信機を使用して、実際の車両重量Mや勾配θを求めることができる。この場合には、これらのセンサを使用して停止トルク分電流Iqs'を求め、この停止トルク分電流Iqs'を補正値として使用して、又は、算出部119で求めた停止トルク分電流Iqsと停止トルク分電流Iqs'との平均値でより精度よく車両の停止状態を維持するようにすることもできる。
【0099】
また、上述においては、ブレーキ入力部18から入力される所定のブレーキノッチをブレーキ5ノッチとブレーキ4ノッチで説明したが、本発明においては、異なる任意のブレーキノッチの組み合わせ、例えば、ブレーキ5ノッチとブレーキ3ノッチ、ブレーキ4ノッチとブレーキ2ノッチ等にすることができる。
【0100】
次に、本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置の他の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0101】
図14は、本発明の電気ブレーキの制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)を用いた電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、制御装置140と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。また、制御装置140は、ブレーキ入力部18に接続されている。
【0102】
ここで、制御装置140は、同装置140の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、制動トルク発生装置16に制動トルク電流を発生する制動トルク電流発生回路131と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14とを備えている。また、制動トルク電流発生回路131は、磁束分電流を発生する磁束分電流発生回路132と、トルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13とを備えている。なお、制動トルク電流発生回路131から制動トルク発生装置16に供給される制動トルク電流は、制御部11の制御の下、磁束分電流発生回路132で発生した磁束分電流とトルク分電流発生回路13で発生したトルク分電流とを重畳して、トルク分電流発生回路13から供給するとよい。
【0103】
以下、車両の制動トルクや減速度の求め方の一例として、図2を用いて説明する。ここで、測定区間としては、例えば、車両の製造工場等に敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この区間で複数の任意の車両重量Mに応じた制動トルクや減速度を求めておくようにする。まず、この車両1は、最初一定速度V0で走行しているものとする。この状態から、速度0になるまで減速するときの減速度α0を制御部11によって求める。この減速度α0は上述したの数式1(α0=F0/M=k・φ・Iq0/M)で求めることができる。
【0104】
このようにして求められた、制動トルクF0、減速度α0、及びトルク分電流Iq0は、車両1の制御装置140(図14)に設けられているメモリ12(図14)に記憶される。
【0105】
なお、車両1(図2)の走行速度Vtは、駆動部17(図14)に接続されている速度測定部15(図14)によって測定され、制御部11(図14)に通知している。また、車両1の減速動作は、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18(図14)から制御部11への信号に応じて行われる。また、車両1の実重量Mは、乗客などが乗車していない場合の車両1の重量(ノミナル重量)M0に基づいて、車両1に設けられている重量センサ(図示せず)によって、減速度測定の際の車両1の重量Mを測定または推定して求めることができる。この重量センサによって求められた車両の重量Mは、メモリ12(図14)に記憶され、所定のタイミング、例えば、各駅の発車直後などで更新することができる。
【0106】
また、車両重量Mに応じた制動トルクF0や減速度α0の求め方としては、例えば、車両の製造工場等に敷設された線路上で、車両1のノミナル重量M0に基づいて上述した数式1で基準減速度α(α=F0/M0)を求めてメモリ12に記憶しておき、重量センサによって求められた車両重量Mとノミナル重量M0の比で基準減速度αを演算して、車両重量Mに応じた制動トルクF0や減速度α0を算出するようにしてもよい。
【0107】
ここで、トルク分電流発生回路13で発生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図2においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図2のように車両1を減速する場合に発生するトルク分電流Iq0は、負の値となる。したがって、上述の数1によって求められる減速度α0も負の値となる。
【0108】
次に、制動トルク発生装置16及び駆動部17を有する誘導電動機の回転方程式は、一般に以下のように示すことができる。
数式10
固定子側:V1=R1・I1+d/dt・φ1
回転子側: 0=R2・I2+d/dt・φ2−ω2n・J・φ2
ここで、V1は固定子側(一次側)に印加される電圧(ベクトル値)、R1は固定子側の抵抗値、I1は制動トルク電流発生回路13で固定子側に発生する電流(ベクトル値)、φ1は固定子側で発生する磁束(ベクトル値)、R2は回転子側(二次側)の抵抗値、I2は制動トルク電流発生回路13で回転子側に発生する電流(ベクトル値)、φ2は回転子側で発生する磁束(ベクトル値)、ω2nは回転子の角速度、Jは変代行列(2行×2列:1行1列目=0、1行2列目=1、2行1列目=−1、2行2列目=0)である。なお、固定子側電流I1は、磁束分電流Idとして磁束分電流発生回路13aで発生する電流に相当し、回転子側電流I2は、トルク分電流Iqとしてトルク分電流発生回路13bで発生する電流に相当する。また、回転子側の数式で−ω2n・J・φ2の符号が負となるのは、回転子の回転によって逆起電力が発生するからである。
【0109】
また、上述した数式で表される誘導電動機のトルクτは、以下の数式で示すことができる。
ここで、Npは誘導電動機の極対数(例えば、4極の誘導電動機の場合には極対数は2となる)、I1Tは固定子側(一次側)電流のトランスポーズ転置行列、Jは変代行列、φ1は固定子側で発生する磁束(ベクトル値)、I2Tは回転子側(二次側)電流のトランスポーズ転置行列、φ2は回転子側で発生する磁束(ベクトル値)である。
【0110】
上述の数式10から解るように、固定子側(一次側)に印加される電圧V1を上昇させた場合、制動トルク電流発生回路13で固定子側の電流I1のみ増加し、回転子側(二次側)の電流I2及び磁束φ2は、殆ど変化しない。
【0111】
したがって、制動トルク電流発生回路13で所定値以上の電圧を印加すると、励磁分電流増加により磁束分電流Idのみ増加させるように磁束分電流発生回路132が作用し、固定子側(一次側)の磁束が飽和して鎖交磁束が生じ、固定子側の漏磁束(一次側漏磁束)が増大することになる。この一次側漏磁束によって発生する渦電流と鎖交磁束によって、車両1(図2)の移動しようとする運動を妨げる力が増大することになる。
【0112】
以上のように、固定子側に印加する電圧を所定値以上にすると、励磁分電流が増加して漏磁束が生じ、これによって渦電流と鎖交磁束が発生する。したがって、車両1(図2)の移動しようとする運動を妨げることができる。以下に、この作用を用いた電気ブレーキの制御について具体的に説明する。
【0113】
図15は、固定子側の励磁分電流Iとそれによって生じる磁束φの関係を示す図である。図15において、一般に、磁束φが70%前後の状態を磁束の飽和状態とする。したがって、固定子側には、この磁束φが70%を超えるような値の励磁分電流I(数式2のI1)を生じさせる電圧を印加するようにする。ここで、この磁束が飽和するときの励磁分電流I0dの値は、誘導電動機のモータに依存するため、予めこの電流値I0d又はこの電流値I0dを生じるための印加電圧の値V0dをメモリ12(図14)に記憶しておくとよい。
【0114】
図16は、車両1(図2)が速度V0から0になるまでの車両速度Vtと、トルク分電流発生回路13から発生するトルク分電流Iqと、磁束分電流発生回路132から発生する磁束分電流Idとの関係を時間軸を基に示したものである。図16においては、ブレーキ入力部18(図14参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。
【0115】
以下、車両1の停止制御の動作について説明する。まず、車両1は、速度V0で走行している。ここで、ブレーキ入力部18からブレーキ信号が制御部11に入力されると、制御部11は、予め測定し記憶していた減速度(加速度α0)になるように制動トルク電流発生回路131を制御する。制動トルク電流発生回路131の磁束分電流発生回路132とトルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じて、それぞれ磁束分電流Id0とトルク分電流Iq0を発生し、制動トルク発生装置16は、この磁束分電流Id0とトルク分電流Iq0に応じて駆動部17に制動トルクを生じる。車両1の停止行程において、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、10km/h以下になった場合、制御部11は、制動トルク電流発生回路131の磁束分電流発生回路132から生じる磁束分電流Idを徐々にId0からIdsになるように制御する。また、速度測定部15での測定速度が所定の速度V2以下、例えば、5km/h以下になった場合、制御部11は、制動トルク電流発生回路131のトルク分電流発生回路13から生じるトルク分電流Iqを徐々に0になるように制御する。このようにして、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0116】
上述のようにして求められたトルク分電流Igsは、停止トルク分電流として制御部11によってメモリ12に記憶される。また、磁束分電流Idsは、停止状態を維持するように働く。
【0117】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0118】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶しているトルク分電流Igs(停止トルク分電流)を読み出す。そして、制御部11は、該トルク分電流Igs(停止トルク分電流)をトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0119】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分電流発生回路13からトルク分電流Igs(停止トルク分電流)を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0120】
以上、本発明の電気ブレーキの制御装置の形態例を示たが、制御装置140に勾配情報を得るための信号受信機を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて信号受信機を使用して、実際の勾配θを求めることができる。この勾配θに応じて、トルク分電流Igsを求め、このトルク分電流Igsを使用してより精度よく車両1の停止状態を維持するようにすることもできる。
【0121】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを算出して発生するため、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両の停止状態を維持することができるようになった。
【0122】
また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、実際の車両重量や勾配が未知数であっても、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを算出することができるため、この停止トルクによって、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両の停止状態を維持することができるようになった。
【0123】
また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、トルク分電流や磁束増大または磁束飽和に伴う漏磁束による渦電流によって車両が動くのを妨げる力を発生することができるため、この転動防止力によって、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両の停止状態を確実に維持することができるようになった。
【0124】
さらに、磁束増大または磁束飽和に伴う漏磁束による渦電流によって車両が動くのを妨げる力を発生する場合、車両用の交流電動機として磁束を飽和させ易く、漏磁束による渦電流を発生し易いアルミフレームの電動機等を使用することができるため、電動機の軽量化を図ることができるようになった。
【0125】
