JP3515273B2 - 電子顕微鏡 - Google Patents

電子顕微鏡

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子顕微鏡に係
り、特に対物レンズの励磁電流を変えた場合に試料上の
電子ビーム位置を調整して元の位置に戻せるようになさ
れた電子顕微鏡に関する。 【0002】 【従来の技術】電子顕微鏡においては対物レンズの集束
状態を調整するために、その励磁電流を許容された範囲
内で変化させることが行われる。このとき、原理的には
試料上の電子ビームの位置は変化しないのであるが、実
際には、試料室の機能上鏡筒を真円に形成できない、あ
るいは使用する強磁性金属等の影響によって、対物レン
ズによる漏洩磁界の回転対称性が崩れ、電子ビームを偏
向させる成分が現れ、そのために試料上の電子ビーム位
置が変わってしまうという現象が生じることが知られて
いる。 【0003】そこで、従来においては、対物レンズの電
子銃側にコイルを設け、このコイルに対物レンズの励磁
電流に比例する電流を供給することによって、対物レン
ズの漏洩磁界による電子ビームの偏向分をキャンセル
し、電子ビーム位置を元の位置に戻すようにすることが
行われている。なお、以下においてはこのコイルを電子
ビーム補正コイルと称するものとする。 【0004】そのための構成例を図2に示す。図中、1
は電子銃、2はガンアラインメントチルトコイル、3は
ガンアラインメントシフトコイル、4は第1コンデンサ
レンズコイル(以下、コンデンサレンズをCLと略記す
る)、5は第2CLコイル、6はCL可動絞り、7はC
L非点補正コイル、8はCLアラインメントシフトコイ
ル、9はCLアラインメントチルトコイル、11は試料
ステージ、12は対物レンズコイル、20は操作装置、
21はD/A変換器(以下、DACと記す)、22は増
幅器、30は電子ビーム補正コイルを示す。なお、ここ
では対物レンズコイル12によって形成されるレンズを
単に対物レンズと称することにする。 【0005】電子銃1と対物レンズコイル12との間に
は、ガンアラインメントチルトコイル2、ガンアライン
メントシフトコイル3、第1CLコイル4、第2CLコ
イル5、CL可動絞り6、CL非点補正コイル7、CL
アラインメントシフトコイル8、CLアラインメントチ
ルトコイル9が配置されているが、これらは電子顕微鏡
に元々、基本的に備えられているものである。なお、こ
れらの各コイル及びCL可動絞り6の目的あるいは機能
については周知であるので詳細な説明は省略する。 【0006】また、CL可動絞り6とCL非点補正コイ
ル7との間には電子ビーム補正コイル30が配置されて
おり、この電子ビーム補正コイル30には対物レンズコ
イル12に供給される励磁電流が抵抗を介して供給され
ている。従って、電子ビーム補正コイル30には対物レ
ンズコイル12の励磁電流に比例した電流が供給される
のである。そして更に、この電子ビーム補正コイル30
は配置されている平面内で移動可能となされている。 【0007】この電子ビーム補正コイル30は、コイル
の中心軸と電子線の通る軸とをずらして配置することに
より、ビームを偏向させる機能をもつコイルである。そ
こで、このコイルの配置位置を調整することによって対
物レンズコイル12の励磁電流の変化による偏向作用を
打ち消すことができる。 【0008】なお、対物レンズコイル12以降にも種々
のレンズコイルが配置されるが、本発明においては本質
的な事項ではないので図2では省略している。以下、同
様である。 【0009】操作装置20は当該電子顕微鏡に関する種
々の設定等を行うためのユーザインターフェースであ
り、例えばパーソナルコンピュータで構成される。そし
て、オペレータはこの操作装置20により各レンズに供
給する励磁電流を設定することができるようになされて
いるが、ここでは対物レンズコイル12に供給する励磁
電流に関する事項についてだけ述べることにする。 【0010】操作装置20で対物レンズコイル12の励
磁電流を設定すると、その値はデジタル化されて操作装
置20から出力され、DAC21によってアナログに変
換され、更に増幅器22で増幅されて対物レンズコイル
12に供給される。そしてこのとき同時に当該励磁電流
に比例する電流が電子ビーム補正コイル30に供給され
ることになる。 【0011】従って、操作装置20を操作して対物レン
ズコイル12の励磁電流を変えた場合に試料上の電子ビ
ーム位置が変化したときには、オペレータは電子ビーム
補正コイル30を適宜移動させて試料上の電子ビームの
位置を元の位置に戻す操作を行う。 【0012】ここで、電子ビーム補正コイル30に供給
される電流と、この電子ビーム補正コイル30によって
