JP3537453B2 - 微構造制御ナノ複合化セラミックスの製造法 - Google Patents

微構造制御ナノ複合化セラミックスの製造法

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JP3537453B2 JP21556391A JP21556391A JP3537453B2 JP 3537453 B2 JP3537453 B2 JP 3537453B2 JP 21556391 A JP21556391 A JP 21556391A JP 21556391 A JP21556391 A JP 21556391A JP 3537453 B2 JP3537453 B2 JP 3537453B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、微構造制御ナノ複合
化セラミックスの製造法に関するものである。さらに詳
しくは、この発明は、高温強度等の特性を大きく向上さ
せることのできる微構造制御ナノ複合化セラミックスの
製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】セラミックス技術の発展とと
もに、セラミックスの高温強度、高温クリープ特性等の
特性改善についての検討が精力的に進められてきてい
る。このセラミックス技術については、焼結による結晶
粒界の存在が避けられず、この粒界での破壊がどうして
も問題になるため結晶粒の構成を緻密微細化、さらには
この結晶粒を均一化することに研究開発の最大の課題が
おかれている。
【0003】一方、セラミックスの特性向上のために、
この発明の発明者らによって、母相の結晶粒内に第2相
をナノサイズで分散させることが提案されている。この
ナノサイズの第2相の分散による複合化は、従来のファ
インセラミックス技術の常識に反して不均質組織とする
ため、このような不均質化にもかかわらず強度等を大き
く向上させるものとして注目されている。そして、各種
の母相と第2相との組合わせと、その製造方法の改良に
ついての検討も積極的に進められてきている(特開平2
−100669,特開平2−141466、特開平2−
229756、特開平2−229757)。
【0004】しかしながら、このナノサイズの複合化セ
ラミックスの場合には、今後の発展が期待されているも
のの、そのミクロ組織の形成と、特性向上との相関につ
いては必ずしも充分に解明されているとは言えず、実用
セラミックス製品の実現のためには、より簡便に、か
つ、安定してさらに高い特性のセラミックスを開発する
ことが望まれていた。
【0005】このような事情から、この発明の発明者ら
は、このナノ複合化セラミックスについても前記した通
りの技術的常識に沿って、母相結晶粒の微細化、ファイ
ン化と、その均一化、さらには第2相の母相結晶粒内へ
の均一分散のための技術的手段の検討に注力してきた。
しかしながら、このような努力にもかかわらず、ナノ複
合セラミックスの微細ファイン化と、均一化によっては
これまで以上の飛躍的な特性向上はあまり期待できない
状況にあった。
【0006】この発明は、このような状況に鑑みてなさ
れたものであって、この発明の発明者らによって開発さ
れてきたナノ複合化セラミックスの優れた特徴を生か
し、さらに特性を飛躍的に向上させ、かつ、簡便な方法
によって、安定、かつ安価に製造することのできる新し
いナノ複合化セラミックスの製造方法を提供することを
その課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、Al 2 3 母相の結晶粒内にナノ
サイズのSiC第2相を分散させたナノ複合化セラミッ
クスの製造方法であって、焼結時の昇温速度を2℃/m
in以下とすることで、母相結晶粒を特異的に成長させ
ことを特徴とする微構造制御ナノ複合化セラミックス
の製造法を提供する。すなわち、この発明は、これまで
のセラミックス技術の常識とは相反するものとして、ナ
ノサイズの第2相を粒内に分散させた母相結晶粒の形状
の成長を特異的に制御して、さらにセラミックス組成を
高度に不均質化することを特徴とし、それによってより
高温特性等を飛躍的に向上させることができることを見
出して完成させたものである。このことは、これまでの
公知技術からは予想もできない画期的なことであり、セ
ラミックス技術の革新的地平を切拓くものである。
【0008】この母相と第2相とのセラミックスの組合
