JP3540794B2 - 抄紙機ドライヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多孔体ウェブの乾燥のための抄紙機ドライヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日では、抄紙速度2000m/分以上で紙を抄く新聞用紙又は情報用紙向けの高速抄紙機が実用化されている。抄紙機は、原料液を脱水して紙層を形成するフォーマ部、フォーマ部で形成された湿紙ウェブを圧搾して脱水するプレス部、プレス部で脱水された湿紙ウェブを複数のドライヤロールに順次掛け回して加熱乾燥するドライヤ部、ドライヤ部で乾燥された紙の厚さや紙表面の平滑等を調整するカレンダ部、そして完成した紙をロール状に巻き取るリール部からなり、一部サイズ剤を塗工するサイズ部、表面塗工を行うコーター部を持つケースもあるが、このうち抄紙機の高速化にあたっては特にプレスより後工程のドライエンドでの紙切れ対策が重要となる。
【0003】
湿紙ウェブは水分の含有率が高い状態で金属面に押し付けられると紙厚み方向の乾燥不均一や金属表面の吸着層と湿紙ウェブ繊維表面との水酸基間の水素結合に起因して、金属表面に紙が貼り付きやすくなる(スティッキング現象という)。このため、金属面から湿紙ウェブを引き剥がす時には、湿紙ウェブに引張張力を与える必要がある。
【0004】
従来のプレス部はロールニップ又はロールニップとシュープレスを組み合わせた例が一般的であり、ロールから紙を引き剥がす時に大きな引張張力を紙ウェブに与えるため紙切れが生じやすかった。そこで、高速抄紙機のプレス部では常に紙ウェブを2枚のフェルトで挟んで脱水を行う方法に改良され、これにより紙を引き剥がすことがなくなり紙切れが大幅に改善された。
【0005】
一方、ドライヤ部では、紙ウェブはドライヤシリンダ表面にカンバスにより押し付けられながら多数のドライヤロール上を周回する。プレス部同様にドライヤ部においてもドライヤロールから紙を引き剥がすとき、紙ウェブに引張張力を与える必要がある。高速抄紙機でプレス部の紙切れが改善された結果、ドライヤ部、特に湿紙ウェブの水分含有量が高いドライヤ前部での紙切れが著しくなった。このようなドライヤ部、特にドライヤ前部での紙切れ頻度の増大は、高速抄紙機の生産性を低下させてしまう。
【0006】
また、抄紙速度を速くするとウェブがドライヤロールに接している時間が短くなるため、一本あたりのドライヤロールによる乾燥能力は抄紙速度に応じて低下してしまう。このため、所要の乾燥能力を得るためにはドライヤ部の機長を増大してドライヤロールの本数を増やす必要が生じる。すなわち、抄紙機を高速化するにあたってはドライヤ部の機長の増大による初期投資費用の増大という課題もある。
【0007】
このような課題に対応した技術としては、例えば、特表平11−512791号公報に開示された技術が知られている。この技術は、ドライヤ部の入口において紙ウェブを実質的に直線走行させながら衝撃乾燥装置によって乾燥させ、紙ウェブの乾燥がある程度まで進んだ状態でウェブをドライヤ部の第1ドライヤロールに送るようにしたものである。紙ウェブは水分含有量が大きいほどドライヤロールに貼り付きやすいため、このように第1ドライヤロールに送る前に紙ウェブをある程度まで乾燥させることで、紙ウェブのドライヤロールへの貼り付きを抑えて紙ウェブの紙切れを防止することが可能になる。また、ある程度まで乾燥された状態で紙ウェブが送りこまれてくることから、機長を増大してドライヤロールの本数を増やさずとも紙ウェブを所定の乾燥度まで乾燥させることができるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、紙ウェブをドライヤロールから引き離すのに要する剥離力はスティッキングの強さによるが、これは紙ウェブの含有水分量だけでなく紙ウェブとドライヤロールとの温度差にも依存することが分かっている。このことは、紙ウェブとドライヤロールとの間に温度差があると紙ウェブの厚さ方向に乾燥ムラができ、これによるアイロン効果によって紙ウェブがドライヤロールに強く貼り付くことによる。
【0009】
ドライヤロールと真空ロール間の部分でこの貼り付き(スティッキング)が生じない場合には紙ウェブはカンバスにより支持されるが、スティッキングが生じると紙ウェブはカンバスから引き離されて支持を失ってしまう。かつ、紙ウェブのドライヤロールからの剥離点は回転するドライヤロールの同伴流の影響を受けて不安定であるため、高速運転時の安定性は低い。
【0010】
