JP3505026B2 - 溶菌性バクテリオファージを利用したナチュラルチーズの製造方法 - Google Patents

溶菌性バクテリオファージを利用したナチュラルチーズの製造方法

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JP3505026B2
JP3505026B2 JP03204296A JP3204296A JP3505026B2 JP 3505026 B2 JP3505026 B2 JP 3505026B2 JP 03204296 A JP03204296 A JP 03204296A JP 3204296 A JP3204296 A JP 3204296A JP 3505026 B2 JP3505026 B2 JP 3505026B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶菌性バクテリオ
ファージを利用したナチュラルチーズの製造方法に関
し、特に風味が強化されたナチュラルチーズを、熟成を
促進して効率よく製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半硬質チーズや硬質チーズの熟成促進法
として酵素製剤を用いる方法が知られており、例えば、
タンパク質の分解を促進する目的で、動物や微生物起源
のプロテアーゼやペプチダーゼ等の粗酵素製剤の添加が
検討されてきた。これまで試みられた方法は、酵素製
剤を仕込み乳に直接添加し溶解する、チーズ製造工程
の途中でカードに粉末の酵素製剤を混ぜ込む、酵素製
剤をミクロカプセルに封入し仕込み乳やカードに添加す
る、の3方法に大別される。しかしこれら既知の方法に
はそれぞれ問題がある。
【0003】上記方法においては、酵素製剤の添加量
が次の工程であるレンネット凝固に支障をきたさない量
に限られ、その上添加した酵素の大半がドレイニング
(ホエー排除)の際にホエー中に流出してしまうことか
ら、最終的にチーズ中に十分な酵素量を投与することが
できず十分な熟成促進効果が得られない。また、方法
は、チェダーチーズのようにホエーを排除したカードを
集めて圧搾し、型詰めするタイプのチーズには適する
が、ゴーダチーズのようにカードをホエー中で圧搾して
からホエーを排除し、型詰めするタイプのチーズには適
さない。しかもカードは直径5から10mmの粒子であるた
め、方法においてはカードと粉末酵素をよく混ぜ合わ
せても粉末酵素は互いのカード粒子の界面に局在してし
まうという問題がある。酵素反応が基質と酵素分子との
接触によって起こることに鑑みれば、粉末酵素の局在化
により極めて効率が悪くなり、十分な熟成促進効果が得
られない原因ともなる。そしてそれを補うために酵素添
加量を増やすと局部的に過度のタンパク質分解がおこり
得られるチーズが苦味を呈することとなる。これらの問
題点を克服するために提案されたのが方法であるが、
ミクロカプセルの調製に手間とコストがかかるため、工
業的製造への実用化には至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、風味
が優れたナチュラルチーズを熟成を促進して効率よく製
造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、ナチュラル
チーズ製造中に、スターター乳酸菌とは別途に調製した
乳酸菌培養物(以下、非スターター乳酸菌という。)
と、それに特異的に感染し溶菌せしめるバクテリオファ
ージとを添加することで、苦味等の欠陥風味を発生させ
ることなく、ナチュラルチーズの風味強化を行うことに
成功した。これによりこれまで風味発現のために要して
いた熟成期間を短縮することができる。
【0006】即ち、本発明は、微生物を用いてナチュラ
ルチーズを製造するに際し、微生物として、スターター
乳酸菌と、該スターター乳酸菌とは別に調製した非スタ
ーター乳酸菌と、前記スターター乳酸菌には感染しない
が前記非スターター乳酸菌には感染する宿主特異性の溶
菌性バクテリオファージとを用いることを特徴とする、
ナチュラルチーズの製造方法を提供する。以下、本発明
を詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】バクテリオファージとは、微生物
を宿主として増殖するウイスルの総称であり、その生活
環によって溶菌性バクテリオファージと溶原性バクテリ
オファージに大別される。このうち本発明に用いるのは
溶菌性バクテリオファージである。溶菌性バクテリオフ