また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、トルク分電流や磁束増大または磁束飽和に伴う漏磁束による渦電流によって、上り勾配の区間であっても、機械ブレーキを払う前に上り勾配に均衡するトルクを発生できるため、車両の後退起動を防止することができる。このため、起動時のショックなどが発生せずスムースに起動することができるようになった。特に、1ハンドル型の所謂「1ハンドルマスコン」の場合には、停止状態から必ず中立状態に移行して起動状態に移るため、この効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電気ブレーキ・システムの実施の一形態を示す概略図である。
【図2】線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方を示す概略図である。
【図3】平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図4】線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するための停止トルク分電流Iqsの求め方を示す概略図である。
【図5】勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図6】本発明による電気ブレーキ・システムの実施の一形態を示す概略図である。
【図7】線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方を示す概略図である。
【図8】平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図9】線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するための停止トルク分電流Iqsの求め方を示す概略図である。
【図10】勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図11】本発明による電気ブレーキ・システムの実施の一形態を示す概略図である。
【図12】線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するための停止トルク分電流Iqsの求め方を示す概略図である。
【図13】勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図14】本発明による電気ブレーキの制御装置の実施の一形態を示す概略図である。
【図15】電動機の固定子側の励磁分電流Iとそれによって生じる磁束φの関係を示す図である。
【図16】車両の速度Vtと、トルク分電流Iqと、磁束分電流Idとの関係を時間軸を基に示す図である。
【符号の説明】
1 車両
2 車輪
10、110、140 車両制御装置
11 制御部
12 メモリ
13 トルク分電流発生回路
14 加速度測定部(D/F)
15 速度測定部
16 制動トルク発生装置
17 駆動部
18 ブレーキ入力部
19 重量センサ
20 信号受信機
119 算出部
131 制動トルク電流発生回路
132 磁束分電流発生回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、直流モータ等の電気ブレーキを用いて車両を停止させる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。特には、坂道発進で摩擦ブレーキを解除した際に電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止させることのできる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、鉄道車両用のブレーキとして、電気ブレーキ、摩擦ブレーキ、流体ブレーキなどが用いられている。このうち電気ブレーキの代表的なものは、駆動電動機を発電機として電流を発生して車軸に制動トルクを与え車両を減速及び停止させるものである。また、摩擦ブレーキは、圧縮空気や油圧などによって機械的に制輪子を車軸やブレーキディスクなどに押し付けて摩擦力を発生させ車両を減速及び停止させるものである。また、流体ブレーキは、油などの流体を回転翼などで攪拌し、その際の抵抗力をブレーキ力として車両を減速及び停止させるものである。
【0003】
ここで、走行中の電気車などの鉄道車両を停止させる場合、まず電気ブレーキによって徐々に減速し、最後に摩擦ブレーキによって物理的に車軸などを固定して停止させている。その後、車両の発進の際には、摩擦ブレーキを解除して、力行動作を行っている。
【0004】
この車両の発進の際には、例えば、力行操作部と制動操作部が別々の車両においては、力行操作部から所定の力行をかけた後、制動操作部で摩擦ブレーキによる車両の停止制動を解除している。また、力行操作部と制動操作部が一体となった1ハンドルの車両においては、制動(摩擦ブレーキ)状態から中立(N:ニュートラル)を経て、力行状態へハンドルを移行させている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の車両の発進においては、力行操作部と制動操作部が別々の車両の場合、勾配のある線路上で車両を発進させる際に、制動操作部で車両の停止制動を解除する前に力行操作部から勾配に釣り合う力行をかける必要があるが、この力行動作は、人の判断によって行われているため、勾配と釣り合う前に車両の停止制動を解除した場合、車両が後退してしまうおそれがあった。
【0006】
また、力行操作部と制動操作部が一体となった1ハンドルの車両の場合には、制動(摩擦ブレーキ)状態から力行状態へハンドルを移行させる際に、中立(N:ニュートラル)を経ているため、勾配のある線路上で車両を発進させる際は、必ず車両の後退が生じていた。
【0007】
本発明はこのような背景の中でなされたものであって、勾配区間であっても車両の後退を生じずに発進することができる電気ブレーキの制御方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御方法は、 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって; (a)車両の質量Mの情報を得、 (b)該質量Mと平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/Mを算出し、 (c)勾配区間における停止直前の車両の減速度αuを測定し、 (d)平坦区間における減速度α0と勾配区間における停止直前の減速度αuとから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=Mgsinθを算出し、 (e)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第2の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両の質量と平坦区間における車両の制動トルクから平坦区間での車両の減速度を算出し、 (b)勾配区間における停止直前の車両の減速度を測定し、 (c)平坦区間における減速度と勾配区間における停止直前の減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (d)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (e)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)平坦区間における車両の減速度と、勾配区間における停止直前の車両の減速度とを得、 (b)平坦区間における減速度と勾配区間における停止直前の減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0011】
上述した本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御方法においては、ステップ(a)で、車両の質量情報から平坦区間における車両の減速度を算出し、勾配区間における停止直前の車両の減速度を測定によって得る、ようにしてもよく、または、測定によって平坦区間における車両の減速度と勾配区間における停止直前の車両の減速度とを得る、ようにしてもよい。
【0012】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第4の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)M0を得、 (b)基準車両重量M0と平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/M0を算出し、 (c)車両が停止する線路の勾配θの情報を得、 (d)勾配θの勾配区間における車両の停止直前の減速度αuを測定し、 (e)基準車両重量M0の場合の平坦区間での減速度α0と、勾配θの勾配区間における停止直前の減速度αuとから、実際の車両重量Mを算出し、 (f)該車両重量Mと勾配θから、勾配区間の勾配θと釣り合う停止トルクFuを算出し、 (g)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、 (h)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第5の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と平坦区間における制動トルクとから平坦区間での車両の減速度を算出し、 (b)勾配区間の勾配情報を得、 (c)該勾配区間における車両の停止直前の減速度を測定し、 (d)基準車両重量の場合の平坦区間での減速度と、勾配区間における停止直前の減速度とから、実際の車両重量を算出し、 (e)該車両重量と勾配区間の勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出し、 (f)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (g)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第6の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と、平坦区間での車両の減速度と、勾配区間の勾配情報と、該勾配区間における車両の停止直前の減速度とから実際の車両重量を算出し、 (b)該車両重量と勾配区間の勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出し、 (c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第7の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0を測定し、 (b)勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1を測定し、 (c)第1の制動トルクF0での減速度αu0と第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、 (d)第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、 (e)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第8の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度を測定し、 (b)勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度を測定し、 (c)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (d)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、 (e)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第9の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、第2の制動トルクでの車両の減速度を測定し、 (b)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、(d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0018】
上述した本発明の第7乃至9の態様の電気ブレーキの制御方法においては、 第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ようにしてもよい。このとき、第1の制動トルクは、第2の制動トルクよりも大にするとよい。
【0019】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第10の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両の質量Mの情報を得、 (b)該質量Mに応じた制動トルクF0を算出し、 (c)算出した制動トルクF0を生じさせるためのトルク分電流Iq0と磁束分電流Id0とを電気ブレーキに与えて車軸に制動トルクF0を発生し、 (d)車両が第1の速度V1になったときに、磁束分電流の値をId0からIdsに徐々に増加させ、 (e)車両が第2の速度V2(V2<V1)になったときに、トルク分電流の値をIq0から0に徐々に変化させて、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流Idsを記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している磁束分電流Idsを電気ブレーキに与えて、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0020】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第11の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)車両の質量に応じた制動トルクを生じさせるためのトルク分電流と磁束分電流とを電気ブレーキに与えて車軸に制動トルクを発生し、 (b)車両が第1の速度になったときに、磁束分電流の値を徐々に増加させ、 (c)車両が前記第1の速度よりも遅い第2の速度になったときに、トルク分電流を徐々に減少して、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流を記憶し、 (f)車両を起動させる際に、記憶している磁束分電流を電気ブレーキに与えて、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、ことを特徴とする。