現在の一般的な対策として、ドライヤ前部のドライヤロール温度を低下させて、紙ウェブとドライヤロール間の温度差を小さくすることにより剥離力を低減する方法、もしくは上記のような衝撃乾燥装置を設置して、大きな剥離力を必要としない領域までドライヤ入口水分率を低下させる方法が用いられているが、これらの方法では、高速化すると機長増大のため初期投資費用が増大してしまう。
【0011】
なお、上記従来技術ではドライヤ部に紙ウェブを送り込む前に衝撃乾燥装置での乾燥を行うが、衝撃乾燥装置の雰囲気を制御していないため供給した熱の多くは乾燥のための潜熱になっている。したがって、上記従来技術では、加熱されているとしても乾燥が進んでいる間は紙ウェブの温度はあまり上昇せず、ドライヤロールの温度を下げない限りは紙ウェブとドライヤロールとの間に温度差が生じる可能性が高い。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、ドライヤロールによる乾燥に先立ち紙ウェブ温度を予め昇温するとともに前部のドライヤロール温度を高温化して、ドライヤロールと紙ウェブ間の温度差を小さくして剥離力を低下することで、スティッキングによる紙ウェブの紙切れを防止するとともに乾燥能力を向上させて機長の増大も抑えることを可能にした、抄紙機ドライヤの使用方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の抄紙機ドライヤの使用方法では、プレス部で脱水されたウェブは、まず昇温部により高温度高湿度雰囲気中で加熱されて昇温される。そして、昇温されたウェブは乾燥部に送られてカンバスとともにドライヤロールに順次掛け回され、カンバスによってドライヤロールに押し付けられながら次第に乾燥されていく。
【0014】
高温度高湿度雰囲気中で加熱されることにより乾燥が抑制されるため、ウェブに供給される熱は潜熱ではなく顕熱となってウェブを急速に昇温させる。これにより乾燥部前部のドライヤロール温度を高温化してもウェブとドライヤロールとの温度差は小さいため、スティンキングによるウェブの紙切れが防止され、抄紙機を高速化した場合におけるウェブの走行安定性が向上する。また、乾燥部前部のドライヤロールを昇温部でのウェブの昇温度に応じて高温化するため、ドライヤ全体の乾燥能力が向上し機長の短縮も可能になる。なお、乾燥部前部での高温化の程度は、少なくともウェブ温度との差が小さい範囲内で従来の前部のドライヤロール温度よりも高い温度であればよいが、好ましくは後部のドライヤロール温度に近い温度に設定する。
【0015】
昇温部による加熱は、温度が80〜120℃、相対湿度が50〜100%の雰囲気中で行うのが好ましい。これによりウェブの乾燥を抑えてより速やかに昇温させることができるようになる。また、昇温部によるウェブの昇温温度は、乾燥部の第1ドライヤロールの表面温度付近を目標温度とし、より具体的には70〜120℃の範囲まで昇温させるようにする。上記のようにウェブの紙切れはウェブの含有水分量にも依存しており、ウェブは入口にある第1ドライヤロールにおいて最も含有水分量が多いが、このようにウェブと第1ドライヤロールとの温度差をなくすことでより確実にウェブの紙切れを抑えることができる。また、紙は後述するように70〜120℃(好ましくは90〜100℃)の範囲で維持しながら乾燥させると強度が向上するので、予めこの温度範囲まで昇温させて乾燥部に送り込むことで、紙強度向上を主とした紙品質の向上が可能になる。
【0016】
昇温部では、具体的には、高温度高湿度雰囲気中でウェブに過熱蒸気噴流を当てることによりウェブを加熱して昇温させてもよく、高温度高湿度雰囲気中でウェブに高温高湿度空気噴流を当てることによりウェブを加熱して昇温させてもよい。或いは、高温度高湿度雰囲気中でウェブに高周波を通すことによりウェブを誘電加熱して昇温させてもよい。なお、ウェブの周囲を高温度高湿度雰囲気にするためには、好ましくは、少なくともウェブの走行ルート近傍を蓋って外界と隔離するフードを設けるようにする。
【0017】
さらに、昇温部には、ウェブに含まれる水分を直接或いは間接的に吸引する真空吸引装置を備えてもよい。高温度高湿度雰囲気中での加熱により、ウェブに供給された熱はウェブを乾燥させる潜熱とはならずにウェブの温度を昇温させる顕熱となるが、このように真空吸引装置を設置することでウェブから水分が除去され、ウェブの乾燥を促進させることができる。なお、ここでいう間接的にとは、例えばウェブを支持するカンバスを介して水分を吸引するような場合を意味する。
【0018】