ァージは、宿主に感染すると宿主の細胞内で短時間のう
ちに増殖してやがて宿主細胞を破壊する、いわゆる溶菌
を行い、その後放出されたバクテリオファージは再び他
の宿主に感染し、増殖を繰り返して行く。
【0008】これまで、乳酸菌に感染する溶菌性バクテ
リオファージは多数発見されている。一般にチーズの製
造においてスターター乳酸菌のバクテリオファージによ
る感染は最も避けなければならない問題の一つである。
なぜならバクテリオファージの感染によりスターター乳
酸菌の増殖とそれに伴う酸の生成が停止するからであ
る。バクテリオファージが感染したスターター乳酸菌を
用いて得られたナチュラルチーズは高pH、高水分とな
り、熟成に伴って異常風味などの欠陥を呈する。ところ
が本発明者はファージ感染時におこるもう一つの現象に
着目した。それは乳酸菌体の溶菌の際に起こる細胞内酵
素の放出である。チーズの熟成中におこる最も顕著でか
つ重要な変化は乳タンパク質の分解であり、それに果た
す乳酸菌のペプチダーゼやプロテアーゼの役割は大き
い。ところが、それらの酵素は細胞内に存在するうち
は、チーズマトリックスの乳タンパク質にはほとんど作
用しない。そして乳酸菌が自己分解などにより溶菌し、
菌体内の酵素が放出されるとはじめて乳タンパク質に作
用する。したがってもしチーズ中での乳酸菌体の分解ス
ピードを速めることができれば、熟成中のタンパク質の
分解を促進し、チーズの熟成期間の短縮や風味強化が可
能となる。本発明はこれにバクテリオファージによる宿
主の溶菌作用を応用したものである。
【0009】ナチュラルチーズ製造における原料として
は、牛乳、脱脂乳等が例示される。この原料へのスター
ター乳酸菌の添加は定法どおりに行う。また、本発明に
おいては、スターター乳酸菌に加えて、非スターター乳
酸菌およびこれに宿主特異的に感染する溶菌性バクテリ
オファージを添加することを特徴とし、それ以外は、定
法のナチュラルチーズ製造法どおりに行う。ここで、溶
菌性バクテリオファージとしては、非スターター乳酸菌
のみに感染し、スターター乳酸菌には感染しないものを
選択することが重要である。このような溶菌性バクテリ
オファージを選択することによりスターター乳酸菌は製
造中に正常な酸生成を行うので、工程上および品質上の
問題が生じない。一方、非スターター乳酸菌はバクテリ
オファージが感染した状態でチーズカード中に均一に取
り込まれ、熟成中に徐々に溶菌を起こし、細胞内酵素を
チーズマトリックスに放出する。
【0010】本発明において使用される非スターター乳
酸菌としては、属、菌種、または菌株がスターター乳酸
菌とは異なる乳酸菌を用いるが、具体的には、ゴーダチ
ーズやチェダーチーズの製造に使用されるラクトコッカ
ス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactoco
ccus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクテ
ィス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lacti
s subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サ
ブスピーシズ・ジアセチラクティス(Lactococcus lacti
s subsp. diacetylactis) 、パルメザンチーズなどの製
造時に使用されるラクトバシラス・デルブリュッキー・
サブスピーシズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrue
ckii subsp. bulgaricas) 、ラクトバシラス・デルブリ
ュッキー・サブスピーシズ・ラクティス(Lactobacillus
delbrueckii subsp. lactis) 、ラクトバシラス・ヘル
ベティカス(Lactobacillus helveticus)、ストレプトコ
ッカス・サリバリウス・サブスピーシズ・サーモフィラ
ス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)な
どの様々な乳酸菌が使用可能である。これらの中で、入
手可能なものとしては、例えば、ラクトコッカス・ラク
ティス・サブスピーシズ・ラクティス NCDO 763 、ラク
トコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモリス
ATCC 19257 、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピ
ーシズ・ジアセチラクティス ATCC 15346 、ラクトバシ
ラス・デルブリュッキー・サブスピーシズ・ブルガリカ
ス ATCC 11842 、ラクトバシラス・デルブリュッキー・
サブスピーシズ・ラクティス ATCC 8000、ラクトバシラ
ス・ヘルベティカス NCDO 99、ストレプトコッカス・サ
リバリウス・サブスピーシズ・サーモフィラス NCDO 57
3 等が挙げられる。
【0011】非スターター乳酸菌は、1種単独または2
種以上を組み合わせて使用することができる。この非ス
ターター乳酸菌は、例えば、該乳酸菌を脱脂乳等の培地
で培養し、得られた培養液をそのまま添加することによ
り原料に添加することができる。また、培養液から菌体
を採取して、凍結乾燥等により乾燥し、次いで粉末状に
した乾燥粉末菌体を原料に添加することもできる。
【0012】本発明で使用する溶菌性バクテリオファー
ジは、使用する非スターター乳酸菌のみに感染し、スタ
ーター乳酸菌には感染しない宿主特異性のものを使用す
る。他の溶菌性バクテリオファージ同様、乳酸菌バクテ
リオファージにも宿主特異性があり、同一菌種に属する
乳酸菌であっても菌株の違いによって、そのバクテリオ
ファージが感染するものと全く感染しないものがある。
一般に乳酸菌が生息している場所には乳酸菌バクテリオ
ファージも存在する。乳酸菌バクテリオファージは、開
放系で製造が行われることが多いチーズ工場にも多く存
在し、製造工程後半のチーズ中やチーズホエー中から低
レベルのファージが検出されることが多いので、本発明
で用いるバクテリオファージはこのチーズホエー等から
分離すればよい。
【0013】以下、溶菌性バクテリオファージの採取方
法およびそれが感染する非スターター乳酸菌の選択方法
を述べる。前述したように乳酸菌が生息する場所には、
その乳酸菌に感染するバクテリオファージが検出される
ことが多い。例えば、搾乳後の未殺菌乳やチーズ工場で
得られるチーズホエーなどである。そこでそれらをファ
ージサンプル液とする。次に、非スターター乳酸菌とし
て用いる菌種を選択し、複数の異なる菌株を用意する。
そしてまずファージサンプル液中に供試菌株に感染する
ファージが存在するかどうかをテストする。テスト方法
としては、0.45μm除菌フィルターでろ過したファージ
サンプル液を添加した還元脱脂乳培地およびファージサ
ンプル液無添加の還元脱脂乳培地のそれぞれに供試菌株
を接種して培養した後、両培地で酸生成に差があるかど
うかを観察する。培養条件は、供試乳酸菌が一般に中温
菌と呼ばれる Lactococcus属であれば、通常22〜30℃で
18時間、高温菌と呼ばれる Lactobacillus属やStreptoc
occus salivarius subsp. thermophilusであれば30〜37
℃で18時間が好ましい。もしファージサンプル液添加培
地で酸生成の遅延が観察されたならば、その中に供試菌
株に感染するファージが含まれている可能性がある。そ
の酸生成遅延が観察された培地を同除菌フィルターでろ
過し、そのろ液と供試菌株を用いて重層寒天培地による
ファージアッセイを行い、もしプラークが認められたら
その供試菌株に感染するファージがサンプル液中に存在
していたことになる。
【0014】次に、このファージをできるだけ精製す
る、つまり供試菌株に感染するファージのみを濃縮する
必要がある。この濃縮は、ファージが宿主に感染するこ
とによってのみ増殖可能である性質を利用すると容易で
ある。先に得られた酸生成遅延培地のフィルターろ過液
を再び還元脱脂乳培地に添加し、そこに供試菌株を接種
し18時間培養する。その培地を再びフィルターろ過して
還元脱脂乳培地に添加し、供試菌株を接種する。この操
作を繰り返すことで、複数種のファージが混在していた
ファージサンプル液から、供試菌株に感染するファージ
液のみを粗精製することが可能である。
【0015】最後にこうして精製したファージ液が、ス
ターター乳酸菌株には感染しないことを確認しなければ
ならない。それは前述したのと同様のテストで調べるこ
とができる。つまり精製ファージ液を添加した還元脱脂
乳培地および精製ファージ液無添加の還元脱脂乳培地そ
れぞれにスターター乳酸菌株を接種し、両培地で酸生成
に差がないことを確認すれば良い。このようにして溶菌
性バクテリオファージ粗精製物と、それが宿主特異的に
感染する乳酸菌のペアを得ることができる。
【0016】但し、乳酸菌が持つタンパク質分解酵素活
性の強さは菌種や菌株の違いによって異なる。本発明に
