JP3540079B2 - 超塑性成形方法及びその成形装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、超塑性金属板の成形方法及び成形装置に関し、特にセラミック質成形用型を補強し、型の割れ等を防止した成形法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高温において金属板を特定領域の歪速度で引張りを与えた場合に、局部変形を発生することなく大きい伸びを示す超塑性材料が知られている。例えばAl合金ではAl−Mg系、Al−Cu−Mn系、Al−Zn−Mg−Cu系などがある。その他Zn、Ti、Fe、Cr、Ni等の各種の超塑性合金が知られている。超塑性金属板を成形する型は耐熱鋳鋼やセラミック質のものが知られているが、種々の形状に成形することが容易であること、模様を精密に現せること、鋳鋼に較べて軽量であること、廉価であること等によりセラミック質の成形用型が多く用いられるようになっている。
【0003】
セラミック質の成形用型を用いる場合、通常図6に示すような複合型成形装置が用いられる。図において1が成形用型で、ダイ容器2の中に収納される。ダイ容器の上には上蓋3が設置され、この上蓋とダイ容器の間に成形しようとする超塑性金属板4が配置される。金属板は上蓋とダイ容器によりその周辺が挾持固定5され、所定の温度に加熱される。次いで上蓋に穿たれている流体導入口31より空気等の加圧流体を導入し、金属板を成形用型の面に向けて押圧し、金属板を型の形状に成形する。この場合、成形体の内部に空孔を生じないようにするため成形体に背圧、即ち成形用型の面から流体を噴射し、流体圧を印加する方法も知られている。
【0004】
従来、セラミック質の成形用型を用いる方法としては特開平6−238355、特開平5−177266などがある。前者はセラミック質成形用型とダイ容器との隙間に粒状物を充填し、この隙間に金属板が入り込むのを防止する方法であり、後者は成形用型を通気性材料で構成し、成形に際してセラミック質成形用型内の排気に工夫をしている。ところが、セラミック質成形用型の補強に関して提案されているものは殆どない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
セラミック質の成形用型は前記のような幾多の優れた面を持っているが、セラミック共通の特性として圧縮強度は強いが引張強度が弱いという欠点を持っている。成形用型は成形中に押圧力が印加されると周方向に引張応力が作用する。成形用型は一般に鋳鋼製のダイ容器に収納されているが、両者の熱膨張や成形用型の交換等のため成形用型とダイ容器との間は多少の隙間があり、成形用型はダイ容器によって外側から補強される構造にはなっていないのが普通である。このため成形に際し、成形用型に引張応力が働くと型が割れ易くなる。成形圧力が高い場合や長期間使用していると、この割れの問題が生ずる。
【0006】
前記した特開平6−238355は成形用型とダイ容器の間の隙間に粒状物を充填しているが、それは成形用型の補強を目的としたものではない。この特許の方法では成形中に金属板からの圧力が粒状物に印加されても、その圧力が粒状物でかなり吸収されるため、成形用金型の十分な補強にはなっていない。また粒状物充填は成形用型の交換の際、その取出し、再充填という面倒な操作を伴う。
本発明はダイ容器に収納されたセラミック質成形用型を補強し、割れを防止すると共に成形用型及びダイ容器の熱膨張の問題にも対応可能な成形方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
特開平6−238355は成形用型とダイ容器との間に粒状物を充填し、この隙間に金属板が入り込むのを防止する方法であったが、本発明はこれとは逆に成形用型とダイ容器との間に特定の凹溝を設け、成形用型による金属板の成形と同時に、この凹溝部分で金属板を成形することにより上記の目的が達成されることを見出し、これに基づいてなされたものである。
【0008】
即ち、本発明の成形方法はダイ容器内にセラミック質成形用型を収納し、該成形用型の外側に、その型を囲繞して上方に広がる凹溝を設け、加熱された超塑性金属板を流体圧により前記成形用型及び凹溝面に押圧して超塑性成形し、得られた成形体から前記成形用型に対応する成形体以外の部分を切除することを特徴とする超塑性成形方法である。また、成形装置の発明はダイ容器内にセラミック質成形用型を収納し、該ダイ容器の上部に流体導入口を有する上蓋を設け、これらのダイ容器、成形用型、上蓋の少なくとも一つに加熱要素を備え、前記ダイ容器と上蓋はその周辺部に超塑性金属板の挾持固定手段を備え、前記成形用型の外側に、該型を囲繞して上方に広がる凹溝を設け、超塑性金属板の成形用型による成形と同時に凹溝部分で成形することからなる成形装置である。
【0009】
以下、図面を参照して本発明の成形方法及び成形装置を詳しく説明する。
図1〜4は、本発明の成形装置の種々の態様を示す断面図、図5は本発明の装置によって得られた成形体の一例を示す斜視図である。
