JP3520347B2 - 偏光板用離型フイルム - Google Patents

偏光板用離型フイルム

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は偏光板を2枚重ねた時に
干渉色の発生がない偏光板用離型フイルムに関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】液晶表示素子には偏光フイルムが使用さ
れている。偏光フイルムはポリビニルアルコールに沃素
を吸着させたものやポリエン系高分子あるいは可染性の
透明フイルムを2色性染料で染めたものなどがある。こ
れらの偏光フイルムは腰が弱く、自己保持性がない事と
耐薬品性、耐水性、耐スクラッチ性に乏しいことからト
リアセチルセルロースなどの透明高分子と積層して偏光
板として用いられることがほとんどである。この偏光板
の裏面には液晶表示素子表面に貼り付けるための粘着剤
層があり、この粘着剤層表面には離型フイルムが積層さ
れている。
【0003】この離型フイルムはポリエチレンテレフタ
レート(以下PETと記す)の2軸延伸フイルムが使用
されているが2軸延伸されたフイルムは通常、光学異方
性を示す。すなわち3次元方向の屈折率分布は楕円板を
成し、フイルム面内で縦方向の屈折率をnx 、横方向の
屈折率をny 、厚み方向の屈折率をnZ とすれば各々異
なる値を示す。この場合、フイルム面内の2方向の屈折
率の差(Δn=|nx− ny |)で現される複屈折
(Δn)とフイルムの厚みの積を光学遅延と呼ぶ。通
常の2軸延伸PETフイルムではこの光学遅延が大き
く、直交する偏光板の間にPETフイルムを挟んで白色
光で見ると干渉色が発生する。この干渉色は偏光板にと
っては問題でありその解決が強く要求されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】光学遅延が小さく偏光
板の間にはさんでも干渉色を示さない偏光板用離型二軸
延伸フイルムを提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明らによる鋭意研究
の結果、フイルムの光学遅延がある値以下であれば干渉
色の発生がほとんどない事を見い出し本発明に到達し
た。すなわちフイルムの光学遅延が400nm以下の透
明な高分子フイルムの表面に離型剤層または離型剤層と
粘着剤層を形成したフイルムを偏光板用離型フイルムと
して使用すれば干渉色の発生がないことを見い出した。
【0006】このような光学遅延を得る方法としては高
分子フイルムの押出成形によって実質的に非晶性で未配
向のフイルム原反をガラス転移点以上、融点以下の温度
に加熱し同時2軸延伸をしてフイルム面内において実質
的に等方性な分子配向したフイルムとする事によりでき
る。もう一つの方法として逐次2軸延伸によって分子配
向がバランスする延伸をする事により可能となる。逐次
2軸延伸では1段目の延伸倍率に対して2段目の延伸倍
率をやや低め、すなわち1段目の倍率よりも0.3〜
0.6倍小さく設定することによって2軸方向の分子配
向がバランスする。延伸したフイルムの寸法安定性を得
る為には延伸後フイルムの融点以下の温度で熱セットす
る方法が一般的である。
【0007】フイルムに適するポリマーとしてはポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・
イソフタレート共重合体、ポリエステル系重合体、シン
ジオタクチック・ポリスチレン系重合体、セロファンが
特に好ましい。これらのポリマーからなるフイルムは透
明性、耐薬品性、耐熱性、力学特性に優れ、特にこの偏
光板用離型フイルムに適する。フイルムの表面に離型剤
層を形成する方法としては、シリコーン、フルオロカー
ボン、石けん、金属せっけん、高級脂肪酸、高級脂肪酸
エステル、高級脂肪酸アミド、ビスアミド、有機錫脂肪
酸、高級アルコールワックス、カルナウバワックス、ラ
ノリン、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリ
コール、アルキル硫酸ナトリウム、ステアリン酸アンモ
ン、高級脂肪酸アミン、フッ素化オイルなどの離型剤を
溶剤に溶かしたもの、又はエマルジョンとして水溶液と
したものをフイルムに塗工し、乾燥して作る。また離型
剤を直接あるいは、溶液をスプレーでフイルムに噴霧し
た後、乾燥して離型剤層を作ることもできる。
