JP2004003045A - 抄紙機ドライヤ - Google Patents

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松尾 毅
Setsuo Suzuki
鈴木 節夫
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Abstract

【課題】抄紙機ドライヤに関し、ウェブとドライヤロールとの温度差を解消することでスティッキングによるウェブの紙切れを防止するとともに、通紙作業を容易にする。
【解決手段】紙ウェブWの走行経路に沿って配置される複数のドライヤロール162,131a,131bを上流側の一又は複数のドライヤロール162からなる予熱部102と下流側の複数のドライヤロール131a,131bからなる乾燥部101とに分け、これら予熱部、乾燥部102,101間に新たに昇温部100を設けるとともに、予熱部102に紙ウェブWの通紙時にテール以外の不用部分を落とす紙落とし部168を設ける。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は多孔体ウェブの乾燥のための抄紙機ドライヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日では、抄紙速度2000m/分以上で紙を抄く新聞用紙又は情報用紙向けの高速抄紙機が実用化されている。抄紙機は、原料液を脱水して紙層を形成するフォーマ部、フォーマ部で形成された湿紙ウェブを圧搾して脱水するプレス部、プレス部で脱水された湿紙ウェブを複数のドライヤロールに順次掛け回して加熱乾燥するドライヤ部、ドライヤ部で乾燥された紙の厚さや紙表面の平滑等を調整するカレンダ部、そして完成した紙をロール状に巻き取るリール部からなり、一部サイズ剤を塗工するサイズ部、表面塗工を行うコーター部を持つケースもあるが、このうち抄紙機の高速化にあたっては特にプレスより後工程のドライエンドでの紙切れ対策が重要となる。
【0003】
湿紙ウェブは水分の含有率が高い状態で金属面に押し付けられると紙厚み方向の乾燥不均一や金属表面の吸着層と湿紙ウェブ繊維表面との水酸基間の水素結合に起因して、金属表面に紙が貼り付きやすくなる(スティッキング現象という)。このため、金属面から湿紙ウェブを引き剥がす時には、湿紙ウェブに引張張力を与える必要がある。
【0004】
従来のプレス部はロールニップ又はロールニップとシュープレスとを組み合わせた例が一般的であり、ロールから紙を引き剥がす時に大きな引張張力を紙ウェブに与えるため紙切れが生じやすかった。そこで、高速抄紙機のプレス部では常に紙ウェブを2枚のフェルトで挟んで脱水を行う方法に改良され、これにより紙を引き剥がすことがなくなり紙切れが大幅に改善された。
【0005】
一方、ドライヤ部では、紙ウェブはドライヤシリンダ表面にカンバスにより押し付けられながら多数のドライヤロール上を周回する。プレス部同様にドライヤ部においてもドライヤロールから紙を引き剥がすとき、紙ウェブに引張張力を与える必要がある。高速抄紙機でプレス部の紙切れが改善された結果、ドライヤ部、特に湿紙ウェブの水分含有量が高いドライヤ前部での紙切れが著しくなった。このようなドライヤ部、特にドライヤ前部での紙切れ頻度の増大は、高速抄紙機の生産性を低下させてしまう。
【0006】
また、抄紙速度を速くするとウェブがドライヤロールに接している時間が短くなるため、一本あたりのドライヤロールによる乾燥能力は抄紙速度に応じて低下してしまう。このため、所要の乾燥能力を得るためにはドライヤ部の機長を増大してドライヤロールの本数を増やす必要が生じる。すなわち、抄紙機を高速化するにあたってはドライヤ部の機長の増大による初期投資費用の増大という課題もある。
【0007】
このような課題に対応した技術としては、例えば、特表平11−512791号公報に開示された技術が知られている。この技術は、ドライヤ部の入口において紙ウェブを実質的に直線走行させながら衝撃乾燥装置によって乾燥させ、紙ウェブの乾燥がある程度まで進んだ状態でウェブをドライヤ部の第1ドライヤロールに送るようにしたものである。紙ウェブは水分含有量が大きいほどドライヤロールに貼り付きやすいため、このように第1ドライヤロールに送る前に紙ウェブをある程度まで乾燥させることで、紙ウェブのドライヤロールへの貼り付きを抑えて紙ウェブの紙切れを防止することが可能になる。また、ある程度まで乾燥された状態で紙ウェブが送りこまれてくることから、機長を増大してドライヤロールの本数を増やさずとも紙ウェブを所定の乾燥度まで乾燥させることができるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術には次のような課題がある。
(1)衝撃乾燥後のスティッキング発生
紙ウェブをドライヤロールから引き離すのに要する剥離力はスティッキングの強さによるが、これは紙ウェブの含有水分量だけでなく紙ウェブとドライヤロールとの温度差にも依存することが分かっている。このことは、紙ウェブとドライヤロールとの間に温度差があると紙ウェブの厚さ方向に乾燥ムラができ、これによるアイロン効果によって紙ウェブがドライヤロールに強く貼り付くことによる。
【0009】
ドライヤロールと真空ロール間の部分でこの貼り付き(スティッキング)が生じない場合には紙ウェブはカンバスにより支持されるが、スティッキングが生じると紙ウェブはカンバスから引き離されて支持を失ってしまう。かつ、紙ウェブのドライヤロールからの剥離点は回転するドライヤロールの同伴流の影響を受けて不安定であるため、高速運転時の安定性は低い。
【0010】
現在の一般的な対策として、ドライヤ前部のドライヤロール温度を低下させて、紙ウェブとドライヤロール間の温度差を小さくすることにより剥離力を低減する方法、もしくは上記のような衝撃乾燥装置を設置して、大きな剥離力を必要としない領域までドライヤ入口水分率を低下させる方法が用いられているが、これらの方法では、高速化すると機長増大のため初期投資費用が増大してしまう。
【0011】
