JP3520932B2 - 電気音響変換器用振動板の製造方法 - Google Patents

電気音響変換器用振動板の製造方法

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JP3520932B2 JP13800394A JP13800394A JP3520932B2 JP 3520932 B2 JP3520932 B2 JP 3520932B2 JP 13800394 A JP13800394 A JP 13800394A JP 13800394 A JP13800394 A JP 13800394A JP 3520932 B2 JP3520932 B2 JP 3520932B2
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清孝 宮下
晃 原
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はミクロフィブリル化した
セルロースを用いた電気音響変換器用振動板の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】電気音響変換器用振動板の材質として
は、例えば木材パルプ等種々のものが存在するが、最
近、高ヤング率を有し、縦波伝播速度が良好なことから
微生物が産出するリボン状ミクロフィブリルよりなる微
生物セルロースを用いた振動板が提供されるに至ってい
る。
【0003】ところで、振動板を用いてスピーカやマイ
クロホン等の如き電気音響変換器を組立てる場合、振動
板の内周部は磁気回路の磁気ギャップに配設されたボイ
スコイルに結合され、かつ外周部はエッジを介しフレー
ムに結合される。
【0004】この際、振動板の最低共振周波数f0 を下
げる方法として、エッジ部を柔らかく動き易くすること
が要求される。
【0005】すなわち、従来、振動板の最低共振周波数
0 を下げる一例としては、図5に示すように、振動板
本体(9)の外周に接着剤(10)を用い、布またはウ
レタンフォーム等のスティフネスの小さい材料(11)
を貼り合わせ、これをエッジ部としたフリーエッジ構造
のものがある。
【0006】しかし、この構造によると、重量が重くな
り、かつ製造に手間がかかることからコストが高くなっ
てしまい好ましくない。
【0007】これに対し、図6に示すように、抄紙によ
り振動板をフィックスタイプにて製造すると上記フリー
エッジ方式の問題点を解決することができる。
【0008】すなわち、図中1′は抄紙筒、4′は抄紙
筒1′の底部に設けられた抄紙金型、5′はその上に設
けられた抄紙網、7′はパルプ調液である。そして、抄
紙金型4′の振動板本体の形成に相当する部分には径の
やや大きい孔4a′が多数形成され、また、エッジ部が
形成される部分に相当する部分には径の小さい孔4b′
が形成されている。8′はその下方に設けられた水流調
節部であり、パルプ調液の排水を遅らせるパルプ調液溜
部となっている。
【0009】抄紙筒1′の下方の吸引排水部3′から抄
紙原料がパルプ調液の吸引・排水を行うと、内側の孔4
a′側はその径が大きく、かつ孔数が多いため、水流が
多い反面、エッジ部の形成をつかさどる外周側は孔4
b′の径が小さく、かつ孔数も少なく、しかも下部に水
流調節部8′があるため、水流が少ない。
【0010】このように、水量をコントロールすると、
抄紙原料がパルプ調液の場合、図7に示すように、振動
板本体9aと、その外周のエッジ部9bとが部分的に厚
さの異なるフィックスタイプの振動板を得ることができ
る。
【0011】微生物セルロースからなる振動板を抄造す
る場合、例えば酢酸菌の如き微生物を培養してゲル状物
質として産出させ、これを水中に離解させ、抄紙網5′
を介して抄造する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、微生物
セルロースから得られたゲル状膜をミキサー等で粉砕し
微粒子化したものは、表面が数μm、長さ数百μm程度
のミクロフィブリル状となっているため、粒子間の絡み
合いが強く、水中で流動しにくい。さらに、微粒子であ
るため、濾水性が悪く、かつ水の流動がきわめて遅く、
セルロースの横方向への移動がなく、垂直方向に微粒子
が堆積するのみであるため、従来の抄き分け方法ではパ
ルプ調液のように部分的に厚さの異なる所望のフィック
スタイプの振動板を得ることができない、という課題が
あった。