また、乾燥部に関しては、フードにより少なくともウェブの走行ルート近傍を外界と隔離し、フード内の湿度を制御することによりウェブの温度を70〜120℃、好ましくは90〜100℃の範囲に維持しながらウェブの乾燥を行うような構成とするのが好ましい。紙、特に新聞用紙中に含まれるリグニン成分は、紙温度を100℃近くに維持して乾燥させたときに繊維同士の微細なヒゲを接着する効果を発揮する。したがって、フード内の温度湿度制御によってウェブの温度を70〜120℃、好ましくは90〜100℃の範囲に維持しながら乾燥を進めることで、紙強度が向上した高品質の紙を得ることが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(A)第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかる抄紙機ドライヤの構成を示す概略図である。本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、図1に示すように昇温部100と乾燥部101とに分かれて構成され、乾燥部101の入口側に昇温部100が設けられている。そして、図示しないプレス部で脱水された紙ウェブWは昇温部100を通って乾燥部101に送り込まれるようになっている。
【0020】
昇温部100には、ループ状のカンバス105が備えられている。カンバス105は複数の搬送ロール114及び乾燥ロール113によって案内されており、このうちカンバス105の上部を案内する乾燥ロール113はカンバス105が上面側に凸の円弧を描くように配置されている。紙ウェブWはカンバス105の上面によって支持されており、カンバス105に支持された状態で上に凸の緩やかな円弧を描きながら乾燥部100に搬送される。なお、乾燥ロール113はカンバス105を案内すると同時に加熱或いは真空吸引によりカンバス105の水分除去を行う機能も有している。
【0021】
また、紙ウェブWの走行ラインに沿って複数の加熱ユニット106〜112が配置されている。このうち加熱ユニット106〜109は、カンバス105の上方外側に紙ウェブWの上面に向けて並べて配置され、加熱ユニット110〜112は、カンバス105の内側にカンバス105の裏面に向けて並べて配置されている。これら加熱ユニット106〜112としては非接触状態で紙ウェブWを急速加熱する装置を採用することが望ましい。例えば、過熱蒸気や高温高湿の空気を紙ウェブWに向けて噴出する噴流装置を用いることができる。特に過熱蒸気噴流を用いた場合には凝縮効果のために装置を大幅に小型化することができる利点がある。ただし、これらの噴流装置は過熱蒸気や高温高湿度空気を紙ウェブWに当てて紙ウェブWを加熱することを目的とする装置であり、従来技術のように紙ウェブに熱風等を吹き付けて乾燥させる衝撃乾燥装置とは機能上異なった装置である。また、このような噴流装置の他、高周波(マイクロ波等)を通すことによって紙ウェブWを誘電過熱する誘電過熱装置も加熱ユニット106〜112として用いることができる。
【0022】
昇温部100には、紙ウェブWの走行ラインを蓋って外界から隔離するためのフード127が備えられている。このフード127内は図示しない温度湿度制御装置によって温度80〜120℃、相対湿度50〜100%の高温度高湿度状態に保持されている。このような高温度高湿度雰囲気中では紙ウェブWの乾燥が進まないため、加熱ユニット106〜112から紙ウェブWに供給された熱は乾燥のための潜熱とはならず、そのほとんどが顕熱となって紙ウェブWの温度を速やかに昇温させる。本実施形態では、後述する乾燥部101の第1群ドライヤユニット101Aの第1ドライヤロール131aの表面温度に近づけるように、具体的には70〜120℃の範囲まで紙ウェブWの昇温が行われる。なお、フード127内を高温度高湿度雰囲気とし、さらに加熱ユニット106〜112から過熱蒸気や高温高湿度空気が噴射されることで、カンバス105にも多量の水分が含まれていく。そこで、カンバス105の走行ルート上には真空ボックス126が配備されており、カンバス105に含まれた水分を真空吸引して除去できるようになっている。
【0023】
乾燥部101は、直列に接続された第1群から第4群までの4つのドライヤユニット101A〜101Dから構成されている。ドライヤユニット101Aは、複数の真空ロール141a〜141c及びドライヤロール131a〜131cを備えており、真空ロール141a〜141cとドライヤロール131a〜131cとにドライヤカンバス151が交互に掛け回された構造になっている。他のドライヤユニット101B〜101Dも同様の構造を有しており、ドライヤユニット101Bは真空ロール142a〜142c,ドライヤロール132a〜132c及びドライヤカンバス151、ドライヤユニット101Cは真空ロール143a〜143c,ドライヤロール133a〜133c及びドライヤカンバス151、ドライヤユニット101Dは真空ロール144a〜144c,ドライヤロール134a〜134c及びドライヤカンバス151からそれぞれ構成されている。
【0024】