上記従来技術ではドライヤ部に紙ウェブを送り込む前に衝撃乾燥装置での乾燥を行うが、衝撃乾燥装置の雰囲気を制御していないため供給した熱の多くは乾燥のための潜熱になっている。したがって、上記従来技術では、加熱されているとしても乾燥が進んでいる間は紙ウェブの温度はあまり上昇せず、ドライヤロールの温度を下げない限りは紙ウェブとドライヤロールとの間に温度差が生じる可能性が高い。このように、特表平11−512791号公報に記載の衝撃乾燥装置を出た紙温度はプレス工程での紙温度とほぼ同じであるため、衝撃乾燥装置に続くドライヤロールをスティッキングが生じない水分率領域まで低温度に維持する必要がある。そのため、高速化によるドライヤ機長増加が抑制できない。更に、高速化によるドライヤ機長増加の抑制のため、ドライヤ前部のドライヤロール温度を高温化すると、深刻なスティッキングが生じ、高速走行安定性が低下してしまう。
【0012】
(2)紙落とし部の欠如
特表平11−512791号公報に記載のプレス部及びドライヤ部の構成には紙落とし箇所が存在しない。一般的に、通紙作業は、プレス部までの全幅通紙とドライヤ部から後工程でのテール通紙後の全幅紙拡げの2工程で実施される。そのため、ドライヤ部でテール通紙を実施している間に非テール部分の紙ウェブを受けて、これを再び原料ラインに移送するための紙落とし部(ピット)が必要である。しかし、紙落とし箇所がない特表平11−512791号公報に記載のプレス部及びドライヤ部の構成では、ヘッドボックスからリールまで全幅通紙を1工程で実施する必要があるため、操業状態の確立が困難である。
【0013】
(3)ドロー調整が困難
一般的な抄紙機において、プレス部と最初のドライヤロール間において最も大きなドロー(速度差)が必要とされる。特表平11−512791号公報に記載のプレス部及びドライヤ部においては衝撃乾燥装置がその場所に該当し、ここで最も大きなドローが必要となる。特に、抄紙速度の増加とともにドライヤ前部において、密なドロー調整が必要とされる。これは、抄紙速度2000m/分を実現する抄紙機のドライヤ部では、ドライヤ前部の速度調整が1から3本単位のドライヤロールで実施される事から明らかである。
しかしながら、機長の長い円弧状ループを持つ特表平11−512791号公報に記載の衝撃乾燥装置では、ドライヤ前部のドロー調整を詳細に実施する事ができないため、プレス部と衝撃乾燥装置、最初のドライヤロール群間のドロー差が大きくなり、高速走行安定性が得られない。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、スティッキングによる紙ウェブの紙切れを防止するとともに乾燥能力を向上させて機長の増大も抑えることを可能にすると同時に、ドライヤへのテール通紙作業が容易であり、加えてドロー調整が容易に行えるようにした抄紙機ドライヤを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の抄紙機ドライヤは、紙ウェブの走行経路に沿って配置される複数のドライヤロールを上流側の一又は複数のドライヤロールからなる第1ドライヤロール部と下流側の複数のドライヤロールからなる第2ドライヤロール部とに分け、第1ドライヤロール部と第2ドライヤロール部との間に新たに昇温部を設けるとともに、第1ドライヤロール部をシングルドロー形式とし、紙ウェブの通紙時にテール以外の不用部分を切り落とす紙落とし部を設けたことを特徴としている。
【0016】
このような構成により、プレス部で脱水された紙ウェブは、まず、第1ドライヤロール部に入る。最初のテール通紙時には、紙落とし部でテール以外の不用部分は切り落とされる。テールを昇温部、第2ドライヤロール部に順に通してから紙ウェブを全幅まで広げることで、全幅の紙ウェブを容易に通紙させることができる。
【0017】
次に、第1ドライヤロール部を通過した紙ウェブは、昇温部により高温度高湿度雰囲気中で加熱されて昇温される。最も大きなドローが必要とされるプレス部と最初の一又は複数のドライヤロールとの間に昇温部を設置せずに、ドロー調整後の第2ドライヤロール部の前に昇温部を設置することによって、ドライヤの高速安定性は向上する。
【0018】
昇温部で昇温された紙ウェブは第2ドライヤロール部に送られてカンバスとともにドライヤロールに順次掛け回され、カンバスによってドライヤロールに押し付けられながら次第に乾燥されていく。高温度高湿度雰囲気中で加熱されることにより乾燥が抑制されるため、紙ウェブに供給される熱は潜熱ではなく顕熱となって紙ウェブを急速に昇温させる。これにより第2ドライヤロール部前部のドライヤロール温度を第1ドライヤロール部のドライヤロール温度よりも高温化しても、紙ウェブとドライヤロールとの温度差は小さいため、スティッキングによるウェブの紙切れが防止され、抄紙機を高速化した場合におけるウェブの走行安定性が向上する。また、第2ドライヤロール部前部のドライヤロールを昇温部での紙ウェブの昇温度に応じて高温化するため、紙ウェブとドライヤロールとの温度差は小さく、スティッキングによるウェブ断紙頻度が抑制される結果、ドライヤ全体の乾燥能力が向上しドライヤ機長の短縮も可能になる。なお、第2ドライヤロール部前部でのドライヤロールの高温化の程度は、少なくともウェブ温度との差が小さい範囲内で従来のドライヤロール温度よりも高い温度であればよいが、好ましくは後部のドライヤロール温度に近い温度に設定する。
【0019】
昇温部による加熱は、温度が80〜120℃、相対湿度が50〜100%の雰囲気中で行うのが好ましい。これにより紙ウェブの乾燥を抑えてより速やかに昇温させることができるようになる。また、昇温部による紙ウェブの昇温温度は、第2ドライヤロール部の最初のドライヤロールの表面温度付近を目標温度とし、より具体的には70〜120℃の範囲まで昇温させるようにする。上記のように紙ウェブの紙切れは紙ウェブの含有水分量にも依存しており、紙ウェブは入口にある最初のドライヤロールにおいて最も含有水分量が多いが、このように紙ウェブと最初のドライヤロールとの温度差をなくすことでより確実にウェブの紙切れを抑えることができる。また、紙は後述するように70〜120℃(好ましくは90〜100℃)の範囲で維持しながら乾燥させると強度が向上するので、予めこの温度範囲まで昇温させて乾燥部に送り込むことで、紙強度向上を主とした紙品質の向上が可能になる。
【0020】