おいてタンパク質分解活性の強い乳酸菌を用いたほうが
風味増強効果が高いことはいうまでもなく、従ってその
ような乳酸菌株とそれに感染する溶菌性バクテリオファ
ージを得るのが望ましい。
【0017】スターター乳酸菌としては、ナチュラルチ
ーズの種類に応じた従来公知のものを使用することがで
き、上記非スターター乳酸菌として例示したものも使用
可能であるが、非スターター乳酸菌とは属、菌種、また
は菌株が異なり、且つ、添加する溶菌性バクテリオファ
ージに感染されないものを使用する。スターター乳酸菌
は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用するこ
とができる。このスターター乳酸菌は、例えば、該乳酸
菌を脱脂乳等の培地で培養し、得られた培養液をそのま
ま添加することにより原料に添加することができる。ま
た、培養液から菌体を採取して、凍結乾燥等により乾燥
し、次いで粉末状にした乾燥粉末菌体を原料に添加する
こともできる。
【0018】本発明を、ゴーダタイプのチーズを製造す
る場合を例にとって以下に説明する。まず、殺菌した牛
乳にゴーダチーズ製造用のスターター乳酸菌を添加して
撹拌混合する。ついでレンネットを添加して定法により
チーズカードを調製し、カッティング、撹拌の後、分離
ホエーを一部排出する。予備圧搾、型詰め、本圧搾を経
て、得られたグリーンチーズは食塩水に一定時間浸漬
後、10〜15℃の低温室で熟成される。本発明において
は、上記工程のうち、牛乳殺菌後から型詰めまでの少な
くとも一つの工程で、非スターター乳酸菌培養物および
非スターター乳酸菌にのみ感染する溶菌性バクテリオフ
ァージを添加すればよいが、非スターター乳酸菌体とバ
クテリオファージが効率よくカード内に取り込まれるた
めには、レンネット添加直後の牛乳に乳酸菌培養物およ
びバクテリオファージを添加するのが望ましい。
【0019】非スターター乳酸菌の添加量は、該乳酸菌
を脱脂乳培地等により培養した培養液として添加する場
合には、仕込み乳に対して好ましくは 0.1〜3.0 容量
%、カードに対してならば好ましくは0.05〜0.6 容量%
である。ここで、前記培養液中の乳酸菌の濃度は、通
常、108 〜109cfu/ml(cfu はコロニー形成単位を示
す。)である。非スターター乳酸菌を乾燥粉末菌体とし
て添加する場合には、培養液として添加する場合より、
より少量でよい。
【0020】溶菌性バクテリオファージの添加量は、添
加する非スターター乳酸菌数の 100分の1から 10000分
の1であるのが好ましい。例えば、通常、得られたファ
ージ粗精製液のファージ濃度が1010pfu/ml(pfu はプラ
ーク形成単位を示す。)の溶液であれば、非スターター
乳酸菌培養物の1000分の1から100000分の1容量の添加
量となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。 〔実施例1〕バクテリオファージ粗精製液の調製 カッテージチーズ工場で採取したチーズホエーを0.45μ
mの滅菌フィルターでろ過し、このろ過液をホエーろ過
液とした。滅菌した還元脱脂乳培地に前記ホエーろ過液
を1容量%添加したものと、無添加のもの(対照)を調
製した。ラクトバシラス・デルブリュッキー・サブスピ
ーシズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii sub
sp. bulgaricas) の5種の菌株 LB-01, LB-02, LB-03,
LB-04 および LB-05を、それぞれ滅菌した還元脱脂乳培
地で30℃にて18時間培養した。これら培養物を前記のホ
エー添加培地および対照培地それぞれに1容量%ずつ接
種した。このうち、LB-03 は対照培地では正常な酸凝固
が観察されたが、ホエー添加培地では凝固阻害が認めら
れた。それ以外の菌株では対照培地およびホエー添加培
地の両方で正常な酸凝固が認められた。
【0022】重層寒天培地を用いたファージアッセイ法
(Terzaghi and Sandine, Appl. Microbiol., 29, 807-
813 (1975)参照)によるファージ検出試験の結果、ホエ
ーろ過液中にはLB-03 に感染するバクテリオファージが
存在することが確認されたため、次にこのファージの粗
精製を行った。まず、ホエーろ過液を添加した脱脂乳培
地にLB-03 培養物(滅菌した還元脱脂乳培地で30℃にて
18時間培養することにより得られたもの。)を1容量%
添加し、30℃で一晩培養した。翌日得られた培養液を0.