形成される偏向磁界による電子ビームの偏向角との関係
について付言すると次のようである。 【0013】いま、対物レンズコイル12の励磁電流が
OLであるとし、電子ビーム補正コイル30にはiB0
いう電流が供給されているとする。この電子ビーム補正
コイル30に流れる電流iB0が対物レンズコイル12の
励磁電流iOLに比例していることは上述した通りであ
る。 【0014】このような状態において対物レンズコイル
12に供給する励磁電流を△iOLだけ変化させて(iOL
+△iOL)としたとき、電子ビーム補正コイル30に流
れる電流が△iB だけ変化して(iB0+△iB )になっ
たとし、このとき対物レンズの漏洩磁界の変化によって
電子ビームが△θOLだけ偏向され、電子ビーム補正コイ
ル30の偏向作用によって電子ビームの偏向角が△θB
だけ変化したとする。 【0015】このとき、上述したように、オペレータは
電子ビーム補正コイル30を移動させて試料上の電子ビ
ーム位置を元の位置に戻すのであるが、電子ビーム位置
が元の位置に戻った状態においては、電子ビーム補正コ
イル30による電子ビームの偏向角の変化分△θB は対
物レンズの漏洩磁界の変化による電子ビームの偏向角の
変化分△θOLを打ち消す大きさであるので、相対補正し
た加速電圧をU* とすると、 △θB ∝△iB /(U*1/2 …(1) であり、ここで△iB は△iOLに比例するので、 △θB ∝△iOL/(U*1/2 …(2) となる。 【0016】つまり、対物レンズコイル12の励磁電流
を△iOLだけ変化させると、電子ビームは電子ビーム補
正コイル30による偏向磁界によって△iOLに比例した
量だけ偏向されることになるのである。 【0017】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図2に
示すように電子ビーム補正コイル30を設けるとコスト
が高くなるばかりでなく、電子ビーム補正コイル30の
位置調整には熟練を要するので、誰にでも簡単に電子ビ
ーム位置の調整を行うことができるものではないもので
あった。 【0018】更に、電子ビーム補正コイル30には鉄芯
コイルを用いるのが通常であるが、鉄芯コイルを用いる
が故に電子ビームに非点が生じてしまうという問題も生
じていた。 【0019】本発明は、上記の課題を解決するものであ
って、対物レンズコイル12の励磁電流を変化させたと
きの試料上の電子ビームの位置ずれを安価に、しかも熟
練を要することなく補正することができる電子顕微鏡を
提供することを目的とするものである。 【0020】 【課題を解決するための手段】ところで、電子顕微鏡に
は、そもそも、基本的に、電子ビームを偏向させる作用
を有するコイルが備えられている。従って、対物レンズ
コイル12の励磁電流を変化させたときに、その励磁電
流の変化分に応じた電流をそのようなコイルに供給する
ことによっても試料上の電子ビーム位置を調整すること
ができることが分かる。 【0021】そこで、本発明の電子顕微鏡は、対物レン
ズと、対物レンズの電子銃側に電子ビームを偏向する作
用を有するアラインメントシフトコイルを基本的に備え
る電子顕微鏡において、対物レンズの励磁電流を変化さ
せたときに、IOLを変更後の対物レンズの励磁電流、k
x 、ky対物レンズのポールピースに固有な値、Ix0
対物レンズの励磁電流を変化させる前において電子ビ
ームの軸合わせを行うために前記アラインメントシフト
コイルのxコイルに供給する電流、Iy0対物レンズの
励磁電流を変化させる前において電子ビームの軸合わせ
を行うために前記アラインメントシフトコイルのyコイ
ルに供給する電流、IOLSTを前記対物レンズコイルの励
磁電流の基準値であり、対物レンズのポールピースに固
有の電流値として、前記アラインメントシフトコイルの
xコイルには Ix =Ix0+kx ×(IOL−IOLST) で求められる電流Ix を供給し、前記アラインメントシ
フトコイルのyコイルには Iy =Iy0+ky ×(IOL−IOLST) で求められる電流Iy を供給することを特徴とする。 【0022】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ実施の形
態について説明する。図1は本発明に係る電子顕微鏡の
一実施形態を示す図であり、図中、25は操作装置、2
6はDAC、27は増幅器を示す。なお、図2に示す構
成要素と同等なものについては同一の符号を付して重複
する説明を省略する。 【0023】図1に示してあるコイル群は図2に示すコ
イル群から電子ビーム補正コイル30を除いたものであ
る。即ち、図1に示すコイル群は電子顕微鏡に元々、基
