JP3503560B2 - 耐食性に優れた低降伏比マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた低降伏比マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油井やガス井に用
いられる鋼管、または石油や天然ガスの輸送用パイプラ
インに用いられるステンレス鋼に関し、さらに詳しく
は、油井やガス井の内圧、若しくは鋼管の拡管加工時、
ラインパイプの敷設時の曲げ応力等の外的な応力が負荷
される環境で使用されるのに適し、さらに耐硫化物応力
腐食割れ性および耐全面腐食性にも優れた低降伏比マル
テンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来技術】近年、石油または天然ガスを採取する環境
はますます過酷なものとなっており、油井の大深度化に
加えて、炭酸ガスや硫化水素を含む油井が増加してい
る。特に、大深度化にともなって深く掘削された井戸で
は、油井管に加えられる地中の内圧は、井戸の深度が深
くなるほど著しく増加する。このため、油井管には、硫
化水素等を含む環境に対応する耐食性を発揮するととも
に、降伏比(降伏応力と引張強さの比)が高ければ破損
の危険性が高いことから、地中での内圧に抗ずるよう
に、低い降伏比を具備することが求められる。
【0003】一方、石油または天然ガスのパイプライン
輸送は、陸上に限らず海底フローラインの敷設が大規模
に行われるようになっている。そして、最近の海底パイ
プラインの敷設に際しては、従来の敷設船上での作業に
代えて、陸上で周溶接、検査、コーティング等を行い、
接続されたラインパイプを敷設船上に設けたリールに巻
き取り、海上の敷設場所において、リールからパイプを
巻き戻しながら海底に敷設する、いわゆるリールバージ
法が採用されている。
【0004】このようなリールバージ法による敷設工法
では、リールの直径が十数mにもなることから、ライン
パイプに加わる歪み量は最大3%となり、降伏比が高い
場合には亀裂発生の原因になる。ラインパイプに亀裂が
発生すると、安全操業および作業能率に大きな支障を来
すことから、リールバージ工法に採用されるラインパイ
プには、破壊に対する安全性を確保するため、材料特性
として低い降伏比が要求される。
【0005】上述の通り、油井用として使用される鋼管
や輸送用パイプラインとして使用される鋼管であって、
油井等の内圧、またはラインパイプの敷設時の曲げ応力
等の外的な応力が負荷される環境で使用される場合に
は、通常、要求される高強度、高耐食性の特性に加え、
さらに優れた塑性変形能として、低降伏比の特性が要求
される。このため、従来から、低降伏比を具備する鋼
管、鋼板を実現するものとして種々の鋼種およびその製
造方法が提案されている(例えば、特開昭58−71337号
公報、特開昭63−118012号公報および特開昭63−179019
号公報等)。
【0006】従来から提案されている鋼種での基本的な
考え方を要約すると、炭素鋼または低合金鋼製の素材鋼
を熱間圧延し、その熱間圧延後に加速冷却処理を施し
て、鋼中に柔らかいフェライト相と硬いベイナイト相、
若しくはマルテンサイト相との複合組織を得ようとする
ものである。換言すると、鋼中の柔らかいフェライト相
によって降伏応力を低く保つと同時に、硬いベイナイト
相、若しくはマルテンサイト相で高い引張強さを得るこ
とによって、鋼の特性として低い降伏比を確保しようと
するものである。
【0007】しかしながら、対象とされた炭素鋼または
低合金鋼では、耐硫化物応力腐食割れ性および耐全面腐
食性を期待することができない。このため、前述の環境
が過酷化した油井におけるような、微量硫化水素を含ん
だ炭酸ガス腐食性の環境には適用できないという問題が
ある。
【0008】通常、このような腐食性環境においては、
API規格で規定する13Crグレードに相当するマルテン
サイト系ステンレス鋼が多用されている。すなわち、マ
ルテンサイト系ステンレス鋼は、湿潤な炭酸ガスを含む
環境下での腐食に対して、Crによる耐食性向上効果が著
しく、かつ高強度が容易に得られるという特性を有して
おり、腐食性環境の油井管やパイプラインで汎用されて
いる。しかし、マルテンサイト系ステンレス鋼は、非常
に焼入れ性が良好で空冷でも焼入れ可能であることか
ら、マルテンサイト単相を形成し易い。このため、鋼本
体の高強度化が可能であるが、同時に降伏比が高くなり
易く、破壊に対する安全性を確保するために、低い降伏