【0021】
上述した本発明の第10及び11の態様の電気ブレーキの制御方法においては、 磁束分電流の増加は、電気ブレーキの固定子側に所定の値以上の電圧を印加することによって行う、ようにするとよい。このとき、所定の値以上の電圧は、発生する磁束が最大値の70%以上となるような磁束分電流を生じさせることのできる電圧にするとよい。
【0022】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって; 車両の質量Mの情報を記憶する記憶手段と、 記憶手段に記憶されている質量Mと平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/Mを算出する手段と、 勾配区間における停止直前の車両の減速度αuを測定する手段と、 平坦区間における減速度α0と勾配区間における停止直前の減速度αuとから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=Mgsinθを算出する手段と、 停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、 電気入力Iqsを電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 記憶手段は、算出された電気入力Iqsを記憶し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0023】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第2の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両の質量と平坦区間における制動トルクから、平坦区間での車両の減速度(平坦減速度)を算出する手段と、 勾配区間における停止直前の車両の減速度(勾配減速度)を測定する手段と、 平坦減速度と勾配減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0024】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御装置は、 平坦区間における車両の減速度(平坦減速度)と、勾配区間における停止直前の車両の減速度(勾配減速度)とを得る減速度獲得手段と、 平坦減速度と勾配減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0025】
上述した本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御装置において、 減速度獲得手段は、平坦減速度を車両の質量情報から算出し、勾配減速度を測定によって得る、ようにしてもよく、または、平坦減速度と勾配減速度を測定によって得る、ようにすることもできる。
【0026】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第4の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)M0を記憶する記憶手段と、 記憶手段に記憶されている基準車両重量M0と平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/M0を算出する手段と、 車両が停止する線路の勾配θの情報を得る手段と、 勾配θの勾配区間における車両の停止直前の減速度αuを測定する手段と、 減速度α0と減速度αuとから、実際の車両重量Mを算出する手段と、 車両重量Mと勾配θから、勾配区間の勾配θと釣り合う停止トルクFuを算出する手段と、 停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、 電気入力Iqsを電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 記憶手段は、算出された電気入力Iqsを記憶し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0027】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第5の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と平坦区間における制動トルクとから平坦区間での車両の減速度(平坦減速度)を算出する手段と、 勾配区間の勾配情報を得る手段と、 該勾配区間における車両の停止直前の減速度(勾配減速度)を測定する手段と、 平坦減速度と勾配減速度とから、実際の車両重量を算出する手段と、 車両重量と勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0028】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第6の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と、平坦区間での車両の減速度と、勾配区間の勾配情報と、該勾配区間における車両の停止直前の減速度とから実際の車両重量を算出する手段と、 車両重量と勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出する手段と、 停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0029】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第7の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクFが車軸に与えられたときに、該制動トルクFでの車両の減速度αを測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量Mを算出する車両重量算出手段と、 車両が停止する勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFuを算出する停止トルク算出手段と、 停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、 制動トルクFと減速度αとを関連付けて記憶し、且つ、電気入力Iqsを記憶する記憶手段と、 電気入力Iqsを電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0と、該勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1とを測定し、 記憶手段は、第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1とを記憶し、 車両重量算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両の車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、 停止トルク算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量算出手段で算出された車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0030】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第8の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量を算出する車両重量算出手段と、 車両が停止する勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する停止トルク算出手段と、 停止トルク算出手段で算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を算出する手段と、 電気入力を記憶する記憶手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度とを測定し、 車両重量算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度とから、車両の車両重量を算出し、 停止トルク算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度と、車両重量算出手段で算出された車両重量から、勾配と停止トルクを算出し、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0031】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第9の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量と、車両が停止する勾配区間の勾配と、該勾配に釣り合う停止トルクとを算出する算出手段と、 停止トルク算出手段で算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を算出する手段と、 電気入力を記憶する記憶手段と、 電気入力を電気ブレーキに与える電気入力手段と、を備え、 電気入力手段は、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している電気入力を電気ブレーキに与える、ことを特徴とする。
【0032】
上述した本発明の第9の態様の電気ブレーキの制御装置において、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度とを測定し、 算出手段は、第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度とから、車両重量と、勾配と、停止トルクとを算出する、ようにすることができる。
【0033】
また、上述した本発明の第7乃至第9の態様の電気ブレーキの制御装置において、 第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ようにすることができる。このとき、第1の制動トルクは、第2の制動トルクよりも大にするとよい。
【0034】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第10の態様の電気ブレーキの制御装置は、 車両の質量Mの情報と該質量Mに応じた制動トルクF0を記憶する記憶手段と、 記憶手段に記憶した制動トルクF0を生じさせるための電流を電気ブレーキに与える電流発生手段と、 車両の速度Vtを測定する速度測定手段と、 記憶手段、電流発生手段、及び速度測定手段を制御する制御手段と、を備え、 電流発生手段は、トルク分電流Iqを発生するトルク分電流手段と、磁束分電流Idを発生する磁束分電流発生手段とを有し、 制御手段は、速度測定手段によって測定された車両の速度が第1の速度V1になったとき、磁束分電流発生手段から発生する磁束分電流Idの値がId0からIdsに増加するように磁束分電流発生手段を制御し、速度測定手段によって測定された車両の速度が第2の速度V2になったとき、トルク分電流発生手段から発生するトルク分電流Iqの値がIq0から0になるようにトルク分電流発生手段を制御し、且つ、トルク分電流Iqの値が0のときの磁束分電流Idsを記憶手段に記憶し、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している磁束分電流Idsを、磁束分電流発生手段から発生するように磁束分電流発生手段を制御する、ことを特徴とする。
【0035】
また、上記課題を解決するため、 本発明の第11の態様の電気ブレーキの制御装置は、 制動トルクを生じさせるための電流を電気ブレーキに与える電流発生手段と、 車両の速度を測定する速度測定手段と、 電流発生手段及び速度測定手段を制御する制御手段と、を備え、 電流発生手段は、トルク分電流を発生するトルク分電流手段と、磁束分電流を発生する磁束分電流発生手段とを有し、制御手段は、速度測定手段によって測定された車両の速度が第1の速度になったとき、磁束分電流発生手段から発生する磁束分電流の値が増加するように磁束分電流発生手段を制御し、速度測定手段によって測定された車両の速度が第2の速度になったとき、トルク分電流発生手段から発生するトルク分電流の値が0になるようにトルク分電流発生手段を制御し、且つ、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流を記憶手段に記憶し、勾配区間で車両を起動させる際に、記憶手段に記憶している磁束分電流を、磁束分電流発生手段から発生するように磁束分電流発生手段を制御する、ことを特徴とする。