本的に備えられているものである。 【0024】操作装置25は、当該電子顕微鏡に関する
種々の設定等を行うためのユーザインターフェースであ
り、例えばパーソナルコンピュータで構成される。そし
て、オペレータはこの操作装置25により各レンズに供
給する励磁電流を設定することができるようになされて
いるが、ここでは対物レンズコイル12に供給する励磁
電流を変化させた場合の動作に関する事項についてだけ
述べることにする。 【0025】操作装置25で対物レンズの励磁電流を設
定すると、その値はデジタル化されて操作装置25から
出力され、DAC21によってアナログに変換され、更
に増幅器22で増幅されて対物レンズコイル12に供給
される。 【0026】そしてこのとき、操作装置25は、DAC
26に対して下記の(3) 式、(4) 式で求めた電流値をデ
ジタル化して与える。 【0027】 Ix =Ix0+kx ×(IOL−IOLST) …(3) Iy =Iy0+ky ×(IOL−IOLST) …(4) ここで、Ix はCLアラインメントシフトコイル8のx
コイルに供給する電流、kx はオペレータによって入力
される値であって、対物レンズのポールピースに固有な
、Ix0対物レンズの励磁電流を変化させる前におい
電子ビームの軸合わせを行うためにCLアラインメン
トシフトコイル8のxコイルに供給する電流であり、電
子ビームの軸合わせが完了した後は変更されることがな
い値である。同様に、Iy はCLアラインメントシフト
コイル8のyコイルに供給する電流、ky はオペレータ
によって入力される値であって、対物レンズのポールピ
ースに固有な値、Iy0対物レンズの励磁電流を変化さ
せる前において電子ビームの軸合わせを行うためにCL
アラインメントシフトコイル8のyコイルに供給する電
流であり、電子ビームの軸合わせが完了した後は変更さ
れることがない値である。また、IOLは変更後の対物レ
ンズの励磁電流、IOLSTは対物レンズコイル12の励磁
電流の基準値であり、対物レンズのポールピースに固有
の電流値であって、固定の値である。 【0028】上記の(3) 式、(4) 式で求められた電流は
操作装置25からデジタル化されてDAC26に与えら
れ、DAC26でアナログに変換され、更に増幅器27
で増幅されて、CLアラインメントシフトコイル8のx
コイル、yコイルにそれぞれ供給される。 【0029】周知のようにCLアラインメントシフトコ
イル8にはxコイルとyコイルがあるが、そのxコイル
には上記(3) 式のように、電子ビームの軸合わせを行う
ために必要な電流Ix0と、対物レンズコイル12の励磁
電流の変更後の電流と基準電流との差に応じた電流が加
算された電流が供給され、yコイルには上記(4) 式のよ
うに、電子ビームの軸合わせを行うために必要な電流I
y0と、対物レンズコイル12の励磁電流の変更後の電流
と基準電流との差に応じた電流が加算された電流が供給
されることになる。 【0030】 【0031】このように対物レンズコイル12の励磁電
流を変更したときに、この励磁電流の変化分に応じた電
流をCLアラインメントシフトコイル8のxコイル、y
コイルに供給することによって、これらのコイルによっ
て形成される偏向磁界により電子ビームが偏向されるこ
とは明らかである。なぜなら、CLアラインメントシフ
トコイル8は元々電子ビームを偏向させる作用を有して
いるからである。 【0032】ここで、対物レンズコイル12の励磁電流
の変化分に応じてCLアラインメントシフトコイル8に
供給する電流を変化させたときに、当該CLアラインメ
ントシフトコイル8による偏向磁界によって電子ビーム
がどれだけ偏向されるかを検討すると次のようである。
なお、ここではCLアラインメントシフトコイル8のx
コイルについてのみ検討するが、yコイルについても同
様であることは当然である。 【0033】CLアラインメントシフトコイル8のxコ
イルの偏向磁界による電子ビームの偏向角の変化分を△
θsxとすると、△θsxは上記の(3) 式の右辺の第2項の
成分に比例するから △θsx∝kx ×(IOL−IOLST)/(U*1/2 …(5) であるが、ここで(IOL−IOLST)は(2) 式の△iOL
対応するものであるから、結局(5) 式は(2) 式と同じ形
をしており、このことから(3) 式で求められる電流を供
給することによって試料上の電子ビーム位置を補正する
ことができることが分かる。 【0034】また、係数kx の意味については次のよう
である。図2に示す構成においては電子ビーム補正コイ
ル30は配置されている平面内で移動可能となされてい
ることは上述したとおりであるが、CLアラインメント
シフトコイル8は固定されており、移動可能とはなされ