図において1が成形用型である。成形用型1の材質はセラミック質である。セラミックとしてはアルミナ質、ムライト質、ケイ酸アルミニウム、溶融シリカなどが用いられ、特に熱膨張の小さい溶融シリカが好適である。これらは一定の形に賦形された成形体を用い、あるいはキャスタブル耐火材やアルミナセメントのような不定形耐火材を用い、成形用型に合せて成形することができる。また成形用型の強度を増すためセラミック繊維強化耐火材を用いることもできる。その具体的なものには商品名ルミボート(ニチアス(株)製)、ファイバーフラックス、マリナイトなどからなる形体、あるいはキャスタブル系では溶融シリカ質の商品名Thermo−sil等がある。
【0010】
成形用型はダイ容器2の中に収納される。ダイ容器は耐圧性、高温強度を必要とするため一般的に鋳鋼製が適当である。
ダイ容器の上部には上蓋3が設置される。上蓋もダイ容器同様鋳鋼製が適する。成形する超塑性金属板4は上蓋とセラミック質成形用型の間に置かれ、金属板の周辺部が上蓋とダイ容器により挾持固定される。この挾持固定手段5は図1に示すように、例えば上蓋及びダイ容器に設けた突条により金属板を噛み込む方式が流体のシール面からも優れている。
超塑性金属板は成形に際して超塑性を示す温度に加熱される。そのために上蓋、セラミック質成形用型、ダイ容器の少なくとも一つには加熱要素を備えている。この場合好ましくは上蓋に加熱要素を備えると共にセラミック質成形用型内及びダイ容器内の夫々の上部にも加熱要素を備えることである。加熱要素は電気抵抗加熱が適当である。
【0011】
加熱された金属板の成形は上蓋に穿たれた流体導入口31により加圧流体を導入し、その加圧力により金属板を成形用型面に向けて押圧し、金属板を延伸させて型面に当接させることにより行われる。
本発明の対象となる超塑性金属シートは、公知のAl、Zn、Ti、Fe,Ni等の各種の超塑性基合金であり、板厚等も特に制限はない。
加圧流体としては多くは気体であり、空気あるいは必要に応じて窒素、アルゴン等の当該金属に対する不活性気体が使用されるが、特別な場合として、またシリコン油等の液体を使用することがある。
【0012】
本発明は、この成形方法において成形用型1の外側に、その型を囲繞して上方に広がった凹溝6を設けた成形装置を用いることが特徴である。凹溝6は成形の型となり、成形中にその壁面が外方に向かう力により成形用型1を外側から補強する作用をなしている。凹溝の形状はこれらを付与し、また成形体の取出し易さ等から上方に広がった形状、例えば縦断面がV字状である。その具体的な種々の形態を図1〜4に示す。いずれも上方が広く底部が狭くなる傾斜面を持つ縦断面がV字状の形状である。
【0013】
図1に示す凹溝6は成形用型の外側に設けられた傾斜外壁61とダイ容器の内側に設けられた傾斜内壁62とにより形成されている。図1では傾斜外壁と傾斜内壁の底部はわずかの間隙を有している。これによって成形用型が膨張しても傾斜外壁で吸収することが可能であり、成形用型やダイ容器に過度の応力が加わることがない、凹溝を形成する内外壁は前記した成形用型と同様の材料を用いても良いが、成形用型のように寸法等の精度は要求されないのでさらに安価なセラミック材料を用いることもできる。
【0014】
図2に示す凹溝はその底部がダイ容器面に達せず、それより上に位置している場合である。このような凹溝の形態としては図2の(1)のように傾斜外壁61の傾斜下端がダイ容器面に達し、傾斜内壁62の傾斜下端が、傾斜外壁61の傾斜面上で終わる場合と図2の(2)のように傾斜外壁と傾斜内壁とをこれとは逆にした場合がある。いずれの場合も成形用型が熱膨張しても傾斜内壁又は傾斜外壁は傾斜面を摺動して上方にずれることができ、それにより熱膨張を吸収することが可能である。図2の場合において凹溝は浅過ぎると成形中に成形用型を外側から補強する力が弱くなるので凹溝の深さはダイ容器の高さの1/2以上であることが望ましい。
【0015】
図3は凹溝を成形用型自体及びダイ容器自体により形成したものである。即ち成形用型の外面を傾斜外壁61とし、ダイ容器の内面を傾斜内壁62としたものである。凹溝の底部の両傾斜下端はわずかに間隙を有し、熱膨張に対応できるようになっている。
図4ではセラミック質成形用型又はダイ容器のいずれか一方をそれ自体で凹溝の傾斜面を形成し、他方を別個に傾斜面を設けたものである。図4の(1)はダイ容器自体の内面を傾斜内壁62とし、セラミック質成形用型の外側には傾斜外壁61を設けた例であり、図4の(2)はセラミック質成形用型の外面自体を傾斜外壁61とし、ダイ容器の内面に傾斜内壁62を設けた例である。
【0016】
以上のV字状凹溝において、傾斜角度はセラミック質成形用型に作用する力、成形体の取出し易さ等から40〜70度程度が望ましい。また凹溝を形成する内壁、外壁は熱膨張の吸収を容易にするために周方向で2以上のブロックで分割してその間にわずかの隙間を設けて構成することもできる。
なお、図1において7は排気口で成形に際し、セラミック質成形用型及び凹溝から気体を排出するものである(図2以下は省略)。この排気管はセラミック質成形用型の表面から成形体に背圧を付与する場合には流体の導入口として使用されるものである。
【0017】