【0036】
上述した本発明の第10及び11の態様の電気ブレーキの制御装置において、制御手段は、電気ブレーキの固定子側に所定の値以上の電圧を印加することによって磁束分電流を増加するように磁束分電流発生手段を制御する、ようにすることができる。このとき、制御手段は、発生する磁束が最大値の70%以上となるような磁束分電流を生じさせることのできる電圧を印加するように制御するとよい。
【0037】
上述の本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置においては、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを求め、それに応じた電気入力を算出して記憶しておき、勾配のある線路上で車両を発進させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えるため、摩擦ブレーキを解除しても車両の後退を防止することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0039】
まず、鉄道車両(以下、単に「車両」とも言う)の車両重量が既知で、該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が未知の場合について、図1〜図5を参照して説明する。なお、車両の重量は、不変の車両本体重量と乗客や荷物等の積載重量の和である。後者は、例えば、車体を支える空気バネの圧力から推定することができる。あるいは、別途の車体重量センサを設置して検出することもできる。
【0040】
図1は、本発明の電気ブレーキ制御装置を使用した電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、電気ブレーキ制御装置10と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。
【0041】
ここで、電気ブレーキ制御装置10は、同装置10の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、トルク発生装置16にトルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)で構成される加速度測定部14とを備えている。
【0042】
図2は、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方の一例を示す概略図である。ここで、線路の平坦区間としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この平坦区間で複数の任意の車両重量Mに応じた減速度を求めておくようにする。まず、この車両1は、最初一定速度V0で走行しているものとする。この状態から、平坦区間で速度0になるまで減速するときの減速度α0を制御部11によって求める。この減速度α0は、以下の数式で求めることができる。
【0043】
数式1
M・α0=F0=k・φ・Iq0
∴ α0=F0/M=k・φ・Iq0/M
ここで、Mは車両1の実重量、kは比例定数、φは磁束、Iq0は車輪2の車軸にトルクを生じるためのトルク分電流を示す。
【0044】
なお、車両の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、車両の減速動作は、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18から制御部11への信号に応じて行われる。また、車両1の実重量Mは、乗客などが乗車していない場合の車両1の重量(ノミナル重量)M0に基づいて、車両1に設けられている重量センサ19(図1)によって、減速度測定の際の車両1の重量Mを測定または推定して求めることができる。この重量センサ19によって求められた車両の重量Mは、メモリ12に記憶され、所定のタイミング、例えば、各駅の発車直後などで更新することができる。
【0045】
また、車両重量Mに応じた平坦区間での減速度α0の求め方としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された平坦区間で、車両1のノミナル重量M0に基づいて上述の数式1で基準減速度α(α=F0/M0)を求めてメモリ12に記憶しておき、重量センサ19によって求められた車両重量Mとノミナル重量M0の比で基準減速度αを演算して、車両重量Mに応じた平坦区間での減速度α0を算出するようにしてもよい。
【0046】
ここで、トルク分電流発生回路13で派生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図2においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図2のように車両1を減速する場合に発生するトルク電流Iq0は、負の値となる。したがって、数1によって求められる減速度α0も負の値となる。
【0047】
図3は、平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。この図においては、ブレーキ入力部18(図1参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、図1に示した電気ブレーキシステムによる平坦区間における車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下になった場合、徐々にトルク分電流Iqを0に近づけていくようにブレーキ入力部18を操作している。このようにして、平坦区間では、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0048】
上述のようにして求められた減速度α0は、車両1の電気ブレーキ・システムを制御する電気ブレーキ制御装置10(図1)に設けられているメモリ12(図1)に記憶される。
【0049】
図4は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両の停止状態を維持するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。また、図5は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図5においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキ・システム(図1)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0050】
この車両1は、最初一定速度V0'で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ:θは未知数)での減速度αuをディジタル・フィルタ回路(D/F)で構成される加速度測定部14で測定する(図5参照)。この勾配区間で測定された減速度αuは、メモリ12に記憶される。次に、メモリ12に記憶されている勾配区間での減速度αuと平坦区間での減速度α0とを使用して以下の式により未知数である勾配角度θを算出する(図4参照)。
【0051】
ここで、Mは車両1の実重量、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0052】
上述のようにして、未知数であった勾配角度θを求めることができる。この数2の結果を基にして、制御部11は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図3参照)。
【0053】
ここで、Mは車両1の実重量、Fuは停止トルク、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0054】
上述のようにして求められた停止トルク分電流Iqsは、制御部11によってメモリ12に記憶される。
【0055】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0056】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶している上述の数3で求めた停止トルク分電流Iqs=Iq0(1−αu/α0)を読み出す。そして、制御部11は、該停止トルク分電流Iqsをトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクFuが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0057】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0(1−αu/α0)を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0058】
次に、車両の車両重量Mが未知で、該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が既知の場合について、図6〜図10を参照して説明する。なお、線路の勾配情報は、新幹線の全長の区間及び在来線の全駅で、線路の位置に応じた情報として得ることができる。
【0059】
図6は、本発明の電気ブレーキ制御装置を使用した電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、図1で示した電気ブレーキシステムと次の点を除いて同じ構成である。すなわち、電気ブレーキ制御装置10の制御装部11が、重量センサ19(図1)の換わりに列車信号受信機等の信号受信機20に接続されている点のみで図1と相違している。
【0060】
図7は、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方を示す概略図である。図2との相違点は、この減速度α0を計測する際に、車両重量を乗客等が乗車していない車両重量(ノミナル重量)M0の場合に求めることである。ここで、車両1のノミナル重量M0は、予めメモリ12に記憶されている。なお、このときの車両の走行速度の測定と車両の減速動作は、図1で示した場合と同様である。
【0061】
車両1は、最初一定速度V0で走行しているものとし、この状態から、平坦区間で速度0になるまで減速するときの減速度α0を制御部11によって、図2と同様にして求める。この減速度α0は、数1のMにM0を代入して以下ように求めることができる。
【0062】
数式4
α0=k・φ・Iq0/M0
ここで、M0は車両1のノミナル重量、kは比例定数、φは磁束、Iq0は車輪2の車軸にトルクを生じるためのトルク分電流を示す。
【0063】
図8は、平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。この図8は、上述の図3と同様に、平坦区間において車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止することを示している。
【0064】
上述のようにして求められた減速度α0は、車両1の電気ブレーキシステムを制御する電気ブレーキ制御装置10(図6)に設けられているメモリ12(図6)に記憶される。
【0065】
図9は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。また、図10は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図10においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキシステム(図6)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0066】
この車両1は、最初一定速度V0'で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ)での減速度αuをディジタル・フィルタ回路(D/F)で構成される加速度測定部14で測定する(図10参照)。この勾配区間で測定された減速度αuは、メモリ12に記憶される。また、勾配区間の勾配角度θは、予め所定の区間毎にメモリ12に記憶しておくことができる。また、区間情報として予め距離情報(位置情報)と勾配角度θの対応テーブル(図示せず)をメモリ12に記憶しておき、所定の間隔で線路上に接地している情報装置(図示せず)から距離情報を信号受信機20で受信してその距離情報から対応テーブルを参照し、勾配角度θを得るようにしてもよい。次に、メモリ12に記憶されている勾配区間での減速度αuと、平坦区間での減速度α0と、車両1のノミナル重量M0と、勾配角度θを使用して未知数である車両1の実重量Mを算出する。この車両1の実重量Mは、以下の数式で求めることができる(図9参照)。
【0067】
ここで、Mは車両1の実重量、M0は車両1のノミナル重量、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0068】
上述のようにして、未知数であった車両1の実重量Mを求めることができる。この数5の結果を基にして、制御部11は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図8参照)。
【0069】
ここで、Mは車両1の実重量、M0は車両1のノミナル重量、αuは勾配区間での減速度、α0は平坦区間での減速度、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0070】
上述のようにして求められた停止トルク分電流Iqsは、制御部11によってメモリ12に記憶される。