ドライヤカンバス151はループ状であり、上記の真空ロール141a〜144c,ドライヤロール131a〜134c及び複数のカンバスロール161に案内されて回転している。各ドライヤロール131a〜134cはドライヤカンバス151の外側に配置され、各真空ロール141a〜144cはドライヤカンバス151の内側に配置されており、ドライヤカンバス151の上面によって支持される紙ウェブWは、ドライヤカンバス151によってドライヤロール131a〜134cの表面に順に押し付けられながら乾燥されていく。
【0025】
また、乾燥部101には、紙ウェブWの走行ラインを蓋って外界から隔離するためのフード125が備えられている。このフード125内の湿度は、各ドライヤロール131a〜134cでの乾燥中に紙ウェブWの温度が70〜120℃の範囲に維持されるように図示しない温度湿度制御装置によって制御されている。本実施形態ではドライヤ前部のドライヤロールは高温化可能であり、最初の1群ドライヤユニット101A(ドライヤロール131a,131b,131c)の温度(封入蒸気温度)は、後群ドライヤユニット例えば4群ドライヤユニット101D(ドライヤロール134a,134b,134c)の温度(封入蒸気温度)と同一もしくはそれ以上である。なお、本発明は昇温部の設置によって従来との比較において1群ドライヤロールの高温化を可能にしたものである。したがって、1群ドライヤロールの温度を後群ドライヤロールの温度と同等にすることは必須ではなく、従来よりも高温であれば後群ドライヤロールの温度より低くてもよい。
【0026】
このような構成により、昇温部100で70〜120℃の範囲まで昇温された紙ウェブWは、乾燥部101の各ドライヤユニット101A〜101Dを順次通過して紙温度を70〜120℃の範囲に保持されながら乾燥されていく。そして、4群ドライヤユニット101Dの第3ドライヤロール131cを通過して所定の湿度以下まで乾燥された紙ウェブWは、カレンダ162によって紙厚さや表面の平滑等を調整された後、リールドラム163によって巻取紙164に巻き取られていくようになっている。
【0027】
ここで、図2(a)はドライヤロールと紙ウェブとの温度差とスティック量との関係を実験により求めた図であり、図2(b)は上記スティック量の定義を説明するための図である。紙ウェブがドライヤロールに貼り付かない場合には、図2(b)に破線で示すように紙ウェブはドライヤロールと真空ロールとを結ぶ接線に沿って走行する。しかしながら、実際には少なからずスティッキング現象が発生し、図2(b)に実線で示すように紙ウェブは上記接線の接点からドライヤロールの回転方向にずれた位置で分離する。スティック量は上記接点から実際に紙ウェブがドライヤロールから離れた位置までの距離として定義することができ、スティック量が大きいほど紙ウェブをドライヤロールから引き離すための剥離力が必要となり、紙切れ頻度は増大する。
【0028】
このスティック量は、図2(a)に示すようにドライヤロールと紙ウェブとの温度差が大きいほど大きくなることが分かっている。本実施形態では、上記のように昇温部100によって70〜120℃の範囲まで紙ウェブを昇温してから乾燥部101に送り込むので、乾燥部前部のドライヤロール温度を高温化してもドライヤロールと紙ウェブとの温度差を小さくすることができ、スティック量を小さくすることができる。その結果、抄紙機を高速化した場合でもスティッキングによる紙切れを防止して安定した生産が可能になる。
【0029】
また、従来は、スティッキングが生じない水分領域まで紙ウェブとドライヤロール間の温度差を小さくして乾燥する必要があるため、図3(a)に示すように紙ウェブの温度が上昇するまでの間はドライヤロールの温度(封入蒸気温度)を下げざるを得なかったが、昇温部100によって紙ウェブを昇温することにより、乾燥部前部のドライヤロール温度を高温化してもドライヤロールと紙ウェブとの温度差を小さくすることが可能になった。その結果、図4(a)に示すように最初のドライヤロールから最後のドライヤロールまで全てのドライヤロールを高温に設定することが可能になり、乾燥能力を向上させることができるようになった。これは、図3(b)と図4(b)とを比較して分かるように、水分率55%の紙ウェブを水分率10%まで乾燥させるのに従来の方法では28本のドライヤロールが必要であったのに対し、本発明によれば25本のドライヤロールしか必要としないことからも明らかである。
【0030】
