JP3504683B2 - レンズ領域の形成方法並びにレンズ及びレンズアレイ板 - Google Patents

レンズ領域の形成方法並びにレンズ及びレンズアレイ板

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JP3504683B2 JP10996893A JP10996893A JP3504683B2 JP 3504683 B2 JP3504683 B2 JP 3504683B2 JP 10996893 A JP10996893 A JP 10996893A JP 10996893 A JP10996893 A JP 10996893A JP 3504683 B2 JP3504683 B2 JP 3504683B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、屈折率分布を有する球
面状や楕円面状等のドーム状レンズ領域の形成方法、及
びかかるレンズ領域を有するレンズ又はレンズアレイ板
に関し、微細レンズの量産性に優れて表示装置の光利用
効率の向上などに好ましく利用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、屈折率分布を有する球面状又は楕
円面状のレンズ領域の形成方法としては、ガラス板を被
覆する金属膜を部分的に除去してその除去部分より金属
イオンを拡散させる方法、あるいはプラスチックフィル
ムを被覆するレジスト膜を部分的に除去してその除去部
分より高屈折率モノマーを拡散させて重合処理する方法
が知られていた。
【0003】前記の両方法は、平板マイクロレンズを得
るものであるが、屈折率制御物質の拡散状態を制御する
ことが困難で、楕円面状等の球面以外の曲率半径を有す
るレンズ領域の形成が困難なこと、レンズアレイを形成
する場合に個々のレンズ特性を揃えにくいことなどの問
題点があった。また前者では金属イオンが関与するため
金属イオンが問題となる半導体等の部品には使用できな
いし、後者ではモノマーの拡散が不安定でその速度が速
くモノマー分布の制御が特に困難で、小径の微細レンズ
を形成しにくく、拡散モノマーを重合するまでは脆くて
破損しやすい問題点などもあった。
【0004】一方、前記の方法に準じて屈折率分布型の
レンズを予め形成し、それをマトリクス樹脂で固定する
ことにより平板マイクロレンズないしアレイ板を得る方
法も提案されている。しかしながら、前記の如く球面以
外の曲率半径を有するレンズ領域の形成が困難なこと
や、レンズの屈折率分布の制御が困難なことに加えて、
目的物の形成までに複雑でかつ煩雑な作業を要して量産
性に乏しく、マトリクス樹脂でレンズが変質したり、ア
レイ時の個々のレンズの配置制御が困難でレンズ特性の
均一化が困難な問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、屈折率分布
を有するレンズ領域の曲率を球面状や楕円面状等の種々
のドーム形態に容易に制御でき、微細レンズやその細密
アレイ板も精度よく容易に製造できて量産性に優れるレ
ンズ領域の形成方法、及びそれによるレンズないしレン
ズアレイ板の開発を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】 本発明は、照射レーザ
光の波長に対する出射光強度(I)を次式:I=I
−μd(ただし、Iは入射光強度、μは吸光係数、
dは厚さ、である。)で表したときの吸光係数が〜1
00/mmであり、かつ感光性の屈折率調節剤を含有する
透明基材に光強度分布を有するレーザ光を照射して、当
該基材の平面方向と厚さ方向において定着量を変化させ
た状態で前記屈折率調節剤を透明基材中に定着させるこ
とを特徴とする、屈折率分布を有するドーム状のレンズ
領域の形成方法、及びかかる方法による、球面状又は放
物面状ないし楕円面状の等屈折率面を具備して屈折率が
三次元曲率を有する状態で分布してなるドーム状のレン
ズ領域を有することを特徴とするレンズ又はレンズアレ
イ板を提供するものである。
【0007】
【作用】光強度分布を有するレーザ光を照射して透明基
材中の感光性屈折率調節剤を定着処理することにより、
レーザ光の平面上の強度分布に基づき透明基材の平面方
向において屈折率調節剤の定着量に部分的な相違を持た