昇温部としては、具体的には、高温度高湿度雰囲気中で紙ウェブに過熱蒸気噴流を当てることにより紙ウェブを加熱して昇温させるような装置でもよく、高温度高湿度雰囲気中でウェブに高温高湿度空気噴流を当てることにより紙ウェブを加熱して昇温させるような装置でもよい。或いは、高温度高湿度雰囲気中で紙ウェブに高周波を通すことにより紙ウェブを誘電加熱して昇温させるような装置でもよい。好ましくは、紙ウェブに直接接触しない非接触型の加熱装置を用いる。なお、紙ウェブの周囲を高温度高湿度雰囲気にするためには、好ましくは、少なくとも紙ウェブの走行ルート近傍を蓋って外界と隔離するフードを設けるようにする。
【0021】
さらに、昇温部には、紙ウェブに含まれる水分を直接或いは間接的に吸引する真空吸引装置を備えてもよい。高温度高湿度雰囲気中での加熱により、紙ウェブに供給された熱は紙ウェブを乾燥させる潜熱とはならずに紙ウェブの温度を昇温させる顕熱となるが、このように真空吸引装置を設置することで、特に過熱蒸気噴流を紙に衝突させる場合、紙ウェブの昇温速度を向上させる事ができる。なお、ここでいう間接的にとは、例えばウェブを支持するカンバスを介して水分を吸引するような場合を意味する。
【0022】
また、第2ドライヤロール部に関しては、フードにより少なくとも紙ウェブの走行ルート近傍を外界と隔離し、フード内の湿度を制御することにより紙ウェブの温度を70〜120℃、好ましくは90〜100℃の範囲に維持しながら紙ウェブの乾燥を行うような構成とするのが好ましい。紙、特に新聞用紙中に含まれるリグニン成分は、紙温度を100℃近くに維持して乾燥させたときに、繊維間のマイクロフィブリル(繊維表面の微細なヒゲ)を接着する効果を発揮する。したがって、フード内の温度湿度制御によって紙ウェブの温度を70〜120℃、好ましくは90〜100℃の範囲に維持しながら乾燥を進めることで、紙強度が向上した高品質の紙を得ることが可能になる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(A)第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかる抄紙機ドライヤの構成を示す概略図である。また、図2は図1の抄紙機ドライヤを備えた抄紙機のプレス部の一部分からリール部までの構成図である。本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、図1に示すようにプレス部103の下流に配置され、予熱部(第1ドライヤロール部)102と昇温部100と乾燥部(第2ドライヤロール部)101とに分かれて構成されている。この抄紙機ドライヤでは、予熱部102と乾燥部101との間に昇温部100が設けられ、上流のプレス部103で脱水された紙ウェブWは予熱部102から昇温部100を通って乾燥部101に送り込まれるようになっている。
【0024】
抄紙機ドライヤの上流に配置されたプレス部103は、一対のシュープレスロール178とカウンタロール179とを備えている。シュープレスロール178とカウンタロール179とは、フェルト173,紙ウェブW,及び不透水ベルト(トランスファベルト)171を挟んで対向して配置されており、フェルト173と不透水ベルト171とを介して紙ウェブWを圧縮するようになっている。不透水ベルト171とフェルト173とはともにループ状であり、不透水ベルト171は複数のガイドロール172によって案内されている。フェルト173はピックアップロール175と複数のガイドロール174とによって案内され、上流のトランスファベルト180にピックアップロール175によって押し付けられている。
【0025】
このプレス部103では、紙ウェブWはピックアップロール175の真空吸引によってトランスファベルト180上からフェルト173側に吸い付けられ、ピックアップロール175の下流に設けられたトランスファボックス176による真空吸引によってフェルト173に密着させられながら、シュープレスロール178とカウンタロール179とのニップ部に送り込まれる。このニップ部では、紙ウェブWはフェルト173と不透水ベルト171とに挟まれた状態で、シュープレスロール178とカウンタロール179とにより圧縮されて脱水される。紙ウェブWから脱水された水分はフェルト173に吸収され、フェルト173の走行経路に近接して配置された真空ボックス177によってフェルト174から吸引脱水される。脱水された紙ウェブWは不透水ベルト171に張り付き、不透水ベルト171の回転とともに下流へ移送される。
【0026】
予熱部102は、ドライヤロール162と真空ロール163とに掛け回されたカンバス161により紙ウェブWの表面(上面)を支持して搬送するシングルドロー形式のドライヤ群として構成されている。カンバス161はループ状であり、ドライヤロール162,真空ロール163の他、紙ウェブWをプレス部103から受け取るためのピックアップロール166,カンバス161の張力を調整するためのストレッチロール167及び複数のガイドロール165によって案内され、紙ウェブWの裏面をドライヤロール162に押し付けるようにしてドライヤロール162に巻き掛けられている。ドライヤロール162は、セラミック溶射ロールとし、当該ロール表面にAlを主成分としたセラミック溶射によりポーラス層を形成しても良い。なお、セラミック溶射されたドライヤロール表面は、最大粗さ3.2S程度まで研磨仕上げされていることが望ましい。
【0027】
この予熱部102では、紙ウェブWはピックアップロール166の真空吸引によってプレス部103の不透水ベルト171上からカンバス161側に吸い付けられる。抄紙機ではプレス部からドライヤ部への移送部分において最も大きくドローを取る必要があるが、本実施形態の抄紙機ドライヤによれば、不透水ベルト171からカンバス161に紙ウェブWを受け取るときに大きくドローを取ることができるので、紙ウェブのたるみを生じる事なく安定に高速走行できる。