また、本実施形態にかかる抄紙機ドライヤによれば、紙強度の高い高品質の紙を製造することも可能になる。ここで、図5は水分率55%の紙ウェブを所定の水分率まで紙温度を約100℃に維持して乾燥した後、紙温度50℃での通常乾燥に切り替えて水分率10%まで乾燥した場合の紙強度(引張強度)を調べた実験結果である。実験では、水分率55%から水分率10%まで終始通常乾燥を行った場合(A)と、ある水分率(28%(B),20%(C),13%(D))で乾燥方法を切り替えた場合と、水分率55%から水分率10%まで終始高温度高湿度乾燥を行った場合(E)とを比較している。本実施形態にかかる抄紙機ドライヤでは、フード125内の温度湿度制御によって乾燥中の紙ウェブの温度は70〜120℃の範囲に維持されるので、図5中のEからもわかるように極めて高い引張強度の紙を得ることができる。なお、この効果は、紙、特に新聞用紙中に含まれるリグニン成分は、湿紙温度を100℃近くに維持して乾燥させたときに繊維同士の微細なヒゲを接着する効果を強く発揮することに起因するものと考えられる。
【0031】
(B)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について図6を用いて説明する。なお、図中において符号2XXで示す部位は、図1において符号1XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。一方、図1において対応する符号1XXが存在しない部位2XXは、本実施形態において新たに設けられた部位であることを示している。ここでは第1実施形態と重複する説明は省略して本実施形態の特徴点について重点的に説明する。
【0032】
本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、第1実施形態とは昇温部の構成に相違がある。すなわち、第1実施形態において紙ウェブWの走行ラインの下側に設置されていた加熱ユニット110〜112(図1参照)に変えて、図6に示すように本実施形態にかかる昇温部200では、紙ウェブWの走行ラインの下側にカンバス205に向けて複数の真空ボックス(真空吸引装置)225を設置している。
【0033】
本実施形態にかかる昇温装置200においても加熱ユニット206〜209から紙ウェブWへ供給された熱は、高温度高湿度雰囲気中での加熱によって紙ウェブWを乾燥させる潜熱とはならずに紙ウェブWの温度を昇温させる顕熱となる。なお、加熱ユニット206〜209として過熱蒸気噴流を用いる時にはカンバス205に凝縮水が付着するが、上記のように真空ボックス225を設置することで、カンバス205に付着した水分は真空ボックス225で吸引して除去される。
【0034】
したがって、本実施形態にかかる抄紙機ドライヤによれば、加熱ユニット206〜209による高温度高湿度雰囲気中での加熱によって紙ウェブWを昇温させることができると同時に、加熱ユニット206〜209として過熱蒸気噴流を用いる時でもカンバス205への凝縮水付着を真空ボックス225による水分の吸引により紙ウェブWの再湿を防止できる。その結果、乾燥部101の各ドライヤロール131a〜131cと紙ウェブWとの温度差を小さくすることができるとともに紙ウェブWの含有水分量も少なくすることができ、乾燥部101での紙ウェブWのスティック量をより小さくして紙切れをより確実に防止することが可能になる。
【0035】
(C)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について図7を用いて説明する。なお、図中において符号3XXで示す部位は、図1において符号3XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。一方、図1において対応する符号1XXが存在しない部位3XXは、本実施形態において新たに設けられた部位であることを示している。ここでは第1実施形態と重複する説明は省略して本実施形態の特徴点について重点的に説明する。
【0036】
本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、第1実施形態とは昇温部の構成に相違がある。すなわち、第1実施形態では、一つのカンバス105によって紙ウェブWの下面を支持しているのに対し(図1参照)、図7に示すように本実施形態にかかる昇温部300では二つのカンバス305a,305bによって紙ウェブWの上下両面を支持しながら搬送するようになっている。
【0037】
紙ウェブWの上面を支持するカンバス305a、紙ウェブWの下面を支持するカンバス305bともにループ状であり、それぞれ複数の搬送ロール314a,314bや乾燥ロール313a,313bによって案内されている。カンバス305bの上部を案内する乾燥ロール313bは、カンバス305bが上面側に凸の円弧を描くように配置されており、他方のカンバス305aは、この上面側に凸の円弧を描いて回転するカンバス305bに紙ウェブWを押し付けるように配置されている。これにより、紙ウェブWは上下両面をカンバス305a,305bに支持された状態で上に凸の緩やかな円弧を描きながら乾燥部101に搬送される。
