JP3536194B2 - 末端に非共有電子対を有する官能基を導入した高分子化合物、その製造方法及び該高分子化合物を使用したポジ型レジスト材料 - Google Patents

末端に非共有電子対を有する官能基を導入した高分子化合物、その製造方法及び該高分子化合物を使用したポジ型レジスト材料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビニルモノマーを
有機金属系開始剤の存在下でイオン重合した後、ケト
ン、イミン、2硫化炭素、ハロメチルエーテル、ハロメ
チルスルフィドを付加或いは縮合させたポリマー主鎖の
末端4級炭素に炭素原子1つを介して非共有電子対を有
する官能基を導入した新規な高分子化合物、その製造方
法及び該化合物を用いたポジ型レジスト材料に関するも
のである。
【0002】
【従来技術】従来より高分子化合物の末端に不飽和基を
導入する方法はマクロモノマー合成法として広く試みら
れてきた(山下雄也編著、マクロモノマーの化学と工
業、アイピーシー出版部、1987年)しかしながらそ
れらの多くはブロックポリマーやグラフトポリマーの前
駆体として合成されてきているのが現状である。したが
って、マクロモノマーとして得られているポリマーの多
くは光や電子線などによって重合反応を示す。本発明者
らは光や電子線等の照射によって効率的に反応活性を示
し、生じた活性種が生長鎖と同様な構造を有することに
より解重合せしめ、効率的に解重合するポジ型レジスト
を目指し、検討を重ねた。一般にビニルモノマーのカチ
オン重合反応では連鎖移動反応(プロトン移動)により
一部構造式(C)に示すポリマーが生成しているもの
の、定量的にこれら不飽和末端を導入する方法として
は、本発明者らの出願である特願平6−228039号
(特開平8−92312号公報)に記載の製造方法によ
って高収率で定量的に末端に2−フェニルアリル末端構
造を導入することに成功した例があるだけである。特に
繰り返し骨格にα−メチルスチレンを有するポリマーは
電子線照射等により効率的に末端から解重合が進行し、
効率的なポジ型電子線レジストを供給する。ポリ(α−
メチルスチレン)を主鎖骨格とするレジストはそのポリ
マー自身の摂動性の低さから、極めて高い解像性能を有
するものの、2−フェニルアリル末端にたいする電子線
の感受性は必ずしも高いものではなかった。
【0003】
【化5】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者ら
は、電子線などに対する感受性を改善すべく、α−メチ
ルスチレンなどのビニルモノマーを有機金属開始剤を用
いて重合して得られるポリマーの末端の電子線感受性を
向上させる技術について鋭意検討を重ねた結果、ポリマ
ー主鎖の末端4級炭素に炭素原子1つを介して非共有電
子対を有する官能基を導入することにより、高効率で電
子線などにより分解できる高分子化合物が得られること
を発見し、本発明を完成したもので、本発明の目的は、
電子線などの感受性を改善した構造式(A)を有する高
分子化合物、その製造方法及び構造式(A)の化合物を
用いた電子線などのレジスト材料を提供することであ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明の要
旨は、下記の構造式(A)で表される、ポリマー主鎖の
末端4級炭素に炭素原子1つを介して非共有電子対を有
する官能基を導入した高分子化合物であり、請求項3に
係る発明は、構造式(A)を持つポリマーの製造方法で
あり、請求項3に係る発明は構造式(A)を持つポリマ
ーを用いた電子線などのレジスト材料である。本発明の
化合物(A)は、ブチルリチュウムやナトリウウムナフ
タレンのような有機金属を開始剤としたビニルモノマー
のアニオン重合で得られたリビングアニオン末端にケト
ン、イミン、2硫化炭素、ハロメチルエーテル、ハロメ
チルスルフィド等を付加或いは縮合して末端を修飾する
ことにより合成される。この合成過程の末端の修飾過程
を有機リチュウム開始剤として用い、修飾剤をアセトン
とした場合を化学式で示すと、ポリマーの末端炭素にリ
チュウムを有するポリマーをアセトンで修飾する反応は
次のとおりである。
【0006】
【化6】
【0007】この反応に使用されるモノマー類は、リビ
ング的にアニオン重合するモノマーならば何れも可能で
あるが、特にα−メチルスチレン類(有機シリル基、有
機シロキシ基で置換していてもよい)が好ましい。その
他のモノマーとしてはスチレン、イソプレン、ブタジェ
ン等の共役炭化水素モノマーやエチレン、アクリル酸エ
ステル、ジアルキルアクリルアミド、ビニルケトンなど
の共役極性モノマー類を挙げることができる。
【0008】この反応に使用され有機金属系開始剤はメ
チルリチュウム、ブチルリチュウムなどの有機リチュウ
ム、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、クミ