不透水ベルト171上からカンバス161に移送された紙ウェブWは、ピックアップロール166の下流に設けられたトランスファボックス164による真空吸引によってカンバス161に密着させられながらドライヤロール162に送られ、ドライヤロール162の表面で予熱される。予熱された紙ウェブWはカンバス161の回転とともに下流へ移送される。ドライヤロール162から出た紙ウェブWは裏面から支持がなくなりフリー状態になるが、ドライヤロール162の出口部の直下に真空ロール163が配置されており、紙ウェブWは真空ロール163の真空吸引によってカンバス161に吸い付けられ、カンバス161にその表面を支持されながら搬送される。
【0028】
ドライヤロール162の出口部には、紙ウェブWを抄紙機ドライヤに通紙する作業の間にテール以外の不用部分を落とす紙落とし部168が設けられている。
落とされた不用部分の紙は再びパルプ原料として再利用される。紙ウェブWを切断する装置としては、高圧水を用いるものやワイヤを用いるもの等、公知の装置を用いることができる。なお、紙切り装置はドライヤ前行程のフォーマ、プレス部に一般的に設置される。本実施形態の抄紙機ドライヤでのテール通紙作業の手順は次の通りである。
【0029】
まず、ドライヤより前工程に設置された紙切り装置でスリットを入れた全幅紙ウェブを紙落とし部168に落とす。次に、真空ロール163の図示しない真空ブロワを運転し、テール部分を真空ロールに吸引させる。これによりドライヤのテール通紙作業が開始されるが、その間紙ウェブのテール以外の不用部分は紙落とし部168に落とされる。そして、リールまでテール通紙完了後、次第に紙幅を拡げ、操業運転に移行する。
【0030】
したがって、本実施形態の抄紙機ドライヤによれば、昇温部100を予熱部102と乾燥部101との間に導入しても以降のドライヤロール群への紙ウェブWの通紙作業を従来並に行うことができる。
昇温部100には二つの通気性ワイヤ107,113が備えられ、これら二つの通気性ワイヤ107,113によって紙ウェブWを上下両面から挟みながら搬送するようになっている。紙ウェブWの上面を支持する通気性ワイヤ113、紙ウェブWの下面を支持する通気性ワイヤ107ともにループ状であり、上側の通気性ワイヤ113はストレッチロール112や複数のガイドロール114によって案内され、下側の通気性ワイヤ107は同じくストレッチロール110や複数のガイドロール108,109によって案内されている。下側の通気性ワイヤ107の上部を案内するガイドロール108,109は、通気性ワイヤ107が上面側に凸の円弧を描くように配置されており、上側の通気性ワイヤ113は、上面側に凸の円弧を描いて回転する通気性ワイヤ107に紙ウェブWを押し付けるように配置されている。これにより、紙ウェブWは上下両面を通気性ワイヤ113,107に支持された状態で上に凸の緩やかな円弧を描きながら下流の乾燥部101に搬送される。なお、下側通気性ワイヤ107を案内するガイドロール108,109のうち、紙ウェブWの走行経路に沿った最上流と最下流のガイドロール109は、ともに真空ロールとされている。特に上流側のガイドロール109は、紙ウェブWを予熱部102のカンバス161から受け取り通気性ワイヤ107に受け渡すピックアップロールとして機能している。
【0031】
また、紙ウェブWの走行ラインを挟むようにして複数の加熱ユニット105a〜105c,106a〜106cが配置されている。このうち上段の加熱ユニット105a〜105cは、上側の通気性ワイヤ113の内側に通気性ワイヤ113の裏面に向けて並べて配置され、下段の加熱ユニット106a〜106cは、下側の通気性ワイヤ107の内側に通気性ワイヤ107の裏面に向けて並べて配置されている。これら加熱ユニット105a〜105c,106a〜106cとしては非接触状態で紙ウェブWを急速加熱する装置を採用することが望ましい。例えば、過熱蒸気や高温高湿空気を紙ウェブWに向けて噴出する噴流装置を用いることができる。過熱蒸気を用いる場合には、温度100〜450℃,流速20〜180m/s、好ましくは温度100〜200℃,流速50〜120m/sとする。高温高湿空気を用いる場合には、温度100〜450℃,流速20〜150m/s,絶対湿度0.05〜0.5kg/kg、好ましくは温度100〜240℃,流速50〜120m/s,絶対湿度0.1〜0.2kg/kgとする。特に過熱蒸気噴流を用いた場合には凝縮効果のために装置を大幅に小型化することができる利点がある。ただし、これらの噴流装置は過熱蒸気や高温高湿度空気を紙ウェブWに当てて紙ウェブWを加熱することを目的とする装置であり、従来技術のように紙ウェブに熱風等を吹き付けて乾燥させる衝撃乾燥装置とは機能上異なった装置である。また、このような噴流装置の他、高周波(マイクロ波等)を通すことによって紙ウェブWを誘電加熱する誘電加熱装置も加熱ユニット105a〜105c,106a〜106cとして用いることができる。
【0032】
昇温部100には、紙ウェブWの走行ラインを蓋って外界から隔離するための図示しないフードが備えられている。フード内は図示しない温度湿度制御装置によって温度80〜120℃、相対湿度50〜100%の高温度高湿度状態に保持されている。このような高温度高湿度雰囲気中では紙ウェブWの乾燥が進まないため、加熱ユニット105a〜105c,106a〜106cから紙ウェブWに供給された熱は乾燥のための潜熱とはならず、そのほとんどが顕熱となって紙ウェブWの温度を速やかに昇温させる。本実施形態では、後述する乾燥部101の第1ドライヤ群101Aの最初のドライヤロール131aの表面温度に近づけるように、具体的には70〜120℃の範囲まで紙ウェブWの昇温が行われる。なお、フード内を高温度高湿度雰囲気とし、さらに加熱ユニット105a〜105c,106a〜106cから過熱蒸気や高温高湿度空気が噴射されることで、通気性ワイヤ113,107にも多量の水分が含まれていく。そこで、各通気性ワイヤ113,107の走行ルート上には真空ボックス115,111が配備されており、通気性ワイヤ113,107に含まれた水分を真空吸引して除去できるようになっている。
【0033】
乾燥部101は、図2に示すように直列に接続された複数のドライヤ群101A,101B・・・101M,101Nから構成されている。図1ではドライヤ群101Aのみが示されている。ドライヤ群101Aは、複数の真空ロール141a,141b及びドライヤロール131a,131bを備えており、真空ロール141a,141bとドライヤロール131a,131bとにカンバス151が交互に掛け回された構造になっている。図1では図示しない他のドライヤ群101B・・・101M,101Nも同様の構造を有している。