【0038】
なお、各カンバス305a,305bのループ内には、複数の加熱ユニット306〜308,310〜312が配置されている。加熱ユニット306〜308はカンバス305aの裏面から、加熱ユニット310〜312はカンバス305bの裏面からそれぞれ紙ウェブWを加熱するようになっている。また、各305a,305bの走行ルート上には真空ボックス326a,326bが配備されており、カンバス305a,305bに含まれた水分を真空吸引して除去できるようになっている。
【0039】
抄紙機を高速化する場合には紙ウェブWの走行安定性が重要になるが、本実施形態にかかる抄紙機ドライヤのように二つのカンバス305a,305bによって紙ウェブWの上下両面を支持しながら搬送することで、紙ウェブWの走行安定性を向上させることができ、抄紙機のさらなる高速化にも対応することが可能になる。
【0040】
(D)第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について図8を用いて説明する。なお、図中において符号4XXで示す部位は、図1において符号1XXで示す部位、或いは図6において符号2XXで示す部位、或いは図7において符号3XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。
【0041】
本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、第2実施形態の特徴に第3実施形態の特徴を組み合わせた構成になっている。すなわち、図8に示すように本実施形態にかかる昇温部400では二つのループ状のカンバス405a,405bによって紙ウェブWの走行ラインを形成し、上側カンバス405aのループ内にはカンバス405aの裏面に向けて加熱ユニット406〜408を配置し、下側カンバス405bのループ内にはカンバス405bの裏面に向けて複数の真空ボックス425を配置している。そして、二つのカンバス405a,405bよって紙ウェブWの上下両面を支持しながら搬送するとともに、加熱ユニット406〜408によってカンバス405aの裏面側から紙ウェブWを加熱昇温し、真空ボックス425によってカンバス405bの裏面側から紙ウェブWの水分を吸引するようになっている。
【0042】
したがって、本実施形態にかかる抄紙機ドライヤによれば、第1実施形態の効果に加えて第2,第3実施形態の効果も併せて得ることができる。すなわち、高速走行時の紙ウェブWの走行安定性が向上するとともに、乾燥部101での紙ウェブWのスティック量をより小さくして紙切れをより確実に防止することが可能になる。
【0043】
(E)その他
以上、本発明の四つの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では紙ウェブを加熱する手段として、過熱蒸気噴流装置、高温高湿度空気噴流装置、及び誘電過熱装置を挙げているが、これらはあくまでも例示であって、紙ウェブを加熱する手段はこれらの装置に限定されるものではない。また、上記実施形態では昇温部をフードで蓋っているが、紙ウェブの走行ラインの近傍を高温度高湿度雰囲気に保つことができればフードは必ずしも必須の要素ではない。
【0044】
さらに、本発明は乾燥部の装置構成に依存しない。たとえば、上記実施形態では、紙ウェブの下面のみがドライヤロールに接するようなドライヤロール及び真空ロールの配置になっているが、紙ウェブの上面もドライヤロールに接するようにドライヤロールと真空ロールの配置を途中で入れ換えてもよい。また、本発明は上記実施形態のような所謂シングルフェルトドライヤのみならず、所謂ツーデッキドライヤ或いはダブルフェルトドライヤにも適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、乾燥部での乾燥に先立ち、高温度高湿度雰囲気中でウェブを加熱することによってウェブを乾燥させることなく速やかに昇温させることができるので、乾燥部前部でのドライヤロールとウェブとの温度差を小さくすることができる。その結果、ドライヤロールとウェブとの剥離力を低下させてスティンキングによるウェブの紙切れを防止することができ、紙切れによる生産性の低下を防止することができる。また、乾燥部前部のドライヤロールを昇温部でのウェブの昇温度に応じて高温化できるため、ドライヤ全体の乾燥能力を向上させて機長の増大を抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる抄紙機ドライヤの全体構成を示す概略図である。