45μmの滅菌フィルターでろ過し、そのろ液を脱脂乳培
地に添加して、更に前記と同様のLB-03 培養物を1容量
%添加し、再び30℃で一晩培養した。この作業をさらに
5回繰り返し、得られたろ液をLB-03 ファージ粗精製液
とした。なおLB-03 ファージ粗精製液中のファージ数
を、上記と同様に重層寒天培地を用いたファージアッセ
イ法で調べたところ、 2.5×1010pfu/mlであった。
【0023】次に、粗精製されたLB-03 ファージがゴー
ダチーズ用のスターター乳酸菌に感染しないことを確認
した。LB-03 ファージ粗精製液を添加した脱脂乳培地に
ゴーダチーズ用スターターの構成菌であるラクトコッカ
ス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactoco
ccus lactis subsp. lactis) L-101およびL-102 、並び
にラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレ
モリス(Lactococcus lactissubsp. cremoris) C-101 お
よびC-102 をそれぞれ接種して培養したところ、すべて
の菌株について培地の正常な酸凝固が観察された。この
結果より、粗精製されたLB-03 ファージは、ラクトバシ
ラス・デルブリュッキー・サブスピーシズ・ブルガリカ
ス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricas)LB-
03には感染するが、上記のゴーダチーズ用スターター乳
酸菌L-101, L-102, C-101 およびC-102には感染しない
ことが確認された。
【0024】〔実施例2〕ゴーダチーズの調製および評価結果 (1) チーズの調製 チーズ製造に先だって、スターターとしてラクトコッカ
ス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactoco
ccus lactis subsp. lactis) L-101およびL-102 並びに
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシズ・クレモ
リス(Lactococcus lactis subsp. cremoris) C-101およ
びC-102 を滅菌した還元脱脂乳培地で22℃にて18時間培
養してスターター乳酸菌培養物を調製した。またそれと
は別にラクトバシラス・デルブリュッキー・サブスピー
シズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subs
p.bulgaricas) LB-03を、滅菌した還元脱脂乳培地で30
℃にて18時間培養して非スターター乳酸菌培養物を調製
した。脂肪含量を 2.8重量%に調製し、75℃15秒の殺菌
を行った後30℃に保温した牛乳 100Lに、上記L-101,L-
102,C-101およびC-102 を含有するスターター乳酸菌培
養物を1L添加した。30分後にレンネット(力価:2000
0 ユニット)を23.5g添加して十分に混合した後、続け
てLB-03 を含む非スターター乳酸菌培養物を1Lおよび
実施例1で調製したLB-03 ファージ粗精製液10mlを添加
し、十分に混合した。約40分間静置しカードを型詰めし
た。得られた約10kgのグリーンチーズをブライン(23%
食塩水)に36時間浸漬したのち、12℃の熟成室にて熟成
を行ってチーズを製造した。
【0025】(2) チーズの調製(比較例) 非スターター乳酸菌培養物およびファージ粗精製液を添
加せずにスターター乳酸菌のみを用いた以外はチーズ
と同様の方法でチーズを製造した。
【0026】(3) チーズおよびの評価 チーズおよびチーズの熟成過程におけるタンパク質
の分解程度を比較した。タンパク質分解度の指標のひと
つである水溶性窒素/全窒素(SN/TN)の熟成によ
る経時変化を図1に、非タンパク態窒素/全窒素(NP
N/TN)の熟成による経時変化を図2に示した。これ
らの結果から、同じ熟成条件下において非スターター乳
酸菌培養物およびファージ粗精製液添加チーズのほうが
対照チーズよりもタンパク質分解速度が速くなっている
のがわかる。
【0027】更に、図3にはチーズ1g中の遊離アミノ
酸(FAA)含量(mg)の熟成による経時変化を示し
た。熟成月数2ヶ月から6ヶ月にかけては、同じ月数で
チーズにおいてチーズの3倍以上の遊離アミノ酸量
が検出された。さらにチーズの2ヶ月熟成品において
はチーズの6ヶ月熟成品を上回る遊離アミノ酸量が検
出された。
【0028】熟成月数2ヶ月、4ヶ月および6ヶ月のチ
ーズおよびチーズを用いて、20人の専門パネラーに
よる官能検査を行った。チーズの風味の強さ、苦味の強