【0034】
カンバス151はループ状であり、上記の真空ロール141a,141b,ドライヤロール131a,131b及び複数のガイドロール161に案内されて回転している。各ドライヤロール131a,131bはカンバス151の外側に配置され、各真空ロール141a,141bはカンバス151の内側に配置されており、紙ウェブWはその表面をカンバス151によって支持されながら、カンバス151によってドライヤロール131a,131bの表面に順に押し付けられながら乾燥されていく。
【0035】
また、本実施形態の抄紙機ドライヤには、予熱部102から乾燥部101にかけて、紙ウェブWの走行ラインを蓋って外界から隔離するためのフード104が備えられている。このフード104内の温度及び湿度は、各ドライヤロール131a,131bでの乾燥中に紙ウェブWの温度が70〜120℃の範囲に維持されるように図示しない温度湿度制御装置によって制御されている。
【0036】
昇温部100により紙ウェブWの温度が増加するため、ドライヤロール(例えば131a,131b)温度を上昇しても両者間の温度差は小さく、スティッキングが抑制されるため、本実施形態ではドライヤ前部のドライヤロールは高温化可能であり、ドライヤ群101A(ドライヤロール131a,131b)の封入蒸気温度は、後部ドライヤ群の封入蒸気温度と同一もしくはそれ以上である。なお、本発明は昇温部100の設置によって従来との比較において前部のドライヤロールの高温化を可能にしたものである。したがって、前部のドライヤロールの温度を後部のドライヤロールの温度と同等にすることは必須ではなく、従来よりも高温であれば後部のドライヤロールの温度より低くてもよい。ここで、前部のドライヤロールとは、例えば図2のドライヤ群101A、102Bのドライヤロールであり、後部のドライヤロールとは図2のドライヤ群101M、102Nのドライヤロールである。
【0037】
このような構成により、昇温部100で70〜120℃の範囲まで昇温された紙ウェブWは、乾燥部101のドライヤロール131a,131bを順次通過して紙温度を70〜120℃の範囲に保持されながら乾燥されていく。そして、最終ドライヤ群101Nを通過して所定の水分率(3〜20%)まで乾燥された紙ウェブWは、サイズプレス181でサイズ剤を塗布された後、アフタードライヤ185で乾燥され、カレンダ182によって紙厚さや表面の平滑等を調整された後、リール183によって巻取紙184に巻き取られていくようになっている。
【0038】
ここで、図3(a)はドライヤロールと紙ウェブとの温度差とスティック量との関係を実験により求めた図であり、図3(b)は上記スティック量の定義を説明するための図である。紙ウェブがドライヤロールに貼り付かない場合には、図3(b)に破線で示すように紙ウェブはドライヤロールと真空ロールとを結ぶ接線に沿って走行する。しかしながら、実際には少なからずスティッキング現象が発生し、図3(b)に実線で示すように紙ウェブは上記接線の接点からドライヤロールの回転方向にずれた位置でドライヤロールから分離する。スティック量は上記接点から実際に紙ウェブがドライヤロールから離れた位置までの距離として定義することができる。スティック量が大きいほど紙ウェブをドライヤロールから引き離すための大きな剥離力が必要となるため、特に湿紙強度が小さい高水分率域即ちドライヤ入口部において、紙切れ頻度は増大する。
【0039】
このスティック量は、図3(a)に示すようにドライヤロールと紙ウェブとの温度差が大きいほど大きくなることが分かっている。本実施形態では、上記のように昇温部100によって70〜120℃の範囲まで紙ウェブを昇温してから乾燥部101に送り込むので、乾燥部前部のドライヤロール温度を高温化してもドライヤロールと紙ウェブとの温度差を小さくすることができ、スティック量を小さくすることができる。その結果、抄紙機を高速化した場合でもスティッキングによる紙切れを防止して安定した生産が可能になる。なお、予熱部102のドライヤロール162は、スティッキングが問題とならない程度の温度(例えば60℃程度)に設定されている。
【0040】
また、従来は、スティッキングが生じない水分領域まで紙ウェブとドライヤロール間の温度差を小さくして乾燥する必要があるため、図4(a)に示すように、スティッキングが生じない水分率領域までドライヤロールの温度(封入蒸気温度)を下げざるを得なかったが、昇温部100によって紙ウェブを昇温することにより、乾燥部101の前部のドライヤロール温度を高温化してもドライヤロールと紙ウェブとの温度差を小さくすることが可能になった。その結果、図5(a)に示すように最初のドライヤロールから最後のドライヤロールまで全てのドライヤロールを高温に設定することが可能になり、乾燥能力を向上させることができるようになった。これは、図4(b)と図5(b)とを比較して分かるように、水分率55%の紙ウェブを水分率10%まで乾燥させるのに従来の方法では28本のドライヤロールが必要であったのに対し、本発明によれば25本のドライヤロールしか必要としないことからも明らかである。
【0041】
また、本実施形態にかかる抄紙機ドライヤによれば、紙強度の高い高品質の紙を製造することも可能になる。ここで、図6は水分率55%の紙ウェブを所定の水分率(図6横軸の水分率値)まで紙温度を約100℃に維持して高温度高湿度乾燥した後、紙温度50℃での通常乾燥に切り替えて水分率10%まで乾燥した場合の紙強度(引張強度)を調べた実験結果である。実験では、水分率55%から水分率10%まで終始通常乾燥を行った場合(A)と、ある水分率(28%(B),20%(C),13%(D))で乾燥方法を切り替えた場合と、水分率55%から水分率10%まで終始高温度高湿度乾燥を行った場合(E)とを比較している。本実施形態にかかる抄紙機ドライヤでは、フード104内の温度湿度制御によって乾燥中の紙ウェブの温度は90〜100℃の範囲に維持されるので、図6中の(E)からもわかるように極めて高い引張強度の紙を得ることができる。なお、この効果は、特に新聞用紙中に含まれるリグニン成分が、湿紙温度を100℃近くに維持して乾燥させたときにマイクロフィブリル(繊維表面の微細なヒゲ)を接着する効果を強く発揮することに起因するものと考えられる。