せることができ、これにより平面方向の屈折率分布を形
成することができる。その場合、レーザ光の平面上の強
度分布は通例、ガウス分布を示すことからそのガウス分
布に基づいて屈折率が連続的に変化するレンズ領域を形
成することができる。
【0008】一方、上記の式で表される吸光特性を示す
透明基材を用いることにより、深さ方向において入射レ
ーザ光の強度が漸次減少し、透明基材の厚さ方向におい
ても屈折率調節剤の定着量に部分的な相違を持たせるこ
とができ、これにより厚さ方向の屈折率分布を形成する
ことができる。
【0009】前記の結果、透明基材の表面に照射したレ
ーザ光の中心を基準として、その平面方向と厚さ方向に
レーザ光の強度分布を持たせることができ、これにより
透明基材の平面方向と厚さ方向において屈折率調節剤の
定着量を変化させることができ、屈折率が三次元曲率を
有する状態で分布したドーム形のレンズ領域を形成する
ことができる。
【0010】前記において形成するレンズ領域における
平面方向の屈折率分布の状態は、光強度分布を有するレ
ーザ光の照射量や走査で任意に制御でき、その照射量は
照射時間、レーザ光のビーム位置、照射スポットの大き
さなどにより調節することができる。一方、形成するレ
ンズ領域における厚さ方向の屈折率分布の状態は、透明
基材の吸光度の調節で制御することができる。
【0011】従ってレーザ光の照射中心を基準に、照射
レーザ光の平面方向の強度分布と、透明基材の厚さ方向
における吸光を介した強度分布とを対応させることによ
り屈折率分布を有する球面状のレンズ領域(図4)を形
成でき、それよりも吸光度を大きくすることで平面方向
に長径を有する楕円面状のレンズ領域(図6)を、また
吸光度を小さくすることで厚さ方向に長径を有する楕円
面状のレンズ領域(図7)を形成することができる。
【0012】なお、レンズの半径方向に屈折率が増大す
るものとするか減少するものとするかは、用いる屈折率
調節剤の選択により、すなわち透明基材の屈折率を低下
させるものを用いるか増大させるものを用いるかにより
制御することができる。
【0013】従って上記によれば、透明基材へのレーザ
光の照射で屈折率分布を有するドーム状のレンズ、ない
しそのアレイ板を効率的に形成できて量産性に優れると
共に、大面積板の製造も容易である。また画一的なレン
ズ領域を規則的に形成することが容易でレンズ領域を精
度よくアレイでき、レンズ領域が隣接した高密度の配置
を達成できて開口率の大きいものも得ることができる。
さらに特性の異なるレンズ領域を一枚の透明基材中の任
意な位置に有するアレイ板も容易に得ることができる。
加えて透明基材の適宜な選択で柔軟性等の物性を容易に
付与することもできる。
【0014】
【実施例】本発明は、照射レーザ光に対して所定の吸光
度を示し、感光性の屈折率調節剤を含有する透明基材に
光強度分布を有するレーザ光を照射して、屈折率分布を
有する球面状や楕円面状等のドーム状のレンズ領域を形
成するものであり、そのレーザ光の照射箇所の制御で図
1に例示の如き単レンズや図2に例示の如きレンズアレ
イ板を適宜に得るものである。なお、図中の1が透明基
材、2がレンズ領域である。
【0015】図3に本発明の実施に用いうる装置を例示
した。これは、レーザ発振部3と、シャッター4と、レ
ンズ、鏡、フィルター等からなる集光部5と、ミラー等
からなる走査用光学系6よりなる。
【0016】透明基材1へのレーザ光(矢印)の照射
は、レーザ発振部3より発振させたレーザ光を集光部5
を介し集光して照射スポットの大きさを調節し、それを
走査用光学系6を介し透明基材側に反射させることによ
り行うことができる。走査用光学系6の制御で照射位置
や走査軌跡が調節される。シャッター4は、レーザ発振
部3より発振させたレーザ光の集光部5への通過を制御
するためのものであり、かかるシャッターは集光部や走
査用光学系と連動して制御できることが好ましい。その
制御は、パーソナルコンピューター程度の装置で容易に
行うことができる。
【0017】本発明において用いる透明基材は、感光性
の屈折率調節剤を含有し、照射レーザ光に対して所定の
吸光度を示すものである。かかる透明基材は、例えばモ
ノマー、オリゴマー、樹脂、ガラス、その他の無機物な
どからなる適宜な材料を少なくとも1種類の光反応性物
質を含有する組合せで用いて、レーザ光の照射によりそ