わせについては、分散物質として高温時の硬度が母相物
質よりも大きく、母相と異なる結晶成長速度を有してい
る各種のものを考慮することができるが、この出願の発
明においては、母相/第2相の組合わせとして、Al2
3/SiCとすることが例示される。
【0009】そしてこの母相結晶粒は、その一部あるい
は全てが特異的に成長させられることになる。なお、こ
の出願の発明でいう「特異的に成長」するとは、母相結
晶粒が「板状」あるいは「ウィスカー状または繊維状」
に異方成長することを意味している。この「ウィスカー
状または繊維状」とは、たとえば図3に示したように、
横断面のアスペクト比が1に近く、縦断面の幅がほぼ均
一で、長さが幅に比べて十分長い形状のことを表すもの
である。すなわち、結晶軸を共通の方向に持ち多数が密
でない場合であっても、個々の結晶の横断面のアスペク
ト比が1に近く、縦断面の幅がほぼ均一で、長さが幅に
比べて十分長いという特異的な成長について、「ウィス
カー状または繊維状」と表現している。また、「板状」
については、たとえば図2に示したように、粒状と比較
して十分に扁平であって、上記の「ウィスカー状または
繊維状」よりは平面的な形状を表すものである。すなわ
ち、縦断面の幅の均一・不均一に係らず、また長さが幅
に比べて長くても同程度であっても、個々の結晶の横断
面のアスペクト比で1から遠い部分がある場合に、「板
状」と表現している。以上のようなAl 2 3 /SiC
組合わせからなるこの発明のナノ複合化セラミックス
は、母相結晶粒内に、ナノサイズの第2相を分散させる
ことにより母相の形状を特異的に成長制御しているた
め、従来の常識では、このような不均質粒を有するセラ
ミックスでは粒界脆性によってその強度、靭性等が大き
く低下すると考えられてきた。しかしながら、実際に
は、このような不均質体は、その強度等は従来のものよ
りも向上し、強度等のバラツキも少く、また、高温特性
等は逆に向上する。
【0010】この発明の微構造制御ナノ複合化セラミッ
クスが優れた強度等の特性を実現することの理由として
は、次のように考えられる。すなわち、たとえば、高温
で焼結した後の冷却中に熱膨張率や弾性率の違いから分
散相の周りに局部的な残留応力が発生する。この局部応
力によって線状欠陥である転位が分散相の周りに発生す
る。このときに高温まで母相より分散相が硬いと、発生
した転位が移動するのを妨害して転位をピンニングさせ
る。そして、分散相の存在によって母相結晶粒の一部ま
たは全てが板状、ウイスカー状等に成長する場合には、
さらにこのピンニング効果はより大きなものとなる。こ
うして集まった転位はサブ粒界を形成し、母相の粒内を
分割し、実質的に微細粒化する。
【0011】この結果、破壊源の大きさが小さくなるの
で強さが向上する仕組みである。また、局所的な残留応
力があるため破壊モードが粒界破壊から粒内破壊に変わ
るので、高温まで粒内破壊を利用した強化機構を適用す
ることができるようになる。このような作用効果は、粒
界の存在による強度低下を抑制し、逆に特性を向上させ
る。
【0012】このため、この発明によって、 1)強度が通常のファインセラミックスの場合に比べて
1.2倍以上にも向上し 2)破壊靭性も1.5倍以上も向上する。 3)高温でのクリープ特性は従来のセラミックスと比較
し著しく改善され、また高温の破壊靭性は金属と同様レ
ベルにまで達する。
【0013】以上の通りこの発明のナノ複合化セラミッ
クスの製造方法は、前記のとおり、ナノサイズの第2相
を粒内に分散させた母相結晶粒の形状の成長を特異的に
制御するものであり、焼結時の昇温速度を通常のナノ複
合化セラミックスの場合よりも低めに、たとえば1/1
0以下に制御して結晶成長を制御することや、さらに
結中に融体を作る化合物を焼結助剤として添加すること
等によって可能となる。具体的には、昇温速度について
は、原料とする分散物質および母相物質の粒径やプレカ
ーサーの状態によっても異なるため一概には言えない
が、一般的な昇温速度が20℃/min程度であるた
め、この発明においては、その1/10の2℃/min
以下とすることが好ましいものとして例示される。より
好ましくは、1℃/min程度以下である。たとえばこ
のような手段によって、ナノサイズのSiCが粒内に分
散したAl23/SiC結晶粒の一部または全てを板状
に、ウイスカー状、繊維状等に特異的に成長させ、微構
造制御を可能とする。
【0014】もちろん、これらの手段、条件については