【0042】
(B)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について図7を用いて説明する。なお、図中において符号2XXで示す部位は、図1において符号1XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。一方、図1において対応する符号1XXが存在しない部位2XXは、本実施形態において新たに設けられた部位であることを示している。ここでは第1実施形態と重複する説明は省略して本実施形態の特徴点について重点的に説明する。
【0043】
本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、第1実施形態とは昇温部の構成に相違がある。すなわち、第1実施形態において紙ウェブWを上面から支持していた通気性ワイヤ113(図1参照)を無くし、図7に示すように本実施形態にかかる昇温部200では、紙ウェブWの下面を支持する通気性ワイヤ207のみを設置している。また、加熱ユニット216は、紙ウェブWの走行ラインの上側のみに配置されている。第1実施形態では加熱ユニット105a,105b,105cはガイドロール114に干渉しないようにガイドロール114,114間に複数に分けて配置されていたが、本実施形態では紙ウェブWの走行ラインの上側に干渉物はないので、紙ウェブWの走行方向に長く延びる加熱ユニット216が一つのみ設けられている。
【0044】
このような構成の昇温部200によっても、加熱ユニット216による高温度高湿度雰囲気中での加熱によって紙ウェブWを昇温させることができ、乾燥部101での紙切れを防止することができる。なお、本実施形態にかかる加熱ユニット216としては、過熱蒸気や高温高湿空気を紙ウェブWに向けて噴出する噴流装置を用いるのが好ましい。過熱蒸気や高温高湿空気の噴流によって紙ウェブWを通気性ワイヤ207上に押し付けることができるので、紙ウェブWを上側から押さえる通気性ワイヤが無くとも紙ウェブWの走行安定性を向上させることができ、抄紙機の高速化にも対応することが可能になる。
【0045】
(C)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について図8を用いて説明する。なお、図中において符号3XXで示す部位は、図1において符号1XXで示す部位、或いは図7において符号2XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。一方、図1,図7において対応する符号1XX,2XXXが存在しない部位3XXは、本実施形態において新たに設けられた部位であることを示している。ここでは第1実施形態,第2実施形態と重複する説明は省略して本実施形態の特徴点について重点的に説明する。
【0046】
本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、第2実施形態の昇温部200(図7参照)の構成に、新たに真空ボックス(真空吸引装置)317a,317b,317cを設置したことを特徴としている。真空ボックス317a,317b,317cは、紙ウェブWの走行ラインの下側に加熱ユニット316に対向するように設置され、通気性ワイヤ307の裏面に真空吸引力を作用させている。本実施形態にかかる昇温部300においても加熱ユニット316から紙ウェブWへ供給された熱は、高温度高湿度雰囲気中での加熱によって紙ウェブWを乾燥させる潜熱とはならずに紙ウェブWの温度を昇温させる顕熱となる。なお、加熱ユニット316として過熱蒸気噴流を用いる時には、上記のように真空ボックス317a,317b,317cを設置し、紙ウェブに裏面より真空吸引力を作用させる事で大きな昇温速度が得られる。通気性ワイヤ307に付着した水分は、真空ボックス311によって除去される。
【0047】
したがって、本実施形態の抄紙機ドライヤによれば、加熱ユニット316による高温度高湿度雰囲気中での加熱によって紙ウェブWを昇温させることができると同時に、加熱ユニット316として過熱蒸気噴流を用いる時は、紙ウェブの裏面より真空吸引力を作用させる事で大きな昇温速度が得られる。昇温部300で紙ウェブWを高温化した結果、乾燥部101の各ドライヤロール131a,131bと紙ウェブWとの温度差がドライヤロール131a,131bの温度を高温化しても小さいため、乾燥部101での紙ウェブWのスティック量をより小さくして紙切れをより確実に防止することが可能になる。
【0048】
(D)第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について図9を用いて説明する。なお、図中において符号4XXで示す部位は、図1において符号1XXで示す部位、或いは図7において符号2XXで示す部位、或いは図8において符号3XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。一方、図1,図7,図8において対応する符号1XX,2XX,3XXが存在しない部位4XXは、本実施形態において新たに設けられた部位であることを示している。ここでは先の実施形態と重複する説明は省略して本実施形態の特徴点について重点的に説明する。
【0049】
本実施形態にかかる抄紙機ドライヤは、第3実施形態の昇温部300における真空ボックス317a,317b,317c(図8参照)に代えて、図6に示す昇温部400のように複数の加熱ユニット418a,418b,418cを設置したことを特徴としている。加熱ユニット418a,418b,418cは、紙ウェブWの走行ラインの下側に、走行ライン上側の加熱ユニット416に対向するように設置されている。このように紙ウェブWの上下両側に加熱ユニット416,418a,418b,418cを配置することにより、本実施形態の抄紙機ドライヤによれば、第1実施形態と同等の高い効率で紙ウェブWを加熱して昇温させることができる。なお、走行ライン上側の加熱ユニット416と走行ライン下側の加熱ユニット418a,418b,418cとは、同じ加熱方式のものを用いるようにする。例えば、加熱ユニット416が過熱蒸気を噴出する噴流装置の場合には、加熱ユニット418a,418b,418cも過熱蒸気噴流装置とする。