【0071】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0072】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶している上述の数6で求めた停止トルク分電流Iqs=Iq0・{g・sinθ/(αu+g・sinθ)}を読み出す。そして、制御部11は、該停止トルク分電流Iqsをトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクFuが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0073】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0・{g・sinθ/(αu+g・sinθ)}を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0074】
以上、本発明の電気ブレーキ制御装置及び電気ブレーキ制御方法の形態例を示たが、電気ブレーキ制御装置10に重量センサと信号受信機の両方を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて重量センサと信号受信機のどちらか一方を使用するようにしてもよく、両方のセンサを使用して停止トルク分電流Iqsをそれぞれ求め、一方をメインの値、他の一方を補正値として使用して、又はそれらの平均値で、より精度よく車両の停止状態を維持するようにすることもできる。
【0075】
次に、本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置の他の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、車両の重量、及び該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が未知の状況である。
【0076】
図11は、本発明の電気ブレーキの制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)を用いた電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、制御装置110と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。
【0077】
ここで、制御装置110は、同装置110の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、トルク発生装置16にトルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14と、未知量を算出する算出部119とを備えている。
【0078】
以下、上述した図7及び図8を用いて、本発明による制動トルクに対する車両の減速度及びトルク分電流の基本的な求め方を示す。なお、図7において、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度(加速度)の求め方を説明する。ここで、線路の平坦区間としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この平坦区間で車両重量がノミナル重量(乗客等が乗車していない車両重量)M0における複数の制動トルクに対する車両1の減速度及びトルク分電流を求めておくようにする。ここで、車両1のノミナル重量M0は、予めメモリ12(図11)に記憶されている。
【0079】
図7において、この車両1は、最初一定速度V0で走行している。この状態から、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ5ノッチで、平坦区間で速度0になるまで減速する。図11において、まず、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18からブレーキ5ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、ブレーキ5ノッチの信号に応じて、トルク分電流発生回路13を制御する。トルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じてトルク分電流Iq0を制動トルク発生装置16に対して発生する。制動トルク発生装置16は、このトルク分電流Iq0に応じて、駆動部17を駆動する。車両1の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、このときの減速度α0は、加速度測定部14で測定して求めることができる。この制動トルクF0と、減速度α0と、トルク分電流Iq0との関係は、以下の数式7で示すことができる。
【0080】
数式7
M0・α0=F0=k・φ・Iq0
ここで、kは比例定数、φは磁束、M0は車両のノミナル重量を示す。この数式7によって、算出部119は、減速度α0、トルク分電流Iq0から、ブレーキ5ノッチに対応する制動トルクF0を求めることができる。
【0081】
ここで、トルク分電流発生回路13で発生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図7においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図7のように車両1を減速する場合に発生するトルク電流Iq0は、負の値となる。したがって、加速度測定部14で求められる減速度α0も負の値となる(数式7参照)。
【0082】
図8は、平坦区間及びノミナル重量での車両のトルク分電流Iqと車両速度Vtを示している。この図においては、ブレーキ入力部18(図11参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、図11に示した電気ブレーキシステムによる平坦区間における車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下になった場合、徐々にトルク分電流Iqを0に近づけていくようにブレーキ入力部18を操作している。このようにして、平坦区間では、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0083】
上述のようにして求められた、ブレーキ5ノッチに対応する制動トルクF0、減速度α0、及びトルク分電流Iq0は、車両1の制御装置110(図11)に設けられているメモリ12(図11)に記憶される。
【0084】
次に、上述と同様にして、一定速度V0で走行している車両1を所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ4ノッチで平坦区間で速度0になるまで減速する。図11において、まず、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18からブレーキ4ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、ブレーキ4ノッチの信号に応じて、トルク分電流発生回路13を制御する。トルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じてトルク分電流Iq1を制動トルク発生装置16に対して発生する。制動トルク発生装置16は、このトルク分電流Iq1に応じて、駆動部17を駆動する。車両1の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、このときの減速度α1は、加速度測定部14で測定して求めることができる。また、制動トルクF1、減速度α1、及びトルク分電流Iq1は、上述の数式1の関係を満たし、制動トルクF1は、算出部19で上述と同様にして求められる。
【0085】
上述のようにして求められた、ブレーキ4ノッチに対応する制動トルクF1、減速度α1、及びトルク分電流Iq1は、車両1の制御装置110(図11)に設けられているメモリ12(図11)に記憶される。また、このとき、算出部119でブレーキノッチの出力比(制動トルクの比)δ=F1/F0=Iq1/Iq0を求めておき、メモリ12(図11)に記憶しておく。
【0086】
図12は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。図12(a)は、上述の例で示したブレーキ5ノッチ(制動トルクF0)のときの状態を示し、図12(b)は、上述の例で示したブレーキ4ノッチ(制動トルクF1)のときの状態を示す。
【0087】
また、図13は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図13においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキシステム(図11)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0088】
この車両1は、最初一定速度V0'で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ5ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、このブレーキ5ノッチの信号に応じてトルク分電流回路13を制御し、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ:θは未知数)での減速度αu0をディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14で測定する(図13参照)。この勾配区間で測定された減速度αu0は、メモリ12に記憶される。
【0089】
次に、ブレーキ入力部18を操作して、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ4ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、このブレーキ4ノッチの信号に応じてトルク分電流回路13を制御し、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間での減速度αu1をディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14で測定する(図13参照)。この勾配区間で測定された減速度αu1は、メモリ12に記憶される。
【0090】
次に、メモリ12に記憶されているブレーキ5ノッチの制動トルクF0と減速度αu0、及びブレーキ4ノッチの制動トルクF1と減速度αu1とを使用して、算出部119は、以下の数式8により未知数である車両1の実際の車両量重Mを算出する(図12参照)。
【0091】
数式8
M・αu0=F0−M・g・sinθ (ブレーキ5ノッチ)
M・αu1=F1−M・g・sinθ (ブレーキ4ノッチ)
∴ M=(F0−F1)/(αu0−αu1)
ここで、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0092】
上述のようにして、未知数であった車両1の実際の車両量重Mを求めることができる。この車両1の実際の車両量重Mは、メモリ12に記憶される。この数式8の結果(車両量重M)を基にして、算出部119は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図12参照)。
【0093】
ここで、Fuは停止トルク、δは制動トルク比(F1/F0)、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0094】
上述のようにして算出部119で算出された停止トルク分電流Iqsは、制御部11によってメモリ12に記憶される。
【0095】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0096】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶している上述の数6で求めた停止トルク分電流Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)を読み出す。そして、制御部11は、該停止トルク分電流Iqsをトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクFuが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0097】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0098】
以上、本発明の電気ブレーキの制御装置の形態例を示たが、制御装置110に重量センサや勾配情報を得るための信号受信機を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて重量センサや信号受信機を使用して、実際の車両重量Mや勾配θを求めることができる。この場合には、これらのセンサを使用して停止トルク分電流Iqs'を求め、この停止トルク分電流Iqs'を補正値として使用して、又は、算出部119で求めた停止トルク分電流Iqsと停止トルク分電流Iqs'との平均値でより精度よく車両の停止状態を維持するようにすることもできる。
【0099】
また、上述においては、ブレーキ入力部18から入力される所定のブレーキノッチをブレーキ5ノッチとブレーキ4ノッチで説明したが、本発明においては、異なる任意のブレーキノッチの組み合わせ、例えば、ブレーキ5ノッチとブレーキ3ノッチ、ブレーキ4ノッチとブレーキ2ノッチ等にすることができる。
