JP3502677B2 - 射出成形方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】本発明は、表面外観（表面の平滑
性または金型シボ面の転写性や光沢の均一性、さらには
曳け）に優れる熱可塑性樹脂成形物を得る射出成形方法
に関する。 【０００２】 【従来の技術】熱可塑性樹脂を射出成形して得られる成
形物は、成形技術の進歩とともに広範な応用分野にて使
用されている。しかしながら、成形物によっては、デザ
イン、強度、使用形態等の関係から必ずしも満足出来る
ものが得られているとは言い難い。特に感触を良くする
ための梨地状のシボを施した場合に生じる曳けによる表
面光沢のムラ、あるいは強度を保持するために設けられ
たリブやボスのある箇所の曳けなど、表面外観に起因す
る問題は依然として十分な解決を見ていない。 【０００３】表面外観を向上させるためにガス注入法な
どが広く用いられているが、ガス注入箇所やガス圧力の
制御、さらにはガスボンベの保管・管理などの問題があ
り、満足できる解決方法とは言い難い。 【０００４】 【発明が解決しようとする問題点】本発明者は、表面外
観に優れる熱可塑性樹脂成形物を得るための射出成形方
法について鋭意検討した結果、溶融樹脂を射出する前後
の金型内圧力を一定の条件にすることにより、簡便な設
備にて優れた成形物が得られることを見出し、本発明に
到達したものである。 【０００５】 【問題点を解決する方法】すなわち、本発明は、予めシ
ールされた金型の内圧を１気圧を越す加圧状態に保ち、
溶融樹脂の射出と同時または少し遅れて金型内を１気圧
未満に減圧し、射出成形してなる表面外観（表面の平滑
性または金型シボ面の転写性や光沢の均一性、さらには
曳け）に優れる熱可塑性樹脂成形物を得る新規な射出成
形方法を提供するものである。 【０００６】本発明における金型素材としては、一般的
な機械構造用炭素鋼（ＳＣ）、クロムモリブデン鋼（Ｓ
ＣＭ）などの鋼材を始め、アルミニウム系のＺＡＳやエ
ポキシ樹脂などの樹脂まで広範な材料が挙げられる。 【０００７】本金型は、予めシールされることができ、
かつ金型内部の圧力を調節できるものである。かかる圧
力調節機構としては、シール、加圧または減圧すること
ができる導入路などである。導入路の数は、成形品の大
きさ、デザインなどにより適宜決定される。また、導入
路の断面形状ならびに断面積についても特に規定はな
く、一般的には円形が、またその直径は０．３〜１５ｍ
ｍが好ましい。 【０００８】本発明においては、予めシールされた金型
内を１気圧を越す圧力に保ち、射出成形開始と同時また
は少し遅れて１気圧未満の減圧状態にする。加圧、減圧
の切替えについては、手動もしくは自動で行われるが、
切替えの速度がコンプレッサーなどの公知の機器で調整
できるように設計された構造が好ましい。特に加圧、減
圧の切替えが射出成形機と連動して稼働するようにされ
たシステムが好ましい。 【０００９】金型内の圧力は射出成形開始前、１気圧を
越す圧力状態に加圧される。内圧は成形物の大きさ、デ
ザインなどによって調整されるが通常ゲージ圧で１．５
〜２０Ｋｇ／ｃｍ² である。内圧が１気圧以下では表面
外観に優れる熱可塑性樹脂成形物を得ることができな
い。 【００１０】次に、溶融樹脂の射出と同時または少し遅
れて内圧を１気圧未満の減圧状態にする。射出成形開始
時または少し遅れて金型内を減圧にしておかないと、曳
けやソリが解消されず、良好な外観を有する成形物を得
ることができない。減圧状態下の圧力については１気圧
未満であれば良く、特に制限はないが、０．５〜０．０
０１ｍｍＨｇ（水銀柱）が好ましい。 【００１１】減圧開始は、溶融樹脂の射出と同時または
射出より少し遅れて行われる。特に制限はないが、圧力
調節機構ならびに得られる成形品の外観などの面より、
減圧開始は、射出開始より０〜５秒の間で適宜調整され
る。 【００１２】本発明の射出成形方法に適用できる熱可塑
性樹脂については特に規定しないが、例えばポリエチレ
ン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリス
チレン、スチレンーアクリロニトリル共重合体、ＡＢＳ
樹脂、ＡＥＳ樹脂、ＡＳＡ樹脂などのスチレン系樹脂、
ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフ
ェニレンエーテル、ポリウレタンなどが挙げられ、１種
または２種以上の混合物であり、それぞれ硬質から軟質
まで含まれる。 【００１３】さらに、それらの熱可塑性樹脂に対し、必
要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、可
塑剤、帯電防止剤、無機および有機系着色剤、無機およ
び有機系充填材などを添加することができる。 【００１４】本発明の射出成形方法に関し、図１を用い
て詳細に説明する。図１は、本発明の射出成形法におけ
る成形サイクル中の金型内圧力を示す。すなわち、予め
金型内を加圧状態としておき、射出と同時または少し遅
れて真空引きで減圧状態とし、その減圧状態を維持す
る。その間に保圧、計量して次の成形ショット量をシリ
ンダー内に蓄えるとともに冷却時間を経て常圧に戻し成
形品を取り出す。更に、実施例をもって本発明を詳細に
説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるもので
はない。 【００１５】実施例および比較例１〜３ 図２に示される圧力調整装置及び梨地シボ面を有する金
型、インラインスクリュー式の一般タイプの射出成形機
（型締力３００トン）、高流動性ＡＢＳ樹脂を用いて、
図３に示す成形品（肉厚１０ｍｍ、縦３００ｍｍ、横２
００ｍｍ）を成形した。ゲートは中央部のダイレクトゲ
ート。 【００１６】成形条件（プロセスＡ〜Ｄ）は、以下のと
おりである。また、成形時の金型内圧力と時間の関係を
図４に示す。 プロセスＡ： 加圧→溶融樹脂の射出・減圧→常圧・冷
却・取り出し。（図４の（Ａ）） プロセスＢ： 加圧・溶融樹脂の射出→常圧・冷却・取
り出し。（図４の（Ｂ）） プロセスＣ： 減圧・溶融樹脂の射出→常圧・冷却・取
り出し。（図４の（Ｃ）） プロセスＤ： 常圧・溶融樹脂の射出→常圧・冷却・取
り出し。（図４の（Ｄ）） 得られた成形品の表面における曳け、シボむら、光沢む
らおよび光沢度を測定した。なお、曳けについては図３
の成形品におけるＡ部、光沢度についてはＡ部およびＢ
部を測定した。結果を表１に示す。 【００１７】 【表１】【００１８】 【発明の効果】本発明の射出成形法を採用することによ
り、表面の平滑性または金型シボ面の転写性や光沢の均
一性、さらには曳けのない、表面外観に優れる熱可塑性
樹脂成形物が得られるものである。