比が要求される環境では使用することが困難であるとい
う問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の問題
点に鑑みてなされたものであり、腐食性の環境であると
同時に、外的な応力負荷を考慮しなければならない環境
で使用するのに適し、耐硫化物応力腐食割れ性および耐
全面腐食性に優れ、降伏比が90%以下と低降伏比である
マルテンサイト系ステンレス鋼およびその製造方法を提
供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
課題を解決するため、種々のマルテンサイト系ステンレ
ス鋼の製造条件や鋼中の組織について研究を重ねた結
果、鋼中のマルテンサイト相に軟質なオーステナイトを
適量残留させれば、容易に低降伏比を得ることが可能で
あることを見出した。
【0011】具体的には、化学組成のうちNiを1.5%以
上含有させることを前提として、最終的にAc1点以上の
温度範囲で熱処理を施せば、鋼中にオーステナイトを安
定して残留させることができる。特に、鋼中にオーステ
ナイト量を4%以上残留させれば、マルテンサイト系ス
テンレス鋼であっても降伏比を90%以下にすることが可
能であることを知見した。
【0012】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものであり、下記(1)、(2)のマルテンサイト系ステン
レス鋼、および(3)、(4)のマルテンサイト系ステンレス
鋼の製造方法を要旨とするものである。 (1) 質量%で、C≦0.1%、Si≦1.0%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:10.0〜14.0%、Ni:1.5〜7.0%、Mo:0.2〜3.0
%、Al:0.001〜0.1%およびN:0.001〜0.1%を含有し
て、同時に下記(a)式を満足し、その組織中の残留オー
ステナイトが体積分率で4%以上であり、残りは主とし
てマルテンサイトにすることによって降伏比が90%以下
であることを特徴とする耐食性に優れた低降伏比マルテ
ンサイト系ステンレス鋼である。 Cr − 16.6C ≧ 9.6 ・・・ (a) ただし、CrおよびCは質量%を示す (2) 上記(1)のマルテンサイト系ステンレス鋼では、さ
らに、下記の第1群および第2群の一方、または両方か
ら選ばれた1種以上の元素を含有するのが望ましい。
【0013】[第1群の元素] Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5
%、Zr:0.01〜0.5% ただし、0.01% ≦ Ti+V+Nb+Zr ≦ 0.5% [第2群の元素] La:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜
0.05% (3) 質量%で、C≦0.1%、Si≦1.0%、Mn:0.2〜1.5
%、Cr:10.0〜14.0%、Ni:1.5〜7.0%、Mo:0.2〜3.0
%、Al:0.001〜0.1%およびN:0.001〜0.1%を含有し
て、同時に下記(a)式を満足する鋼に、その組織中の残
留オーステナイトが体積分率で4%以上になるように、
最終熱処理としてAc点を超えてAc未満の温度範囲で
熱処理した後冷却し、降伏比が90%以下であることを特
徴とする耐食性に優れた低降伏比マルテンサイト系ステ
ンレス鋼の製造方法である。 Cr − 16.6C ≧ 9.6 ・・・ (a) ただし、CrおよびCは質量%を示す (4)上記(3)のマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法
では、さらに、下記の第1群および第2群の一方、また
は両方から選ばれた1種以上の元素を含有するようにす
るのが望ましい。
【0014】[第1群の元素] Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5
%、Zr:0.01〜0.5% ただし、0.01% ≦ Ti+V+Nb+Zr ≦ 0.5% [第2群の元素] La:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜
0.05% 本発明のおいて、低降伏比の特性として90%以下を目安
としているのは、この条件を満足すれば、油井用として
使用される鋼管や輸送用パイプラインとして使用される
鋼管であっても、油井等の内圧、拡管加工時、またはラ
インパイプの敷設時の応力等の外的な応力が負荷されて