【図2】ドライヤロールとウェブとの温度差とスティック量との関係を説明するための図であり、(a)は上記温度差とスティック量との関係を示すグラフ、(b)はスティック量の定義を説明するための図である。
【図3】本発明の効果を説明するための図であり、(a)は従来のドライヤ封入蒸気温度の変化と紙温度の変化とを対比して示すグラフ、(b)は従来の乾燥部での紙水分率の変化を示すグラフである。
【図4】本発明の効果を説明するための図であり、(a)は本発明を適用した場合のドライヤ封入蒸気温度の変化と紙温度の変化とを対比して示すグラフ、(b)は本発明を適用した場合の乾燥部での紙水分率の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の効果を説明するための図であり高温度高湿度乾燥適用後の水分率と紙強度(引張強度)との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる抄紙機ドライヤの要部の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる抄紙機ドライヤの要部の構成を示す概略図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかる抄紙機ドライヤの要部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
100,200,300,400 昇温部
101 乾燥部
101A〜101D ドライヤユニット
105,205,305a,305b,405a,405b カンバス
113,213,313a,313b,413a,413b 乾燥ロール
114,214,314a,314b,414a,414b 搬送ロール
106〜112,206〜209,306〜308,310〜312,406〜408 加熱ユニット
125 フード
126,226,326a,326b,426a,426b 真空ボックス
127 昇温部フード
131a〜131c,132a〜132c,133a〜133c,134a〜134c ドライヤロール
141a〜141c,142a〜142c,143a〜143c,144a〜144c 真空ロール
151 ドライヤカンバス
161 カンバスロール
162 カレンダ
163 リールドラム
164 巻取紙
225,425 真空ボックス
W 紙ウェブ

Claims (7)

  1. 抄紙機のプレス部の下流に設けられて上記プレス部で脱水されたウェブの乾燥を行うべく、複数のドライヤロールを有する乾燥部と、上記乾燥部の入口に設けられた昇温部とをそなえた抄紙機ドライヤの使用方法であって、
    上記昇温部において、高温度高湿度雰囲気中で上記ウェブを加熱して上記ウェブを昇温させ、
    上記乾燥部において、前部のドライヤロール温度を上記昇温部での上記ウェブの昇温度に応じて高温化させ、上記ウェブをカンバスとともに上記ドライヤロールに順次掛け回しつつ上記ウェブを上記ドライヤロールに押し付けて上記ウェブの乾燥を行う
    ことを特徴とする、抄紙機ドライヤの使用方法。
  2. 上記昇温部において、温度が80〜120℃、相対湿度が50〜100%の雰囲気中で上記ウェブを加熱して上記ウェブを昇温させることを特徴とする、請求項1記載の抄紙機ドライヤの使用方法。
  3. 上記昇温部において、上記ウェブの温度を上記乾燥部の第1ドライヤロールの表面温度付近まで昇温させ
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の抄紙機ドライヤの使用方法。
  4. 上記昇温部において、上記ウェブの温度を70〜120℃の範囲まで昇温させる
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤの使用方法
  5. 上記昇温部において、上記ウェブに過熱蒸気噴流を当てることにより上記ウェブを加熱して昇温させ
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤの使用方法
  6. 上記昇温部において、上記ウェブに高温高湿度空気噴流を当てることにより上記ウェブを加熱して昇温させ
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤの使用方法。
  7. 上記昇温部において、上記ウェブに高周波を通すことにより上記ウェブを誘電加熱して昇温させ
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤの使用方法
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