ルナフタレン、クミルカリウムなどの有機ナトリウウム
や有機カリウム、リチュウムジイソプロピルアミドやカ
リウムジイソプロピルアミドなどの有機金属アミド類な
どが用いられる。また、α−メチルスチレンリビングオ
リゴマーなども使用できる。これらの開始剤の使用量
は、モノマーに対するモル比で0.00001ないし1
00倍モルで使用可能であり、0.001倍ないし1倍
モルがより好ましい。
【0009】この反応で用いられる末端修飾剤はアセト
ン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等のケトン
類、ベンザルアニリン等のイミン類、2硫化炭素、クロ
ロメチルメチルエーテル、ブロモメチルメチルエーテ
ル、クロロメチルフェニルスルフィド、N,O−ビス
(トリメチルシリル)アセトアミド、2−ブロモテトラ
ヒドロフランなどのハロゲン化物などを挙げることがで
きる。これら末端修飾剤の生成ポリマーに対するモル比
は0.01ないし100倍モルで使用可能であり、1倍
モルないし10倍モルがより好ましい。
【0010】本発明の反応は、不活性溶媒の存在下で行
なうこともできる。溶媒としてはジエチルエーテル、ジ
オキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジ
グライム等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロ
ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、ト
ルエン等の芳香族炭化水素ジメチルスルホキシド、N,
N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリック
トリアミド、等の非プロトン性極性溶媒、反応条件下で
アルカリ金属アミド触媒と反応しない液体を用いること
ができる。この中でテトラヒドロフラン等のエーテル類
位、ベンゼン等の芳香族炭化水素類およびヘキサン等の
脂肪族炭化水素が好ましい。
【0011】用いる溶媒の量は体積でモノマーの0.1
ないし1000倍量が好ましく、より好ましくは0.5
ないし100倍量である。溶媒の相対量が多くなると反
応は一般に遅くなる。本発明において反応を行う温度に
ついては特に制限はないが、−150℃ないし150℃
が好ましく、より好ましくは−100℃ないし0℃であ
る。また反応時間に制限はないが1分ないし1000時
間が好ましく、更に好ましくは10分ないし100時間
である。反応条件、目的物によって反応速度が異なるの
で、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー
等で原料や生成物の定量を行い反応の終了を決定するこ
とが望ましい。
【0012】本発明で得られる化合物(A)の高分子化
合物は、末端に紫外光、電子線などに感受性の高い官能
基を持つため、紫外光、電子線等により効率よく解重合
する。その解重合の過程は次のとおりである。
【0013】
【化7】
【0014】すなわち、構造式(A)の高分子化合物は
紫外線、電子線により照射部分は全てモノマーに解重合
して可溶性になるので新規な高感度ポジ型レジスト材料
として使用できる。したがって、上記化合物(A)を用
いてレジスト膜を形成するには、上記化合物(A)を溶
媒に溶解させ、スピナー等で薄膜形成させることによっ
て得られる。その際使用する溶媒としては、ジエチルエ
ーテル、ジオキサン、テトラヒドルフラン、ジメトキシ
エタン、ジグライム等のエーテル類、ペンタン、ヘキサ
ン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベ
ンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジメチルスルホ
キシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメルホ
スホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒等の化
合物(A)を溶解せしめる液体を用いることができる。
溶媒の濃度は体積で化合物(A)の0.1ないし100
0倍が好ましく、より好ましくは1ないし20倍量であ
る。溶媒の相対量が多くなると一般に膜は薄くなる。
【0015】得られた膜は可視光や紫外光、電子線、X
線などの照射により容易に解重合し、パターンを形成す
る。現像に用いる溶媒は水、メタノール、エタノール、
プロパノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン
等のケトン類、ベンゼンやトルエン等の炭化水素類など
が用いられる。また、真空下で電子線、X線等を照射す
る場合は、現像剤を用いなくてもパターンが得られる。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に説明する