ていない。 【0035】そこで、従来の電子ビーム補正コイル30
を移動させることに対応するものとして係数kx が用い
られるのである。即ち、係数kx を変えると電子ビーム
の偏向角は変化するのであり、このことは当該コイルを
配置されている平面内で物理的に移動させることに対応
するものなのである。 【0036】以上のようであるので、この電子顕微鏡に
よれば、従来のように電子ビーム補正コイル30を別途
設ける必要はなく、電子顕微鏡に元々備えられているC
Lアラインメントシフトコイル8を用いることによって
試料上の電子ビーム位置を調整することができるので、
コストの上昇を最小限に留めることができるばかりでな
く、電子ビーム補正コイル30を設ける必要がないの
で、電子ビーム補正コイル30による非点の発生を防止
することができる。 【0037】また、オペレータは操作装置25で二つの
係数kx ,ky を入力するだけでよいので電子ビーム位
置の調整を容易に行うことができる。 【0038】更に、電子顕微鏡においては対物レンズの
ポールピースを交換することが行われることがあり、対
物レンズのポールピースを交換した場合、従来において
はポールピースを交換する度毎に電子ビーム補正コイル
30の位置調整を行う必要があったが、上記の二つの係
数kx ,ky は対物レンズのポールピースに固有な値で
あるので、ポールピース毎にこれら二つの係数kx ,k
y を記憶させておけばポールピースを交換した場合には
当該ポールピースの係数を読み出してセットすればよい
ので、調整が容易である。 【0039】ここで二つの係数kx ,ky が対物レンズ
のポールピースに固有な値であることは明らかである。
なぜなら、対物レンズコイル12の励磁電流を変化させ
たときに試料上の電子ビーム位置が変わってしまうのは
対物レンズの漏洩磁界に基づくものであることは上述し
たとおりであるが、この漏洩磁界は対物レンズのポール
ピースの特性に起因するものだからである。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に係る電子顕微鏡の一実施形態を示す
図である。 【図2】 従来の電子顕微鏡の構成例を示す図である。 【符号の説明】 1…電子銃、2…ガンアラインメントチルトコイル、3
…ガンアラインメントシフトコイル、4…第1CLコイ
ル、5…第2CLコイル、6…CL可動絞り、7…CL
非点補正コイル、8…CLアラインメントシフトコイ
ル、9…CLアラインメントチルトコイル、11…試料
ステージ、12…対物レンズコイル、20…操作装置、
21…DAC、22…増幅器、25…操作装置、26…
DAC、27…増幅器、30…電子ビーム補正コイル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大蔵 善博 東京都昭島市武蔵野三丁目1番2号 日 本電子株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−250773(JP,A) 特開 昭56−22038(JP,A) 実開 昭57−158161(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 37/147 H01J 37/21

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】対物レンズと、対物レンズの電子銃側に電
    子ビームを偏向する作用を有するアラインメントシフト
    コイルを基本的に備える電子顕微鏡において、 対物レンズの励磁電流を変化させたときに、IOLを変更
    後の対物レンズの励磁電流、kx 、ky対物レンズの
    ポールピースに固有な値、Ix0対物レンズの励磁電流
    を変化させる前において電子ビームの軸合わせを行うた
    めに前記アラインメントシフトコイルのxコイルに供給
    する電流、Iy0対物レンズの励磁電流を変化させる前
    において電子ビームの軸合わせを行うために前記アライ
    ンメントシフトコイルのyコイルに供給する電流、I
    OLSTを前記対物レンズコイルの励磁電流の基準値であ
    り、対物レンズのポールピースに固有の電流値として、
    前記アラインメントシフトコイルのxコイルには Ix =Ix0+kx ×(IOL−IOLST) で求められる電流Ix を供給し、前記アラインメントシ
    フトコイルのyコイルには Iy =Iy0+ky ×(IOL−IOLST) で求められる電流Iy を供給することを特徴とする電子
    顕微鏡。
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