【0008】さらにフイルムの表面に離型剤層と粘着剤
層を形成する方法としては、上記、離型剤層を形成した
後、粘着剤層を形成する事によって得られる。粘着剤と
しては感圧接着剤が良い。天然ゴム、合成イソプレンゴ
ム、SBR、ポリイソブチレン、NBR、ポリビニルエ
ーテル、ポリアクリルエステルまたはその共重合体、ス
チレンイソプレンまたはスチレンブタジエンブロック重
合体、シリコーンなどの弾性体とポリチルペン、ロジン
ならびにその誘導体、クマロンインデン樹脂、石油系炭
化水素樹脂などの粘着付与樹脂および可塑剤、充填剤、
老化防止剤を組合せて、溶剤に溶かし、フイルム上に塗
布、乾燥して粘着剤層を形成することができる。実質的
に未配向および面内で等方向的配向をしていればフイル
ムの厚みは光学遅延には大きな影響を及ぼさない。実質
的な取扱いや、表面保護の機能から考えるとフイルムの
厚みは10μm〜500μmが一般的である。通常使用
される厚みは20μm〜100μmである。
【0009】実施例 次に本発明の実施例および比較例を示す。本発明に用い
る測定方法を以下に示す。
【0010】1) フイルムの複屈折 ASTM D 542に従ってアタゴ光学社製アツベ屈
折計を用い屈折率を測定し、これより算出した。
【0011】2) フイルム厚み JIS−C2318に従ってソニー社電子マイクロメー
ターμ−mateを用いて測定した。
【0012】3) ヘイズ及び光線透過率 JIS−K6714に従って日本電色工業社 VSG−
1001DPで測定した。
【0013】4) 光干渉による干渉色 日本地科学社製光学歪測定装置を用いて測定した。
【0014】実施例1 滑剤として平均粒径1.8μmのシリカを200ppm
含み固有粘度0.62dl/gのPETを真空下で乾燥
後、40φ押出機を用いて温度290℃でシート状に押
出し、周速15m/分の冷却ドラムで冷却して厚み48
0μmの実質的に未配向のPETフイルム原反を得た。
このフイルム原反を縦、横両方向に温度85℃で、各々
3.5倍の延伸、倍率で同時2軸延伸し、セッターで2
15℃で熱固定した。得られたフイルムの表面に、信越
化学工業(株)製、シリコン離型剤KS705下をトル
エンで倍に希釈し、併用触媒として、Catalyst
PSをKS705下、100部に対して2部添加したも
のを塗布液としてリバースロールコーターで塗布し、温
度160℃で乾燥した。塗布量はシリコン固形付着量と
して0.3g/m2 であった。厚さ40μmの偏光フイ
ルムを接着剤を用いて、厚さ80μmのトリアセチルセ
ルロースの2枚のフイルムでサンドイッチ状に積層した
ものの片方の外面にアクリル系感在接着剤を5μmの厚
みに塗布して粘着層とした積層体に上記離型フイルムの
離型層が粘着層と合さるようにして貼合せた。またトリ
アセチルセルロースの他方の面には積水化学工業社製、
ポリエチレン保護フイルム#622AX(50μm)を
貼合せた。得られた偏光板を2枚重ね合て白色光で見て
も干渉色の発生はなかった。本実施例の同時2軸延伸P
ETフイルムの物性を表1に示す。
【0015】比較例1 実施例1のPETフイルム原反を用い、縦方向に温度8
0℃で3.3倍、横方向に温度110℃で3.8倍、逐
次2軸延伸しセッターで温度215℃で熱固定した。実
施例1と同様にしてシリコン離型剤をこのフイルムの片
面に塗布した離型フイルムを実施例1と同様にして積層
した偏光板を2枚重ね合せて白色光で観察したところ干
渉色が発生していた。本比較例に使用した逐次2軸延伸
フイルムの物性を表1に示す。
【0016】実施例2 実施例1のPETフイルム原反を用い、縦と横方向に温
度90℃で延伸倍率各々3.5倍と3.1倍に逐次2軸
延伸し、温度215℃で熱固定した。このフイルムに実
施例1と同様、シリコン離型剤層をその表面に形成した
後、さらにスチレン・ブタジエンブロック共重合体に可
塑剤、酸化防止剤、粘着付与剤を配合したホットメルト
型感圧接着剤をその上に8μmの厚みに押出ラミネート
して粘着剤層とした。実施例1のトリアセチルセルロー
ス、偏光フイルム、トリアセチルセルロースのサンドイ
ッチ状積層体の片面に上記粘着剤層を有する離型フイル
ムを貼合わせた。もう一つの面には実施例1のポリエチ
レン保護フイルムを貼合せた。得られた偏光板を2枚重
ね合せて白色光で見たが干渉色の発生はなかった。本実
施例の逐次2軸PETフイルムの物性を表2に示す。
【0017】比較例2 実施例1のPETフイルム原反を用い、縦と横方向に温