さらに様々な選択として可能である。以下、実施例を示
し、さらに詳しくこの発明のセラミックスについて説明
する。
【0015】
【実施例】(a)従来型ナノ複合化セラミックス 0.5μm平均粒径のAl23に、0.3μm以下のS
iCを5vol%となるように添加し、昇温速度20℃
/minにおいて昇温して1650℃で1時間焼結し
た。
【0016】図1に示したようにAl23焼結粒内にS
iCがほぼ粒状に均一分布しているナノ複合化セラミッ
クスを得た。このものの強度は1200MPaであり、
また、靭性は4.5MPam1/2であった。 (b)微構造制御ナノ複合化セラミックス 前記(a)の組成において、昇温速度2℃/minとし
て昇温し、1650℃において1時間焼結した。
【0017】この焼結により、図2に示した通りのナノ
サイズのSiCが分散したAl23/SiCナノ結晶粒
の一部が板状に成長したナノ複合化セラミックスを得
た。図中の板状の結晶粒の周囲は、図1と同様の粒状の
結晶粒である。これら板状および粒状のAl23/Si
Cナノ結晶粒の粒内には、大きな粒子としてはAl23
中にα−SiCが、また、小さな粒子としてはAl23
中にβ−SiCが分散しているのが確認された。α−S
iCの場合には、Al23の焼結面間隙の類似性によっ
てAl23そのものが板状に成長する。
【0018】このものの強度は、1700MPaであ
り、また靭性は6.5MPam1/2であった。さらに昇
温速度を1℃/minとし、Al23中にαーSiCが
分散したAl23/SiCナノ結晶粒の成長をさらに制
御することによって、たとえば図3に示したようなナノ
サイズのαーSiCが分散したAl23結晶粒の全てが
繊維状成長したナノ複合化セラミックスを得た。
【0019】この場合、焼結中に融体を形成する焼結助
剤の添加がより効率的であった
【0020】
【発明の効果】この発明により、以上詳しく説明した通
り、ナノ複合化セラミックスの優れた特徴を生 かし、さ
らに強度、靭性等の特性を飛躍的に向上させることがで
き、簡便かつ安価に製造することのできる全く新しい微
構造制御ナノ複合化セラミックスの製造方法が提供され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のナノ複合化セラミックスの結晶構造を例
示した図面に代わる写真である。
【図2】この発明のセラミックスの結晶構造を例示した
図面に代わる写真である。
【図3】この発明のさらに別のセラミックスの結晶構造
を例示した図面に代わる写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 新原晧一ほか、「Si−C−N プレ カーサー粉末から製造したSi▲下3▼ N▲下4▼/SiC複合体のナノ構造と 熱機械的性質」,粉体および粉末治金, 第36巻,第2号,1989年3月,第169〜 172頁

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al 2 3 母相の結晶粒内にナノサイズの
    SiC第2相を分散させたナノ複合化セラミックスの製
    造方法であって、焼結時の昇温速度を2℃/min以下
    とすることで、母相結晶粒を特異的に成長させることを
    特徴とする微構造制御ナノ複合化セラミックスの製造
    法。
  2. 【請求項2】 焼結時の昇温速度を1℃/min以下と
    することを特徴とする請求項1記載の微構造制御ナノ複
    合化セラミックスの製造法。
  3. 【請求項3】 融体形成物質を焼結助剤として添加して
    焼結することを特徴とする請求項1または2に記載の微
    構造制御ナノ複合化セラミックスの製造法。
JP21556391A 1991-08-27 1991-08-27 微構造制御ナノ複合化セラミックスの製造法 Expired - Fee Related JP3537453B2 (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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新原晧一ほか、「Si−C−N プレカーサー粉末から製造したSi▲下3▼N▲下4▼/SiC複合体のナノ構造と熱機械的性質」,粉体および粉末治金,第36巻,第2号,1989年3月,第169〜172頁

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