の光反応性物質からなる屈折率調節剤が定着して、レン
ズとして使用する場合の波長光に対して透明性を示すも
のが形成されるようにしたものであればよい。
【0018】一般に用いられる感光性屈折率調節剤を含
有し所定の吸光度を示す透明基材としては、ポリマーや
ガラス、無機結晶、それらの複合物などからなる母材中
に、光重合性モノマーないし光重合性の異なる2種以上
のモノマーや感光性ガラス等からなる屈折率調節剤を含
有させたものなどがあげられる。
【0019】屈折率調節剤の含有量は、目的とする屈折
率分布等に応じて適宜に決定してよいが、一般には母材
100重量部あたり300重量部以下、就中150重量
部以下とされる。透明基材には必要に応じて光反応開始
剤や光増感剤なども含有させられる。
【0020】なお透明基材そのものとしては、レンズと
して使用する場合の波長光に対して透明性を示す適宜な
ものを用いうる。柔軟なシート状のレンズやマイクロレ
ンズ板の形成にはポリマー系の透明基材が好ましい。そ
のポリマーとしては、例えばポリオレフィン、各種合成
ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、セ
ルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エス
テル、ポリメタクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリ
ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートなどがあ
げられる。
【0021】透明基材はレーザ光を照射する段階で固体
である必要はなく、レーザ光照射後の加熱処理や露光処
理等の適宜な処理で固体化しうるものであってもよい。
透明基材の厚さは、目的とするレンズ効果等に応じて適
宜に決定してよく、一般には0.01〜10mmとされ
る。
【0022】屈折率調節剤として例示した前記の光重合
性モノマーや感光性ガラスは、レーザ光の照射でモノマ
ー同士や母材を介して重合、硬化、付加、化合などして
定着するものであるが、本発明においてはその定着の種
類については特に限定はなく、基材より容易に分離しな
い状態にあればよい。また必要に応じて現像処理、加熱
処理、前露光処理、後露光処理、溶剤処理などにより定
着状態を補強することもできる。
【0023】従って感光性の屈折率調節剤としては、レ
ーザ光の照射でその照射強度に応じた例えば重合度や重
合率、硬化度や架橋度、付加率などの変化(分布)によ
り異なる屈折率状態を形成する適宜なものを用いうる。
【0024】 本発明において用いる透明基材は、照射
レーザ光の波長に対する出射光強度(I)を式:I=I
・e−μd(ただし、Iは入射光強度、μは吸光係
数、dは厚さ、である。)で表した場合に、その吸光係
数(μ)が〜100/mmの値を示すものである。かか
る吸光係数が前記範囲外では形成されるレンズ領域の曲
率を制御することが難しい。レンズ領域の曲率制御の点
より好ましく用いうる透明基材は、当該吸光係数が1〜
50/mmの値を示すものである。
【0025】透明基材が屈折率調節剤を含む状態で前記
の吸光特性を示さない場合には、例えば光吸収性の物質
を配合するなどの適宜な方法で吸光度を調節してよい。
前記の光吸収性物質としては、光吸収剤やモノマーない
しポリマーなどの適宜な物質を用いることができる。
【0026】前記においてレンズ等を形成する場合、一
般に透明基材の光透過度は高いほど好ましいことからこ
の点よりは当該吸光係数が小さいほど好ましく、かかる
背反的な要求を満足させる手段としては、例えば透明基
材そのものを形成する材料には光透過度の高いもの(吸
光係数の小さいもの)を用い、それに吸光度を調節する
ための屈折率調節剤ないし光吸収性物質を配合すると共
に、その屈折率調節剤ないし光吸収性物質として、屈折
率調節剤をレーザ光照射で定着した後に透明基材より加
熱処理や溶剤処理等の適宜な処理で除去しうるものを用
いる方式などがあげられる。
【0027】本発明においては、形成レンズ領域におけ
る屈折率の変化(分布)は、屈折率調節剤の定着量変化
により付与するものであるが、その付与は光強度分布を
有するレーザ光の照射により行うことができる。
【0028】前記により上記したように、照射レーザ光
強度の水平方向の分布と、透明基材の吸光による減衰に