【0050】
(E)第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について図10を用いて説明する。なお、図中において符号5XXで示す部位は、図1において符号1XXで示す部位、或いは図7において符号2XXで示す部位と構造的に或いは機能的に共通する部位であることを示している。一方、図1,図7において対応する符号1XX,2XXが存在しない部位5XXは、本実施形態において新たに設けられた部位であることを示している。ここでは先の実施形態と重複する説明は省略して本実施形態の特徴点について重点的に説明する。
【0051】
図10に示すように本実施形態の昇温部500は、第1昇温部500Aと第2昇温部500Bとからなり、紙ウェブWは第1昇温部500A,第2昇温部500Bの順に通過して昇温されていく。第1昇温部500Aは、第2実施形態にかかる昇温部200(図7参照)と同構成であり、紙ウェブWはその表面側から加熱される。
【0052】
一方、第2昇温部500Bは、第1昇温部500Aを逆さまに配置したような構成になっている。第2昇温部500Bには第1昇温部500Aの通気性ワイヤ507とは逆方向に回転する通気性ワイヤ520が備えられている。通気性ワイヤ520はストレッチロール525や複数のガイドロール521,522によって案内されるとともに、乾燥部の真空ロール141a及びドライヤロール131aにも巻き掛けられている。通気性ワイヤ520の下部を案内するガイドロール521,522と真空ロール141aとは、通気性ワイヤ520が下に凸の円弧を描くように配置されている。これにより、紙ウェブWは下に凸の緩やかな円弧を描きながら図示しない下流の乾燥部に搬送される。ガイドロール521,522のうち、紙ウェブWの走行経路に沿った最上流のガイドロール521は真空ロールとして構成され、紙ウェブWを第1昇温部500Aの通気性ワイヤ507から通気性ワイヤ520に受け取るピックアップロールとして機能している。
【0053】
第2昇温部500Bの加熱ユニット523は、通気性ワイヤ507の下方に通気性ワイヤ507と紙ウェブWを挟むようにして配置されている。これにより、第1昇温部500Aにおいて加熱ユニット516により表面側から加熱された紙ウェブWは、この第2昇温部500Bにおいて加熱ユニット523により裏面側から加熱される。これにより紙ウェブWを表裏両面から均等に加熱することができ、紙ウェブW内での厚さ方向の温度勾配をなくすことが可能になる。加熱ユニット523としては、過熱蒸気や高温高湿空気を紙ウェブWに向けて噴出する噴流装置が用いられ、紙ウェブWの走行経路に沿ってピックアップロール521,真空ロール141a間の略全域をカバーするように設けられている。加熱ユニット523からの噴流によって紙ウェブWは裏面側から通気性ワイヤ520に押し付けられるので、紙ウェブWを下側から支持する通気性ワイヤが無くともピックアップロール521から真空ロール141aまで紙ウェブWを安定して搬送することができる。
【0054】
(F)その他
以上、本発明の五つの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では紙ウェブを加熱する手段として、過熱蒸気噴流装置、高温高湿度空気噴流装置、及び誘電加熱装置を挙げているが、これらはあくまでも例示であって、紙ウェブを加熱する手段はこれらの装置に限定されるものではない。
【0055】
さらに、本発明は予熱部及び乾燥部の装置構成に依存しない。たとえば、上記実施形態では、紙ウェブの下面のみがドライヤロールに接するようなドライヤロール及び真空ロールの配置になっているが、紙ウェブの上面もドライヤロールに接するようにドライヤロールと真空ロールの配置を途中で入れ換えてもよい。また、本発明は上記実施形態のようなシングルカンバス式のドライヤのみならず、所謂ツーデッキドライヤ或いはダブルカンバス式のドライヤにも適用することができる。
【0056】
また、予熱部にはドライヤロールは一つのみ設けているが、複数のドライヤロールを設けてカンバスとともに紙ウェブを順次掛け回すようにしてもよい。ただし、その場合でも紙落とし部は昇温部の前に設ける。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明の抄紙機ドライヤによれば、乾燥部(第2ドライヤロール部)での乾燥に先立ち、高温度高湿度雰囲気中でウェブを加熱することによってウェブを乾燥させることなく速やかに昇温させることができるので、乾燥部(第2ドライヤロール部)前部でのドライヤロールを高温化しても、該ドライヤロールと紙ウェブとの温度差を小さくすることができる。その結果、ドライヤロールとウェブとの剥離力を低下させてスティッキングによるウェブの紙切れを防止することができ、紙切れによる生産性の低下を防止することができる。また、乾燥部(第2ドライヤロール部)前部のドライヤロールを昇温部でのウェブの昇温度に応じて高温化できるため、ドライヤ全体の乾燥能力を向上させて高速化による生産性向上が可能となる。
【0058】
また、本発明の抄紙機ドライヤによれば、予熱部(第1ドライヤロール部)に紙落とし部を設けているため、プレス出口での紙ウェブの全幅落とし、テール通紙作業中の不用部分の紙落としが可能である。従って、テールを昇温部(第1ドライヤロール部)、乾燥部(第2ドライヤロール部)に順にテール通紙した後、紙ウェブを全幅まで拡げる事で安定したドライヤ通紙作業が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる抄紙機ドライヤ要部の構成を示す概略図である。
【図2】図1の抄紙機ドライヤを備えた抄紙機のプレスの一部からリールまでの構成を示す概略図である。
【図3】ドライヤロールとウェブとの温度差とスティック量との関係を説明するための図であり、(a)は上記温度差とスティック量との関係を示すグラフ、(b)はスティック量の定義を説明するための図である。
【図4】本発明の効果を説明するための図であり、(a)は従来の各ドライヤのドライヤ封入蒸気温度と紙温度とを対比して示すグラフ、(b)は従来の各ドライヤの紙水分率を示すグラフである。