【0100】
次に、本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置の他の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0101】
図14は、本発明の電気ブレーキの制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)を用いた電気ブレーキシステムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキシステムは、制御装置140と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。また、制御装置140は、ブレーキ入力部18に接続されている。
【0102】
ここで、制御装置140は、同装置140の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、制動トルク発生装置16に制動トルク電流を発生する制動トルク電流発生回路131と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14とを備えている。また、制動トルク電流発生回路131は、磁束分電流を発生する磁束分電流発生回路132と、トルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13とを備えている。なお、制動トルク電流発生回路131から制動トルク発生装置16に供給される制動トルク電流は、制御部11の制御の下、磁束分電流発生回路132で発生した磁束分電流とトルク分電流発生回路13で発生したトルク分電流とを重畳して、トルク分電流発生回路13から供給するとよい。
【0103】
以下、車両の制動トルクや減速度の求め方の一例として、図2を用いて説明する。ここで、測定区間としては、例えば、車両の製造工場等に敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この区間で複数の任意の車両重量Mに応じた制動トルクや減速度を求めておくようにする。まず、この車両1は、最初一定速度V0で走行しているものとする。この状態から、速度0になるまで減速するときの減速度α0を制御部11によって求める。この減速度α0は上述したの数式1(α0=F0/M=k・φ・Iq0/M)で求めることができる。
【0104】
このようにして求められた、制動トルクF0、減速度α0、及びトルク分電流Iq0は、車両1の制御装置140(図14)に設けられているメモリ12(図14)に記憶される。
【0105】
なお、車両1(図2)の走行速度Vtは、駆動部17(図14)に接続されている速度測定部15(図14)によって測定され、制御部11(図14)に通知している。また、車両1の減速動作は、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18(図14)から制御部11への信号に応じて行われる。また、車両1の実重量Mは、乗客などが乗車していない場合の車両1の重量(ノミナル重量)M0に基づいて、車両1に設けられている重量センサ(図示せず)によって、減速度測定の際の車両1の重量Mを測定または推定して求めることができる。この重量センサによって求められた車両の重量Mは、メモリ12(図14)に記憶され、所定のタイミング、例えば、各駅の発車直後などで更新することができる。
【0106】
また、車両重量Mに応じた制動トルクF0や減速度α0の求め方としては、例えば、車両の製造工場等に敷設された線路上で、車両1のノミナル重量M0に基づいて上述した数式1で基準減速度α(α=F0/M0)を求めてメモリ12に記憶しておき、重量センサによって求められた車両重量Mとノミナル重量M0の比で基準減速度αを演算して、車両重量Mに応じた制動トルクF0や減速度α0を算出するようにしてもよい。
【0107】
ここで、トルク分電流発生回路13で発生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図2においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図2のように車両1を減速する場合に発生するトルク分電流Iq0は、負の値となる。したがって、上述の数1によって求められる減速度α0も負の値となる。
【0108】
次に、制動トルク発生装置16及び駆動部17を有する誘導電動機の回転方程式は、一般に以下のように示すことができる。
数式10
固定子側:V1=R1・I1+d/dt・φ1
回転子側: 0=R2・I2+d/dt・φ2−ω2n・J・φ2
ここで、V1は固定子側(一次側)に印加される電圧(ベクトル値)、R1は固定子側の抵抗値、I1は制動トルク電流発生回路13で固定子側に発生する電流(ベクトル値)、φ1は固定子側で発生する磁束(ベクトル値)、R2は回転子側(二次側)の抵抗値、I2は制動トルク電流発生回路13で回転子側に発生する電流(ベクトル値)、φ2は回転子側で発生する磁束(ベクトル値)、ω2nは回転子の角速度、Jは変代行列(2行×2列:1行1列目=0、1行2列目=1、2行1列目=−1、2行2列目=0)である。なお、固定子側電流I1は、磁束分電流Idとして磁束分電流発生回路13aで発生する電流に相当し、回転子側電流I2は、トルク分電流Iqとしてトルク分電流発生回路13bで発生する電流に相当する。また、回転子側の数式で−ω2n・J・φ2の符号が負となるのは、回転子の回転によって逆起電力が発生するからである。
【0109】
また、上述した数式で表される誘導電動機のトルクτは、以下の数式で示すことができる。
ここで、Npは誘導電動機の極対数(例えば、4極の誘導電動機の場合には極対数は2となる)、I1Tは固定子側(一次側)電流のトランスポーズ転置行列、Jは変代行列、φ1は固定子側で発生する磁束(ベクトル値)、I2Tは回転子側(二次側)電流のトランスポーズ転置行列、φ2は回転子側で発生する磁束(ベクトル値)である。
【0110】
上述の数式10から解るように、固定子側(一次側)に印加される電圧V1を上昇させた場合、制動トルク電流発生回路13で固定子側の電流I1のみ増加し、回転子側(二次側)の電流I2及び磁束φ2は、殆ど変化しない。
【0111】
したがって、制動トルク電流発生回路13で所定値以上の電圧を印加すると、励磁分電流増加により磁束分電流Idのみ増加させるように磁束分電流発生回路132が作用し、固定子側(一次側)の磁束が飽和して鎖交磁束が生じ、固定子側の漏磁束(一次側漏磁束)が増大することになる。この一次側漏磁束によって発生する渦電流と鎖交磁束によって、車両1(図2)の移動しようとする運動を妨げる力が増大することになる。
【0112】
以上のように、固定子側に印加する電圧を所定値以上にすると、励磁分電流が増加して漏磁束が生じ、これによって渦電流と鎖交磁束が発生する。したがって、車両1(図2)の移動しようとする運動を妨げることができる。以下に、この作用を用いた電気ブレーキの制御について具体的に説明する。
【0113】
図15は、固定子側の励磁分電流Iとそれによって生じる磁束φの関係を示す図である。図15において、一般に、磁束φが70%前後の状態を磁束の飽和状態とする。したがって、固定子側には、この磁束φが70%を超えるような値の励磁分電流I(数式2のI1)を生じさせる電圧を印加するようにする。ここで、この磁束が飽和するときの励磁分電流I0dの値は、誘導電動機のモータに依存するため、予めこの電流値I0d又はこの電流値I0dを生じるための印加電圧の値V0dをメモリ12(図14)に記憶しておくとよい。
【0114】
図16は、車両1(図2)が速度V0から0になるまでの車両速度Vtと、トルク分電流発生回路13から発生するトルク分電流Iqと、磁束分電流発生回路132から発生する磁束分電流Idとの関係を時間軸を基に示したものである。図16においては、ブレーキ入力部18(図14参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。
【0115】
以下、車両1の停止制御の動作について説明する。まず、車両1は、速度V0で走行している。ここで、ブレーキ入力部18からブレーキ信号が制御部11に入力されると、制御部11は、予め測定し記憶していた減速度(加速度α0)になるように制動トルク電流発生回路131を制御する。制動トルク電流発生回路131の磁束分電流発生回路132とトルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じて、それぞれ磁束分電流Id0とトルク分電流Iq0を発生し、制動トルク発生装置16は、この磁束分電流Id0とトルク分電流Iq0に応じて駆動部17に制動トルクを生じる。車両1の停止行程において、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、10km/h以下になった場合、制御部11は、制動トルク電流発生回路131の磁束分電流発生回路132から生じる磁束分電流Idを徐々にId0からIdsになるように制御する。また、速度測定部15での測定速度が所定の速度V2以下、例えば、5km/h以下になった場合、制御部11は、制動トルク電流発生回路131のトルク分電流発生回路13から生じるトルク分電流Iqを徐々に0になるように制御する。このようにして、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0116】
上述のようにして求められたトルク分電流Igsは、停止トルク分電流として制御部11によってメモリ12に記憶される。また、磁束分電流Idsは、停止状態を維持するように働く。
【0117】
次に、この車両1が、勾配角度θの勾配区間で停車した後に、再び発進する際の電気ブレーキシステムの動作を説明する。ここで、車両1は、上述した勾配角度θの勾配区間に、摩擦ブレーキ(図示せず)によって停車しているものとする。
【0118】
車両1を再び発進させる場合、まず、摩擦ブレーキの解除信号がブレーキ入力部18から制御部11へ送られる。制御部11は、ブレーキ入力部18からの信号に応じて、メモリ12に記憶しているトルク分電流Igs(停止トルク分電流)を読み出す。そして、制御部11は、該トルク分電流Igs(停止トルク分電流)をトルク分発生回路13から生じるように制御して、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させる。所定の停止トルクが制動トルク発生装置16から駆動部17に発生すると、制御部11は、摩擦ブレーキ(図示せず)を解除する。
【0119】
このようにして、上述の勾配区間において、トルク分電流発生回路13からトルク分電流Igs(停止トルク分電流)を発生することによって、摩擦ブレーキ(図示せず)の解除後もトルク発生装置16からのトルクによって勾配区間で車両1の停止状態を維持することができ、勾配区間での車両1の発進の際に、車両1の後退を防止することができる。
【0120】
以上、本発明の電気ブレーキの制御装置の形態例を示たが、制御装置140に勾配情報を得るための信号受信機を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて信号受信機を使用して、実際の勾配θを求めることができる。この勾配θに応じて、トルク分電流Igsを求め、このトルク分電流Igsを使用してより精度よく車両1の停止状態を維持するようにすることもできる。
【0121】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを算出して発生するため、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両の停止状態を維持することができるようになった。
【0122】
また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、実際の車両重量や勾配が未知数であっても、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを算出することができるため、この停止トルクによって、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両の停止状態を維持することができるようになった。
【0123】
また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、トルク分電流や磁束増大または磁束飽和に伴う漏磁束による渦電流によって車両が動くのを妨げる力を発生することができるため、この転動防止力によって、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両の停止状態を確実に維持することができるようになった。
【0124】
さらに、磁束増大または磁束飽和に伴う漏磁束による渦電流によって車両が動くのを妨げる力を発生する場合、車両用の交流電動機として磁束を飽和させ易く、漏磁束による渦電流を発生し易いアルミフレームの電動機等を使用することができるため、電動機の軽量化を図ることができるようになった。
【0125】
また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、トルク分電流や磁束増大または磁束飽和に伴う漏磁束による渦電流によって、上り勾配の区間であっても、機械ブレーキを払う前に上り勾配に均衡するトルクを発生できるため、車両の後退起動を防止することができる。このため、起動時のショックなどが発生せずスムースに起動することができるようになった。特に、1ハンドル型の所謂「1ハンドルマスコン」の場合には、停止状態から必ず中立状態に移行して起動状態に移るため、この効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電気ブレーキ・システムの実施の一形態を示す概略図である。