本発明の成形方法によって得られた成形体は、例えば図5に示すような形状になる。図において41がセラミック質成形用型による目的とする成形体、42が凹溝部分等に対応する不要な成形体である。この不要な成形体を切断ライン43ら切除して目的とする成形体製品を得る。
【0018】
【作用】
セラミック質成形用型とダイ容器との間に形成される凹溝は成形に際しては型と同様金属板が成形されるものであり、従って凹溝を形成する側壁には外方に向かって等方的な力が作用する。この力によりセラミック質成形用型を補強するので、その力が均等に加わり、補強作用として好ましいものとなる。
また凹溝部は精度を必要としないので、その側壁にある程度フレキシブル性をもたせて構成することができ、それによってセラミック質成形用型、ダイ容器、凹溝を構成する側壁自体の熱膨張を吸収することができる。
【0019】
【実施例】
以下実施例により具体的に説明する。
成形装置としては図1、図2の(1)、図4の(2)に示す装置を用いた。成形用型1は溶融シリカ(市販商品名 Netshape)の注水混練物を成形し、乾燥、硬化、加熱(1100度、12時間)することにより作製した。型の内面は図5に示す成形体の形状とした。型の底面にはダイ容器の排気管に通ずる排気口を設けた。
傾斜壁61、62(図4の(2)は62のみ)はケイ酸アルミニウムブロック(販商品名 ルミボート、ニチアス(株)製)を切削加工した。
上記の成形用型及び傾斜壁を鋳鋼製のダイ容器にセットし、成形装置とした。成形に使用した金属板はAA規格5083(Al−Mg−Mn−Cr系)超塑性合金で板厚は1.0mmである。成形は温度500℃、成形圧(空気圧)5kg/cm2 の条件で行った。得られた成形体の形状は図5に示すものである。
成形は図1、図2の(1)、図4の(2)に示す成形装置を用い夫々3回反復実施した。その結果成形用型の割れは皆無であり、かつ成形体の離型性は良好であった。
比較のため成形用型、成形した金属板及び成形条件を上記実施例と同じとし、但し図6に示すように傾斜壁を使用せずにダイ容器に成形用型をセットし、成形を行った。その結果成形用型は1回の使用で割れが発生し、また成形体の離型は困難であり、離型時の損傷変形を生じた。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミック質成形用型を外側から等方的な力で補強しているので補強が効果的であり、セラミック質成形用型の割れが防止される。また凹溝を形成する側壁部分で熱膨張が吸収されるので、セラミック質成形用型等の熱膨張によるトラブルが発生しない。セラミック質成形用型の交換も容易にできるなど本発明は優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成形装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の成形装置の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の成形装置のさらに他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の成形装置のさらに他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の成形方法によって得られた成形体の一例を示す斜視図である。
【図6】従来一般の複合型成形装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック質成形用型
2 ダイ容器
3 上蓋
31 流体導入口
4 超塑性金属板
41 成形体
5 超塑性金属板の挾持固定手段
6 凹溝
61 傾斜外壁
62 傾斜内壁

Claims (5)

  1. ダイ容器内にセラミック質成形用型を収納し、該成形用型の外側に、その型を囲繞して上方に広がる凹溝を設け、加熱された超塑性金属板を流体圧により前記成形用型及び凹溝面に押圧して超塑性成形し、得られた成形体から前記成形用型に対応する成形体以外の部分を切除することを特徴とする超塑性成形方法。
  2. ダイ容器内にセラミック質成形用型を収納し、該ダイ容器の上部に流体導入口を有する上蓋を設け、これらのダイ容器、成形用型、上蓋の少なくとも一つに加熱要素を備え、前記ダイ容器と上蓋はその周辺部に超塑性金属板の挾持固定手段を備え、前記成形用型の外側に、該型を囲繞して上方に広がる凹溝を設け、超塑性金属板の成形用型による成形と同時に凹溝部分で成形することからなる超塑性成形装置。
  3. セラミック質成形用型の外側に設けられた傾斜外壁とダイ容器の内側に設けられた傾斜内壁により上方に広がる凹溝を形成してなる請求項2記載の超塑性成形装置。
  4. セラミック質成形用型の外周面及びダイ容器の内周面を傾斜面にして上方に広がる凹溝を形成してなる請求項2記載の超塑性成形装置。
  5. セラミック質成形用型の外周面及びダイ容器の内周面の一方を傾斜面にし、他方の面に傾斜内壁又は傾斜外壁を設けて上方に広がる凹溝を形成してなる請求項2記載の超塑性成形装置。
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