基づく入射レーザ光強度の厚さ方向の分布が関与する、
透明基材の平面方向と厚さ方向における屈折率調節剤の
定着量の変化で屈折率が三次元曲率を有する状態で分布
したレンズ領域が形成される。
【0029】前記において形成されレンズ領域の屈折率
分布の状態は、照射レーザ光強度の水平方向の分布と、
入射レーザ光強度の厚さ方向(入射方向)の分布とのバ
ランスによって生じる等光量面の形状により決定され
る。
【0030】従って図4に例示の如き、球面状の等屈折
率面を有する屈折率分布型で半球状のレンズ領域2は、
レーザ光の照射中心を基準に、照射レーザ光の平面方向
の強度分布と、透明基材の厚さ方向における入射レーザ
光の強度分布とを等しくすることにより形成することが
できる。
【0031】一方、吸光度の大きい透明基材を用いる方
式などにより、透明基材の厚さ方向における入射レーザ
光の強度分布の減衰等光量線の間隔が照射レーザ光の平
面方向の強度分布におけるそれよりも短くなるようにす
ることにより、図5に例示の如き球面状の等屈折率面を
有する屈折率分布型で半球状未満のレンズ領域2、ある
いは図6に例示の如き浅い放物面状の等屈折率面を有す
る屈折率分布型のレンズ領域2、ないし平面方向に長径
を有する楕円面状の等屈折率面を有する屈折率分布型で
楕円状のレンズ領域2を形成することができる。
【0032】他方、吸光度の小さい透明基材を用いる方
式などにより、透明基材の厚さ方向における入射レーザ
光の強度分布の減衰等光量線の間隔が照射レーザ光の平
面方向の強度分布におけるそれよりも長くなるようにす
ることにより、図7に例示の如き深い放物面状の等屈折
率面を有する屈折率分布型のレンズ領域2、ないし厚さ
方向に長径を有する楕円面状の等屈折率面を有する屈折
率分布型で楕円状のレンズ領域2を形成することができ
る。
【0033】本発明においてレーザ光の照射には、屈折
率調節剤やその他の例えば光重合開始剤、光増感剤など
の光反応性材料の反応波長に応じ適宜なレーザ発振器を
用いうる。好ましくは、円形状のビーム断面を形成でき
て、光の強度分布として0次の横方向電界モード(ガウ
ス分布)を示すものである。レーザ光の強度分布すなわ
ちモードを変化させることにより、それに応じて屈折率
分布を種々変化させることができる。好ましいレーザ光
の照射波長は、200〜650nmであり、従って紫外線
レーザなどが好ましく用いうる。
【0034】一般に用いられるレーザ発振器の例として
は、エキシマレーザ、アルゴンレーザ、ヘリウム・カド
ミウムレーザ、窒素レーザなどの比較的短波長のレーザ
光を発振するものがあげられる。光重合開始剤や光増感
剤の組合せによっては、ヘリウム・ネオンレーザなども
用いうる。またYAGレーザなどの長波長レーザを必要
に応じて例えば3次高調波等に波長変換して用いること
もできる。
【0035】形成するレンズ領域の制御は、例えばレー
ザ光の照射時間や強度、レーザ光のビーム位置、照射ス
ポットの大きさ、フィルターや透過率分布型光マスクに
よる減光等の強度制御、走査の経路や速度などにより行
うことができる。本発明においては、非走査で所定時間
照射することによりガウス分布等に基づく滑らかなカー
ブを有して屈折率が連続的に変化する領域を形成するこ
ともできるし、レーザ光を走査させて任意なドーム型筒
部を有するレンズ領域を形成することもできる。その場
合、照射スポットの大きさは通例0.01〜200mm程
度とされる。
【0036】形成するレンズ領域の形態は任意で、レン
ズ領域が透明基材の全体を占めていてもよいし、一部の
みを占めていてもよく、複数の領域として形成してレン
ズ領域がアレイ化されていてもよい。
【0037】形成するレンズ領域の径、厚さ、焦点距離
なども任意で、レンズ領域の表面形状も例えば平面状、
凸状、凹状、それらの組合せなど任意である。レンズ領
域をアレイ化する場合においても、そのレンズ領域の形
態やアレイ数、配置状態も任意である。
【0038】開口率の点よりは、レンズ領域が隣接した
最密状態にアレイすることが有利であり、隣接する各レ
ンズ領域の外縁の一部が重畳した外縁共有状態とするこ
ともできる。かかる配置状態の形成は、例えばレーザ光
の照射位置をその照射スポットの大きさにあわせて制御
することにより行うことができる。なお単レンズやその
アレイ板として形成されるレンズの一般的な径は、0.