度90℃で延伸倍率各々3.5倍に逐次2軸延伸し、温
度215℃で熱固定した。実施例2と同様にして偏光板
を作成し、この偏光板を2枚重ね合せて白色光で見たが
干渉色が発生した。本比較例に使用した逐次2軸延伸P
ETフイルムの物性を表1に示す。
【0018】実施例3 重量平均分子量45万の主としてシンジオタクチック構
造をとるポリスチレンに平均粒径0.3μmのシリカを
500ppm添加ポリマーを温度310℃で40φ押出
機を用い、シート状に押出し、周速120m/分の冷却
ドラムで冷却してフイルム厚み510μmの実質的に未
配向のフイルム原反を得た。このフイルム原反を縦、横
両方向に温度105℃で各々3.2倍の延伸倍率で同時
2軸延伸し、セッターで250℃で熱固定した。得られ
た厚み50μmのフイルムに実施例1と同様にしてシリ
コン離型剤を塗布乾燥した後、脂肪族アルコールのアク
リルエステルとアクリル酸の比が98/2のアクリル系
共重合物からなる感圧接着剤を8μmの厚みに塗布して
粘着層とした。厚さ40μmのポリビニルアルコールか
らなる偏光フイルムを厚さ80μmのトリアセチルセル
ロースの2枚のフイルムで、接着剤を用いて、サンドイ
ッチ状に積層した積層体に上記離型フイルムの粘着層を
トリアセチルセルロースと合さるように貼合せた。また
トリアセチルセルロースの他方の面には実施例1のポリ
エチレン保護フイルムを貼合せた。得られた偏光板を2
枚重ね合せて白色光で見ても干渉色の発生はなかった。
本実施例の同時2軸延伸シンジオタクチックポリスチレ
ンフイルムの物性を表1に示す。
【0019】比較例3 実施例3で使用したシンジオタクチックポリスチレンの
未配向フイルム原反を使用し、縦、横両方向に温度10
5℃で各々3.2倍の延伸倍率で逐次2軸延伸した。こ
れ以外は実施例3と全く同様にシリコン離型剤およびア
クリル系感圧接着剤からなる粘着層を作成した。また実
施例1と同様、ポリビニルアルコールの偏光フイルムと
トリアセチルセルロースの積層体に上記逐次2軸延伸フ
イルムからなる離型フイルムの粘着層をトリアセチルセ
ルロースと合さるように貼合せた。またトリアセチルセ
ルロースの他方の面にはポリエチレン保護フイルムを貼
合わせた。得られた偏光板を2枚重ね合せて白色光で観
察したら干渉色が発生していた。本比較例の逐次2軸延
伸シンジオタクチック・ポリスチレンフイルムの物性を
表1に示す。
【0020】
【発明の効果】本発明の偏光板用離型二軸延伸フイルム
は、これを用いた偏光板を2枚重ねた時に干渉色の発生
がなく、工業的意義は大きい。
【0021】
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三宅 英男 大阪市北区堂島浜二丁目2番8号 東洋 紡績株式会社 本社内 (56)参考文献 特開 平2−262616(JP,A) 特開 昭58−98709(JP,A) 特開 平4−30104(JP,A) 特開 平3−243677(JP,A) 特開 平4−20581(JP,A) 特開 平4−161330(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1335 - 1/13363 G02B 5/30 - 5/32 B32B 1/00 - 35/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明な高分子フイルムの表面に離型剤層
    または離型剤層と粘着剤層を形成した偏光板用離型フイ
    ルムにおいて、前記フイルムは逐次二軸延伸法により得
    られた、フイルム面内において実質的に等方性な分子配
    向を有する、光学遅延が400nm以下の二軸延伸ポリ
    エチレンテレフタレートフイルムであることを特徴とす
    る偏光板用離型フイルム。
  2. 【請求項2】 透明な高分子フイルムの表面に離型剤層
    または離型剤層と粘着剤層を形成した偏光板用離型フイ
    ルムにおいて、前記フイルムは同時二軸延伸法により得
    られた、フイルム面内において実質的に等方性な分子配
    向を有する、光学遅延が400nm以下の二軸延伸シン
    ジオタクチックポリスチレンフイルムまたは二軸配向ポ
    リエチレンテレフタレートフイルムであることを特徴と
    する偏光板用離型フイルム。
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