【0013】本発明は上記のことに鑑み提案されたもの
で、その目的とするところは、ミクロフィブリル化した
微生物セルロースを用いて振動板を製造するものにおい
ても部分的に厚さを異ならせ所望の最低共振周波数f0
を得ることのできる電気音響変換器用振動板の製造方法
を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、内部の下方に
抄紙型4が設けられ、かつその上に抄紙網5が設けられ
た抄紙筒1内に、見かけ比重がほぼ0.85〜0.98
の抄き分け用のリング6を、予め抄紙筒1内に投入した
状態でミクロフィブリル化した微生物セルロースからな
る抄紙原料を投入し、浮力により浮き上がったリング6
の下方に抄紙原料を入り込ませ、かつ浮いているリング
6の位置を調整して抄紙型4内の外周部に形成される振
動板のエッジ部の厚さを調整するようにして上記目的を
達成している。
【0015】また、内部の下方に抄紙型4が設けられ、
かつその上に抄紙網5が設けられた抄紙筒1内に、ミク
ロフィブリル化した微生物セルロースからなる抄紙原料
を投入し、ついで抄紙途中で比重1.0以上のリング6
Aを投入し、抄紙型4内の外周部に形成される振動板の
エッジ部の厚さを調整するようにして上記目的を達成し
ている。
【0016】
【作用】本発明では、抄紙筒1の中に抄き分け用リング
6,6Aを入れ、抄紙の際にリング6,6Aが下方に移
動すれば、抄紙原料が粒子間の絡み合いが強く、水中で
流動しにくいミクロフィブリル化した微粒子であっても
リング6,6Aの下方にある抄紙原料を抄紙筒1の中央
部(材厚をエッジ部より厚くしたい振動部分)に流動さ
せることができ、このようにしてリング6,6Aの位置
を調整することで所望の厚さのエッジ部を形成できるよ
うにしている。つまり、リング6,6Aを下動させれば
抄紙原料を流動させることができ、その下面と、抄紙型
4、その上の抄紙網5との間の間隔分の厚さのエッジ部
を形成することができる。
【0017】
【実施例】
〔実施例1〕図1および図2は本発明の第1実施例であ
り、図1は本発明に用いられる抄造装置の概略半断面
図、図2はこの装置内に微生物セルロースが産出したゲ
ル状物質を含有する抄紙原料を入れ、振動板を製造する
様子を示す。
【0018】すなわち、図1中、1は中空状の抄紙筒、
2はその底部、3はその底部中央の吸引排水部、4は底
部2の内部下方に設けられ、かつ上面が所定の振動形状
に形成された抄紙型で、この抄紙型4には縦方向に孔4
a,4bが形成されている。また、5はその上に設けら
れた抄紙網、6は抄き分け用のリングで、図2に示すよ
うに、抄紙筒1の内部に抄紙原料である調液7を入れた
場合、比重が1.0より小さいため、浮き上がるように
なっている。すなわち、この抄き分け用のリング6は浮
き上がるよう内部に中空部6aを有し、かつ抄紙型4の
外周部上に設けられる。なお、中空部分を調整すること
で、浮力を容易に調整することができる。
【0019】製造にあたっては、抄紙工程において、図
1に示すように、抄紙筒1内の内周部に見かけ比重0.
85〜0.98で、かつ抄き分け径を内径とし、高さが
抄紙筒1の内高Hの0.2〜0.9倍の大きさの抄き分
け用のリング6を抄紙筒1内に先に投入しておく。
【0020】次に、図2に示すように、ミクロフィブリ
ル化した微生物セルロースを含有してなる抄紙原料であ
る調液7を投入すると比重の小さいリング6が比重によ
り浮き上がり、リング下部に調液7が入り込む。
【0021】次に、周知の手段により吸引排水部3から
調液7の吸引排水を行うと孔4a,4bから調液7が下
方へ通過し、この過程で抄紙網5を介し抄紙されるが、
この場合、リング6の高さを上方から力を加え押し下げ
強制的に変え、位置を調整することにより、調液7を流
動させ、かつエッジ部の厚さを調整でき、目的とする最
低共振周波数f0 の振動板を得ることができる。
【0022】このように、本発明では、調液7中の微粒
子を強制的に流動させることができるため、抄紙型4の
内側の孔4aと、外周側の孔4bの孔径,数は図6に示
した構成としなくても良い。勿論、図6に示す構成とし
ても良い。
【0023】なお、リング6の位置調整手段としては、
例えばストローク調整可能なシリンダ(図示せず)によ
りリング6を押し下げるようにしても良い。
【0024】〔実施例2〕図3および図4は本発明の第
2実施例を示す。この例では、図3に示すように、先に
調液7を抄紙筒1内に投入し、かつ吸引・排水の抄紙工