01〜200mm程度である。
【0039】レンズ領域における屈折率の分布状態は、
使用目的やレンズ表面の形状などに応じて適宜に決定で
きる。レンズ領域の焦点距離は、等屈折率面の曲率半径
や屈折率の分布程度等により制御でき、等屈折率面の曲
率半径を小さくするほど、また屈折率の分布差を大きく
するほど焦点距離を短縮化することができる。
【0040】また屈折率の分布状態は、レンズ特性の点
より図1や図2に例示の如く同心状の等屈折率線を示す
分布状態が好ましい。特に平面レンズの場合には、レン
ズ領域の透明基材表面における中心を頂点とする二次曲
線的な分布が好ましい。その場合、当該頂点を極大とす
ることにより凸レンズ的に、極小とすることにより凹レ
ンズ的に作用するレンズ領域とすることができる。さら
に屈折率の分布状態を調節することで非球面レンズ的に
作用するレンズ領域とすることもできる。
【0041】前記の凹レンズ的に作用するものの好まし
い形成方式は、透明基材の屈折率を低下させる屈折率調
節剤を用いてそのレンズ領域を透明基材の両面(表裏)
に設ける方式である。この例のように本発明において
は、レンズ領域を透明基材の両面に設けることもでき
る。なおレンズ領域における屈折率の大きさや、その分
布における屈折率差の大きさは、レンズ領域の径や厚
さ、屈折率分布域の厚さや曲率、性能、レンズアレイ板
の場合にはさらに最寄りのレンズ領域間距離などにより
適宜に決定される。
【0042】レーザ光の照射による屈折率調節剤の定着
処理を終えると、上記した必要に応じての例えば現像処
理、加熱処理、露光処理、溶剤処理などの一つとして、
透明基材中に残存する未定着の屈折率調節剤などの配合
不要物の除去処理が施される。かかる除去処理は、溶剤
による抽出処理や加熱による揮発化処理など、含有の屈
折率調節剤などに応じた適宜な方式で行うことができ
る。
【0043】前記において吸光度の調節を目的に光吸収
性物質を配合した場合、その除去は屈折率調節剤の除去
処理と同時に行ってもよいし、別個の工程で行ってもよ
い。一方、紫外線に感応して照射レーザ光に対しては光
吸収性物質として機能するが、レンズとして使用すると
きの光、例えば可視光に対しては感応しない物質を配合
したような場合にはその物質を特に除去しなくてもよ
い。前記の場合には、紫外線吸収剤として機能しうるの
であるから、それを残存させることでレンズ領域、ない
し透明基材に紫外線吸収能を付加できる利点がある。
【0044】本発明によるレンズ、レンズアレイ板は、
光学装置やオプトエレクトロニクス装置などに種々の目
的で用いることができる。特に微細レンズのアレイ板
は、液晶表示装置の視認性の向上、ないし表示の良好化
などに好ましく用いうる。
【0045】すなわち、例えばTFT液晶表示装置の開
口率は、薄膜トランジスタや配線部分に光が吸収される
ため通例約50%弱であるが、その画素ピッチに合わせ
てレンズ領域を形成した本発明のレンズアレイ板を光源
側に配置することで、前記の薄膜トランジスタや配線部
分に吸収されていた光を開口部分に集光でき、画面を飛
躍的に明るくできて良好な表示状態を形成することがで
きる。
【0046】また液晶パネルを透過した種々の方向に進
む画像形成光から本発明のレンズアレイ板を介して液晶
層を垂直、ないしそれに近い角度で透過した光線のみを
取出すことにより、視角によるコントラストの低下や表
示の反転、あるいは色相の変化などが抑制されて良好な
表示を得ることもできる。
【0047】実施例1 チヌビン(光吸収剤:チバガイギー社製)2部(重量
部、以下同じ)と光反応開始剤0.5部をクロロホルム
10部に溶解させ、それをスチレン50部と混合した溶
液を、厚さ500μmの二官能ウレタンアクリレート系
硬化シートに含浸させて暗所にてクロロホルムを除去
し、それにヘリウム・カドミウムレーザを1mmのスポッ
ト径で走査させながら1スポットあたり8秒間照射した