【図面の簡単な説明】 【図１】 成形時の金型内圧力と時間の関係を示す図で
ある。 【図２】 圧力制御装置を備えた金型を示す図である。 【図３】 本発明の実施例、比較例の各特性値の測定箇
所を示す図である。 【図４】 本発明の実施例、比較例における各成形時の
金型内圧力と時間の関係を示す図である。（Ａ）は実施
例におけるプロセスＡを、（Ｂ）はプロセスＢを、
（Ｃ）はプロセスＣをおよび（Ｄ）はプロセスＤをそれ
ぞれ示すものである。 【符号の説明】 １・・・金型 ２・・・真空引溝 ３・・・金型をシールするためのＯリング ４・・・圧力制御装置 ５・・・梨地シボ面

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平５−278058（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−269778（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−155712（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−339943（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−255513（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−64518（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−105323（ＪＰ，Ａ) 特開 昭64−3623（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−194523（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−82714（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−120429（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−281811（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−239916（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−111646（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B29C 45/00 - 45/84

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 予めシールされた金型の内圧を１．５〜
   ２０ｋｇ／ｃｍ ^２ の加圧状態に保ち、溶融樹脂の射出と
   同時または少し遅れて金型内を０．５〜０．００１ｍｍ
   H ｇに減圧し、射出成形することを特徴とする射出成形
   方法。