も、優れた塑性変形能を発揮できるからである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明において、鋼の化学組成、
組織および製造方法を上記のように限定した理由を説明
する。まず、鋼の化学組成について説明するが、ここで
化学組成%は、質量%を示す。 1.化学組成 C≦0.1% Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の強度増加に対し
て、またδ-フェライトの生成を抑制するのに有効な元
素である。しかし、その含有量が0.1%を超えると、炭
酸ガス感受性が悪下し、耐食性が劣化するので、その上
限は0.1%とする。なお、上記したCの有効な作用を発
揮させるため、その含有量の下限は0.05%とするのが望
ましい。
【0016】Si≦0.1% Siは、脱酸元素として有効な元素であると同時に、強力
なフェライト生成元素である。したがって、1.0%を超
えて含有させると靱性が悪下するので、Si含有量は1.0
%以下とする。
【0017】Mn:0.2〜1.5% Mnは、脱酸剤として有効であるが、0.2%未満では所定
の効果が得られず、1.5%を超えて含有させると、母材
の靭性を低下させる。したがって、Mn含有量は、0.2〜
1.5%とする。
【0018】Cr:10.0〜14.0% Crは、マルテンサイト系ステンレス鋼の基本成分であ
り、酸化性の酸に対する耐食性において極めて有効であ
り、特に耐孔食性に対して著しい耐食作用を発揮する。
前述したCの含有量を前提とすると、Crの含有は、少な
くとも10.0%の含有量が必要であるが、14.0%を超えて
含有すると、δ-フェライトが生成し母材の靱性および
熱間加工性を低下させることになる。したがって、Cr含
有量の下限を10.0%とし、上限を14.0%とする。
【0019】図1は、腐食速度に及ぼすC含有量とCr含
有量との関係を示す図である。同図における腐食環境
は、25%NaCl、30atmCO2、150℃であって、このときの
腐食速度(mm/y)とCr−16.6C(%)との関係を示し
ている。図1の関係から明らかなように、優れた耐全面
腐食性の基準となる腐食速度≦1mm/yを達成するに
は、下記(a)式を満足することが必要である。 Cr − 16.6C ≧ 9.6 ・・・ (a) Ni:1.5〜7.0% Niは、強力なオーステナイト生成元素であり、δ-フェ
ライトの抑制に有効な元素である。含有量が1.5%未満
では、鋼中に残留オーステナイトが安定に存在すること
ができず、一方、7.0%を超えて含有させてもオーステ
ナイト生成元素としての効果が飽和し、製造コストの上
昇を招くのみである。したがって、Ni含有量は1.5〜7.0
%とする。
【0020】Mo:0.2〜3.0% Moは、不動態皮膜を非常に安定化し、耐硫化物応力腐食
割れ性に有効であるが、0.2%未満では、その効果が十
分に発揮されない。その反面、Moは、フェライト生成元
素であるので、3.0%を超えて含有させるとδ-フェライ
トが生成し、靱性を低下させるので、その上限を3.0%
とする。
【0021】Al:0.001〜0.1% Alは、脱酸のために必須の元素であり、その効果を発揮
させるため、0.001%以上は含有させる必要がある。す
なわち、その含有量が0.001%未満の場合は、脱酸が不
足し、鋼質の劣化、靱性の低下を招くことになる。しか
し、0.1%を超えて含有させると、かえって靱性の低下
を招く。したがって、Al含有量の下限を0.001%とし、
上限を0.1%とする。さらに、Al含有量の上限を0.05%
とするのが望ましい。
【0022】N:0.001〜0.1% Nは、強力なオーステナイト生成元素であり、僅かな添
加によって、他のオーステナイト生成元素を節約できる
ので有効である。しかし、含有量が0.001%未満では、
その効果が十分ではなく、一方、0.1%を超えて含有す
るとかえって靱性が低下する。したがって、N含有量の
下限を0.001%とし、上限を0.1%とする。さらに、N含
有量の上限を0.015%とするのが望ましい。
【0023】Ti、V、Nb、Zr:0.01〜0.5% Ti、V、Nb、Zrは、いずれも炭窒化物を形成し、母材の
強度向上に有効な元素であるので、必要時に添加するこ
とができる。単独添加する場合には、含有量が0.01%未
満ではその効果が得られず、一方、0.5%を超えて含有
させると、かえって靱性の低下を招く。同様に、2種以
上の元素を同時添加する場合には、添加元素の総和が0.