のち、メタノール中に浸漬して未反応のスチレンを抽出
除去し、屈折率分布型の柔軟なレンズアレイ板を得た。
【0048】なおチヌビンとスチレンを含有する前記の
二官能ウレタンアクリレート系硬化シートの、ヘリウム
・カドミウムレーザに対する次式に基づく吸光係数(以
下同じ)は4.1/mmであった。 (ただし、Iは出射光強度、I0は入射光強度、μは吸
光係数、dは厚さ、である。)
【0049】実施例2 チヌビンの配合量を4部としたほかは実施例1に準じて
レンズアレイ板を得た。なおこの場合の照射対象の二官
能ウレタンアクリレート系硬化シートの吸光係数は、
7.9/mmであった。
【0050】比較例1 チヌビンを無配合としたほかは実施例1に準じてレンズ
アレイ板を得た。なおこの場合の照射対象の二官能ウレ
タンアクリレート系硬化シートの吸光係数は、0.3/
mmであった。
【0051】比較例2 実施例1に準じて得たチヌビン/スチレン含有の二官能
ウレタンアクリレート系硬化シートに、直径500μm
の孔からなる露光部を800μmの間隔で最密配置した
光学マスクを介して紫外線を照射したのち、メタノール
中に浸漬して未反応のスチレンを抽出除去しレンズアレ
イ板を得た。なおこの場合の照射対象の二官能ウレタン
アクリレート系硬化シートの吸光係数は、3.9/mmで
あった。
【0052】比較例3 蒸着金属膜に直径20μmの孔からなる露光部を5mmの
間隔で最密配置した金属マスクを厚さ2.5mmのポリメ
チルメタクリレート樹脂板の片面に設け、他面に金属膜
を蒸着して前記金属マスクの孔よりスチレンを拡散含浸
させ、それを重合処理したのち蒸着金属膜を除去してレ
ンズアレイ板を得た。
【0053】評価試験 実施例、比較例で得たレンズアレイ板について、その厚
さ方向に、かつ形成レンズ領域単位の中心部分を通過さ
せて切断し、そのレンズ領域の屈折率分布を微分干渉顕
微鏡(カールツァイス・イエナ社製)にて測定した。ま
たレンズアレイ板のレーザ光照射表面より200μmの
厚さで平行に切断し、同様に屈折率分布を測定した。
【0054】前記において形成されたレンズ領域単位の
外形の概略を図8〜図12に示した。図8は実施例1の
場合で、これは放物面に近い半円形を示した。図9は実
施例2の場合で、これは深さ方向に浅い半楕円形を示し
た。図10は比較例1の場合で、これは透明基材の全厚
さにわたりほぼ円柱状の形態を示した。図11は比較例
2の場合で、これはほぼ長方形を示した。図12は比較
例3の場合で、これはほぼ完全な円形を示した。
【0055】一方、実施例1,2及び比較例1,2の場
合について、図13にレンズ領域の中心部における深さ
方向の屈折率変化を示した。また図14にレンズアレイ
板の照射表面における、図15にレンズアレイ板の照射
表面より200μmの深さにおける水平方向の屈折率変
化を示した。一方、図16に比較例3の場合について深
さ方向と、表面における水平方向の屈折率変化を示し
た。なお何れの場合にも、レンズ領域以外の部分を基準
(0)とする屈折率の差として示した。
【0056】図13より実施例1,2と比較例2の場合
には屈折率が深さ方向に連続的に変化し、実施例2での
レンズ領域の深さは実施例1よりも浅いことがわかる。
また比較例1の場合には屈折率が深さ方向で殆ど変化し
ていないことがわかる。
【0057】一方、図14,15より実施例1,2と比
較例1の場合には屈折率が水平方向に連続的に変化して
いるが、比較例2の場合には屈折率の水平方向の変化が
階段状であることがわかる。
【0058】一方、図16より比較例3の場合には屈折
率分布がほぼ完全な半球状で、含浸条件を種々変化させ
てもその半球状の分布形態は変化せず、従って本発明の
ように屈折率分布における曲率に変化を持たせることが
困難である。
【0059】なおレンズアレイ板を透過した光線を目視
観察したところ、実施例1,2では凸レンズタイプの良