さ、総合的なおいしさの評価をそれぞれ5段階で評価
し、スコアーの平均値を比較した。それらの結果を表1
〜3に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】チーズ風味の強さについては各熟成月数に
おいてチーズで高スコアーが得られ、チーズの4ヶ
月熟成品においてはチーズの6ヶ月熟成品を上回るス
コアーが得られた。苦味の強さでは両チーズに大きな差
は認められなかった。総合的なおいしさの評価について
は、各熟成月数においてチーズで高スコアーが得られ
た。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、苦味等の欠陥風味がな
く、良好な風味が強化されたナチュラルチーズを製造す
ることができ、しかも風味発現のために要する熟成期間
を短縮することができるので生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】熟成による水溶性窒素/全窒素(SN/TN)
の経時変化を示す図である。
【図2】熟成による非タンパク態窒素/全窒素(NPN
/TN)の経時変化を示す図である。
【図3】熟成によるチーズ中の遊離アミノ酸(FAA)
含量の経時変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01J 1/00 - 27/04 A23C 1/00 - 23/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物を用いてナチュラルチーズを製造
    するに際し、微生物として、スターター乳酸菌と、該ス
    ターター乳酸菌とは別に調製した非スターター乳酸菌
    と、前記スターター乳酸菌には感染しないが前記非スタ
    ーター乳酸菌には感染する宿主特異性の溶菌性バクテリ
    オファージとを用いることを特徴とする、ナチュラルチ
    ーズの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記非スターター乳酸菌がラクトコッカ
    ス・ラクティス・サブスピーシズ・ラクティス(Lactoco
    ccus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクテ
    ィス・サブスピーシズ・クレモリス(Lactococcus lacti
    s subsp. cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス・サ
    ブスピーシズ・ジアセチラクティス(Lactococcus lacti
    s subsp. diacetylactis) 、ラクトバシラス・デルブリ
    ュッキー・サブスピーシズ・ブルガリカス(Lactobacill
    us delbrueckii subsp. bulgaricas) 、ラクトバシラス
    ・デルブリュッキー・サブスピーシズ・ラクティス(Lac
    tobacillus delbrueckii subsp. lactis) 、ラクトバシ
    ラス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)およ
    びストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシズ
    ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. t
    hermophilus)からなる群から選ばれる、請求項1または
    2に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記非スターター乳酸菌が、該乳酸菌を
    脱脂乳培地で培養した培養液として添加される、請求項
    1または2に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記非スターター乳酸菌が、該乳酸菌を
    培地で培養後、乾燥し、粉末状にして添加される、請求
    項1または2に記載のナチュラルチーズの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記溶菌性バクテリオファージがチーズ
    ホエーから分離されたものである、請求項1〜4のいず
    れか1項に記載のナチュラルチーズの製造方法。
JP03204296A 1996-02-20 1996-02-20 溶菌性バクテリオファージを利用したナチュラルチーズの製造方法 Expired - Lifetime JP3505026B2 (ja)

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