01%未満ではその効果が発揮されず、また、0.5%を超
えて含有されるとかえって靱性が低下する。このため、
単独添加する場合あっても、また2種以上の元素を同時
添加する場合であっても、含有量の下限を0.01%とし、
上限を0.5%とする。
【0024】La、Ce、Ca:0.001〜0.05% La、Ce、Caは、鋼中の硫化物の形状を改善し、耐硫化物
応力腐食割れ性を向上させる効果があるので、必要時に
添加することができる。いずれの元素も0.001%未満の
含有量ではその効果が得られず、0.05%を超える含有量
になると、靱性および耐食性を低下させる。したがっ
て、La、Ce、Caのいずれの含有量も、添加する場合に
は、下限を0.001%とし、上限を0.05%とする。 2.組織および製造方法 本発明鋼の組織は、残留オーステナイトが体積分率で4
%以上であり、残りは主としてマルテンサイトからなる
ものである。残留オーステナイトとマルテンサイト以外
の組織としては、炭化物、窒化物またはA123などの酸
化物があり、偏析部には稀にδ-フエライトが生成する
ことがある。このような組織も含むことから、本発明鋼
では「主として」と規定している。また、残留オーステ
ナイトの「体積分率」は、後述する実施例で示すよう
に、X線回析によってマルテンサイト分率と残留オース
テナイト分率の比強度を測定し、残留オーステナイトの
体積分率を計算する。
【0025】図2は、降伏比に及ぼす残留オーステナイ
トの影響を示す図である。同図から明らかなように、残
留オーステナイト量をある程度以上確保しなければ、低
降伏比を達成することができない。具体的には、残留オ
ーステナイトの体積分率が4%未満では、降伏比90%以
下という低降伏比の特性を容易に得られない。
【0026】すなわち、残留オーステナイトは、マルテ
ンサイトより軟質であるために、オーステナイトを体積
分率で4%以上残留させることにより、降伏比90%以下
という低降伏比を容易に確保することができる。なお、
図2において、鋼種A〜Kの化学組成は、後述する実施
例の表1に示すものである。
【0027】上記の組織を得る熱処理方法は、前記の化
学組成および(a)式を満足する鋼に、最終熱処理としてA
c1点を超えてAc3未満の温度範囲で熱処理した後、冷却
を施せばよい。
【0028】最終熱処理としてAc1以下の温度での熱処
理を施しても、オーステナイト変態が開始せず所望の組
織が得られない。また、Ac3以上では、成分が均一にな
り冷却後の組織がオーステナイトを残留しないマルテン
サイト組織となる。したがって、最終熱処理としてAc1
点を超えてAc3未満の温度範囲で熱処理して、その後冷
却を施す。冷却は、所定の強度を得るために行うもので
あり、通常、空冷による冷却が行われる。
【0029】
【実施例】本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼の効
果を確認するため、17種の鋼種(本発明鋼8種、比較鋼
9種)を通常の電気炉で、次いで脱硫の目的でAr−酸素
脱炭炉(AOD炉)を使用して溶製した後、直径500mmφの
インゴットを鍛造した。次に、このインゴットを加熱温
度1200℃で熱間鍛造を行い、直径150mmφのビレツトを
製造し、その後、このビレットを素材としてマンネスマ
ン製管によって、製管寸法が直径168mmφ×肉厚12mmの
鋼管を製造した。
【0030】表1に供試した鋼種の化学組成を示すとと
もに、δ-フェライト量(%)および靱性の測定結果を
表している。なお、靱性の評価はシャルピー試験によっ
て行い、焼入れ焼戻しの管体からフルサイズのシャルピ
ー試験片を切り出し、種々温度で試験した結果に基づい
て評価している。
【0031】
【表1】 表1の結果から、本発明で規定する範囲内の本発明鋼A
〜Hにおいては、いずれもδ-フェライト量は1%未満
であり、靱性も良好であることが分かる。
【0032】製管後に、最終熱処理として550℃〜750℃
の加熱条件で熱処理を行い、その後空冷による冷却を施
して、550〜750MPaの降伏応力を持つ管体を製作した。
このようにして得られた管体から試験片を採取・加工し
て、引張試験(降伏比)、残留オーステナイト量の測
定、耐全面腐食試験および耐硫化物応力腐食割れ性試験
を下記の(a)〜(d)の条件または要領で実施した。得られ
た各試験結果を表2にまとめて示す。 (a) 降伏比を測定するための引張試験 試験温度:常温、 試験片:4.0mmφで平行部長さ20mm。 (b) 残留オーステナイトの体積分率の測定 肉厚2mmの試験片を用いてX線回析を行い、マルテンサイト分率と残留オース テナイト分率の比強度を測定し、残留オーステナイトの体積分率を計算した。 (c) 耐全面腐食試験の条件 試験ガス:30barCO2、 試験溶液:5%NaCl、pH4.5、 試験温度:150℃ 浸漬時間:336hr、 試験片:10mm幅×2mm厚×25mm長 (d) 耐硫化物応力腐食割れ性試験の条件 試験ガス:30barCO2+0.01barH2S、 試験溶液:5%NaCl、pH4.5 試験温度:150℃、 浸漬時間:336hr 試験片:10mm幅×2mm厚×75mm長(4点曲げ試験)