程においてリング6Aを投入し、その位置を調整するよ
うにしたもので、この例では調液面Wが下がった位置に
より投入するタイミングでエッジ部の厚さを調整でき
る。なお、この場合、リング6Aは比重1.0以上とな
っているため、投入した場合、自重により沈むようにな
っている。なお、第1実施例と同様の部材は同一符号で
示し、詳細な説明は省略する。
【0025】なお、上記各実施例において、抄紙する場
合、補強材として、植物セルロース繊維,炭素繊維,ア
ラミド繊維の如き高分子繊維等の各種繊維または鱗片状
のマイカ等を調液7内に混入させて複合化させ、振動板
を複合材料にて形成することも可能であり、要は少なく
とも素材に微生物セルロースが含まれていれば良い。こ
のようにすれば、補強材の種類,量等を調整すること
で、用途に見合った所望の物性を得ることができる。
【0026】
【図8】図8は本発明の実施例により具体的に作製され
たコーン型ツィータ用の振動板の半断面、図9はかかる
振動板を組み込んでなるスピーカの断面図である。
【0027】振動板の外径はφ60mm,首部の径はφ
14mm,コーン部は中心からφ45mm,エッジ部は
15mmで、この部分の肉厚は薄く形成されている。
【0028】図10は上記本発明の実施例による振動板
を組み込んだスピーカと従来例のスピーカとの性能を比
較した音圧に対する周波数特性であり、図中Aが本実施
例、Bは従来例である。本実施例Aによれば中域から高
域にかけて特性がフラットになり、良好な音質を得るこ
とができた。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、抄紙原料
がミクロフィブリル化した微生物セルロースでも抄紙工
程において、リングの位置を所定の位置とすることによ
り、調液を流動させ、かつリング底面と抄紙型,抄紙網
との間の間隔に相当した所望の厚さのエッジ部を得るこ
とができるため、所望の最低共振周波数f0 を得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に用いられる抄紙装置の概
略半断面図。
【図2】本発明の第1実施例の抄紙工程の説明図。
【図3】本発明の第2実施例に用いられる抄紙装置の概
略半断面図、および内部に抄紙原料が入れた一抄紙工程
を示す説明図。
【図4】本発明の第2実施例の次位の抄紙工程の説明
図。
【図5】従来のフリーエッジタイプの振動板の概略半断
面図。
【図6】従来の抄紙工程の説明図。
【図7】抄紙原料が天然パルプを基材として製造された
振動板の概略半断面図。
【図8】本発明の実施例によって作製されたコーン型ツ
ィータ用の振動板の半断面図。
【図9】上記振動板が組み込まれたスピーカの断面図。
【図10】本発明の振動板が組み込まれたスピーカと従
来例との性能を比較した説明図。
【符号の説明】
1 抄紙筒 2 底部 3 吸引排水部 4 抄紙型 5 抄紙網 6,6A 抄き分け用リング 6a 中空部 7 調液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04R 7/02 D21F 13/00 H04R 31/00 D21J 7/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部の下方に抄紙型(4)が設けられ、
    かつその上に抄紙網(5)が設けられた抄紙筒(1)内
    に、見かけ比重がほぼ0.85〜0.98の抄き分け用
    のリング(6)を、予め抄紙筒(1)内に投入した状態
    でミクロフィブリル化した微生物セルロースからなる抄
    紙原料を投入し、浮力により浮き上がったリング(6)
    の下方に抄紙原料を入り込ませ、かつ浮いているリング
    (6)の位置を調整して抄紙型(4)内の外周部に形成
    される振動板のエッジ部の厚さを調整することを特徴と
    した電気音響変換器用振動板の製造方法。
  2. 【請求項2】 内部の下方に抄紙型(4)が設けられ、
    かつその上に抄紙網(5)が設けられた抄紙筒(1)内
    に、ミクロフィブリル化した微生物セルロースからなる
    抄紙原料を投入し、ついで抄紙途中で比重1.0以上の
    リング(6A)を投入し、抄紙型(4)内の外周部に形
    成される振動板のエッジ部の厚さを調整することを特徴
    とした電気音響変換器用振動板の製造方法。
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