【図5】本発明の効果を説明するための図であり、(a)は本発明を適用した場合の各ドライヤのドライヤ封入蒸気温度と紙温度とを対比して示すグラフ、(b)は本発明を適用した場合の各ドライヤの紙水分率を示すグラフである。
【図6】本発明の効果を説明するための図であり高温度高湿度乾燥適用後の境界水分率と紙強度(引張強度)との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる抄紙機ドライヤ要部の構成を示す概略図である。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる抄紙機ドライヤ要部の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる抄紙機ドライヤ要部の構成を示す概略図である。
【図10】本発明の第5実施形態にかかる抄紙機ドライヤ要部の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
100,200,300,400,500 昇温部
101 乾燥部(第2ドライヤロール部)
101A,101B,101M,101N ドライヤ群
102 予熱部(第1ドライヤロール部)
103 プレス部
104 フード
107,113,207,307,407,507,520 通気性ワイヤ
105a,105b,105c,106a,106b,106c,216,316,416,418a,418b,418c,516,523 加熱ユニット
108,114,161,208,308,408,508,522 ガイドロール
109,209,309,409,509,521 ガイドロール(真空ロール)
110,112,210,410,510,525 ストレッチロール
111,115,211,311,411,511,524 真空ボックス
131a,131b,162 ドライヤロール
141a,141b,163 真空ロール
151,161 カンバス
164 トランスファボックス
165 ガイドロール
166 ピックアップロール
167 ストレッチロール
168 紙落とし部
171 不透水ベルト
172 ガイドロール
173 フェルト
174 ガイドロール
175 ピックアップロール
176 トランスファボックス
177 真空ボックス
178 シュープレスロール
179 カウンタロール
180 トランスファベルト
181 サイズプレス
182 カレンダ
183 リール
184 巻取紙
185 アフタードライヤ
317a,317b,317c 真空ボックス
500A 第1昇温部
500B 第2昇温部
W 紙ウェブ

Claims (7)

  1. 抄紙機のプレス部の下流に設けられ、上記プレス部で脱水された紙ウェブをカンバスとともに複数のドライヤロールに順次掛け回しつつ上記紙ウェブを上記ドライヤロールに押し付けて上記紙ウェブの乾燥を行う抄紙機ドライヤであって、
    上流側の一又は複数のドライヤロールからなる第1ドライヤロール部と、
    下流側の複数のドライヤロールからなる第2ドライヤロール部と、
    上記第1ドライヤロール部と上記第2ドライヤロール部との間に設けられ、高温度高湿度雰囲気中で上記紙ウェブを加熱して上記紙ウェブを昇温させる昇温部とを備え、
    上記第2ドライヤロール部の前部のドライヤロール温度が上記昇温部での上記ウェブの昇温度に応じて上記第1ドライヤロール部のドライヤロール温度よりも高温化されるとともに、
    上記第1ドライヤロール部には紙落とし部が設けられている
    ことを特徴とする、抄紙機ドライヤ。
  2. 上記昇温部は、上記紙ウェブの温度を上記第2ドライヤロール部の最初のドライヤロールの表面温度付近まで昇温させるように構成されている
    ことを特徴とする、請求項1記載の抄紙機ドライヤ。
  3. 上記昇温部は、上記紙ウェブの温度を70〜120℃の範囲まで昇温させるように構成されている
    ことを特徴とする、請求項1又は2記載の抄紙機ドライヤ。
  4. 上記昇温部は、上記紙ウェブに過熱蒸気噴流を当てることにより上記紙ウェブを加熱して昇温させるように構成されている
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤ。
  5. 上記昇温部は、上記紙ウェブに高温高湿度空気噴流を当てることにより上記紙ウェブを加熱して昇温させるように構成されている
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤ。
  6. 上記昇温部は、上記紙ウェブに高温高湿度雰囲気中で高周波を通すことにより上記紙ウェブを誘電加熱して昇温させるように構成されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤ。
  7. 上記第1ドライヤロール部及び昇温部及び第2ドライヤロール部は、少なくとも上記紙ウェブの走行ルート近傍を外界と隔離するフードを備え、上記フード内の温度及び相対湿度を制御することにより上記紙ウェブの温度を70〜120℃の範囲に維持しながら上記紙ウェブの乾燥を行うように構成されていることを特徴とする、請求項1〜6の何れかの項に記載の抄紙機ドライヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008506048A (ja) * 2004-07-12 2008-02-28 ボイス パテント ゲーエムベーハー 塗布剤の塗布方法並びに繊維ウェブ製造の方法および機械
JP2009024305A (ja) * 2007-07-23 2009-02-05 Metso Paper Inc 紙又は板紙の製造装置及びこれを用いた製造方法
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JP2009133055A (ja) * 2007-11-08 2009-06-18 Nippon Paper Industries Co Ltd 抄紙機のドライパートへの通紙方法

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