【図2】線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方を示す概略図である。
【図3】平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図4】線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するための停止トルク分電流Iqsの求め方を示す概略図である。
【図5】勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図6】本発明による電気ブレーキ・システムの実施の一形態を示す概略図である。
【図7】線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度の求め方を示す概略図である。
【図8】平坦区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図9】線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するための停止トルク分電流Iqsの求め方を示す概略図である。
【図10】勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図11】本発明による電気ブレーキ・システムの実施の一形態を示す概略図である。
【図12】線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するための停止トルク分電流Iqsの求め方を示す概略図である。
【図13】勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。
【図14】本発明による電気ブレーキの制御装置の実施の一形態を示す概略図である。
【図15】電動機の固定子側の励磁分電流Iとそれによって生じる磁束φの関係を示す図である。
【図16】車両の速度Vtと、トルク分電流Iqと、磁束分電流Idとの関係を時間軸を基に示す図である。
【符号の説明】
1 車両
2 車輪
10、110、140 車両制御装置
11 制御部
12 メモリ
13 トルク分電流発生回路
14 加速度測定部(D/F)
15 速度測定部
16 制動トルク発生装置
17 駆動部
18 ブレーキ入力部
19 重量センサ
20 信号受信機
119 算出部
131 制動トルク電流発生回路
132 磁束分電流発生回路
Claims (35)
- 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両の質量Mの情報を得、
(b)該質量Mと平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/Mを算出し、
(c)勾配区間における停止直前の車両の減速度αuを測定し、
(d)平坦区間における減速度α0と勾配区間における停止直前の減速度αuとから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=Mgsinθを算出し、
(e)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、
(f)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両の質量と平坦区間における車両の制動トルクから平坦区間での車両の減速度を算出し、
(b)勾配区間における停止直前の車両の減速度を測定し、
(c)平坦区間における減速度と勾配区間における停止直前の減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出し、
(d)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、
(e)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)平坦区間における車両の減速度と、勾配区間における停止直前の車両の減速度とを得、
(b)平坦区間における減速度と勾配区間における停止直前の減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出し、
(c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、
(d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 前記ステップ(a)は、車両の質量情報から平坦区間における車両の減速度を算出し、勾配区間における停止直前の車両の減速度を測定によって得る、ことを特徴とする請求項3記載の電気ブレーキの制御方法。
- 前記ステップ(a)は、測定によって平坦区間における車両の減速度と勾配区間における停止直前の車両の減速度とを得る、ことを特徴とする請求項3記載の電気ブレーキの制御方法。
- 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)M0を得、
(b)基準車両重量M0と平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での車両の減速度α0=F0/M0を算出し、
(c)車両が停止する線路の勾配θの情報を得、
(d)勾配θの勾配区間における車両の停止直前の減速度αuを測定し、
(e)基準車両重量M0の場合の平坦区間での減速度α0と、勾配θの勾配区間における停止直前の減速度αuとから、実際の車両重量Mを算出し、
(f)該車両重量Mと勾配θから、勾配区間の勾配θと釣り合う停止トルクFuを算出し、
(g)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、
(h)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と平坦区間における制動トルクとから平坦区間での車両の減速度を算出し、
(b)勾配区間の勾配情報を得、
(c)該勾配区間における車両の停止直前の減速度を測定し、
(d)基準車両重量の場合の平坦区間での減速度と、勾配区間における停止直前の減速度とから、実際の車両重量を算出し、
(e)該車両重量と勾配区間の勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出し、
(f)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、
(g)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両が空の状態のときの車両の重量(基準車両重量)と、平坦区間での車両の減速度と、勾配区間の勾配情報と、該勾配区間における車両の停止直前の減速度とから実際の車両重量を算出し、
(b)該車両重量と勾配区間の勾配情報から、勾配区間での車両の停止トルクを算出し、
(c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、
(d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0を測定し、
(b)勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1を測定し、
(c)第1の制動トルクF0での減速度αu0と第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、
(d)第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、
(e)該停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出して記憶し、
(f)車両を起動させる際に、記憶している電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度を測定し、
(b)勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度を測定し、
(c)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、
(d)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、
(e)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、第2の制動トルクでの車両の減速度を測定し、
(b)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、
(c)該停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶し、
(d)車両を起動させる際に、記憶している電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 前記第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、前記第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ことを特徴とする請求項9乃至11記載の電気ブレーキの制御方法。
- 前記第1の制動トルクは、前記第2の制動トルクよりも大であることを特徴とする請求項9乃至12記載の電気ブレーキの制御方法。
- 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両の質量Mの情報を得、
(b)該質量Mに応じた制動トルクF0を算出し、
(c)算出した制動トルクF0を生じさせるためのトルク分電流Iq0と磁束分電流Id0とを電気ブレーキに与えて車軸に制動トルクF0を発生し、
(d)車両が第1の速度V1になったときに、磁束分電流の値をId0から電動機トルクのすべり速度に対する傾きが、Id0のときの1.5〜2倍以上になるような所定の値Idsに増加させ、
(e)車両が第2の速度V2(V2<V1)になったときに、トルク分電流の値をIq0から0に変化させて、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流Idsを記憶し、
(f)車両を起動させる際に、記憶している磁束分電流Idsを電気ブレーキに与えて、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 勾配区間で車両を起動させる際に、電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御方法であって;
(a)車両の質量に応じた制動トルクを生じさせるためのトルク分電流と磁束分電流とを電気ブレーキに与えて車軸に制動トルクを発生し、
(b)車両が第1の速度になったときに、磁束分電流の値を電動機トルクのすべり速度に対する傾きが、Id0のときの1.5〜2倍以上になるような所定の値に増加させ、
(c)車両が前記第1の速度よりも遅い第2の速度になったときに、トルク分電流を徐々に減少して、トルク分電流の値が0のときの磁束分電流を記憶し、
(f)車両を起動させる際に、記憶している磁束分電流を電気ブレーキに与えて、勾配のある線路上で車両の停止状態を維持する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。 - 前記磁束分電流の増加は、前記電気ブレーキの固定子側に所定の値以上の電圧を印加することによって行う、ことを特徴とする請求項14又は15記載の電気ブレーキの制御方法。
- 前記所定の値以上の電圧は、発生する磁束が最大値の70%以上となるような磁束分電流を生じさせることのできる電圧である、ことを特徴とする請求項16記載の電気ブレーキの制御方法。
- 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記車両の質量Mの情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記質量Mと平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での前記車両の減速度α0=F0/Mを算出する手段と、
勾配区間における停止直前の前記車両の減速度αuを測定する手段と、
平坦区間における前記減速度α0と勾配区間における停止直前の前記減速度αuとから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=Mgsinθを算出する手段と、
前記停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、前記電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記記憶手段は、算出された前記電気入力Iqsを記憶し、
前記電気入力手段は、勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記車両の質量と平坦区間における制動トルクから、平坦区間での前記車両の減速度(平坦減速度)を算出する手段と、
勾配区間における停止直前の前記車両の減速度(勾配減速度)を測定する手段と、前記平坦減速度と前記勾配減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する手段と、
前記停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、