好な光学特性を示すことが確認できた。しかし、比較例
2の場合にはレンズ作用を認めることができなかった。
【0060】
【発明の効果】本発明によれば、レーザ光方式であるの
で屈折率分布型の微細なドーム状のレンズ領域を容易に
量産でき、シート状の大面積板も容易に製造することが
できる。また球面状や楕円面状などとしてドーム形態の
曲率半径を精度よく制御することができる。さらに形状
の画一性に優れたレンズ領域を精度よくアレイでき、開
口率の大きいアレイ板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズを例示した部分断面斜視説明図。
【図2】レンズアレイ板を例示した部分断面斜視説明
図。
【図3】製造装置の説明図。
【図4】レンズ領域を例示した説明図。
【図5】他のレンズ領域を例示した説明図。
【図6】他のレンズ領域を例示した説明図。
【図7】他のレンズ領域を例示した説明図。
【図8】実施例1のレンズ領域の外形を示した説明図。
【図9】実施例2のレンズ領域の外形を示した説明図。
【図10】比較例1のレンズ領域の外形を示した説明
図。
【図11】比較例2のレンズ領域の外形を示した説明
図。
【図12】比較例3のレンズ領域の外形を示した説明
図。
【図13】屈折率の分布状態を示したグラフ。
【図14】他の屈折率の分布状態を示したグラフ。
【図15】他の屈折率の分布状態を示したグラフ。
【図16】他の屈折率の分布状態を示したグラフ。
【符号の説明】
1:透明基材 2:レンズ領域 3:レーザ発振器 4:シャッター 5:集光部 6:走査用光学系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川口 正明 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日 東電工株式会社内 (72)発明者 原 和孝 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日 東電工株式会社内 (56)参考文献 特開 昭57−53702(JP,A) 特開 昭61−284702(JP,A) 特表 平3−504539(JP,A) 特表 平4−502219(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29D 11/00 G02B 1/04 G02B 9/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 照射レーザ光の波長に対する出射光強度
    (I)を次式:I=I・e−μd(ただし、Iは入
    射光強度、μは吸光係数、dは厚さ、である。)で表し
    たときの吸光係数が〜100/mmであり、かつ感光性
    の屈折率調節剤を含有する透明基材に光強度分布を有す
    るレーザ光を照射して、当該基材の平面方向と厚さ方向
    において定着量を変化させた状態で前記屈折率調節剤を
    透明基材中に定着させることを特徴とする、屈折率分布
    を有するドーム状のレンズ領域の形成方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法による、球面状又
    は放物面状ないし楕円面状の等屈折率面を具備して屈折
    率が三次元曲率を有する状態で分布してなるドーム状の
    レンズ領域を有することを特徴とするレンズ。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の方法による、球面状又
    は放物面状ないし楕円面状の等屈折率面を具備して屈折
    率が三次元曲率を有する状態で分布してなるドーム状の
    レンズ領域を複数有することを特徴とするレンズアレイ
    板。
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