が、これらの実施例は本発明の範囲を何ら限定するもの
ではない。 実施例1 構造式(D)のサンプル1の合成
【0017】
【化8】
【0018】反応容器内をアルゴン置換し、−78℃
下、テトラヒドロフラン8.2ml、sec−ブチルリ
チュウムのヘキサン溶液0.34ml及びα−メチルス
チレン1.3mlを加え30分間重合させる。この溶媒
にアセトン2mlを加え、さらに3分間反応させた。こ
の溶媒を大過剰のメタノールに添加し、ポリマーを得
た。ポリマーは定量的に得られた。ゲルパーミエーショ
ンクロマトグラフィー(GPC)から求めた分子量及び
分子量分布はそれぞれ5000及び1.08であった。
【0019】実施例2 構造式(E)のサンプル2の合成
【0020】
【化9】
【0021】アセトンの代わりにベンザルアニリン1g
のテトラヒドロフラン(THF)溶液3mlを用いるこ
と以外、実施例1と全く同様の条件でポリマーを合成し
た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GP
C)から求めた分子量及び分子量分布はそれぞれ500
0及び1.08であった。
【0022】前記サンプル1、2のレジストとしての特
性 実施例3 実施例1で得られたサンプル1の10%トルエン溶液を
スピンコートして0.5μmに製膜し、走査電子顕微鏡
にて20Kevで電子線照射を行った。40%メタノー
ル含有メチルエチルケトンで現像し、感度特性曲線(図
1)を求めたところ、50%残存膜厚時における電子線
照射強度は35μC/cm2、その傾き(γ)は4.0
であった。
【0023】実施例4 実施例2で得られたサンプル2を用いたこと以外実施例
3と全く同様に電子線描画特性を検討した。図2の感度
特性曲線より、50%残存膜厚時における電子線照射強
度は3μC/cm2、その傾き(γ)は4.0であっ
た。
【0024】
【発明の効果】主鎖に4級炭素を有するビニルポリマー
は天井温度が低く、光や電子線に対して分解性を示すこ
とが知られているが、同時に架橋反応が併発し、必ずし
もポジ型レジストとして高い性能を示していない。ここ
で本発明のように定量的に炭素原子1つを介してポリマ
ー主鎖の末端4級炭素に非共有電子対を有する官能基を
導入することによって、高効率で電子線に対して応答
し、その末端から定量的に分解が進行する系が達成でき
る。さらに、ポリ(α−メチルスチレン)の様にガラス
転移点が高く、分子の摂動が抑制される系でなおかつ分
子量分布が低いため、そのような系においては解像度が
極めて高く、高次の微細加工技術を必要とする半導体分
野で有用な材料となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた重合体の電子線感度特性曲
【図2】実施例2で得られた重合体の電子線感度特性曲

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の構造式(A)で表されるポリマー
    主鎖の末端4級炭素に炭素原子1つを介して非共有電子
    対を有する官能基を導入した末端官能基を有する高分子
    化合物。 【化1】 [式中、Rは任意の開始剤断片を示す。R1、は水素ま
    たは有機シリル基、有機シロキシ基、R2、R3及びR4
    は水素または炭素数1から10のアルキル基、アリール
    基、アラルキル基を表す。Xは、N、Sのような非共有
    電子対を有する置換基を示す。nは5〜10000の整
    数を表す。]
  2. 【請求項2】 下記の構造式(B)で表されるポリ(α
    −メチルスチレン)骨格を有する請求項1に記載の高分
    子化合物。 【化2】 [式中、R、R2、R3、R4、X及びnは上述と同
    じ。]
  3. 【請求項3】 ビニルモノマーを有機金属系開始剤の存
    在下でイオン重合した後、ケトン、イミン、2硫化炭
    素、ハロメチルエーテル、ハロメチルスルフィドを付加
    或いは縮合させポリマー主鎖の末端4級炭素に炭素原子
    1つを介して非共有電子対を有する官能基を導入したこ
    とを特徴とする化学式(A)で表される高分子化合物の
    製造方法。 【化3】 [式中、R、R1、R2、R3、R4、X及びnは上述と同
    じ。]
  4. 【請求項4】化学式(A)で表される化合物を用いた可
    視光、紫外光、電子線、X線用ポジ型レジスト材料。 【化4】 [式中、Rは任意の開始剤断片を示す。R 1 、は水素ま
    たは有機シリル基、有機シロキシ基、R 2 、R 3 及びR 4
    は水素または炭素数1から10のアルキル基、アリール
    基、アラルキル基を表す。Xは、O、N、Sのような非
    共有電子対を有する置換基を示す。nは5〜10000
    の整数を表す。]
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