前記電気入力を前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記電気入力手段は、勾配区間で前記車両を起動させる際に、記憶している前記電気入力を前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
平坦区間における前記車両の減速度(平坦減速度)と、勾配区間における停止直前の前記車両の減速度(勾配減速度)とを得る減速度獲得手段と、
前記平坦減速度と前記勾配減速度とから、勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する手段と、
前記停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、
前記電気入力を前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記電気入力手段は、勾配区間で前記車両を起動させる際に、記憶している前記電気入力を前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 前記減速度獲得手段は、前記平坦減速度を前記車両の質量情報から算出し、前記勾配減速度を測定によって得る、ことを特徴とする請求項20記載の電気ブレーキの制御装置。
- 前記減速度獲得手段は、前記平坦減速度と前記勾配減速度を測定によって得る、ことを特徴とする請求項20記載の電気ブレーキの制御装置。
- 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記車両が空の状態のときの前記車両の重量(基準車両重量)M0を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記基準車両重量M0と平坦区間における制動トルクF0とから平坦区間での前記車両の減速度α0=F0/M0を算出する手段と、
前記車両が停止する線路の勾配θの情報を得る手段と、
前記勾配θの勾配区間における前記車両の停止直前の減速度αuを測定する手段と、
前記減速度α0と前記減速度αuとから、実際の車両重量Mを算出する手段と、
前記車両重量Mと前記勾配θから、勾配区間の前記勾配θと釣り合う停止トルクFuを算出する手段と、
前記停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、
前記電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記記憶手段は、算出された前記電気入力Iqsを記憶し、前記電気入力手段は、勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記車両が空の状態のときの前記車両の重量(基準車両重量)と平坦区間における制動トルクとから平坦区間での前記車両の減速度(平坦減速度)を算出する手段と、
勾配区間の勾配情報を得る手段と、
該勾配区間における前記車両の停止直前の減速度(勾配減速度)を測定する手段と、
前記平坦減速度と前記勾配減速度とから、実際の車両重量を算出する手段と、
前記車両重量と前記勾配情報から、勾配区間での前記車両の停止トルクを算出する手段と、
前記停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、
前記電気入力を前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記電気入力手段は、勾配区間で前記車両を起動させる際に、記憶している前記電気入力を前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記車両が空の状態のときの前記車両の重量(基準車両重量)と、平坦区間での前記車両の減速度と、勾配区間の勾配情報と、該勾配区間における前記車両の停止直前の減速度とから実際の車両重量を算出する手段と、
前記車両重量と前記勾配情報から、勾配区間での前記車両の停止トルクを算出する手段と、
前記停止トルクを生じさせるための電気入力を算出して記憶する手段と、
前記電気入力を前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記電気入力手段は、勾配区間で前記車両を起動させる際に、記憶している前記電気入力を前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
電気ブレーキから制動トルクFが車軸に与えられたときに、該制動トルクFでの車両の減速度αを測定する減速度測定手段と、
前記車両の車両重量Mを算出する車両重量算出手段と、
前記車両が停止する勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFuを算出する停止トルク算出手段と、
前記停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを算出する手段と、
前記制動トルクFと前記減速度αとを関連付けて記憶し、且つ、前記電気入力Iqsを記憶する記憶手段と、
前記電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記減速度測定手段は、前記勾配区間における第1の制動トルクF0での前記車両の減速度αu0と、該勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の前記車両の減速度αu1とを測定し、
前記記憶手段は、前記第1の制動トルクF0での前記減速度αu0と、前記第2の制動トルクF1での前記減速度αu1とを記憶し、
前記車両重量算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクF0での前記減速度αu0と、前記第2の制動トルクF1での前記減速度αu1とから、前記車両の車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、前記停止トルク算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクF0での前記減速度αu0と、前記第2の制動トルクF1での前記減速度αu1と、前記車両重量算出手段で算出された前記車両重量Mから、前記勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う前記停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、
前記電気入力手段は、前記勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、
前記車両の車両重量を算出する車両重量算出手段と、
前記車両が停止する勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する停止トルク算出手段と、
前記停止トルク算出手段で算出した前記停止トルクを生じさせるための電気入力を算出する手段と、
前記電気入力を記憶する記憶手段と、
前記電気入力を前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記減速度測定手段は、前記勾配区間における第1の制動トルクでの前記車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の前記車両の減速度とを測定し、
前記車両重量算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクでの前記減速度と、前記第2の制動トルクでの前記減速度とから、前記車両の車両重量を算出し、
前記停止トルク算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクでの前記減速度と、前記第2の制動トルクでの前記減速度と、前記車両重量算出手段で算出された前記車両重量から、前記勾配と前記停止トルクを算出し、
前記電気入力手段は、前記勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記電気入力を前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、
前記車両の車両重量と、前記車両が停止する勾配区間の勾配と、該勾配に釣り合う停止トルクとを算出する算出手段と、
前記停止トルク算出手段で算出した前記停止トルクを生じさせるための電気入力を算出する手段と、
前記電気入力を記憶する記憶手段と、
前記電気入力を前記電気ブレーキに与える電気入力手段と、
を備え、
前記電気入力手段は、前記勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記電気入力を前記電気ブレーキに与える、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 前記減速度測定手段は、前記勾配区間における第1の制動トルクでの前記車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の前記車両の減速度とを測定し、前記算出手段は、前記第1の制動トルクでの前記減速度と、前記第2の制動トルクでの前記減速度とから、前記車両重量と、前記勾配と、前記停止トルクとを算出する、ことを特徴とする請求項28記載の電気ブレーキの制御装置。
- 前記第1の制動トルクは、前記電気ブレーキの第1のノッチで発生し、前記第2の制動トルクは、前記電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ことを特徴とする請求項26乃至29記載の電気ブレーキの制御装置。
- 前記第1の制動トルクは、前記第2の制動トルクよりも大であることを特徴とする請求項26乃至30記載の電気ブレーキの制御装置。
- 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記車両の質量Mの情報と該質量Mに応じた制動トルクF0を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶した前記制動トルクF0を生じさせるための電流を前記電気ブレーキに与える電流発生手段と、
前記車両の速度Vtを測定する速度測定手段と、
前記記憶手段、前記電流発生手段、及び前記速度測定手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記電流発生手段は、トルク分電流Iqを発生するトルク分電流手段と、磁束分電流Idを発生する磁束分電流発生手段とを有し、
前記制御手段は、前記速度測定手段によって測定された前記車両の速度が第1の速度V1になったとき、前記磁束分電流発生手段から発生する前記磁束分電流Idの値がId0から電動機トルクのすべり速度に対する傾きが、Id0のときの1.5〜2倍以上になるような所定の値Idsに増加するように前記磁束分電流発生手段を制御し、前記速度測定手段によって測定された前記車両の速度が第2の速度V2になったとき、前記トルク分電流発生手段から発生する前記トルク分電流Iqの値がIq0から0になるように前記トルク分電流発生手段を制御し、且つ、前記トルク分電流Iqの値が0のときの磁束分電流Idsを前記記憶手段に記憶し、前記勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記磁束分電流Idsを、前記磁束分電流発生手段から発生するように前記磁束分電流発生手段を制御する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 電気ブレーキに電気入力を与え、該入力に対応した制動トルクを車軸に生じて車両の停止状態を維持する電気ブレーキの制御装置であって;
前記制動トルクを生じさせるための電流を前記電気ブレーキに与える電流発生手段と、前記車両の速度を測定する速度測定手段と、
前記電流発生手段及び前記速度測定手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記電流発生手段は、トルク分電流を発生するトルク分電流手段と、磁束分電流を発生する磁束分電流発生手段とを有し、
前記制御手段は、前記速度測定手段によって測定された前記車両の速度が第1の速度になったとき、前記磁束分電流発生手段から発生する前記磁束分電流の値が電動機トルクのすべり速度に対する傾きが、Id0のときの1.5〜2倍以上になるような所定の値に増加するように前記磁束分電流発生手段を制御し、前記速度測定手段によって測定された前記車両の速度が第2の速度になったとき、前記トルク分電流発生手段から発生する前記トルク分電流の値が0になるように前記トルク分電流発生手段を制御し、且つ、前記トルク分電流の値が0のときの磁束分電流を前記記憶手段に記憶し、前記勾配区間で前記車両を起動させる際に、前記記憶手段に記憶している前記磁束分電流を、前記磁束分電流発生手段から発生するように前記磁束分電流発生手段を制御する、
ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。 - 前記制御手段は、前記電気ブレーキの固定子側に所定の値以上の電圧を印加することによって前記磁束分電流を増加するように前記磁束分電流発生手段を制御する、ことを特徴とする請求項32又は33記載の電気ブレーキの制御装置。
- 前記制御手段は、発生する磁束が最大値の70%以上となるような磁束分電流を生じさせることのできる電圧を印加するように制御する、ことを特徴とする請求項34記載の電気ブレーキの制御装置。
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