【0033】
【表2】 表2の結果から明らかなように、本発明で規定する化学
組成を有する本発明鋼A〜Fであって、残留オーステナ
イトの体積分率が4%以上となる本発明例では、いずれ
も降伏比は90%以下であり、腐食速度は0.1mm/y以下の
耐全面腐食性を示し、耐硫化物応力腐食割れ性も良好な
結果を示している。
【0034】これに対し、化学組成が規定範囲外となる
比較例(No.23〜30)、さらに本発明鋼を使用しても残
留オーステナイトが確保できない比較例では、いずれも
降伏比90%以下を満足することができない。
【0035】
【発明の効果】本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼
およびその製造方法によれば、母材の化学組成を限定す
ると同時に、鋼中の組織を限定し、または最終熱処理を
規定することによって、低降伏比で、耐硫化物応力腐食
割れ性および耐全面腐食性に優れた鋼管を容易に提供で
きる。これにより、油井または海底フローラインのよう
に、腐食性の環境であると同時に、外的な応力負荷を考
慮しなければならない環境で使用する場合に、構造物の
破壊が回避できて、安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】腐食速度に及ぼすC含有量とCr含有量との関係
を示す図である。
【図2】降伏比に及ぼす残留オーステナイトの影響を示
す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−41909(JP,A) 特開 平10−1755(JP,A) 特開 平7−41857(JP,A) 特開 平2−104639(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 6/00 102

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C≦0.1%、Si≦1.0%、Mn:0.
    2〜1.5%、Cr:10.0〜14.0%、Ni:1.5〜7.0%、Mo:0.
    2〜3.0%、Al:0.001〜0.1%およびN:0.001〜0.1%を
    含有して、同時に下記(a)式を満足し、その組織中の残
    留オーステナイトが体積分率で4%以上であり、残りは
    主としてマルテンサイトにすることによって降伏比が90
    %以下であることを特徴とする耐食性に優れた低降伏比
    マルテンサイト系ステンレス鋼。 Cr − 16.6C ≧ 9.6 ・・・ (a) ただし、CrおよびCは質量%を示す
  2. 【請求項2】さらに、下記の第1群および第2群の一
    方、または両方から選ばれた1種以上の元素を含有する
    ことを特徴とする請求項1記載の耐食性に優れた低降伏
    比マルテンサイト系ステンレス鋼。 [第1群の元素] Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5
    %、Zr:0.01〜0.5% ただし、0.01% ≦ Ti+V+Nb+Zr ≦ 0.5% [第2群の元素] La:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜
    0.05%
  3. 【請求項3】質量%で、C≦0.1%、Si≦1.0%、Mn:0.
    2〜1.5%、Cr:10.0〜14.0%、Ni:1.5〜7.0%、Mo:0.
    2〜3.0%、Al:0.001〜0.1%およびN:0.001〜0.1%を
    含有して、同時に下記(a)式を満足する鋼に、その組織
    中の残留オーステナイトが体積分率で4%以上になるよ
    うに、最終熱処理としてAc点を超えてAc未満の温度
    範囲で熱処理した後冷却し、降伏比が90%以下であるこ
    とを特徴とする耐食性に優れた低降伏比マルテンサイト
    系ステンレス鋼の製造方法。 Cr − 16.6C ≧ 9.6 ・・・ (a) ただし、CrおよびCは質量%を示す
  4. 【請求項4】さらに、下記の第1群および第2群の一
    方、または両方から選ばれた1種以上の元素を含有する
    こと請求項3記載の鋼に、その組織中の残留オーステナ
    イトが体積分率で4%以上になるように、最終熱処理と
    してAc点を超えてAc未満の温度範囲で熱処理した後
    冷却し、降伏比が90%以下であることを特徴とする耐食
    性に優れた低降伏比マルテンサイト系ステンレス鋼の製
    造方法。 [第1群の元素] Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5
    %、Zr:0.01〜0.5% ただし、0.01% ≦ Ti+V+Nb+Zr ≦ 0.5% [第2群の元素] La:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、Ca:0.001〜
    0.05%
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